JP4977833B2 - 自動変速機の変速速度制御装置 - Google Patents
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例えば、アクセルペダルの急な踏み込みにより動力源負荷(スロットル開度)が急増された後(これに呼応して変速速度が通常変速用の基準となる変速速度から速い変速速度にされた後)、アクセルペダルをゆっくりと踏み増すようなアクセル操作を行う場合、動力源負荷(スロットル開度)が設定値未満に低下することがなく、この間も変速速度は基準となる変速速度に戻されずに速い変速速度のままに保たれ、これに基づく速度で変速が引き続き行われることとなる。
これに代えて、基準となる変速速度と異なる変速速度での変速が終了した時に変速速度を基準となる変速速度に復帰させるようにすることで、上記の問題を解消し得るようにした自動変速機の変速速度制御装置提案することを目的とする。
先ず前提となるパワートレーンを説明するに、これは、
動力源と、自動変速機との組み合わせになり、動力源負荷状態の時間変化割合が、アクセル開度が大きいほど小さく設定される所定値以上となったら、基準となる変速速度に対して速い変速速度で自動変速機を変速させるようにした車両用パワートレーンである。
前記異なる変速速度での変速が終了したのを判定する変速終了判定手段と、
該手段による変速終了判定時に、変速速度を前記基準となる変速速度に復帰させるようにした変速速度復帰手段とを設けた構成に特徴づけられるものである。
上記異なる変速速度での変速が終了したのを判定する時に、変速速度を上記基準となる変速速度に復帰させるため、
アクセルペダルの戻し操作による動力源負荷の低下がない場合においても、上記変速終了判定をもって変速速度の上記復帰を行わせ得ることとなり、急加速後に緩加速に移行した時、当該緩加速に呼応した基準となる変速速度での変速を行わせることができる。
よって、当該緩加速時の変速が高速で行われて違和感を与えたり、不快な変速ショックを発生するような前記の問題を解消することができる。
図1は、本発明の一実施例になる変速速度制御装置を具えた車両のパワートレーンを示し、このパワートレーンを動力源としてのエンジン1および自動変速機2のタンデム結合により構成する。
自動変速機2はVベルト式無段変速機とし、エンジン1からのトルクを図示せざるトルクコンバータを経て入力され、この入力回転を現在の変速状態に対応する変速比で変速して出力し、駆動車輪(図示せず)に向かわせるものとする。
自動変速機(Vベルト式無段変速機)2は、コントロールバルブボディー2aを介して変速機コントローラ5により、プライマリプーリおよびセカンダリプーリのプーリ推力を加減され、これらプライマリプーリおよびセカンダリプーリのプーリ溝幅変化(これらに対するVベルトの巻き掛け径の変化)を介して無段変速可能である。
エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ6からの信号や、
トルクコンバータのタービン回転数Nt(変速機入力回転数)を検出するタービン回転センサ7からの信号や、
アクセル開度APO(アクセルペダル踏み込み量)を検出するアクセル開度センサ8からの信号や、
車速VSPを検出する車速センサ9からの信号を入力する。
プライマリプーリのプーリ推力を決定するプライマリプーリ圧Ppriを検出するプライマリプーリ圧センサ10からの信号や、
セカンダリプーリのプーリ推力を決定するセカンダリプーリ圧Psecを検出するセカンダリプーリ圧センサ11からの信号や、
自動変速機2の選択レンジを検出するレンジセンサ12からの信号や、
自動変速機2の入出力回転比である変速比iを演算する変速比演算手段13からの演算結果を入力する。
なおエンジンコントローラ4および変速機コントローラ5との間を通信線で相互に接続し、上記の入力信号はもとより、演算結果をも相互に通信し合うものとする。
ステップS1においては、自動変速機2の変速速度を通常変速用の基準となる変速速度よりも速くすべきアクセルペダルの急踏み(エンジン負荷の急増)が有ったか否かを、アクセル開度APOの時間変化割合が設定割合以上であったか否かにより判定する。
なお、アクセルペダル急踏み(エンジン負荷急増)判定に用いるアクセル開度APOの時間変化割合に関した上記設定割合は、一定値でもよいが、例えばアクセル開度APOが大きいほど小さくなる可変値にするのが、変速速度を変更すべき急踏み判定の判定精度の点で好ましい。
ステップS1でアクセルペダルの急踏み(エンジン負荷の急増)が有ったと判定する場合は、ステップS2において、変速速度を通常変速用の基準となる変速速度よりも速い変速速度を指令し、自動変速機2の前記の変速が、基準となる変速速度と異ってこれよりも速い変速速度で行われるようにする。
ステップS3で上記速い変速速度での変速が終了したと判定した後は、制御をステップS4に進め、変速速度を速い変速速度から基準となる変速速度へと復帰させ、自動変速機2の前記の変速を基準となる変速速度で行わせる。
従って、ステップS3は本発明における変速終了判定手段に相当し、ステップS4は本発明における変速速度復帰手段に相当する。
アクセルペダルの急踏み後にペダル戻し操作によるエンジン負荷の低下がない場合においても、上記変速終了判定をもって速い変速速度から基準となる変速速度への復帰を行わせ得ることとなり、
急加速後に緩加速に移行した時も、当該緩加速に呼応した基準となる変速速度での変速を行わせることができる。
よって、当該緩加速時の変速が高速で行われて違和感を与えたり、不快な変速ショックを発生するような従来の問題を解消することができる。
その後は瞬時t5までアクセルペダルの踏み込み状態を瞬時t3で状態に保ってアクセル開度APOおよびスロットル開度TVOをそれぞれ不変に保ち、
瞬時t5からアクセルペダルの緩やかな踏み込みによりアクセル開度APOおよびスロットル開度TVOをそれぞれの時間変化割合ΔAPOおよびΔTVOで図示のごとく緩増大させた場合の動作タイムチャートを示す。
上記速い変速速度での変速が終了したのを判定する瞬時t4に、上記速い変速速度から基準となる変速速度への復帰を行わせてこれに基づく変速制御を行わせると共に、瞬時t2に上記のごとく行った急踏み(エンジン負荷急増)判定を次回の判定のためにリセットしておく。
変速機入力回転Ntの時間変化割合ΔNt、および、これと、回転イナーシャIpriと、変速比iとの乗算値である車軸へのイナーシャトルクTdynは図示のごとく小さく、車軸駆動トルクTstaとイナーシャトルクTdynとの和値である車軸出力トルクTshtは、急踏み判定時t2までの間、図示のごとく緩やかに上昇する。
この間、変速機入力回転Ntの時間変化割合ΔNt、および、これと、回転イナーシャIpriと、変速比iとの乗算値である車軸へのイナーシャトルクTdynは図示のとおりに大きくなり、車軸駆動トルクTstaとイナーシャトルクTdynとの和値である車軸出力トルクTshtは、変速速度が速いため図示のごとく急上昇してショック上好ましくないものの、急踏み込みはショック軽減よりも動力性能要求が強いから要求にマッチしたものである。
従って、アクセルペダルの急踏み後にペダル戻し操作によるエンジン負荷の低下を行わないままアクセルペダルを緩踏み込みする場合に、この緩踏み込みに伴う変速を緩やかに行わせることとなる。
よって、緩踏み込み開始時t5から、緩踏み込みに伴う変速が終了する瞬時t6までの間における車軸駆動トルクTsta、入力回転時間変化割合ΔNt、イナーシャトルクTdyn、および車軸出力トルクTshtの変化状況より明らかなごとく、緩踏み込みによる緩加速時なのに変速が高速で行われる違和感を回避し得ると共に、不快な変速ショックが発生するのを回避することができる。
自動変速機(無段変速機)2の変速比iが、運転状態に応じた前記目標変速比i*に対し所定(α)範囲内の変速比に接近した時をもって、速い変速速度での変速が終了したと判定することができる。
図4のタイムチャートは、図3におけると同様なアクセル操作を行った場合における動作を示し、
瞬時t1〜t3間の急踏み込みに伴い目標変速比i*が実変速比iと乖離するようになり、実変速比iが目標変速比i*に一致するよう自動変速機2の変速が開始される。
本実施例においては、目標変速比i*および実変速比i間の変速比偏差の絶対値|i*−i|=Δiを求め、これが変速終了判定用の設定値α未満になる瞬時t4に上記の変速が終了したと判定する。
つまり変速比は、変速機入出力回転比であるから2個の回転センサの検出値を用いるが、これらセンサの回転数検出精度は回転速度に依存し、しかも同じ車両に搭載されたものであれば同程度の検出精度のズレを生ずることが多く、変速比としては両センサのズレ分がキャンセルし合って、センサの精度に影響されないためである。
自動変速機(無段変速機)2の入力回転数Ntが、運転状態に応じ定めた目標入力回転数Nt*に対し所定(β)範囲内の回転数に接近した時をもって、速い変速速度での変速が終了したと判定することもできる。
図5のタイムチャートは、図3におけると同様なアクセル操作を行った場合における動作を示し、
瞬時t1〜t3間の急踏み込みに伴い目標入力回転数Nt*が実入力回転数Ntと乖離するようになり、実入力回転数Ntが目標入力回転数Nt*に一致するよう自動変速機2の変速が開始される。
本実施例においては、目標入力回転数Nt*および実入力回転数Nt間の入力回転偏差の絶対値|Nt*−Nt|=ΔNを求め、これが変速終了判定用の設定値β未満になる瞬時t4に上記の変速が終了したと判定する。
つまり、図4につき上述したように変速比偏差を基に変速終了を判定する場合、回転数に換算すると、低回転では入力回転数偏差が小さくならないと変速終了を判定し得ず、高回転では入力回転数偏差が大きいうちに変速終了を判定してしまうことから、急踏み時の車速や入力回転数に応じて変速終了判定用の設定値αを異ならせる必要があるが、
本実施例のように入力回転偏差ΔN(=|Nt*−Nt|)を基にこれが変速終了判定用の設定値β未満になったのを変速終了と判定する場合は、変速終了判定用の設定値βを急踏み時の車速や入力回転数にかかわらず、同じにしたままで高精度に変速終了を判定することができる。
自動変速機(Vベルト式無段変速機)2の変速を司るプーリ推力の指令値に対する実際値の偏差が設定値未満になった時をもって、速い変速速度での変速が終了したと判定することもできる。
図6のタイムチャートは、図3におけると同様なアクセル操作を行った場合における動作を示し、
瞬時t1〜t3間の急踏み込みに伴い目標変速比i*が実変速比iと乖離するようになり、実変速比iが目標変速比i *に一致するよう自動変速機2の変速が開始される。
本実施例においては、目標プライマリプーリ推力Tpri *および実プライマリプーリ推力Tpri(プライマリプーリ圧Ppriから演算可能)間のプライマリプーリ推力偏差の絶対値|Ppri*−Tpri|=ΔTpriを求めると共に、目標セカンダリプーリ推力Tsec *および実セカンダリプーリ推力Tsec(セカンダリプーリ圧Psecから演算可能)間のセカンダリプーリ推力偏差の絶対値|Psec*−Tsec|=ΔTsecを求め、両プーリ推力偏差の和値ΔT(=ΔTpri+ΔTsec)が変速終了判定用の設定値γ未満になる瞬時t4に上記の変速が終了したと判定する。
急踏み判定に呼応して速い変速速度での変速が開始されてからの経過時間が変速終了判定時間以上になった時をもって、速い変速速度での変速が終了したと判定することもできる。
図7のタイムチャートは、図3におけると同様なアクセル操作を行った場合における動作を示し、
瞬時t1〜t3間の急踏み込みに伴い目標変速比i*が実変速比iと乖離するようになり、実変速比iが目標変速比i *に一致するよう自動変速機2の変速が開始される。
本実施例においては、当該切り替え瞬時(急踏み判定瞬時)t2から行われる速い変速速度での変速が行われている継続時間を計測するタイマを設け、このタイマの計測時間が変速終了判定時間ε以上になる瞬時t4に上記の変速が終了したと判定する。
なお上記各実施例における変速終了判定は個々に用いるだけでなく、任意のものを組み合わせて用いることができ、特に図7のようにタイマを用いる実施例を他の実施例と組み合わせて、当該他の実施例による変速終了判定がセンサ異常などで不可能になった時のフェールセーフ対策とするのが有利である。
2 自動変速機
2a コントロールバルブボディー
3 セレクトレバー
4 エンジンコントローラ
5 変速機コントローラ
6 エンジン回転センサ
7 タービン回転センサ
8 アクセル開度センサ
9 車速センサ
10 プライマリプーリ圧センサ
11 セカンダリプーリ圧センサ
12 実変速比演算手段
Claims (5)
- 動力源と、自動変速機との組み合わせになり、動力源負荷状態の時間変化割合が、アクセル開度が大きいほど小さく設定される所定値以上となったら、基準となる変速速度に対して速い変速速度で自動変速機を変速させるようにした車両用パワートレーンにおいて、
前記異なる変速速度での変速が終了したのを判定する変速終了判定手段と、
該手段による変速終了判定時に、変速速度を前記基準となる変速速度に対して速い変速速度から前記基準となる変速速度に復帰させるようにした変速速度復帰手段とを具備することを特徴とする自動変速機の変速速度制御装置。 - 前記自動変速機が無段変速機である、請求項1に記載の自動変速機の変速速度制御装置において、
前記変速終了判定手段は、前記無段変速機の変速比が、運転状態に応じ定めた目標変速比に対し所定範囲内の変速比に接近した時をもって、前記異なる変速速度での変速が終了したと判定するものであることを特徴とする自動変速機の変速速度制御装置。 - 前記自動変速機が無段変速機である、請求項1に記載の自動変速機の変速速度制御装置において、
前記変速終了判定手段は、前記無段変速機の入力回転数が、運転状態に応じ定めた目標入力回転数に対し所定範囲内の回転数に接近した時をもって、前記異なる変速速度での変速が終了したと判定するものであることを特徴とする自動変速機の変速速度制御装置。 - 前記自動変速機がVベルト式無段変速機である、請求項1に記載の自動変速機の変速速度制御装置において、
前記変速終了判定手段は、前記Vベルト式無段変速機の変速を司るプーリ推力の指令値に対する実際値の偏差が設定値未満になった時をもって、前記異なる変速速度での変速が終了したと判定するものであることを特徴とする自動変速機の変速速度制御装置。 - 請求項1に記載の自動変速機の変速速度制御装置において、
前記変速終了判定手段は、前記異なる変速速度での変速が開始されてからの経過時間が変速終了判定時間以上になった時をもって、前記異なる変速速度での変速が終了したと判定するものであることを特徴とする自動変速機の変速速度制御装置。
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