JP4968124B2 - ポリフェニレンサルファイド短繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、溶融したポリフェニレンサルファイドを紡糸口金から紡出し未延伸糸を採取し、次いで未延伸糸を3倍以上4倍以下で熱延伸し、温度180℃以上で4秒間以上の定長熱処理を行った後、温度180℃以上のスチームを満たしたクリンパー内で捲縮付与し所定の長さに切断するポリフェニレンサルファイド短繊維の製造方法であって、熱延伸後から捲縮付与前までの間の弛緩率が1%以上6%以下となるように、定長熱処理の前後で弛緩せしめる、ポリフェニレンサルファイド短繊維の製造方法である。
また、本発明のポリフェニレンサルファイド短繊維は、上記の製造方法により得られる短繊維であって、バグフィルター濾布用であるポリフェニレンサルファイド短繊維である。この短繊維は、繊維の引張強度が、5cN/dtex以上、捲縮弾性率が75%以上である、ポリフェニレンサルファイド短繊維であることが好ましい。また、200℃で2000時間の熱処理した時の引張強度低下が40%以内であることが好ましい。
PPSは、通常、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、またはこれらの混合物などである極性溶媒を重合溶媒として用い、その中で、モノマーであるp−ジクロロベンゼンと硫化ナトリウムとを重合反応させて製造されるが、高沸点の揮発成分は、PPSを重合により得る際にモノマーと重合溶媒が反応して発生するものであり、特に酸化されやすいアミン系の化合物、例えばN−メチルクロロアニリンなどを主体とするものである。
本発明により得られるPPS短繊維は、通常、繊度が0.01〜20dtex、引張強度が2cN/dtex以上、好ましくは3〜10dtex、引張伸度が10〜100%であり、バグフィルター用の濾布として好適に用いられる。バグフィルター用の濾布としては、通常、不織布の形態が採用される。不織布は、湿式、ニードルパンチ及びウォーター・ジェットパンチなどの不織布製造法によって得ることができる。不織布の製法に応じて、用いるPPS短繊維の繊度、繊維長を決定する。例えば、湿式法では、0.01〜1dtexのような細繊度で、0.5〜15mm程度の繊維長の短繊維が求められれ、ニードルパンチ法では、繊度2〜15dtex、繊維長38〜76mmの短繊維が求められることが多い。なお、本発明のPPS短繊維は、不織布以外にも、一旦紡績糸となし、その紡績糸を用いて織物、編物などの布帛となすこともできる。
(1)引張強度
繊維の引張強度は、JIS L−1015(1999年改訂)−7.7の方法に準じて測定する。
(2)引張強度低下率
測定すべき繊維について、熱処理前の繊維の引張強度aと、熱風乾燥機で200℃、2000時間熱処理した繊維の引張強度bを前記した方法で測定し、次式により算出する。
a:熱処理前の引張強度
b:200℃で2000時間後の引張強度
(3)高沸点揮発成分の含有量
PPS繊維3gを、腹部が100mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mmのガラスアンプルに計り入れてから真空封入する。このガラスアンプルの腹部のみを管状炉に挿入して規定温度で2時間加熱する。加熱によりPPS繊維から揮発成分が気化し、管状炉によって加熱されていないアンプルの首部に冷却されて付着する。アンプルを取り出した後、アンプルの首部をヤスリで切り出して秤量する。次いでアンプルの首部に付着した揮発成分を5gのクロロホルムで溶解して除去した後、60℃のガラス乾燥機で1時間乾燥してから再度秤量する。そして、揮発成分を除去する前の秤量値(重量)から揮発成分を除去した後の秤量値(重量)を差し引き重量差を求める。高沸点揮発成分の含有量は、かかる重量差を、規定温度200℃と規定温度320℃とで測定し、次式を用いて計算して求める。
ここで、Aは、規定温度を200℃として測定した時の重量差であり、Bは、規定温度を320℃として測定した時の重量差である。なお、本実施例では、管状炉として、(株)アサヒ理化製作所製セラミックス電気炉ARF−30Kを用いた。
(4)捲縮弾性率
JIS L−1015(1999年改訂)−7.12.3の方法に準じて測定した。
(5)フィルター材のパルスジェット耐久性
フィルター材に集塵性能試験装置(JIS Z8908−1)を用いて次の条件で繰り返しのパルスジェット負荷を与える。
パルスジェット間隔:5秒
パルスジェット回数:50,000回
パルスジェット負荷を与える前のフィルター材と、パルスジェット負荷を与えた後のフィルター材それぞれについて、破裂強力をJIS L 1096(1990改訂)−6.16.1 A法に準じ測定し、次の計算式にてパルスジェット耐久性を求める。
ここで、Xは、パルスジェット負荷後の破裂強力(試験片5枚の平均値)であり、Yは、パルスジェット負荷前の破裂強力(試験片5枚の平均値)である。耐久性が90%以上であるものを合格とする。
(6)フィルター強度保持率
フィルター材をバグフィルターに縫製後200日間石炭塵の除去フィルターとして実用テストを行なう。運転時の温度は140〜180℃で行う。実用テストの前後においてフィルター強度を測定し、次式からフィルター強度保持率を求める。
ここで、aは、実用テスト前のフィルター強度であり、bは、実用テスト後のフィルター強度である。なお、フィルター強度は、フィルターの破断強力をJIS L 1096(1990改訂)−6.1A報法に準じて測定したものである。
(7)自然延伸倍率
未延伸糸を引張試験機の測定にかけ、その荷重−伸び曲線を測定する。その荷重−伸び曲線の定応力領域を超えた点を自然延伸倍率とする。
(8)カード通過性
5gの短繊維をカード機を通過させてウエッブとする時のウエッブの重量(a)を測定し次式に基づき収率を測定する。その収率が高いほどカード通過性が良好であると判定した。
(参考実施例1)
東レ(株)製PPS粉粒体E2280(重量平均分子量:49、500)を、2軸方式のベント付きエクストルーダー((株)日本製鋼所製TEX30型)で、真空度 1.3kPa、シリンダー温度290℃に設定し、160rpmのスクリュー回転にて溶融し、円形の孔(孔面積:15.9mm2)から押出して、ストランドカッターにより長さ3mmに切断することでペレットを得た。得られたペレットを160℃で10時間、1.3kPaの真空度にて真空乾燥を行った。なお真空乾燥は、回分式で行い、乾燥するペレットは1回当たり2tであった。
(参考比較例1)
ペレットを得るに際して、ベント設備が付帯していない一軸のエスクトルーダーを用いて常圧でペレット化することに変更した以外は参考実施例1と同様にしてPPS短繊維を得るとともに、フィルター材を得た。得られたPPS短繊維について、繊度、引張強度、捲縮弾性率および繊維中の高沸点揮発分の含有量を測定した結果、ならびに得られたフィルター材についてパルスジェット耐久性およびフィルター強度保持率を測定した結果を表2に示す。
(参考比較例2)
ペレットを得る際のシリンダー温度を350℃に変更した以外は、参考実施例1と同様にしてPPS短繊維を得るとともに、フィルター材を得た。得られたPPS短繊維について、繊度、引張強度、捲縮弾性率および繊維中の高沸点揮発分の含有量を測定した結果、ならびに得られたフィルター材についてパルスジェット耐久性およびフィルター強度保持率を測定した結果を実験条件とともに表2に示す。
(参考比較例3)
ペレットを真空乾燥する際の温度と時間を220℃で2時間に変更した以外は、参考実施例1と同様にしてPPS短繊維を得るとともに、フィルター材を得た。得られたPPS短繊維について、繊度、引張強度、捲縮弾性率および繊維中の高沸点揮発分の含有量を測定した結果、ならびに得られたフィルター材についてパルスジェット耐久性およびフィルター強度保持率を測定した結果を実験条件とともに表2に示す。
(参考実施例2〜4、参考比較例4,5)
ペレットを得る際の真空度、または、ペレットの減圧乾燥温度・時間を表1または表2に記載したように変更した以外は、参考実施例1と同様にしてPPS短繊維を得るとともに、フィルター材を得た。得られたPPS短繊維について、繊度、引張強度、捲縮弾性率および繊維中の高沸点揮発分の含有量を測定した結果、ならびに得られたフィルター材についてパルスジェット耐久性およびフィルター強度保持率を測定した結果を実験条件とともに表1および表2に示す。
(実施例1)
東レ(株)製PPS粉粒体E2280(重量平均分子量:49、500を、2軸方式のベント付きエクストルーダー((株)日本製鋼所製TEX30型)で、真空度 1.3kPa 、シリンダー温度290℃に設定し、160rpmのスクリュー回転にて溶融し、円形の孔(孔面積:15.9mm2)から押出して、ストランドカッターにより長さ3mmに切断することでペレットを得た。得られたペレットを160℃で10時間、1.3kPaの真空度にて真空乾燥を行った。なお真空乾燥は、回分式で行い、乾燥するペレットは1回当たり2tであった。
(実施例2〜6、比較例1〜4および7)
ペレットを得る際の真空度、ペレットの減圧乾燥温度・時間、延伸倍率、定長熱処理の温度・時間、弛緩率、クリンパーにおけるスチーム温度の全てまたは一部を表3または表4に記載したように変更した以外は、実施例1と同様にしてPPS短繊維を得るとともに、フィルター材を得た。得られたPPS短繊維について、繊度、引張強度、捲縮弾性率および繊維中の高沸点揮発分の含有量を測定した結果、ならびに得られたフィルター材についてパルスジェット耐久性およびフィルター強度保持率を測定した結果を実験条件とともに表3および表4に示す。なお、実施例6では操業性は優れなかった。
(比較例5)
弛緩率を表4に記載したように変更した以外は、実施例1と同様にしてPPS短繊維を得ようとしたが、巻き付きが多発し、繊維を得ることができなかった。実験条件を表4に示す。
(比較例6)
延伸時の定長熱処理の弛緩率をとらなかった以外は、実施例1と同様にしてPPS短繊維を得ようとしたが、延伸倍率が高すぎて繊維を得ることができなかった。実験条件を表4に示す。
Claims (6)
- 溶融したポリフェニレンサルファイドを紡糸口金から紡出し未延伸糸を採取し、次いで未延伸糸を3倍以上4倍以下で熱延伸し、温度180℃以上で4秒間以上の定長熱処理を行った後、温度180℃以上のスチームを満たしたクリンパー内で捲縮付与し所定の長さに切断するポリフェニレンサルファイド短繊維の製造方法であって、熱延伸後から捲縮付与前までの間の弛緩率が1%以上6%以下となるように、定長熱処理の前後で弛緩せしめる、ポリフェニレンサルファイド短繊維の製造方法。
- 熱延伸後から定長熱処理前までの間の弛緩率および定長熱処理後から捲縮付与前までの間の弛緩率がそれぞれ0.5〜3%である、請求項1に記載のポリフェニレンサルファイド短繊維の製造方法。
- ポリフェニレンサルファイド短繊維の引張強度が、5cN/dtex以上、捲縮弾性率が75%以上である、請求項1又は2に記載のポリフェニレンサルファイド短繊維の製造方法。
- ポリフェニレンサルファイド短繊維が沸点200℃以上の揮発成分を0.15重量%以下含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイド短繊維の製造方法。
- ポリフェニレンサルファイド短繊維を200℃で2000時間の熱処理した時の引張強度低下が40%以内である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイド短繊維の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られるポリフェニレンサルファイド短繊維であって、バグフィルター濾布用であることを特徴とするポリフェニレンサルファイド短繊維。
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