図6(a)は、ウェーハ上のパターンを走査型電子顕微鏡で撮影した画像(以下、SEM画像とする)である。このSEM画像には、図6(c),図6(d)に示すようなCADデータの2つのレイヤーに対応するパターンが含まれている。本発明では、このような複数レイヤーのCADデータに対応するパターンを含んだSEM画像から、図6(b)に示すような複数レイヤーのパターンを含んだパターンを抽出し、図6(c),図6(d)のような複数レイヤーのCADデータを利用して、図6(b)のようなパターンを図6(e),図6(f)に示すようなレイヤー毎のパターンに分離することで、評価対象レイヤーに属するパターンのみを利用したパターンの評価を可能とするものである。
本実施例では、複数レイヤーのパターンを含んだSEM画像から、オペレータ又は電子計算機が指定するレイヤーのパターンのみを抽出する本発明のパターン検査装置について説明する。
図1は、本実施例1の形態を示す構成図である。本パターン検査装置は、検査対象のウェーハをSEMで撮影したSEM画像106と、前記SEM画像106に含まれたパターン像に対応する、複数レイヤーのCADデータ105と、評価に利用する各種パラメータと、を入力可能とする信号入力インターフェース101と、前記複数のレイヤーのCADデータ105から、レイヤー構造をもつCADレイヤーデータ111を生成するCADレイヤーデータ生成手段107と、SEM画像106からパターンデータ112を抽出するパターン抽出手段108と、CADレイヤーデータ111と、パターンデータ112から、レイヤー構造をもつパターンレイヤーデータ113を生成するパターンレイヤー生成手段109と、パターンレイヤーデータ113から最終的な出力データ114を生成する出力データ生成部110と、で構成されたデータ演算部102と、データ演算部102からの出力データ114を出力する信号出力インターフェース103で構成されており、図5(a)に示すような半導体検査システム510の電子計算機500や、図5(b)に示すような半導体検査システム510とローカルエリアネットワーク506などのネットワーク回線や、ハードディスクやコンパクトディスク等の記憶装置を経由して、半導体検査システム510からのウェーハの撮影画像等のデータなどを授受可能な電子計算機505を利用することにより実現できる。
以下、一実施例として図5(a)の構成図を利用して半導体検査システム510の構成要素を説明する。
半導体検査システム510は、半導体デバイスの画像を撮影するSEM501と、SEM501を制御する電子計算機500で構成されている。電子計算機500はパーソナルコンピュータや、ワークステーションに代表される情報処理装置であり、SEM501の制御や、本発明のパターン検査を実施するデータ演算手段503と、データ演算手段503を制御するための情報を入力するデータ入力手段504と、SEM501の撮影画像や、パターン検査等の情報を表示するデータ表示手段502で構成されている。
データ演算手段503は、CADデータ105やSEM501で撮影した半導体デバイスの画像(SEM画像)106やSEM501の制御プログラムや、本発明のパターン検査装置のデータ演算部102の各処理手段を定義したソフトウェアプログラム等を保存するメモリ、前記プログラムを実行するCPU、データ入力手段504からの評価パラメータ104やCADデータ105やSEM画像106をデータ演算手段503に入力するための信号入力インターフェース101,パターン検査結果やCADデータ105やSEM画像106をCRTや液晶ディスプレイ等のデータ表示手段502に出力するための信号出力インターフェース103で構成されている。データ入力手段504はキーボードやマウスといった情報入力機器であり、データ表示手段502はCRTや液晶ディスプレイ等の情報表示機器である。
なお、信号入力インターフェース101および信号出力インターフェース103はUSB,IEEE1394,セントロニクスやメモリカード,PCI,Ethernet(登録商標)などのインターフェースが使用可能であり、メモリはSDRAM,SRAM,DRAM,ROMやメモリカード,ハードディスク等などのデータ記憶機器が使用可能である。
以下、図1を利用して本発明のパターン検査装置の各構成要素について詳細を説明する。
信号入力インターフェース101は、本発明のパターン検査を行うための各種データをデータ演算部102に入力するものである。本発明のパターン検査装置は、複数レイヤーのパターンを含んだSEM画像106から、検査対象レイヤーのパターンの出力データ114を抽出することを目的としており、検査の対象とする半導体デバイスのSEM画像106をデータ演算部102に入力する。更に、SEM画像106に含まれる複数レイヤーのパターンに対応する複数レイヤーのCADデータ105を入力し、評価パラメータ104として、検査対象レイヤーの情報と、各レイヤーの上下関係を示す情報を入力する。なお、各レイヤーの上下関係を意味する情報が、CADデータ105に記述されている場合や、CADデータの識別名称から得られる場合、このパラメータの入力を必要としない。
データ演算部102は本発明のパターン検査を行うものである。以下、データ演算部102の構成要素を詳細に説明する。
CADレイヤー生成手段107は、図7(a),(b)に示すようなレイヤー毎に独立したCADデータ105から、レイヤー間の上下関係を示す評価パラメータ104を利用して図7(c)に示すようなレイヤー構造をもつCADレイヤーデータ111を生成するものである(説明を分かりやすくするため、各レイヤーの色を変えて重ね合わせた図であり、この例は図7(b)の上に図7(a)のCADデータを重ねたものである。)。
半導体業界で一般的に利用されているCADデータ105のデータフォーマットは、パターンをベクトル情報として表現したものである。図7(a)に示すようなパターンは、図7(d)に示すようなパターンの閉図形を構成する各頂点の座標値として記述されている。同様に、図7(b)は図7(e)のように記述されている。
このため、図7(d)と図7(e)のCADデータ105からレイヤー構造をもつCADレイヤーデータ111は、図7(f)に示すような形式で表現できる。データの先頭には、CADレイヤーデータ111に含まれるCADデータ105のレイヤー番号と、レイヤーの上下関係、各レイヤーのベクトルデータがデータ内のどの位置から開始されるかを示すオフセット値を記述し、その後に各レイヤーのベクトルデータを記述したものである。
しかしながら、単純に各レイヤーのCADデータ105をCADレイヤーデータ111に埋め込むだけでは、図7(c)に示すように下位レイヤーと上位レイヤーが重なり合う領域701が発生する。図7(g)は、この2つのCADデータ105によって形成した半導体デバイスを撮影したSEM画像106を示した図であるが、上位レイヤーと下位レイヤーが重なり合う領域701について、図7(c)に示したCADレイヤーデータ111とパターンの形状が異なってしまい、後述するパターンレイヤーデータ113の作成が正確に行えない場合がある。
CADデータ105は、前述したように閉図形の集合を記述したベクトルデータである。つまり、四角形のパターンをベクトルデータで表現する場合、「No.1,4、(x1,y1)(x2,y2)(x3,y3)(x4,y4)」といった記述が用いられる。つまり、No.1の図形は4点の頂点をもち、それぞれの頂点座標は(x1,y1)〜(x4,y4)であるというものである。この閉図形の領域とそれ以外の領域は、それぞれ半導体デバイスの形成時に削り取る部分(抜き部)703と残す部分(残し部)702に対応している。
このため、例えばCADデータ105の閉図形が残し部を示す場合、図7(h)のように上位のレイヤーの閉図形と下位のレイヤーが重なる領域704で、下位のレイヤーの図形が隠れることになる。このような上位のレイヤーに隠れた下位のレイヤーの図形を構成するベクトルデータを削除したベクトルデータをCADレイヤーデータ111に新たに埋め込むことにより、図7(j)に示すようなウェーハの撮影画像の見え方に一致するCADレイヤーデータ111を生成することもできる。新たに生成したCADレイヤーデータ111を図7(h)に示す。
CADデータ105の閉図形が抜き部に対応するのか、残し部に対応するのかの情報は、評価パラメータ104として信号入力インターフェース101より受け取ることによって、このようなCADレイヤーデータ116の生成が可能となる。
以上説明したCADレイヤーデータ111は本発明のパターン検査を実現するためのデータ形式の一例であり、後述のパターンレイヤー生成手段109において、SEM画像106に含まれた複数レイヤーのパターンに対応する複数レイヤーのCADデータ105と、各レイヤーの番号が識別できるようなデータ形式であればよく、このデータ形式に限定したものではない。
パターン抽出手段108は、図8に示すような検査対象のSEM画像106から、パターンを抽出し、CADデータ105のデータフォーマットと同様のベクトルデータで構成されたパターンデータ112を生成するものである。これらパターン抽出手段108の構成要素はいずれも一般的な画像処理手法であるため、これを限定するものではないが、例えば、図8に示すような手段によりパターンの抽出を行うことが可能である。図8は、SEM像106からビットマップデータで構成されたパターン像を抽出し、そのパターン像をベクトルデータで構成されたパターンデータ112に変換する手順を示したものである。
平滑化フィルタ手段810は、SEM画像106に含まれるノイズ成分を除去するものである。SEM画像106は一般的に、図8に示すように、パターンの存在する画素位置805の輝度が高く(白く)、その他の画素位置806の輝度が低い(黒い)といった特徴を持つ。また、SEMの特性上、様々なノイズが画像に重畳するため、パターンの抽出にはノイズの除去が必要である。平滑化フィルタ手段810は、例えば、3画素×3画素の2次元の画像領域で輝度の平均値を求め、その平均値を、画像領域の中心位置の輝度値として出力するようなフィルタリング処理であり、高周波のノイズを除去する効果がある。平滑化フィルタ手段810により、平滑化画像801を生成する。なお、平滑化処理手法としては従来からの一般的な手法を用いることが可能である。
エッジ抽出手段811は、平滑化画像801に対し、背景領域とパターン領域の分離を行うフィルタリング処理である。エッジ抽出手段811は様々提案されており、これを限定するものではないが、一例として、図9に示すようなフィルタオペレータを用いたパターンの抽出方法を説明する。図9(a)は画像に対して垂直方向に伸びるパターンを検出するためのフィルタオペレータであり、図9(b)は画像に対して水平方向に伸びるパターンを検出するためのフィルタオペレータである。画像を構成する3画素×3画素の領域に、このフィルタオペレータを当てはめ、フィルタオペレータの係数と、係数位置にある画素の輝度値の積和演算により、中心位置の画素の輝度値を求めるフィルタリング処理である。図9(a)のオペレータを利用して、平滑化画像801のフィルタリング処理を行った場合、画面に対して垂直方向にのびるパターンを強調した画像を生成することができ、図9(b)のオペレータを利用してフィルタリング処理を行った場合、画面に対して水平方向に伸びるパターンの領域を強調した画像を生成することができる。このため、平滑化画像801に対し、2つのオペレータによるフィルタリング処理を行い、2つのフィルタリング結果を画素毎にそれぞれ比較してフィルタリング結果の大きい方の値(パターンが強調された値)を選択した画像を生成することで、垂直および水平方向に伸びるパターンを強調したエッジ画像802を得ることができる。なお、エッジ抽出手法としては従来からの一般的な手法を用いることが可能である。
次に、エッジ画像802を2値化画像803に変換する。エッジ画像802は積和演算処理により生成された多値画像であり、まだ小さなノイズ成分を含んでいるため、閾値を用いた二値化処理を行い、多値画像を二値画像に変換し、背景領域とパターンの領域を完全に分離する。二値化処理手段812についても様々提案されており、限定するものではないが、一例として固定閾値を用いた二値化処理手段812の方法を説明する。図10は、横軸に画像の輝度範囲(例えば8ビット/画素であれば0〜255)、縦軸に画像内に存在する各輝度の総画素数(例えば100×100画素の画像であれば最大値は10000)を示した画像のヒストグラムと呼ばれるグラフであり、画像の特徴を簡易的に把握する目的で一般的に利用されているものである。エッジ画像802は、パターン領域の画素の輝度値は高く、その他領域の画素の輝度値は低いので、閾値1001を設け、閾値1001よりも高い輝度値をもつ画素の輝度値をパターン領域「1」とし、低い輝度値をもつ画素の輝度値を背景領域「0」とすることで二値化を行うことができる。このような閾値1001の決定は、二値化に用いる画像をいくつか評価して経験的に求めるのが一般的である。また、固定閾値を利用した二値化以外にも、ヒストグラムの分散を用いてパターン領域とその他の領域を良好に分離する閾値を自動的に求める二値化処理手法などもあり、これを限定するものではない。なお、これらの二値化処理手法としては従来からの一般的な手法を用いることが可能である。
2値化画像803のパターンは、閾値1001の設定によって、数画素の幅を持っている場合がある。このままではパターン情報のベクトル化ができないので、1画素幅のパターンに変換する。このような変換手法は様々提案されており、限定するものではないが、一例として細線化を利用した変換方法を説明する。
細線化は、図11に示すように、パターン1102と背景1103の境界を局所的に示すテンプレート画像1101を複数利用して、2値パターン画像のエッジ画像802から、そのテンプレート画像1101と一致する領域が検出された場合に、その中心位置1104の画素を背景部の輝度値に置き換えていくという操作を、パターンの幅が一本の中心線になるまで繰り返すという処理である。これにより、1画素幅の線で形成されたパターン画像804を生成することができる。なお、パターンの中心線を求める手法としては従来からの一般的な手法を用いることが可能である。
次に、1画素幅の線で形成されたパターン画像804をベクトル化手段814によりベクトルデータに変換し、ベクトル間の座標情報で構成されたパターンデータ112を生成する。ビットマップデータをベクトルデータに変換する手法は様々提案されており、これを限定するものではないが、一例として、直線近似を用いたベクトルデータへの変換手法を説明する。
図12に示すようなパターンが中心線の検出手段813によって得られた場合、パターンの始点1201から連結したパターンを参照する。図12(a)のように連結している画素が2画素の場合は、ベクトルデータの始点1201,終点1202が2つの画素の座標情報となる。また、図12(b)に示すように連結した画素が3画素以上の場合、始点1201と終点1202を結ぶ直線1203の式を求め、始点1201,終点1202間に存在する画素1204との距離1205を求める。始点1201,終点1202を結ぶ直線1203と、その間に存在する画素1204との距離1205が許容範囲内であれば、その画素1204は直線1203の上に存在するものと判定し、始点1201と終点1202の座標値を出力する。始点1201,終点1202間の直線1203と始点1201,終点1202間にある画素1204の距離1205が許容範囲を外れた場合は、直線1203の上にないパターンの画素と判定し、その画素1204を始点として新たに直線近似を行うという処理を行うことで、1画素幅の線で形成されたパターン画像804のビットマップデータをベクトルデータに変換することができる。パターンのベクトル化によって得られたベクトルデータの始点,終点の座標を全て記述したパターンデータ112を作成する。なお、ビットマップデータをベクトルデータに変換する手法については従来からの一般的な手法を用いることが可能である。
パターンレイヤー生成手段109は、CADレイヤーデータ111と、パターンデータ112を利用し、パターンデータ112内の各パターンを、レイヤー毎のパターンに分離し、レイヤー毎のパターンを記述したパターンレイヤーデータ113を生成するものである。
CADレイヤーデータ111およびパターンデータ112はCADデータおよびパターンの形状を構成する直線の始点終点の座標値を記述したデータ群である。
CADレイヤーデータ111とパターンデータ112を構成する直線(以下、CADレイヤーデータ111を構成する直線をCAD直線、パターンデータ112を構成する直線をパターン直線とする)を描画すると図13(a)のようになる。パターンレイヤー生成手段109では、CAD直線とパターン直線間の距離,方向性,長さといった類似性を用いて、図13(b)〜(g)に示すように、パターンデータ112を構成する全てのパターン直線が、CADレイヤーデータ111のどのCAD直線に対応するのかを検出し、そのCAD直線の属するレイヤー情報に従って、パターン直線を分類し、レイヤー構造をもつパターンレイヤーデータ113を生成するものである。
具体的には図16に示すような手順で、パターンデータ112をパターンレイヤーデータ113に変換する。このフローチャートに基づくソフトウェアプログラムを図5に示した電子計算機500のデータ演算手段503のメモリに格納しておき、本発明のパターン検査を行う際に、CPUが読み出して実行することにより、パターンレイヤーデータの生成を行うことが可能である。まずレイヤー毎に各CAD直線の方向情報を算出し、各CAD直線を方向別にグループ分けする1601。例えば、パターンデータ112の座標領域をパターンデータの中心位置を基準とした図13(a)のように設定する場合、CAD直線の方向範囲は−90°〜90°であるので、例えば、−90<Aグループ<−45°、−45°<=Bグループ<0°、0<=Cグループ<45°、45<=Dグループ<=90°といったように各CAD直線を方向別にA,B,C,Dの4グループに分ける。例えば、直線座標が始点(x0,y,0)、終点(x1,y1)だった場合、式1を用いることにより直線の方向情報を求めることができる。
If(X1==x0):直線の方向=90°
Else:直線の方向=(tan-1((y1−y0)/(x1−x0))×360)/(2π) …式1
π:円周率
この方向情報を利用し、図14に示すようなCADレイヤーデータ1401からレイヤー毎,方向毎に直線座標をグループ分けしたCADテーブルデータ1402を作成する。この例では4方向のグループ分けを行っているが、方向数は2方向でも16方向でもよく、この方向数を限定するものではない。
次に、パターンデータ112を構成するパターン直線の方向を求め、この方向に一致するCADテーブルデータ1402内のグループから、パターン直線との距離が最も短いCAD直線を検出する1602。パターン直線の方向も式1を利用することで求めることができる。あるパターン直線の方向がCAD直線のCグループ範囲内の場合、各レイヤーのCグループ内のCAD直線とパターン直線間の距離を全て算出する1604。直線間の距離を求める最も簡易な手法を以下説明する。
図15はグループDのCAD直線と、グループDに相当する方向を持ったパターン直線の関係を図示したものである。縦方向をy座標、横方向をx座標とし、各グループの方向はx軸を基準とした場合を示している。グループDは、x軸に対して45°<=D<=90°の方向をもつ直線なので、直線間の距離の算出にはx座標間の距離を用いる。グループ内の直線間の関係は、図15(a)〜(d)のような4種類の簡略化された状態で定義できる。
図15(a)は、CAD直線を構成する2点のy座標cy0〜cy1の間に、パターン直線を構成する2点のy座標py0,py1がいずれも含まれている場合である。この場合は、CAD直線を構成する2点のx座標cx0,cx1と、パターン直線を構成する2点のx座標px0,px1について、それぞれx座標間の距離を求め、最も距離の短いx座標間の距離を直線間の距離として出力する。
図15(b)は、CAD直線を構成する2点のy座標cy0〜cy1の間に、パターン直線を構成する2点の座標py0,py1のいずれかが含まれる場合である。この場合は、cy0〜cy1に含まれるCAD直線のx座標を用い、CAD直線を構成する2点のx座標cx0,cx1との距離を求め、最も距離の短いx座標間の距離を直線間の距離として出力する。
図15(c)は、パターン直線を構成する2点のy座標py0〜py1の間に、CAD直線を構成する2点のy座標cy0,cy1が含まれる場合である。この場合は、パターン直線を構成する2点のx座標px0,px1と、CAD直線を構成する2点のx座標cx0,cx1について、x座標間の距離を求め、最も距離の短いx座標間の距離を直線間の距離として出力する。
図15(d)は、CAD直線を構成する2点のy座標cy0〜cy1の間に、パターン直線を構成する2点の座標py0,py1がいずれも含まれない場合である。この場合は、パターン直線に対応しないCAD線分として認識する。例えば、この直線間の距離を−1などの負の値として出力し、最終的な対応直線の検出に用いないようにする。しかしながら、CADデータに対してパターンが膨張している場合など、パターンの変形が発生している場合、本来対応すべき直線がこのような状態になることもありうる。これを対策するために、例えば、CAD直線を構成する2点のy座標cy0,cy1と、パターン直線を構成する2点のy座標py0,py1を比較し、y座標間の距離が最も短いCAD直線とパターン直線の座標を検出する。検出したパターン直線の座標値を中心とする半径Rの領域について、CAD直線を構成する座標が存在する場合、半径Rの中心位置のx座標と、半径R内のCAD直線のx座標間の距離を直線間の距離として出力するような構成とすることにより、CADデータに比べてパターンの形状が大きく変形している場合においても検出可能となる。ただし、半径Rをあまり大きくすると本来対応しない直線間で距離を見積もってしまう可能性があるため、半径Rは小さな値とすることが望ましい。
以上は、Dグループ(45<=D<=90°)の直線間の距離を求めるための説明であったが、Cグループ(0<=Cグループ<45°)についても同様の手順でパターン直線とCAD直線間の距離を算出することができる。ただし、CグループのCAD直線の方向はx軸に近いため、Dグループとは逆に、x座標間での直線関係の検出、y座標間での距離の見積もりを行う。
Aグループ(−90<Aグループ<−45°)については直線の方向がy軸に近いため、Dグループと同様の手順で直線間の距離を検出できるし、Bグループ(−45<=Bグループ<0°)については、直線の傾きがx軸に近いため、Cグループと同様の手順で直線間の距離を算出することができる。
以上のようにして、一つのパターン直線に対し、同様の方向性をもつ各レイヤーのすべてのCAD直線において直線間の距離を算出する。次に、直線距離の算出を行った全てのCAD直線を対象に、パターン直線と最も距離の短いCAD直線を検出する1605。このCAD直線が、パターン直線に対応するCAD直線であり、このCAD直線の属するレイヤーが、このパターン直線が属するレイヤーである。このようなパターン直線のレイヤー検出をパターンデータ112内の全てのパターン直線で行い、レイヤー構造をもつパターンデータ112であるパターンレイヤーデータ113を生成する1606。
図24にパターンレイヤー生成手段109によって生成したパターンデータ2401のパターンレイヤーデータ2402の例を示す。パターンレイヤーデータ113のデータフォーマットは図7(h)に示したようなCADレイヤーデータと同様のものでよいが、後述するデータ生成部において、レイヤー毎のパターン直線のデータと、各レイヤーが対応するCADデータのレイヤー番号が識別できるような形式であればよく、このデータフォーマットに限定したものではない。また、パターンレイヤー生成手段109にて検出したパターン直線とCAD直線の対応関係を記述したパターンレイヤーデータ113を生成することも可能である。この場合は、例えばあるパターン直線が、図7(h)のようなCADレイヤーデータのレイヤーNo.2の閉図形No.1の1番目の直線(1,3)−(3,3)に対応すると検出した場合、パターン直線の座標値と、そのパターン直線に対応するCAD直線の情報としてレイヤーNo.2/No.1/(1,3)−(3,3)と記述する。このような対応関係を示すパターンレイヤーデータ113を利用することで、CAD直線とパターン直線の対応関係を利用したパターン評価も容易となる。
出力データ生成部110は、信号入力インターフェース101から入力される評価パラメータ104に基づき、パターンレイヤーデータ113の加工を行い、信号出力インターフェース103に出力する出力データ114を生成するものである。生成したデータは、図5に示した電子計算機500のデータ演算手段503のメモリに保存される。また、信号出力インターフェース103経由で、またモニタや液晶ディスプレイ等のデータ表示手段502に出力すること、更には通信線等により出力データ114を外部機器へ電送することも可能である。
ここで、評価パラメータ104としては、出力データ114のデータ形式の指定や、検査対象レイヤーの指定などがある。データ形式の種類には、図7(h)で示したようなパターン直線の座標値を記述したテキストファイルやベクトルデータをビットマップ化した画像ファイルなどがある。例えば、信号入力インターフェース101より、検査対象レイヤー:=No.1、データ形式:テキストファイルといった指定を受けた場合、出力データ生成部110は、パターンレイヤーデータ113のNo.1レイヤーのデータを切り出して出力する。また、検査対象レイヤー:=No.1,No.2、データ形式:ビットマップファイルといった指定を受けた場合、パターンレイヤーデータ113より、レイヤー毎に、パターン直線を描画したビットマップファイルを生成し、出力する。
図17は、図5で示した電子計算機500のデータ表示手段502に、本発明のパターン検査に必要な各種パラメータの項目と、そのパラメータによるパターン検査結果を表示した例である。データ演算部102に入力するデータは、検査対象のSEM画像106を示す情報と、CADデータ105を示す情報と、SEM画像106に含まれた複数レイヤーのパターンに対応する、複数のCADデータのレイヤー情報と、評価に利用するCADデータ105の領域を示す座標情報と、出力ファイル形式等であり、オペレータがデータ表示手段502を参照しながらキーボードやマウスといった情報入力機器で構成されるデータ入力手段504を利用して信号入力インターフェース101経由で各種のデータを入力する。なお、CADデータ105がレイヤー毎に分割されている場合は、レイヤー毎にCADデータ105を入力する形式となる。
図17(a)の入力例は、cad.datというデータファイル名1704のCADデータに含まれるNo.2とNo.3のレイヤーデータと、sem.bmpというデータファイル名1703のSEM画像を利用し、No.2とNo.3に対応するパターンデータをビットマップ形式として出力させるためのデータ入力例である。これらのデータを入力することでNo.2とNo.3のレイヤーに対応するパターンの抽出が可能となり、図17(b)に示すようなNo.2のレイヤーとNo.3のレイヤーのパターンを示すビットマップデータ1716を得ることができる。なお、No.2のレイヤーに属するパターン1701と、No.3のレイヤーに属するパターン1702を視覚的に区別できるように、ベクトルデータからビットマップデータを生成する際に、カラー情報を利用することもできる。例えばNo.2のレイヤーのパターンについては、R=255,G=0,B=0の信号値を持つ画素としてパターン直線を描画し、No.3のレイヤーのビットマップデータを描画する際に、R=0,G=255,B=0の信号値を持つ画素としてパターン直線を描画する。パターンの存在しない画素についてはR=0,G=0,B=0の信号値を持つ画素として描画することにより、レイヤー毎に色分けしたビットマップデータを生成することができる。
図17(c),(d)は、No.2とNo.3のレイヤーのCADデータを利用してNo.2のレイヤーを検査対象レイヤーとする場合の入力例とその結果を示したものであり、No.2のレイヤーに属するパターン1702のみを視覚的に表示したものである。同様に、図17(e),(f)は、No.2とNo.3のレイヤーのCADデータを利用してNo.3のレイヤーを検査対象レイヤーとした場合の入力例とその結果を示したものであり、No.3のレイヤーに属するパターン1701のみを視覚的に表示したものである。
このように、本発明の実施例によれば、半導体ウェーハを撮影したSEM画像に複数レイヤーのパターンが含まれている場合に、対象とするレイヤーに属するパターンデータを個々に表示し、また、複数のレイヤーのパターンデータを合わせて表示することを実現している。
図18は本発明のパターン検査装置の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに基づくソフトウェアを図5に示した電子計算機500のデータ演算手段503のメモリに格納しておき、本発明のパターン検査を行う際に、CPUが読み出して実行することにより、本発明のパターン検査を行うことが可能である。
本ソフトウェアプログラムの起動後、図17に示したようなパターン検査を行うための各種パラメータを入力するための画面を信号出力インターフェースに表示する1801。入力されたパラメータを読み出して、メモリに保存する1802。指定された複数レイヤーのCADデータをメモリから読み出して、CADレイヤーデータ111を生成する1803。同じく指定されたSEM画像をデータ保存部から読み出して、パターンを抽出し、パターンデータ112を生成する1804。パターンデータ112を構成する全てのパターン直線について、対応するCADレイヤーデータ111内のCAD直線を検出し、そのCAD直線の属するレイヤー情報をパターン直線に付加したパターンレイヤーデータ113を生成する1805。信号入力インターフェース101より指定されたパターンデータ112の出力形式に基づき、パターンデータ112の加工を行って1806、メモリもしくは信号出力インターフェース103に出力する。
以上説明したように、本発明のパターン検査装置は、複数レイヤーのパターンを含むSEM画像から、前記パターンに対応する複数レイヤーのCADデータを利用することにより、検査対象レイヤーのパターンのみを抽出可能とするものである。これにより、検査対象レイヤー以外のパターンの影響を受けることなく、検査対象レイヤーのパターン検査を行うことが可能となる。
以下、本発明の他の実施例を説明する。
図3は、実施例3の形態を示す構成図である。
本実施例では、実施例1,2で示したパターン検査装置に検査対象レイヤーのパターンとCADデータを利用してパターン上の検査位置を特定するための位置検出を行うレイヤー位置検出手段301と、位置検出結果より、パターン上の検査位置を特定し、パターンの計測検査を行うパターン計測手段303を追加することにより、検査対象のレイヤーのみのパターンを利用した計測位置の検出と、パターンの計測を可能とするパターン検査装置について説明する。
レイヤー位置検出手段301は、図23(a)に示すようなパターンデータを示すSEM画像2300の中から、検査対象とするパターンの位置を検出するものである。具体的には、CADデータ2301内における測長を行う検査ポイント2302を予め決定しておき、実施例2で説明したようなパターンマッチング手法を利用してCADデータ2301におけるパターンデータを示すSEM画像2300の照合位置2308を検出する。この照合位置2308はCAD座標上におけるSEM画像の中心位置を示すものである。CADデータ2301の検査ポイント2302に対応するSEM画像のパターンの計測位置2303となる。なお、CADデータにおける検査ポイントの位置情報は、評価パラメータ104としてデータ演算部300に入力する。
しかしながら、従来の技術でも説明したように、半導体デバイスに形成されるパターンの形状は、CADデータの形状に対して、膨張や収縮等の変形や、上位レイヤーと下位レイヤー間のずれなどが発生している場合が多く、例えば、上位レイヤーのパターンを検査するために位置検出を行っても、下位レイヤーのパターンの変形やレイヤー間の微小なずれが原因で、上位レイヤー中の計測位置が正確に検出できない場合がある。図23(c)は、下位レイヤーのパターンの影響を受けて位置検出が正確にできなかったため、パターンの計測位置2303の検出が失敗している例を示している。
このため、実施例1,2で説明したCADレイヤーデータ111とパターンレイヤーデータ113を利用することで、検査対象レイヤーのパターンと、検査対象レイヤーのCADデータ間で位置検出を行うことが可能となり、検査対象レイヤー以外のCADデータや、パターンの影響を受けずに、良好な位置検出が可能となる。
具体的には、パターンレイヤーデータ113の生成を行った後、図23(d)に示すような検査対象レイヤーのCADデータをCADレイヤーデータ111より抽出し、同じく図23(e)に示すような検査対象レイヤーのパターンをパターンレイヤーデータ113より抽出する。抽出したCADデータとパターンを利用して実施例2で述べたようなパターンマッチング処理を行い、図23(h)に示すようなCADデータにおけるパターンの照合位置2305を求める。この照合位置2305はCAD座標2301上におけるSEM画像の中心位置を示すものである。なお、検査対象レイヤーは、CADデータ2301における検査ポイントのパターンが存在するレイヤーである。
パターン計測手段303は、検査対象レイヤーの検査ポイント2302から、パターン計測検査位置を検出し、パターン間の幅等の計測を行うものである。具体的には、図23(h)に示すような検査対象レイヤーのCADデータとパターンデータの照合位置2305からCADデータ上の検査ポイントに相当するパターンの測長を行うパターンの計測位置2304を検出し、パターンの輝度プロファイル2309等を利用して、測長を行う計測検査位置2304におけるプロファイルの頂点間の距離を求めることでパターン間の幅2310の計測,測長を行うものである。
図21は実施例3の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに基づくソフトウェアプログラムを図5に示した電子計算機500のデータ演算手段503のメモリに格納しておき、本発明のパターン検査を行う際に、CPUが読み出して実行することにより、本発明のパターン検査を行うことが可能である。
本ソフトウェアプログラムの起動後、図17に示したようなパターン検査を行うための各種パラメータを入力するための画面を信号出力インターフェースに表示する2101。入力されたパラメータを読み出して、メモリに保存する2102。指定された複数レイヤーのCADデータをメモリから読み出して、CADレイヤーデータ111を生成する2103。同じく指定されたSEM画像をメモリから読み出して、パターンを抽出し、パターンデータ112を生成する2104。CADレイヤーデータ111とパターンデータ112のパターンマッチングを行い、CADレイヤーデータ111に対するパターンデータ112の位置、もしくはパターンデータ112に対するCADレイヤーデータ111の位置を検出する2105。パターンデータ112を構成する全てのパターン直線について、対応するCADレイヤーデータ111内のCAD直線を検出し、そのCAD直線の属するレイヤー情報をパターン直線に付加したパターンレイヤーデータ113を生成する2106。信号入力インターフェースより入力された検査対象レイヤーの情報に基づき、そのレイヤーのパターンデータ112とCADデータのパターンマッチングを行い、CADデータに対するパターンデータ112の位置、もしくはパターンデータ112に対するCADレイヤーデータ111の位置を検出し2107、設定したCADデータの検査ポイントに対応するパターンの計測位置の検出をおこなってパターンを計測し2108、その計測結果に基づく出力データを生成して2109、出力データを信号出力インターフェースに出力する2109。
また、以上の手順は検査対象レイヤーを一つとした例だが、検査対象レイヤーを複数設定することも可能である。この場合、評価パラメータ104として検査対象レイヤーを複数設定し、検査対象レイヤーの位置検出2107とパターンの計測2108を検査対象レイヤー分繰り返すことにより用意に実現できる。
以上より、本発明のパターン検査装置は、検査対象レイヤー以外のパターンによる影響を受けることなく、検査対象レイヤーのみのCADデータとパターンを利用した正確な計測検査位置の検出と、パターン計測を行うものであり、また、レイヤー毎に独立したパターン計測を行うものである。