JP4716955B2 - 沈下基礎修復用膨張型鋼管 - Google Patents
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Description
しかしながら、この手法は、設置面積の狭い基礎に、設計時に想定していない過度の負荷を負わせるために、基礎を破壊するおそれがあるばかりでなく、作業そのものにも意外に手間を要している。
そこで、本出願人の一部は、予め扁平にプレスした鋼管を膨張させ、元の丸形状に戻る際の変位を利用して、沈下基礎を修復させる技術を特許文献2として提案した。
また、前記特許文献2では、扁平にプレスされた膨張型鋼管に代わって、本出願人の一人が特開2003−206698号公報で提案している、中空内部に外周面の一部を折り込んだ凹型の断面形状を有する膨張型異形管からなる膨張型鋼管が用いられ得ることも紹介されている。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、形状を工夫することにより、膨張量、すなわち沈下基礎の回復量を大きくすることが可能な沈下基礎修復用膨張型鋼管を提供することを目的とする。
そこで、本発明者等は、沈下基礎修復用膨張型鋼管の膨張量、すなわち沈下基礎の回復量を大きくすることが可能な形状について種々検討を重ねてきた。
その結果、沈下基礎修復用膨張型鋼管として、膨張用凹部を有する異形管を予め膨張させた後にプレス成形により扁平化させた断面形状にしたものを用いれば、膨張量、すなわち鋼管の膨張に伴う沈下基礎の回復量を大幅に増大することができることを見出した。
以下にその詳細を説明する。
そこで、本発明は、前記した膨張型の異形管を一旦膨張させて径を拡大した後に、上下よりプレス圧を加えて扁平化した断面形状としたものである(図1参照)。このため、スリーブ間の形状は、管体長手方向のいずれの断面においてもその周長がほぼ同じであり、かつ当該管体の断面形状はスリーブに隣接する部位では異形管の断面である凹型のままであり、スリーブに隣接する部位を除いた部分は図2に示されるような扁平化された断面となっている。
このように、膨張用凹部を有する異形管を一旦膨張させて円形断面にした後に、プレスにより扁平化した断面形状することにより、単に凹部を有する異形管を用いた場合と比べて膨張高さ、すなわち、沈下基礎の回復量を格段に大きくすることが可能になる。
板厚2mmの鋼板を素材とし、高周波誘導溶接により外径54mmのパイプに成形した後、直ちに外径約36mmの凹型断面を有する異形鋼管を成形した。
この異形鋼管を長さ2mに切断し、両管端約100mm分を縮管金型にて直径33mmに縮管した後、一端に封止側スリーブとして外径38.1mm,肉厚2.55mm,長さ70mmのパイプを被せ、さらにポンチ圧入箇所にポンチを圧入することによって管端部を封止側スリーブに沿った密着扁平状態に成形し、溶接により封止した。縮管した異形鋼管の他端にも、同様に注水側スリーブを形成するために外径41mm,肉厚4mm,長さ70mmのパイプを被せ、さらに管端の開口にポンチを圧入することによりパイプ内壁に沿った密着扁平状態に形成し、溶接により封止した後、注水側スリーブ先端より約25mmの位置で異形管の凹部を避けて径約3mmの高圧水注入孔をスリーブの肉厚4mm及び異形管の肉厚2mmを貫通するように穿設して、本発明の膨張型鋼管を作製した。
本発明例では、上記で製造された膨張型異形管の注水側スリーブから、膨張用の加圧水を付加し、最終的には25MPaにまで加圧して異形管の中ほど部を元の54mmの径まで膨張させた後に、膨張させた管の中ほど部をプレス装置に挟み、当該部分を厚さ15mmまで押圧し扁平化した。
両者を比較すると、本発明の円形断面に膨張された後に扁平化された膨張型鋼管では、膨張により、54mm−15mm=39mmの膨張高さを確保することができるのに対して、比較例である断面凹型のままの膨張型異形管では、膨張により、54mm−36mm=18mmの膨張高さしか確保することができない。
金属めっきとしては、Zn系めっき,Zn−Al系合金めっき(Zn−5%Alめっき,Zn−55%Al系めっき等),Zn−Al−Mg系合金めっきされたものが好ましいが、特にMg:0.05〜10質量%,Al:4〜22質量%,残部Zn及び不可避的不純物からなるZn−Al−Mg系合金めっきが施されたものが好ましい。
両者を勘案すると、扁平化比率は4〜9程度とすることが好ましい。
中空内部に外周面の一部を折り込んだ断面凹型形状の所定長の異形管を素管とし、その両端に高水圧の付加によって変形することのない強度を有する円筒形のスリーブを装着して水密構造を有する膨張用の管体を作製する。一方のスリーブに高圧水注入孔を穿ち、この注水孔から高圧水を注入して前記凹型断面部を膨張させた後に、膨張させた管の中ほど部分を上下に平坦面を有するプレス型に挿入して押圧成形し、前記管体長手方向のいずれの断面においてもその周長がほぼ同じであり、かつスリーブに隣接する部位では凹型断面で、中央部では扁平化された断面で構成された管体を得る。
ロール成形法を採用した場合には、例えば次のような工程を経て製造される。
図3に見られるように、まず、(a)例えば高周波溶接法等で溶接された鋼管を準備し、(b)凹異形管の凹部の周方向長さと、凹部以外の周方向長さにほぼ適合するように円弧の半径並びに角度を設定した大小2種類の凸曲面よりなる断面にロール成形する(第一工程)。その後、(c)前記2種類の凸曲面の内の曲率半径の大きい面の中央表面から円盤状ロールを当て前記曲率半径の大きい面を管の内側に窪ませるようにロール成形する(第二工程)。その後さらに、(d)、(e)中央が窪み樋状に湾曲した断面の両側にロールを当て樋状開口部を狭めて管外径を小さくロール成形して(第三工程)、半径方向に窪ませたくぼみを軸方向にわたって長く形成した膨張型異形管を製造する。
異形管の両端にスリーブを装着して封止するためには、次のような態様を採ることが好ましい。すなわち、図4に示すように、膨張用凹部を有する中空異形管Mの両端に、円筒形のスリーブSを圧入して装着する。装着するスリーブとしては、使用時の耐食性を考慮すると、素管と同様、耐食性が良好なZn系めっき,Zn−Al系合金めっき(Zn−5%Alめっき,Zn−55%Al系めっき等),Zn−Al−Mg系合金めっきが施されためっき鋼管を用いることが好ましい。
なお、異形管端部とスリーブを溶接接合した後に高圧水注入孔Hを設けるとき、異形管やスリーブの寸法精度の影響により、あるいは密閉して溶接する際の加工や溶接の影響を受けた歪みの発生により、スリーブ内面と異形管外面とが密着せず、両者の間に空隙が生じている場合がある。このため、スリーブSと異形管Mの両者を貫通する流体注入孔Hの内壁を覆うように、中空の円筒状ピン(図示せず)を挿し込むことが好ましい。
その後、一旦膨張させた異形管の、建築物の沈下基礎の修復に用いる部分を、上下に平坦面を有するプレス型内に配置し上下からプレス成形し、前記修復に用いる部分を扁平化して、本発明の扁平化された断面形状の膨張型異形管を得る。
図7,8に示すような住宅建築物11を基礎地盤12の表層部分に設けた受圧盤13の上に構築する際、住宅建築物11の基礎11aと受圧盤13の間に、扁平化された断面形状の本発明の沈下基礎修復用膨張型鋼管20を、扁平化面を上下にして予め敷設しておく。そして、沈下基礎修復用膨張型鋼管20を介在させた基礎11aの上に、住宅建築物11を構築する。なお、図7,8では、住宅建築物11について、躯体部分を省略して基礎11aのみを示している。また、住宅建築物11の基礎11aは略矩形の平面形状を備えるように簡略化して示している。
配置された沈下基礎修復用膨張型鋼管20の上方に基礎11a及び住宅建築物11を構築した後に、構築された住宅建築物11に沈下が生じた際に、膨張型鋼管20の内部に膨張用の高圧水を注入して当該膨張型鋼管20を膨張変形させる。図膨張時に扁平状態から断面円形に変形することにより、受圧盤13から基礎11aを押し上げ、受圧盤13の沈下を回復させる。住宅建築物11に沈下が局所的に進行し、住宅建築物11が傾いた際にあっても、沈下が進行した領域の膨張型鋼管20のみを沈下量に合せて膨張させれば、住宅建築物の傾きを修復することができる。
前記したような板厚2mmで外径54mmのパイプを素管とした断面凹型の異形管を膨張後に15mmの厚さまで扁平化された膨張型鋼管では、約39mmの膨張高さしか確保することができない。
このような場合には、必要とするリフトアップ量を確保するために、扁平化された膨張型鋼管を2段又は3段以上で積み重ねることが好ましい。
Claims (1)
- 両端に高水圧の付加によって変形することのない強度を有する円筒形のスリーブが装着された水密構造を有する異形の管体からなり、当該管体長手方向のいずれの断面においてもその周長がほぼ同じであり、かつ当該管体はスリーブに隣接する部位では凹型断面で、スリーブに隣接する部位を除いた部分では扁平化された断面で構成されているとともに、前記スリーブの一方に注入孔が設けられた構造を有し、前記注入孔からの高圧水の注入による前記扁平化断面部の円形断面への膨張変形時の管断面高さの増大を利用することを特徴とする沈下基礎修復用膨張型鋼管。
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