JP4977474B2 - アルミニウムケイリン酸塩ガラス - Google Patents

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Description

関連出願
本出願は、2003年12月31日に出願された米国仮特許出願第60/533784号からの優先権の恩恵を主張する。その内容をここに引用する。
本発明は、高い歪み点、シリコンに一致させられる熱膨張係数、および液相線温度での高い粘度により特徴付けられるAl23−P25−SiO2ガラスに関する。これらの特徴により、本発明のガラスは、フラット・パネル・ディスプレイ装置の基板として使用するのに特に適したものとなっている。
液晶ディスプレイ(LCD)は、照明のために外部光源に依存する受動的なディスプレイである。LCDは、ダイオード、金属−絶縁体−金属(MIM)デバイス、または薄膜トランジスタ(TFT)のアレイが各ピクセルへの電子スイッチを供給するアクティブ・マトリクス式にアドレスされたフォーマットで製造されるのが最も一般的である。二枚のガラスシートがディスプレイの構造を形成する。シートの間隔は、液晶材料を含有する、5〜10μmの重大な間隙寸法である。間隙寸法の均一性を維持するために、ガラスシートの平面度が極めて精密であることが要求される。
アクティブ・マトリクス液晶ディスプレイ(AMLCD)では、各ピクセルでダイオードや薄膜トランジスタなどの能動素子が用いられ、それによって、高いコントラストおよび高い応答速度が可能になる。多くのディスプレイ装置では、加工が450℃未満の温度で行われる非晶質シリコン(a−Si)が現在用いられているが、多結晶シリコン(poly−Si)加工が好ましい。poly−Siはずっと高い駆動電流および電子移動度を有し、それによって、ピクセルの応答時間が増す。さらに、poly−Si加工を用いると、ディスプレイの駆動回路をガラス基板上に直接構築することが可能である。これとは反対に、a−Siは、集積回路実装技法を用いて、ディスプレイの周囲に取り付けなければならない別個のドライバ・チップが必要である。poly−Si加工方法は、a−Si TFTに用いられる温度よりも高い温度で動作する。そのようなプロセスでは、非常に高い電子移動度(迅速な切換えのため)および大面積に亘る優れたTFT均一性を有するpoly−Siフイルムを形成することができる。要求される実際の温度は、TFTの製造に用いられる特定のプロセスにより決まる。ゲート誘電体が堆積されたそれらのTFTでは600〜650℃が必要とされるが、熱酸化膜を備えたものでは約800℃が必要とされる。a−Siおよびpoly−Siプロセスの両方に、連続したフォトリソグラフィー・パターンの精密な位置合せが要求される。このため、基板の熱収縮を低く維持することが必要になる。
温度要件により、600℃より高い温度で熱変形が生じなくするために、高い歪み点を示すガラスを使用する必要がある。
LCD用の基板の要求を完全に満たすために、ガラスが4つの性質を示すことが不可欠であると考えられることが一般に認識されている。
第1に、ガラスは、基板からのアルカリ金属がトランジスタのマトリクス中に移行し得る可能性を避けるために、アルカリ金属酸化物が意図的に加えられることが実質的にあってはならない。
第2に、ガラス基板は、TFT成膜プロセスに用いられる試薬に耐えるために十分に化学的耐久性でなければならない。
第3に、ガラスと、TFTアレイに存在するシリコンとの間の膨張差は、基板の加工温度が上昇しても、比較的低いレベルに維持しなければならない。
第4に、ガラスは、低コストで高品質の薄いシート形態で製造されなければならない。すなわち、必要な表面仕上げを確保するために、大規模な研削や研磨を必要としてはならない。
最後の要件は、特許文献1に記載されたオーバーフロー・ダウンドロー・シート製造プロセスなどの実質的に仕上がったガラスシートを製造できるシートガラス製造プロセスが必要とされるので、実施するのが特に難しいものである。そのプロセスでは、溶融および成形温度での失透に対して、例えば、30日間の長期の安定性に加え、液相線温度で非常に高い粘度を示すガラスが必要とされる。
上述した要件を満たすこれまでのほとんどのガラスは、アルカリ土類ボロアルミノケイ酸塩系の共晶組成に基づいている。
米国特許第3682609号明細書
本発明は、ディスプレイ装置用の基板として使用するための利点が明らかになる組成領域を探求するものである。
本発明は、高い使用温度、耐失透性、良好な化学的耐久性、優れた誘電特性、シリコンのものに一致するように調整できる熱膨張係数、および従来の方法による成形を可能にする液相線粘度を有する安定なガラスを生成するP25−SiO2−Al23三成分系のガラス形成領域を記載する。このガラスは、酸化物基準の質量パーセントで計算して以下の組成:33〜75%のP25、2〜52%のSiO2、8〜35%のAl23を有し、P/Alの原子比が1.3と4.0の間にあることが条件である。
ほとんどの三成分ガラス形成系は、既に完全に評価されている。さらに、アルカリまたはアルカリ土類陽イオンを全く含まない組成系はわずかしか、優れた品質を持つ安定な非失透性ガラスを提供しないことが知られている。
25−SiO2−Al23 の基礎系において新規のガラス形成領域が発見された。本願の発明者の驚いたことには、溶融により結晶質化合物Si2AlO(PO43を合成する試行中に、優れたガラスが形成された。このガラス形成領域は、さらに溶融物を探求することによって、接合線Al(PO33−SiO2に沿って、この接合線のAl23の豊富な(過剰なアルミニウム)側に拡張された。この接合線からA23の少ない側のガラス(低水準のアルミニウム)は、化学的耐久性の観点から問題であると考えられた。



これらのガラスの重要な特徴は、熱安定性、特に、800℃さらには900℃の温度での変形、失透、および相分離に対する抵抗性である。熱膨張係数は、約25から55×10-7/℃に及び、シリコンの熱膨張係数に一致するように調整できる。アルカリやアルカリ土類の陽イオンはこれらのガラス中には全く存在せず、優れた誘電挙動が可能になる。さらに、好ましい組成領域において、SiO2、AlPO4、およびAl(PO33の各相間の共晶境界に沿って低い液相線値が予測される。ここに記載された過剰なアルミニウムを含むガラスは、優れた耐熱湯性を示した。
これらの性質は、シリコンのための比較的耐火性の低密度基板や、アルカリおよび関連するガラス改質剤が含まれないことが要求される他の基板(低誘電基板などの)にとって、潜在的かつ特に重要であると認識された。高温での変形と失透に対して抵抗し、移動性陽イオンを含まず、有用な範囲の熱膨張係数を有する、容易に溶融できるガラスが必要とされている。
これらのガラスの利点としては、従来のガラスより優れた変形抵抗が挙げられる。それらのガラスは、顕著に変形せずに、800℃さらには900℃まで加熱できる。多くの組成物のアニール点は750℃を超える。これらのガラスの膨張は、25から55×10-7/℃に及び、シリコンの膨張に一致するように調整できる。これらのガラスは、アルカリ金属やアルカリ土類金属を全く含まず、比較的安価なバッチ材料から製造できる。これらのガラスの多くは、低い液相線温度を有し、幅広い成形プロセスに適合している。
質量%でここに定義された三成分ガラス組成は、以下のとおりである:2〜52%のSiO2、8〜35%のAl23、33〜75%のP25、ここで、1.3<P/Al<4.0。
酸化ホウ素B23の添加剤は、そうしなければ800℃を超える温度で変形したであろうガラスを固くするのに効果的であることも分かった。さらに、B23は、液相線温度を低下させ、ガラスを失透に対して安定化させることが予測される。三成分組成物に加えられるB23のレベルは一般に10質量%までである。この成分が加えられた場合、より広い四成分ガラスの組成は以下のとおりである:2〜52%のSiO2、8〜35%のAl23、30〜75%のP25、0〜10%のB23、ここで、1.3<P/Al<4.0。
23添加剤は、BPO4ユニットとしてガラス構造においてP25を固定し、それによって、剛性を増加させ、化学的耐久性を改善するのに役立つと考えられている。ZrO2などの他の酸化物は、適切な場合には、6%までの量で加えて差し支えない。これらのガラスには、潜在的な有用な光学的性質を生じるために、遷移元素または希土類の陽イオンをドープしても差し支えない。
上述したように、前記組成範囲のガラスは、4.5ほど低い(温度とKHzに関して通常は平らな)誘電率および1014〜1016.5の250℃での抵抗性の優れた誘電特性を有する。代表的なガラス(908ZCP)に関する誘電率曲線が図5に示されている。
本発明のガラスを、1600〜1650℃(これらのガラスの多くには、これより低い温度を用いても差し支えないが)の温度で白金坩堝内で溶融し、パテへと注型し、750℃でアニールした。典型的なP25損失は約1%である。溶融し、その後熱処理したガラスの説明が表1に記載されている。これまで得られた物理的性質もこの表に列記されている。
図2は、様々なイオンがドープされた典型的なアルミノシリコリン酸塩ガラス(表1における908YVF)に関する吸光度曲線を示す。このガラスは、穏やかに還元する環境を提供し、イオンは主に、Fe2+として、またCr3+(UVエッジにより証拠付けられるように、Cr6+は全く生じない)として生じる。Cr3+の650nmでの吸光も赤方偏移し、従来のソーダ石灰やアルミノケイ酸塩ガラスにおいて得られるよりも、弱い結晶場が示唆される。
図3は、例示の組成908ZCAに関する粘度曲線を示している。この組成は、1,000,000ポアズを超える、液相線での非常に高い粘度を有するのが当業者には分かる。このために、このガラスは、ダウンドロー製造プロセス(例えば、フュージョンまたはスロット・ドロー・プロセス)のための優れた候補となる。本発明のガラスの好ましい製造プロセスは、ガラスシートが、下方に移動しながら形成されるダウンドロー・シート製造プロセス(例えば、フュージョンまたはスロット・ドロー・プロセス)である。フュージョンまたはオーバーフロー・ダウンドロー成形プロセスにおいて、溶融ガラスが、トラフに流入し、ついで、オーバーフローし、パイプの両側から流れ落ち、ルートと呼ばれるところで互いに融合し(パイプが終わり、ガラスの2つのオーバーフロー部が再度結合するときに)、冷却されるまで下方に延伸される。オーバーフロー・ダウンドロー・シート製造プロセスは、例えば、米国特許第3338696号および同第3682609号の各明細書に記載されている。
図6は、別の例示の組成(908ZAU)に関する粘度曲線を示している。この組成に関する液相線での粘度は、10,000,000ポアズよりも大きい。これらの低い液相線ガラスは、1400〜1450℃ほど低い温度で溶融でき、溶融中のリンの揮発性がはっきりと最小になる。比較目的のために、フュージョン・プロセスにより製造された商業製造されたガラス(コーニング社(Corning Incorporated)のコード1737)の粘度曲線も図6に含まれている。
Figure 0004977474
Figure 0004977474
白金坩堝内に収容されたSiO2、Al(PO33およびAl23の適切な混合物の500〜1000gのバッチについて、4時間に亘り1600〜1650℃で追加の一連の溶融実験を行った。Al(PO33−SiO2接合線の組成に関して、7からほぼ30質量%に及ぶSiO2の含有量で透明なガラスを形成できることが観察された。さらに、同様の範囲のSiO2濃度に亘るが、約35%までの高いAl23含有量で透明なガラスを形成でき、それゆえ、優れた化学的耐久性が予測された。これらのガラスに関するアニール点(Ta)、歪み点(Tstr)および熱膨張係数を含む物理的性質のデータが以下の表2に与えられている。
Figure 0004977474
先に列記され、図4に示されたデータは、(1)1/3のAl23/P25比(すなわち、Al(PO33−SiO2の接合線上にある)および(2)7〜18%のSiO2の含有量のガラスについて、最高の歪み点が達成され、ガラス891HHPが好ましい組成であることを示している。18%より多いSiO2レベルでのより低い歪み点に向かう傾向は、いくぶん高いSiO2濃度でSiO2およびAl(PO33を含む二成分共晶の存在を反映したものであろう。同様に、一定のSiO2レベルでAl23の含有量を上昇させることによる歪み点の低下傾向は、Al(PO33とAlPO4の液相線表面間に熱の谷間が存在することによるものであろう。
前述したように、これらと他の所望の特徴を与えるために、いくつの融剤(改質酸化物)をバッチに加えてもよい。これらの融剤は元のガラスの歪み点を一般に低下させるが、それら融剤は、以下の目的のいくつかまたは全てにとって必要であることが多い:CTEを上昇させる、液相線温度を低下させる、圧密に好ましい歪み点を得る、特定の波長での吸収、溶融を容易にする、密度を変える、または耐久性を変える。特定の酸化物がガラスの物理的および化学的特性に対して持つ作用が一般に知られている。融剤は、15%までの量で、または溶解度により限られるように、加えてよい。融剤は、合計で10%未満の量で加えられることが好ましい。したがって、前記ガラス組成は、2〜52のSiO2、8〜35のAl23、30〜75のP25および0〜15のROとして特定される。
改質酸化物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の酸化物、並びにランタニド系列の酸化物から選択してよい。特定の例としては、Y23、ZrO2、HfO2、MgO、CaO、SrO、BaO、As23、SnO2、Li2O、La23、GeO2、Ga23、Sb23、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、BeO、Sc23、TiO2、Nb25、Ta25、ZnO、CdO、PbO、Bi23、Gd23、Lu23および/またはB23が挙げられる。様々な融剤を含有するいくつかの例の代表的なガラスを溶融したのが示されている。したがって、本発明の目的のために、Rは、Mg、Ca、Y、Sr、Zr、Hf、As、Sn、Li、La、Ge、Ga、Sb、Ba、Ti、Ta、Znまたは上述した適切な改質剤の定義に適合する任意の他の元素である。
Figure 0004977474
開示された実験データから容易に認識できるように、開示されたガラス組成物は、ディスプレイ用途の優れた候補を示す。それらの組成物は、現在、商業的に使用されているアルカリ土類ボロアルミノケイ酸塩ガラスのものよりわずかに高い歪み点を有する。それらの組成物は、1600℃で低い粘度を有し、それにより、自己清澄できるという利点をもたらす。P25の部分蒸発(約1%の量)がガラスの精錬に役立つと考えられる。その結果、ヒ素や他の一般的な清澄剤が、製造プロセス中に必要とされないようである。
製陶業者(米国セラミック学会)の相図に与えられた、SiO2−P25、SiO2−Al23、Al23−P25およびAlPO4−SiO2の接合線に沿った二成分データからのSiO2−Al23−P25系における挿入された液相関係(濃い実線)を示す相図。Si24およびAlPO4は構造が等しい(isostructural)ので、陽イオンパーセントが用いられる。本願の出願人が主張するガラス形成領域が多角形で輪郭が描かれている。点は良好なガラスを示す。 Cr、V、Fe、およびMnがドープされたガラスの吸光度曲線(基礎組成=表1からのYVF) 例示の組成に関するある温度範囲に亘る粘度のプロット あるSiO2濃度範囲に亘るガラスの歪み点およびアニール点を示すプロット 代表的なガラス組成に関する誘電率対温度をプロットした誘電率曲線 ダウンドロー・プロセスを用いて製造した本発明の例示の組成および市販のガラスを比較する、ある温度範囲に亘る粘度のプロット

Claims (6)

  1. 化物基準のバッチから、質量パーセントで計算して、30〜75%のP25、2〜52%のSiO2、8〜35%のAl23 、を含みかつ1.3と4.0の間のP/Al原子比を有するアルカリ金属不含有の基礎組成を有し、
    600℃より高い歪み点および25から500℃の温度範囲に亘り25〜55×10 -7 /℃の線熱膨張係数を有するフラット・パネル・ディスプレイ装基板。
  2. 50℃以上の歪み点を有することを特徴とする請求項1記載の基板。
  3. 00℃以上の歪み点を有することを特徴とする請求項1記載の基板。
  4. .5g/cm未満の密度有することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の基板
  5. 酸化物基準の質量パーセントで計算して、15%未満の改質酸化物を少なくとも一種類さらに含有することを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の基板
  6. 前記改質酸化物が、合計で10質量%を超えない量で、CaO、La23、MgO、SrO、Sb25、BaO、Y23、ZrO2、およびB23からなる群より選択されることを特徴とする請求項記載の基板
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