実施形態で説明する車両制御装置は、エコラン制御によりエンジンが停止した場合には、電子制動力配分制御部(Electronic Brake−force Distribution:EBD)や車両安定性制御部(Vehicle Stability Control:VSC)による、液圧ブレーキユニットのABS保持弁やABS減圧弁の通電制御を行わない。
これにより、バッテリ(蓄電池)の消耗を抑制する。バッテリの消耗が抑制されれば、エコラン制御によるエンジン再始動後に、バッテリへの充電増大の為にエンジンの回転数を増大させる制御を回避できるので、結果として省資源で省電力な車両制御が行えるものとなる。
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態にかかる車両制御装置100の構成概念を示すブロック図である。図1に示すように、車両制御装置100は、車両の種々の制御を行うものであって、ブレーキ操作に関する制御を行うブレーキ電子制御部70を備える。ブレーキ電子制御部70は、制動力の前後輪配分を調整制御する電子制動力配分制御部710と、車両走行が不安定とならないように制動力を調整制御する車両安定性制御部720とを備える。
電子制動力配分制御部710と車両安定性制御部720とは、車両制御装置100に含まれるものであり、不図示の液圧ブレーキユニットのABS保持弁制御またはABS減圧弁制御による制動力制御を行うので、図1においては概念上ブレーキ電子制御部70に含まれるものとして記載する。
また、車両制御装置100は、エコラン制御を行うエコラン制御部130とエンジンの調整制御を行うエンジンECU140とを備える。エコラン制御部130には、エンジンの停止またはエンジンの始動の条件が満足されているか否かを判断する為に、ブレーキペダル24、アクセルペダル150、シフトレバー160、車速検知部170、エンジン停止検知部180からの各状態情報が入力される。
エコラン制御部130が行うエコラン制御については、よく知られた制御であるが以下に簡単に説明する。車両は、同期電動発電機となる不図示のモータを備えており、モータはエコラン制御の実行中にエンジンを再始動する際には、スタータモータの代わりに用いられる。またモータは、エンジンの制動の際には電力を回生する。
モータを発電機として動作させることによりバッテリを充電できる。バッテリは、充放電可能な二次電池として構成されており、その蓄電状態や充放電はバッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)により制御される。
エコラン制御部130は、車両の各部の作動状態・走行状態や運転者による操作状態に応じてエンジンを停止したり再始動したりする停止始動制御(以下「エコラン制御」という。)を行う。エンジンの停止の条件は、シフトレバー160がNポジションまたはPポジションのときには、「車両が停止状態」かつ「アクセルオフ」(アクセルペダル150が踏み込まれていない状態)であり、シフトレバー160がDポジションのときには、「車両が停止状態」かつ「アクセルオフ」(アクセルペダル150が踏み込まれていない状態)かつ「ブレーキオン」(ブレーキペダル24が踏み込まれている状態)である。
車両の停止状態は、車速検知部170により検出される車速により判定され、アクセルペダル150やブレーキペダル24の踏み込み状態は、不図示のアクセルペダルポジションセンサにより検出されるアクセルペダルポジションAPやブレーキペダル踏力センサにより検出されるブレーキペダル踏圧力BPに基づいて判定される。一方、エンジンの再始動の条件は、こうした停止の条件が成立しなくなった場合となる。
エコラン制御部130は、例えば市街地を走行しているときの交差点での信号待ち状態のときにエコラン制御(典型的にはエンジンの停止処理)を作動し、燃費の向上とエミッションの削減を図っている。なお、車両制御装置100では、上述したエコラン制御を行うと共にエンジンの運転状態や再始動時の状態を学習し、学習結果に基づいてエンジンの運転や始動に関する機器の劣化や寿命などを判定してもよい。エコラン制御部130によるエンジン停止可否の判断は、イグニッションキーがオンとされたときから所定時間毎(例えば、8msec毎)に実行してもよい。
また、車両安定性制御部720については、よく知られている制御であるが、簡単に説明する。車両安定性制御部720は、車両の横滑りをセンサーが感知すると、四輪個々の制動力とエンジン出力とを自動的に制御する。
例えば、速度が大きすぎるためにハンドルを切っても曲がらない場合(アンダーステア)においては、エンジンECU140にエンジン出力を低下させるとともに内側後輪のホイールシリンダの液圧を増大させて制動力を付与し、車両がコーナー内側方向に向くように制御する。また、急激なハンドル操作でクルマがスピン(オーバーステア)し始めた場合には、外側前輪のホイールシリンダの液圧を増大させて制動力を付与し、スピンを抑制するように制御する。
また、電子制動力配分制御部710についてはよく知られている制御であるが、乗員数やその荷重、車両姿勢に対応して前後輪の制動力配分を適正化する制御を行うものである。
図2は、液圧ブレーキユニット20の概略を説明する液圧系統図である。以下、図2を用いて液圧ブレーキユニット20の構成について詳述する。液圧ブレーキユニット20は、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。
ディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。マニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧されたブレーキフルードを、ディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。
動力液圧源30は、動力の供給により加圧されたブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。
また、液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。
次に、ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット27、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下で更に詳しく説明する。
各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22と、不図示のブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLとを含む。
そして、各ホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に、摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。
これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
マスタシリンダユニット27は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を具備する。また、液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。
動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。
一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を具備する。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。
また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開状態となり、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
上述のように、液圧ブレーキユニット20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。
これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。すなわち、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35のそれぞれは、ホイールシリンダ23への液圧源として液圧アクチュエータ40に並列に接続されている。
本実施形態における作動液供給系統としての液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42、43および44と、主流路45とが含まれる。
また、個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RR、21RLのホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は、主流路45と独立して連通可能となる。
また、個別流路41、42、43および44の中途には、各々ABS保持弁51、52、53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
また、開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。典型的には、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを供給して液圧を供給することができる。
また、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すこともできる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的には液圧の供給が遮断される。
更に、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46、47、48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46、47、48および49の中途には、各々ABS減圧弁56、57、58および59が設けられている。
また、各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
また、ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開状態とされると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。これにより、典型的にはホイールシリンダ23の液圧が増圧状態から低減されて減圧状態となる。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
主流路45は、中途に分離弁60を有する(なお、分離弁を連通弁とも称呼するが、実施形態においては分離弁とする)。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。
第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開状態とされると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的にはマスタシリンダ32から第1流路45aの液圧供給が遮断される。
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。
また、シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開状態とされると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
また、ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、好ましくは多段のバネ特性を有するものが採用され、本実施形態のストロークシミュレータ69は多段のバネ特性を有するものとする。
また、レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的にはレギュレータ33から第2流路45bへの液圧供給が遮断される。
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧用制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧用制御弁として設けられている。
つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を、各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。典型的には増圧リニア制御弁66を開とすれば、アキュムレータ35からの液圧を第2流路45bに供給することができ、減圧リニア制御弁67を開とすれば、第2流路45bのブレーキフルードを排出して液圧を低減することができる。
なお、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と、主流路45におけるブレーキフルードの圧力と、の差圧に対応する。また、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力と、リザーバ34におけるブレーキフルードの圧力と、の差圧に対応する。
また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。
従って、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
液圧ブレーキユニット20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御部としてのブレーキ電子制御部(Electrical Control Unit:ブレーキECU)70により制御される。ブレーキ電子制御部70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。
また、ブレーキ電子制御部70は、ハイブリッドECUなどと通信可能である。また、ブレーキ電子制御部70は、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54、56〜59、60、64〜68を制御して、液圧制動力を制御可能である。
また、ブレーキ電子制御部70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。
また、アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。
また、制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。また、分離弁60が開となって第1流路と第2流路とが連通している場合には、制御圧センサ73は主流路45内のブレーキフルードの圧力を検知する。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキ電子制御部70に順次与えられ、ブレーキ電子制御部70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
従って、分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示す。従って、制御圧センサ73のこの出力値を、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。
また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。更に、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通し、かつ各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合には、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
また、分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合にレギュレータカット弁65を開状態とすれば、制御圧センサ73の出力値は、通常はレギュレータ圧センサ71の出力値と等しくなる。
典型的には、車両が停止状態にあるときに、ブレーキペダル24の踏力がホイールシリンダ23へ伝達されるように、増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とを共に閉状態とし、分離弁60が開状態とされて、かつレギュレータカット弁65が開状態とされる。
さらに、ブレーキ電子制御部70に入力されるセンサ出力には、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキ電子制御部70に順次与えられ、ブレーキ電子制御部70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
なお、ストロークセンサ25以外のブレーキ操作状態検出手段をストロークセンサ25に加えて、あるいは、ストロークセンサ25に代えて設け、ブレーキ電子制御部70に接続してもよい。ブレーキ操作状態検出手段としては、例えば、ブレーキペダル24の操作力を検出するペダル踏力センサや、ブレーキペダル24が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチなどがある。また、ブレーキ電子制御部70には、図示されない車輪速度センサ等も接続され、検知された信号が所定時間おきに与えられ、所定の記憶領域に格納保持される。
ブレーキ操作入力手段は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24に限定されることはなく、例えば押圧ボタンによるブレーキ操作入力手段とすることもできる。押圧ボタンによるブレーキ操作入力手段とした場合においても、押圧ボタンのストローク検知に加え、押圧ボタンの操作力を検出する押圧力センサや、押圧ボタンが押し込まれたことを検出する押圧ボタンスイッチなどがある。
液圧ブレーキユニット20は、走行中に急制動をかけた場合に、アキュムレータ配管39を介した油圧供給に、レギュレータ配管38を介した油圧供給も加えて制動するリニアレギュレータアシストモードをとる場合もある。なお、走行中からの通常の制動は、アキュムレータ配管39を介した油圧供給によるリニア制御モードとなる。また、液圧ブレーキユニット20は、配管系統等に何らかの異常が検出された場合に、ブレーキ電子制御部70が、全ての弁の通電制御を放棄し、レギュレータ33とマスタシリンダ32の圧を、ホイールシリンダ23に供給するバックアップモードも取り得るものとしてもよい。
リニア制御モードにおいては、各ホイールシリンダ23は、マスタシリンダユニット27から遮断される。すなわち、ブレーキ電子制御部70は、レギュレータカット弁65を閉状態とし、レギュレータ33から送出されるブレーキフルードが主流路45へ供給されないようにする。
ブレーキ電子制御部70は、マスタカット弁64を閉状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル24の操作に伴ってマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがストロークシミュレータ69へと供給されるようにするためである。またブレーキ電子制御部70は、分離弁60を開状態とする。
リニア制御モードにおいては、ブレーキ電子制御部70は、要求制動力から回生制動力を減じることにより、液圧ブレーキユニット20により発生させるべき液圧制動力を算出する。ここで、回生制動力の値は、ハイブリッドECUからブレーキ電子制御部70に供給される。
ブレーキ電子制御部70は、算出した液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を算出する。ブレーキ電子制御部70は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御則により増圧リニア制御弁66及び減圧リニア制御弁67に対する供給電流の値を決定する。
その結果、液圧ブレーキユニット20においては、動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介してブレーキフルードが各ホイールシリンダ23に供給されて車輪に所定目標の制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が適宜調整される。このようにして、リニア制御モードにおいては、液圧制動と回生制動とを併用して、要求制動力を発生させるブレーキ回生協調制御が実行される。
いわゆるオートクルーズコントロール(Auto Cruise Control:ACC)や車両安定性制御部720による車両挙動安定化の種々の自動制動制御においても、上述したリニア制御モードと同様の油圧制御により制動動作が実行される。
また、走行中Reg増モードにおいては、ブレーキ電子制御部70は、増圧リニア制御弁66への制御電流の供給を停止して増圧リニア制御弁66を閉状態とし、各ホイールシリンダ23から動力液圧源30を遮断する。更にブレーキ電子制御部70は、レギュレータカット弁65及びマスタカット弁64を開状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。またブレーキ電子制御部70は、分離弁60を開状態とする。
停止中Reg増モードにおいては、レギュレータカット弁65が開状態とされる。その結果、停止中Reg増モードにおいては、レギュレータ圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されるので、運転者によるブレーキペダル24の操作量に応じた液圧制動力を発生させることができる。
ブレーキ電子制御部70は、これらのリニア制御モード、走行中Reg増モード、及び停止中Reg増モード等のいずれかを、車両の走行速度、あるいは回生制動力の値などの車両の状態、またはオペレータからの指示に応じて適宜選択してもよい。
図3は、電子制動力配分制御部710により電子制動力配分制御が実行される場合に、エコラン制御部130によりエコラン制御が実行された場合の、車両制御装置100の動作処理を示すフロー図である。
(ステップS31)
車両制御装置100は、電子制動力配分制御部710が制動力の配分制御を実行中であるか否かを判断する。電子制動力配分制御部710が制動力の配分制御を実行中であれば、ステップS32へと進む。電子制動力配分制御部710が制動力の配分制御を実行中でなければ、ステップS31で待機する。
(ステップS32)
車両制御装置100は、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されたか否かを判断する。エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されれば、ステップS33へと進む。また、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されなければ、ステップS31へと戻る。
(ステップS33)
ブレーキ電子制御部70は、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLに保持されている液圧を開放する。典型的には、電子制動力配分制御部710は、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLに液圧を供給して制動力を付与する処理を行って、制動力の配分を調整する。
この際、電子制動力配分制御部710は、は、ABS保持弁53,54を通電制御して閉弁し、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへ液圧を封じ込める処理を行う。仮に、車両が停止した後、典型的にはエンジンが停止した後も、封じ込めた後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLの液圧を維持するために。ABS保持弁53,54を通電制御して閉弁状態を維持する液圧保持動作をするとなれば、オルタによる発電機能がない状態でバッテリの電力を消耗することとなる。
従って、電子制動力配分制御部710は、車両が停止した後、典型的にはエンジンが停止した後は、封じ込めた後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLの液圧を維持する液圧保持動作を行わない。すなわち、ABS保持弁53,54を通電制御して閉弁状態を維持する処理を行わず、ABS保持弁53,54への通電を遮断する。
ABS保持弁53,54は、通電していなければ開状態に維持される常開型電磁弁であるので、電子制動力配分制御部710の上述の処理により、ABS保持弁53,54が開弁されて、封じ込められていた液圧が開放されることとなる。
車両が停止状態においては、ブレーキ電子制御部70は、ブレーキペダル24の踏力が各ホイールシリンダ23に伝わればよく、好ましくは上述の停止中Reg増モードとすることができる。このため、電子制動力配分制御部710による後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへの液圧保持動作が行われなくても車両を停止維持するのに必要な制動力は確保できるものと考えられる。
電子制動力配分制御部710が、車両の停止中、典型的にはエンジンの停止中に後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへの液圧保持を中止することで、車両制御装置100は、後輪側のABS保持弁53,54を閉弁するための通電を継続するバッテリの電流消費相当分を節約できることとなる。なお、エコラン制御部130は、車両の停止を検出した後、大凡0.6秒程度でエンジンを停止処理するものとする。
図4は、車両安定性制御部720により車両安定性制御が実行される場合に、エコラン制御部130によりエコラン制御が実行された場合の、車両制御装置100の動作処理を示すフロー図である。
(ステップS41)
車両制御装置100は、車両安定性制御部720が車両挙動が不安定とならないように制動力制御を実行中であるか否かを判断する。車両安定性制御部720が制動力の調整制御を実行中であれば、ステップS42へと進む。車両安定性制御部720が制動力の調整制御を実行中でなければ、ステップS41で待機する。
(ステップS42)
車両制御装置100は、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されたか否かを判断する。エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されれば、ステップS43へと進む。また、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されなければ、ステップS41へと戻る。
(ステップS43)
車両安定性制御部720は、ここではABS減圧弁58,59等を通電制御しない。すなわち、車両安定性制御部720は、ABS減圧弁58,59等に通電制御をしないことにより、オルタによる発電充電機能がない状態における、バッテリの消耗を防止する。
ABS減圧弁58,59等は、通電することにより開弁される常閉型電磁弁であるので、車両安定性制御部720がABS減圧弁58,59等を通電制御しないことにより、残圧が保持されることとなる。
(ステップS44)
車両制御装置100は、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理の解除が実行されたか否かを判断する。エコラン制御部130は、上述した所定の条件が充足される場合にエンジンを停止処理するものであり、上述した所定の条件が充足されなくなればエンジンを再始動する動作処理を行う。
エコラン制御部130によるエンジン再始動処理が実行されれば、ステップS45へと進む。また、エコラン制御部130によるエンジン再始動処理が実行されなければ、ステップS44で待機する。
(ステップS45)
車両安定性制御部720は、ABS減圧弁58,59等を通電制御する。ABS減圧弁58,59等は、通電することにより開弁される常閉型電磁弁であるので、車両安定性制御部720がABS減圧弁58,59等を通電制御することにより、保持されていた液圧が開放されることとなる。
車両安定性制御部720は、典型的には後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLの液圧を比較的高圧に制御することで、車両の横滑り等を防止して走行を安定化させる処理を行う。このため、車両安定性制御部720は、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへのABS減圧弁58,59の残圧開放処理を、ステップS43のタイミングからステップS45のタイミングへと延長する。しかし、これに限られず、車両安定性制御部720は、前輪側のホイールシリンダ23FR,23FLへのABS減圧弁56,57の残圧開放処理を、ステップS43のタイミングからステップS45のタイミングへと延長する処理としてもよい。
車両安定性制御部720が、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理中に、ABS減圧弁58,59への通電制御を行わないことにより、ABS減圧弁58,59への通電制御に必要とされるバッテリ電流の消耗を抑制できる。また、車両安定性制御部720が、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が解除されてエンジンが再始動された場合に、ABS減圧弁58,59への通電制御を行うことにより、ABS減圧弁58,59への通電制御に必要とされる電流がオルタによる発電充電機能に補充供給される。
また、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理中は、車両が停止している状態であるので、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへのABS減圧弁58,59の残圧開放処理を、エンジン再始動直後にまで遅らせて残圧開放したとしても、その後の車両走行は円滑に行える。
図5は、車両安定性制御部720及び電子制動力配分制御部710により車両安定性制御が実行及び制動力の配分制御が実行される場合に、エコラン制御部130によりエコラン制御が実行された場合の、車両制御装置100の動作処理を示すフロー図である。
(ステップS51)
車両制御装置100は、電子制動力配分制御部710が制動力の配分制御を実行中であるか否かを判断する。電子制動力配分制御部710が制動力の配分制御を実行中であれば、ステップS57へと進む。電子制動力配分制御部710が制動力の配分制御を実行中でなければ、ステップS52へと進む。
(ステップS52)
車両制御装置100は、車両安定性制御部720が車両走行が不安定とならないように制動力制御を実行中であるか否かを判断する。車両安定性制御部720が制動力の調整制御を実行中であれば、ステップS53へと進む。車両安定性制御部720が制動力の調整制御を実行中でなければ、ステップS51へと戻る。
(ステップS53)
車両制御装置100は、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されたか否かを判断する。エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されれば、ステップS54へと進む。また、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されなければ、ステップS51へと戻る。
(ステップS54)
車両安定性制御部720は、ここではホイールシリンダ23RR,23RL等へのABS減圧弁58,59等を通電制御しない。すなわち、車両安定性制御部720は、ホイールシリンダ23RR,23RL等へのABS減圧弁58,59等に通電制御をしないことにより、オルタによる発電充電機能がない状態における、バッテリの消耗を防止する。
ABS減圧弁58,59等は、通電することにより開弁される常閉型電磁弁であるので、車両安定性制御部720がABS減圧弁58,59等を通電制御しないことにより、ホイールシリンダ23RR,23RL等に残圧が保持されることとなる。
(ステップS55)
車両制御装置100は、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理の解除が実行されたか否かを判断する。エコラン制御部130は、上述した所定の条件が充足される場合にエンジンを停止処理するものであり、上述した所定の条件が充足されなくなればエコラン制御部130が、エンジンを再始動する動作処理を行う。
エコラン制御部130によるエンジン再始動処理が実行されれば、ステップS56へと進む。また、エコラン制御部130によるエンジン再始動処理が実行されなければ、ステップS55で待機する。
(ステップS56)
車両安定性制御部720は、典型的にはABS減圧弁58,59を通電制御する。ABS減圧弁58,59は、通電することにより開弁される常閉型電磁弁であるので、車両安定性制御部720がABS減圧弁58,59を通電制御することにより、保持されていた残圧が開放されることとなる。
車両安定性制御部720は、典型的には後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLの液圧を比較的高圧に制御することで、車両の横滑り等を防止して走行や車両姿勢を安定化させる処理を行う。このため、車両安定性制御部720は、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへのABS減圧弁58,59の残圧開放処理を、ステップS54のタイミングからステップS56のエンジン再始動後へと延長する。しかし、これに限られず、車両安定性制御部720は、前輪側のホイールシリンダ23FR,23FLへのABS減圧弁56,57の残圧開放処理を、ステップS54のタイミングからステップS56のタイミングへと延長する処理としてもよい。
車両安定性制御部720が、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理中に、ABS減圧弁58,59への通電制御を行わないことにより、ABS減圧弁58,59への通電制御に必要とされるバッテリ電流の消耗を抑制できる。また、車両安定性制御部720が、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が解除されてエンジンが再始動された場合に、ABS減圧弁58,59への通電制御を行うことにより、ABS減圧弁58,59への通電制御に必要とされる電流がオルタによる発電充電機能に補充供給される。
また、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理中は、車両が停止している状態で処理なされるので、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへのABS減圧弁58,59の残圧開放処理を、エンジン再始動直後にまで遅らせて残圧開放したとしても、その後の車両走行や車両制動は円滑に行えることとなる。
(ステップS57)
車両制御装置100は、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されたか否かを判断する。エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されれば、ステップS58へと進む。また、エコラン制御部130によるエンジン一時停止処理が実行されなければ、ステップS51へと戻る。
(ステップS58)
電子制動力配分制御部710は、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLに保持されている液圧を開放する。典型的には、電子制動力配分制御部710は、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLに液圧を供給して制動力を付与する処理を行って、制動力の配分を調整する。
この際、電子制動力配分制御部710は、は、ABS保持弁53,54を通電制御して閉弁し、後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへ液圧を封じ込める処理を行う。仮に、車両が停止した後、典型的にはエンジンが停止した後も、封じ込めた後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLの液圧を維持するために。ABS保持弁53,54を通電制御して閉弁状態を維持する液圧保持動作をするとなれば、オルタによる発電機能がない状態でバッテリの電力を消耗することとなる。
従って、電子制動力配分制御部710は、車両が停止した後、典型的にはエンジンが停止した後は、封じ込めた後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLの液圧を維持する液圧保持動作を行わない。すなわち、ABS保持弁53,54を通電制御して閉弁状態を維持する処理を行わず、ABS保持弁53,54への通電を遮断する。
ABS保持弁53,54は、通電していなければ開状態に維持される常開型電磁弁であるので、電子制動力配分制御部710の上述の処理により、ABS保持弁53,54が開弁されて、封じ込められていた液圧が開放されることとなる。
車両の停止状態においては、ブレーキ電子制御部70は、ブレーキペダル24の踏力が各ホイールシリンダ23に伝わればよく、好ましくは上述の停止中Reg増モードとすることができる。このため、電子制動力配分制御部710による後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへの液圧保持動作が行われなくても車両を停止維持するのに必要な制動力は確保できるものと考えられる。
電子制動力配分制御部710が、車両の停止中、典型的にはエンジンの停止中に後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLへの液圧保持を中止することで、車両制御装置100は、後輪側のABS保持弁53,54を閉弁するための通電を継続するバッテリの電流消費相当分を節約できることとなる。
(第二の実施形態)
図6は、第二の実施形態にかかる車両制御装置100(2)の構成概念を示すブロック図である。図6に示すように、車両制御装置100(2)は、車両の種々の制御を行うものであって、ブレーキ操作に関する制御を行うブレーキ電子制御部70(2)を備える。ブレーキ電子制御部70(2)は、制動力の前後輪配分を調整制御する電子制動力配分制御部710(2)と、車両走行が不安定とならないように制動力を調整制御する車両安定性制御部720(2)とを備える。
電子制動力配分制御部710(2)と車両安定性制御部720(2)とは、車両制御装置100(2)に含まれるものであり、不図示の液圧ブレーキユニットのABS保持弁制御またはABS減圧弁制御による制動力制御を行うので、図6においては概念上ブレーキ電子制御部70(2)に含まれるものとして記載する。
第二の実施形態で示す車両制御装置100(2)は、第一の実施形態で示す車両制御装置100と処理優先順位が異なるだけであるので、説明の重複を避けるため同一の部位には同一の対応符号を付してその説明を省略する。
すなわち、車両制御装置100(2)は、エコラン制御部130(2)によるエンジン停止処理よりも、電子制動力配分制御部710(2)と車両安定性制御部720(2)との処理を優先する。車両制御装置100(2)は、電子制動力配分制御部710(2)または車両安定性制御部720(2)による液圧弁制御が実行中であれば、エンジンの一時的停止処理を、電子制動力配分制御部710(2)または車両安定性制御部720(2)の制動制御処理が終了するまで、遅らせる処理を行う。
図7は、第二の実施形態にかかる車両制御装置100(2)の動作処理を概念的に説明するフロー図である。
(ステップS71)
車両制御装置100(2)は、車速検知部170から入力される車速情報に基づいて車両が停止状態であるか否かを判断する。車両制御装置100(2)が、車両は停止状態であると判断すれば、ステップS72へと進む。また、車両制御装置100(2)が、車両は停止状態ではないと判断すれば、ステップS71で待機する。
(ステップS72)
車両制御装置100(2)は、電子制動力配分制御部710(2)または車両安定性制御部720(2)による液圧弁制御が実行中であるか否かを判断する。車両制御装置100(2)が、電子制動力配分制御部710(2)または車両安定性制御部720(2)が、液圧弁制御を実行中であると判断すればステップS73へと進む。また、車両制御装置100(2)は、電子制動力配分制御部710(2)または車両安定性制御部720(2)が、液圧弁制御を実行中ではないと判断すればステップS74へと進む。
電子制動力配分制御部710(2)が制御する液圧弁は、典型的には後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLの液圧を維持するために、液圧を保持するABS保持弁53,54である。また、車両安定性制御部720(2)が制御する液圧弁は、典型的には後輪側のホイールシリンダ23RR,23RLの液圧を開放するために、開弁させるABS減圧弁58,59である。
(ステップS73)
エコラン制御部130(2)は、エンジンの一時停止処理を行わない。このステップS73では、液圧弁制御が実行中であることから、エンジンの一時停止処理を行わない。エコラン制御部130(2)が、エコラン制御によるエンジン停止の条件を満足する場合においても、ステップS72における弁制御が実行中である場合には、エンジン停止を禁止することで、バッテリの消耗を抑制する。
(ステップS74)
エコラン制御部130(2)は、エコラン制御によるエンジン停止の条件を満足する場合にエンジンを停止する。エコラン制御部130(2)は、典型的にはシフトレバー160がNポジションまたはPポジションのときに、車両が停止状態かつアクセルオフであれば、エンジンを停止する。また、エコラン制御部130(2)は、典型的にはシフトレバー160がDポジションのときに、車両が停止状態かつアクセルオフかつブレーキオンであれば、エンジンを停止する。
上述したように、車両制御装置100(2)は、電子制動力配分制御部710(2)または車両安定性制御部720(2)の少なくともいずれか一方による液圧弁の通電制御動作中は、エコラン制御部130(2)によるエンジン停止を行わないのでオルタによる発電充電が為され、通電制御に必要な電流の消費によりバッテリが消耗することを抑制できる。また、バッテリの消耗が低減されればその後のエンジン始動時にエンジンの回転数を強制的に増大させてまで発電充電量を増大させる必要性が低減されるので、省エネルギーとなり好ましい。
車両制御装置100,100(2)は、上述した説明に限定されることはなく、自明な範囲で適宜その構成を変更し、また動作及び処理を変更して用いることができる。
100・・車両制御装置、130・・エコラン制御部、140・・エンジンECU、150・・アクセルペダル、160・・シフトレバー、170・・車速検知部、180・・エンジン停止検知部、710・・電子制動力配分制御部、720・・車両安定性制御部。