JP4982746B2 - Dnaマーカーを用いたブタの親子判定方法 - Google Patents
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Description
さらに詳細には、被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程、抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAから、マイクロサテライト配列を含む10個のDNAマーカーに相当する配列の少なくとも一つを増幅する工程、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の塩基配列、断片長、該DNA断片に含まれる対立遺伝子の種類および数を比較することにより、被検対象となる種ブタおよび子ブタの親子関係に矛盾があるか否かを判定する工程を含む、ブタの親子判定を行う方法に関する。
また、本発明はブタの親子判定を行うためのプライマー、キットに関する。
Secondary Guidelines for Development of National Farm Animal Genetic Resources Management Plans. Measurement of Domestic Animal Diversity (MoDAD): Recommended Microsatellite Markers. P19-24 Food and Agriculture Organisation of the United Nations (FAO) Nechtelberger D, et al., 2001. Anim Biotechnol. 12:141-144. 吉岡豪ら、2000、食肉に関する助成研究調査成果報告書、18:162-167 松本尚子ら、2001、群馬畜試研究報告、8:36-42 島貫 伸一ら、2005、日本畜産学会第105回大会講演要旨集、p60 DeNise S, et al., 2004. Anim. Genet., 35:14-17 Ichikawa Y, et al., 2001. J.Vet.Med. Sci., 63:1209-1213 Sherman GB, et al., 2004. Anim. Genet., 35:220-226 Tozaki T, et al., 2001. J.Vet.Med. Sci., 63(11):1191-1197 Luikart G, et al., 1999. Anim. Genet., 30:431-438
さらに、ブタの親子判定を行うためのプライマー、キットの提供についても課題とする。
〔1〕 以下の(1)〜(4)の工程を含む、ブタの親子判定を行う方法。
(1)被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程
(2)抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAにおいて、ACR(配列番号:1)、SW24(配列番号:2)、SW2429(配列番号:3)、SW1550(配列番号:4)、SW1027(配列番号:5)、SW1328(配列番号:6)、SW443(配列番号:7)、S0316(配列番号:8)、SWR1921(配列番号:9)、SW1263(配列番号:10)からなる群から選択される、少なくとも一つ以上のDNAマーカーに相当するDNA断片を増幅する工程
(3)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片を解析し、該解析結果を比較する工程
(4)相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の解析結果が一致する場合に、親子関係が否定されないと判断する工程
〔2〕 DNAマーカーに相当するDNA断片が、マイクロサテライト配列を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔3〕 工程(2)において増幅される塩基配列が、下記(a)〜(j)から選択される少なくとも一つの部分配列に相当する塩基配列であることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列において、359位〜544位の配列
(b)配列番号:2に記載の塩基配列において、211位〜506位の配列
(c)配列番号:3に記載の塩基配列において、291位〜540位の配列
(d)配列番号:4に記載の塩基配列において、255位〜447位の配列
(e)配列番号:5に記載の塩基配列において、21位〜151位の配列
(f)配列番号:6に記載の塩基配列において、151位〜461位の配列
(g)配列番号:7に記載の塩基配列において、359位〜478位の配列
(h)配列番号:8に記載の塩基配列において、6位〜155位の配列
(i)配列番号:9に記載の塩基配列において、155位〜348位の配列
(j)配列番号:10に記載の塩基配列において、269位〜534位の配列
〔4〕 工程(2)において、塩基配列の増幅がPCR法によって行われることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔5〕 PCR法がマルチプレックスPCRであることを特徴とする、〔4〕に記載の方法。
〔6〕 配列番号:1〜10に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを、少なくとも一つ以上プライマーとして用いることを特徴とする、〔4〕または〔5〕に記載の方法。
〔7〕 配列番号:11〜39に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つ以上をプライマーとして用いることを特徴とする、〔4〕または〔5〕に記載の方法。
〔8〕 下記(a)〜(j)のいずれかに記載のプライマーセットからなる群から選択される、少なくとも一つ以上のプライマーセットを同時に使用することを特徴とする、〔4〕または〔5〕に記載の方法。
(a)配列番号:11および12に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(b)配列番号:15および16に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(c)配列番号:19および20に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(d)配列番号:21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(e)配列番号:23および24に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(f)配列番号:27および28に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(g)配列番号:29および30に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(h)配列番号:32および33に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(i)配列番号:34および35に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(j)配列番号:38および39に記載の塩基配列からなるプライマーセット
〔9〕 プライマーが蛍光修飾されていることを特徴とする、〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕 工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の塩基配列を決定する工程
(ii)(i)により決定したDNA断片の塩基配列を比較する工程
〔11〕 工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片をゲル上で分離し、その長さを決定する工程
(ii)(i)により決定したDNA断片の長さを比較する工程
〔12〕 工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片において、マイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を決定する工程
(ii)(i)により決定したマイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を比較する工程
〔13〕 配列番号:1〜10に記載のDNAマーカーのうち、少なくとも6個以上のDNAマーカーに相当するDNA断片を解析することを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔14〕 種ブタおよび子ブタの親子関係が、種雄ブタと子ブタとの間の親子関係であることを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔15〕 種ブタおよび子ブタの親子関係が、種雄ブタ、種雌ブタおよび子ブタの三者間の親子関係であることを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔16〕 種ブタが、デュロック(D)種、ランドレース(L)種、大ヨークシャー(W)種、LW交雑種(ランドレース種と大ヨークシャー種の交雑種)のいずれかであることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔17〕 種雄ブタがデュロック種、種雌ブタがLW交雑種であることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔18〕 配列番号:1〜10のいずれかに記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなる、ブタの親子を判定するためのプライマー。
〔19〕 配列番号:15、16、19、20、27、28、33、38、39のいずれかに記載の塩基配列からなる、〔18〕に記載のプライマー。
〔20〕蛍光修飾されていることを特徴とする、〔18〕または〔19〕に記載のプライマー。
〔21〕 配列番号:1〜10に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドからなるプライマーを少なくとも一つ以上含む、ブタの親子判定を行なうためのキット。
〔22〕 下記(a)〜(j)のいずれかに記載のプライマーセットからなる群から選択される、少なくとも一つ以上のプライマーセットを含む〔21〕記載のキット。
(a)配列番号:11および12に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(b)配列番号:15および16に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(c)配列番号:19および20に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(d)配列番号:21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(e)配列番号:23および24に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(f)配列番号:27および28に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(g)配列番号:29および30に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(h)配列番号:32および33に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(i)配列番号:34および35に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(j)配列番号:38および39に記載の塩基配列からなるプライマーセット
〔23〕 少なくとも一つ以上のプライマーセットを同時に使用することによって、複数のDNAマーカーを検出することを特徴とする、〔22〕に記載のキット。
本発明者らは、一般的には99%以上、単一農場においても98%以上の確率で偽父を検出できる、ブタの親子を判定するための10個のマイクロサテライトマーカーを選定した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
(1)被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程
(2)抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAにおいて、少なくとも一つ以上のDNAマーカーに相当するDNA断片を増幅する工程
(3)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片を解析し、該解析結果を比較する工程
(4)相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の解析結果が一致する場合に、親子関係が否定されないと判断する工程
選定の対象となるDNAマーカーは、公知のDNAマーカーを用いることができ、その情報は例えば、公知のデータベース、Animal Genome Database (http://animal.dna.affrc.go.jp/agp/database.html) から得ることができる。
Q=1-(1- Q1)(1- Q2) (1- Q3)・・・(1- Qn) ・・・(3)
(nは検出したDNAマーカーの数を示す)
工程(iv)において総合父権否定確率Qは、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上を挙げることができる。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列において、359位〜544位の配列
(b)配列番号:2に記載の塩基配列において、211位〜506位の配列
(c)配列番号:3に記載の塩基配列において、291位〜540位の配列
(d)配列番号:4に記載の塩基配列において、255位〜447位の配列
(e)配列番号:5に記載の塩基配列において、21位〜151位の配列
(f)配列番号:6に記載の塩基配列において、151位〜461位の配列
(g)配列番号:7に記載の塩基配列において、359位〜478位の配列
(h)配列番号:8に記載の塩基配列において、6位〜155位の配列
(i)配列番号:9に記載の塩基配列において、155位〜348位の配列
(j)配列番号:10に記載の塩基配列において、269位〜534位の配列
ACR増幅用プライマーセット
配列番号:11(フォワードプライマー)、配列番号:12(リバースプライマー)
SW24増幅用プライマーセット
配列番号:15(フォワードプライマー)、配列番号:16(リバースプライマー)
SW2429増幅用プライマーセット
配列番号:19(フォワードプライマー)、配列番号:20(リバースプライマー)
SW1550増幅用プライマーセット
配列番号:21(フォワードプライマー)、配列番号:22(リバースプライマー)
SW1027増幅用プライマーセット
配列番号:23(フォワードプライマー)、配列番号:24(リバースプライマー)
SW1328増幅用プライマーセット
配列番号:27(フォワードプライマー)、配列番号:28(リバースプライマー)
SW443増幅用プライマーセット
配列番号:29(フォワードプライマー)、配列番号:30(リバースプライマー)
S0316増幅用プライマーセット
配列番号:32(フォワードプライマー)、配列番号:33(リバースプライマー)
SWR1921増幅用プライマーセット
配列番号:34(フォワードプライマー)、配列番号:35(リバースプライマー)
SW1263増幅用プライマーセット
配列番号:38(フォワードプライマー)、配列番号:39(リバースプライマー)
千葉県内の肉ブタ生産者が飼養する種ブタを中心にデュロック(D)種124頭、およびLW交雑種(ランドレース(L)種と大ヨークシャー(W)種の交雑種)348頭より血液、精液、耳片を採取し、フェノール法によりDNAの抽出を行った。その際、広く遺伝的多様性を検索するために血縁が無いようにサンプリングした。
選定したマーカーの有効性を評価するためのサンプルとして交配記録を持つ1戸の生産農家から父子の確認ができる親子についてD種種雄ブタ18頭、LWD三元交雑種35頭について毛根を採取し、フェノール法によりDNAを抽出した。また、種雄ブタのDNAを採取した生産者とは異なる生産農家3戸から、先のD種種雄ブタ18頭と血縁がないことを確認したLWD三元交雑種62頭分の毛根を採取しDNAを抽出した。なお、これらLWD三元交雑種62頭については、母ブタは全て違う個体である。
1) 一次スクリーニング
多様なマイクロサテライトマーカーを基に、一次スクリーニングを行った。まず、D種16頭、LW交雑種16頭のDNAを無作為に選抜し、それぞれを混合したDNAを用いて725個のマイクロサテライトマーカーについて解析した。これらのマイクロサテライトマーカーはRohrerらによって開発されたものである(Rohrer GA, et al., 1996. Genome Research, 6:371-391.)。PCR産物はABI3100シークエンサーで電気泳動し、GeneScanソフトウェアおよびGenotyperソフトウェアにより遺伝子型の解析を行った(以後も解析は同じ手法)。
1 三次スクリーニングに用いた16マーカー
2 最終の10マーカー
3 FAOにより推奨されているマイクロサテライトマーカー
30個のマーカーについてD種124頭、LW交雑種348頭の遺伝子型を個別のDNAを用いて解析した。個々のマーカーについてアリル数、アリル頻度からヘテロ接合率および父権否定確率を計算した。通常、父権否定確率は、父親、母親となる個体が同じメンデル集団(その集団内では交配が無作為に行われるような集団)に属することを仮定して計算されるが、ここでは肉ブタのトレーサビリティーへの応用を考慮して父権否定確率はD種を雄として、LW交雑種が雌として用いられた場合の値を算出した。各マーカーにおける複数のアリルをAu、Av等で表し、母ブタ集団におけるそれらの頻度をpu、pv等で、雄ブタ集団におけるそれらの頻度をqu、qv等で表すと、アリル数をmとした場合、母ブタと子ブタ(肉ブタ)の組み合わせに対して、その子ブタの父ブタからは排除される父権否定確率Q(A)は
Q=1-(1- Q1)(1- Q2) (1- Q3)・・・(1- Qn) ・・・(3)
と計算される。このように各マーカーについて父権否定確率を算出し、その値が高くまた解析が比較的容易な16個について次の親子サンプルを用いた解析を行った。
二次スクリーニングで得られた16マーカーを使用して、実際の親子についての判定をD種種雄ブタ18頭とその子であるLWD三元交雑種35頭を用いて行った。これらのマーカーの内、PCR増幅されないアリルの存在等により父子の間で見かけ上のアリルの遺伝に矛盾が見られるマーカー等を除き、また遺伝子型解析ソフト(GeneScanおよびGenotyper)によりほぼ自動で遺伝子型を決定できる10マーカーを選出した。二次スクリーニングの16マーカーおよび最終の10マーカーではFAOが推奨するマイクロサテライトマーカーとの重複はともに1マーカー(SW24)のみであった。これら10マーカーによる総合父権否定確率は父母子において0.9999、父子において0.9977と計算された(表2)。
2 D種124頭、LW種348頭を用いた解析からのD種を雄親とした時の推定値。
3 10マーカーの父権否定確率より求めた。父子関係を否定できた実数は1113組で実際の父権否定確率は1113/1116 = 0.9973であった。
選定された10個のマーカーを用いて3) 三次スクリーニングで用いたD種種雄ブタ18頭と他3農場で飼養された血縁の無い62頭のLWD三元交雑種のDNAについて解析を行い、親子関係の無い種雄ブタと肉ブタの間で父子関係を否定できる確率を調べ、このサンプルにおける各マーカーの父権否定確率を求めた。またヘテロ個体の割合からこのサンプルにおけるヘテロ接合率を求めた。さらに10マーカーによる総合父権否定確率および実際に否定された確率についても評価した。また単一農家における検証として3)で用いたD種種雄ブタ18頭とLWD三元交雑種35頭より、親子関係に無い595の組合せについても検証した。
単一農家に由来する親子関係の無いD種種雄ブタとLWD三元交雑種の595の組合せにおいては586組について否定された(586/595 = 0.9849)。また個々のマーカーの父権否定確率から計算した父子による総合父権否定確率は0.9820となった。
プライマーの再設計には登録されているマイクロサテライトマーカー近傍配列を含むブタのホールゲノムショットガン配列(NCBI, Blast Pig sequencesにより検索 )を利用した。S0316については片方の、SW2429、SW24、SW1263、SW1328については両方のプライマーを再設計した(図2AおよびB)。PCRプライマーの混合比・濃度(表4)、PCR反応条件についても検討した(表5、6)。その際、PCR反応を行ったチューブにおいて10倍希釈になるように水を加え、その1 μlをABI3100シーケンサーによる多型解析に使用した。
(1)ランダムサンプル、特定地域の農場、単一農場における総合父権否定確率
広く遺伝的多様性の維持が期待されるランダムサンプルの解析では総合父権否定確率は父母子において0.9999、父子において0.9977であった。実証に用いた4農場由来のサンプルでは父子において総合父権否定確率は0.9986という値が得られており、ランダムサンプルからの推測値とほぼ等しかった。ランダムサンプルで得られた父権否定確率はサンプルデータからのアリル頻度をもとに各マーカーの独立性や無作為交配などを想定した理論式より算出されている。しかし個々の農場で飼養するブタ群には遺伝的な偏りのためアリル頻度にも差異があり、また複数の種雄ブタに血縁関係が認められる。このような理由から小さな集団では精度が低下することがあると考えられる。単一農場に限った場合、本発明の10マーカーにおいては父子による総合父権否定確率は0.9820という値が得られている。Nechtelbergerらは本発明者らと同数の10個のマーカーを用いて、ランドレース種、大ヨークシャー種において父母子で0.9997および0.9999、父子で0.9918および0.9976の総合父権否定確率を報告している。しかし本発明者らが行った日本国内でのデュロック種を種雄ブタとして生産した肉ブタにおいてのNechtelbergerらの10マーカーによる父子判定では4農場由来のサンプルで0.9699(本発明0.9986)、単一農場由来のサンプルでは0.8910(本発明0.9820)であった。つまり本発明には約20倍、約6倍の精度が認められた(表7)。また検出できなかった偽父の実数は、4農場由来のサンプルで1116の組合せ中35(本発明では3)、および単一農場由来のサンプルで595の組み合わせ中63(本発明では9)であり本発明は約12倍、7倍の精度であった。このように本発明において本発明者らが選抜したマーカーは日本国内で生産されたブタ、特にデュロック種を種雄ブタとした場合の解析に適しており、一般的には99%以上、単一農場においても98%以上の確率で偽父を検出することができ、実用の期待に応えられる。
2 単一農場由来のD種種雄豚18頭およびLWD三元交雑種35頭の中から父子関係に無い595の組合せより計算した。
3 個々のマーカーの父権否定確率より計算した。
マイクロサテライトマーカーには非特異的増幅や単一ピークとならないアリルの存在など、単にサンプルを解析しただけではアリルを正確に判断できないものが存在し、再現性に問題があるということも指摘されている。理論的には解析可能であっても実用には適さないものが多いのである。今回は各スクリーニング段階において多型性が大きいこととともに解析が容易で誤判定がおきにくいマーカーを選定している。
またマルチプレックス化のために、PCRプライマーを再設計しており、プライマーの混合比率、PCRの条件においても最適化を行った。これによりPCR反応の作業量、コストをともに1/10にできただけでなく、PCR反応後の作業についてもマーカーを混合する10過程が必要なくなった(図4)。
Claims (16)
- 以下の(1)〜(4)の工程を含む、ブタの親子判定を行う方法。
(1)被検対象となる種ブタおよび子ブタ、それぞれよりDNAを抽出する工程
(2)抽出した種ブタおよび子ブタのそれぞれのDNAにおいて、ACR(配列番号:1)、SW24(配列番号:2)、SW2429(配列番号:3)、SW1550(配列番号:4)、SW1027(配列番号:5)、SW1328(配列番号:6)、SW443(配列番号:7)、S0316(配列番号:8)、SWR1921(配列番号:9)、および、SW1263(配列番号:10)の全てのDNAマーカーについて、それぞれの該DNAマーカー、もしくは、その一部の配列であってマイクロサテライト配列を含む配列からなるDNA断片をそれぞれ増幅する工程
(3)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片を解析し、該解析結果を比較する工程
(4)相同遺伝子のうち少なくとも片方の遺伝子において、種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の解析結果が一致する場合に、親子関係が否定されないと判断する工程 - 工程(2)において増幅される塩基配列が、下記(a)〜(j)から選択される少なくとも一つの部分配列を含む塩基配列であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列において、359位〜544位の配列
(b)配列番号:2に記載の塩基配列において、211位〜506位の配列
(c)配列番号:3に記載の塩基配列において、291位〜540位の配列
(d)配列番号:4に記載の塩基配列において、255位〜447位の配列
(e)配列番号:5に記載の塩基配列において、21位〜151位の配列
(f)配列番号:6に記載の塩基配列において、151位〜461位の配列
(g)配列番号:7に記載の塩基配列において、359位〜478位の配列
(h)配列番号:8に記載の塩基配列において、6位〜155位の配列
(i)配列番号:9に記載の塩基配列において、155位〜348位の配列
(j)配列番号:10に記載の塩基配列において、269位〜534位の配列 - 工程(2)において、塩基配列の増幅がPCR法によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- PCR法がマルチプレックスPCRであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
- 配列番号:11〜39に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つ以上をプライマーとして用いることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
- 下記(a)〜(j)のいずれかに記載のプライマーセットからなる群から選択される、少なくとも一つ以上のプライマーセットを同時に使用することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
(a)配列番号:11および12に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(b)配列番号:15および16に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(c)配列番号:19および20に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(d)配列番号:21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(e)配列番号:23および24に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(f)配列番号:27および28に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(g)配列番号:29および30に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(h)配列番号:32および33に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(i)配列番号:34および35に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(j)配列番号:38および39に記載の塩基配列からなるプライマーセット - プライマーが蛍光修飾されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
- 工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片の塩基配列を決定する工程
(ii)(i)により決定したDNA断片の塩基配列を比較する工程 - 工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片をゲル上で分離し、その長さを決定する工程
(ii)(i)により決定したDNA断片の長さを比較する工程 - 工程(3)が、以下の(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
(i)種ブタおよび子ブタの増幅されたDNA断片において、マイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を決定する工程
(ii)(i)により決定したマイクロサテライト配列に含まれる対立遺伝子の種類および数を比較する工程 - 種ブタおよび子ブタの親子関係が、種雄ブタと子ブタとの間の親子関係であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 種ブタおよび子ブタの親子関係が、種雄ブタ、種雌ブタおよび子ブタの三者間の親子関係であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 種ブタが、デュロック(D)種、ランドレース(L)種、大ヨークシャー(W)種、LW交雑種(ランドレース種と大ヨークシャー種の交雑種)のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 種雄ブタがデュロック種、種雌ブタがLW交雑種であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 下記(a)〜(j)の全てのプライマーセットを含むブタの親子判定を行なうためのキット。
(a)配列番号:11および12に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(b)配列番号:15および16に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(c)配列番号:19および20に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(d)配列番号:21および22に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(e)配列番号:23および24に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(f)配列番号:27および28に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(g)配列番号:29および30に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(h)配列番号:32および33に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(i)配列番号:34および35に記載の塩基配列からなるプライマーセット
(j)配列番号:38および39に記載の塩基配列からなるプライマーセット - 前記プライマーセットを同時に使用することによって、複数のDNAマーカーを検出することを特徴とする、請求項15に記載のキット。
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