以下、図面を参照して本発明の実施形態による露光装置及び方法、露光用マスク、並びにデバイス製造方法について詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による露光装置の概略構成を示す正面図である。図1に示す通り、本実施形態の露光装置EXは、マスクとしてのレチクルRを駆動するレチクル駆動機構RM、被露光体としてのウェハWを保持するウェハステージWST、レチクルRを露光光ELで照明する照明光学系ILS、露光光ELで照明されたレチクルRのパターン像をウェハステージWSTに保持されているウェハW上に投影する投影光学系PL、及び露光装置EX全体の動作を統括制御する主制御系MCを含んで構成される。
また、本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸式の露光装置であって、ウェハW上に液体Lqを供給する液体供給機構SWと、ウェハW上の液体Lqを回収する液体回収機構CWとを備えている。露光装置EXは、少なくともレチクルRのパターンをウェハW上に転写する露光動作を行っている間において、液体供給機構SWから供給した液体Lqにより投影光学系PLの投影領域PRを含むウェハW上の一部に液浸領域WRを形成する。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの先端部(終端部)の光学素子1とウェハWの表面との間を液体Lqで満たし、投影光学系PL及び液体Lqを介してレチクルRのパターン像をウェハW上に投影してウェハWを露光する。
図1に示す露光装置EXは、レチクルRとウェハWとを同期移動させつつ、レチクルRに形成されたパターンをウェハWに転写する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。詳細は後述するが、本実施形態の露光装置EXで用いられるレチクルRは回転可能であるため、ウェハWの移動に同期するようレチクルRの回転が制御される。尚、以下の説明においては、必要に応じて図中にXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でレチクルRとウェハWとの同期移動方向(走査方向)をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向に垂直な方向(非走査方向)をX軸方向に設定している。また、X軸、Y軸、及びZ軸周りの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向に設定する。
露光装置EXは、レチクル駆動機構RM及び投影光学系PLを支持するメインコラム2を備えている。メインコラム2は、床面に水平に載置されたベースプレート3上に設置されている。メインコラム2には、内側に向けて突出する上側段部2a及び下側段部2bが形成されている。照明光学系ILSは、メインコラム2の上部に固定された支持コラム4により支持されている。照明光学系ILSは、レチクルRを露光光ELで照明するものであり、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、及び露光光ELによるレチクルR上の照明領域を細長い矩形状(スリット状)に設定する可変視野絞り等を有している。
ここで、照明光学系ILSは、円筒形状又は円柱形状等の筒形状のレチクルR上の互いに異なる2つの照明領域に対して同時に露光光ELを照射する。図2は、本発明の第1実施形態による露光装置EXが備える照明光学系ILS及びレチクルRを介した露光光ELを投影光学系PLに導くレチクル個別光学系を示す側面図である。図2に示す通り、照明光学系ILSは、露光用光源LSからの露光光ELを用いてレチクルRを反射照明する反射光学系40を備えている。また、レチクルRを介した露光光EL(レチクルRで反射された露光光EL)を投影光学系に導くレチクル個別光学系41が設けられている。
反射光学系40は、偏光ビームスプリッタ42a、反射ミラー42b〜42e、及び補正用レンズ43a,43bを備えている。偏光ビームスプリッタ42aは、筒形状のレチクルRの上方(+Z方向)に配置されており、反射ミラー42bで下方(−Z方向)に反射された露光光ELをその偏光状態に応じて分岐する。例えば、s偏光成分を反射し、p偏光成分を透過する。尚、以下では説明の簡単のために、露光用光源LSからの露光光ELは偏光状態がランダムであるものとし、この露光光ELは偏光ビームスプリッタ42aにより1対1に分岐されるとする。尚、図2に示す露光用光源LSに代えて直線偏光の光を射出する2つの露光用光源を設け、互いの光の偏光状態が交差するように各々から射出される光を合波しても良いし、図3に示す通り、2つの露光用光源LSを設け、互いの光の偏光状態に制約なく、2つの露光スリットを個別にウェハW上に投影させても良い。この場合においては偏光ビームスプリッタを使用する必要はない。図3は、本発明の第1実施形態による露光装置EXが備える照明光学系ILS及びレチクルRを介した露光光ELを投影光学系PLに導くレチクル個別光学系の他の例を示す側面図である。
反射ミラー42cは偏光ビームスプリッタ42cで反射された露光光ELを補正用レンズ43aに向けて反射し、反射ミラー42d,42eは偏光ビームスプリッタ42cを透過した露光光ELを補正用レンズ43bに向けて反射する。補正用レンズ43aは、偏光ビームスプリッタ42aで反射された露光光EL(EL1)を、レチクルR上の照明領域IA1に照射する際、円筒状のレチクルRに対する照射位置及び照射形状を補正する。ここで、露光光EL1は、照明光学系ILSが備える可変視野絞り(図示省略)によりX方向に延びるスリット状にされているため、照明領域IA1の形状もX方向に延びるスリット状である。また、照明領域IA1のX方向の長さは、レチクルRのX方向の長さと同程度である。
補正用レンズ43bは、反射ミラー42d,42eで反射された露光光EL(EL2)を、レチクルR上の照明領域IA1とは異なる照明領域IA2に照射する。図2及び図3に示す例では、照明領域IA1と照明領域IA2とが円筒形状のレチクルRの回転軸に対して45°となるように配置されている場合を例に挙げて図示している。しかしながら、照明領域IA,IA2はレチクルR上において互いに重ならなければ、任意の配置とすることができる。照明領域IA2は、照明領域IA1と同様に、その形状がX方向に延びるスリット状であり、X方向の長さがレチクルRのX方向の長さと同程度である。このように、反射光学系40はレチクルR上の異なる2箇所(照明領域IA1,IA2)を反射照明する。
レチクル個別光学系41は、反射ミラー44a,44b、レチクル個別結像光学系45a,45b、反射ミラー46a,46b、偏光ビームスプリッタ47a、及び反射ミラー47bを備えている。反射ミラー44aは、レチクルR上の照明領域IA1に照射された露光光EL1のうち、レチクルRで反射された光を下方に反射する。レチクル個別結像光学系45aは、反射ミラー44aの下方に配置されて反射ミラー44aで反射されたスリット状の露光光EL1の形状及び円筒形状のレチクル面の湾曲を補正する。反射ミラー46aは、レチクル個別結像光学系45aの下方に配置されており、レチクル個別結像光学系45aを介した露光光EL1を+Y方向に偏向する。反射ミラー44bは、レチクルR上の照明領域IA2に照射された露光光EL2のうち、レチクルRで反射された光を下方に反射する。レチクル個別結像光学系45bは、反射ミラー44bの下方に配置されて反射ミラー44bで反射されたスリット状の露光光EL2の形状及び円筒形状のレチクル面の湾曲を補正する。反射ミラー46bは、レチクル個別結像光学系45bの下方に配置されており、レチクル個別結像光学系45bを介した露光光EL2を−Y方向に偏向する。
偏光ビームスプリッタ47aは、投影光学系PLの上方における光軸AX上であって、反射ミラー46aの+Y方向に配置されている。反射ミラー47bは、偏光ビームスプリッタ47aの上方であって、反射ミラー46bの−Y方向に配置されている。反射ミラー47bは、反射ミラー46bで−Y方向に反射された露光光EL2を−Z方向に偏向する。偏光ビームスプリッタ47aは、反射ミラー47bで偏向された露光光EL2を透過するとともに、反射ミラー46aで+Y方向に偏向された露光光EL1を−Z方向に偏向する。以上のレチクル個別光学系41によって、筒形状のレチクル面上の2つの照明領域IA1,IA2についての結像系の補正を個別に行うことができる。ここで、レチクル個別光学系41により、投影光学系PLの物体側の焦点位置とレチクルR上の照明領域IA1,IA2とを光学的に共役としてもよい。ここで、図2及び図3に示す通り、投影光学系PLの像側の焦点位置にはウェハWの表面が配置されている。よって、レチクルRの照明領域IA1,IA2は、投影光学系PLに関してウェハWの表面と共役とされている。尚、本実施形態では、露光用光源としてArFエキシマレーザ(波長193nm)を備えているものとする。更に、投影光学系PLとウェハWとの間に供給される液体Lqとしては、ArFエキシマレーザ光に対する吸収が少ない純水を用いている。
図4は、本発明の第1実施形態で用いられるレチクルRを示す図である。図4(a)に示す通り、筒形状のレチクルRは、中心軸CXの周りで回転可能である。また、図4(b)に展開して示す通り、レチクルRの周方向に沿って複数のパターン形成領域PAが設けられており、これらパターン形成領域PAの各々の内部にウェハW上に転写すべきパターンP1,P2が形成されている。図4(b)に示す例では、レチクルRの周方向に沿って、パターンP1と、パターンP1とは異なるパターンP2とが交互に形成されている。尚、図4(b)は、Y軸からZ軸へ向かう向き(−X方向から+X方向を見た場合の時計回り)にレチクルRの周上を内側から見た場合の展開図である。パターンP1,P2は、例えばクロム(Cr)等からなる金属膜を所定形状にパターニングしたものであり、その平面形状はウェハW上のショット領域に転写されるパターンと相似の形状である。尚、以下では、説明の簡単のために、パターンP1が文字「A」の形状であるとし、パターンP2が文字「B」の形状であるとする。
レチクルRの周方向に沿って異なるパターンP1,P2を設ける理由は、複数のパターンP1,P2を同時にウェハW上に露光転写するためである。図4(b)に示す例では、レチクルRの周方向に沿って8つのパターン形成領域PAが設けられているため、1つのパターン形成領域PAの周方向における一方の端部とレチクルRの中心軸とを通ってこれらに垂直な直線と、他方の端部とレチクルRの中心軸とを通ってこれらに垂直な直線とがなす角は45°である。一方、前述の通り、照明領域IA1,IA2は、レチクルRの回転軸に対して45°となるように、レチクルR上に配置されている。従って、露光光EL1,EL2は互いに異なるパターン形成領域PAに同時にそれぞれ照射される(異なるパターン形成領域PA中に照明領域IA1,IA2がそれぞれ形成される)ことになり、これにより異なるパターンP1,P2を同時にウェハW上に露光転写することができる。
また、レチクルRの周方向に沿って異なるパターンを複数設ける第1の理由は、レチクルRの曲率半径を大きくすることでパターンの湾曲を低減するためである。第2の理由は、レチクルRの慣性モーメントを大きくしてレチクルRの回転を安定させるためである。また、第3の理由は、ウェハステージWSTの加減速の回数を低減するためである。つまり、ウェハW上に設定されるショット領域の各々を露光する度にウェハステージWSTの加減速を行っていたのでは、露光精度の向上及びスループットの向上の両立を図ることが困難である。このため、一度の走査で極力多くのショット領域を露光するために、レチクルRの周方向に沿って異なるパターンP1,P2を複数設けている。尚、図4(b)に示す例では、図示の簡単のために、レチクルRの周方向にパターンP1とパターンP2との組みが4組形成されている例を挙げているが、パターンP1,P2の組みは、ウェハW上に配列されたショット領域のY方向(走査方向)における最大数又はその約数分形成するのが望ましい。
レチクル駆動機構RMは、メインコラム2の上側段部2a上に支持されており、中心軸CXがX方向に沿うようにレチクルRを保持するとともに、中心軸CXの周りで回転可能となるようレチクルRを保持する。このレチクル駆動機構RMは、レチクルRを一方向に一定速度で回転させることができるとともに、レチクルRの回転方向を反転させることができ、更にはY軸及びZ軸の周り(θY,θZ)でレチクルRの微動回転が可能である。また、レチクル駆動機構RMは、レチクルRを交換可能に保持している。例えば、レチクル駆動機構RMのレチクルRを保持する部分(保持部)が±X方向に移動可能に構成されており、この保持部を移動させることでレチクルRの交換が可能である。より具体的には、レチクルRの両端に配置される保持部の間隔を狭めることで±X方向から筒形状のレチクルRの上底部及び下底部をそれぞれ挟持してレチクルRを保持することができ、保持部の間隔を広げることでレチクルRの保持が解除され、これによりレチクルRを交換することができる。
また、レチクル駆動機構RMには、レチクルRの回転量を検出するロータリーエンコーダ等の回転検出装置5が設けられている。この回転検出装置5によってレチクルRの回転量がリアルタイムで検出され、その検出結果は主制御系MCに出力される。主制御系MCは、回転検出装置5の検出結果に基づいてレチクルRの回転量を制御することで、ウェハWとレチクルRとの同期制御を行う。
投影光学系PLは、レチクルRのパターン像を所定の投影倍率βでウェハW上に投影するものであって、ウェハW側の先端部に設けられた光学素子(レンズ)1を含む複数の光学素子が鏡筒PKに支持されて構成されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4又は1/5の縮小系である。尚、投影光学系PLは等倍系及び拡大系の何れであってもよい。鏡筒PKの外周部にはフランジ部FLGが設けられている。また、メインコラム2の下側段部2bには、防振ユニット6を介して鏡筒定盤7が支持されている。そして、投影光学系PLのフランジ部FLGが鏡筒定盤7に係合することによって、投影光学系PLが鏡筒定盤7に支持されている。尚、本実施形態では、投影光学系PLが、レチクルRに形成されたパターンの倒立像をウェハW上に投影するものであるとする。
投影光学系PLの先端部に設けられる光学素子1は鏡筒PKに対して着脱(交換)可能に取り付けられている。液浸領域WRの液体Lqが接触する光学素子1は螢石(フッ化カルシウム:CaF2)で形成されている。螢石は水との親和性が高いため、光学素子1の液体接触面のほぼ全面に液体Lqを密着させることができる。これにより、光学素子1とウェハWとの間の露光光ELの光路を液体Lqで確実に満たすことができる。尚、光学素子1は、純水との親和性が高い石英であってもよい。また、光学素子1の液体接触面に親水化(親液化)処理を施して、液体Lqとの親和性をより高めるようにしてもよい。
光学素子1の周囲には、光学素子1を囲むようにプレート部材8が設けられている。このプレート部材8は、液浸領域WRを広い範囲に亘って良好に形成するために設けられるものであり、ウェハWと対向する面(即ち下面)は平坦面となっている。投影光学系PLの先端部に設けられる光学素子1の下面(液体接触面)も平坦面になっており、プレート部材8の下面と光学素子1の下面とがほぼ面一となるよう配置される。光学素子1と同様に、プレート部材8の下面にも表面処理(親液化処理)を施すことが可能である。
ウェハステージWSTは、基板ホルダ9を介してウェハWを吸着保持して移動可能に構成されており、その下面には複数の非接触ベアリングである気体軸受(エアベアリング)10が設けられている。ベースプレート3上には、防振ユニット11を介して基板定盤12が支持されている。エアベアリング10は、基板定盤12の上面(ガイド面)に対して気体(エア)を吹き出す吹出口と、ウェハステージWST下面(軸受面)とガイド面との間の気体を吸引する吸気口とを備えており、吹出口からの気体の吹き出しによる反発力と吸気口による吸引力との釣り合いにより、ウェハステージWST下面とガイド面との間に一定の隙間を保持する。
つまり、ウェハステージWSTはエアベアリング10により基板定盤(ベース部材)12の上面(ガイド面)に対して非接触支持されており、リニアモータ等の基板ステージ駆動機構により、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、即ちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。更に、基板ホルダ9は、ウェハステージWSTに対してZ軸方向、θX方向、及びθY方向にも移動可能に設けられている。基板ステージ駆動機構は主制御系MCにより制御される。即ち、主制御系MCは、基板ステージ駆動機構を介して基板ホルダ9を制御し、ウェハWのフォーカス位置(Z位置)及び傾斜角を制御してウェハWの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込む。
ウェハステージWST(基板ホルダ9)上には移動鏡13が設けられており、移動鏡13に対向する位置にはレーザ干渉計14が設けられている。ウェハステージWST上のウェハWの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計14によりリアルタイムで計測され、計測結果は主制御系MCに出力される。主制御系MCはレーザ干渉計14の計測結果に基づいてリニアモータを含む基板ステージ駆動機構を駆動することでウェハステージWSTに支持されているウェハWの位置決めを行う。
また、ウェハステージWST(基板ホルダ9)上には、ウェハWを囲むように補助プレート15が設けられている。この補助プレート15は基板ホルダ9に保持されたウェハWの表面とほぼ同じ高さの平面を有している。この補助プレート15を設けることで、ウェハWのエッジ領域を露光する場合にも、補助プレート15とウェハWにより投影光学系PLの下に液体Lqが保持される。また、基板ホルダ9の上面における補助プレート15の外側には、ウェハWの外側に流出した液体Lqを回収する不図示の回収装置に接続された回収口16が設けられている。回収口16は補助プレート15を囲むように形成された環状の溝部であって、その内部にはスポンジ状部材や多孔質体等からなる液体吸収部材が配置されている。
ウェハステージWSTは、Xガイドステージ17によりX軸方向に移動自在に支持されている。ウェハステージWSTは、Xガイドステージ17に案内されつつXリニアモータ18によりX軸方向に所定ストロークで移動可能である。Xガイドステージ17の長手方向の両端には、このXガイドステージ17をウェハステージWSTとともにY軸方向に移動可能な一対のYリニアモータ19が設けられている。Yリニアモータ19の固定子とガイド部20の平坦部との間には非接触ベアリングである気体軸受(エアベアリング)が介在されており、Yリニアモータ19の固定子はエアベアリングによりガイド部20の平坦部に対して非接触支持される。
また、基板定盤12のX軸方向における両側の各々には、正面視L字状に形成され、Xガイドステージ17のY軸方向への移動を案内するガイド部20が設けられている。ガイド部20はベースプレート3上に支持されている。一方、Xガイドステージ17の下面の長手方向の両端部のそれぞれには凹形状の被ガイド部材21が設けられている。ガイド部20は被ガイド部材21と係合し、ガイド部20の上面(ガイド面)と被ガイド部材21の内面とが対向するように設けられている。ガイド部20のガイド面には非接触ベアリングである気体軸受(エアベアリング)が設けられており、Xガイドステージ17はガイド面に対して非接触支持されている。
液体供給機構SWは、投影光学系PLとウェハWとの間に液体Lqを供給するものであって、超純水製造装置30、温調装置31、及び供給ノズル32を含んで構成される。超純水製造装置30は純度の高い超純水を製造する装置である。温調装置31は超純水製造装置30で製造された超純水の温度を一定に制御する温調制御部、超純水を脱気する脱気部、温調及び脱気した超純水を収容するタンク、及び超純水を送出する加圧ポンプ等を備える。供給ノズル32は、ウェハWの表面に近接して配置しているとともに供給管33を介して温調装置31と接続されており、温調装置31から送出される超純水を液体Lqとして投影光学系PLとウェハWとの間に供給するものである。
供給管33の途中には、温調装置31からウェハW上に供給される液体Lqの量(単位時間当たりの液体供給量)を計測する流量計34が設けられている。流量計34はウェハW上に供給される液体Lqの量をモニタし、その計測結果を主制御系MCに出力する。主制御系MCは流量計34のモニタ結果に応じて温調装置31の液体供給動作を制御し、投影光学系PLとウェハWとの間に供給する単位時間当たりの液体Lqの供給量を制御する。また、供給管33のうち流量計34と供給ノズル32との間には、供給管33の流路を開閉するバルブ(図示省略)が設けられている。バルブの開閉動作は主制御系MCにより制御されるようになっている。
液体回収機構CWは、液体供給機構SWによって供給されたウェハW(又は、基板ホルダ9)上の液体Lqを回収するものであって、回収ノズル35、真空系36、流量計37、及び回収タンク38等を含んで構成される。回収ノズル35は、ウェハWの表面に近接して配置されており、回収管39を介して回収タンク38と接続されている。真空系36は真空ポンプを含んで構成されており、その動作は主制御系MCに制御される。真空系36が駆動することにより、ウェハW上の液体Lqは回収ノズル35を介して回収される。
回収ノズル35で回収された液体Lqは回収管39を介して回収タンク38に導かれる。回収管39の途中には、回収された液体Lqの量(単位時間当たりの液体回収量)を計測する流量計37が設けられている。流量計37はウェハW上から回収ノズル35を介して回収された液体Lqの量をモニタし、その計測結果を主制御系MCに出力する。主制御系MCは流量計37のモニタ結果に応じて真空系36の動作を制御し、投影光学系PLとウェハWとの間から回収される液体Lqの単位時間当たりの回収量を制御する。
回収タンク38は回収ノズル35を介して回収された液体Lqを一時的に蓄えるものであり、その底部には蓄えた液体Lqを排出する排出管が設けられている。この排出管から排出された液体Lqは、例えば廃棄されたり、或いはクリーン化されて超純水製造装置30等に戻され再利用される。
また、図1においては図示を省略しているが、露光装置EXは、ウェハステージWSTに支持されているウェハWの表面の位置を検出するフォーカス検出系を備えている。フォーカス検出系は、ウェハW上に液体Lqを介して斜め方向より検出用光束を投射する投光部と、ウェハWで反射した上記検出用光束の反射光を受光する受光部とを備えている。フォーカス検出系(受光部)の受光結果は主制御系MCに出力される。主制御系MCはフォーカス検出系の検出結果に基づいて、ウェハW表面のZ軸方向の位置情報とウェハWのθX及びθY方向の傾斜情報とを検出することができる。フォーカス検出系の構成としては、例えば特開平8−37147号公報に開示されているものを適用できる。
更に、露光装置EXは、オフ・アクシス方式のアライメントセンサを投影光学系PLの側方に備える。このアライメントセンサは、FIA(Field Image Alignment)方式のアライメントセンサであり、例えばハロゲンランプから射出される広帯域波長の光束を検出ビームとしてウェハW上に形成されたマークに照射し、ウェハWから得られる反射光をCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子で撮像し、撮像した画像信号を主制御系MCに供給する。主制御系MCは、この画像信号に画像処理を施して、撮像されたマークの位置情報を算出する。このアライメントセンサとしては、例えば特開平4−65603号公報に開示されているものを適用することができる。
尚、図1の一部断面図に示すように、液体供給機構SW及び液体回収機構CWは、鏡筒定盤7に対して分離支持されている。これにより、液体供給機構SW及び液体回収機構CWで生じた振動が、鏡筒定盤7を介して投影光学系PLに伝わることはない。
次に、上記構成の露光装置EXを用いてレチクルRのパターンをウェハWに転写する露光方法について説明する。図5は、本発明の第1実施形態による露光方法を示すフローチャートである。露光シーケンスが開始されると、ウェハWがウェハステージWSTにロードされる(ステップS11)。尚、ウェハWをロードしている最中に、必要であればレチクルRの交換も行われる。
次に、EGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)計測が行われる(ステップS12)。ここで、EGA計測とは、ウェハW上に予め設定された代表的な一部(3〜9個)のショット領域の各々に付随して形成されたマーク(アライメントマーク)の位置情報と、その設計情報とに基づいてウェハW上に設定された全てのショット領域の配列の規則性を統計的な手法で決定する演算方法をいう。具体的には、アライメントセンサを用いてウェハステージWSTにロードされたウェハWに形成された代表的な数個のマークの位置情報が計測され、この計測結果に基づいて主制御系MCがEGA演算を行い、ウェハW上に設定された全てのショット領域の配列の規則性を決定する。
次いで、主制御系MCは、液体供給機構SWに設けられた温調装置31に対して制御信号を出力して超純水製造装置30で製造された超純水の温度を一定にさせるとともに、温度が一定にされた超純水を単位時間当たり所定量の割合で送出させる。温調装置31から送出された超純水は、供給管33及び供給ノズル32を介して投影光学系PLの先端部に設けられる光学素子1とウェハWとの間に液体Lqとして供給される。
また、主制御系MCは、液体供給機構SWによる液体Lqの供給に伴って液体回収機構CWの真空系38を駆動し、回収ノズル35、回収管39を介して単位時間当たり所定量の液体Lqを回収タンク38に回収する。これにより、投影光学系PLの先端部の光学素子1とウェハWとの間に液体Lqの液浸領域WRが形成される(ステップS13)。ここで、液浸領域WRを形成するために、主制御系MCは、例えばウェハW上に対する液体供給量とウェハW上からの液体回収量とがほぼ同じ量になるように、液体供給機構SW及び液体回収機構CWのそれぞれを制御する。
投影光学系PLとウェハWとの間に一定量の液体Lqが常時供給されている状態で、主制御系MCは、ウェハステージWSTを駆動して最初の露光開始位置へウェハWをステップ移動させる(ステップS14)。ここで、被露光体としてのウェハWについて説明する。図6は、ウェハWの平面図の一例を示す図である。図6に示す通り、ウェハW上にはX方向及びY方向に複数のショット領域SA1〜SAn(nは2以上の自然数)が配列されている。尚、図6においては、説明の簡単のために、Y方向(走査方向)におけるショット領域の最大数を4にしている。ウェハWを露光する場合には、図6に示すショット領域SA1〜SAnの順で露光が行われるとする。このため、上記のステップS14では、ショット領域SA1が投影領域PRの+Y側の近傍に配置されようにウェハステージWSTが駆動される。
ウェハWの移動が完了すると、主制御系MCは、ウェハステージWSTに制御信号を出力して−Y方向への加速を開始させるとともに、レチクル駆動機構RMに制御信号を出力して中心軸CXの周りでのレチクルRの回転を開始させる。尚、ウェハWが−Y方向に移動している場合には、主制御系MCはY軸からZ軸へ向かう向き(−X方向から+X方向を見た場合の時計回り)にレチクルRを回転させる。ウェハWの−Y方向への移動速度及びレチクルRの角速度が一定になって同期が取れた後で、ショット領域SA1の−Y側の端部が投影領域PRに達すると、主制御系MCは露光用光源LSから露光光ELを射出させる。
露光用光源LSから射出された露光光ELは、照明光学系ILSが備える反射光学系40の偏光ビームスプリッタ42aに入射し、その偏光状態に応じて分岐された後、レチクルR上の照明領域IA1,IA2にそれぞれ照射される。つまり、照明領域IA1と照明領域IA2には、異なった偏光状態の露光光EL1,EL2がそれぞれ入射する。ここで、図3に示す通り、2つの照明領域IA1,IA2に対して個別に露光用光源LSを配置し、露光スリットを分離することにより、変更の状態の制約を無くしても良い。レチクルR上の照明領域IA1,IA2にそれぞれ照射された露光光EL1,EL2のうち、レチクルRで反射された光(パターン像)は、レチクル個別光学系41により投影光学系PLに入射し、投影光学系PL及び液体Lqを介してウェハW上に投影される。走査露光時には、投影領域PRにレチクルRの一部のパターン像が投影されている状態で、投影光学系PLに対して、レチクルRのパターンP1,P2が+Y方向に速度Vで移動するのに同期して、ウェハWが−Y方向に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。
ここで、図4に示すレチクルRは、周方向に沿って2種類のパターンP1,P2が交互に形成されており、照明領域IA1及びレチクルRの中心軸を通ってこれに垂直な直線と、照明領域IA2及びレチクルRの中心軸を通ってこれに垂直な直線とのなす角が45°となるように照明領域IA1,IA2が配置されているため、レチクルRが45°回転するとショット領域SA1の露光が終了する。これにより、異なるパターンP1,P2が同時にショット領域SA1に二重露光される。
尚、上記のEGA計測により、ウェハW上のショット領域の配列誤差があり、又はショット領域の変形が生じているとの計測結果が得られた場合には、ウェハステージWSTの移動速度、レチクルRの回転速度、レチクルRの回転軸の微調整、又は投影光学系PLの光学特性の調整等を行って、ショット領域の配列誤差や変形に応じてウェハW上に投影するパターン像を補正するのが望ましい。
最初に露光すべきショット領域SA1に対する走査露光が終了すると、ウェハステージWSTの減速を行わずにウェハステージWSTの−Y方向への移動を継続するとともに、チクルRの回転を継続する。そして、ショット領域SA1の+Y側に配置されているショット領域SA2の露光を同様に行う。つまり、本実施形態では、一度の走査でY方向に配列された1列分のショット領域の露光が継続して行われる(ステップS15)。尚、ウェハWの露光を行う場合には、ウェハWの移動方向と同一方向に液体Lqを流すのが望ましい。
ショット領域SA2の露光を終えると、主制御系MCは、ウェハステージWSTを減速させる。そして、1枚のウェハWの露光が終了したか否か、つまりウェハW上の全ての露光を終えたか否かを判断する(ステップS16)。ここでは、ショット領域SA1,SA2の露光のみを終えたばかりであり、他に露光すべきショット領域が残っているため、ステップS16の判断結果は「NO」になる。次いで、主制御系MCはレチクル駆動機構RMに制御信号を出力してレチクルRの回転方向を反転させる(ステップS17)。つまり、Z軸からY軸へ向かう向き(−X方向から+X方向を見た場合の反時計回り)にレチクルRを回転させる。次に、主制御系MCは、ウェハステージWSTを駆動して次の露光開始位置へウェハWをステップ移動させる(ステップS18)。具体的には、次に露光すべきショット領域SA3が投影領域PRの−Y側の近傍に位置するようにウェハステージWSTを駆動する。尚、スループット向上のために、ステップS18のウェハステージWSTの移動を行っている最中にステップS17のレチクルの回転方向反転を行うのが望ましい。また、レチクルRの回転方向の反転動作中は、レチクルRに対する露光光EL1,EL2の照射を行わないように(ウェハWの露光を一旦停止するように)しておくことが望ましい。
以上のウェハWの移動が完了すると、主制御系MCは、ウェハステージWSTの移動方向を逆方向に設定し、ウェハステージWSTに制御信号を出力して+Y方向への加速を開始させる(ステップS19)。尚、レチクルRはステップS17の処理でZ軸からY軸へ向かう向き(−X方向から+X方向を見た場合の反時計回り)への回転が開始されているものとする。ウェハWの+Y方向への移動速度及びレチクルRの角速度が一定になって同期が取れた後で、ショット領域SA3の+Y側の端部が投影領域PRに達すると、主制御系MCは照明光学系ILSから露光光EL1,EL2を射出させて反射光学系40を介してレチクルRを照明し、レチクルRのパターンの像を投影光学系PL及び液体Lqを介してウェハW上に投影する。
このときには、投影領域PRにレチクルRの一部のパターン像が投影されている状態で、投影光学系PLに対して、レチクルRのパターンP1,P2が−Y方向に速度Vで移動するのに同期して、ウェハWが+Y方向に速度β・Vで移動する。そして、Y方向に配列されたショット領域SA3〜SA6を順次露光する。尚、図4に示すレチクルRは、周方向に沿って4組みのパターンP1,P2が形成されているため、レチクルRが360°回転(1回転)すると1列分のショット領域SA3〜SA6の露光が終了する。
以下同様に、Y方向に配列された1列のショット領域に対してパターンの転写を行っている期間中は、レチクルRの回転方向及びウェハWの移動方向を反転することなくレチクルRを一方向に回転させる(パターンP1,P2を一定方向に移動させる)とともにウェハWをY方向の一方向に移動させ、Y方向に配列された1列のショット領域の露光を終える度に、レチクルRの回転方向を反転するとともにウェハステージWSTの移動方向(走査方向)を反転して、列単位での露光処理が行われる(ステップS15〜S19)。以上の動作を繰り返し、主制御系MCがウェハW上の全ての露光を終えたと判断した場合(ステップS16の判断結果が「YES」である場合)には、主制御系MCはウェハステージWST上に載置されているウェハWをアンロードする(ステップS20)。そして、次に露光すべきウェハWの有無を判断する(ステップS21)。露光すべきウェハWがある場合には判断結果が「YES」となり、ステップS11以降の処理を繰り返す。一方、露光すべきウェハWが無い場合には、判断結果が「NO」となり、一連の露光処理が終了する。
以上説明した通り、本実施形態においては、異なるパターンP1,P2が側面の周方向に形成された筒形状のレチクルRを回転させつつ、レチクルR上の異なる照明領域IA1,IA2に露光光EL1,EL2をそれぞれ照明し、パターンP1,P2の二重露光を同時に行っている。これにより、1つのレチクルを用いてウェハW上の全てのショット領域を露光した後に、露光に用いたレチクルを他のレチクルに交換して再度ウェハW上の全てのショット領域を露光する従来に比べて、ウェハW上の各ショット領域の露光は1度のみで良く、しかもレチクルの交換を必要としないため、露光処理に要する時間を格段に短縮することができ、この結果としてスループットを大幅に向上させることができる。
また、本実施形態では、Y方向に配列された1列のショット領域を一度の走査で露光している。そして、Y方向に配列された1列のショット領域の露光を終える度に、レチクルRの回転方向を反転するとともに、ウェハステージWSTの移動方向(走査方向)を逆向きにすることで、複数列のショット領域を露光している。このため、従来に比べてウェハステージWSTの加減速の回数を大幅に低減することができる。また、本実施形態では、複数のパターンP1,P2が側面上に形成された筒形状のレチクルRを用いているため、平面系のレチクルに複数のパターンを形成する場合や、複数のレチクルステージを設ける場合に比べて露光装置EXの大幅なコスト上昇を招くことはない。
また、本実施形態の露光装置EXでは、従来のようにショット領域毎にウェハステージWSTの走査方向を頻繁に変えつつ露光を行っている訳ではなく、ウェハステージWSTの走査方向を変えずに走査方向(Y方向)に配列された1列分のショット領域を連続して露光している。よって、投影光学系PLの光学素子1とウェハWとの間の液浸領域WRを安定させることができ、露光精度を向上させることができる。また、例えば走査方向を頻繁に変化させた場合には、液浸領域WRに気泡が混入して欠陥が生ずる可能性も考えられるが、本実施形態では走査方向を変化させる回数が従来に比べて遥かに少ないため、かかる欠陥が生ずる確率を低減させることができる。
更に、本実施形態では、偏光状態の異なる露光光EL1,EL2をレチクルRのパターンP1,P2にそれぞれ照射し、ウェハWに対してパターンP1,P2の二重露光を同時に行っている。ここで、投影光学系PLの開口数(NA)が大きくなると、微小なパターンを形成する上でウェハWに照射される露光光ELの偏光状態が重要となる。特に、液浸式の露光装置EXが備える投影光学系PLは高NAであるため、露光光ELの制御が極めて重要になる。ショット領域内の全域に微細なパターンを精度良く形成するためには、ショット領域内に形成するパターンの位置に応じて露光光ELの偏光状態を制御する必要がある。具体的は、例えばショット領域の周辺部に形成されるパターンはs偏光成分のみを用いて露光するといった具合である。よって、例えばs偏向成分の露光光ELが照射されるパターンP1を用いてショット領域の周辺のパターンを形成するようにすれば、微細なパターンを高精度に形成することができる。以上の通り、本実施形態では、パターンP1,P2にそれぞれ異なる偏光状態の露光光EL1,EL2が照射されるため、微細なパターンを高精度に形成する上で極めて好適である。
尚、上記実施形態では、周方向に異なるパターンP1,P2が4組み形成されているレチクルRを用いて露光を行う場合を例に挙げて説明したが、レチクルRの周方向に形成されるパターンP1,P2の組数は任意で良い。また、上記の実施形態では、図4に示すレチクルRに形成されたパターンP1,P2がウェハW上に転写されるべきパターンの相似形である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、ウェハW上のショット領域に転写されるべきパターンを周方向に延ばした形状であってもよい。かかる形状のパターンが形成されたレチクルRを用いる場合には、その延ばした程度に応じてレチクルRの回転速度を速める必要がある。
また、上記実施形態では、レチクルRの照明領域IA1を介した露光光EL1と照明領域IA2を介した露光光EL2とをレチクル個別光学系41で投影光学系PLへ導いている訳であるが、その仕方としては図7に示す例が挙げられる。図7は、レチクルRを介した露光光のウェハW上への投影方法の例を示す図である。図7(a),(b)においては、ウェハW上に設定されたショット領域SAと、レチクルRのパターンが投影されるウェハW上における2つの露光領域EA1,EA2を図示している。露光領域EA1は投影光学系PL及びレチクル個別光学系41に関してレチクルR上の照明領域IA1と共役であり、露光領域EA2は投影光学系PL及びレチクル個別光学系41に関してレチクルR上の照明領域IA2と共役である。
図7(a)に示す例(図2に対応)においては、ウェハW上において露光領域EA1と露光領域EA2とが重なり合うように(重複するように)、レチクルRの照明領域IA1,IA2の各々を介した露光光EL1,EL2がレチクル個別光学系41によって合成される。このため、ショット領域SAの露光時には、X方向に延びる合成された1本のスリット状の露光光ELにより、ショット領域SA内がY方向に一度だけなぞられることになる。尚、ショット領域SAの露光開始時において、露光領域EA1,EA2はショット領域SAの端部e1に同時に到達し、また、露光終了時において、露光領域EA1,EA2はショット領域SAの端部e2に同時に到達する。このため、主制御系MCは、露光領域EA1(照明領域IA1)の形状を規定する不図示のレチクルブラインドと、露光領域EA2(照明領域IA2)の形状を規定する不図示のレチクルブラインドとを、同様の開閉動作を同期して行うように制御する。
これに対し、図7(b)に示す例(図3に対応)においては、ウェハW上において露光領域EA1と露光領域EA2とが重なり合わずY方向に所定量だけずれるように、レチクルRの照明領域IA1,IA2を介した露光光EL1,EL2がレチクル個別光学系41によって投影光学系PLに入射される。このため、ショット領域SAの露光時には、X方向に延びる2本のスリット状の露光光ELにより、ショット領域SA内がY方向に二度なぞられることになる。この場合には、ショット領域SAの露光開始時において、露光領域EA1,EA2がショット領域SAの端部e1に到達するタイミングが異なるとともに、露光終了時において、露光領域EA1,EA2がショット領域SAの端部e2に到達するタイミングが異なる。このため、主制御系MCは、露光領域EA1,EA2のY方向の間隔に応じて、各々のレチクルブラインドの開閉動作させるタイミングをずらす制御を行う。この場合、2つのレチクルRに対して偏光の制約を受けず、偏光ビームスプリッタを使用しなくてもよいメリットがある。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の露光装置の全体構成は、図1に示す第1実施形態の露光装置EXとほぼ同様の構成であるが、使用するレチクルR、照明光学系ILSの反射光学系、及びレチクル個別光学系の構成が異なる。図8は、本発明の第2実施形態による露光装置EXが備える照明光学系ILS及びレチクルRを介した露光光ELを投影するレチクル個別光学系を示す斜視図である。図8に示す通り、照明光学系ILSは、露光用光源(図示省略)からの露光光ELを用いてレチクルRを反射照明する反射光学系50を備えている。また、レチクルRを介した露光光EL(レチクルRで反射された露光光EL)を投影光学系PLに導くレチクル個別光学系51が設けられている。
反射光学系50は、照明光学系52a,52b、反射ミラー53a,53b、及び補正用レンズ54a,54bを備えている。補正用レンズ54a,54bは、不図示の露光用光源から射出されて不図示のレチクルブラインドによりスリット状に整形された露光光ELの形状及び円筒形状のレチクルRに対する照射位置を補正する。尚、補正用レンズ54a,54bには、偏光状態が異なる露光光EL(EL3,EL4)がそれぞれ入射するものとする。例えば、補正用レンズ54aにはs偏光成分が入射し、補正用レンズ54bにはp偏光成分が入射する。ここで、補正用レンズ54a,54bの各々に入射させる露光光は、ランダムな偏光状態の露光光を射出する露光用光源と、この露光用光源から射出された露光光を偏光状態に応じて分岐する偏光ビームスプリッタとを用いて生成することができる。或いは、補正用レンズ54a,54bの各々に対応付けて直線偏光の露光光を射出する露光用光源を2台用意し、これらから射出される露光光の偏光状態が互いに直交するように露光用光源を配置することでも生成することができる。また、図3に示す通り、2つの照明領域を介した露光光を分離して投影光学系PLに入射させることにより、偏光状態の制約を受けずに済む。即ち、偏光ビームスプリッタを使用しないで済む。
反射ミラー53aは、レチクルRの上方であって照明光学系52aの光軸上に配置されており、照明光学系52aを介して+Y方向進む露光光EL3を下方(−Z方向)に偏向する。また、反射ミラー53bは、レチクルRの上方であって照明光学系52bの光軸上に配置されており、照明光学系52bを介して+Y方向に進む露光光EL4を下方に偏向する。補正用レンズ54aは、反射ミラー53aの下方に配置されており、反射ミラー53aで下方に偏向された露光光EL3について、レチクルR上の照明領域IA3に対する照射位置及び照射形状を補正する。また、補正用レンズ54bは、反射ミラー53bの下方に配置されており、反射ミラー53bで下方に偏向された露光光EL4について、レチクルR上の照明領域IA4に対する照射位置及び照射形状を補正する。尚、照明領域IA4は、照明領域IA3の−X方向に配置されている。このように、反射光学系50はレチクルR上の異なる2箇所(照明領域IA3,IA4)を反射照明する。ここで、本実施形態においても、レチクルRの照明領域IA3,IA4の各々に照射される露光光EL3,EL4は、照明光学系ILSが備える可変視野絞り(図示省略)によりX方向に延びるスリット状にされている。このため、照明領域IA3,IA4の形状もX方向に延びるスリット状である。
レチクル個別光学系51は、反射ミラー55a,55b、レチクル個別結像光学系56a,56b、リレー光学系57、偏光ビームスプリッタ58a、反射ミラー58b、及び反射ミラー59を備えている。反射ミラー55aは、レチクルR上の照明領域IA3に照射された露光光EL3のうち、レチクルRで反射された光を下方に反射する。レチクル個別結像光学系56aは、反射ミラー55aの下方に配置されて反射ミラー55aで反射されたスリット状の露光光EL3の形状及び円光形状のレチクル面の湾曲を補正する。反射ミラー55bは、レチクルR上の照明領域IA4に照射された露光光EL4のうち、レチクルRで反射された光を下方に反射する。レチクル個別結像光学系56bは、反射ミラー55bの下方に配置されて反射ミラー55bで反射されたスリット状の露光光EL4の形状及び円筒形状のレチクル面の湾曲を補正する。リレー光学系57は、レチクル個別結像光学系56bを介した露光光EL4を、−X方向及び−Z方向に順次反射することにより−X方向にシフトする。反射ミラー58bは、リレー光学系57を介した露光光EL2を+Y方向に反射する。
偏光ビームスプリッタ58aは、レチクル個別結像光学系56aの光軸上であって、反射ミラー58bの+Y方向に配置されており、レチクル個別結像光学系56aを介して下方に進む露光光EL3を+Y方向に反射するとともに、反射ミラー58bで反射されて+Y方向に進む露光光EL4を透過する。反射ミラー59は、偏光ビームスプリッタ58aの+Y方向であって、投影光学系PLの上方(+Z方向)に配置されており、偏光ビームスプリッタ58aを介した+Y方向に進む露光光EL(EL3,EL4)を下方に偏向する。
以上のレチクル個別光学系51によって、円筒形状のレチクル面上の2つの照明領域IA3,IA4についての結像系の補正を個別に行うことができる。ここで、レチクル個別光学系51により、投影光学系PLの物体側の焦点位置とレチクルR上の照明領域IA3,IA4とを光学的に共役としても良い。ここで、投影光学系PLの像側の焦点位置にはウェハWの表面が配置されているため、レチクルRの照明領域IA3,IA4は、投影光学系PLに関してウェハWの表面と共役とされている。尚、レチクル個別光学系51によってレチクルRの照明領域IA3,IA4をそれぞれ介した露光光EL3,EL4を投影光学系PLに入射させる場合には、図7(a)に示す通り、ウェハW上において照明領域IA3と共役な露光領域(図7中における露光領域EA1)と照明領域IA4と共役な露光領域(図7中における露光領域EA2)とが重なり合うように投影しても良く、或いは、図7(b)に示す通り、ウェハW上において各露光領域が重なり合わずY方向に所定量だけずれるように投影しても良い。また、本実施形態においても、露光用光源としてArFエキシマレーザ(波長193nm)を備えているものとし、投影光学系PLとウェハWとの間には、液体LqとしてArFエキシマレーザ光に対する吸収が少ない純水が供給されているとする。
次に、本実施形態で用いられるレチクルRについて詳細に説明する。本実施形態で用いられるレチクルRは、図8に示す通り筒形状であって、図4(a)に示すレチクルRと同様に、中心軸CXの周りで回転可能である。但し、その側面が第1領域Z1と第2領域Z2とに分割されている点が異なる。図9は、本発明の第2実施形態で用いられるレチクルRに形成されるパターンの一例を示す展開図である。レチクルRの第1領域Z1には、図9(a)に展開して示す通り、レチクルRの周方向に沿って複数のパターン形成領域PA1が設けられており、これらパターン形成領域PA1の各々の内部にはウェハW上に転写すべきパターンP1が形成されている。尚、図8に示す照明領域IA3のX方向の長さはパターン形成領域PA1のX方向の長さ程度に設定されている。
また、レチクルRの第2領域Z2には、図9(b)に展開して示す通り、レチクルRの周方向に沿って複数のパターン形成領域PA2が設けられており、これらパターン形成領域PA2の各々の内部にウェハW上に転写すべきパターンP2が形成されている。尚、図9(a),(b)は、図4(b)と同様に、Y軸からZ軸へ向かう向き(−X方向から+X方向を見た場合の時計回り)にレチクルRの周上を内側から見た場合の展開図である。このように、本実施形態で用いるレチクルRは、レチクルRの中心軸CXの方向に沿って複数列のパターンを有している。尚、図8に示す照明領域IA4のX方向の長さはパターン形成領域PA2のX方向の長さ程度に設定されている。
これら複数列に亘るパターンP1,P2は、例えばクロム(Cr)等からなる金属膜を所定形状にパターニングしたものであり、その平面形状はウェハW上のショット領域に転写されるパターンと相似の形状である。但し、第1実施形態とは異なり、第1領域Z1には同じパターンP1が周方向に複数形成されており、第2領域Z2にはパターンP1とは異なるパターンP2が周方向に複数形成されている。尚、本実施形態のレチクルRにおいても、レチクルRの曲率半径を大きくし、慣性モーメントを大きくし、更にはウェハステージWSTの加減速の回数を低減するためにパターンP1,P2が周方向に沿って複数形成されている。また、図9(a),(b)に示す例では、図示の簡単のために、レチクルRの周方向に8つのパターンP1,P2がそれぞれ形成されている例を挙げているが、ウェハW上に配列されたショット領域のY方向(走査方向)における最大数又はその約数分のパターンP1,P2をそれぞれ形成するのが望ましい。
本実施形態におけるウェハWの露光は、図5に示す第1実施形態の露光方法と同様の方法を用いて行われる。つまり、レチクルRを一方向に回転させつつウェハWをY方向に移動させながら走査方向(Y方向)に配列された1列分のショット領域を連続して露光し、その1列分のショット領域を終えると、レチクルRの回転方向を反転するとともにウェハWの移動方向を反転させて次の列を露光する動作を繰り返し行う。本実施形態では、露光光EL3,EL4をレチクルR上の照明領域IA3,IA4にそれぞれ照射することによりパターンP1,P2の二重露光を同時に行うことができる。このため、従来の二重露光に比べて露光処理に要する時間を格段に短縮することができ、この結果としてスループットを大幅に向上させることができる。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様の露光方法により露光を行っているため、従来に比べてウェハステージWSTの加減速の回数を大幅に低減することができる。また、第1実施形態と同様に、複数のパターンP1,P2が形成された筒形状のレチクルRを用いているため、平面系のレチクルに複数のパターンを形成する場合や、複数のレチクルステージを設ける場合に比べて露光装置EXの大幅なコスト上昇を招くことはない。更に、本実施形態においても、投影光学系PLの光学素子1とウェハWとの間の液浸領域WRを安定させることができるため、露光精度を向上させることができるとともに、液浸領域WRへの気泡の混入等による欠陥の発生確率を低減させることができる。また、パターンP1,P2にそれぞれ異なる偏光状態の露光光EL3,EL4を照射して露光しているため、微細なパターンを高精度に形成する上で極めて好適である。
尚、本実施形態においても、第1領域Z1のパターンP1及び第2領域Z2のパターンP2として、ウェハWに転写されるべきパターンと相似形のパターン以外に、レチクルRの周方向に延びたパターンを用いることができる。但し、かかる形状のパターンが形成されたレチクルRを用いる場合には、その延ばした程度に応じてレチクルRの回転速度を速める必要がある。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の露光装置の全体構成は、図1に示す第1実施形態の露光装置EXとほぼ同様の構成であるが、使用するレチクルR及び露光光ELをレチクルRに照射する照明光学系ILSの構成が異なる。本実施形態で用いられるレチクルRは、図4に示す第1実施形態で用いられるレチクルRと同様に、中心軸CXの周りで回転可能な筒形状のものであって、その周方向に沿って複数のパターン形成領域PAが設けられている。但し、図4に示すものとは周方向に形成されるパターンP1,P2の配列が異なるとともに、筒形状の本体部分が露光光ELを透過する光透過材料で形成されている点が異なる。図11は、本発明の第3実施形態で用いられるレチクルRに形成されるパターンの一例を示す展開図である。
図11に展開して示す通り、レチクルRの周方向に沿って複数のパターン形成領域PAが設けられている。前述した第1実施形態で用いたレチクルRには、図4(b)に示す通り、周方向に沿って設けられたパターン形成領域PAにパターンP1とパターンP2とが交互に形成されていたが、本実施形態のレチクルRには、図11に示す通り、周方向に沿って設けられたパターン形成領域PAにパターンP1が複数連続して形成されており、続いてパターンP1と同数のパターンP2が連続して形成されている。つまり、本実施形態では、レチクルRの半周分のパターン形成領域PAにパターンP1が形成されており、残りの半周分のパターン形成領域PAにパターンP2が形成されている。尚、パターンP1とパターンP2とはレチクルRの中心軸CXに関して対称に形成されている。尚、レチクルRのX方向の長さは、図4に示す第1実施形態で用いたレチクルRと同様である。
尚、パターンP1,P2は、図4に示す例えばクロム(Cr)等からなる金属膜を所定形状にパターニングしたものであり、その平面形状はウェハW上のショット領域に転写されるパターンと相似の形状である。また、本実施形態のレチクルRにおいても、レチクルRの曲率半径を大きくし、慣性モーメントを大きくし、更にはウェハステージWSTの加減速の回数を低減するためにパターンP1,P2が周方向に沿って複数形成されている。図11に示す例では、図示の簡単のために、レチクルRの周方向にパターンP1,P2が4つづつ形成されている例を挙げているが、ウェハW上に配列されたショット領域のY方向(走査方向)における最大数又はその約数分のパターンP1,P2をそれぞれ形成するのが望ましい。
本実施形態の露光装置は、露光光ELを筒形状のレチクルRに照射する光学系として、図10に示す透過光学系60を備えている。図10は、筒形状のレチクルRに露光光ELを照射する透過光学系を示す側面図である。図10に示す通り、透過光学系60は、照明光学系61、折り曲げミラー62、補正用レンズ63、及び結像光学系64を備えている。照明光学系61は、不図示の露光用光源から射出されて不図示のレチクルブラインドによりスリット状に整形された露光光ELを円筒形状のレチクル面に照明する。
折り曲げミラー62は、レチクルRの上方(+Z方向)に配置されており、照明光学系61を透過して+Y方向に進む露光光ELをレチクルRに向けて−Z方向に偏向する。ここで、折り曲げミラー62は、露光光ELが筒形状のレチクルRの最上部TPに向かうよう偏向する。補正用レンズ63は、レチクルRと折り曲げミラー62との間に配置されており、折り曲げミラー62で下方に偏向された露光光ELについて、レチクルRの最上部TPに設定された照明領域IA5に対する照明位置及び照明形状を補正する。
結像光学系64は、レチクルRの内部に配置されており、レチクルRの最上部TPと最下部BTとを光学的に共役関係にする。図10に示す通り、筒形状のレチクルRは、その内部に結像光学系64を配置可能なスペースを有しており、結像光学系64はこのスペース内に配置される。レチクルRの内部に配置された結像光学系64によって、レチクルRの最上部TPに設定された照明領域IA5とレチクルRの最下部BTに設定された照明領域IA6は共役にされている。尚、結像光学系64によって、レチクルRの最上部TPに配置されるパターンの倒立像がレチクルRの最下部BTに結像するものとする。また、結像光学系64は、レチクルRの最上部TPに設定された照明領域IA5を透過した露光光ELを、レチクルRの最下部BTに設定された照明領域IA6に結像する。
ここで、本実施形態においては、レチクルRは、その最下部BTが投影光学系PLの物体側の焦点位置に配置されている。このため、本実施形態では、レチクルRの最上部TP、レチクルの最下部BT、及び投影光学系PLの像側に位置するウェハWの表面が互いに共役関係にある。よって、レチクルRの最上部TPに設定された照明領域IA5内に位置するパターンの像は、レチクルRの最上部TPを透過した後で結像光学系64を介してレチクルRの最下部BTに設定された照明領域IA6に結像する。そして、レチクルRの最下部TPを透過して投影光学系PLを介した後でウェハW上に結像する。このように、透過光学系60はレチクルRを透過照明する。
また、前述した第1,第2実施形態では、レチクルR上の照明領域に偏光状態の異なる露光光ELを照射していたが、本実施形態では、結像光学系64を用いて照明領域IA5と照明領域IA6とを光学的に共役にしているため、レチクルR上の照明領域IA5,IA6に偏光状態が同じ露光光ELが照射される。尚、照明領域IA5,IA6に照射する露光光ELは、直線偏光であってもよく、或いはランダムな偏光状態であっても良い。
図10に示す通り、照明領域IA5はレチクルRの最上部TPに設定されており、照明領域IA6はレチクルRの最下部BTに配置されている。これに対し、レチクルRの上のパターンは、レチクルRの中心軸CXに関してパターンP1とパターンP2とが対称となるように形成されている。つまり、パターンP1とパターンP2とは、筒形状のレチクルRの2つの底面を通る軸に関して対をなすように形成されている。このため、照明光学系ILSによってレチクルRを照明すると、パターンP1の一部とパターンP2の一部が照明されることになる。
また、各パターンP1,P2は筒形状のレチクルRの周方向に沿って形成されているため、レチクルRの中心に軸CXに関して対称関係にある一対のパターンP1,P2は、平面視で重ね合わせて見ると一方のパターン(例えば、パターンP1)を周方向に反転しなければ他方のパターン(例えば、パターンP2)と重ね合わせることができない関係にある。即ち、一方のパターンの周方向の向きが他方のパターンの周方向の向きとは反対となる。前述した通り、結像光学系64は、レチクルRの最上部TPに配置されるパターンの倒立像をレチクルRの最下部BTに結像するものであるため、パターンP1,P2が上記の関係にあっても一方のパターンの像(例えばパターンP1の像)と他方のパターンP2とを重ね合わせることができる。従って、本実施形態においても、パターンP1,P2の二重露光を同時に行うことができる。
本実施形態におけるウェハWの露光は、図5に示す第1実施形態の露光方法と同様の方法を用いて行われる。つまり、レチクルRを一方向に回転させつつウェハWをY方向に移動させながら走査方向(Y方向)に配列された1列分のショット領域を連続して露光し、その1列分のショット領域を終えると、レチクルRの回転方向を反転するとともにウェハWの移動方向を反転させて次の列を露光する動作を繰り返し行う。本実施形態では、レチクルRの最上部TPに設定された照明領域IA5に照射された露光光ELのうちレチクルRを透過した露光光は、結像光学系64によりレチクルRの最下部BTに設定された照明領域IA6に照射される。これにより、照明領域IA5に配置されたパターン(例えば、パターンP1)P1の像が照明領域IA6に結像し、照明領域IA6に配置されたパターン(例えば、パターンP2)と重なり合う。照明領域IA6に照射された露光光ELは、レチクルRの最下部BTを透過した後で投影光学系PLによってウェハW上に投影される。以上により、ウェハWに対してパターンP1,P2の二重露光が同時に行われる。このため、従来の二重露光に比べて露光処理に要する時間を格段に短縮することができ、この結果としてスループットを大幅に向上させることができる。
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様の露光方法を用いることにより、従来に比べてウェハステージWSTの加減速の回数を大幅に低減することができる。また、第1実施形態と同様に、複数のパターンP1,P2が形成された筒形状のレチクルRを用いているため、平面系のレチクルに複数のパターンを形成する場合や、複数のレチクルステージを設ける場合に比べて露光装置EXの大幅なコスト上昇を招くことはない。更に、本実施形態においても、投影光学系PLの光学素子1とウェハWとの間の液浸領域WRを安定させることができるため、露光精度を向上させることができるとともに、液浸領域WRへの気泡の混入等による欠陥の発生確率を低減させることができる。
尚、本実施形態においても、パターンP1及びパターンP2として、ウェハWに転写されるべきパターンと相似形のパターン以外に、レチクルRの周方向に延びたパターンを用いることができる。但し、かかる形状のパターンが形成されたレチクルRを用いる場合には、その延ばした程度に応じてレチクルRの回転速度を速める必要がある。
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の露光装置の全体構成は、図1に示す第1実施形態の露光装置EXとほぼ同様の構成であり、また、本実施形態の露光装置に設けられる照明光学系ILSは、図10に示す第3実施形態の照明光学系ILSと同様の透過光学系60を備える。但し、本実施形態は、使用するレチクルRが第1〜第3実施形態で使用されるものとは異なる。図12は、本発明の第4実施形態による露光装置で用いられるレチクルR及びレチクルRに露光光ELを照射する透過光学系を示す側面図である。
図12に示す通り、本実施形態の露光装置で用いられるレチクルRは、ベルトコンベア式のものである。つまり、可撓性を有する光透過材料で形成された短冊状のシートSTの端部を結合して無端帯状にし、このシートを回転ドラム71,72の間に架橋したものであり、X軸に平行な軸の周りでシートSTが回転可能に構成されている。シートST上には、周方向(シートSTの回転方向)に沿って、図11に展開して示すパターンP1,P2と同様のパターンが形成されている。つまり、周方向に沿って設けられたパターン形成領域PAにパターンP1が複数連続して形成されており、続いてパターンP1と同数のパターンP2が連続して形成されている。即ち、パターンP1とパターンP2とは、レチクルRの回転中心(或いは、レチクルRの内部に配置された結像光学系64)に関して対称に形成されている。尚、レチクルRのX方向の長さは、図4に示す第1実施形態で用いたレチクルRと同様である。
回転ドラム71,72は、回転軸をX方向に平行にして、レチクルRの内部に配置される結像光学系64の+Y方向及び−Y方向にそれぞれ配置されている。回転ドラム71,72が回転することにより、これらの回転に合わせてレチクルRがX軸に平行な軸の周りで回転する。レチクルRは、回転ドラム71,72の間に架橋されているため、回転ドラム71,72の回転により、レチクルRに形成されたパターン(シートSTに形成されたパターン)P1,P2は、結像光学系64の上方及び下方においてY方向に沿って移動する。尚、回転ドラム71,72の双方を駆動可能に構成して回転ドラム71,72を同期して駆動することによりレチクルRの回転を制御しても良く、回転ドラム71,72の何れか一方のみを駆動可能に構成し、駆動可能に構成された回転ドラムを駆動することによりレチクルRの回転を制御しても良い。
尚、パターンP1,P2は、図4に示す例えばクロム(Cr)等からなる金属膜を所定形状にパターニングしたものであり、その平面形状はウェハW上のショット領域に転写されるパターンと相似の形状である。本実施形態のレチクルRは、結像光学系64の上方及び下方では平面状となるため、第1〜第3実施形態のレチクルRのように、パターンの湾曲を低減するための目的でパターンP1,P2を複数形成する必要は必ずしも無い。但し、ウェハステージWSTの加減速の回数を低減するための目的ではパターンP1,P2を周方向に沿って複数形成しても良い。尚、本実施形態においても、パターンP1,P2は、ウェハW上に配列されたショット領域のY方向(走査方向)における最大数又はその約数分それぞれ形成するのが望ましい。
透過光学系60は、第3実施形態と同様に、照明光学系61、折り曲げミラー62、補正用レンズ63、及び結像光学系64を備えている。図12に示す通り、回転ドラム71,72の間には結像光学系64を配置可能なスペースが設けられており、結像光学系64は、このスペースに配置されることによりレチクルRの内部に配置されている。補正用レンズ63は、折り曲げミラー62で下方に偏向された露光光ELについて、レチクルRの上に設定された照明領域IA5に対する照明位置及び照明形状を補正する。結像光学系64は、レチクルR上の照明領域IA5の下方であって、レチクルRの上に設定された照明領域IA6とを光学的に共役関係にする。尚、本実施形態においても、結像光学系64によって、レチクルR上の照明領域IA5に配置されるパターンの倒立像がレチクルR上の照射領域IA6に結像するものとする。また、結像光学系64は、レチクルR上の照明領域IA5を透過した露光光ELを補正しつつ、レチクルR上の照明領域IA6に結像する。
本実施形態においても、レチクルR上の照明領域IA6が投影光学系PLの物体側の焦点位置に配置されている。従って、レチクルR上の照明領域IA5,IA6、及び投影光学系PLの像側に位置するウェハWの表面が互いに共役関係にある。よって、レチクルR上の照明領域IA5内に位置するパターンの像は、結像光学系64を介してレチクルR上の照明領域IA6に結像する。そして、レチクルRの照明領域IA5を透過して投影光学系PLを介した後でウェハW上に結像する。また、本実施形態においては、第3実施形態と同様に、照明領域IA5,IA6に照射する露光光ELが直線偏光であってもよく、或いはランダムな偏向状態であっても良い。
本実施形態の露光装置を用いたウェハWの露光は、第3実施形態と同様の露光方法を用いて行われる。つまり、回転ドラム71,72を一方向に回転させてレチクルRのパターンを一方向に移動させつつウェハWをY方向に移動させながら走査方向(Y方向)に配列された1列分のショット領域を連続して露光し、その1列分のショット領域を終えると、回転ドラム71,72の回転方向を反転してレチクルRのパターンの移動方向を反転するとともにウェハWの移動方向を反転させて次の列を露光する動作を繰り返し行う。これにより、ウェハWに対してパターンP1,P2の二重露光が同時に行われる。このため、従来の二重露光に比べて露光処理に要する時間を格段に短縮することができ、この結果としてスループットを大幅に向上させることができる。
また、本実施形態においても、従来に比べてウェハステージWSTの加減速の回数を大幅に低減することができるとともに、露光装置の大幅なコスト上昇を招くことはない。また、露光期間中におけるウェハWの反転回数が少ないため、投影光学系PLの光学素子1とウェハWとの間における液浸領域WRを安定させることができ、露光精度を向上させることができるとともに、液浸領域WRへの気泡の混入等による欠陥の発生確率を低減させることができる。尚、本実施形態においても、パターンP1及びパターンP2として、ウェハWに転写されるべきパターンと相似形のパターン以外に、レチクルRの周方向に延びたパターンを用いることができる。但し、かかる形状のパターンが形成されたレチクルRを用いる場合には、その延ばした程度に応じてレチクルRの回転速度を速める必要がある。
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以上説明した第1〜第4実施形態では、レチクルRを一方向に回転させつつウェハWをY方向に移動させながら走査方向(Y方向)に配列された1列分のショット領域を連続して露光し、その1列分のショット領域を終えると、レチクルRの回転方向を反転するとともにウェハWの移動方向を反転させて次の列を露光する動作を繰り返し行っていた。これに対し、本実施形態の露光装置は、ウェハWの移動方向に拘わらず、レチクルRを一方向のみに回転させて露光処理を行うものである。かかる露光処理を実現するために、本実施形態の露光装置は、ウェハWの移動方向に応じて、投影光学系PLによりウェハW上へ倒立像を投影するか、又は正立像を投影するかを切り換えている。倒立像、正立像の切り換えを実現する手法は種々のものが考えられるが、以下の説明では、露光光ELの偏光状態を利用した切り換えを行う例について説明する。
図13は、本発明の第5実施形態による露光装置が備える投影光学系PLの構成を示す側面図である。尚、本実施形態では、図10,図11に示した第3実施形態で用いるレチクルRが用いられるものとする。図13に示す通り、本実施形態の露光装置が備える投影光学系PLは、投影レンズ80、1/2波長板81、偏光ビームスプリッタ82、正立像形成レンズ83、折り曲げミラー84,85、正立像形成レンズ86、偏光ビームスプリッタ87、1/2波長板88、及び投影レンズ89を含んで構成される。尚、図13においては、投影光学系PL以外にはレチクルR及びウェハWのみを図示しており、供給ノズル32、回収ノズル35等の他の構成の図示は省略している。また、図13において、レチクルRの最下部に太線で示した領域はX方向に延びるスリット状の露光光ELが照射される照明領域IAであり、ウェハW上に太線で示した領域は露光光ELが照射される露光領域EAである。
投影レンズ80は、レチクルRからの光を平行光に変換する。1/2波長板81,88は、入射する光の偏光方向を変化させるものであり、光軸AXの周りで回転可能に構成されている。尚、これら1/2波長板81,88の回転量の制御は主制御系MCによって行われる。具体的には、主制御系MCは、1/2波長板88が1/2波長板81の回転に併せて回転するように1/2波長板81,88の各々の回転量を制御する。偏光ビームスプリッタ82,87は、偏光方向がY軸方向である光だけを透過させ、偏光方向がX軸方向である光を反射する。正立像形成レンズ83は中間結像点MPに中間像を形成し、正立像形成レンズ86は中間結像点MPを介した光を平行光に変換する。投影レンズ89は、1/2波長板88を透過した光をウェハW上に集光する。
上記構成において、照明領域IA内の1点からの露光光ELは、投影レンズ80に入射して平行光に変換された後に1/2波長板81に入射する。ここで、露光光ELが1/2波長板81を通過することにより、露光光ELの偏光方向はX方向又はY方向の何れかとなる。1/2波長板81を通過した露光光ELは、偏光ビームスプリッタ82に入射する。ここで、1/2波長板81を通過する露光光ELの偏光方向がY方向である場合には、露光光ELは偏光ビームスプリッタ82を透過し、X軸方向である場合には露光光ELは偏光ビームスプリッタ82で反射される。
偏光ビームスプリッタ82を透過した露光光ELは、偏光ビームスプリッタ87に至る。前述した通り、偏光ビームスプリッタ82と偏光ビームスプリッタ87とは、透過させる光の偏光方向が同じとなるように配置されているため、偏光ビームスプリッタ82から偏光ビームスプリッタ87に入射した露光光ELは偏光ビームスプリッタ87を透過する。偏光ビームスプリッタ87を透過した露光光ELは、1/2波長板88を通過する際にその偏光方向が、1/2波長板81に入射する前の方向に戻されて、投影レンズ89に入射する。投影レンズ89は、照明領域IA上の1点から発っせられ、投影光学系PLの上記各光学素子を通過した露光光ELを屈折させて、ウェハW上の露光領域EAの1点に集光させる。
一方、偏光ビームスプリッタ82で反射された露光光ELは、正立像形成レンズ83に入射して屈折し、折り曲げミラー84で折り曲げられた後、中間結像点MPに達する。この中間結像点MPには、照明領域IA内のパターンの倒立像が結像される。この中間結像点を通過した露光光ELは、折り曲げミラー85に折り曲げられた後に正立像形成レンズ86を介して偏光ビームスプリッタ87に入射する。ここで、偏光ビームスプリッタ82と偏光ビームスプリッタ87とは、反射させる光の偏光方向が同じとなるように配置されているため、偏光ビームスプリッタ87は、正立像形成レンズ86からの露光光ELを反射する。偏光ビームスプリッタ87で反射された露光光ELは、1/2波長板88を通過する際にその偏光方向が、1/2波長板81に入射する前の方向に戻されて、投影レンズ89に入射する。投影レンズ89は、照明領域IA上の1点から発っせられ、投影光学系PLの上記各光学素子を通過した露光光ELを屈折させて、ウェハW上の露光領域EAの1点に集光させる。
ところで、図13においては、照明領域IA内の+Y側の点Q1からの露光光ELの主光線を破線又は二点差線で図示している。露光光ELの経路は、偏光ビームスプリッタ82を透過するか、又は偏光ビームスプリッタ82で反射されるかによって異なるが、偏光ビームスプリッタ82を透過した場合の主光線を破線で示し、偏光ビームスプリッタ82で反射される場合の主光線を二点差線で示している。図13に示す通り、偏光ビームスプリッタ82を透過する場合には、点Q1からの露光光ELの主光線は、破線で示す経路を通って露光領域EA内の点Q2に到達する。即ち、かかる場合には、照明領域IA内の点Q1の像が、露光領域EA内の点Q2に結像する。一方、偏光ビームスプリッタ82で反射される場合には、点Q1からの露光光ELの主光線は、二点差線で示す経路を通って露光領域EA内の点Q3に到達する。即ち、かかる場合には、照明領域IA内の点Q1の像が、露光領域EA内の点Q3に結像する。
以上から、照明領域IA内全体で見ると、露光光ELが偏光ビームスプリッタ82を通過した場合には、露光領域EAには照明領域IA内のパターンの倒立像が結像され、偏光ビームスプリッタ82で反射された場合には、露光領域EAには照明領域IA内のパターンの正立像が結像される。即ち、露光光ELが偏光ビームスプリッタ82を透過するか又は反射されるかにより、照明領域IA内のパターン像が倒立像になるか又は正立像になるかが決定される。投影光学系PL内の露光光ELの偏光方向は1/2波長板81の回転量によって決定されるため、主制御系MCが1/2波長板81の回転量を調整することで、倒立像をウェハW上に投影するか、又は正立像をウェハW上に投影するかを制御することができる。
以上の構成の露光装置を用いたウェハWの露光は、基本的には図4に示すフローチャートに示す手順で行われる。但し、本実施形態では、ウェハWの移動方向に拘わらずレチクルRの回転方向を一方向に固定しており、ウェハWの回転方向を反転する代わりに、投影光学系PLによる倒立像・正立像の切り換えを行っている。このため、図4に示すフローチャートのステップS17の処理を、投影光学系PLによる倒立像・正立像の切り換えと読み替える必要がある。
具体的には、まず主制御系MCがY軸からZ軸へ向かう向き(−X方向から+X方向を見た場合の時計回り)にレチクルRを回転させるとともに、ウェハW上に倒立像が投影されるよう投影光学系PLを制御する。次に、主制御系MCは、ウェハWを−Y方向に移動させながら走査方向(Y方向)に配列された1列分のショット領域を連続して露光する。1列分のショット領域の露光を終えると、主制御系MCは、ウェハW上に正立像が投影されるよう投影光学系PLを制御するとともに、ウェハWの移動方向を+Y方向に設定する。そして、ウェハWを+Y方向に移動させながら次の1列分のショット領域を連続して露光する。以上の動作を繰り返して、ウェハW上の複数のショット領域を列単位で露光する。また、ここで、レチクルRの回転方向を一方向に固定するためには、図8に示す露光装置において、第1領域Z1に配置されたパターンP1について180°反転したパターンを第2領域Z2に配置し、露光ショット列毎に露光に使用する露光光(露光光EL3又はEL4)、及び、前述した投影光学系(正立像又は倒立像)を切り換えて露光する。
尚、図2に示す第1実施形態の露光装置、及び図8に示す第2実施形態の露光装置は、高NAの投影光学系PLを用いた場合であってもウェハW上に微細なパターンを形成するために、レチクルR上の異なる照明領域にそれぞれ偏光状態が異なる露光光を照射するものであった。しかしながら、これらの露光装置において、必ずしも偏光状態の異なる露光光をレチクルRに照射する必要はなく、偏光状態が同じ露光光ELを照射してもよい。例えば、図2に示す露光装置を例に挙げると、偏光ビームスプリッタ42aに代えて光分岐器(例えば、入射する光を強度比1:1に分岐する)を用いるとともに、偏光ビームスプリッタ47aに代えて光合波器を用いれば、偏光状態の同じ露光光をレチクルR上の異なる照明領域に照射することができるとともに、これらの照明領域を介した露光光を投影光学系PLに入射させてウェハW上に投影させることもできる。このように、偏光状態が同じ露光光ELをレチクルRの異なる照明領域に照射するようにした場合には、第1,第2実施形態でも図13に示す投影光学系PLを用いることができる。
〔第6実施形態〕
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態の露光装置の全体構成は、図1に示す第1実施形態の露光装置EXとほぼ同様の構成であるが、照明光学系ILSがレチクルRを内部から照射する内部照明光学系90を備える点が異なる。図14は、筒形状のレチクルRに露光光ELを照射する内部照明光学系90を示す斜視図である。図14に示す通り、内部照明光学系90は、筒形状のレチクルRの内部に配置されており、反射ミラー91、ビームエキスパンダ92a,92b、及びシリンドリカルレンズ93a,93bを備える。
本実施形態では照明光学系ILSから射出される露光光ELは−X方向に進み、レチクルRの一方の底部(+X側における端部)からレチクルRの内部に入射する。尚、照明光学系ILSから射出される露光光ELはスリット状ではなく、例えば円形の断面形状である。反射ミラー91は楔形状のミラーであり、レチクルRの内部に入射して−X方向に進む露光光EXを±Z方向に偏向する。ビームエキスパンダ92a,92bは、反射ミラー91の下方(−Z方向)及び上方(+Z方向)にそれぞれに配置されており、反射ミラー91で偏向されて±Z方向にそれぞれ進む露光光ELを+X方向と−X方向に発散させる。シリンドリカルレンズ93a,93bは、ビームエキスパンダ92aの下方及びビームエキスパンダ92bの上方にそれぞれ配置されており、ビームエキスパンダ92a,92bで+X方向と−X方向に発散する露光光ELの形状を、X方向に延びる線状又は所定の幅を有するスリット状に補正する。
レチクルRの一方の底部(+X側における端部)からレチクルRの内部に入射した露光光ELは、反射ミラー91により±Z方向に偏向された後、ビームエキスパンダ92a,92bで+X方向と−X方向に発散される。そして、シリンドリカルレンズ93a,93bによってその形状がX方向に延びる線状又は所定の幅を有するスリット状に補正されてレチクルRの内側からレチクルRの側面に照射される。これにより、レチクルRの最上部TP及び最下部BTに設定されたスリット状の照明領域が照明される。照明領域を透過した露光光を例えば図2又は図3に示すレチクル個別光学系41で投影光学系PLに導けば、レチクルR上の異なるパターンを同時に二重露光することができる。尚、レチクルRを内側から照明する内部照明光学系90は第2実施形態にも適用することができる。
〔その他の実施形態〕
以上説明した第1〜第6実施形態では、何れもレチクルR上の異なる2つの照明領域に露光光ELを照射していたが、レチクルR上の露光光ELを照射する照明領域は2つ以上であっても良い。照明領域を2つよりも多くすることで、三重露光、四重露光等の多重露光を同時に実現することができ、これによりスループットを更に向上させることができる。多重露光を実現するには、第1に前述した第1〜第6実施形態の各々で照明領域を増加させる方法、第2に第1〜第6実施形態を組み合わせる方法、第3に使用するレチクルRの数を増加させる方法が考えられる。
上記の第1の方法により多重露光を実現する場合には、例えば図2又は図3に示す第1実施形態において、露光用光源LSから射出された露光光の分岐数を増加させることでレチクルRに露光光を照射する照明領域の数を増加させるとともに、照明領域の増加に合わせてレチクル個別光学系41が備える反射ミラー等の数を増加させる。上記の第2の方法により多重露光を実現する場合には、例えば第1〜第6実施形態を相互に組み合わせる。例えば、第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせて、筒形状のレチクルRを反射照明するとともに透過照明することで多重露光を実現する。勿論、第1実施形態と第4実施形態とを組み合わせても良く、第2実施形態と第3実施形態又は第4実施形態とを組み合わせても良い。また、第1,第2実施形態を組み合わせて、レチクルRの複数の照明領域を反射照明しても良い。更に、これらに第5実施形態を組み合わせても良く、第6実施形態を組み合わせても良い。また、上記の第3の方法により多重露光を実現する場合には、筒形状のレチクルRを複数設ける。具体的には、例えば第3実施形態で、投影光学系PLの光軸方向に複数のレチクルRを並べて回転可能に配置するとともに、各々のレチクルRの最上部TP及び最下部BTに設定された照明領域を光学的に共役にする。
尚、以上説明した各実施形態においては、レチクルRの周上におけるパターンの形成位置を変えることができるアクティブマスクを用いることができる。尚、アクティブマスクとは、一般に、電子マスクである。電子マスクは、例えば液晶やDMD(ディジタル・マイクロミラー・デバイス)等の非発光型画像表示素子と自発光型画像表示素子との双方を含む概念である。
ここで、非発光型画像表示素子は、空間光変調器(Spatial Light Modulator)とも呼ばれ、光の振幅、位相或いは偏光の状態を空間的に変調する素子であり、透過型空間光変調器と反射型空間光変調器とに分けられる。透過型空間光変調器には、透過型液晶表示素子(LCD:Liquid Crystral Display)、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等が含まれる。また、反射型空間光変調器には、DMD(Digital Mirror Device又はDigital Micro-mirror Device)、反射ミラーアレイ、反射型液晶表示素子、電気泳動ディスプレイ(EPD:ElectroPhoretic Display)、電子ペーパ(又は電子インク)、光回折ライトバルブ(Grating Light Value)等が含まれる。
また、自発光型画像表示素子には、CRT(Cathod Ray Tube)、無機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)や、複数の発光点を有する固体光源チップ、チップを複数個アレイ状に配列した固体光源チップアレイ、又は複数の発光点を1枚の基板に作り込んだ固体光源アレイ(例えばLED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ、LD(Laser Diode)ディスプレイ等)等が含まれる。尚、周知のプラズマディスプレイ(PDP
)の各画素に設けられている蛍光物質を取り除くと、紫外域の光を発光する自発光型画像表示素子となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、レチクルRが円筒部材の周上にパターンが形成されたもの、ベルトコンベア式のもの、又は円筒部材の周上におけるパターンを変更することができるアクティブマスクである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、現在使用されている板状のレチクルを用いる場合にも適用することができる。
また、上記実施形態では、レチクルRが筒形状である場合を例に挙げて説明したが、本発明はレチクルRの形状が円筒形状や円柱形状等の筒形状に限られる訳ではない。例えば、断面形状が楕円形状の筒又は柱形状、複数の曲面を継ぎ接ぎしてなる形状、又は円錐形状等であってもよい。また、上記実施形態では、筒形状のレチクルRのパターンを平面状のウェハW上に転写する例について説明したが、ウェハWは必ずしも平面形状である必要はなく、レチクルRと同様の筒形状であっても良く、更には球形等の任意の形状のものを用いることができる。
尚、上記実施形態においては、露光用光源としてArFエキシマレーザ光源を備えているため、液体Lqとして純水を用いている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、ウェハW上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有率が極めて低いため、ウェハW表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。また、工場の純水はそのレベル(純水度)が低いことも考えられるので、その場合には露光装置自身が超純水化機構を持つようにしても良い。
波長が193nm程度の露光光に対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44と言われており、露光光の光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、ウェハW上では1/n、即ち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、即ち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
尚、液浸露光に用いる光源1としてKrFエキシマレーザ光源やF2レーザ光源を用いることもできる。F2レーザ光源を用いる場合、液浸露光用の液体としてはF2レーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイルや過フッ化ポリエーテル(PFPE)等のフッ素系の液体を用いればよい。また、その他にも、露光光に対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLやウェハW表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLとウェハWとの間を局所的に液体で満たす液浸露光装置を採用しているが、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する液浸露光装置にも本発明を適用可能である。尚、本発明は、液浸露光装置に限られる訳ではなく、液浸法を用いない露光装置にも適用可能である。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報等に開示されているように、ウェハ等の被処理基板を別々に載置してXY方向に独立に移動可能な2つのステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
また、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置を例に挙げて説明したが、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置にも本発明を適用することができる。更に、本発明は半導体素子の製造に用いられる露光装置だけではなく、液晶表示素子(LCD)等を含むディスプレイの製造に用いられてデバイスパターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられてデバイスパターンをセラミックウェハ上へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置等にも適用することができる。
次に、本発明の実施形態による露光装置をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図15は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造工程の一例を示すフローチャートである。図15に示すように、まず、ステップS31(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS32(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクル)を製作する。一方、ステップS33(ウェハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウェハを製造する。
次に、ステップS34(ウェハ処理ステップ)において、ステップS31〜ステップS33で用意したマスクとウェハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウェハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS35(デバイス組立ステップ)において、ステップS34で処理されたウェハを用いてデバイス組立を行う。このステップS35には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS36(検査ステップ)において、ステップS35で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
図16は、半導体デバイスの場合における、図15のステップS34の詳細なフローの一例を示す図である。図16において、ステップS41(酸化ステップ)においてはウェハの表面を酸化させる。ステップS42(CVDステップ)においてはウェハ表面に絶縁膜を形成する。ステップS43(電極形成ステップ)においてはウェハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS44(イオン打込みステップ)においてはウェハにイオンを打ち込む。以上のステップS41〜ステップS44のそれぞれは、ウェハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
ウェハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS45(レジスト形成ステップ)において、ウェハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップS46(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置)及び露光方法によってマスクの回路パターンをウェハに転写する。次に、ステップS47(現像ステップ)においては露光されたウェハを現像し、ステップS48(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS49(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウェハ上に多重に回路パターンが形成される。