しかしながら、雨水と共に貯水部内に流入した土砂を、流入口から流入する雨水の水勢により底面の土砂溜め部内に向けて移動させていることから、土砂は貯水部内で流入口から離れる方向へ押し流されるため、土砂溜め部内の領域のうち流入口から離れた領域に土砂が集中的に溜まり易くなる。土砂溜め部内の一部に土砂が集中的に溜まると、土砂溜め部内から土砂が溢れ出してしまう。
このため、土砂溜め部内の土砂を除去すべく該土砂を吸引したとき、土砂溜め部内から溢れ出た分の土砂を吸引することができなくなる虞がある。
そこで、本発明の目的は、貯水部内に流入した土砂を貯水部内から確実に除去することができる雨水貯留システムを提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、雨水を流入させる流入口が設けられ、該流入口から流入した雨水を貯留するための貯水部と、該貯水部内を充填するように積層されて前記貯水部内に配置された複数の充填部材と、前記貯水部の底面に設けられ、前記流入口を経て前記貯水部内に雨水と共に流入した土砂を溜めるための土砂溜め部とを備え、前記貯水部内には、該貯水部内に流入した土砂を前記土砂溜め部内にその伸長方向にほぼ一様に撒くための土砂撒き手段が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記土砂溜め部は、少なくとも前記流入口から前記貯水部内への雨水の流入方向に沿って伸びるように前記貯水部の前記底面に設けられており、前記土砂撒き手段は、前記土砂溜め部の上方に該土砂溜め部の伸長方向に沿って伸びるように配置され、一端が前記流入口に接続された管部材であり、該管部材には、前記流入口を経て前記管部材内に雨水と共に流入した土砂を雨水と共に流出させるための複数の流出孔が形成されており、該各流出孔は、その大きさが前記管部材の前記一端から他端に向けて漸次大きくなるように形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記管部材と前記土砂溜め部との間に配置された前記各充填部材には、それぞれ該各充填部材上を流れる雨水に含まれる土砂を前記各充填部材の下方へ落下させるための複数の落下孔が形成されており、該各落下孔は、それぞれが形成された前記各充填部材の上方に位置する前記各流出孔から落下する土砂の挿通を許す大きさを有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記管部材と前記土砂溜め部との間には、前記充填部材は配置されていないことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記管部材の前記他端は、前記貯水部内に開放していることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、貯水部内には、該貯水部内に流入した土砂を土砂溜め部内にその伸長方向にほぼ一様に撒くための土砂撒き手段が設けられていることから、貯水部内に流入口を経て雨水と共に流入した土砂を土砂撒き手段により土砂溜め部内に偏りなく均一に溜めることができる。
このことから、土砂溜め部内の領域のうち流入口から離れた領域に土砂が集中的に溜まることが防止されるので、従来のように土砂溜め部内の一部に土砂が集中的に溜まることによって土砂溜め部内から土砂が溢れ出してしまうことを、確実に防止することができる。
これにより、土砂溜め部内の土砂を除去すべく例えば土砂溜め部内に吸引装置のホースを挿入して吸引装置の作動によりホースを経て土砂を吸引したとき、土砂溜め部内に溜まった土砂のうちのほぼ全ての土砂を確実に吸引することができる。
従って、従来のように土砂溜め部内から溢れ出た分の土砂を残すことはなく、貯水部内に流入した土砂を貯水部内から確実に除去することができる。
請求項2に記載の発明によれば、土砂溜め部の上方に該土砂溜め部の伸長方向に沿って伸びるように配置され且つ一端が流入口に接続された管部材に、流入口を経て管部材内に雨水と共に流入した土砂を雨水と共に流出させるための複数の流出孔が形成されており、該各流出孔は、その大きさが管部材の一端から他端に向けて漸次大きくなるように形成されている。
一端が流入口に接続された管部材が土砂溜め部の上方に該土砂溜め部の伸長方向に沿って伸びるように配置されていることから、流入口を経て管部材内に雨水と共に流入した土砂は、管部材内から各流出孔を経て土砂溜め部に向けて流出する。
このとき、各流出孔の大きさが管部材の一端から他端に向けて漸次大きくなることから、管部材内に流入口を経て雨水と共に流入した土砂に含まれる砂及び石は、管部材内をその一端から他端に向けて移動したとき、それぞれが挿通可能な大きさを有する流出孔上を通過するときに該流出孔を経て管部材内からその下方へ流出する。すなわち、管部材内に流入した砂及び石は、それらのうち大きさが小さいものから順に管部材内からその下方へ流出する。
また、雨水が貯水部内に流入するとき、流入口を経て管部材内に直接流入することから、各流出孔を経て管部材内から流出した土砂は、土砂溜め部内に向けて沈降する過程で、貯水部内に流入する雨水から圧力を受けることはないので、雨水の水勢によって流入口から離れる方向へ押し流されることはない。
従って、各流出孔を経て管部材内から流出した土砂は、その貫通した流出孔のほぼ真下に沈降することから、土砂に含まれる砂及び石の大きさに応じて土砂溜め部内への土砂の沈殿位置を異ならせることができるので、土砂溜め部内に砂及び石をそれらの大きさ毎にほぼ分別して集積することができる。
このことから、土砂溜め部内の領域のうち流入口から離れた領域に土砂が集中的に溜まることなく土砂を土砂溜め部内にその伸長方向に沿って一様に撒くことができるので、従来のように土砂溜め部内の一部に土砂が集中的に溜まることによって土砂溜め部内から土砂が溢れ出してしまうことを、確実に防止することができる。
これにより、土砂溜め部内の土砂を除去すべく例えば土砂溜め部内に吸引装置のホースを挿入して吸引装置の作動によりホースを経て土砂を吸引したとき、土砂溜め部内に溜まった土砂のうちのほぼ全ての土砂を確実に吸引することができる。
従って、従来のように土砂溜め部内から溢れ出た分の土砂を残すことはなく、貯水部内に流入した土砂を貯水部内から確実に除去することができる。
請求項3に記載の発明によれば、管部材と土砂溜め部との間に配置された各充填部材には、それぞれ該各充填部材上を流れる雨水に含まれる土砂を各充填部材の下方へ落下させるための複数の落下孔が形成されており、該各落下孔は、それぞれが形成された各充填部材がそれぞれ対応する各流出孔から落下する土砂の挿通を許す大きさを有する。
このことから、管部材と土砂溜め部との間に配置された各充填部材に沈着した土砂を前記各充填部材に形成された各落下孔をその上方から下方へ通すことにより、前記各充填部材の真下に配置された充填部材に向けて土砂を流下させることができる。
これにより、管部材と土砂溜め部との間に充填部材が配置されている場合でも、該各充填部材がそれぞれ土砂溜め部内の適正な位置への土砂の沈降の妨げになることなく、従って、前記各充填部材上に土砂を滞留させることなく、土砂溜め部内で各流出孔に対応する適正な位置に土砂を集積することができる。
請求項4に記載の発明によれば、管部材と土砂溜め部との間には、充填部材は配置されていないことから、各流出孔を経て管部材内から流出した土砂が土砂溜め部内に向けて沈降するとき、その沈降が充填部材に妨げられることが確実に防止される。
また、雨水が貯水部内に流入するとき、流入口を経て管部材内に直接流入することから、各流出孔を経て管部材内から流出した土砂は、土砂溜め部内に向けて沈降する過程で、貯水部内に流入する雨水から圧力を受けることはないので、雨水の水勢によって流入口から離れる方向へ押し流されることはない。
従って、各流出孔を経て管部材内から流出した土砂を、その貫通した流出孔のほぼ真下に沈降させることができるので、砂及び石を土砂溜め部内に適正な位置に確実に沈降させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、管部材の他端が貯水部内に開放していることから、管部材内に流入した雨水を他端から貯水部内に流出させることができる。
これにより、管部材内にその一端から流入する雨水の単位時間当たりの流入量が各流出孔からの単位時間当たりの流出量を全て足し合わせた量よりも多い場合でも、管部材内が満水になることによって雨水の逆流や管部材への大きな負荷等が発生することを、確実に防止することができる。
本発明に係る雨水貯留システム10は、図1に示すように、雨水を貯留するための貯水部11を備える。
貯水部11は、地面を掘り下げることにより形成されており、上方へ開放する凹状をなしている。貯水部11の開口12には、図示の例では、防水性を有する被覆部材13が開口12を覆うように設けられている。貯水部11の底面14は、図示の例では、矩形状をなした平坦面である。底面14上には、例えば割栗石のような石を敷き詰めることにより基礎部15が形成されており、該基礎部上には、例えば合成樹脂からなる防水シート16が敷設されている。貯水部11の側面11a上には、前記したと同様の防水シート18が設けられている。基礎部15上及び側面11a上への防水シート16,18の設置により、貯水部11内に貯留された雨水が基礎部15及び側面11aから地中に浸透することが防止される。図1で見て左側に位置する防水シート18の上部18aには、該防水シートを部分的に切り取ることにより、雨水を貯水部11内に流入させるための流入口19が形成されている。
貯水部11の図1で見て左右両側の外方には、図示の例では、それぞれ第一のマンホール20及び第二のマンホール21がそれぞれ埋設されている。第一及び第二の各マンホール20,21は、図示の例では、それぞれほぼ正方形の横断面を有する筒状をなしており、それぞれの軸線が上下方向を向くように貯水部11の奥行方向の中央部に配置されている。
第一のマンホール20の側壁20aには、図1に示すように、流入口19で貯水部11内に開放する開口22が形成されている。
第一のマンホール20の側壁20aには、図示しないが従来よく知られているように、道路に設けられた排水溝内の雨水を第一のマンホール20に案内するための流入管が接続されている。前記流入管を経て第一のマンホール20内に案内された雨水の水位が上昇して開口22の下縁部22aを超えたとき、雨水は第一のマンホール20内から開口22及び流入口19をそれぞれ経て貯水部11内に流入する。
第二のマンホール21の側壁21aの下部21bには、後述する土砂溜め部29内に開放する開口23が形成されている。
貯水部11内には、貯水部11の周囲からの土圧により貯水部11の側面11aが崩れることを防止するための複数の充填部材24が配置されている。
各充填部材24は、図1に示す例では、それぞれポリエチレン及び塩化ビニルのような合成樹脂からなり、平面がほぼ正方形をなした板部材からなる。各充填部材24は、貯水部11の基礎部15上にマトリックス状に整列して配置され、更に、貯水部11内を充填するように該貯水部の深さ方向に積層されている。各充填部材24は、図2に示すように、その四つの角部を構成する四本の柱状の連結部25と、該各連結部に固定され、水平面に対して所定の角度で傾斜する平坦な板状の傾斜板部26とを有する。
各連結部25は、図示の例では、それぞれ横断面が二等辺三角形をなした筒状をなしており、軸線が上下方向を向き且つ斜辺が各充填部材24の内方へ向くように配置されている。各連結部25の下端25aには、互いに重なり合った他の充填部材24の対応する連結部25の上端25bに嵌合可能な嵌合部分27が形成されている。各充填部材24を互いに重ね合わせたときに、各充填部材24の各連結部25の嵌合部分27を、他の充填部材24の対応する各連結部25の上端25bにそれぞれ嵌合させることにより、互いに重なり合った各充填部材24を互いに連結することができる。互いに重なり合った各充填部材24間に、図1に示すように、両充填部材24の連結部25に接続可能なスペーサ部材Sを配置することにより、両充填部材24間の間隔を調節することができる。また、各層を構成する複数の充填部材24は、それぞれ図示しない連結手段により連結される。
傾斜板部26の傾斜角度は、貯水部11内に雨水と共に流入した土砂が傾斜板部26上に滞留することなく雨水と共に傾斜板部26上を図2に示す矢印の方向へ容易に流れる大きさに設定されている。傾斜板部26には、貯水部11内に貯留された雨水から浮力を受けることを防止すべく雨水の流通を許す複数の流通孔33が形成されている。
各充填部材24は、図3に示すように、それぞれ傾斜板部26の傾斜が貯水部11の基礎部15の図3で見て上下方向(以下、奥行方向と称す。)の中央部に向けて下り勾配となるように、基礎部15上に整列して配置され、更に、貯水部11の深さ方向に積層されている。流入口19を経て貯水部11内に流入した雨水及びそれに含まれる土砂は、各充填部材24の傾斜板部26上を順次流れ落ち、貯水部11の基礎部15の前記中央部に向けて案内される。
貯水部11の周囲からその内方に向けての土圧は、互いに隣接した各充填部材24間でそれらを圧縮する圧縮力として受け止められるので、土圧による貯水部11の側壁11aの崩れが防止される。
貯水部11の基礎部15の前記中央部には、図1及び図3に示すように、各充填部材24により案内された土砂を留めるための前記した土砂溜め部29が設けられている。土砂溜め部29は、図3で見て左右方向に沿ってすなわち流入口19から貯水部11内への雨水の流入方向に沿って伸び、上方へ開放している。土砂溜め部29の両端のうち第二のマンホール21側に位置する端部29aは、開口23を経て第二のマンホール21内に開放している。
更に、本発明に係る雨水貯留システム10は、貯水部11内に流入した土砂を土砂溜め部29内にその伸長方向にほぼ一様に撒くための土砂撒き手段30を備える。
土砂撒き手段30は、図示の例では、管部材31で構成されている。管部材31は、図4に示すように、両端31a,31bがそれぞれ開放しており、積層された各充填部材24間の大きさとほぼ等しい外径を有する。管部材31は、図5に示す例では、土砂溜め部29の上方で流入口19の高さ位置とほぼ等しい高さ位置で上下方向に配列された各充填部材29間に挿入されている。これにより、管部材31は、図1に示すように、土砂溜め部29の伸長方向に沿って伸びるように土砂溜め部29の上方に配置されている。管部材31の一端31aは、流入口19を介して第一のマンホール20の開口22に接続されている。管部材31の他端31bは、図示の例では、貯水部11内に開放している。
管部材31には、図4に示すように、流入口19を経て管部材31内に雨水と共に流入した土砂を雨水と共に流出させるための複数の流出孔32が形成されている。各流出孔32は、図1及び図4に示す例では、それぞれほぼ円形をなしており、それぞれが管部材31の軸線方向に間隔をおいて配置されている。各流出孔32の大きさは、それぞれ管部材31の一端31aから他端31bに向けて漸次大きくなるように設定されている。
図示の例では、管部材31をその軸線方向に三つの領域31c,31d,31eに分け、各領域に、それぞれ該各領域内で大きさが同一であり且つ各領域間で大きさが異なるように複数の流出孔32が形成されている。
各領域31c,31d,31eのうち管部材31の一端31aを含む第一の領域31c内に形成された各流出孔32の大きさは、各領域31c,31d,31eに形成された各流出孔32の中で最も小さい。
各領域31c,31d,31eのうち管部材31の他端31bを含む第二の領域31d内に形成された各流出孔32の大きさは、各領域31c,31d,31eに形成された各流出孔32の中で最も大きい。
各領域31c,31d,31eのうち管部材31の軸線方向の中央の第三の領域31eに形成された各流出孔32の大きさは、前記第一の領域31cに形成された各流出孔32よりも大きさが大きく且つ前記第二の領域31dに形成された各流出孔32の大きさよりも小さい。
前記第一、第二及び第三の各領域31c,31d,31eに形成された各流出孔32は、図示の例では、それぞれ管部材31の下縁部31fに形成されている。
また、本実施例では、図6に示すように、管部材31と土砂溜め部29との間に配置された各充填部材24すなわち複数の充填部材24のうち図3で見て傾斜板部26の傾斜方向が図3の左右方向を向いている各充填部材24(以下、前記各充填部材24と称す。)の傾斜板部26に形成された各流通孔33は、該各流通孔がそれぞれ形成された前記各充填部材24の上方に位置する各流出孔32から落下する砂及び石の挿通を許す大きさを有する。前記各充填部材24の各流通孔33の大きさは、図示の例では、それぞれ前記各充填部材24の上方に位置する各流出孔32とほぼ等しい大きさに設定されている。
第一のマンホール20内の雨水の水位が上昇して開口22の下縁部22aを超えたとき、雨水及び土砂は第一のマンホール20内から開口22及び流入口19をそれぞれ経て貯水部11内に配置された管部材31内にその一端31aから流入する。管部材31が前記したように土砂溜め部29の上方に該土砂溜め部の伸長方向に沿って伸びるように配置されていることから、管部材31内の雨水の一部は、管部材31内から各流出孔32を経て管部材31の下方へ流出する。
このとき、各流出孔32の大きさが管部材31の一端31aから他端31bに向けて前記領域毎に漸次大きくなることから、管部材31内に雨水と共に流入した土砂に含まれる砂及び石は、管部材31の一端31aから他端31bに向けて前記各領域内を移動したとき、それぞれが挿通可能な大きさを有する流出孔32が形成された前記領域内を通過するときに該流出孔を経て管部材31内からその下方へ流出する。すなわち、管部材31内に流入した砂及び石は、それらのうち大きさが小さいものから順に管部材31内からその下方へ流出する。
また、雨水が貯水部11内に流入するとき、流入口19を経て管部材31内に直接流入することから、各流出孔32を経て管部材31内から流出した土砂は、土砂溜め部29内に向けて沈降する過程で、貯水部11内に流入する雨水から圧力を受けることはないので、雨水の水勢によって流入口19から離れる方向へ押し流されることはない。
管部材31内から各流出孔32を経て管部材31の下方へ流出した砂及び石は、管部材31の下方に配置された各充填部材24の傾斜板部26に沈着する。各充填部材24の傾斜板部26が前記したようにそれぞれ所定の角度で傾斜していることから、各充填部材24の傾斜板部26に沈着した土砂は、該傾斜板部上をその下縁部26a(図2参照。)に向けて下降する。このとき、管部材31と土砂溜め部29との間に配置された各充填部材24の傾斜板部26に形成された各流通孔33の大きさが、前記したように、それぞれ前記各充填部材24の上方に位置する各流出孔32とほぼ等しい大きさに設定されていることから、前記各充填部材24の傾斜板部26上を下降する土砂は、該土砂が沈着した充填部材24に隣り合う充填部材24に落下することなく、各流通孔33を経て前記各充填部材24の真下に配置された充填部材24上に落下する。すなわち、各流通孔33は、それぞれ前記各充填部材24上の土砂を落下させるための落下孔を構成する。
従って、管部材31の前記各領域の各流出孔32を経て管部材31内から流出した土砂は、前記各領域の下方に配置された各充填部材24を経た後、土砂溜め部29の領域のうち管部材31の前記各領域に対応する領域に向けて沈降する。これにより、土砂に含まれる砂及び石の大きさに応じて土砂溜め部29内への土砂の沈殿位置が異なるので、砂及び石はそれぞれ土砂溜め部29内に砂及び石の大きさ毎にほぼ分別して集積される。
また、管部材31の他端31bが前記したように貯水部11内に開放していることから、管部材31内に流入した雨水の一部は、管部材31内をその一端31aから他端31bに向けて移動した後、管部材31の他端31bから貯水部11内に流出する。
土砂溜め部29内に集積された土砂を除去する際、例えば図示しない吸引装置のホースを、第二のマンホール21内に挿入し、更に、第二のマンホール21の側壁21aに形成された開口23を通して土砂溜め部29内に挿入し、前記吸引装置の作動により前記ホースを経て土砂溜め部29内から土砂を吸引する。これにより、土砂溜め部29内に溜められた土砂を貯水部11内から排出することができる。
本実施例によれば、前記したように、土砂撒き手段30を構成する管部材31に形成された各流出孔32の大きさが管部材31の一端31aから他端31bに向けて漸次大きくなることから、土砂に含まれる砂及び石の大きさに応じて土砂溜め部29内への土砂の沈殿位置を異ならせることができるので、土砂溜め部29内に砂及び石をそれらの大きさ毎にほぼ分別して集積することができる。
このことから、土砂溜め部29内の領域のうち流入口19から離れた領域に土砂が集中的に溜まることなく土砂を土砂溜め部29内にその伸長方向に沿って一様に撒くことができるので、従来のように土砂溜め部29内の一部に土砂が集中的に溜まることによって土砂溜め部29内から土砂が溢れ出してしまうことを、確実に防止することができる。
これにより、土砂溜め部29内の土砂を除去すべく例えば土砂溜め部29内に吸引装置のホースを挿入して吸引装置の作動によりホースを経て土砂を吸引したとき、土砂溜め部29内に溜まった土砂のうちのほぼ全ての土砂を確実に吸引することができる。
従って、従来のように土砂溜め部29内から溢れ出た分の土砂を残すことはなく、貯水部11内に流入した土砂を貯水部11内から確実に除去することができる。
また、前記したように、管部材31と土砂溜め部29との間に配置された各充填部材24には、それぞれ該各充填部材上を流れる雨水に含まれる土砂を各充填部材24の下方へ落下させるための複数の落下孔である流通孔33が形成されており、該各流通孔は、それぞれが形成された前記各充填部材24の上方に位置する各流出孔32から落下する土砂の挿通を許す大きさを有する。
このことから、前記各充填部材24に沈着した土砂を前記各充填部材24に形成された各流通孔33をその上方から下方へ通すことにより、前記各充填部材24の真下に配置された充填部材24に向けて土砂を流下させることができる。
これにより、管部材31と土砂溜め部29との間に充填部材24が配置されている場合でも、該各充填部材がそれぞれ土砂溜め部29内の適正な位置への土砂の沈降の妨げになることなく、従って、前記各充填部材24上に土砂を滞留させることなく、土砂溜め部29内で各流出孔32に対応する適正な位置に土砂を集積することができる。
更に、前記したように、管部材31の他端31bが貯水部11内に開放していることから、管部材31内に流入した雨水を他端31bから貯水部11内に流出させることができる。
これにより、管部材31内にその一端31aから流入する雨水の単位時間当たりの流入量が各流出孔32からの単位時間当たりの流出量を全て足し合わせた量よりも多い場合でも、管部材31内が満水になることによって雨水の逆流や管部材31への大きな負荷等が発生することを、確実に防止することができる。
本実施例では、管部材31に形成された各流出孔32がそれぞれほぼ円形をなした例を示したが、これに代えて、例えば図7に示すように、管部材31の軸線方向又は周方向に沿って伸びるように各流出孔32を形成することができる。この場合、各流出孔32の幅寸法を、それぞれ管部材31の一端31aから他端31bに向けて漸次大きくなるように設定することができる。
また、本実施例では、複数の流出孔32が管部材31の下縁部31fに管部材31の軸線方向にそれぞれ間隔をおいて形成された例を示したが、これに代えて、図示しないが、複数の流出孔32を、それぞれ管部材31に前記第一、第二及び第三の各領域31c,31d,31e内で管部材31の軸線方向及び周方向にそれぞれ間隔をおくように形成することができる。
更に、本実施例では、管部材31の前記第一、第二及び第三の各領域31c,31d,31e内に形成された各流出孔32の大きさが各領域31c,31d,31e内で同一である例を示したが、これに代えて、図示しないが、各流出孔32の大きさが前記第一、第二及び第三の各領域31c,31d,31e内及び該各領域間で管部材31の一端31aから他端31bに向けて漸次大きくなるように設定することができる。
また、本実施例では、管部材31と土砂溜め部29との間に配置された各充填部材24の傾斜板部26に形成された各流通孔33の大きさが、それぞれ前記各充填部材24の上方に位置する各流出孔32とほぼ等しい大きさに設定された例を示したが、これに代えて、図示しないが、各流通孔33の大きさを、それぞれ管部材31に形成された複数の流出孔32のうち最も大きい流出孔32の大きさとほぼ等しい大きさに設定することができる。これにより、前記各充填部材24の傾斜板部26上を下降する土砂を、各流通孔33を経て前記各充填部材24の真下に配置された充填部材24上に容易に落下させることができる。
更に、本実施例では、連結部25と傾斜板部26とを有する充填部材24を本発明に適用した例を示したが、これに代えて、例えば図8に示すように、ほぼ矩形状をなした板状部材35と、該板状部材から該板状部材の一側に伸びる複数の筒状の脚部材36とを有する充填部材37を本発明に適用することができる。
各充填部材37は、充填部材24と同様に、貯水部11の基礎部15上にマトリックス状に整列して配置され、更に、貯水部11内を充填するように該貯水部の深さ方向に積層される。
板状部材35及び各脚部材36は、図示の例では、それぞれポリエチレン及び塩化ビニルのような合成樹脂からなる。また、図示の例では、板状部材35をその下方から見て行列状をなすように9つの脚部材36がそれぞれ等間隔をおいて配置されている。板状部材35には、各脚部材36内にそれぞれ開放する複数の開口40が形成されている。
また、図9に示すように、第一のマンホール20の開口22に分岐管38が流入口19を介して接続されている。分岐管38は、その一端38aで第一のマンホール20の開口22に接続されている。分岐管38の他端38bには、それぞれに図4に示した管部材31の一端31aが接続される2つの分岐部39が形成されている。
各分岐部39は、それぞれ貯水部11内に第一のマンホール20側とは反対側へ向けて開放しており、それぞれ列方向(図9で見て上下方向である。)に配列された各脚部材36間に位置している。各分岐部39にそれぞれ接続された各管部材31は、それぞれ各分岐部39から列方向に配列された各脚部材36間を土砂溜め部29の伸長方向に沿って伸びる。
図8及び図9に示す例によれば、雨水及び土砂が第一のマンホール20内から開口22及び流入口19をそれぞれ経て分岐管38内に流入し、更に、該分岐管内を経て各分岐部39からそれぞれ各管部材31内に流入する。各管部材31内に雨水と共に流入した土砂に含まれる砂及び石は、前記したと同様に、それらのうち大きさが小さいものから順に流出孔32を経て各管部材31内からその下方へ流出する。各管部材31の下方へ流出した砂及び石は、各管部材31の下方に配置された各充填部材37の板状部材35に沈着する。各板状部材35に沈着した土砂は、雨水と共に各開口40を経て各脚部材36内に流入し、前記各充填部材37の真下に配置された充填部材37の板状部材35上に落下する。これにより、各管部材31内から流出した土砂は、該各管部材の下方に配置された各充填部材37の開口40及び各脚部材36内をそれぞれ経た後、土砂溜め部29の領域のうち各管部材31の前記各領域に対応する領域に向けて沈降する。
図1乃至図9に示す例では、管部材31と土砂溜め部29との間に充填部材24,37が配置された例を示したが、これに代えて、管部材31と土砂溜め部29との間に配置された充填部材24,37をそれぞれ不要とすることができる。
この場合、各流出孔32を経て管部材31内から流出した土砂が土砂溜め部29内に向けて沈降するとき、その沈降が充填部材24,37に妨げられることが確実に防止される。
また、雨水が貯水部11内に流入するとき、流入口19を経て管部材31内に直接流入することから、各流出孔32を経て管部材31内から流出した土砂は、土砂溜め部29内に向けて沈降する過程で、貯水部11内に流入する雨水から圧力を受けることはないので、雨水の水勢によって流入口19から離れる方向へ押し流されることはない。
従って、各流出孔32を経て管部材31内から流出した土砂を、その貫通した流出孔32のほぼ真下に沈降させることができるので、砂及び石を土砂溜め部29内に適正な位置により確実に沈降させることができる。
また、図1乃至図9に示す例に代えて、例えば図10に示すような充填部材41を本発明に適用することができる。充填部材41は、従来よく知られたコンクリート製のボックスカルバートであり、貯水部11の基礎部15上から立ち上がる複数の柱部材42と、該柱部材の上端部間に架け渡されるように配置される頂板部材43とを有する
各柱部材42は、それぞれ貯水部11の前記奥行方向に沿ってそれぞれ間隔をおき且つ貯水部11の横方向(図1で見て左右方向である。)に沿ってそれぞれ間隔をおいて配列されている。図示の例では、複数の流出孔32が形成された管部材31は、前記奥行方向に配列された複数の柱部42のうち土砂溜め部29上に位置する一対の柱部材42間を貯水部11の前記横方向に沿って伸びるように配置されている。
図10において、貯水部11に土砂溜め部29が設けられていない場合には、管部材31の配置を図9に示した位置以外の位置に設定することができる。
また、図1乃至図9に示す例では、貯水部11の左右両側の外方にそれぞれ第一のマンホール20及び第二のマンホール21がそれぞれ埋設された例を示したが、これに代えて、第一及び第二の各マンホール20,21をそれぞれ不要とすることができる。この場合、管部材31の一端31aに前記流入管を流入口19を介して接続し、更に、土砂溜め部29を例えば下水管に接続することができる。これにより、雨水を前記流入管から管部材31内に直接流入させることができ、また、第一のマンホール20内からの雨水により土砂溜め部29内を押し流された土砂を土砂溜め部29内から前記下水管に排出することができるので、前記吸引装置を用いた吸引作業が不要とすることができる。
図1乃至図10に示す例では、土砂溜め部29が流入口19から貯水部11内への雨水の流入方向に沿って伸びる例を示したが、これに代えて、又は、これに加えて、例えば貯水部11の奥行方向に沿って伸びる土砂溜め部29を本発明に適用することができる。この場合、管部材31の軸線方向が土砂溜め部29の伸長方向に沿うように管部材31の形状及び配置態様を適宜変更することができる。
また、図1乃至図10に示す例では、土砂撒き手段30が、複数の流出孔32が形成された管部材31で構成された例を示したが、これに代えて、貯水部11内に流入した土砂を土砂溜め部29内にその伸長方向にほぼ一様に撒くことができれば、管部材31以外の部材で土砂撒き手段30を構成することができる。
更に、図1乃至図10に示す例では、貯水部11の側面11a上及び基礎部15上に、それぞれ地中への雨水の浸透を防止するための防水シート16,18が設けられた例を示したが、これに代えて、貯水部11内に貯留された雨水を地中に徐々に浸透させるために、貯水部11の側面11a上及び基礎部15上に、それぞれ図示しない透水シートを設けることができる。