JP3719104B2 - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクセルペダル操作以外の因子によっても任意に出力トルクを変更可能なエンジンと、自動変速機との組み合わせになるパワートレーンを搭載し、少なくともエンジンの出力トルクを、運転条件に応じて定めた目標駆動力が達成されるよう制御する車両の駆動力制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の駆動力制御装置としては従来、例えば特開平2000−27985号公報に記載のごときものを先に本願出願人が提案している。
この駆動力制御装置は、運転者が要求するエンジン出力を指示するために操作するアクセルペダルの踏み込み量以外の因子によっても任意に出力トルクを変更可能なエンジンと、無段変速機との組み合わせになるパワートレーンにおいて、アクセルペダル踏み込み量と車速とから目標駆動力を決定し、この目標駆動力が例えば最適燃費で達成されるようエンジンのスロットル開度と無段変速機の変速比との組み合わせを実現するものである。
【0003】
そして従来の駆動力制御装置は上記の目標駆動力を求めるに際し、登坂路走行中はこれに登坂路勾配に応じた勾配抵抗分を加算して、これにより駆動力を、登坂路でもきびきびした走行が可能となるよう増大する駆動力増大制御を行うことをも提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで従来の駆動力制御装置にあっては、登坂路走行中である限り上記の駆動力増大制御を行うことから、登坂路で車両を減速または停車させようとしてアクセルペダルの釈放によりその踏み込み量を0にした時も駆動力増大制御が継続されることとなり、走行フィーリングに違和感を与えるだけでなく、無駄なエンジン出力の増大により燃費の悪化も招く。
【0005】
この問題解決のためには、アクセルペダルの釈放によりその踏み込み量が0になった時に上記の駆動力増大制御を中止することが考えられる。
しかしこの場合、交互逆向きの湾曲路が連続する所謂ワインディング路で登坂走行している間において以下の問題を生ずる。
【0006】
つまりワインディング路での走行中は、湾曲路のコーナーに差しかかる度に減速のため一時的にアクセルペダルを釈放するが、その後直ちにアクセルペダルの再踏み込みを行うという操作を繰り返す。
しかし上記のごとくアクセルペダルの釈放時に単純に駆動力増大制御を中止するという対策では、湾曲路のコーナーに差しかかった時の一時的なアクセルペダルの釈放時も駆動力増大制御が中止されることとなり、その後直ちに行われるアクセルペダルの再踏み込み時におけるエンジン出力の立ち上がりが遅れ気味となり、湾曲路のコーナーを通過した後に運転者が加速遅れを感じるという問題があった。
【0007】
請求項1に記載の第1発明は、登坂路走行中の駆動力増大制御をアクセルペダルの釈放時は中止するという前記の対策を踏襲するも、登坂路がワインディング路である場合、アクセルペダルの釈放があっても駆動力増大制御を継続するようになして、湾曲路のコーナーを通過した後のアクセルペダルの再踏み込み時における加速遅れの問題を解消することを目的とする。
【0008】
請求項2に記載の第2発明は、登坂路走行中の駆動力増大制御が目標駆動力の決定方式の変更のみで簡単に実現されるようにすることを目的とする。
【0009】
請求項3に記載の第3発明は、アクセルペダルの釈放時における登坂路走行用駆動力増大制御の中止を簡単に行い得るようにすることを目的とする。
【0010】
請求項4に記載の第4発明は、ワインディング路であるが故にアクセルペダルの釈放があっても登坂路走行用駆動力増大制御を継続する場合において、アクセルペダルの釈放にもかかわらず車両が加速するという違和感をなくすと共に、その後のアクセルペダルの再踏み込み時に速やかな加速が可能となるようにすることを目的とする。
【0011】
請求項5に記載の第5発明は、ワインディング路であるが故にアクセルペダルの釈放があっても登坂路走行用駆動力増大制御を継続する場合において、この継続がいつまでも続くことのないようにすることで、十分な減速を行いたい時とか、停車を希望している時に要求通りの減速が得られるようにすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
これらの目的のため、先ず第1発明による車両の駆動力制御装置は、
アクセルペダル操作以外の因子によっても任意に出力トルクを変更可能なエンジンと、自動変速機との組み合わせになるパワートレーンを搭載し、少なくともエンジンの出力トルクを、運転条件に応じて定めた目標駆動力が達成されるよう制御する車両において、
登坂路走行中は登坂路勾配に応じ駆動力を増大する駆動力増大制御を行うが、登坂路走行中でもアクセルペダルの釈放時は該駆動力増大制御を中止し、登坂路がワインディング路である場合、アクセルペダルの釈放時でも前記駆動力増大制御を継続し、登坂路がワインディング路であってアクセルペダルの釈放時に増大される駆動力を、登坂路走行中のアクセルペダルの踏み込み時に増大される駆動力に比べて小さく設定するよう構成したことを特徴とするものである。
【0013】
第2発明による車両の駆動力制御装置は、第1発明において、
登坂路走行中に前記目標駆動力を、登坂路勾配に応じて決定される勾配抵抗分が加算された目標駆動力とすることにより前記駆動力増大制御を行うよう構成したことを特徴とするものである。
【0014】
第3発明による車両の駆動力制御装置は、上記第1発明または第2発明において、
前記アクセルペダルの釈放時における駆動力増大制御の中止を、アクセルペダルの釈放に呼応したエンジンスロットル開度の全閉のみによって行うよう構成したことを特徴とするものである。
【0015】
第4発明による車両の駆動力制御装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、
アクセルペダルの釈放時でもワインディング路での走行中故に前記駆動力増大制御を継続する場合の駆動力を、登坂路勾配に応じた勾配抵抗分が含まれる車両の走行抵抗分よりも小さくしたことを特徴とするものである。
【0016】
第5発明による車両の駆動力制御装置は、第1発明乃至第4発明のいずれかにおいて、
アクセルペダルの釈放時でもワインディング路での走行中故に前記駆動力増大制御を継続する場合の継続時間に制限を設けて、アクセルペダルの釈放から設定時間が経過した後は駆動力増大制御を中止するよう構成したことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の効果】
エンジンはアクセルペダル操作以外の因子によっても任意に出力トルクを変更することができ、かかるトルク制御が可能なエンジンからの出力は自動変速機により変速されてパワートレーンの出力となる。
この際、少なくともエンジンの出力トルクを、運転条件に応じて定めた目標駆動力が達成されるよう制御する。
【0018】
ところで第1発明においては、登坂路走行中は登坂路勾配に応じ駆動力を増大する駆動力増大制御を行うため、登坂路でも駆動力不足にならず、きびきびした走行を可能にする。
しかし第1発明においては、登坂路走行中でもアクセルペダルの釈放時は該駆動力増大制御を中止するから、登坂路で車両を減速または停車させようとしてアクセルペダルを釈放した時に上記の駆動力増大制御が継続されることがなくなり、走行フィーリングが違和感のあるものになったり、無駄なエンジン出力の増大により燃費が悪くなるという前記の問題を解消し得る。
【0019】
更に第1発明においては、登坂路がワインディング路である場合、アクセルペダルの釈放時でも上記の駆動力増大制御を継続するため、
ワインディング路での登坂走行中、湾曲路のコーナーに差しかかって一時的にアクセルペダルを釈放する時に駆動力増大制御が中止されることがなくなり、その後直ちに行われるアクセルペダルの再踏み込みを行う時におけるエンジン出力の立ち上がりが遅れ気味となるのを防止することができ、湾曲路のコーナーを通過した後に運転者が加速遅れを感じるという前記の問題も回避し得る。
【0020】
第2発明においては、登坂路走行中に前記の目標駆動力を、登坂路勾配に応じて決定される勾配抵抗分が加算された目標駆動力とすることにより上記の駆動力増大制御を行うため、
登坂路走行中の駆動力増大制御を目標駆動力の決定方式の変更のみにより簡単に実現することができて大いに有利である。
【0021】
第3発明においては、アクセルペダルの釈放時における駆動力増大制御の中止を、アクセルペダルの釈放に呼応したエンジンスロットル開度の全閉のみによって行うため、
当該アクセルペダルの釈放時における登坂路走行用駆動力増大制御の中止を簡単に行うことができて大いに有利である。
【0022】
第4発明においては、アクセルペダルの釈放時でもワインディング路での走行中故に前記の駆動力増大制御を継続する場合の駆動力を、登坂路勾配に応じた勾配抵抗分が含まれる車両の走行抵抗分よりも小さくしたから、
ワインディング路であるが故にアクセルペダルの釈放があっても登坂路走行用駆動力増大制御を継続する場合において、アクセルペダルの釈放にもかかわらず車両が加速するという違和感をなくし得ると共に、その後のアクセルペダルの再踏み込み時において速やかな加速を可能することができる。
【0023】
第5発明においては、アクセルペダルの釈放時でもワインディング路での走行中故に前記の駆動力増大制御を継続する場合の継続時間に制限を設けて、アクセルペダルの釈放から設定時間が経過した後は駆動力増大制御を中止することにしたため、
ワインディング路であるが故にアクセルペダルの釈放があっても登坂路走行用駆動力増大制御を継続する場合において、この継続がいつまでも続くことのないようにすることができ、十分な減速を行いたい時とか、停車を希望している時に要求通りの減速を得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態になる駆動力制御装置を具えた車両のパワートレーンと、その制御系を示し、該パワートレーンをエンジン1と自動変速機としての無段変速機2とで構成する。
エンジン1はガソリンエンジンとするも、運転者が操作するアクセルペダル3に機械的に連結せず、これから切り離されて、モータ4により開度を電子制御されるようにしたスロットルバルブ5を具え、
モータ4を目標スロットル開度(TVOt)指令に対応した回転位置にすることでスロットルバルブ5を目標スロットル開度TVOtにして、エンジン1の出力をアクセルペダル操作以外の因子によっても制御し得るようなものとする。
【0025】
無段変速機2は周知のVベルト式無段変速機とし、トルクコンバータ6を介してエンジン1の出力軸に駆動結合されたプライマリプーリ7と、これに整列配置したセカンダリプーリ8と、これら両プーリ間に掛け渡したVベルト9とを具える。
そして、セカンダリプーリ8にファイナルドライブギヤ組10を介してディファレンシャルギヤ装置11を駆動結合し、これらにより図示せざる車輪を回転駆動するものとする。
【0026】
無段変速機2の変速のために、プライマリプーリ7およびセカンダリプーリ8のそれぞれのV溝を形成するフランジのうち、一方の可動フランジを他方の固定フランジに対して相対的に接近してV溝幅を狭めたり、離反してV溝幅を広め得るようにし、
両可動フランジを、目標変速比(It)指令に応動する油圧アクチュエータ12からのプライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psecに応じた位置に変位させることで、無段変速機2を実変速比が目標変速比Itに一致するよう無段変速させ得るものとする。
【0027】
目標スロットル開度TVOtおよび目標変速比Itはそれぞれ、コントローラ13により演算して求めることとする。
これがためコントローラ13には、アクセルペダル3の踏み込み位置(アクセルペダル踏み込み量)APSを検出するアクセルペダル操作量センサ14からの信号と、
エンジン回転数Neを検出するクランク角センサ15からの信号と、
スロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ16からの信号と、
プライマリプーリ7の回転数である変速機入力回転数Niを検出する変速機入力回転センサ17からの信号と、
セカンダリプーリ8の回転数である変速機出力回転数Noを検出する変速機出力回転センサ18からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ19からの信号と、
ナビゲーションシステム20からの道路情報をそれぞれ入力する。
【0028】
コントローラ13はこれら入力情報を基に、図2に機能別ブロック線図で示すように無段変速機2の変速制御およびエンジン1のスロットル開度(出力)制御を以下のごとくに行って、本発明が狙いとする車両の駆動力制御を実行する。
平坦路目標駆動力演算部31では、センサ14により検出したアクセルペダル踏み込み量APSおよびセンサ19により検出した車速VSPを基に、例えば特開平7−172217号公報に記載されている方法により、或いは図4に例示した予定のマップから、平坦路走行中における必要最小限の平坦路目標駆動力Tdoを求める。
【0029】
勾配抵抗演算部32は、ナビゲーションシステム20からの登坂路勾配情報を基に前記した特開平2000−27985号公報に記載されている方法で、車両に作用する勾配抵抗Rfを求める。
乗算器33はこの勾配抵抗Rfに、後で詳述する勾配抵抗加算率αを乗じて勾配抵抗加算分(Rf×α)を求め、加算器34で上記の平坦路目標駆動力Tdoに勾配抵抗加算分(Rf×α)を加算して目標駆動力Tdtを求める。
【0030】
目標変速比演算部35では、目標駆動力Tdtおよび車速VSPから、例えば現在の車速VSPのもと目標駆動力Tdtを最低燃費で発生させるための目標変速比Itを、例えば図5に例示するマップに基づき検索する。
目標変速比演算部35で目標変速比Itを求めるに当たっては上記の検索に代え、目標駆動力Tdtおよび車速VSPから、例えば現在の車速VSPのもと目標駆動力Tdtを最低燃費で発生させるための目標変速機入力回転数Nitをマップ検索し、この目標変速機入力回転数Nitとセンサ18で検出した変速機出力回転数Noとを用いて、目標変速比ItをIt=Nit/Noの演算により算出することもできる。
【0031】
この目標変速比Itは無段変速機2の図1に示す油圧アクチュエータ12に出力され、この無段変速機を目標変速比Itとなるよう、換言すれば変速機入力回転数が上記の目標値Nitとなるよう変速制御する。
【0032】
目標エンジン出力トルク演算部36は、無段変速機2の出力回転数Noに対する入力回転数Niの比で表される実変速比I(=Ni/No)で、目標駆動力Tdtを除算することにより、目標駆動力Tdtを得るために必要な目標エンジン出力トルクTetを求める。
なお、エンジン1と無段変速機2との間にはトルクコンバータ6が存在することから、目標エンジン出力トルクTetを一層正確に求めるためには、センサ15,17で検出したエンジン回転数Ne(トルクコンバータ6の入力回転数)および変速機入力回転数Ni(トルクコンバータ6の出力回転数)からトルクコンバータ6の速度比eをe=Ni/Neにより算出し、トルクコンバータ6の性能線図に対応するマップを基に速度比eからトルクコンバータ6のトルク比tを検索し、目標駆動力Tdtを上記実変速比Iおよびトルク比tにより順次除算して目標エンジン出力トルクTetを求める必要があることは言うまでもない。
【0033】
要求スロットル開度演算部37は、上記の目標エンジン出力トルクTetおよびセンサ15で検出したエンジン回転数Neから目標エンジン出力トルクTetを発生させるための要求スロットル開度TVOoを求めて、これを目標スロットル開度選択部38に指令する。
目標スロットル開度選択部38は、上記の要求スロットル開度TVOoおよびアクセルペダルの釈放に対応するスロットル開度値0を入力され、後で詳述するフラグFLAGが1の時に前者の要求スロットル開度TVOoを目標スロットル開度TVOtとして出力し、フラグFLAGが0の時に後者のスロットル開度値0を目標スロットル開度TVOtとして出力するものとする。
【0034】
かようにして決定した目標スロットル開度TVOtは図1に示すエンジン1のモータ4に指令され、スロットルバルブ5を目標スロットル開度TVOtとなるよう開度制御することによりエンジン1の出力制御を行う。
【0035】
図2における勾配抵抗加算率αおよびフラグFLAGはそれぞれ、図3に示すプログラムの実行によりこれらを決定する。
先ずステップ41においてアクセルペダル踏み込み量APSが0か否かをチェックし、アクセルペダル踏み込み量APSが0でない間、つまりアクセルペダルを踏み込んでいる間は、ステップ42において勾配抵抗加算率αを大きな値0.8とした後、ステップ43でフラグFLAGを1にして制御を終了する。
【0036】
ステップ41でアクセルペダル踏み込み量APSが0であると判定する間、つまりアクセルペダルを釈放している間は、ステップ44で勾配抵抗加算率αを例えば小さな0.3とし、これにより、図2の加算器34が平坦路目標駆動力Tdoに勾配抵抗加算分(Rf×α)を加算して求める目標駆動力Tdtが必ず、登坂路勾配に応じた勾配抵抗分を含む車両の走行抵抗分よりも小さくなるようにする。
【0037】
次のステップ45においては、走行中の道路がワインディング路か否かを図1に示すナビゲーションシステム20からの道路情報により判定する。
なお、ワインディング路か否かの判定に当たっては、ナビゲーションシステム20からの道路情報による代わりに、ステアリング操舵角が所定時間内に所定角以上となった時間の累積が左右とも所定値以上となった時をもってワインディング路であると判定するようにしてもよい。
ステップ45においてワインディング路でないと判定する時は、ステップ46においてフラグFLAGを0にする。
【0038】
ステップ45でワインディング路であると判定する時は、ステップ47においてタイマTMがセット済みか否かをチェックする。このタイマTMは、ステップ41でアクセルペダル踏み込み量APS=0(アクセルペダル釈放)と判定し、且つステップ45でワインディング路と判定した瞬時からの経過時間を計測するためのもので、当該瞬時にステップ48で所定時間(例えば5秒)をセットされ、時間の経過とともに減算されるものとする。
ここで、タイマTMにセットする上記の所定時間(例えば5秒)は、運転者が車両を十分に減速させたいとか、停車させたいと希望していることを検知するための時間で、経験則から任意に定めることができる。
【0039】
ステップ49では、上記のごとく所定時間(例えば5秒)をセットしたタイマTMが0になったか否かを、つまりワインディング路でアクセルペダルを釈放している状態が上記の所定時間(例えば5秒)に亘って継続したか否かをチェックし、継続した場合はステップ46においてフラグFLAGを0にし、それまでの間はステップ43においてフラグFLAGを1にする。
【0040】
以上のようにして勾配抵抗加算率αおよびフラグFLAGを決定することにより、図2のエンジン1の出力制御および無段変速機2の変速制御は以下の作用効果を達成することができる。
つまり、図3につき前述したごとくアクセルペダル踏み込み状態では勾配抵抗加算率αが大きな0.8であることから、勾配抵抗加算分(Rf×α)が十分に大きく、これを平坦路目標駆動力Tdoに加算して求める目標駆動力Tdtは、登坂路でも駆動力不足にならずにきびきびした走行を可能にする値となる。
また、アクセルペダル踏み込み状態ではフラグFLAGが1であることから、目標スロットル開度選択部38が要求スロットル開度TVOoを目標スロットル開度TVOtとして出力する。
これがため図2のエンジン1の出力制御および無段変速機2の変速制御は、勾配抵抗加算分(Rf×α)だけ上乗せされた目標駆動力Tdtを最低燃費で発生させるようなものとなり、登坂路でのきびきびした走行を最低燃費で実現させることができる。
【0041】
ところで、同じく図3につき前述したごとくアクセルペダル釈放状態では勾配抵抗加算率αが小さな0.3であることから、図2のごとく平坦路目標駆動力Tdoに勾配抵抗加算分(Rf×α)を加算して求める目標駆動力Tdtが、登坂路勾配に応じた勾配抵抗分を含む車両の走行抵抗分よりも小さくなる。
一方で、アクセルペダル釈放状態では図3につき前述した通りワインディング路であるか否かによりフラグFLAGが決定され、ワインディング路でなければフラグFLAGが0にされることから、図2の目標スロットル開度選択部38がスロットル開度値0を目標スロットル開度TVOtとして出力する。
【0042】
これがため、非ワインディング路でアクセルペダルが釈放されている場合、図2における無段変速機2の変速制御は、勾配抵抗加算分(Rf×α)だけ上乗せされた目標駆動力Tdtに対応して決定した目標変速比Itが実現されるよう実行されるが、図2におけるエンジン1の出力制御は目標駆動力Tdtに関係なくスロットル開度TVO=0にして、アクセルペダル踏み込み時におけるような登坂路での前記駆動力増大制御を中止する。
よって、非ワインディング路なら登坂路走行中でもアクセルペダルの釈放時は登坂路勾配に応じた駆動力増大制御を中止することとなり、登坂路で車両を減速または停車させようとしてアクセルペダルを釈放した時に駆動力増大制御が継続されることがなくなり、走行フィーリングが違和感のあるものになったり、無駄なエンジン出力の増大により燃費が悪くなるという問題を解消し得る。
【0043】
しかして、ワインディング路でのアクセルペダル釈放時は図3につき前述したごとく、タイマTMにより所定時間(例えば5秒)が計測されるまでの間フラグFLAGを1にし、その後にフラグFLAGを0にするため、ワインディング路でのアクセルペダル釈放瞬時から所定時間(例えば5秒)が経過するまでの間、図2におけるエンジン1の出力制御および無段変速機2の変速制御は登坂路勾配に応じた駆動力増大制御を行い、その後にスロットル開度TVO=0にして当該駆動力増大制御を中止する。
【0044】
よって登坂路がワインディング路である場合、アクセルペダルの釈放時でもアクセルペダル釈放瞬時から所定時間(例えば5秒)が経過するまでの間は、登坂路勾配に応じた駆動力増大制御を継続するため、ワインディング路での登坂走行中、湾曲路のコーナーに差しかかって一時的にアクセルペダルを釈放する時に駆動力増大制御が中止されることがなくなり、その後直ちに行われるアクセルペダルの再踏み込みを行う時におけるエンジン出力の立ち上がりが遅れ気味となるのを防止することができ、湾曲路のコーナーを通過した後に運転者が加速遅れを感じるという問題も回避し得る。
【0045】
そして、アクセルペダル釈放瞬時から所定時間(例えば5秒)が経過した後は、スロットル開度TVO=0にして上記の駆動力増大制御を中止するため、ワインディング路でのアクセルペダル釈放時における駆動力増大制御の継続がいつまでも続いて、十分な減速を行いたい時とか、停車を希望している時に要求通りの減速を得られなくなる弊害を回避することができる。
【0046】
ところで、ワインディング路でのアクセルペダル釈放時に上記のごとく継続される駆動力増大制御中は、図3につき前述したごとく勾配抵抗加算率αを小さな0.3にすることから、図2のごとく平坦路目標駆動力Tdoに勾配抵抗加算分(Rf×α)を加算して求める目標駆動力Tdtが、登坂路勾配に応じた勾配抵抗分を含む車両の走行抵抗分よりも小さくなり、アクセルペダルの釈放にもかかわらず車両が加速するという違和感をなくし得ると共に、その後のアクセルペダルの再踏み込み時において速やかな加速が可能になる。
【0047】
上記の作用を図6により付言するに、この図は、瞬時t4までの間をアクセルペダル踏み込み量APSが短い周期で変化するワインディング路走行中とし、瞬時t4以後をアクセルペダル踏み込み量APSが長い周期で変化する非ワインディング路走行中とする。
何れの走行中も、アクセルペダルが踏み込まれている瞬時t1までと、瞬時t2〜t3間と、瞬時t4〜t5間においては、勾配抵抗加算率αが大きな0.8で、フラグFLAGが1であり、登坂路においては勾配抵抗加算分(Rf×α)と平坦路目標駆動力Tdoとを合算して求める目標駆動力Tdtが大きくなるため、そしてフラグFLAG=1により目標スロットル開度選択部38が当該大きな目標駆動力Tdtに対応した要求スロットル開度TVOoを目標スロットル開度TVOtとするため、スロットル開度TVOは図6に実線で示すように制御され、登坂路でもきびきびした走行が可能になる。
しかして平坦路走行中は、勾配抵抗Rfが0であるため勾配抵抗加算分(Rf×α)も0となり、その分目標駆動力Tdtが小さくなるため、スロットル開度TVOは図6に破線で示すように制御され、無駄に駆動力増大制御が行われるのを防止することができる。
【0048】
ワインディング路走行中にアクセルペダルを釈放する瞬時t1〜t2間と、瞬時t3〜t4間においては、勾配抵抗加算率αが小さな0.3であり、フラグFLAGがアクセルペダル釈放瞬時t1,t3からタイマTMの設定時間(5秒)中は1であるため、登坂路においては勾配抵抗加算分(Rf×α)と平坦路目標駆動力Tdoとを合算して求めた目標駆動力Tdtに対応してスロットル開度TVOは図6に実線で示すように制御される。
これがため、ワインディング路走行中はアクセルペダル釈放時でも登坂路勾配に応じた駆動力増大制御が継続され、ワインディング路での登坂走行中、湾曲路のコーナーに差しかかって一時的にアクセルペダルを釈放した後直ちに行われるアクセルペダルの再踏み込み瞬時t2におけるエンジン出力の立ち上がりが遅れ気味となるのを防止することができる。
【0049】
なお、かかる駆動力増大制御の継続中は勾配抵抗加算率αを小さな0.3にするため、平坦路目標駆動力Tdoに勾配抵抗加算分(Rf×α)を加算して求める目標駆動力Tdtが、登坂路勾配に応じた勾配抵抗分を含む車両の走行抵抗分よりも小さくなり、アクセルペダルの釈放にもかかわらず車両が加速するという違和感をなくし得ると共に、その後のアクセルペダルの再踏み込み時において速やかな加速が可能となる。
【0050】
しかして、ワインディング路走行中はアクセルペダル釈放時でも駆動力増大制御を継続するといっても、平坦路走行であれば勾配抵抗Rfが0であるため勾配抵抗加算分(Rf×α)も0となり、アクセルペダル踏み込み量APS=0に対応して目標駆動力Tdtも0になるため、スロットル開度TVOは図6に破線で示すように0にされ、平坦路なのに無駄に駆動力増大制御が継続されるのを防止することができる。
【0051】
一方で、ワインディング路走行中にアクセルペダルを釈放した時の駆動力増大制御がタイマTMの設定時間(5秒)以上に亘って継続しようとする場合は、アクセルペダル釈放瞬時t3からタイマTMの設定時間(5秒)が経過した瞬時に見られるごとく、フラグFLAGが0になってスロットル開度TVOを実線で示すように0にし、当該瞬時に登坂路での駆動力増大制御を中止する。
よって、ワインディング路走行中にアクセルペダルを釈放した時の駆動力増大制御がタイマTMの設定時間(5秒)以上に亘って継続することはなく、十分な減速を行いたい時とか、停車を希望している時に要求通りの減速を得ることができる。
【0052】
非ワインディング路走行中にアクセルペダルを釈放する瞬時t5にはフラグFLAGが0になるため、登坂路であるか平坦路であるかに関係なく目標駆動力Tdtが0となり、スロットル開度TVOは図6に実線(登坂路)および破線(平坦路)で示すように0にされる。
これがため、登坂路走行中でもアクセルペダルの釈放時は駆動力増大制御を中止することとなり、登坂路で車両を減速または停車させようとしてアクセルペダルを釈放した時に駆動力増大制御が継続されることがなくなり、走行フィーリングが違和感のあるものになったり、無駄なエンジン出力の増大により燃費が悪くなる問題を解消し得る。
【0053】
なお何れにしても、登坂路走行中に目標駆動力Tdtを平坦路目標駆動力Tdoと勾配抵抗加算分(Rf×α)との合算により求めた値とすることにより上記の登坂路での駆動力増大制御を行うため、登坂路走行中の駆動力増大制御を目標駆動力の決定方式の変更のみにより簡単に実現することができて有利である。
更に、アクセルペダルの釈放時における当該駆動力増大制御の中止を、アクセルペダルの釈放に呼応したエンジンスロットル開度の全閉のみによって行うため、アクセルペダルの釈放時における登坂路走行用駆動力増大制御の中止を簡単に行うことができて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態になる駆動力制御装置を具えた無段変速機搭載車のパワートレーンを、その制御システムと共に示す概略説明図である。
【図2】 同実施の形態においてコントローラが実行する無段変速機の変速制御およびエンジンスロットル開度制御の機能別ブロック線図である。
【図3】 図2の変速制御およびスロットル開度制御において用いる勾配抵抗加算率および目標スロットル開度選択フラグの決定プログラムを示すフローチャートである。
【図4】 平坦路走行時に要求される車両駆動力の変化特性を例示する特性線図である。
【図5】 目標駆動力を最低燃費で達成する無段変速機の目標変速比を示す変化特性図である。
【図6】 本実施の形態において、走行路がワインディング路から非ワインディング路へ切り換わる場合におけるスロットル開度の制御態様を、登坂路走行時と平坦路走行時とで比較して示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
2 無段変速機
3 アクセルペダル
4 モータ
5 電子制御スロットルバルブ
6 トルクコンバータ
7 プライマリプーリ
8 セカンダリプーリ
9 Vベルト
10 ファイナルドライブギヤ組
11 ディファレンシャルギヤ装置
12 油圧アクチュエータ
13 コントローラ
14 アクセルペダル操作量センサ
15 クランク角センサ
16 スロットル開度センサ
17 変速機入力回転センサ
18 変速機出力回転センサ
19 車速センサ
20 ナビゲーションシステム
31 平坦路目標駆動力演算部
32 勾配抵抗演算部
33 乗算器
34 加算器
35 目標変速比演算部
36 目標エンジン出力トルク演算部
37 要求スロットル開度演算部
38 目標スロットル開度選択部
Claims (5)
- アクセルペダル操作以外の因子によっても任意に出力トルクを変更可能なエンジンと、自動変速機との組み合わせになるパワートレーンを搭載し、少なくともエンジンの出力トルクを、運転条件に応じて定めた目標駆動力が達成されるよう制御する車両において、
登坂路走行中は登坂路勾配に応じ駆動力を増大する駆動力増大制御を行うが、登坂路走行中でもアクセルペダルの釈放時は該駆動力増大制御を中止し、登坂路がワインディング路である場合、アクセルペダルの釈放時でも前記駆動力増大制御を継続し、登坂路がワインディング路であってアクセルペダルの釈放時に増大される駆動力を、登坂路走行中のアクセルペダルの踏み込み時に増大される駆動力に比べて小さく設定するよう構成したことを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項1において、登坂路走行中に前記目標駆動力を、登坂路勾配に応じて決定される勾配抵抗分が加算された目標駆動力とすることにより前記駆動力増大制御を行うよう構成したことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
- 請求項1または2において、前記アクセルペダルの釈放時における駆動力増大制御の中止を、アクセルペダルの釈放に呼応したエンジンスロットル開度の全閉のみによって行うよう構成したことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
- 請求項1乃至3のいずれか1項において、アクセルペダルの釈放時でもワインディング路での走行中故に前記駆動力増大制御を継続する場合の駆動力を、登坂路勾配に応じた勾配抵抗分が含まれる車両の走行抵抗分よりも小さくしたことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
- 請求項1乃至4のいずれか1項において、アクセルペダルの釈放時でもワインディング路での走行中故に前記駆動力増大制御を継続する場合の継続時間に制限を設けて、アクセルペダルの釈放から設定時間が経過した後は駆動力増大制御を中止するよう構成したことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
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