この発明は、変速比を無段階に制御することの可能な無段変速機の変速制御装置に関するものである。
従来、エンジンの出力側に無段変速機を設けるとともに、無段変速機の変速比を無段階に制御することにより、エンジンの運転状態を最適な状態に近づける制御が知られている。このような無段変速機としては、ベルト式無段変速機、トロイダル式無段変速機、電動機および遊星歯車機構を有する無段変速機が知られている。このうち、ベルト式無段変速機の制御装置の一例が、下記の特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたベルト式無段変速機は、プライマリシーブおよびセカンダリシーブにベルトを巻き掛けて構成されている。また、各シーブの実効径であるベルトの巻き掛け半径を制御するモータが設けられている。
さらに、変速条件に対応させて変速をおこなう変速装置と、手動による操作を可能としたマニュアル変速操作装置と、マニュアル変速操作装置が操作されたことを検出し、アップシフト操作の開始・終了に対応させてアップシフトの変速をおこない、ダウンシフト操作の開始・終了に対応させてダウンシフトの変速をおこなう変速条件設定手段とを有する。その結果、運転者に違和感を与えることが無く、運転者が望むトルク比を確実に設定することができ、マニュアル変速操作装置を繰り返し操作する必要がなくなるものとされている。なお、無段変速機における制御装置は、特許文献2および特許文献3にも記載されている。
特開平7−301321号公報
特開2001−208185号公報
特開平6−159489号公報
ところで、上記の特許文献1の公報に記載されている無段変速機の制御装置においては、マニュアル変速操作装置が操作された場合に、目標トルク比となるように、ベルト式無段変速機の変速比を制御する構成となっている。このため、目標トルク比となるように、ベルト式無段変速機を制御すると、駆動力源の運転状態が最適な状態とはならない場合があり、駆動力源の制御とベルト式無段変速機の制御との適合性が低下するという問題があった。
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、無段変速機の変速比を変更する操作が実行されている場合に、駆動力源の制御と変速制御との適合性を向上することの可能な無段変速機の変速制御装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動力源の出力側に無段変速機が設けられているとともに、前記無段変速機の入力回転数と出力回転数との比である変速比を制御する際に、自動変速モードまたは手動変速モードを選択することができるように構成されている、無段変速機の変速制御装置において、前記手動変速モードが選択され、かつ、前記変速比を変更する操作がおこなわれている場合は、前記変速比を変更する操作に基づいて目標入力回転数を求め、求められた目標入力回転数に基づいて、前記無段変速機の変速比を制御する第1の変速制御手段と、前記手動変速モードが選択され、かつ、前記変速比を変更する操作がおこなわれて前記無段変速機の変速比が制御されており、前記無段変速機の目標入力回転数と実入力回転数とに差があるときに、前記変速比を変更する操作が終了した場合は、前記変速比を変更する操作が終了した時点における実入力回転数から算出される変速比を目標変速比とし、その目標変速比を維持するように前記無段変速機の目標入力回転数を制御する第2の変速制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、手動変速モードが選択され、かつ、変速比を変更する操作がおこなわれている場合は、変速比を変更する操作に基づいて目標入力回転数が求められ、その目標入力回転数に基づいて、無段変速機の変速比が制御される。このため、変速比を変更する操作、例えば、操作の継続時間または操作量または操作回数などに基づいて、駆動力源の運転状態に応じた目標入力回転数を設定することが可能である。したがって、目標入力回転数を求める場合に、車速をパラメータとせずに済み、単位時間あたりの目標入力回転数の変化量を決め易くなるとともに、駆動力源の運転状態と、無段変速機の制御との適合性が向上する。
また、変速比を変更する操作が終了した場合は、変速比を変更する操作が終了した時点における実入力回転数から算出される変速比を目標変速比とし、その目標変速比を維持するように、無段変速機の目標入力回転数が制御されるため、無段変速機の変速比が、変速比を変更する操作を終了した時点における運転者の意図に応じた変速比に固定される。
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、この発明を適用できる車両のパワートレーン、およびその車両の制御系統の一例を、図2に示す。図2に示す車両Veにおいては、エンジン1と車輪2との間の動力伝達経路に、流体伝動装置3、ロックアップクラッチ4、前後進切り換え機構5、ベルト式無段変速機6などが設けられている。
また、流体伝動装置3およびロックアップクラッチ4は、エンジン1と前後進切り換え機構5との間の動力伝達経路に設けられており、流体伝動装置3とロックアップクラッチ4とは相互に並列に配置されている。流体伝動装置3は、流体の運動エネルギにより動力を伝達する装置であり、ロックアップクラッチ4は、摩擦力により動力を伝達する装置である。前後進切り換え機構5は、入力部材に対する出力部材の回転方向を、選択的に切り換える装置である。
ベルト式無段変速機6は、前後進切り換え機構5と車輪2との間の動力伝達経路に設けられている。ベルト式無段変速機6は、相互に平行に配置されたプライマリシャフト7およびセカンダリシャフト8を有している。このプライマリシャフト7にはプライマリプーリ9が設けられており、セカンダリシャフト8にはセカンダリプーリ10が設けられている。プライマリプーリ9は、プライマリシャフト7に固定された固定シーブ11と、プライマリシャフト7の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ12とを有している。そして、固定シーブ11と可動シーブ12との間に溝M1が形成されている。
また、この可動シーブ12をプライマリシャフト7の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ12と固定シーブ11とを接近・離隔させる油圧サーボ機構13が設けられている。この油圧サーボ機構13は、油圧室19と、油圧室19の油圧に応じてプライマリシャフト7の軸線方向に動作し、かつ、可動シーブ12に接続されたピストン(図示せず)とを備えている。
一方、セカンダリプーリ10は、セカンダリシャフト8に固定された固定シーブ14と、セカンダリシャフト8の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ15とを有している。そして、固定シーブ14と可動シーブ15との間にはV字形状の溝M2が形成されている。
また、この可動シーブ15をセカンダリシャフト8の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ15と固定シーブ14とを接近・離隔させる油圧サーボ機構16が設けられている。この油圧サーボ機構16は、油圧室100と、油圧室100の油圧によりセカンダリシャフト8の軸線方向に動作し、かつ、可動シーブ15に接続されたピストン(図示せず)とを備えている。上記構成のプライマリプーリ9およびセカンダリプーリ10に、無端状のベルト17が巻き掛けられている。
一方、ベルト式無段変速機6の油圧サーボ機構13,16およびロックアップクラッチ4、および前後進切り換え機構5を制御する機能を有する油圧制御装置18が設けられている。さらに、エンジン1、ロックアップクラッチ4、前後進切り換え機構5、ベルト式無段変速機6、油圧制御装置18を制御するコントローラとしての電子制御装置52が設けられており、この電子制御装置52は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
この電子制御装置52には、シフトポジション選択装置50の操作状態、変速比選択装置53の操作状態、エンジン回転数、加速要求(例えばアクセルペダルの操作状態)、制動要求(例えば、ブレーキペダルの操作状態)、スロットルバルブの開度、プライマリシャフト7の回転数、セカンダリシャフト8の回転数などの検知信号が入力される。シフトポジション選択装置50としては、レバー式、押しボタン式、タッチパネル式、回転ノブ式などの各種の構成を用いることが可能である。また、シフトポジション選択装置50は、足で操作する構造、または手で操作する構造のいずれでもよい。このシフトポジション選択装置50を、車両の乗員が操作することにより、パーキング(P)ポジション、リバース(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション、ドライブ(D)ポジション、マニュアル(M)ポジションなどを選択的に切換可能である。
ここで、リバースポジションが選択された場合は、ベルト式無段変速機6の変速比が固定され、ドライブポジションまたはマニュアルポジションが選択された場合は、ベルト式無段変速機6の変速比を固定または変更可能である。このベルト式無段変速機6の変速比を制御する場合に、自動変速モードまたは手動変速モードが起動する。この実施例においては、ドライブポジジョンが選択された場合は、自動変速モードが起動し、マニュアルポジションが選択された場合は、手動変速モードが起動する。自動変速モードとは、電子制御装置52に入力される信号、例えば、車速、加速要求などの信号と、電子制御装置52に記憶されているデータとに基づいて、ベルト式無段変速機6を制御するモードである。手動変速モードとは、変速比選択装置53の操作状態、および電子制御装置52に記憶されているデータに基づいて、ベルト式無段変速機6を制御することの可能なモードである。
前記変速比選択装置53は、レバー式、押しボタン式、タッチパネル式、回転ノブ式などの各種の構成を用いることが可能である。ここでは、変速比選択装置53が、ダウンシフトレバー53Aおよびアップシフトレバー53Bを有しているものとして説明する。一方、電子制御装置52から、エンジン1を制御する信号、ベルト式無段変速機6を制御する信号、前後進切り換え機構5を制御する信号、ロックアップクラッチ4を制御する信号、油圧制御装置18を制御する信号などが出力される。
つぎに、図2に示す車両Veにおける動力伝達作用を説明する。エンジン1の動力は、流体伝動装置3またはロックアップクラッチ4、および前後進切り換え機構5を経由して、ベルト式無段変速機6のプライマリシャフト7に伝達される。プライマリシャフト7のトルクは、プライマリプーリ9、ベルト17、セカンダリプーリ10を介してセカンダリシャフト8に伝達される。そして、セカンダリシャフト8のトルクが車輪2に伝達されて駆動力が発生する。
図1に示す車両Veの制御系統の機能を説明する。電子制御装置52には各種のデータが記憶されており、電子制御装置52に入力される信号、および記憶されているデータに基づいて、エンジン1、ベルト式無段変速機6、前後進切り換え機構5、ロックアップクラッチ4、油圧制御装置18などが制御される。初めに、ベルト式無段変速機6の変速制御について説明する。まず、油圧室19の油圧に基づいて、プライマリプーリ9の可動シーブ12を軸線方向に動作させる推力が調整される。また、油圧室100の油圧により、セカンダリプーリ10の可動シーブ15を軸線方向に動作させる推力が調整される。
そして、ベルト式無段変速機6においては、可動シーブ12に加えられる推力と、可動シーブ15に加えられる推力との対応関係により、プライマリプーリ9の溝M1の幅、およびセカンダリプーリ10の溝M2の幅が変化して、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径と、セカンダリプーリ10におけるベルト17の巻き掛け半径との比が変化する。このようにして、プライマリシャフト7およびプライマリプーリ9の回転数(入力回転数)と、セカンダリシャフト8およびセカンダリプーリ10の回転数(出力回転数)との比である変速比が制御され、かつ、ベルト式無段変速機6のトルク容量が制御される。
上記のようなベルト式無段変速機6の制御と、電子制御装置52に入力される信号などとの対応関係を説明する。まず、ドライブポジションが選択され、自動変速モードが選択された場合は、車速、加速要求を示す信号、および電子制御装置52に記憶されている変速マップに基づいて、ベルト式無段変速機6の目標変速比が算出され、ベルト式無段変速機6の実際の変速比を、目標変速比に近づける制御が実行される。なお、車速は、セカンダリシャフト8の回転数に基づいて算出される。この自動変速モードが選択された場合は、エンジン1の運転状態が最適燃費線に沿ったものとなるように、ベルト式無段変速機6の変速比が制御される。この最適燃費線は、エンジン出力、すなわちトルクおよび回転数をパラメータとして設定されている。
つぎに、手動変速モードが起動された場合について説明する。この手動変速モードが起動された場合は、自動変速モードで用いられる条件に関わりなく、ベルト式無段変速機6の変速比を、運転者が任意に制御することが可能である。例えば、ダウンシフトレバー53Aが操作された場合は、ダウンシフト制御、つまり、ベルト式無段変速機6の変速比を大きくする変速が実行される。これに対して、アップシフトレバー53Bが操作された場合は、アップシフト制御、つまり、ベルト式無段変速機6の変速比を小さくする変速が実行される。なお、手動変速モードが選択されている場合に、ダウンシフトレバー53Aおよびアップシフトレバー53Bが、共に操作されていない場合は、ベルト式無段変速機6の変速比は略一定に制御される。
つぎに、図2に示された車両Veにおいて実行可能な制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。まず、手動変速モードが起動しているか否かが判断される(ステップS1)。このステップS1で肯定的に判断された場合は、ダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bのいずれか一方が操作されているか否かが判断される(ステップS2)。このステップS2で肯定的に判断された場合は、図1の制御ルーチンを前回実行した際に、同じレバーが操作されていたか否かが判断される(ステップS3)。このステップS3で否定的に判断された場合はステップS4に進む。このステップS4においては、第1の処理ないし第3の処理が実行される。まず、第1の処理は、ダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bの操作に基づいて算出される入力回転数を、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数として選択する処理である。
この第1の処理においては、電子制御装置52に記憶されているマップ(図示せず)が用いられる。このマップは、ダウンシフトレバー53Aの操作時間に基づく目標入力回転数の上昇程度、アップシフトレバー53Bの操作時間に基づく目標入力回転数の低下程度などを示すマップである。ここで、ダウンシフトレバー53Aの操作時間に基づく目標入力回転数の上昇程度、アップシフトレバー53Bの操作時間に基づく目標入力回転数の低下程度は、エンジン1の運転状態との適合性を考慮して設定されており、加速要求および車速とは関係なく目標入力回転数が設定される。
そして、ステップS3で否定判断される場合のように、ダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bの操作の開始直後である場合は、前記マップに基づいて、「ベルト式無段変速機6の目標入力回転数をステップ的に変更する制御」、つまり「ステップ変速」が、第1の処理で実行される。この第1の処理を記号で表すと、
NINT←KNINSTEP
となる。ここで、NINTは、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数を意味し、KNINSTEPは、実入力回転数をステップ的に変更する場合における目標入力回転数、言い換えれば、ステップ目標入力回転数である。
また、前記第2の処理は、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数をステップ的に変更している途中で、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数を出力回転数で除して算出される変速比を、仮の目標変速比として取り扱う処理である。この第2の処理を記号で表すと、
γTstep ←NINT/NOUT
となる。ステップS4における第2の処理において、γTstep は、ステップ変速中における目標変速比を意味し、NINTは、目標入力回転数であり、NOUTは、目標入力回転数をステップ的に変更している途中の実出力回転数を意味する。この第2の処理は、実入力回転数を目標ステップ回転数に近づける途中で、運転者がダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bの操作を中止した場合でも、実入力回転数をステップ目標入力回転数KNINSTEPに一致させるための処理である。つまり、第2の処理において、ステップ変速時の目標変速比γTstep を定めておけば、ステップS2で否定的に判断されてステップS17が実行される場合も、実入力回転数はステップ目標入力回転数KNINSTEPまで変更される。
さらに、前記第3の処理は、正規の目標変速比に、上記の第2の処理で算出された仮の目標変速比を代入する処理である。このステップS4で実行される第3の処理を記号で表すと、
γT ←γTstep
となる。ここで、γT は、正規の目標変速比を意味する。
上記のステップS4についで、ステップS4で算出された目標入力回転数NINTが、入力回転数の最高値NINmax 以上であるか否かが判断される(ステップS5)。このステップS5、および後述するステップS7,S9,S11の処理を実行する場合に用いられるマップの一例を、図3に示す。図3に示すマップにおいては、横軸に車速が示され、縦軸にベルト式無段変速機6の入力回転数が示されている。また、図3のマップにおいて、γmax は、ベルト式無段変速機6の変速比の最大値(ガード値)であり、γmin は、ベルト式無段変速機6の変速比の最小値(ガード値)である。
ここで、ベルト式無段変速機6の変速比の最大値および最小値は、プライマリプーリ9およびセカンダリプーリ19の有効内径および有効外径などに基づいて決定される。また、NINmax は、ベルト式無段変速機6の入力回転数の最高値(ガード値)であり、NINmin は、ベルト式無段変速機6の入力回転数の最低値(ガード値)である。ベルト式無段変速機6の入力回転数の最高値および入力回転数の最低値は、エンジン1の特性および機能、あるいは車両Veの走行状態に基づいた要求出力などに基づいて決定される。
そして、ステップS5で肯定的に判断された場合は、第4の処理および第5の処理がおこなわれ(ステップS6)、ステップS7に進む。この第4の処理は、図3のマップに示された入力回転数の最大値を、目標入力回転数として代入する処理であり、第5の処理は、実入力回転数を実出力回転数で除して算出される変速比を、目標変速比として代入する処理である。上記の第4の処理を記号で表すと、
NINT←NINmax
となり、第5の処理を記号で表すと、
γT ←NIN/NOUT
となる。ここで、NINは、実入力回転数を意味する。
つぎに、ステップS5からステップS6に進んだ場合の処理を、図3のマップを用いて説明する。例えば、車速V1から減速しながらダウンシフトレバー53Aが操作されて入力回転数が上昇した場合でも、その目標入力回転数が最大値を越えることはない。ついで、車速V2以下の車速でダウンシフトレバー53Aおよびアップシフトレバー53Bが共に操作されなくなると、車速が低下し、かつ、入力回転数が低下する。
これに対して、入力回転数の最大値NINmax が設定されていない場合を説明する。この場合は、ダウンシフトレバーが継続的に操作されて、破線で示すように入力回転数が最大値NINmax を越える可能性がある。そして、車速V3から減速中に、ダウンシフトレバー53Aおよびアップシフトレバー53Bが共に操作されなくなると、破線で示すように入力回転数が低下する。
一方、前記ステップS5で否定的に判断された場合は、ステップS7に進む。このステップS7においては、
NINT≦NINmin
であるか否かが判断される。このステップS7で肯定的に判断された場合は、ステップS8に進み、第6の処理および第7の処理が実行される。第6の処理は、図3のマップに示す入力回転数の最小値を、目標入力回転数として代入する処理であり、第7の処理は、実入力回転数を実出力回転数で除して算出される変速比を、目標変速比として代入する処理である。ここで、第6の処理を記号で表すと、
NINT←NINmin
となる。なお、第7の処理を示す記号は、第5の処理を示す記号と同じである。
上記のステップS8の実行後、またはステップS7で否定的に判断された場合は、
γT ≧γmax
であるか否かが判断される(ステップS9)。このステップS9で肯定的に判断された場合は、第8の処理および第9の処理が実行される(ステップS10)。第8の処理は、図3に示す変速比の最大値を、目標変速比として代入する処理であり、第9の処理は、目標変速比と実出力回転数とを乗算して得られた値を、目標入力回転数として代入する処理である。
この第9の処理を記号で表すと、
NINT←γT *NOUT
となる。
上記のステップS10の実行後、またはステップS9で否定的に判断された場合は、
γT ≦γmin
であるか否かが判断される(ステップS11)。このステップS11で肯定的に判断された場合は、第10の処理および第11の処理が実行される(ステップS12)。この第10の処理は、図3に示す変速比の最小値を、目標変速比として代入する処理であり、第11の処理は、目標変速比と実出力回転数とを乗算して得られた値を、目標入力回転数として代入する処理である。なお、第11の処理を示す記号は、第9の処理を示す記号と同じである。そして、ステップS12がおこなわれた後、またはステップS11で否定的に判断された場合は、図1に示す制御ルーチンを終了する。
前記ステップS3で肯定的に判断されるということは、ダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bが、継続的に操作されていることを意味する。このように、ステップS3で肯定的に判断された場合は、前回のルーチン実行時に算出された目標入力回転数に、ダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bレバーの継続的な操作に応じた回転数を加算して、新たな目標入力回転数を算出する処理が実行される(ステップS13)。このステップS13の処理を記号で表すと、
NINT←NINT+KCONTINUE
となる。ここで、KCONTINUEは、レバーの継続的な操作に対応する回転数の上昇量または低下量を意味する。
前記ステップS13についで、
γTstep =γ
になったか否かが判断される(ステップS14)。ここで、左項の「γTstep 」は、ベルト式無段変速機6の入力回転数を、目標入力回転数にステップ的に変更する場合において、目標入力回転数に対応する目標変速比である。また、右項の「γ」は、実変速比を意味する。このステップS14で否定的に判断された場合は、ステップ変速の実行中に、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数と実出力回転数とに基づいて、ステップ変速時の目標変速比を算出するとともに、正規の目標変速比に、ステップ変速時の目標変速比を代入する処理を実行し(ステップS15)、ステップS5に進む。このステップS15で実行される処理は、ステップS4の第2の処理および第3の処理と同じである。これに対して、ステップS14で肯定的に判断された場合は、ベルト式無段変速機6の実入力回転数を実出力回転数で除した値を、目標変速比に代入し(ステップS16)、ステップS5に進む。すなわち、ステップS14では、実入力回転数がステップ目標目標入力回転数まで変更されたか否かを判断している。
一方、前記ステップS2で否定的に判断された場合は、前回ダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bの操作が終了した時点における実入力回転数に対応する変速比、すなわち、運転者の意図する変速比が維持されるように、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数を制御し(ステップS17)、ステップS5に進む。このステップS17の処理を記号で示せば、
NINT←γT *NOUT
となる。
このステップS17の処理は、前記第9の処理および第11の処理と同じである。なお、ステップS1で否定的に判断された場合、つまり、自動変速モードが選択されている場合は、車速および加速要求をパラメータとするマップに基づいて、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数および目標変速比が選択されるとともに、ステップS5に進む。
つぎに、図1の制御例に対応するタイムチャートの一例を、図4に基づいて説明する。まず、時刻t1以前においては、ドライブポジションが選択されており、シーケンシャルシフトフラグXSPTCDがオフされているととに、アップシフトフラグXSFTUおよびダウンシフトフラグXSFTDもオフされている。前記シーケンシャルシフトフラグは、手動変速モードの起動の有無を示すフラグである。また、入力回転数および変速比は、共に略一定になっている。
そして、時刻t1において、ドライブポジションからマニュアルポジションに切り換えられると、シーケンシャルシフトフラグがオンされるとともに、実線で示す目標入力回転数をステップ的に上昇させ、かつ、実線で示す目標変速比をステップ的に大きくさせる処理が実行される。なお、破線で示す実入力回転数および破線で示す実変速比は、応答遅れによりステップ的には変化せず、所定の勾配もしくは割合で変化する。その後、実入力回転数が目標入力回転数と一致し、かつ、実変速比が目標変速比と一致している。
なお、時刻t2以前においては、ダウンシフトレバー53Aおよびアップシフトレバー53Bが、共に操作されていない。また、目標入力回転数と実入力回転数とが一致し、かつ、目標変速比と実変速比とが一致した時点以降は、目標入力回転数および実入力回転数が略一定に制御され、かつ、目標変速比および実変速比が略一定に制御されている。
ついで、時刻t2でアップシフトレバー53Bが操作されると、アップシフトフラグがオンされ、かつ、目標入力回転数がステップ的に低下され、かつ、目標変速比がステップ的に小さくなる。なお、破線で示す実入力回転数および破線で示す実変速比は、ステップ的には変化せず、応答遅れにより所定の勾配もしくは割合で変化する。また、時刻t2から、目標変速比と実変速比とが一致するまでの間、つまり、ステップS14で否定的に判断される場合は、ステップS15の処理がおこなわれる。そして、時刻t2で目標変速比と実変速比とが一致すると、ステップS14で肯定的に判断されて、ステップS16の処理がおこなわれる。さらにまた、時刻t3以前では、アップシフトレバー53Bが継続して操作されており、目標入力回転数および実入力回転数が徐々に低下し、かつ、目標変速比および実変速比が徐々に小さくなっている。その後、実入力回転数が目標入力回転数と一致し、かつ、実変速比が目標変速比と一致している。
さらに、時刻t3でアップシフトレバー53Bの操作が終了してダウンシフトフラグがオフされ、時刻t3から時刻t4までの間は、ダウンシフトレバー53Aおよびアップシフトレバー53Bは共に操作されない。このため、時刻t3以降はアップシフトレバー53Bの操作終了時の実入力回転数から算出される目標変速比を維持するように、入力回転数が制御される。すなわち、時刻t3から時刻t4の間は、目標入力回転数および変速比が、共に略一定に制御される。
そして、時刻t4でダウンシフトレバー53Aが操作されると、ダウンシフトフラグがオンされ、かつ、目標入力回転数が実線のようにステップ的に上昇され、かつ、目標変速比が実線で示すようにステップ的に大きくなる。なお、破線で示す実入力回転数および破線で示す実変速比は、応答遅れによりステップ的には変化せず、所定の勾配もしくは割合で変化する。その後、時刻t4から実変速比と目標変速比とが一致するまでの間、つまり、ステップS14で否定的に判断されて、ステップS15の処理がおこなわれる。そして、実変速比と目標変速比とが一致すると、ステップS14で肯定的に判断されて、ステップS16の処理がおこなわれる。また、時刻t5以前において、ダウンシフトレバー53Aが継続して操作されている間、目標入力回転数および実入力回転数が共に上昇している。なお、実入力回転数を目標入力回転数に近づけるフィードバック制御が実行されているが、図4のタイムチャートに示すように、応答遅れに基づく回転数差がある。
さらに、時刻t5でダウンシフトレバー53Aの操作が終了すると、ダウンシフトフラグがオフされ、かつ、時刻t5から時刻t6までの間は、ダウンシフトレバー53Aおよびアップシフトレバー53Bは共に操作されない。このため、時刻t5以降はダウンシフトレバー53Aの操作終了時の実入力回転数から算出される目標変速比を維持するように、目標入力回転数が制御される。そして、時刻t5から時刻t6の間は、時刻t5における実入力回転数を維持するように、目標変速比が略一定に制御されている。
そして、時刻t6において、マニュアルポジションからドライブポジションに変更されると、シーケンシャルシフトフラグがオフされ、かつ、目標入力回転数が実線で示すようにステップ的に低下され、かつ、目標変速比が実線で示すようにステップ的に小さくなる。なお、破線で示す実入力回転数および破線で示す実変速比は、応答遅れによりステップ的には変化せず、所定の勾配もしくは割合で変化する。以上のように、時刻t1から時刻t2の間、および時刻t3から時刻t4の間、および時刻t5から時刻t6の間は、実入力回転数から算出される目標変速比を維持するように、ベルト式無段変速機6が制御される。これに対して、時刻t2から時刻t3の間、および時刻t4から時刻t5の間は、アップシフトまたはダウンシフト操作に応じて目標入力回転数を算出し、その目標入力回転数に基づいて、ベルト式無段変速機6が制御される。
なお、図1の制御例および図4のタイムチャートで説明した「入力回転数がステップ的に上昇または低下する」とは、単位時間あたりにおける入力回転数の変化量または変化勾配または変化割合などが、所定値以上であることを意味する。これに対して、「入力回転数が徐々に上昇または低下する」とは、単位時間あたりの入力回転数の変化量または変化勾配または変化割合などが、所定値未満であることを意味する。また、「変速比がステップ的に大きくまたは小さくなる」とは、単位時間あたりの変速比の変化量または変化勾配または変化割合などが、所定値以上であることを意味する。これに対して、「変速比が徐々に大きくまたは小さくなる」とは、単位時間あたりの変速比の変化量または変化勾配または変化割合などが、所定値未満であることを意味する。
以上のように、この実施例においては、手動変速モードが起動されている場合は、ダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bのいずれか一方の操作時間に基づいて、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数が求められ、実入力回転数を目標入力回転数に近づけるように、ベルト式無段変速機6が制御される。つまり、レバーの操作時間に基づいて、エンジン1の運転状態に応じた目標入力回転数を設定するように構成することができる。したがって、目標入力回転数を求める場合に、車速をパラメータとせずに済み、単位時間あたりの目標入力回転数の変化量を決め易いとともに、エンジン1の運転状態と、ベルト式無段変速機6の制御との適合性が向上する。
また、手動変速モードが起動され、かつ、ダウンシフトレバー53Aおよびアップシフトレバー53Bが共に操作されていない場合は、ダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bの操作を終了した時点の実入力回転数から算出される目標変速比を維持するように、無段変速機が制御される。したがって、ベルト式無段変速機6の変速比を運転者の意図に応じた変速比に固定することができる。
なお、上記の説明においては、ステップS3でダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bのいずれか一方の操作時間を判断し、その判断結果に基づいて、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数を制御するルーチンとなっているが、ステップS3でダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bのいずれか一方の操作量または操作回数を判断し、その判断結果に基づいて、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数を制御するルーチンを採用することも可能である。
ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS3,S4が、この発明の第1の変速制御手段に相当し、ステップS17が、この発明の第2の変速制御手段に相当する。また、エンジン1がこの発明の駆動力源に相当する。
さらに、この実施例1に記載された特徴的な構成を記載すれば、以下のとおりである。すなわち、駆動力源の出力側に無段変速機が設けられているとともに、前記無段変速機の入力回転数と出力回転数との比である変速比を制御する無段変速機の変速制御装置において、前記変速比を変更する操作がおこなわれている場合は、前記変速比を変更する操作の実行時間に基づいて目標入力回転数を求め、求められた目標入力回転数に基づいて、前記無段変速機を制御する第1の変速制御手段と、前記変速比を変更する操作がおこなわれていない場合は、前回変速比を変更する操作が終了した時点で選択されていた実入力回転数から算出される目標変速比に基づいて、前記無段変速機を制御する第2の変速制御手段とを備えていることを特徴とする無段変速機の変速制御装置である。
図2のパワートレーンで実行可能な制御例を、図5のフローチャートに基づいて説明する。まず、手動変速モードが起動されているか否かが判断され(ステップS21)、このステップS21で肯定的に判断された場合は、ガード前における目標入力回転数NINTBが読み込まれる(ステップS22)。このガード前における目標入力回転数は、手動変速モードが起動されている場合において、加速要求が増加した場合(アクセルペダルが踏み込まれた場合)を想定して設定される目標入力回転数であり、車速およびアクセル開度に基づいて、目標入力回転数を定めたマップから読み込まれる。このマップは、ドライブポジションが選択されている場合に、ベルト式無段変速機6を制御するために用いられるマップと略同じである。
上記のステップS22についで、ダウンシフトレバー53Aまたはアップシフトレバー53Bが操作されているか否かが判断される(ステップS23)。ステップS23で肯定的に判断された場合は、前回のルーチン実行時に、同じレバーが操作されていたか否かが判断される(ステップS24)。このステップS24で否定的に判断された場合は、ステップ的に変化させる目標入力回転数KNINSTEPを求めるとともに、目標入力回転数KNINSTEPを、目標入力回転数の下限NINGDとして代入する(ステップS25)。なお、目標入力回転数KNINSTEPは、図1のステップS4と同様にして算出される。
上記のステップS25についで、目標入力回転数の下限が、入力回転数の最高値NINMAX(ガード値)を越えているか否かが判断される(ステップS26)。このステップS26および後述するステップS31,S33の処理を実行する場合に用いられるマップの一例を、図6に示す。図6に示すマップにおいては、横軸に車速が示され、縦軸にベルト式無段変速機6の目標入力回転数が示されている。この図6において、NINMAXは、ベルト式無段変速機6の入力回転数の最高値(ガード値)であり、NINMINは、ベルト式無段変速機6の入力回転数の最低値(ガード値)である。なお、図6のマップに記載されているその他の記号の意味は、図3のマップの記号の意味と同じである。
ステップS26で肯定的に判断された場合は、図6のマップにおける目標入力回転数の最高値を、目標入力回転数の下限値として代入する処理と、目標入力回転数の最高値を実入力回転数で除して変速比を求め、その変速比を、目標変速比の下限値γGDとして代入する処理とが実行される(ステップS27)。このステップS27についで、目標入力回転数の下限NINGDが、ステップS22で読み込まれたガード前の目標入力回転数NINTBを越えているか否かが判断される(ステップS28)。
このステップS28で肯定的に判断された場合は、目標入力回転数の下限NINGDを、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数として代入する処理をおこない(ステップS29)、図5に示す制御ルーチンを終了する。これに対して、ステップS28で否定的に判断された場合は、ステップS2で読み込まれた目標回転数NINTBを、ベルト式無段変速機6の目標入力回転数NINTに代入する処理を実行し(ステップS30)、この制御ルーチンを終了する。
一方、前記ステップS26で否定的に判断された場合は、ステップS25で求めた目標入力回転数の下限NINGDが、目標変速比の最大値γmax と実出力回転数NOUTとを乗算して算出した入力回転数を越えているか否かが判断される(ステップS31)。このステップS31で肯定的に判断された場合は、目標変速比の最大値γmax と実出力回転数NOUTとを乗算した値を、目標入力回転数の下限NINGDに代入する処理を実行し、かつ、目標変速比の最大値γmax を目標変速比の下限γGDとして代入する処理を実行し(ステップS32)、ステップS28に進む。
さらに、前記ステップS31で否定的に判断された場合は、目標入力回転数の下限NINGDが、目標変速比の最小値γmin と実出力回転数NOUTとを乗算した入力回転数未満であるか否かが判断される(ステップS33)。このステップS33で肯定的に判断された場合は、目標変速比の最小値γmin と実出力回転数NOUTとを乗算した値を、目標入力回転数の下限NINGDに代入する処理を実行し、かつ、目標変速比の最小値γmin を目標変速比の下限γGDとして代入する処理を実行し(ステップS34)、ステップS28に進む。なお、ステップS33で否定的に判断された場合は、ステップS28に進む。
また、前記ステップS24で肯定的に判断された場合は、前回の目標入力回転数に、レバーが連続的に操作されていることを示す係数KCONTINUEを加算した値を、新たな目標入力回転数として取り扱う処理を実行するとともに、目標入力回転数の下限NINGDを実出力回転数NOUTで除して算出される変速比を、目標変速比の下限γGDとして取り扱う処理を実行し(ステップS35)、ステップS26に進む。一方、前記ステップS23で否定的に判断された場合は、制動要求があるか否か(ブレーキスイッチがオンされたか否か)が判断される(ステップS36)。このステップS36で否定的に判断された場合は、目標変速比の下限γGDと実入力回転数NOUTとを乗算した値を、目標入力回転数の下限NINGDとして代入し(ステップS37)、ステップS26に進む。
これに対して、前記ステップS36で肯定的に判断された場合は、前回のルーチン実行時にブレーキスイッチがオンされていたか否かが判断される(ステップS38)。このステップS38で否定的に判断された場合は、目標入力回転数の下限NINGDを、ブレーキスイッチがオンされた場合における目標入力回転数の下限NINGDBKONとして代入する(ステップS39)。ついで、目標入力回転数の下限NINGDBKONを、目標入力回転数の下限NINGDとして保持し、かつ、目標入力回転数の下限NINGDを、実出力回転数NOUTで除した値を、目標変速比の下限γGDとして代入する処理を実行し(ステップS40)、ステップS26に進む。なお、ステップS38で否定的に判断された場合も、ステップS40に進む。さらに、ステップS21で否定的に判断された場合は、図5に示す制御ルーチンを終了する。
このように図5の制御例においては、ステップS28で否定的に判断された場合は、ステップS30に進む。つまり、手動変速モードが起動され、かつ、レバーが操作されていない場合に用いられるガード前の目標入力回転数NINTBが、目標入力回転数NINTとして取り扱われる。したがって、手動変速モードが起動され、かつ、レバーが操作されていない場合でも、アクセルペダルが踏み込まれた場合は、ベルト式無段変速機6の変速比を大きくする制御を実行し、目標入力回転数を上昇させることが可能である。したがって、運転者が意図する加速要求に見合う駆動力を得ることができる。
この実施例2に対応する目標入力回転数の制御例を、図6のマップを参照して説明する。車速V1でアップシフトレバー53Bが操作されている場合は、目標入力回転数が低下するとともに、車速が上昇する。そして、車速V2でアップシフトレバー53Bおよびダウンシフトレバー53Aが共に操作されなくなり、かつ、アクセルペダルの踏み込み量が増加した場合は、目標入力回転数が上昇して駆動力が増加し、車速も上昇している。また、車速V3でアクセルペダルの踏み込み量が減少すると、目標入力回転数が低下する。
つぎに、比較例の制御に対応する目標入力回転数の制御例を、図7のマップに基づいて説明する。比較例の特性は、車速V1から車速V2の間における目標入力回転数は、実施例2の特性と同じである。車速V2でアクセルペダルの踏み込み量が増加した場合、目標入力回転数の上昇勾配は、実施例の上昇勾配よりも緩やかである。なお、比較例において、目標入力回転数が上昇する理由は、車速に応じて変速比の下限が設定されているためである。
なお、実施例1および実施例2において、入力回転数と等価のパラメータである入力回転速度を用い、出力回転数と等価のパラメータである出力回転速度を用いることも、可能である。さらに、車両Veのパワートレーンを示す図1においては、無段変速機としてベルト式無段変速機6が挙げられているが、他の無段変速機、例えば、トロイダル式無段変速機を有する車両に、各請求項の発明を適用することも可能である。このトロイダル式無段変速機は、トロイダル面を有する入力ディスクおよび出力ディスクと、各ディスクに対して接触するパワーローラとを有する変速機である。入力ディスクは入力回転部材に連結され、出力ディスクは出力回転部材に連結される。各ディスクとパワーローラとの接触面には潤滑油が存在する。そして、パワーローラと各ディスクとの接触半径を調整することにより、入力回転部材と出力回転部材との間の変速比が制御される。また、各ディスクとパワーローラとの接触面圧を調整することにより、入力回転部材と出力回転部材との間で伝達されるトルクの容量が制御される。
さらに、この発明における無段変速機には、電動機と、差動回転可能な3つの回転要素を有する遊星歯車機構とを備えた無段変速機も含まれる。この場合、第1の回転要素が入力要素となり、第2の回転要素が出力要素となり、第3の回転要素が反力要素となる。そして、この第3の回転要素に電動機が連結され、電動機の回転数を制御することにより、第1の回転要素と第2の回転要素との間における変速比を、無段階に(連続的に)制御することが可能である。このような電動機および遊星歯車機構を有する無段変速機を、例えば、複数の駆動力源を有するハイブリッド車に用いることが可能である。
このようなハイブリッド車のパワートレーンの構成例としては、第1の駆動力源であるエンジンが第1の回転要素に連結され、第2の回転要素に第2の駆動力源であるモータ・ジェネレータが連結されたパワートレーンが挙げられる。そして、この電動機および遊星歯車機構を有する無段変速機において、自動変速モードと手動変速モードを切り換えられるように構成するとともに、その手動変速モードにおいて、運転者が意図するように、変速比を無段変速機の入力回転数および変速比制御できるように構成することが可能である。また、無段変速機を制御するアクチュエータとしては、油圧制御式のアクチュエータの他に電動式アクチュエータ、空気圧式アクチュエータなどを用いることも可能である。
この発明の無段変速機の変速制御装置で実行可能な制御例を示すフローチャートである。
図1の制御例を実行可能な車両のパワートレーンおよび制御系統を示す概念図である。
図1の制御例で用いられるマップの一例を示す図である。
図1の制御例に対応するタイムチャートの一例を示す図である。
図2に示された車両で実行可能な他の制御例を示すフローチャートである。
図5の制御例で用いられるマップの一例を示す図である。
図5の制御例の比較対象となる比較例に対応するマップの一例である。
符号の説明
1…エンジン、 6…ベルト式無段変速機、 7…プライマリシャフト、 8…セカンダリシャフト、 9…プライマリプーリ、 10…セカンダリプーリ、 52…電子制御装置。