JP4986052B2 - 沈下基礎修復装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、この手法は、設置面積の狭い基礎に、設計時に想定していない過度の負荷を負わせるために、基礎を破壊するおそれがあるばかりでなく、作業そのものにも意外に手間を要している。
そこで、本出願人の一部は、予め扁平にプレスした鋼管を膨張させ、元の丸形状に戻る際の変位を利用して、沈下基礎を修復させる技術を特許文献2として提案した。
また、前記特許文献2では、扁平にプレスされた膨張型鋼管に代わって、本出願人の一人が特許文献3で提案している、中空内部に外周面の一部を折り込んだ凹型の断面形状を有する異形管からなる膨張型鋼管が用いられ得ることも紹介されている。
そこで、本出願人は、膨張量、すなわち沈下基礎の回復量を大きくするべく、膨張前の形状を工夫したものを特許文献4で提案した。管体長手方向のいずれの断面においてもその周長がほぼ同じであり、かつ当該管体はスリーブに隣接する部位では凹型断面で、スリーブに隣接する部位を除いた部分では扁平化された断面で構成された構造を有する膨張型の鋼管を提案した。注入孔からの高圧水の注入による前記扁平化断面部の円形断面への膨張変形時の管断面高さの増大を利用しようとするものである。
しかしながら、実際の沈下基礎を修復する際には、修復高さをさらに高くすることが求められる。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、膨張型鋼管の形状をさらに工夫し、併せて補助材を用いることにより、沈下基礎の回復量を大きくすることが可能な沈下基礎修復装置を提供することを目的とする。
スペーサ棒としては、少なくとも膨張型鋼管の窪みの最深部付近に接触しており、かつ前記窪みの深さ以上の高さを有するものが好ましい。また、その上部が切欠かれた平坦面を有するもの、或いはその上部及び下部が切欠かれて互いに平行な平坦面を有するものが好ましい。
なお、膨張型鋼管に設けられた窪みは、スペーサ棒と膨張型鋼管で荷重を支持できるように、少なくともスペーサ棒を介して建物の荷重が窪みに作用した状態において、膨張型鋼管の幅方向中央部付近において対向する平坦面に当接する程度の深さを有することが好ましい。
スペーサ棒としては、その上部及び下部が切欠かれて互いに平行な平坦面を有するものが好ましい。
いずれの態様であっても、スペーサ棒としては棒鋼或いは支持する荷重に耐えることのできる厚肉鋼管を用いることが好ましい。
なお、当然ながら、膨張型鋼管に設けられた窪みは、スペーサ棒と膨張型鋼管で荷重を支持できるように、少なくともスペーサ棒を介して建物の荷重が窪みに作用した状態において、膨張型鋼管の幅方向中央部付近において対向する平坦面に当接する程度の深さを有するものとする。
その結果、膨張型鋼管として、膨張用凹部を有する異形管を予め膨張させた後にプレス成形により一方の面が略平坦で、対向する他方の面が幅方向中央部に窪みを有する扁平化させた断面形状にしたものを用い、併せて前記窪みに埋めたスペーサ棒を補助的に用いれば、膨張量、すなわち鋼管の膨張に伴う沈下基礎の回復量を大幅に増大することができることを見出した。
以下にその詳細を説明する。
扁平化は、素材板厚tの10倍程度にまでしかできないことを想定するとき、現実的な沈下基礎回復量はDa−10tである。
膨張型鋼管とスペーサ棒を併用するとき、沈下基礎の回復量は次のようになる。すなわち、図4(a),(b)に示すように、中央に窪みを有する扁平化させた断面の窪み部の最小厚さをDs、スペーサ棒の外径をDbとするとき、沈下基礎の回復量はDa−Dsとなる。窪み部の最小厚さDsは、鋼管の内壁を当接するまでにすると2tまで可能であるから、沈下基礎回復量をDa−2tにまで大きくすることが可能となる。
すなわち、スリーブ間の形状は、管体長手方向のいずれの断面においてもその周長がほぼ同じであり、かつ当該管体の断面形状はスリーブに隣接する部位では異形管の断面である凹型のままであり、スリーブに隣接する部位を除いた部分は図4(a)に示されるような中央に窪みを有する扁平化された断面となっている。
このように、膨張用凹部を有する異形管を一旦膨張させて円形断面にした後に、プレスにより一方の面が略平坦で、対向する他方の面が幅方向中央部に窪みを有する扁平化した断面形状とし、スペーサ棒を併用することにより、単に凹部を有する異形管を用いた場合や、単に扁平化した断面形状とした鋼管と比べて膨張高さ、すなわち、沈下基礎の回復量を格段に大きくすることが可能になる。
基本的には、図4(a)に示すように、中央部に窪みを有する扁平化断面の前記窪みを埋めるように、丸棒からなるスペーサ棒を載置する。
丸棒に替えて、図5(a)に示すように、上部を切欠いて平坦面を形成した棒体を載置しても良い。上部を切欠いて平坦面を形成すると、沈下基礎修復装置の設置空間が図4(a)と比べて狭く(高さが低く)ても、同じ回復量を確保することができる。
また、図5(b)に示すように、上部及び下部を切欠いて互いに平行な平坦面を形成した棒体を載置しても良い。上部及び下部を切欠いて互いに平行な平坦面を形成すると、鋼管を膨張させた後、建物基礎と基礎地盤との間での安定性が良くなる。
このような配置態様により2倍の回復量を確保することができる。なお、この際にも、スペーサ棒として、その上部及び下部に互いに平行な平坦面を形成することが好ましい。
膨張用異形管の素管としては、耐食性を向上させるために内外両面に金属めっきが施されためっき鋼管を使用することが好ましい。
金属めっきとしては、Zn系めっき,Zn−Al系合金めっき(Zn−5%Alめっき,Zn−55%Al系めっき等),Zn−Al−Mg系合金めっきされたものが好ましいが、特にMg:0.05〜10質量%,Al:4〜22質量%,残部Zn及び不可避的不純物からなるZn−Al−Mg系合金めっきが施されたものが好ましい。
ロール成形法を採用した場合には、例えば次のような工程を経て製造される。
図7に見られるように、まず、(a)例えば高周波溶接法等で溶接された鋼管を準備し、(b)凹異形管の凹部の周方向長さと、凹部以外の周方向長さにほぼ適合するように円弧の半径並びに角度を設定した大小2種類の凸曲面よりなる断面にロール成形する(第一工程)。その後、(c)前記2種類の凸曲面の内の曲率半径の大きい面の中央表面から円盤状ロールを当て前記曲率半径の大きい面を管の内側に窪ませるようにロール成形する(第二工程)。その後さらに、(d)、(e)中央が窪み樋状に湾曲した断面の両側にロールを当て樋状開口部を狭めて管外径を小さくロール成形して(第三工程)、半径方向に窪ませたくぼみを軸方向にわたって長く形成した膨張型異形管を製造する。
異形管の両端にスリーブを装着して封止するためには、次のような態様を採ることが好ましい。すなわち、図8に示すように、膨張用凹部を有する中空異形管Mの両端に、円筒形のスリーブSを圧入して装着する。装着するスリーブとしては、使用時の耐食性を考慮すると、素管と同様、耐食性が良好なZn系めっき,Zn−Al系合金めっき(Zn−5%Alめっき,Zn−55%Al系めっき等),Zn−Al−Mg系合金めっきが施されためっき鋼管を用いることが好ましい。
なお、異形管端部とスリーブを溶接接合した後に高圧水注入孔Hを設けるとき、異形管やスリーブの寸法精度の影響により、あるいは密閉して溶接する際の加工や溶接の影響を受けた歪みの発生により、スリーブ内面と異形管外面とが密着せず、両者の間に空隙が生じている場合がある。このため、スリーブSと異形管Mの両者を貫通する流体注入孔Hの内壁を覆うように、中空の円筒状ピン(図示せず)を挿し込んでもよい。
その後、一旦膨張させた異形管の、建築物の沈下基礎の修復に用いる部分を、例えば図11に示すようなプレス装置により扁平化され、前記修復に用いる部分を中央に窪みを有する扁平化された断面で構成された管体を得る。
なお、パイプを金型の上下方向中央付近に保持すべくパイプ支持台9を図11の上方向に設けられたストッパー(図示せず)で所定位置に8によって押し付けておき、移動金型6の移動時にパイプの扁平に伴う高さの増大に応じてバネ8で支持されたパイプ支持台94が退避されるようにすると、パイプPは上下方向に拘束を受けることなく容易に扁平化される(図11(b))。
図12,13に示すような住宅建築物11を基礎地盤12の表層部分に設けた受圧盤13の上に構築する際、住宅建築物11の基礎11aと受圧盤13の間に、本発明の沈下基礎修復装置20を、扁平化面を上又は下にして予め敷設しておく。そして、沈下基礎修復装置20を介在させた基礎11aの上に、住宅建築物11を構築する。なお、図7,8では、住宅建築物11について、躯体部分を省略して基礎11aのみを示している。また、住宅建築物11の基礎11aは略矩形の平面形状を備えるように簡略化して示している。
配置された沈下基礎修復装置20の上方に基礎11a及び住宅建築物11を構築した後に、構築された住宅建築物11に沈下が生じた際に、沈下基礎修復装置20の膨張型鋼管内部に膨張用の高圧水を注入して当該膨張型鋼管を膨張変形させる。膨張時に扁平状態から断面円形に変形することにより、受圧盤13から基礎11aを押し上げ、受圧盤13の沈下を回復させる。住宅建築物11に沈下が局所的に進行し、住宅建築物11が傾いた際にあっても、沈下が進行した領域の沈下基礎修復装置20の鋼管のみを沈下量に合せて膨張させれば、住宅建築物の傾きを修復することができる。
沈下した部分の建物の外周部基礎の下面と、基礎地盤の表層部分との間に隙間を形成し、この隙間に本発明沈下基礎修復装置を挿入・配置する。その後沈下基礎修復装置を構成する膨張型鋼管内部に膨張用の高圧水を注入して当該膨張型鋼管を膨張変形させる。膨張時に扁平状態から断面円形に変形することにより、建物の外周部基礎を押し上げる。
いずれの態様にあっても、建物の基礎が押し上げられることによって形成された建物基礎下面と基礎地盤表層部分との間の隙間に、モルタル、グラウト、発泡ウレタン等の固化材を充填するか、或いはさらに大きなリフトアップ量を必要とする場合には形成された隙間を利用して他のリフトアップ手段を講じることが好ましい。
板厚2mmの鋼板を素材とし、高周波誘導溶接により外径54mmのパイプに成形した後、直ちに外径約36mmの凹型断面を有する異形鋼管を成形した。
この異形鋼管を長さ2mに切断し、両管端約100mm分を縮管金型にて直径33mmに縮管した後、一端に封止側スリーブとして外径38.1mm,肉厚2.55mm,長さ70mmのパイプを被せ、さらにポンチ圧入箇所にポンチを圧入することによって管端部を封止側スリーブに沿った密着扁平状態に成形し、溶接により封止した。縮管した異形鋼管の他端にも、同様に注水側スリーブを形成するために外径41mm,肉厚4mm,長さ70mmのパイプを被せ、さらに管端の開口にポンチを圧入することによりパイプ内壁に沿った密着扁平状態に形成し、溶接により封止した後、注水側スリーブ先端より約25mmの位置で異形管の凹部を避けて径約3mmの高圧水注入孔をスリーブの肉厚4mm及び異形管の肉厚2mmを貫通するように穿設して、膨張型異形管を作製した。
そして、上記で製造された膨張型異形管の注水側スリーブから、膨張用の加圧水を付加し、最終的には25MPaにまで加圧して異形管の中ほど部を元の54mmの径まで膨張させた。
比較例としては、膨張させた管の中ほど部を両面が平坦な押圧面を有するプレス装置に挟み、間の中ほど部分を厚さ20mmまで押圧し扁平化した膨張型鋼管をそのまま使用した。
加圧水を送り込む過程での回復量をみると、図14に示すとおりなっている。
特許文献4で提案した技術(図14(b))では34mmの回復量しか得られないのに対して、本発明技術の採用(図14(a))により50mmの回復量が得られている。約50%もの効率アップとなっているがわかる。
Claims (8)
- 両端に高水圧の付加によって破損することのない強度を有する円筒形のスリーブが装着された水密構造を有する異形の管体からなり、当該管体長手方向のいずれの断面においてもその周長がほぼ同じであり、スリーブに隣接する部位を除いた部分では一方の面が略平坦で、対向する他方の面が幅方向中央部に窪みを有する扁平化断面で構成されているとともに、前記スリーブの一方に注入孔が設けられた構造を有する膨張型鋼管と、当該膨張型鋼管の前記窪みの上に載置されたスペーサ棒とからなり、前記注入孔からの高圧水の注入による前記膨張型鋼管の扁平化部の円形断面への膨張変形時の管断面高さの増大を利用することを特徴とする沈下基礎修復装置。
- スペーサ棒が、少なくとも膨張型鋼管の窪みの最深部付近に接触しており、かつ前記窪みの深さ以上の高さを有するものである請求項1に記載の沈下基礎修復装置。
- スペーサ棒が、その上部が切欠かれた平坦面を有するものである請求項1又は2に記載の沈下基礎修復装置。
- スペーサ棒が、その上部及び下部が切欠かれて互いに平行な平坦面を有するものである請求項1又は2に記載の沈下基礎修復装置。
- いずれも、両端に高水圧の付加によって破損することのない強度を有する円筒形のスリーブが装着された水密構造を有する異形の管体からなり、当該管体長手方向のいずれの断面においてもその周長がほぼ同じであり、スリーブに隣接する部位を除いた部分では一方の面が略平坦で、対向する他方の面が幅方向中央部に窪みを有する扁平化断面で構成されているとともに、前記スリーブの一方に注入孔が設けられた構造を有する同型であって、前記一方の面が略平坦で、対向する他方の面が幅方向中央部に窪みを有する扁平化断面の窪み部を向かい合わせた2本の膨張型鋼管と、前記向かい合った窪み部に挟み込まれたスペーサ棒とからなり、前記注入孔からの高圧水の注入による前記膨張型鋼管の扁平化部の円形断面への膨張変形時の管断面高さの増大を利用することを特徴とする沈下基礎修復装置。
- スペーサ棒が、少なくとも2本の膨張型鋼管のそれぞれの窪みの最深部付近に接触しており、かつ2本の膨張型鋼管のそれぞれの前記窪みの深さを足し合わせた以上の高さを有するものである請求項5に記載の沈下基礎修復装置。
- スペーサ棒が、その上部及び下部が切欠かれて互いに平行な平坦面を有するものである請求項5又は6に記載の沈下基礎修復装置。
- スペーサ棒として、棒鋼を配した請求項1〜7のいずれかに記載の沈下基礎修復装置。
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