しかしながら、特許文献1に記載の空気入りタイヤのようにトレッド部をタイヤ径方向内方にくぼませた場合、空気入りタイヤを使用し続けてトレッド部が摩耗した際に、ノイズや振動を抑制する効果が低減する虞がある。このため、空気入りタイヤを使用し続けた場合、ノイズや振動を抑制し続けるのが困難になる虞があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、より確実にノイズと振動とを共に抑制できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ幅方向の両側に位置するビードコアのタイヤ径方向外方にビードフィラーを有し、且つ、タイヤ周方向に分割された複数のモールドセクターが組合されるモールドによって加硫成型される空気入りタイヤにおいて、前記ビードフィラーは、子午面断面の断面積が前記モールドセクターの数と同じ数でタイヤ周方向に繰り返し変化しており、前記加硫成型時に隣り合う前記モールドセクター同士が接触する位置であるモールド分割位置での子午面断面の断面積が、前記加硫成型時に前記モールドセクターが配設されている位置での子午面断面の断面積よりも小さくなっていることを特徴とする。
この発明では、ビードフィラーの子午面断面の断面積が、加硫成型時にモールドセクターが配設されている位置での子午面断面の断面積よりも、モールド分割位置での子午面断面の断面積の方が小さくなっている。これにより、空気入りタイヤの加硫成型時にトレッド部の厚さが厚くなり易い部分であるモールド分割位置でのビードフィラーの剛性を、トレッド部の厚さが薄くなり易い部分であるモールドセクターが配設される位置よりも低くすることができる。従って、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができ、また、トレッド部が摩耗した場合でも、剛性差が低減した状態を維持することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードフィラーは、タイヤ周方向に繰り返し変化している断面積のうち断面積が小さく変化している部分において最小断面積となる部分のタイヤ周方向における位置が、前記モールド分割位置のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置していることを特徴とする。
この発明では、ビードフィラーの最小断面積となる部分のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置させているので、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。つまり、ビードフィラーの最小断面積となる部分のタイヤ周方向における位置が、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に15°よりも大きい角度でずれている場合には、ビードフィラーにおいて剛性が低い部分が、モールド分割位置から離れてしまう。このため、モールド分割位置でのタイヤ径方向の剛性を低下させることが困難になる虞があるため、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することが困難になる虞がある。従って、ビードフィラーの最小断面積となる部分のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置させることにより、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードフィラーは、タイヤ周方向に繰り返し変化している断面積のうち断面積が小さく変化している部分において最小断面積となる部分のそれぞれの断面積の平均である平均最小断面積が、タイヤ周方向に繰り返し変化している断面積のうち断面積が大きく変化している部分において最大断面積となる部分のそれぞれの断面積の平均である平均最大断面積よりも小さくなっていることを特徴とする。
この発明では、ビードフィラーの平均最小断面積を、平均最大断面積よりも小さくしているので、より確実にモールド分割位置のタイヤ周方向における位置でのビードフィラーの剛性を低減させることができ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記平均最小断面積は、前記平均最大断面積の70%以上であることを特徴とする。
この発明では、ビードフィラーの平均最小断面積を平均最大断面積の70%以上にしているので、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。つまり、ビードフィラーの平均最小断面積が平均最大断面積の70%未満の場合には、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置でのビードフィラーの剛性が低くなり過ぎる虞がある。このため、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置での剛性が低くなり過ぎる虞があり、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することが困難になる虞がある。従って、ビードフィラーの平均最小断面積を平均最大断面積の70%以上にすることにより、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置でのビードフィラーの剛性が低くなり過ぎることを抑制でき、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードフィラーは、タイヤ周方向に繰り返し変化している断面積のうち断面積が小さく変化している部分において最小断面積となる部分の子午面断面での幅が、断面積が大きく変化している部分において最大断面積となる部分の子午面断面での幅の70%以上であることを特徴とする。
この発明では、ビードフィラーのうち、最小断面積となる部分の子午面断面での幅を、最大断面積となる部分の子午面断面での幅の70%以上にしているので、ビードフィラーの耐久性を確保することができる。つまり、ビードフィラーの最小断面積となる部分の子午面断面での幅が、最大断面積となる部分の子午面断面での幅の70%未満の場合には、最小断面積となる部分と最大断面積となる部分とのビードフィラーの剛性差が大きくなり過ぎる虞がある。このため、ビードフィラーの耐久性が低減する虞があり、ビードフィラーを有するビード部の耐久性が低減する虞がある。従って、ビードフィラーの最小断面積となる部分の子午面断面での幅を、最大断面積となる部分の子午面断面での幅の70%以上にすることにより、ビードフィラーの耐久性を確保することができる。この結果、耐久性を確保しつつ、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ幅方向の両側に位置するビードコアに巻き返されるカーカスを有し、且つ、タイヤ周方向に分割された複数のモールドセクターが組合されるモールドによって加硫成型される空気入りタイヤにおいて、前記カーカスは、前記ビードコアに巻き返されている部分である巻き返し部のタイヤ径方向の高さが前記モールドセクターの数と同じ数でタイヤ周方向に繰り返し変化しており、前記加硫成型時に隣り合う前記モールドセクター同士が接触する位置であるモールド分割位置での前記巻き返し部の高さが、前記加硫成型時に前記モールドセクターが配設されている位置での前記巻き返し部の高さよりも低くなっていることを特徴とする。
この発明では、カーカスの巻き返し部のタイヤ径方向における高さが、加硫成型時にモールドセクターが配設されている位置での巻き返し部の高さよりも、モールド分割位置での巻き返し部の高さの方が低くなっている。これにより、空気入りタイヤの加硫成型時にトレッド部の厚さが厚くなり易い部分であるモールド分割位置での巻き返し部の剛性を、トレッド部の厚さが薄くなり易い部分であるモールドセクターが配設される位置よりも低くすることができる。従って、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができ、また、トレッド部が摩耗した場合でも、剛性差が低減した状態を維持することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記カーカスは、前記ビードコアのタイヤ幅方向内方側から前記ビードコアのタイヤ径方向内方側を通り、前記ビードコアのタイヤ幅方向外方側にかけて巻き返されていることを特徴とする。
この発明では、カーカスを、ビードコアのタイヤ幅方向内方側からビードコアのタイヤ幅方向外方側にかけて巻き返し、いわゆるターンアッププライにしているので、巻き返し部はビードコアやビードフィラーよりもタイヤ幅方向外側に配設される。これにより、巻き返し部のタイヤ径方向の高さをタイヤ周方向において変化させる際に、容易に変化させることができる。この結果、容易にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記カーカスは、タイヤ周方向に繰り返し変化している前記巻き返し部のタイヤ径方向の高さのうち高さが低く変化している部分において最小高さとなる部分のタイヤ周方向における位置が、前記モールド分割位置のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置していることを特徴とする。
この発明では、カーカスの巻き返し部の最小高さとなる部分のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置させているので、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。つまり、巻き返し部の最小高さとなる部分のタイヤ周方向における位置が、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に15°よりも大きい角度でずれている場合には、巻き返し部において剛性が低い部分が、モールド分割位置から離れてしまう。このため、モールド分割位置でのタイヤ径方向の剛性を低下させることが困難になる虞があるため、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することが困難になる虞がある。従って、巻き返し部の最小高さとなる部分のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置させることにより、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記カーカスは、タイヤ周方向に繰り返し変化している前記巻き返し部のタイヤ径方向の高さのうち高さが低く変化している部分において最小高さとなる部分のそれぞれの高さの平均である平均最小高さが、タイヤ周方向に繰り返し変化している高さのうち高さが高く変化している部分において最大高さとなる部分のそれぞれの高さの平均である平均最大高さよりも低くなっていることを特徴とする。
この発明では、カーカスの巻き返し部の平均最小高さを、平均最大高さよりも低くしているので、より確実にモールド分割位置のタイヤ周方向における位置での巻き返し部の剛性を低減させることができ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記平均最小高さは、前記平均最大高さの70%以上であることを特徴とする。
この発明では、カーカスの巻き返し部の平均最小高さを平均最大高さの70%以上にしているので、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。つまり、巻き返し部の平均最小高さが平均最大高さの70%未満の場合には、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置での巻き返し部の剛性が低くなり過ぎる虞がある。このため、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置での剛性が低くなり過ぎる虞があり、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することが困難になる虞がある。従って、巻き返し部の平均最小高さを平均最大高さの70%以上にすることにより、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置での巻き返し部の剛性が低くなり過ぎることを抑制でき、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
本発明に係る空気入りタイヤは、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
(実施の形態1)
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向において赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向において赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向とは、前記回転軸を回転の中心となる軸として回転する方向をいう。また、タイヤ内側とは、タイヤ幅方向においては前記赤道面に向かう方向をいい、タイヤ径方向においては前記回転軸に向かう方向をいう。
図1は、実施の形態1に係る空気入りタイヤの要部を示す子午面断面図である。同図に示す空気入りタイヤ1は、子午面方向の断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分に、ゴム材料からなるトレッド部10が設けられている。このトレッド部10の表面であるトレッド面11には、溝部30が複数形成されており、トレッド面11にはこの溝部30によって複数の陸部35が区画され、トレッドパターンが形成されている。また、タイヤ幅方向におけるトレッド部10の端部、即ち、ショルダー部14付近からタイヤ径方向内方側の所定の位置までは、サイドウォール部13が設けられている。このサイドウォール部13は、子午面断面における形状が、タイヤ幅方向外方に突出して湾曲した形状になっている。
また、サイドウォール部13のタイヤ径方向内方側には、ビード部24が設けられている。このビード部24は、当該空気入りタイヤ1の2ヶ所に設けられており、赤道面5を中心として対称になるように、赤道面5を中心としてタイヤ幅方向における両側に設けられている。また、ビード部24にはビードコア25が設けられており、ビードコア25のタイヤ径方向外方にはビードフィラー26が設けられている。
また、トレッド部10のタイヤ径方向内方には、複数のベルト層21が設けられており、ベルト層21のタイヤ径方向内方、及びサイドウォール部13の赤道面5側には、カーカス22が連続して設けられている。即ち、カーカス22は、タイヤ幅方向における両側に設けられるビード部24のうち、一方のビード部24からベルト層21のタイヤ径方向内方を通って他方のビード部24にかけて連続して設けられている。このカーカス22は、ビード部24でタイヤ幅方向内方からタイヤ幅方向外方に巻き返されており、詳しくは、ビードコア25のタイヤ幅方向内方側からビードコア25のタイヤ径方向内方側を通り、ビードコア25のタイヤ幅方向外方側にかけて巻き返されている。
ビード部24付近のカーカス22のうち、タイヤ幅方向外方に巻き返されている部分は、ビードフィラー26のタイヤ幅方向外方に位置している。これにより、ビードフィラー26は、タイヤ幅方向外方側とタイヤ幅方向内方側がカーカス22に接しており、タイヤ径方向内方側はビードコア25に接している。このため、ビードフィラー26は、カーカス22とビードコア25とに接触しており、これらに覆われている。さらに、このカーカス22の内側には、インナーライナ23がカーカス22に沿って形成されている。このように形成される空気入りタイヤ1は、加硫成型時には、内周面41がトレッド面11のトレッドパターンを成型可能な形状で形成されたモールド40でトレッド部10を覆い、加硫成型をする。
図2は、図1のA−A矢視図であり、モールドとビードフィラーとの関係を示す説明図である。空気入りタイヤ1の加硫成型時に用いるモールド40は、タイヤ周方向に複数に分割されており、分割された部分はモールドセクター42となっている。モールド40は、このように複数のモールドセクター42により構成されるが、前記内周面41はそれぞれのモールドセクター42に形成されており、モールドセクター42は、タイヤ周方向においてそれぞれのモールドセクター42が配設される範囲におけるトレッド面11を成型可能な形状で形成されている。このように複数のモールドセクター42により構成されるモールド40は、空気入りタイヤ1の加硫成型時には、複数のモールドセクター42を組合せて加硫成型をする。
また、ビードフィラー26は、子午面断面の断面積が、モールドセクター42の数と同じ数でタイヤ周方向に繰り返し変化している。即ち、ビードフィラー26は、加硫成型時に複数のモールドセクター42を組合せた際に、隣り合うモールドセクター42同士が接触する位置であるモールド分割位置43での子午面断面の断面積が、加硫成型時にモールドセクター42が配設されている位置での子午面断面の断面積よりも小さくなっている。
図3は、図2のB−B断面図である。図4は、図2のC−C断面図である。具体的には、ビードフィラー26は、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の高さH(図4)が、モールドセクター42のタイヤ周方向中央の位置であるモールドセクター中央位置44の、タイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の高さH(図3)よりも低くなっている。即ち、ビードフィラー26は、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からモールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々に高さHが高くなっており、反対に、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置からモールド分割位置43のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々に高さHが低くなっている。これにより、ビードフィラー26は、タイヤ周方向において繰り返し高さHが変化しており、モールドセクター42の数と同じ数でタイヤ周方向に繰り返し変化している。
なお、このビードフィラー26の高さHは、ビードフィラー26を子午面断面で見た場合に最もタイヤ径方向外方に位置する部分である外端部から、当該ビードフィラー26の同一断面において最も離れている部分までの距離となっている。
また、ビードフィラー26は、このようにタイヤ周方向において繰り返し高さHが変化しているので、子午面断面の断面積もタイヤ周方向おいて繰り返し大きさが変化している。即ち、ビードフィラー26は、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からモールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々に子午面断面の断面積が大きくなっており、反対に、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置からモールド分割位置43のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々に子午面断面の断面積が小さくなっている。これにより、ビードフィラー26は、タイヤ周方向において繰り返し子午面断面の断面積が変化しており、モールドセクター42の数と同じ数でタイヤ周方向に繰り返し変化している。このため、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の子午面断面の断面積は、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の子午面断面の断面積よりも小さくなっている。
また、ビードフィラー26はこのように形成されているため、断面積が小さく変化している部分において最小断面積となる部分の平均の断面積である平均最小断面積は、断面積が大きく変化している部分において最大断面積となる部分の平均の断面積である平均最大断面積よりも小さくなっている。即ち、平均最小断面積は、タイヤ周方向に繰り返し変化しているビードフィラー26の子午面断面の断面積のうち、断面積が小さく変化している部分であるモールド分割位置43付近において最小断面積となる部分におけるそれぞれの断面積の平均となっている。また、平均最大断面積は、タイヤ周方向に繰り返し変化しているビードフィラー26の子午面断面の断面積のうち、断面積が大きく変化している部分であるモールドセクター中央位置44付近において最大断面積となる部分におけるそれぞれの断面積の平均となっている。この平均最小断面と平均最大断面積とを比較した場合、平均最小断面積は、平均最大断面積よりも小さくなっている。
なお、この平均最小断面積は、平均最大断面積の70%以上であるのが好ましく、さらに好ましくは、平均最小断面積は、平均最大断面積の80%以上であるのが望ましい。
図5は、図2のD部詳細図である。また、ビードフィラー26は、タイヤ周方向に繰り返し変化している子午面断面の断面積のうち、断面積が小さく変化している部分において最小断面積となる部分である最小断面積部27のタイヤ周方向における位置が、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置しているのが好ましい。なお、この最小断面積部27は、タイヤ周方向において繰り返し変化する高さHのうち、高さHが低く変化している部分において高さHが最も低くなっている部分となっている。
つまり、タイヤ周方向において最小断面積部27が位置されるのが好ましい範囲の、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からのタイヤ周方向における角度をαとした場合に、角度αは、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置を0°としてタイヤ周方向における双方に15°の範囲内であるのが好ましい。さらに、最小断面積部27が位置されるのが好ましい範囲である角度αは、8°以内であるのが、より好ましい。即ち、最小断面積部27は、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−8°〜8°の範囲内に位置しているのが、より好ましい。
実施の形態1に係る空気入りタイヤ1は、製造時の加硫成型時には、モールド40でトレッド部10を覆って加硫成型を行なうが、このモールド40は、複数のモールドセクター42を組合せて使用する。このため、未加硫トレッドゴムの変形や流動挙動の関連の下で、トレッド部10の厚みがタイヤ周方向において不均一になる虞がある。具体的には、複数のモールドセクター42を組合せて加硫成型を行なうことにより、トレッド部10のタイヤ径方向における厚さは、タイヤ周方向におけるモールドセクター中央位置44付近よりも、モールド分割位置43付近の方が厚くなり易くなっている。
このため、トレッド部10は、厚さが不均一になる虞があるが、実施の形態1に係る空気入りタイヤ1では、ビードフィラー26の子午面断面の断面積が、モールドセクター中央位置44での子午面断面の断面積よりも、モールド分割位置43での子午面断面の断面積の方が小さくなっている。これにより、空気入りタイヤ1の加硫成型時にトレッド部10の厚さが厚くなり易い部分であるモールド分割位置43でのビードフィラー26の剛性を、トレッド部10の厚さが薄くなり易い部分であるモールドセクター中央位置44でのビードフィラー26の剛性よりも低くすることができる。従って、トレッド部10の剛性とビードフィラー26の剛性とを合わせて見た場合に、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差に起因するノイズや振動を抑制することができる。また、ビードフィラー26の剛性を調整することによりタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減しているので、トレッド部10が摩耗した場合でも、剛性差が低減した状態を維持することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、ビードフィラー26の平均最小断面積を、平均最大断面積よりも小さくしているので、複数設けられるモールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の剛性を、より確実に低減させることができる。これにより、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、ビードフィラー26の平均最小断面積を平均最大断面積の70%以上にしているので、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。つまり、ビードフィラー26の平均最小断面積を平均最大断面積の70%以上にすることにより、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の剛性が低くなり過ぎることを抑制できる。これにより、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置での剛性が低くなり過ぎることに起因してモールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのタイヤ径方向の剛性が低くなり過ぎ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することが困難になることを抑制できる。従って、ビードフィラー26の平均最小断面積を平均最大断面積の70%以上にすることにより、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の剛性が低くなり過ぎることを抑制でき、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、ビードフィラー26の最小断面積部27のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置させているので、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。つまり、最小断面積部27のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に15°以下にすることにより、ビードフィラー26において剛性が低い部分を、より確実にモールド分割位置43に近づけることができる。これにより、モールド分割位置43でのタイヤ径方向の剛性を、より確実に低下させることができ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を、より確実に低減することができる。また、理論的には、モールド分割位置43のタイヤ径方向における位置と最小断面積部27のタイヤ周方向における位置とは一致しているのが最良であるが、実生産ではこれらを完全に一致させるのは困難であり、また、完全に一致させた場合でも際立った優位性を得ることはできない。従って、ビードフィラー26の最小断面積部27のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置させることにより、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る空気入りタイヤは、実施の形態1に係る空気入りタイヤと略同様の構成であるが、カーカスの巻き返し部を調整することにより剛性の均一化を図っている点に特徴がある。他の構成は実施の形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図6は、実施の形態2に係る空気入りタイヤのモールドとカーカスの巻き返し部との関係を示す説明図である。図7は、図6のE−E断面図である。図8は、図6のF−F断面図である。なお、図6は、実施の形態1に係る図1のA−A矢視と同方向から空気入りタイヤを見た場合の説明図となっている。同図に示す空気入りタイヤ50は、実施の形態1に係る空気入りタイヤ1と同様に、カーカス51がビード部24でタイヤ幅方向内方からタイヤ幅方向外方に巻き返されている。詳しくは、カーカス22はビードコア25のタイヤ幅方向内方側からビードコア25のタイヤ径方向内方側を通り、ビードコア25のタイヤ幅方向外方側にかけて巻き返されており、いわゆるターンアッププライとなっている。また、このカーカス51の巻き返されている部分、即ちビードコア25及びビードフィラー26のタイヤ幅方向外方に位置する部分は、巻き返し部52となっている。
この巻き返し部52は、タイヤ径方向における高さが、モールドセクター42の数と同じ数でタイヤ周方向に繰り返し変化している。即ち、カーカス51の巻き返し部52は、モールド分割位置43でのタイヤ径方向における高さKが、加硫成型時にモールドセクター42が配設されている位置でのタイヤ径方向における高さKよりも低くなっている。
具体的には、カーカス51は、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置での巻き返し部52のタイヤ径方向の高さK(図8)が、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置での巻き返し部52のタイヤ径方向の高さK(図7)よりも低くなっている。即ち、カーカス51の巻き返し部52は、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からモールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々に高さKが高くなっており、反対に、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置からモールド分割位置43のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々に高さKが低くなっている。これにより、カーカス51の巻き返し部52は、タイヤ周方向において繰り返し高さKが変化しており、モールドセクター42の数と同じ数でタイヤ周方向に繰り返し変化している。
また、カーカス51は、巻き返し部52がこのように形成されているため、高さKが低く変化している部分において最小高さとなる部分の平均の高さである平均最小高さは、高さKが高く変化している部分において最大高さとなる部分の平均の高さである平均最大高さよりも低くなっている。即ち、平均最小高さは、タイヤ周方向に繰り返し変化している巻き返し部52の高さKのうち、高さKが低く変化している部分であるモールド分割位置43付近において最小高さとなる部分におけるそれぞれの高さKの平均となっている。また、平均最大高さは、タイヤ周方向に繰り返し変化している巻き返し部52の高さKのうち、高さKが高く変化している部分であるモールドセクター中央位置44付近において最大高さとなる部分におけるそれぞれの高さKの平均となっている。この平均最小高さと平均最大高さとを比較した場合、平均最小高さは、平均最大高さよりも低くなっている。
なお、この平均最小高さは、平均最大高さの70%以上であるのが好ましく、さらに好ましくは、平均最小高さは、平均最大高さの80%以上であるのが望ましい。
図9は、図6のG部詳細図である。また、カーカス51は、タイヤ周方向に繰り返し変化している巻き返し部52の高さKのうち、高さKが低く変化している部分において最小高さとなる部分である最小高さ部55のタイヤ周方向における位置が、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置しているのが好ましい。なお、この最小高さ部55は、タイヤ周方向において繰り返し変化する高さKのうち、高さKが低く変化している部分において高さKが最も低くなっている部分となっている。
つまり、タイヤ周方向において最小高さ部55が位置されるのが好ましい範囲の、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からのタイヤ周方向における角度をβとした場合に、角度βは、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置を0°としてタイヤ周方向における双方に15°の範囲内であるのが好ましい。さらに、最小高さ部55が位置されるのが好ましい範囲である角度βは、8°以内であるのが、より好ましい。即ち、最小高さ部55は、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−8°〜8°の範囲内に位置しているのが、より好ましい。
実施の形態2に係る空気入りタイヤ50は、カーカス51の巻き返し部52のタイヤ径方向における高さKが、加硫成型時に配設されるモールドセクター42のモールドセクター中央位置44での巻き返し部の高さKよりも、モールド分割位置43での巻き返し部52の高さKの方が低くなっている。これにより、空気入りタイヤ50の加硫成型時にトレッド部10の厚さが厚くなり易い部分であるモールド分割位置43での巻き返し部52の剛性を、トレッド部10の厚さが薄くなり易い部分であるモールドセクター中央位置44での巻き返し部52の剛性よりも低くすることができる。従って、トレッド部10の剛性とカーカス51の巻き返し部52の剛性とを合わせて見た場合に、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差に起因するノイズや振動を抑制することができる。また、巻き返し部52の剛性を調整することによりタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減しているので、トレッド部10が摩耗した場合でも、剛性差が低減した状態を維持することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、カーカス51を、ビードコア25のタイヤ幅方向内方側からビードコア25のタイヤ幅方向外方側にかけて巻き返し、ターンアッププライにしているので、巻き返し部52はビードコア25やビードフィラー26よりもタイヤ幅方向外側に配設されている。これにより、巻き返し部52のタイヤ径方向の高さKをタイヤ周方向において変化させる際に、容易に変化させることができる。この結果、容易にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、カーカス51の巻き返し部52の平均最小高さを、平均最大高さよりも低くしているので、より確実にモールド分割位置43のタイヤ周方向における位置での巻き返し部52の剛性を低減させることができ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、カーカス51の巻き返し部52の平均最小高さを平均最大高さの70%以上にしているので、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。つまり、巻き返し部52の平均最小高さを平均最大高さの70%以上にすることにより、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置での巻き返し部52の剛性が低くなり過ぎることを抑制できる。これにより、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置での剛性が低くなり過ぎることに起因してモールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのタイヤ径方向の剛性が低くなり過ぎ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することが困難になることを抑制できる。従って、巻き返し部52の平均最小高さを平均最大高さの70%以上にすることにより、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置での巻き返し部52の剛性が低くなり過ぎることを抑制でき、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、カーカス51が有する巻き返し部52の最小高さ部55のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置させているので、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。つまり、最小高さ部55のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に15°以下にすることにより、巻き返し部52において剛性が低い部分を、モールド分割位置43に近づけることができる。これにより、モールド分割位置43でのタイヤ径方向の剛性を、より確実に低下させることができ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を、より確実に低減することができる。また、理論的には、モールド分割位置43のタイヤ径方向における位置と最小高さ部55のタイヤ周方向における位置とは一致しているのが最良であるが、実生産ではこれらを完全に一致させるのは困難であり、また、完全に一致させた場合でも際立った優位性を得ることはできない。従って、巻き返し部52の最小高さ部55のタイヤ周方向における位置を、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向に−15°〜15°の範囲内に位置させることにより、より確実にタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
図10は、実施の形態1に係る空気入りタイヤの変形例を示す要部詳細断面図であり、モールド分割位置のタイヤ周方向における位置での子午面断面図である。なお、実施の形態1に係る空気入りタイヤ1では、ビードフィラー26の子午面断面の断面積をタイヤ周方向において繰り返し変化させる際に、ビードフィラー26の高さHを変化させることにより断面積を変化させているが、ビードフィラー26の断面積は、高さHを変化させること以外によって変化させてもよい。例えば、ビードフィラー26は、タイヤ周方向において幅Mを繰り返し変化させることにより、子午面断面の断面積の大きさをタイヤ周方向において繰り返し変化させてもよい。
この状態を、図3がモールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の子午面断面とし、図10がモールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の子午面断面とした場合で説明する。この場合、ビードフィラー26は、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の幅M(図10)が、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の幅M(図3)よりも狭くなっている。即ち、ビードフィラー26は、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置からモールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々に幅Mが広くなっており、反対に、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置からモールド分割位置43のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々に幅Mが狭くなっている。これにより、ビードフィラー26は、タイヤ周方向において繰り返し幅Mが変化しており、モールドセクター42の数と同じ数でタイヤ周方向に繰り返し変化している。なお、これらのビードフィラー26の幅Mは、タイヤ径方向における位置が同じ位置となる部分同士の幅Mを比較する。
ビードフィラー26は、このように幅Mが変化しており、幅Mが広くなるに従って子午面断面の断面積が大きくなっており、幅Mが狭くなるに従って子午面断面の断面積が小さくなっている。また、ビードフィラー26は、タイヤ周方向において繰り返し幅Mが変化しているので、子午面断面の断面積もタイヤ周方向おいて繰り返し大きさが変化しており、この幅Mは、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置での幅Mよりも、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置での幅Mの方が狭くなっている。このため、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の子午面断面の断面積は、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置でのビードフィラー26の子午面断面の断面積よりも小さくなっている。
また、ビードフィラー26がこのように形成される場合、タイヤ周方向に繰り返し変化している断面積のうち断面積が小さく変化している部分において最小断面積となる部分の子午面断面での幅Mが、断面積が大きく変化している部分において最大断面積となる部分の子午面断面での幅Mの70%以上となっているのが好ましい。これにより、ビードフィラー26の耐久性を確保することができる。つまり、ビードフィラー26の最小断面積となる部分の子午面断面での幅Mを、最大断面積となる部分の子午面断面での幅Mの70%以上にすることにより、最小断面積となる部分と最大断面積となる部分とのビードフィラー26の剛性差を、より確実に低減することができる。これにより、ビードフィラー26の剛性差が大きくなり過ぎることに起因して耐久性が低減することを抑制でき、ビードフィラー26を有するビード部24の耐久性を確保することができる。従って、ビードフィラー26の最小断面積となる部分の子午面断面での幅Mを、最大断面積となる部分の子午面断面での幅の70%以上にすることにより、ビードフィラー26の耐久性を確保することができる。この結果、耐久性を確保しつつ、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
換言すると、ビードフィラー26は、タイヤ径方向における位置が同一で、且つ、タイヤ周方向における位置が異なる位置の子午面断面の幅Mを比較した際に、最大幅となる部分の幅Mと最小幅となる部分の幅Mとの比が30%以下となるように形成することにより、耐久性を確保しつつ、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
また、実施の形態1に係る空気入りタイヤ1では、ビードフィラー26の高さHを変化させることによりビードフィラー26の断面積を変化させており、上述した実施の形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例では、ビードフィラー26の幅Mを変化させることによりビードフィラー26の断面積を変化させているが、ビードフィラー26の断面積は、これらを合わせて変化させてもよい。さらに、実施の形態1に係る空気入りタイヤ1では、ビードフィラー26の断面積を調整することにより、また、実施の形態2に係る空気入りタイヤ50では、カーカス51の巻き返し部52の高さKを調整することによりタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減しているが、この剛性差を低減する際には、ビードフィラー26の断面積とカーカス51の巻き返し部52の高さKとを、合わせて調整してもよい。即ち、ビードフィラー26の断面積と、カーカス51の巻き返し部52の高さKとの兼ね合いによりタイヤ径方向の剛性を調整し、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減してもよい。
また、実施の形態1に係る空気入りタイヤ1では、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々にビードフィラー26の子午面断面の断面積が大きくなっているが、ビードフィラー26の子午面断面の断面積が最も大きい部分は、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置以外の部分でもよい。同様に、実施の形態2に係る空気入りタイヤ50では、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置に向かうに従って、徐々にカーカス51の巻き返し部52の高さKが高くなっているが、巻き返し部52の高さKが最も高い部分は、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置以外の部分でもよい。ビードフィラー26の子午面断面の断面積が最も大きい部分や、巻き返し部52の高さKが最も高い部分は、概ねモールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置であればよく、この位置は、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置からタイヤ周方向にずれていていも構わない。
図11、図12は、実施の形態1に係る空気入りタイヤの変形例を示す要部詳細断面図である。また、実施の形態1に係る空気入りタイヤ1では、ビードフィラー26の断面積を調整することにより、また、実施の形態2に係る空気入りタイヤ50では、カーカス51の巻き返し部52の高さKを調整することにより、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減しているが、これら以外の方法によりタイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減してもよい。例えば、図11や図12に示すように、タイヤ周方向において剛性を高くしたい部分に補強層60を設けてもよい。つまり、この補強層60は、タイヤ周方向の全周に設けるのではなく、タイヤ径方向の剛性を高くする必要がある部分、即ち、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置に設けられている。これに対し、モールドセクター中央位置44のタイヤ周方向における位置には、補強層60は設けられていない。これにより、モールド分割位置43のタイヤ周方向における位置のタイヤ径方向の剛性を高くすることができ、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
なお、このように補強層60を設ける場合には、図11に示すようにビード部24付近に位置するカーカス22のタイヤ幅方向内方側でもよく、また、図12に示すようにビード部24付近に位置するカーカス22のタイヤ幅方向外方側でもよい。タイヤ周方向における所定位置のタイヤ径方向の剛性を高くすることができる位置であれば、補強層60を設ける位置は問わない。
また、実施の形態2に係る空気入りタイヤ50では、カーカス51はターンアッププライとなっているが、カーカス51はターンダウンプライとなって形成されていてもよい。つまり、カーカス51は、ビードコア25のタイヤ幅方向外方側からビードコア25のタイヤ径方向内方側を通り、ビードコア25のタイヤ幅方向内方側にかけて巻き返されていてもよい。この場合、ビードコア25の部分で巻き返され、ビードコア25及びビードフィラー26のタイヤ幅方向内方に位置する部分が巻き返し部52になる。このように、カーカス51をターンダウンプライとして形成する場合でも、ビードコア25やビードフィラー26のタイヤ幅方向内方に位置する巻き返し部52の高さを調整することにより、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減することができる。この結果、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる。
以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来の空気入りタイヤ1と本発明の空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は第1の試験と第2に試験との2種類行ない、第1の試験では騒音、乗り心地、及び高速耐力性を評価し、第2の試験では騒音、及び乗り心地を評価することにより行なった。
この性能評価試験は、タイヤサイズが205/55R16の空気入りタイヤ1を、リムサイズが16×6−1/2JJのホイールに組付け、内圧を200kPaに調整し、排気量が2500ccの車両に装着してテスト走行をすることにより行なった。また、試験を行なう空気入りタイヤ1は、8分割のモールド40、即ち、8個のモールドセクター42が組合されるモールド40により加硫成型された空気入りタイヤ1となっている。各試験項目の評価方法は、騒音の評価については、上記車両によって80km/hで走行した際のロードノイズを、ドライバーの官能評価によって評価した。評価結果は、第1の試験では後述する従来例1、第2の試験では後述する従来例3の騒音の評価を100とする指数で示している。この指数が大きいほどロードノイズが低くなっており、騒音に対する性能が優れている。
また、乗り心地の評価は、騒音の評価と同様に、上記車両によって80km/hで走行した際の乗り心地を、ドライバーの官能評価によって評価した。評価結果は、第1の試験では後述する従来例1、第2の試験では後述する従来例3の乗り心地の評価を100とする指数で示している。この指数が大きいほど乗り心地がよくなっており、乗り心地に対する性能が優れている。また、高速耐久性については、JIS標準高速条件にて行なった。試験結果は、後述する従来例1の高速耐久性を100とする指数で示しており、指数が大きいほど高速耐久性が優れている。
試験を行なう空気入りタイヤ1は、6種類の本発明と、従来の空気入りタイヤ1の一例である4種類の従来例、さらに、本発明と比較する4種類の比較例を、上記の方法で試験する。このうち、従来例1、2、比較例1、2、及び本発明1〜4は第1の試験で評価試験を行ない、従来例3、4、比較例3、4、及び本発明5、6は第2の試験で評価試験を行なう。このうち、第1の試験を行なう従来例1、2、比較例1、2、及び本発明1〜4は、セクター径の差、及びビードフィラー26の断面積が異なっている。なお、このセクター径の差とは、モールドセクター42を組合せた際の180°対角線上のタイヤ外径最大値のうち、モールドセクター中央位置44における値とモールド分割位置43における値との差である。
詳しくは、従来例1、2、及び本発明1〜4は、セクター径の差が0mmになっており、比較例1、2は、セクター径の差が0.5mmになっている。また、ビードフィラー26の断面積は、従来例1、2、及び比較例1、2は、タイヤ周方向において一定であり、本発明1〜4は、断面積の大きさがタイヤ周方向において繰り返し変化している。また、この第1の試験では、従来例1、比較例1、本発明1、2を第1グループとしており、従来例2、比較例2、本発明3、4を、第2グループとしている。また、これらの評価試験では、ビードフィラー26の子午面断面の断面積を指数で表示している。この指数は、第1グループでは、比較例1、本発明1、2のビードフィラー26の断面積を、従来例1のビードフィラー断面積を100とする指数で示しており、第2グループでは、比較例2、本発明3、4のビードフィラー26の断面積を、従来例2のビードフィラー断面積を100とする指数で示している。
第1の試験で評価試験を行なった本発明1〜4、比較例1、2、及び従来例1、2の評価試験で得られた結果を、表1、表2に示す。これらの表のうち、表1は第1グループ、即ち、従来例1、比較例1、本発明1、2の評価試験の結果を表示しており、表2は、従来例2、比較例2、本発明3、4の評価試験の結果を表示している。
表1、表2に示した上記の試験結果で明らかなように、ビードフィラー26の断面積をタイヤ周方向において繰り返し変化させ、モールド分割位置43での子午面断面の断面積を、モールドセクター中央位置44での子午面断面の断面積より小さくすることにより、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減できる。これにより、騒音と乗り心地とを、共に向上させることができる。即ち、ノイズと振動とを、共に抑制することができる(本発明1〜4)。また、ビードフィラー26の断面積をタイヤ周方向で変化させる際に、最大断面積と最小断面積との差を小さくすることにより、ビードフィラー26の剛性差が大きくなり過ぎることを抑制できる。これにより、ビードフィラー26の剛性差が大きくなり過ぎることに起因して耐久性が低減することを抑制でき、ビードフィラー26を有するビード部24の耐久性を確保することができる。この結果、耐久性を確保しつつ、より確実にノイズと振動とを共に抑制することができる(本発明1、3)。
また、第2の試験を行なう従来例3、4、比較例3、4、及び本発明5、6は、セクター径の差、及び巻き返し部52であるターンアップの高さKが異なっている。詳しくは、従来例3、4、及び本発明5、6は、セクター径の差が0mmになっており、比較例3、4は、セクター径の差が0.5mmになっている。また、ターンアップの高さKは、従来例3、4、及び比較例3、4は、タイヤ周方向において一定であり、本発明5、6は、ターンアップ高さKがタイヤ周方向において繰り返し変化している。また、この第2の試験では、従来例3、比較例3、本発明5を第3グループとしており、従来例4、比較例4、本発明6を、第4グループとしている。また、これらの評価試験では、ターンアップ高さKを指数で表示している。この指数は、第3グループでは、比較例3、本発明5のターンアップ高さKを、従来例3のターンアップ高さKを100とする指数で示しており、第4グループでは、比較例4、本発明6のターンアップ高さKを、従来例4のターンアップ高さKを100とする指数で示している。
第2の試験で評価試験を行なった本発明5、6、比較例3、4、及び従来例3、4の評価試験で得られた結果を、表3、表4に示す。これらの表のうち、表3は第3グループ、即ち、従来例3、比較例3、本発明5の評価試験の結果を表示しており、表4は、従来例4、比較例4、本発明6の評価試験の結果を表示している。
表3、表4に示した上記の試験結果で明らかなように、ターンアップの高さK、つまり、巻き返し部52の高さKをタイヤ周方向において繰り返し変化させ、モールド分割位置43での巻き返し部52の高さKを、モールドセクター中央位置44での巻き返し部52の高さKより低くすることにより、タイヤ周方向におけるタイヤ径方向の剛性差を低減できる。これにより、騒音と乗り心地とを、共に向上させることができる。即ち、ノイズと振動とを、共に抑制することができる(本発明5、6)。