JP4978868B2 - スピンフィルタ効果素子及びそれを用いた磁気デバイス - Google Patents

スピンフィルタ効果素子及びそれを用いた磁気デバイス Download PDF

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Description

本発明は、スピンフィルタ効果素子およびそれを利用した磁気デバイスに関する。
金属や半導体に外部磁界を印加したときに、その抵抗が変化する磁気抵抗効果は、磁気ヘッドや磁気センサなどに使用されている。より大きな磁気抵抗を得るために、トンネル接合を用いた磁気抵抗効果素子がある。その中でも、第1の従来例として強磁性スピントンネル接合(MTJ)素子及び第2の従来例としてスピンフィルタ効果素子がある。
第1の従来例のMTJ素子に関しては、非特許文献1に記載されている。
この強磁性層/絶縁体層/強磁性層からなるMTJ素子は、外部磁界によって2つの強磁性層の磁化を互いに平行あるいは反平行に制御することにより、膜面垂直方向のトンネル電流の大きさが互いに異なる、いわゆるトンネル磁気抵抗(TMR)効果が、室温で得られる。
TMRは、使用する強磁性層と絶縁体との界面におけるスピン分極率Pに依存し、二つの強磁性体のスピン分極率をそれぞれP,P とすると、一般に、下記(1)式で与えられることが知られている。
TMR =2P /(1−P ) (1)
ここで、強磁性層のスピン分極率Pは0<P≦1の値をとる。
現在、スピン分極率が約0.5のCoFe合金を用いたMTJ素子により得られているTMRは、室温において約50%である。
(1)式からわかるように、P=1の磁性体を用いると無限に大きなTMRが期待される。P=1の磁性体はハーフメタルと呼ばれる。
これまで、NiMnSb、Fe 、CrO 、(La−Sr)MnO 、Th MnO、Sr FeMoO など種々のハーフメタルを用いてTMR素子が製作されたが、いずれも室温のTMRは期待に反して小さく、せいぜい十数%程度であった。
現在、MTJ素子は、ハードデイスク用磁気ヘッド及び不揮発性磁気メモリ(MRAM)への応用が期待されている。MRAMは、MTJ素子をマトリックス状に配置し、別に設けた配線に電流を流して磁界を印加する構造を有している。この印加磁界により、各MTJ素子を構成する二つの磁性層を互いに平行、反平行に制御することにより、1、0を記録させている。また、読み出しは、TMR効果を利用して行う。
第2の従来例のスピンフィルタ効果素子は、例えば、非特許文献2に記載されている。このスピンフィルタ効果素子は、トンネル障壁としてEuSなどの磁性半導体を用い、電極に非磁性金属(金(Au)とアルミニウム(Al))を用いたものである。トンネル障壁が磁性半導体であるため、そのエネルギー準位はスピンによって異なるので、トンネル障壁がスピンに依存することになり、非磁性金属電極からのトンネル電子のコンダクタンスはスピンに依存する。即ち、トンネル障壁はスピンフィルタの役割を担い、このような現象はスピンフィルタ効果と呼ばれる。スピンフィルタ効果素子では磁性半導体のエネルギー準位のスピン分裂が大きいほど、より大きなスピンフィルタ効果が期待される。上述の文献では、スピンフィルタ効果としてスピン分極率P=0.8が得られている。
さらに、トンネル障壁にEuS磁性半導体を用い、一方の電極に非磁性金属を、他方の電極に強磁性金属を用い、強磁性金属の磁化を外部磁界で反転させることによって磁気抵抗効果を得ることができる。この場合の磁気抵抗変化率は、磁性半導体のエネルギー準位のスピン分裂に依存し、それが大きいほどより大きなトンネル磁気抵抗が期待される。
これまでの報告(例えば、非特許文献3参照)によれば、Al/EuS/Gdからなるスピンフィルタ素子において、2Kで100%を超えるTMRが得られている。
T.Miyazaki et.al. J.Magn.Mater., L39, p.1231, 1995年 J.S.Moodera, X.Hao, G.A.Gibson and R.Mersevey, Phys.Rev.Lett. Vol.61, p.637, 1988年 P.LeClair, J.K.Ha, H.J.M.Swagten, J.T.Kohlhepp, G.H.vanVin and W.J.M.de Jonge, Appl.Phys.Lett., Vol.80, p.625, 2002年
第1の従来例のMTJ素子をMRAMに応用し、高密度化のために素子サイズを小さくすると、素子バラツキに伴うノイズが増大するので、TMRの値の大きいMTJ素子が必要となる。現状のTMRの値である約60%ではまだTMRが小さく、TMRの大きい素子が得られないという課題がある。
第2の従来例のスピンフィルタ効果素子では、100%を超えるTMRが得られているが、EuSのキュリー点が16.8Kと低温のため、このような大きなTMRは、2Kという極低温でしか得られていない。従って、常温動作のスピンフィルタ効果素子が実現されていないという課題がある。
本発明は、上記課題に鑑み、キュリー点の高い新しい強磁性体をトンネル障壁に用い、室温かつ低外部磁界で、非常に大きなTMRを有するスピンフィルタ効果素子を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明のスピンフィルタ効果素子は、非磁性層からなる第1の電極と、第1の電極上のマグネタイトを除く高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜と、強磁性スピネルフェライト膜上の絶縁膜と、絶縁膜上の強磁性層からなる第2の電極と、が順に配置され、高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜が、電子に対してスピンに依存したトンネル障壁として作用し、絶縁膜が電子に対してスピンに依存しないトンネル障壁として作用し、かつ、強磁性スピネルフェライト膜と第2の電極となる強磁性層との磁気的結合を弱める作用をすることを特徴とする。
この構成によれば、本発明のスピンフィルタ効果素子は、マグネタイト(Fe )を除く高抵抗の強磁性スピネルフェライトをトンネル障壁に用いることにより、室温かつ低外部磁界で、非常に大きなTMRを得ることができる。
また、高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜において、Feの一部が、Mn,Co,Ni,Cu,Mg,Liおよびそれらの混合物で置換されており、かつ比抵抗が1Ω・cm以上であることを特徴とする。
また、高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜が、MFe3−x (Mは、Mn,Co,Ni,Cu,Mg,Liの何れか1つ)であることを特徴とする。
高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜が、CoFeからなることを特徴とする。
このような高抵抗強磁性スピネルフェライトは、エネルギーバンドのスピン分裂が1eV以上と大きいため、大きなTMRが得られる。また、比抵抗を1Ω・cm以上とすることにより、トンネル障壁が効率良く形成できる。
前記構成において、第2の電極の強磁性層上に反強磁性層が配置されており、強磁性層と反強磁性層とがスピンバルブ構造からなることを特徴とする。また、第2の電極は保護膜となる非磁性金属に覆われていてよい。また、スピンフィルタ効果素子は、基板上に形成されている。
この構成によれば、スピンバルブ効果により強磁性電極の磁化は、反強磁性層との交換相互作用により、スピンが1方向に固定されるので、本発明のスピンフィルタ効果素子のTMRは更に大きくなる。
また、本発明の磁気デバイスは、前記構成のスピンフィルタ効果素子を有することを特徴とする。この構成によれば、本発明のスピンフィルタ効果素子は、室温において低外部磁界で大きなTMRを有するので、高感度磁気ヘッド、信号電圧の大きいMRAM、高感度の磁界センサなどの磁気デバイスを提供することができる。
以上の説明から理解されるように、本発明のスピンフィルタ効果素子によれば、室温で、かつ、低外部磁界で、非常に大きなトンネル磁気抵抗が得られ、従来にない新規なスピンフィルタ効果素子を提供することができる。
また、本発明のスピンフィルタ効果素子は、構造が簡便で室温で非常に大きなトンネル磁気抵抗が得られるので、従来の磁気抵抗効果素子よりもはるかに微細化が可能である。
さらに、このスピンフィルタ効果素子は、磁気デバイスに使用することで新規な磁気デバイスを提供することができる。このスピンフィルタ効果素子を磁気デバイスに使用すれば、高感度磁気ヘッドや信号電圧の大きいMRAMを実現できるほか、各種高感度の磁界センサなどが提供できることになる。
以下、本発明によるスピンフィルタ効果素子及びそれを用いた磁気デバイスの実施の形態を図面により詳細に説明する。
図1は本発明のスピンフィルタ効果素子の構成を示す断面図である。本発明のスピンフィルタ効果素子1は、高抵抗のスピネルフェライト12の薄膜が第1の電極である非磁性電極11と第2の電極である強磁性電極13との間に挿入された構造を有している。直流電源14は、第1の電極11と第2の電極13に印加され、外部磁界15が膜面内に平行に印加されている。
ここで、高抵抗のスピネルフェライト12は、強磁性を有し、その厚さはトンネル現象が生起するように十分に薄く形成されている。直流電源14は、非磁性電極11からの電子が、スピネルフェライト12中をトンネルして、強磁性電極13へ流れるように、非磁性電極11側を負とする向きに接続する。
図2は、本発明のスピンフィルタ効果素子の動作を説明するためのエネルギー準位を示す模式図である。図において、Φ↓(下向き矢印)は、第1の電極のフェルミ準位からの高抵抗のスピネルフェライト12の↓(下向き矢印)スピンバンドの電位障壁高さである。
また、高抵抗のスピネルフェライト12は、強磁性体であるため、↑(上向き矢印)スピンバンドのエネルギー準位は、Φ↓と異なるΦ↑(上向き矢印)で示す。図2に示すように、Φ↑がΦ↓よりも小さいので、スピン電子e↑のみが、Φ↑のトンネル障壁を介して強磁性電極13側にトンネルすることができる。
このように、トンネル障壁がスピンに依存することで、非磁性金属電極11からのトンネル電子による抵抗、または、コンダクタンスは、スピンに依存し、スピンに依存したトンネル現象を示す。すなわち、トンネル障壁はスピンフィルタとして働く。
従って、本発明のスピンフィルタ素子1では、高抵抗のスピネルフェライト12のエネルギー準位のスピン分裂が大きいほど、より大きなスピンフィルタ効果が得られる。また、本発明のスピンフィルタ素子1では外部磁界15を印加し、このスピンフィルタ効果を利用すると共に、外部磁界により第2電極の強磁性層のスピンを反転させることによって、大きなトンネル磁気抵抗効果が得られる。
図1に示す本発明のスピンフィルタ効果素子の第2の電極13は、強磁性電極上に、さらに反強磁性層を積層して形成することができる。この構造では、スピンバルブ効果により強磁性電極の磁化は、反強磁性層との交換相互作用により、スピンが1方向に固定されるので、電極13のスピンの平行、反平行を容易に得ることができるため、本発明のスピンフィルタ効果素子のTMRは更に大きくなる。
また、本発明のスピンフィルタ効果素子の第2の電極13の強磁性電極、または、反強磁性層の上には、さらに保護膜となる非磁性の電極層を堆積させることが好ましい。
本発明のスピンフィルタ効果素子1は、スパッタ法、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法などの通常の薄膜成膜法を用いて成膜することができる。
次に、本発明のスピンフィルタ効果素子に用いるスピネルフェライトについて説明する。
スピネルフェライトは、MFe なる化学式で表される。ここで、Mは、Zn、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Liなどの2価のイオンであり、Feは3価の鉄イオンである。
スピネル構造の単位胞は分子式MFe の8個分のイオンから構成され、金属イオンの入る位置は結晶学的に異なるA、B二つのサイトがある。Aサイトは、4個の酸素で4面体的に囲まれ、Bサイトは、6個の酸素で8面体的に囲まれている。
ここで、M=Feであるマグネタイト(Fe )は、金属的な伝導性を有し、トンネル障壁の機能を有しないから、本発明のスピンフィルタ効果素子のトンネル障壁とならない。
このA、Bサイトへの金属イオンの入り方の違いで正スピネルと逆スピネルとがある。2価のイオンがAサイトに入るものを正スピネル、Bサイトに入るものを逆スピネルという。
従って、正スピネルフェライトは、(M2+)[Fe3+]O、逆スピネルフェライトは、(Fe3+)[Fe3+2+]O となる。
ここで( )は、Aサイトを、[ ]は、Bサイトを表す。
正スピネルフェライトは、M=Zn,Cd,Mnの場合のみであり、それ以外は逆スピネルであることが知られている。
スピネルフェライトでは、AサイトとBサイト間(A−B間)の負の交換相互作用が最も大きく、A−A間およびB−B間のそれは、負の小さな値である。従って、逆スピネルフェライトでは、M2+のスピンの大きさのみで磁化の値が決まる。
一方、正スピネルでは、Mが非磁性元素の場合には、A−B間の相互作用は零であり、B−B間の負の相互作用によって反強磁性体になる。そのため、ZnフェライトやCdフェライトは反強磁性体である。他方、正スピネルにおいて、Mの量が1より小さい場合には、Mの不足した位置をFe3+が占めることになるので、(MFe1−x )[Fe ]O 、即ちM Fe3−x となる。
この結果、MFe3−x のMが非磁性元素でも(1+x)個のFe3+に相当する磁化が生じて強磁性体になり、本発明のスピンフィルタ効果素子のトンネル障壁に用いる強磁性層として好適である。
本発明のスピンフィルタ効果素子に用いる強磁性スピネルフェライト12は、特に、エネルギーバンドのスピン分裂が1eV以上と大きく、大きなTMRが得られ、且つ室温で動作させるためにキュリー点が室温よりも十分高い材料であることが好ましい。また、スピンフィルタ効果を得るために、有効なトンネル障壁とするためには、高抵抗のスピネルフェライト12の抵抗率は、1Ω・cm以上が好適である。
このような、強磁性スピネルフェライト12としては、Feの一部を、M=Zn、Mn、Co、Ni、Cu、Mg、Li及びそれらの混合物で置換した材料が好適である。
また、高抵抗の強磁性スピネルフェライト12が、MFe3−x (Mは、Zn,Mn,Co,Ni,Cu,Mg,Liの何れか1つ)であればよい。
このような、本発明に用いる高抵抗のスピネルフェライト12のキュリー点は、おおよそ300℃以上あるので、室温で十分に動作する。
本発明によるスピンフィルタ効果素子1は以上のように構成されており、外部磁界の印加により以下のような抵抗が得られる。
図3は本発明のスピンフィルタ効果素子に外部磁界を印加したときの抵抗を模式的に説明する図である。図の横軸は、スピンフィルタ効果素子に印加される外部磁界で、縦軸が抵抗である。ここで、本発明のスピンフィルタ効果素子には、トンネル電流が流れるために必要な電圧が十分に印加されている。
図示するように、本発明のスピンフィルタ効果素子の抵抗は、外部磁界により大きな変化を示す。外部磁界を領域(I)より印加し、外部磁界を減少させ、零として、さらに外部磁界を反転して増大させると、領域(II)から領域(III )において最小の抵抗から最大の抵抗に変化する。ここで、領域(II)の外部磁界をH とする。
さらに、外部磁界を増加させると、領域(III )から領域(IV)を経て領域(V)までの抵抗変化が得られる。これにより、本発明のスピンフィルタ効果素子1は、領域(I)と、領域(III )の外部磁界おいて、強磁性電極13のスピンが強磁性トンネル障壁のスピンに対して平行と反平行の状態となり、それぞれ抵抗が最小と最大となる。
次に、領域(V)から、外部磁界を減少させ、零として反転させ領域(■)に戻した時には、抵抗は、領域(V),領域(IV),領域(III ),領域(VI)を経て、領域(I)へと変化する。領域(II)と領域(VI)は所謂ヒステリシスが得られる領域である。ここで、領域(VI)の磁界は−Hとする。ヒステリシスの発生する磁界H と−H の磁界の絶対値は、おおよそ等しい。
ここで、磁気抵抗変化率は、外部磁界を印加したとき、
磁気抵抗変化率=(最大の抵抗−最小の抵抗)/最小の抵抗(%)
で表され、この値が大きいほど、磁気抵抗変化率としては、望ましい。
これにより、本発明のスピンフィルタ効果素子1は、図3に示すように、磁界が零から±Hより極く僅かに大きい磁界、即ち低い磁界を加えることで、大きな磁気抵抗変化率が得られる。
本発明のスピンフィルタ効果素子によれば、キュリー点が室温より高い高抵抗のスピネルフェライト12と、第2の電極13の強磁性電極とにより、室温で大きな磁気抵抗変化率を得ることができる。
また、本発明のスピンフィルタ効果素子の第2の電極をスピンバルブ電極とすれば、より大きい磁気抵抗変化率を得ることができる。
次に、本発明のスピンフィルタ効果素子を用いた磁気デバイスに係る実施の形態を示す。
図3に示すように、領域(I)から領域(III )の間で大きな抵抗変化、即ち大きな磁気抵抗変化率が得られる。
本発明のスピンフィルタ効果素子1は、室温で、かつ、低磁界において大きな磁気抵抗変化率を有しているので、磁気抵抗センサとして用いれば、感度の高い磁気デバイスを得ることができる。
また、本発明のスピンフィルタ効果素子1は、室温で、かつ、低磁界において大きな磁気抵抗変化率を有しているので、感度の高い読み出し用の磁気デバイス所謂磁気ヘッドを構成することができる。
また、本発明のスピンフィルタ効果素子をマトリックス状に配置し、別に設けた配線に電流を流して外部磁界を印加することで、スピンフィルタ効果素子を構成する第2の強磁性電極の磁性層を互いに平行、反平行に制御することにより、抵抗が高い状態と抵抗が低い状態となり保持、即ち記録ができる。
これを1、0として記録させることで、MRAMなどの磁気デバイスを構成することができる。
次に、本発明のスピンフィルタ効果素子の実施例について説明する。
図4は、本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の実施例1の構成を示す断面図である。図に示すように、本発明のスピンフィルタ効果素子1は、例えばMgO(100)基板20上に非磁性の第1の電極11が配置され、第1の電極11上に高抵抗のスピネルフェライト12の薄膜が配置され、さらに高抵抗のスピネルフェライト12の薄膜上に第2の電極13となる強磁性層13Aが配置されている。ここで、上記構造は、高周波スパッタ法によってMgO(100)基板20上に、非磁性の第1の電極11としてTiNを10nm、強磁性トンネル絶縁層となるスピネルフェライト12としてCoFe24 を3nm、第2の電極13となる強磁性層13Aを5nm、それぞれ堆積して成膜した多層膜である。
なお、成膜時に100Oe(Oe:エルステッド)の磁界を印加して膜面内に一軸異方性を導入した。また、CoFe2412を成膜するときには基板20を400℃の温度に加熱した。
図5は、本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の四端子磁気抵抗測定用のパターンを示す平面図である。フォトリソグラフィとイオンミリングを用いてこの積層膜を微細加工し、十字型のパターンを形成した。図示するように、幅wとして4μmの微小なスピンフィルタ効果素子1を製作した。
ここで、四端子法を用いて磁気抵抗を測定した結果、CoFe 2 4 12のスピン反転に伴う磁気抵抗効果曲線が得られ、その大きさは、室温で約120%と非常に大きい値を示した。これは、強磁性CoFe24 膜12のスピン分裂が非常に大きく、ハーフメタル的振る舞いを示したことによると考えられる。なお、CoFe24 12の単独薄膜の抵抗率は104Ω・cm以上であった。
図6は、本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の実施例2の構成を示す断面図である。図に示すように、本発明のスピンフィルタ効果素子1は、MgO(100)基板20上に、非磁性の第1の電極11が配置され、第1の電極11上に高抵抗のスピネルフェライト12の薄膜が配置され、さらに高抵抗のスピネルフェライト12の薄膜上に、第2の電極13となる強磁性層13Aと反強磁性体層13Bとが配置されている。
ここで、上記構造は、MBE法によってMgO(100)基板20上に、非磁性の第1の電極11としてTiNを10nm、強磁性トンネル絶縁層となるスピネルフェライト膜12としてMn0.25Fe2.754を3nm、第2の電極13となる強磁性層13Aを5nm、反強磁性体層13BとしてIrMnを5nm、順次堆積して成膜した多層膜である。IrMn層13Bは、反強磁性体であり、強磁性層13Aのスピンを固定する役割をしている。なお、Mn0.25Fe2.754 膜12を成膜するときには、基板20を400℃の温度に加熱した。
図5は、本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の四端子磁気抵抗測定用のパターンを示す平面図である。フォトリソグラフィとイオンミリングを用いてこの積層膜を微細加工し、十字型のパターンを形成した。図示するように、幅wとして4μmの微小なスピンフィルタ効果素子1を製作した。
本実施例2でも、上記実施例1の場合と同様に、四端子法を用いて磁気抵抗を測定した結果、Mn0.25Fe2.75 膜12のスピン反転に伴う磁気抵抗効果曲線が得られ、その大きさは室温で約180%と非常に大きい値を示した。これは強磁性体のMn0.25Fe2.75膜12のスピン分裂が非常に大きく、ハーフメタル的振る舞いを示したことによると考えられる。なお、Mn0.25Fe2.75膜12の単独薄膜の抵抗率は、約100Ω・cmであった。
本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の実施例3の構成は、上記実施例2と同じ構成である。
実施例3におけるスピネルフェライト膜12は、実施例2によるMn0.25Fe2.75膜12を、MnFe24 膜12に変えたものである。他の各層の構成は、実施例2と同一である。
ここで、上記構造は、高周波スパッタ法によってMgO(100)基板20上に、非磁性の第1の電極11としてTiNを10nm、強磁性トンネル絶縁層となるスピネルフェライト12としてMnFe24 を3nm、第2の電極13となる強磁性層13Aを5nm、反強磁性体層13BとしてIrMnを5nm、順次堆積して成膜した多層膜である。IrMn膜13Bは反強磁性体でありMnFe24 膜12のスピンを固定する役割をしている。また、成膜時に100Oeの磁界を印加して膜面内に一軸異導入した。MnFe24 膜12を成膜するときには、基板20を400℃の温度に加熱した。
本実施例でも、同様に図5のスピンフィルタ効果素子の四端子磁気抵抗測定用のパターンを示す平面図を用いて説明する。フォトリソグラフィとイオンミリングを用いてこの積層膜を微細加工し、十字型のパターンを形成した。図示するように、幅wとして4μmの微小なスピンフィルタ効果素子1を製作した。
ここで、四端子法を用いて磁気抵抗を測定した結果、MnFe 膜12のスピン反転に伴う磁気抵抗効果曲線が得られ、その大きさは室温で約130%と非常に大きい値を示した。これは、MnFe 膜12のスピン分裂が非常に大きく、ハーフメタル的振る舞いを示したことによると考えられる。なお、MnFe膜12の単独薄膜の抵抗率は、10 Ω・cm以上であった。
図7は本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の実施例4の構成を示す断面図である。図に示すように、本発明のスピンフィルタ効果素子は、熱酸化Si基板21上にスピンフィルタ効果素子1を形成している。Si基板21の表面を熱酸化し、酸化膜21Bを形成した。この基板21上に、非磁性の第1の電極11が配置され、第1電極11上に高抵抗のスピネルフェライト12の薄膜が配置され、さらに高抵抗のスピネルフェライト12の薄膜上に、第2の電極13となる強磁性層13Aと、反強磁性体層13Bと、さらに保護膜となる電極層13Cが配置されている。
ここで、上記構造は、高周波スパッタ法によって熱酸化Si基板21上に、非磁性の第1の電極11としてAlを10nm、強磁性トンネル絶縁層となるスピネルフェライト12としてZn0.35Fe2.654を5nm、第2の電極13となる強磁性層13Aを10nm、反強磁性体層13BとしてIrMnを5nm、保護層13Cとなる非磁性層のAlを5nm、順次堆積して成膜した多層膜である。IrMn膜13Bは、反強磁性体であり、強磁性層13Aのスピンを固定する役割をしている。なお、成膜時に100Oeの磁界を印加して膜面内に一軸異方性を導入した。また、Zn0.35Fe2.654膜12を成膜するときには、基板21を400℃の温度に加熱した。
スピンフィルタ効果素子の四端子磁気抵抗測定用のパターンを示す図5を用いて以下説明する。フォトリソグラフィとイオンミリングを用いてこの積層膜を微細加工し、十字型のパターンを形成した。図示するように、幅wとして4μmの微小なスピンフィルタ効果素子1を製作した。
この素子について、四端子法を用いて、室温において磁気抵抗を測定した結果、Zn0.35Fe2.65膜12のスピン反転に伴う磁気抵抗効果曲線が得られ、その大きさは約140%と非常に大きい値を示した。これは、Zn0.35Fe2.65膜12が強磁性で、そのスピン分裂が非常に大きく、ハーフメタル的振る舞いを示したことによると考えられる。なお、Zn0.35Fe2.65膜12の単独の薄膜の抵抗率は、約10Ω・cmであった。
また、本発明のスピンフィルタ効果素子1は、構造が簡便で、室温において磁気抵抗変化率が非常に大きいので、MRAMなどの不揮発性磁気メモリの記憶素子として、素子寸法の縮小をしても、十分に大きな電流が得られる。
図8は、本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の実施例5の構成を示す断面図である。実施例5におけるスピンフィルタ効果素子1の構造は、実施例4のスピネルフェライト12上に、さらに絶縁膜16を挿入していることである。絶縁膜16は、強磁性トンネル絶縁層となるスピネルフェライト12と、強磁性層13Aとの磁気的結合を弱めるために用いている。
図に示すように、本発明のスピンフィルタ効果素子は、熱酸化Si基板21上にスピンフィルタ効果素子1を形成している。Si基板21の表面を熱酸化し、酸化膜21Bを形成した。この基板20上に、非磁性の第1の電極11が配置され、第1の電極11上に高抵抗のスピネルフェライト12の薄膜が配置され、さらに高抵抗のスピネルフェライト12の薄膜上に絶縁膜16が堆積され、第2の電極13となる強磁性層13Aと、反強磁性体層13Bと、さらに保護膜となる電極層13Cが配置されている。
ここで、上記構造は、マグネトロンスパッタ法を用いて、熱酸化Si基板21上に、非磁性の第1の電極11としてAlを5nm、強磁性トンネル絶縁層となるスピネルフェライト12としてZn0.2Fe2.84 を10nm、絶縁膜のAl23 16を2nm、第2の電極13となる強磁性層13Aを5nm、反強磁性体層13BとしてIrMnを5nm、保護層13Cとなる非磁性層のAlを5nm、順次堆積して成膜した多層膜である。
IrMn13Bは反強磁性体であり、強磁性層13Aのスピンを固定する役割をしている。Al23 16は絶縁膜であり、強磁性トンネル絶縁層となるスピネルフェライトZn0.2Fe2.84膜12と、強磁性層13Aとの間の磁気的結合を弱めるために用いた。また、成膜時に100Oeの磁界を印加して膜面内に一軸異方性を導入した。Zn0.2Fe2.84 膜12を成膜するときには、基板21を400℃の温度に加熱した。
図5は、本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の四端子磁気抵抗測定用のパターンを示す平面図である。フォトリソグラフィとイオンミリングを用いてこの積層膜を微細加工し、十字型のパターンを形成した。図示するように、幅wとして4μmの微小なスピンフィルタ効果素子1を製作した。
ここで、四端子法を用いて磁気抵抗を測定したところ、20Oeという小さな外部磁界で室温において、約85%のTMRを観測した。この値は従来のTMRよりかなり大きく、Zn0.2Fe2.8 膜12のスピン分裂が非常に大きいことを意味し、ハーフメタルであることを示唆している。
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。例えば、上記実施の形態では、金属MをZnやMnを使用した例を説明をしたが、金属Mは、これに限らず、Coなどに適用し得ることは勿論である。また、本発明のスピンフィルタ効果素子を用いた磁気デバイスは、磁気抵抗センサ、MRAM、磁気ヘッドについて説明したが、他の磁気デバイスなどに適用し得ることは言うまでもない。
本発明のスピンフィルタ効果素子の構成を示す断面図である。 本発明のスピンフィルタ効果素子の動作を説明するためのエネルギー準位を示す模式図である。 本発明のスピンフィルタ効果素子に外部磁界を印加したときの抵抗を模式的に説明する図である。 本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の実施例1の構成を示す断面図である。 本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の四端子磁気抵抗測定のパターンを示す平面図である。 本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の実施例2の構成を示す断面図である。 本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の実施例4の構成を示す断面図である。 本発明に係る実施の形態によるスピンフィルタ効果素子の実施例5の構成を示す断面図である。
符号の説明
1 スピンフィルタ効果素子
11 第1の電極である非磁性電極
12 高抵抗のスピネルフェライト
13 第2の電極
13A 強磁性層
13B 反強磁性層
13 保護膜
14 直流電源
15 外部磁界
16 絶縁膜
20 MgO基板
21 熱酸化Si基板
21A Si基板
21B Si酸化膜

Claims (8)

  1. 非磁性層からなる第1の電極と、
    該第1の電極上のマグネタイトを除く高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜と、
    該強磁性スピネルフェライト膜上の絶縁膜と、
    該絶縁膜上の強磁性層からなる第2の電極と、が順に配置され、
    上記高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜が、電子に対してスピンに依存したトンネル障壁として作用し、
    上記絶縁膜が電子に対してスピンに依存しないトンネル障壁として作用し、かつ、上記強磁性スピネルフェライト膜と上記第2の電極となる強磁性層との磁気的結合を弱める作用をすることを特徴とする、スピンフィルタ効果素子。
  2. 前記高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜において、Feの一部が、Mn,Co,Ni,Cu,Mg,Liおよびそれらの混合物で置換されており、かつ比抵抗が1Ω・cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のスピンフィルタ効果素子。
  3. 前記高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜が、
    組成式MFe3−x (Mは、Mn,Co,Ni,Cu,Mg,Liの何れか1つ、かつ、0<x<3)で記述されることを特徴とする、請求項2に記載のスピンフィルタ効果素子。
  4. 前記高抵抗の強磁性スピネルフェライト膜が、CoFeからなることを特徴とする、請求項1〜3の何れか記載のスピンフィルタ効果素子。
  5. 前記第2の電極の強磁性層上に反強磁性層が配置されており、該強磁性層と該反強磁性層とがスピンバルブ構造からなることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載のスピンフィルタ効果素子。
  6. 前記第2の電極が、保護膜となる非磁性金属で覆われていることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載のスピンフィルタ効果素子。
  7. 前記スピンフィルタ効果素子が、基板上に形成されていることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載のスピンフィルタ効果素子。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載のスピンフィルタ効果素子を有することを特徴とする、磁気デバイス。
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