JP4980277B2 - 電気化学用電極、その製法、およびこれを用いる電解方法 - Google Patents

電気化学用電極、その製法、およびこれを用いる電解方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガス発生用電極、燃料電池用電極などの電気化学用電極、その製法、およびこれを用いる電解方法に関する。詳しくは電気めっき溶液中の有機成分、塩化物、ヨウ化物、臭化物、フッ化物の各イオンの減耗を抑制でき、また、陰極防食、クロムめっき、電解採取、金属回収、水処理、機能性水合成、海水分解、水電解、塩分解(例えば、Na2SO4からのH2SO4及びNaOHの回収)、酸化物、過酸化物の電解合成などに利用できる電極、その製法、および電解方法に関する。
水溶液の電気分解工業においては、安定性に優れた金属電極が使用されている。代表的な水溶液電気分解である食塩水の電解による塩素とアルカリ金属水酸化物の製造では、陽極としてチタン等の薄膜形成性金属またはその合金上に白金族の金属またはその化合物を含有する電極触媒物質の被覆を形成した不溶性電極(DSE、寸法安定性電極の略称)が実用化されてきた。DSEは食塩電解以外にも、例えば、金属の電解採取、金属箔の電解製造、鋼板への亜鉛めっき、錫めっき等において陽極として汎用されつつある。
しかしながら、金属の電解採取、金属箔の電解製造、電気めっき等の電解液には各種添加剤が加えられており、添加剤が陽極上で酸化分解し、また吸着するため、電極の劣化を促進するのみならず、電解液組成の制御が困難であった。前記添加剤には例えば塩化物イオンが含まれ、この塩化物イオンは陽極で塩素分子に酸化され、この塩素分子は直ちに次亜塩素酸イオン(ClO-)に分解される。
この添加剤の分解を解決するための技術が下記特許文献に開示されている。
特許文献1
多孔質ガラス板の片側に白金を蒸着、その後白金めっきを進行させ、電極と多孔質ガラスの接合体を形成した電極で、多孔質ガラスは反応物質の電極への透過を抑制する材料として利用する。但しイオン交換性の付与およびその効果についての記載はない。
特許文献2
イオン交換膜等の隔膜を組み合わせた膜付き中空電極が記載されており、イオン交換膜と電極が完全に別の部品として利用されている。
特許文献3
多数のコーティング層を活性なコーティング層上に形成した電極について記載している。但しイオン交換性の付与およびその効果についての記載はない。
特許文献4
MnO2触媒による塩素ガス発生反応を抑制する技術が記載されている。
しかしながら、前記いずれの技術においても、特性を安定に維持できず、構造が複雑になるなどの欠点があり、実用上問題点があった。
この問題点を解決するための技術が下記特許文献に開示されている。
特許文献5
導電性基体の表面に、酸化ケイ素粒子とこの酸化ケイ素粒子の表面に被覆された白金などの貴金属又は金属酸化物より構成される被覆層を形成した電解用電極が記載されている。この被覆層は酸化ケイ素をSi含有量で75原子%より多く85原子%以下含有する。 酸化ケイ素粒子を電極表面に形成しているが、イオン交換性を付与することは記載されてない。
特許文献6
複数の電極触媒物質を含有する溶液からゾル−ゲル法、あるいは共沈によって電極触媒物質を析出させて、得られた析出物を電極基体上に焼成する電解用電極の製造方法が記載されているが、ゾル−ゲルで作製した触媒物質のイオン交換性については記載ない。
特許文献7
多孔性ガラス電解質膜からなる板状電解質体と触媒電極を備えている燃料電池が記載されている、多孔質体がイオン導電性および触媒性を有しているが、ほうろうの利用、及び電解用としてのイオン交換性の利用については記載ない。
特許文献8
プロトン導電性を有する固体電解質膜、その製法、及び該固体電解質膜を用いた燃料電池を提供するため、ゾル-ゲル法により無機−有機ハイブリッド膜を製造する第1工程、該無機−有機ハイブリッド膜から有機分子を除去することにより無機多孔質膜を製造する第2工程、及び該無機多孔質膜の細孔内及び表面にプロトン導電性基を導入する第3工程からなるプロトン導電性固体電解質膜の製法等を開示している。しかしながら電極に関する発明ではない。
特許文献9
チタン、チタン合金などの金属基体表面に形成した導電性酸化物層上に導電性チタン酸化物粒子10〜80重量%を含有するほうろう層を形成し、ほうろう層上に酸化イリジウムを含有する電極触媒被覆層形成した電解用電極が記載されている。電極触媒のマトリックスとして、あるいは、電極触媒の下地層としてのほうろうの利用が提案されているのであり、触媒層上にほうろうにより無機多孔質体を結合させ、さらにイオン交換性を付与した電解用電極の技術ではない。
特開平3−79782号公報 特開2007−284736号公報 特表2006−503187号公報 特開2007−302925号公報 特開2003−64496号公報 特開平6−256985号公報 特開2007−184201号公報 特開2005−71756号公報 特開平6−192870号公報
前記したいずれの技術によっても、ガスが発生するような工業電解の場合、発生圧力により無機多孔質体自体が電極から離脱してしまうため、所望の特性を長期的に維持することはできなかった。更に正又は負に帯電した添加剤成分が比較的自由に電極に接触して添加剤の組成が変化したり、有害な成分を生成させることが多く、添加剤成分が電極に接触して反応に関与することを防止すること、つまり反応選択性を向上させることも重要な課題である。
本発明は、この従来技術の欠点を解決し、反応選択性を向上させて電解液中の各種添加剤の消耗を抑制し、かつ物理特性が優れた長寿命の電極を提供することを目的とする。
本発明は、触媒層を有する電極基材に、800℃以下の低軟化点硝子を接着剤として、イオン交換基を有する有機ケイ素化合物を含む無機多孔質体を結合させたことを特徴とする電気化学用電極である。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の電気化学用電極の構成要素を順に説明する。
[電極基材]
電極基材は金属とし、公知の電極基材を使用できる。例えば陽極基材の場合は、陽分極時に電解液に対して耐食性のあるチタンやチタン合金等の薄膜形成性金属が望ましい。陰極基材としては、ニッケル、ステンレスなどの金属が使用可能である。
触媒層との接合強度を高めるため、電極基材の表面をスチールショットなどによりブラスト処理をして表面を粗面化した後に酸洗浄することが好ましい。
[触媒層]
触媒層は、例えば酸化イリジウム、酸化ルテニウム、白金、酸化パラジウム、酸化ロジウムなどの貴金属、貴金属酸化物、あるいはこれらの貴金属成分に、弁金属系、ランタニド系の金属酸化物を含有させた複数の成分が使用できる。これらの金属イオンを含む溶液(水溶液、アルコール系など)を調製し、これを基材に塗布し、乾燥後に熱分解することにより形成する。塗布、乾燥、焼成の工程は複数回繰り返すことで、強固な触媒層を形成することができる。
また、本発明は、電気めっきにより白金やイリジウムを形成させたもの、電着により作製した酸化鉛、酸化スズ、スパッターなどの析出方法によって形成させたもの、黒鉛電極、導電性ダイアモンド電極など、従来から公知の電極に広く適用できる。
[低軟化点硝子]
低軟化点硝子の代表的物質として、釉薬がある。釉薬とは、陶磁器やほうろうの表面を覆っているガラス質であり、粘土や灰などを水に懸濁させた液体である。一例として市販の釉薬の化学組成を示す。
長石 K2O・Al23・6SiO2 39%
珪石 SiO2 33%
カオリン Al23・2SiO2・2H2O 12%
ドロマイト MgCO3・CaCO3 8.8%
石灰石 CaCO3 7.1%
他の低軟化点硝子としては、ほうろうがある。主成分が酸化ケイ素であり、これに微量のケイフッ化ナトリウムなどのフッ化物とほう酸、二酸化チタン等を含むほうろうが基材金属との接合性、および金属表面の被覆性、耐食性の点から望ましい。例として、SiO2が30〜60重量%、Na2SiF6 が5〜10重量%、TiO2 が5〜10重量%であり、残りがB23、K2O、CaO、Co34、MnO2等の1〜3価の金属酸化物、ガラス化剤を含有するものが望ましい。
更に他の低軟化点硝子として、水ガラスや、ホウ砂等も利用できる。
低軟化点硝子の原料は、後工程に適用しやすくするために、0.1mm以下まで粉砕しておくことが好ましく、例えば、乳鉢にて細かく粉砕する。これに蒸留水を加え、ペースト状になるまで混練する。次に、電極表面に、刷毛などにて被覆層の厚さが0.005mmから1mmになるようにペースト状の低軟化点硝子を塗布する。
硝子軟化点は、450℃から1000℃の広い範囲で選定できるが、電極触媒及び電極基材の温度特性を考慮して、本発明では800℃以下とする。
[無機多孔質体]
電極基材の触媒層表面に塗布した前記低軟化点硝子上に無機多孔質体をのせ、十分に自然乾燥させる。低軟化点硝子と無機多孔質体は、予め混合しておいてもよい。無機多孔質体と低軟化点硝子の組成比は、5:1から1:5の範囲が好ましい。
無機多孔質体とは多孔質ガラスや多孔質セラミックスのように内部に多数の微細な孔を有した無機材料であり、無機多孔質材料は有機系の多孔質材料に比べて以下のような特徴を有している。
(1)熱安定性が高い(無機物のみで多孔質体を構成できる)。
(2)耐酸化反応、強酸性条件に関し極めて安定である。
(3)メカニカルに硬い骨格で、膨潤しない。
(4)化学修飾が容易である。
(5)多孔質体の穴サイズを4nm以上で任意に設定可能である。
本発明に適する多孔質ガラスとして、最も一般的なホウケイ酸ガラスの組成(SiO2:83%,B23:13%, Na2O:4%)ではなく、SiO2:70%,B23:20%,Na2O:10%の割合で含まれるホウケイ酸ガラス(例えば「ポーラスガラス」(ダウコーニング社商標))を原料として使用し、均一な孔の多孔質ガラスを得ることが好ましい。
原料となるSiO2(ケイ砂)、H3BO3(硼酸)、NaCO3(ソーダ灰)から通常の溶融プロセスによりNa2O−B23−SiO2系ガラスを作製し、乾燥し、成形した後に、電気炉で400〜900℃、電極触媒および電極基材への影響を考慮して、好ましくは450〜650℃にて10〜60分間加熱、溶融すると、スピノーダル分解により、ガラス内部でSiO2リッチ相とNa2O−B23リッチ相に数nmのスケールで分相がおこる。この分相ガラスを酸溶液に浸漬すると、Na2O−B23相のみが酸で溶出され、SiO2骨格を持つ多孔質ガラスが得られる。この方法で得られる多孔質ガラスの細孔は表面から内部まで連結した貫通細孔であり、細孔径は熱処理条件により容易に制御できる。
多孔質ガラスを被覆した電極の無機多孔質体表面を清浄化するため、希塩酸などを使用して、例えば1〜24時間、200℃で真空乾燥しても良い。
多孔質セラミックスは、細孔径がオングストローム単位からmm単位の広い範囲に渡り、主に粒子径を制御した骨材粒子を焼結して得られる。多孔質セラミックスにはゼオライトのように結晶構造内の空隙を細孔とするものと、アルミナなどの微粒子結合体の粒子間隙を細孔とするものがあり、両者とも工業的に広く利用されている。シリカ成分を有する材料としてシリカライトゼオライトなどが好ましい。
新しいガラスの製造法として注目されているゾルーゲル法は、金属の有機又は無機化合物の溶液をゲルとして固化し、ゲルを乾燥・加熱し酸化物固体を作製する方法である。現在、広く用いられている金属アルコキシド溶液を用いたゾルーゲル法ではアルコキシドの加水分解反応と脱水縮合反応によりゲル化が進行する。例えばテトラエトキシシランを原料としたときの加水分解・脱水縮合反応はそれぞれ(1)、(2)式で示される。
Si(OC254+4H2O→ Si(OH)4+4C25OH ・・・(1)
Si(OH)4→・SiO2+2H2O ・・・(2)
(2)式の脱水縮合反応の結果得られるシリカゲルは内部に溶媒や水を含み、それ自体が多孔体であり、内部に数nm程度の多数の細孔を有している。無機多孔質体の孔径は4〜200nmの範囲が好ましい。
[イオン交換基を有する有機ケイ素化合物]
イオン交換基を有する有機ケイ素化合物は、通常イオン交換基に変換しうる基を含有する有機ケイ素化合物から調製する。
イオン交換基に変換しうる基を含有する有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)としては、特開2005−71756号公報に記載のように、XjkSi[(CH2n−Y]m(Xはアルコキシ基又はハロゲン原子、Rはアルキル基、Yはイオン交換基に変換しうる基、jは1、2又は3、kは0、1又は2、mは1、2又は3でありj+k+m=4を満たし、nは2〜11の整数を示す)や、X3Si−(CH2n−Y(Xは炭素数1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子、Yは−SH、−P(O)(OR1)(OR2)又は−COOR3、R1、R2及びR3は同一又は異なるアルキル基、アリール基又はアラルキル基、nは2〜8の整数を示す)で表される化合物が知られている。
無機多孔質体表面のシラノール基と有機ケイ素化合物のシランカップリングおよびイオン交換基導入(官能基変換)は同時に行うことが可能である。一例として、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン〔(3-mercaptopropyl)trimethoxysilane〕および3,1−プロパンスルトン(3,1-propanesultone)をトルエンに溶かした溶液を作製し、無機多孔質体をこの溶液中に浸漬すると、(3)(3a)(3b)で示すように、無機多孔質体表面に有機ケイ素化合物を介してスルホン交換基が形成される。この反応は、窒素雰囲気下120℃で2時間程度加熱還流して行うことが好ましい。
Si−OH+ Si(OCH3)3(CH23SH+(CH23SO3 → Si−O−Si(OCH3)2(CH23S−(CH23SO3H+ CH3OH・・・(3)
Si−OH +(CH23SO3 → Si−O−(CH23SO3H・・・(3a)
Si−OH + Si(OCH3) 3(CH23SH → Si−O−Si(OCH3)2(CH23SH + CH3OH
Si−O−Si(OCH3) 3(CH23SH →導入後酸化→ Si−O−Si(OCH3) 2(CH23SO3H・・・(3b)
反応条件に応じて、無機多孔質体1g当たり1〜20×10-4Mのプロトン交換基が形成できる。無機多孔質体:イオン交換基の組成比は、モル比として100:(0.1〜10)の範囲で、また、無機多孔質体と有機ケイ素化合物の組成比は、モル比として100:(0.1〜10)の範囲で調整する。
イオン交換基を導入する他の方法として、無機多孔質体の表面を清浄化したあと、該無機多孔質体を、プロパンスルトン(Propane Sultone、5%トルエン溶液)を含む無水トルエン中で加熱還流する方法や、(3-メルカプトプロピル)-トリメチルシラン((3-Mercaptopropyl)-trimethoxysilane、5%トルエン溶液)を含む無水トルエン中で加熱還流し、洗浄後過酸化水素水で酸化し、置換基変換によりチオール基からスルホン酸基を生成する方法(化学と工業 第57巻 第1号(2004年)p41〜p44)、また、1,2,2−トリフルオロ−2−ヒドロキシー1−(トリフルオロメチル)−エタンスルホン酸[1,2,2-trifluoro-2-hydroxy-1-(trifluoromethyl)-ethanesulfonic acid、5%トルエン溶液]を含む無水トルエン中で加熱還流する方法も知られている。
アミノ基は、多孔質体を例えば2時間200℃で真空乾燥し、乾燥トルエン、シランカップリング剤(3―アミノプロピルトリエトキシシラン)をフラスコ内に加え攪拌し、窒素雰囲気下で120℃、2時間加熱還流して、多孔質体表面へ導入できる。導入したアミノ基により、陰イオン交換が実現できる。また、導入したアミノ基へのアミド結合により容易に任意の置換基を導入することもできる。
イオン交換基付与の工程は、電極に接合する前の、無機多孔質体のみの段階で実施することも可能である。
本発明の電極は、低軟化点硝子を接着剤としているため、電極基材と無機多孔質体との接合性が良好であり、イオン交換基による静電的効果と、無機多孔質の被覆層による反応物質の透過抑制効果が相乗的に作用して、反応選択性が付与される。この電極を用いて電解することで、電解液中の各種添加剤の消耗が抑制されかつ添加剤の分解による有害成分の生成が回避でき、また、物理特性が優れているため、長い電極寿命を得ることができる。イオン交換基を有する層が電極触媒を固定した電極上に固定されており、電極と一体化しているため、取扱が容易である。
本発明の電極は、電気めっき、陰極防食、クロムめっき、電解採取、金属回収、水処理、機能性水合成、海水分解、水電解、塩分解(例えば、Na2SO4からのH2SO4及びNaOHの回収)、酸化物、過酸化物の電解合成などで、利用できる。
本発明の電気化学用電極の概略断面図を図1に例示し、図2には、イオン選択性の発現機構の概略を示した。
図1に示す通り、電極基材1表面に触媒層2が被覆されている。触媒層2の表面には、層状の低軟化点硝子3と、図示の例では球状のイオン交換基を有する無機多孔質体4が存在し、低軟化点硝子3と無機多孔質体4で被覆層5が形成されている。
前記低軟化点硝子3は接着剤として機能し、前記無機多孔質体4を強固に電極基材1及び触媒層2に結合させている。
無機多孔質体3や低軟化点硝子4にはイオン交換基が導入されていて、イオン交換基が図2のように負電荷を有するスルホン酸基であると、スルホン酸基と親和性のある陽イオンであるナトリウムイオンは、電極の触媒層方向に移動できる。これに対し、陰イオンである塩化物イオンは、スルホン酸基と反発し、電極の触媒層には近接できない。
図3は、多孔質ガラス粒子であるPG−200の顕微鏡写真、図4は、後述の実施例1で得られた電気化学用電極の顕微鏡写真である。図4の写真で、例えば白い丸枠で囲んだ部分のうち骨格以外の部分が多孔質ガラスであり、白い骨格が低軟化点硝子である。
次に本発明に係る電気化学用電極の実施例及び比較例を記載するが、これらは本発明を限定するものではない。
[実施例1]
チタン基材をサンドブラスト処理により粗面化した後、90℃の25重量%の塩酸で酸洗をした。次いで、塩化イリジウムとペンタブチルタンタレートとをモル比で2:1となるように、ブチルアルコールに溶解し、これを塗布液とした。空気中60℃で10分乾燥させ、550℃で15分間焼成した。塗布、乾燥と焼成の操作を10回繰り返して酸化イリジウムの塗布量が15g/m2である電極を作製した。
乳鉢に釉薬(ロペットコバタ電気工業株式会社、七宝焼き釉薬、R101、白透、主成分は、長石39%、珪石33%)を加え、細かく砕いた。砕いた釉薬に、蒸留水を体積比で1:1になるように加え、釉薬がペースト状になるまで混練した。
次に、電極に刷毛にて被覆層の厚さが0.5mmになるようにペースト状の釉薬を塗布した。そこに多孔質ガラス粒子(細孔直径30nm、表面積80m2/g)を50mg/cm2となるように載せ、十分に自然乾燥させた。
乾いた後、電極を電気炉で、650℃で30分加熱した。ガラス表面を清浄化するため、少量の希塩酸と電極をフラスコ内に入れ、24時間200℃で真空乾燥した後、温度が常温程度に戻るまで自然冷却した。(3-メルカプトプロピル)-トリメチルシラン〔(3-mercaptopropyl)trimethoxysilane〕および3.1−プロパンスルトン(3,1-propanesultone)をモル比で6:4となるようにトルエンに溶かした溶液を作製し、窒素雰囲気下、該溶液に電極を浸漬した。無水窒素雰囲気下で加熱還流を120℃にて12時間行った。その後に窒素雰囲気状態で温度が下がるのを待ち、電極をトルエンで洗浄した。
この多孔質ガラスを被覆した電極を0.1MのKCl水溶液に加えたところ、溶液のpHが酸性となり、イオン交換基が形成されていることを確認した。
このように多孔質ガラスおよび釉薬を被覆して作製した電極を陽極とし、塩素効率測定を行った。生成した次亜塩素酸イオンをKI酸化還元滴定にて濃度測定し、電流効率に換算した。
電解条件:
電流密度 :0.05A/cm2(投影に対して)
電極面積 :8mm・8mm(両面とも電極として作用)
対極 :白金板
電解液 :30g/L−NaCl
温度 :成り行き
液量 :300mL
電解時間 :30分
電極間距離:10mm
次亜塩素酸生成に関する電流効率は25%であり、塩化物イオンの酸化分解が抑制されていることを確認した。他の75%の電流は水分子の酸化反応(酸素発生)に寄与した。
[比較例1]
多孔質ガラスおよびほうろうを被覆していない電極を使用して、同様の電解にて次亜塩素酸生成の電流効率は測定したことろ85%で、塩化物イオンの酸化分解が抑制されていないことを確認した。
[実施例2]
多孔質ガラス粒子を2倍量としたこと以外は実施例1と同様に作製した電極で、同様に次亜塩素酸生成の電流効率を測定したところ14%であり、塩化物イオンの酸化分解が抑制されていることを確認した。
本発明の電気化学用電極の概略断面図である。 イオン選択性の発現機構を説明するための概略図である。 多孔質ガラスの原料の顕微鏡写真である。 実施例1に従って作製した電極断面の顕微鏡写真である。
符号の説明
1 電極基材
2 触媒層
3 低軟化点硝子
4 無機多孔質体
5 被覆層5

Claims (8)

  1. 触媒層を有する電極基材に、800℃以下の低軟化点硝子を接着剤として、イオン交換基を有する有機ケイ素化合物を含む無機多孔質体を結合させたことを特徴とする電気化学用電極。
  2. 触媒層が、白金族金属あるいは白金族金属酸化物の触媒を有する請求項1に記載の電極。
  3. 無機多孔質体が多孔質ガラス、多孔質セラミックス及びゾル-ゲル法による多孔質ゲルから選択され、多孔質の孔径が4〜200nmである請求項1に記載の電極。
  4. 低軟化点硝子がほうろう、釉薬、水ガラスまたはホウ砂である請求項1に記載の電極。
  5. イオン交換基を有する有機ケイ素化合物のイオン交換基が、スルホン酸基、あるいはアミノ基である請求項1に記載の電極。
  6. 無機多孔質体と低軟化点硝子の体積組成比が1:5から5:1であり、無機多孔質体の厚さが0.005mmから1mmである請求項1の電極。
  7. 無機多孔質体を、800℃以下の低軟化点硝子を接着剤として触媒層を有する電極上に結合させ、その後該多孔質体および該低軟化点ガラスの一部に、イオン交換基を有する有機ケイ素化合物を付与させることを特徴とする電気化学用電極の製法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極を用いる電解方法。
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