JP2010274239A - フィルター用スクリム、およびそれを用いたフィルター - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性、難燃性のメタ型全芳香族ポリアミド繊維が本来もつ性質に加えて、酸性雰囲気であっても、物性の低下を抑制できる新規なメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフィルター用スクリムを提供する。
【解決手段】繊維中に残存する残存溶媒量が1.0質量%以下であり、300℃での乾熱収縮率が3.0%以下であり、かつ破断強度が3.0cN/dtex以上であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を、経糸および緯糸とする織物からなるフィルター用スクリム。
【選択図】なし

Description

本発明は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフィルター用スクリムおよびそれを用いたフィルターに関するものである。さらに詳しくは、酸性雰囲気中での使用においても物性の低下が生じ難い特殊なメタ型全芳香族ポリアミド繊維織物からなるフィルター用スクリム、ならびに、該スクリムとメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフェルトとを組み合わせた濾布を備えた新規なフィルターに関するものである。
従来、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドが耐熱性および難燃性に優れていることは公知であり、かかる全芳香族ポリアミドのうち、ポリメタフェニレンイソフタルアミドで代表されるメタ型全芳香族ポリアミド(「メタアラミド」と称されることもある)繊維は、耐熱・難燃性繊維として特に有用なものであることが知られている。
かかるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その特性を活かし、高温状態に暴露される分野でも広く使用されており、例えば、都市ゴミ焼却炉などの排ガス中の微粒子を捕集するバッグフィルターの素材として広く使用されている。一般に、かかるバッグフィルターの濾布としては、織物やフェルトが用いられている。バッグフィルターの濾布に要求される特性としては、捕集するダストや排気ガス中に含まれるガス性状に依存するが、耐熱性、耐薬品性、機械的強度などが例示され、合成繊維からなるフェルト地が用いられることが多い。かかるフェルト地は、通常、ニードルパンチ方式で短繊維を絡合させて得られるため、通気性には優れるものの、引張強度をはじめとする物理的特性に乏しく、機械的振動や逆気流型でダストを払い落としする場合には適用しがたいといった欠点がある。この欠点を補うために、フィラメント糸や紡績糸からなる織物をスクリム(基布)とし、これに短繊維を絡み合わせたフェルト地を積層してフィルター濾布としている。
しかしながら、排ガス中には、硫酸ミスト、塩酸ミストなどが含有されており、長期間高温状態で運転されるため、難燃性に優れた繊維であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維であっても、長期間運転した際には、繊維の機械的強度低下によりスクリムを構成する素材およびスクリムに絡合させる短繊維の劣化が発生し、ひいては破損してしまう問題点がある。このため、酸性雰囲気での物性の低下を抑制できる、メタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるスクリムの出現が強く求められている。
これに対応して、例えば、特開平8−29919号公報(特許文献1)では、メタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフェルトに、無機粒子を付着させ、熱処理後、四フッ化ポリエチレン微粒子の水分散液とフッ素化ウレタンとの混合物を付着させ、熱処理することにより、耐酸性の優れたメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフェルトが提案されている。しかしながら、このような表面処理法によって耐酸性を付与する方法では、長期耐久性に劣り、また後加工によってコストアップするという問題点がある。
また、特開平9−52007号公報(特許文献2)には、スクリム(基布)にフェルトが一体成型されてなるフィルターにおいて、経糸がメタ型アラミド繊維で緯糸がポリ四フッ化エチレン繊維であるスクリムにフェルトが一体成型されており、さらに該フェルトが無機微粒子およびフッ素系樹脂で処理されている耐酸性フィルターが開示されている。しかし、このフィルターでは、スクリムの緯糸にポリ四フッ化エチレン繊維を使用し、かつ無機微粒子およびフッ素系樹脂で処理する必須であるため、さらなるコストアップが避けられない。
このような現状において、使用される繊維自体の耐酸性が改善されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を経糸および緯糸とするスクリム用織物の出現が強く求められている。
しかしながら、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その製造プロセスにアミド系有機溶媒を使用するため、必然的に繊維中にアミド系溶媒が残留する(特許文献3〜4)。さらには、オリゴマーと呼ばれる低分子量成分を繊維中に残留することにより、本来メタ型全芳香族ポリアミドが有している酸性雰囲気での長期安定性が劣るものしか得られないという欠点を有している。
このように、長期耐久性に優れ、かつ酸性雰囲気における物性の低下を抑制するという高性能なフィルターを提供することができるメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるスクリムは現在に至るも未だ知られていないのが実情である。
特開平8−299719号公報 特開平9−52007号公報 特開2001−348726号公報 特開2005−232598号公報
本発明は、上記の如き従来技術の問題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、酸性雰囲気中の使用を継続しても、物性の低下が抑制された新規なメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフィルター用スクリム、および、該スクリムを備えたメタ型全芳香族ポリアミド繊維製のフィルターを提供することにある。
本発明者は、上記の課題を達成する手段について鋭意研究の結果、上述の如きメタ型全芳香族ポリアミド繊維にあっては、該繊維中に残存する低分子量成分および溶媒の含有量が一定以下で、かつ繊維の破断強度が一定以上であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、酸性雰囲気での物性の低下が少ないことを見出し、耐酸性に優れた全芳香族ポリアミド繊維の織物からなるフィルター用スクリムの発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、上記の課題は、繊維中に残存する残存溶媒量が1.0質量%以下であり、300℃での乾熱収縮率が3.0%以下であり、かつ破断強度が3.0cN/dtex以上であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を、経糸および緯糸とする織物からなることを特徴とするフィルター用スクリムとすることによって達成される。
そして、かかるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を経糸および緯糸とする織物からなるスクリムは、繊維中に残存する残存溶媒量が1.0質量%以下であり、300℃での乾熱収縮率が3.0%以下であり、かつ破断強度が3.0cN/dtex以上であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフェルト(不織布)と組み合わせることによって、より耐酸性に優れたフィルター、特に排ガス用のバッグフィルター、として卓越した性能を示すものとなる。
かかる本発明によれば、繊維中に残存する低分子量成分並びに残存溶媒量が少なく、かつ力学特性、耐熱性等が良好なメタ型全芳香族ポリアミド繊維の織物からなるフィルター用スクリムが提供される。上記のスクリム構成繊維は、耐熱性・難燃性というメタ型全芳香族ポリアミド繊維が本来もつ性質に加えて、酸性雰囲気下での使用においても、製品の物性低下を抑制できるという利点を兼ね備えている。従って、本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフィルター用スクリム(織物)は、より過酷な高温酸性雰囲気においても、優れた耐熱性、耐薬品性、耐久性、寸法安定性を示す。また、このスクリムと上記のメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフェルトを組み合わせた濾布は、都市ゴミ焼却炉の排ガス、工場排気ガス等の排ガス中の微粒子を捕集するバッグフィルター等として好適に使用することができる。
<メタ型全芳香族ポリアミド繊維>
本発明のフィルターを構成するスクリムおよびフェルトに用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、以下の特定の物性を備える。本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性、構成、および、製造方法等について以下に説明する。
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性]
〔残存溶媒量〕
メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、通常、ポリマーをアミド系溶媒に溶解した紡糸原液から製造されるため、必然的に該繊維に溶媒が残存する。しかしながら、本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、繊維中に残存する溶媒の量が、繊維質量に対して1.0質量%以下である。1.0質量%以下であることが必須であり、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
繊維質量に対して1.0質量%を超えて溶媒が繊維中に残存している場合には、300℃を超えるような高温雰囲気下での加工や使用の際に、残存溶媒が揮発するために環境安全性に劣ったり、繊維が黄変したりするため好ましくない。また、分子構造が破壊されることにより、著しく強度が低下する。さらに、残存する溶媒は引火点以上では容易に引火、燃焼するため、例えば限界酸素指数(LOI値)を28以上とすることが困難となる。
繊維中の残存溶媒量を1.0質量%以下とするためには、繊維の製造工程において、スキンコアを有しない凝固形態となるよう凝固浴の成分あるいは条件を調節し、かつ、特定倍率で可塑延伸を実施し、さらに、飽和水蒸気中で特定の熱処理を実施する。
なお、本発明における「繊維中に残存する残存溶媒量」とは、以下の方法で得られる値をいう。
(残存溶媒量の測定方法)
洗浄工程の出側にて繊維をサンプリングし、該繊維を遠心分離機(回転数5,000rpm)に10分かけ、このときの繊維質量(M1)を測定する。この繊維を、質量M2gのメタノール中で4時間煮沸し、繊維中のアミド系溶媒および水を抽出する。抽出後の繊維を105℃雰囲気下で2時間乾燥し、乾燥後の繊維質量(P)を測定する。また、抽出液中に含まれるアミド系溶媒の質量濃度(C)を、ガスクロマトグラフにより求める。
繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、上記のM1、M2、P、およびCを用いて、下記式により算出する。
N=[C/100]×[(M1+M2−P)/P]×100
〔300℃での乾熱収縮率〕
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、300℃乾熱収縮率が3.0%以下である。3.0%以下であることが必須であり、2.9%以下が好ましく、2.8%以下がさらに好ましい。収縮率が3.0%を超える場合には、高温雰囲気下での使用時に製品寸法が変化し、製品の破損が生じる等の問題が発生するため好ましくない。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の300℃での乾熱収縮率は、繊維の製造工程において、飽和水蒸気中で特定の熱処理を実施することにより制御することができる。300℃乾熱収縮率を3.0%以下とするためには、飽和水蒸気処理工程における延伸倍率を、0.7〜5.0倍の範囲とすればよい。延伸倍率が5.0倍を超える場合には、延伸時の単糸切れが増大し、毛羽や工程断糸が発生するため好ましくない。
なお、本発明における「300℃での乾熱収縮率」とは、以下の方法で得られる値をいう。
(300℃での乾熱収縮率の測定方法)
約3,300dtexのトウに98cN(100g)の荷重を吊るし、互いに30cm離れた箇所に印をつける。荷重を除去後、トウを300℃雰囲気下に15分間置いた後、印間の長さLを測定する。測定結果Lをもとに、下記式にて得られる値を300℃乾熱収縮率(%)とする。
300℃乾熱収縮率(%)=[(30−L)/30]×100
〔破断強度〕
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断強度は、3.0cN/dtex以上である。3.0cN/dtex以上であることが必須であり、3.5cN/dtex以上であることがより好ましく、4.0cN/dtex以上であることが特に好ましい。破断強度が3.0cN/dtex未満である場合には、紡績等の後加工工程において繊維が破断し、通過性が悪化するため好ましくない。また、加工した製品の破断強度も低くなる。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の「破断強度」は、繊維の製造工程において、特定倍率で可塑延伸を実施することにより制御することができる。破断強度を3.0cN/dtex以上とするためには、可塑延伸浴延伸工程における延伸倍率を1.5〜10倍とすればよい。
なお、ここでいう「破断強度」とは、JIS L 1015に基づき、測定機器としてインストロン社製、型番5565を用いて、下記の測定条件で測定して得られる値をいう。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
〔強度保持率〕
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、25℃で20質量%の硫酸水溶液中で600時間保持した後の強度保持率(耐酸性試験後の強度保持率)が60%以上であることが好ましく、特に65〜80%であることが好適である。強度保持率が、60%未満である場合には、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いたフィルターを酸性雰囲気で長期間用いた場合に、繊維の機械的強度低下によりフィルターの劣化が発生し、ひいては破損してしまうことから好ましくない。
この強度保持率は、例えば繊維の製造工程において、特定の凝固条件で凝固を行った後、特定の水洗条件にて洗浄することにより調整することができる。
ここで、繊維の耐酸性試験後の強度保持率は、以下の方法により測定される「耐酸性試験」後の強度保持率を言う。
(耐酸性試験)
25℃で20質量%の硫酸水溶液中にサンプル糸を固定し、600時間後に取り出して、繊維の破断強度を測定する。強度保持率は、繊維の耐酸性試験後の破断強度を耐酸性試験前の破断強度に対する百分率で表示した値として表わされる。
〔低分子量成分〕
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、分子量10,000未満の低分子量成分の含有率が1.0質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.8質量%、特に好ましくは0.6質量%以下である。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維において、分子量10,000未満の低分子量成分が1.0質量%を超えると、低分子量成分が増加し、繊維中の非晶領域におけるガラス転移温度が低下し、高温使用環境において物性の低下が起こりやすくなる。
上記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、分子量が10,000未満の低分子量成分を1.0質量%以下にするには、例えば後掲の凝固工程において、まず紡糸原液をアミド系溶媒の水溶液からなる実質的に塩を含まない凝固液中に吐出することにより、効率的に低分子量成分の除去を行うことができ、かかる凝固工程が特に好ましく採用される。
〔限界酸素指数(LOI)〕
なお、本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の限界酸素指数(LOI)は、好ましくは28以上である。29以上がさらに好ましく、30以上が特に好ましい。限界酸素指数(LOI)が28未満の場合には、高温雰囲気下での使用時に、製品が高熱により着火する恐れがあるため好ましくない。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の限界酸素指数(LOI)は、残存溶媒量を低減することにより制御することができる。限界酸素指数(LOI)を28以上とするためには、残存溶媒量を1.0%以下とすればよい。
ここで、本発明における「限界酸素指数(LOI)」とは、JIS K 7201のLOI測定法に基づき、綿状にした繊維材料をニードルパンチ加工によりシート状に成形した不織布につき、以下の測定条件で測定して得られる値をいう。
(測定条件)
試験片の形 :V
寸法 :140mm×52mm
点火手順 :B(伝ぱ点火)
酸素濃度間隔:0.2%
〔破断伸度〕
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断伸度は、30%以上であることが好ましい。35%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。破断伸度が30%未満である場合には、紡績等の後加工工程における通過性が悪化するため好ましくない。
なお、ここでいう「破断伸度」とは、JIS L 1015に基づき、測定機器としてインストロン社製、型番5565を用いて、上記した「破断強度」と同一の測定条件で測定して得られる値をいう。
〔繊度〕
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の総繊度は、織成作業上、200〜1,700dtexの範囲であることが好ましい。繊度が200dtex未満となる場合には、必要とする目付けを得ることが困難となる。また、単糸繊度は、0.5〜6dtexの範囲であることが好ましい。0.5dtex未満となる場合には、織成の際、単糸切れによる毛羽を生じ、織成作業が困難となる。一方で、単糸繊度が6dtexを超える場合には、単糸間のバラケを生じやすくなる。
[メタ型全芳香族ポリアミドの構成]
本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の原料となるメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、本発明の目的を損なわない範囲内で、パラ型等の他の共重合成分が共重合されていてもよい。
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性の観点から、メタフェニレンイソフタルアミド単位を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドである。メタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドとしては、メタフェニレンイソフタルアミド単位が、全繰り返し単位の90モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
〔メタ型全芳香族ポリアミドの原料〕
(メタ型芳香族ジアミン成分)
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン等、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば、2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロルベンゼン、2,6−ジアミノクロルベンゼン等を例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミンのみ、または、メタフェニレンジアミンを70モル%以上含有する混合ジアミンであることが好ましい。
(メタ型芳香族ジカルボン酸成分)
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3−クロルイソフタル酸クロライド、3−メトキシイソフタル酸クロライド等を例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライドのみ、または、イソフタル酸クロライドを70モル%以上含有する混合カルボン酸ハライドであることが好ましい。
(共重合成分)
上記のメタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分以外で使用しうる共重合成分としては、例えば、芳香族ジアミンとして、パラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノクロルベンゼン、2,5−ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジン等のベンゼン誘導体、1,5−ナフチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。一方、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド等が挙げられる。
これらの共重合成分の共重合比は、あまりに多くなりすぎるとメタ型全芳香族ポリアミドの特性が低下しやすいため、ポリアミドの全酸成分を基準として20モル%以下とすることが好ましい。特に、好適なメタ型全芳香族ポリアミドは、上記したとおり、全繰返し単位の90モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるポリアミドであり、なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミドが特に好ましい。
〔メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法〕
メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸クロライド成分とを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
メタ型全芳香族ポリアミドの重合度としては、30℃の濃硫酸を溶媒として測定した固有粘度(IV)として、1.3〜3.0の範囲が適当である。
<メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法>
本発明のフィルター用スクリムやフェルトを構成するメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、上記の製造方法によって得られたメタ型全芳香族ポリアミドを用いて、例えば、以下に説明する紡糸液調製工程、紡糸・凝固工程、可塑延伸浴延伸工程、洗浄工程、飽和水蒸気処理工程、乾熱処理工程を経て製造される。
[紡糸液調製工程]
紡糸液調製工程においては、メタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解して、紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を調製する。紡糸液の調製にあたっては、通常、アミド系溶媒を用い、使用されるアミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPの場合には、通常は10〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
[紡糸・凝固工程]
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させ、多孔質繊維状物を得る。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が500〜30,000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、10〜90℃の範囲が適当である。
残存溶媒量が十分に低減した繊維を得るためには、十分な程度にまで繊維の緻密化を行う必要があり、そのためには、紡糸・凝固工程の凝固段階で形成される多孔質繊維状物の構造を、できる限り均質なものとすることが極めて重要である。多孔構造と凝固浴の条件とは緊密な関係があり、凝固浴の組成と温度条件の選定は極めて重要である。
本発明で使用する繊維を得るための凝固浴は、実質的にアミド系溶媒と水との2成分からなる水溶液で構成される。この凝固浴組成におけるアミド系溶媒としては、メタ型全芳香族ポリアミドを溶解し、水と良好に混和するものであれば特に限定されるものではないが、特に、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン等を好適に用いることができる。
アミド系溶媒と水との最適な混合比は、重合体溶液の条件によっても若干変化するが、一般的に、アミド系溶媒の割合が水溶液全体に対して40質量%〜60質量%の範囲であることが好ましい。この範囲を下回る条件では、凝固繊維中に非常に大きなボイドが生じやすくなり、その後の糸切れの原因となりやすくなる。一方で、この範囲を上回る条件では、凝固が進まず、繊維の融着が起こりやすくなる。
均質な構造の多孔質繊維状物を得るための凝固浴としては、実質的にアミド系溶媒と水だけで構成されることが好ましい。しかしながら、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等の無機塩類がポリマー溶液中から抽出されてくるため、実際には、凝固液にはこれらの塩類が少量含まれる。工業的な実施における塩類の好適濃度は、凝固液全体に対して0.3質量%〜10%質量の範囲である。無機塩濃度を0.3質量%未満とするためには、凝固液の回収プロセスにおける精製のための回収コストが著しく高くなるため適切ではない。一方で、無機塩濃度が10質量%を超える場合には、凝固速度が遅くなることから、紡糸口金から吐出された直後の繊維に融着が発生しやすくなり、また、凝固時間が長時間となるため凝固設備を大型化せざるを得なくなり好ましくない。
凝固浴の温度は、凝固液組成と密接な関係があるが、一般的には、生成繊維中にフィンガーとよばれる粗大な気泡上の空孔が出来にくいため、高温にする方が好ましい。しかしながら、凝固液濃度が比較的高い場合には、あまり高温にすると繊維の融着が激しくなる。このため、凝固浴の好適な温度範囲は20〜70℃であり、より好ましくは25〜60℃である。
なお、凝固浴中での繊維状物(糸条体)の浸漬時間は、1.5〜30秒の範囲とすることが好ましい。浸漬時間が1.5秒未満の場合には、繊維状物の形成が不十分となり断糸が発生する。一方で、浸漬時間が30秒を超える場合には、生産性が低くなるため好ましくない。
[可塑延伸浴延伸工程]
可塑延伸浴延伸工程においては、凝固浴にて凝固して得られた多孔質繊維状物(糸条体)からなる繊維束が可塑状態にあるうちに、当該繊維束を可塑延伸浴中にて延伸処理する。
本発明で使用する繊維を得るための可塑延伸浴は、アミド系溶媒の水溶液からなり、塩類は実質的に含まれない。このアミド系溶媒としては、メタ型アラミドを膨潤させ、かつ、水と良好に混和するものであれば、特に限定されるものではない。かかるアミド系溶媒しては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン等を挙げることができる。工業的には、可塑延伸浴液とするアミド系溶媒は、上記凝固浴に用いたものと同じ種類の溶媒を用いることが特に好ましい。すなわち、重合体溶液、凝固浴および可塑延伸浴に用いるアミド系溶媒は同種であることが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドのうちから選ばれる単独溶媒、または、2種以上からなる混合溶媒を用いることが好都合である。同種のアミド系溶媒を用いることによって、回収工程を統合・簡略化することができ、経済的に有益となる。
可塑延伸浴の温度と組成とはそれぞれ密接な関係にあるが、アミド系溶媒の質量濃度が20〜70質量%、かつ、温度が20〜70℃の範囲であれば、好適に用いることができる。この範囲より低い領域では、多孔質繊維状物の可塑化が十分に進まず、可塑延伸において十分な延伸倍率をとることが困難となる。一方で、これの範囲より高い領域では、多孔質繊維の表面が溶解して融着するため、良好な製糸が困難となる。
本発明に用いられる繊維を得るにあたっては、可塑延伸浴中の延伸倍率を、1.5〜10倍の範囲とする必要があり、好ましくは2.0〜6.0倍の範囲とする。延伸倍率が1.5倍未満の場合には、得られる繊維の強度、弾性率等の力学特性が低くなり、本発明のフィルター用スクリムを構成する繊維に必要な破断強度を達成することが困難となる。また、多孔質繊維状物からの脱溶剤を十分に促進することが困難となり、最終的に得られる繊維の残存溶媒量を1.0質量%以下とすることが困難となる。なお、可塑延伸浴延伸工程において高倍率で延伸を施すことにより、強度、弾性率等が向上して良好な物性を示す繊維が得られるようになると同時に、多孔質繊維状物の微細孔が引きつぶされ、後の熱処理工程における緻密化が良好に進行するようになる。ただし、延伸倍率が10倍を超えるような高倍率で延伸した場合には、工程の調子が悪化して毛羽や単糸切れが多く発生するため好ましくない。
[洗浄工程]
洗浄工程においては、上記可塑延伸浴延伸工程を経た繊維を、十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質面に影響を及ぼすことから、多段で行なうことが好ましい。特に、洗浄工程における洗浄浴の温度および洗浄浴液中のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への浸入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とする目的においても、洗浄工程を多段とし、温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件を制御することが好ましい。洗浄工程を多段とすることにより、低分子量成分を低減させることができる。
温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件については、最終的に得られる繊維の品質を満足できるものであれば特に限定されるものではないが、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入が一気に起こるため、繊維中に巨大なボイドが生成し、品質の劣化を招く。このため、最初の洗浄浴は、30℃以下の低温とすることが好ましい。引き続き、50〜90℃の温水で洗浄することが好ましい。
[飽和水蒸気処理工程]
飽和水蒸気処理工程においては、洗浄工程において洗浄された繊維を、飽和水蒸気中で熱処理する。飽和水蒸気処理をおこなうことにより、繊維の結晶化を抑制しつつ配向を高めることが可能となる。飽和水蒸気雰囲気での熱処理は、乾熱処理と比較して繊維束内部まで均一に熱処理することが可能となり、均質な繊維を得ることができる。
さらに驚くべきことに、飽和水蒸気雰囲気で熱処理を行うと、繊維表面が結晶化せず、スキン層が形成されない。このため、繊維束の各単繊維中に残存する溶媒を、急速に拡散することができ、繊維内部からほぼ完全に除去することが可能となる。したがって、飽和水蒸気熱処理を実施することにより、最終的に得られる繊維中の残存溶媒量を、1.0質量%以下にまで低減することが可能となる。
飽和水蒸気処理工程における飽和水蒸気圧は、0.02〜0.50MPaの範囲とする。好ましくは0.03〜0.30MPaの範囲、さらに好ましくは0.04〜0.20MPaの範囲である。飽和水蒸気圧が0.02MPa未満の場合には、十分な蒸気処理効果が得られず、残存溶媒量を低減させる効果が小さくなるため好ましくない。一方で、飽和水蒸気圧が0.50MPaを超える場合には、繊維の結晶化が促進されすぎて繊維表面にスキン層が形成されるため、残存溶媒量を十分に低減することが困難となる。
飽和水蒸気処理工程における延伸倍率は、繊維の強度の発現にも密接な関係を持っている。延伸倍率は、製品に求められる物性を考慮して必要な倍率を任意に選択すればよいが、本発明においては0.7〜5.0倍の範囲であり、好ましくは1.1〜2.0倍の範囲とすることが好ましい。延伸倍率が0.7倍未満の場合には、飽和水蒸気雰囲気中での繊維束(糸条)の収束性が低下するので好ましくない。一方で、延伸倍率が5倍を超える場合には、延伸時の単糸切れが増大し、毛羽や工程断糸が発生するため好ましくない。また、飽和水蒸気処理工程における延伸倍率を0.7〜5.0倍の範囲とすれば、発明のフィルター用スクリムやフェルトを構成する繊維に必要な300℃での乾熱収縮率を3.0%以下とすることができる。
なお、ここでいう延伸倍率とは、処理前の繊維長に対する処理後の繊維長の比で表される。例えば、延伸倍率0.7倍とは、飽和水蒸気処理工程により繊維が原長の70%に制限収縮処理されることを意味し、1.1倍とは10%伸長するよう処理されることを意味する。
なお、飽和水蒸気処理の時間は、0.5〜5.0秒の範囲とすることが好ましい。走行する繊維束を連続的に処理する場合には、水蒸気処理槽中の繊維束の走行距離と走行速度とによって処理時間が決まるため、これらを適宜調整して最も効果のある処理時間を選択すればよい。
[乾熱処理工程]
乾熱処理工程においては、飽和水蒸気処理工程を経た繊維を、乾燥・熱処理する。乾熱処理の方法としては特に限定されるものではないが、例えば、熱板、熱ローラ等を用いる方法を挙げることができる。乾熱処理を経ることにより、最終的に、本発明のフィルター用スクリムやフェルトを構成するメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
乾熱処理工程における熱処理温度は、250〜400℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは300〜380℃の範囲である。乾熱処理温度が250℃未満である場合には、多孔質の繊維を十分に緻密化させることが出来ないため、得られる繊維の力学特性が不十分となる。一方で、乾熱処理温度が400℃を超える高温では、繊維の表面が熱劣化し、品位が低下するため好ましくない。
乾熱処理工程における延伸倍率は、得られる繊維の強度の発現に密接な関係を持っている。延伸倍率は、繊維に要求される強度等に応じて任意の倍率を選ぶことができるが、0.7〜4倍の範囲とすることが好ましく、1.5〜3倍の範囲とすることがさらに好ましい。延伸倍率が0.7倍未満の場合には、工程張力が低くなるために繊維の力学特性が低下し、一方で、延伸倍率が4倍を超える場合には、延伸時の単糸切れが増大し、毛羽や工程断糸が発生する。なお、ここでいう延伸倍率とは、上記飽和水蒸気処理工程で説明したのと同様に、延伸処理前の繊維長に対する処理後の繊維長の比で表される。例えば、延伸倍率0.7倍とは、乾熱処理工程により繊維が原長の70%に制限収縮処理されることを意味し、延伸倍率1.0倍とは定長熱処理を意味する。
乾熱処理工程における処理時間は、1.0〜45秒の範囲とすることが好ましい。処理時間は、繊維束の走行速度と熱板、熱ローラ等との接触長とによって調整することができる。
[捲縮工程等]
乾熱処理が施されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維には、必要に応じて、さらに捲縮加工を施してもよい。さらに、捲縮加工後は、適当な繊維長に切断し、次工程に提供してもよい。また、場合によっては、マルチフィラメントヤーンとして巻き取ってもよい。
<スクリムおよびそれを用いたフィルター>
本発明のスクリムに用いられる経糸、緯糸の総繊度は、スクリムの組織、構成、スクリムと短繊維の質量比率、短繊維の物性、絡合度およびバッグフィルターの構造、形状によって適宜選定される。本発明では、総繊度が110〜1,560dtex、好ましくは275〜1,100dtexのヤーン(フィラメント糸または紡績糸)で構成される織物、例えば平織、綾織、朱子織などの織物組織が好ましく、なかでも平織物、特にメッシュ状の平織物であるスクリムが好ましい。スクリムを構成するフィラメント糸または紡績糸には、撚糸されていてもよく、撚数は、50〜700回/mの範囲が好ましい。撚数が50回/m未満であると、ヤーンの収束性が低下し、このスクリムにフェルトを一体成型する際の工程通過性が悪化するという問題が生じる。一方、撚数が700回/mを超えると、撚糸強度が著しく低下し、スクリムとしての強度を維持することができない。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるスクリム(織物)は、目付が100〜700g/m、好ましくは200〜400g/mが適当であり、100g/m未満であるとフィルターとしての集塵効率が極端に低くなり、一方、700g/mを超えると柔軟性が損なわれてしまう。
上記の織物をスクリム(基布)とし、これにメタ型全芳香族ポリアミドの短繊維からなるフェルト(不織布)を一体成形することで耐酸性の良好なフィルターとすることができる。フェルトを構成するメタ型全芳香族ポリアミド短繊維も、繊維中に残存する残存溶媒量が1.0質量%以下であり、300℃での乾熱収縮率が3.0%以下であり、かつ破断強度が3.0cN/dtex以上であることが、より耐酸性の優れたフィルターを得る上で好ましい。
なお、上記短繊維も、25℃で20質量%の硫酸水溶液中で600時間保持した後の強度保持率が60%以上であることがさらに好ましい。酸性雰囲気で長期間用いた場合に、織物の機械的強度低下によりスクリムおよびフェルトの劣化を防ぐことができる。
スクリムとフェルトとを一体成形する方法は特に限定されないが、通常は、該スクリムの上下に該短繊維からなるウェブを積層し、常法、例えば両面からニードルパンチングする方法により得られる。この際のフェルトの目付は、200〜1,500g/m、好ましくは400〜600g/mが適当であり、200g/m未満であるとフィルターとしての集塵効率が極端に低くなり、一方、1,500g/mを超えると柔軟性が損なわれてしまう。
上記フェルトに使用されるメタ型全芳香族ポリアミド短繊維の単繊維繊度は、0.50〜10dtex、好ましくは0.8〜5.5dtexが適当であり、繊度が細い方が繊維の表面積(濾過面の表面積)が大きくなり、ダストの捕集効率がよくなる。また、必要に応じて異繊度の短繊維を複合してもよい。また、フェルトとして不織布を使用する場合は予め捲縮が付与されている短繊維を不織布の構成繊維として用いるが、その繊維長は31〜76mmの範囲が好ましい。
本発明におけるスクリム用織物あるいはフィルターには、その表面に、無機微粒子や表面処理剤が付与されていても良く、またこれらを組み合わせても良い。
以上のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いた本発明のスクリムおよびフィルターは、酸性雰囲気中で長期間使用しても、物性の低下が生じ難いため、都市ゴミ焼却炉の排ガス、工場排気ガス等の排ガス中の微粒子を捕集するバッグフィルター等に好適に使用することができる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例および比較例は本発明の理解を助けるためのものであって、これらの記載によって本発明の範囲が限定されるものではない。
なお、例中の「部」および「%」は特に断らない限りすべて質量基準に基づくものであり、量比は特に断らない限り質量比を示す。実施例および比較例における各物性値は下記の方法で測定した。
[固有粘度(I.V.)]
ポリマーを97%濃硫酸に溶解し、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した。
[繊度]
JIS L1015に基づき、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛繊度にて表記した。
[破断強度、破断伸度]
JIS L1015に基づき、インストロン社製 型番5565を用いて、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
[残留溶媒量]
洗浄工程の出側にて繊維をサンプリングし、該繊維を遠心分離機(回転数5,000rpm)に10分かけ、このときの繊維質量(M1)を測定した。この繊維を、質量M2gのメタノール中で4時間煮沸し、繊維中のアミド系溶媒および水を抽出した。抽出後の繊維を105℃雰囲気下で2乾燥し、乾燥後の繊維質量(P)を測定した。また、抽出液中に含まれるアミド系溶媒の質量濃度(C)を、ガスクロマトグラフにより求めた。
繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、上記のM1、M2、P、およびCを用いて、下記式により算出した。
N=[C/100]×[(M1+M2−P)/P]×100
[300℃乾熱収縮率(繊維)]
約3,300dtexのトウに98cN(100g)の荷重を吊るし、互いに30cm離れた箇所に印をつけた。荷重を除去後、トウを300℃雰囲気下に15分間置いた後、印間の長さLを測定した。測定結果Lをもとに、下記式にて得られる値を、繊維の300℃乾熱収縮率(%)とした。
繊維の300℃乾熱収縮率(%)=[(30−L)/30]×100
[300℃乾熱収縮率(織物)]
試料に1/30(g/d)の荷重を掛け、その長さL1(mm)を測定した。次いで、その荷重を取り除き、試料を乾燥機に入れて乾熱300℃で15分間乾燥した。乾燥後冷却し、再度試料に1/30(g/d)の荷重を掛けて、その長さL2(mm)を測定した。上記L1、L2を下記式に代入し、織物の300℃乾熱収縮率(%)を算出した。尚、測定回数は5回とし、その平均値を求めた。
織物の300℃乾熱収縮率(%)=[(L1−L2)/L1]×100
[強度保持率]
耐酸性の指標となる、25℃の20%硫酸水溶液に600時間浸漬した後の強度保持率は、5℃で20%の硫酸水溶液中にサンプル糸を固定し、600時間後に取り出して繊維の破断強度を測定し、その測定値を測定前の破断強度に対する百分率(%)として表示する。
[フィルターの評価]
上記織物をスクリムとし、これに同種繊維のフェルトを一体に積層したものを濾布としたバッグフィルターを、促進テストとして、300℃焼却炉の排ガスのろ過用に12時間連続使用した後、フィルターを肉眼で検査し、以下のようにランク付けした。
◎=全く劣化なし
○=殆ど劣化なし
△=劣化あり
×=使用不可
[実施例1]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造したI.V.=1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末22.0部を、0℃に冷却したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)78.5部中に懸濁させ、スラリー状にした後、60℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液Aを得た。溶液のポリマー濃度(PN)は21.5%であった。
上記のように調製したポリマー溶液Aを紡糸原液として、孔径0.06mm、孔数5,000の紡糸口金より浴温度80℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴は、水/NMP=45/55の組成の浴を用い、浸漬長(有効凝固浴長)60cmにて糸速10m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。引き続き、可塑延伸浴中にて3倍の延伸倍率で延伸を行った。この時の可塑延伸浴は、水/NMP=70/30の組成の浴を用い、温度80℃であった。延伸に続いて、冷水による水洗を十分に行った後、さらに80℃の温水で洗浄した。上記温水洗浄糸は、引き続き飽和水蒸気で満たされた内圧0.05MPaに保たれた容器中にて延伸倍率1.1倍で飽和水蒸気による熱処理を行った。このとき繊維束が約1.0秒間飽和水蒸気で処理されるよう諸条件を調整した。引き続き、この温水延伸糸を表面温度150℃の乾燥ローラに巻回して乾燥し、引き続き320〜350℃の熱板上で1.2倍に乾熱延伸し、表面温度330℃の乾熱処理工程にて1.05倍延伸して巻き取り、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
得られた繊維の力学的特性は、表1に示すとおり、繊度2.0dtex、破断強度3.25cN/dtex、破断伸度22.5%であり、いずれも良好な数値を示した。また、繊維中の分子量10,000未満の低分子量成分は0.93%、残存溶媒量は0.58%であり、25℃で20%の硫酸水溶液中で600時間保持した後の強度保持率は68%と優れた耐熱性を示した。
このポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維のトウ(全繊度13万dtex)に押込捲縮を付与した後、2インチにカットし、通常の紡績工程を通して10番手および20番手の紡績糸を得た。この紡績糸に13回/inchの撚りを掛け、経糸/緯糸=10番手/20番手および打込み本数(本/kg)を経糸/緯糸=20/16とした平織物を得た。この平織物の目付けは185g/mであった
この平織物をスクリムとし、その両面にスクリムの繊維と同様の特性を有するポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の短繊維からなるウェブを積層してニードルパンチ法にて、一体に成形して、フィルターを製造した。
なお、1面あたりのウェブの目付は、250g/mであり、フィルター全体の総目付は500g/mであった。
これらの原糸、スクリム(織物)の特性およびフィルターとしての評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例2]
用いる溶媒をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に変更してポリマー溶液Bを製造し、これを紡糸原液に用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造した。得られた繊維、スクリム(織物)の特性およびフィルターの評価結果は表1に示すとおりであり、溶媒の種類が変わっても同様に結果が得られた。
[実施例3]
乾燥窒素雰囲気下の反応容器に、水分率が100ppm以下のNMP721.5部を秤量し、このNMP中にメタフェニレンジアミン97.2部(50.18モル%)を溶解させて0℃に冷却した。この冷却したジアミン溶液に対してイソフタル酸クロライド181.3部(49.82モル%)を徐々に撹拌しながら添加し重合反応を行った。粘度変化が止まった後から40分攪拌を継続した。
次に、重合反応が完了したポリマー溶液に対して、平均粒径が10μm以下である水酸化カルシウム粉末を66.6部秤量し、これを加えて中和反応を行った。水酸化カルシウムの投入が完了した後、40分間撹拌して透明なポリマー溶液Cを得た。
このポリマー溶液Cからポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ1.30であった。また、溶液のポリマー濃度(PN)は20%であった。
得られたポリマー溶液Cを紡糸原液として、孔径0.06mm、孔数5,000の紡糸口金より浴温度40℃、水/NMP=45/55の組成の凝固浴中に糸速6m/分で吐出して紡糸した。引き続き、温度40℃で水/NMP=40/60の組成である可塑延伸浴中にて9.0倍の延伸倍率で延伸を行った後、20℃の水/NMP=70/30の浴、続いて20℃の水浴で洗浄し、さらに60℃の温水浴に通して十分に洗浄を行った。上記温水洗浄糸は、引き続き飽和水蒸気で満たされた内圧0.05MPaに保たれた容器中にて延伸倍率1.1倍で飽和水蒸気による熱処理を行った。このとき繊維束が約1.0秒間飽和水蒸気で処理されるよう諸条件を調整した。このようにして得られた繊維を乾燥熱処理した後に、表面温度360℃の熱ローラにて乾熱処理を施し、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
このポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維のトウ(全繊度13万dtex)に押込捲縮を付与した後、2インチにカットし、通常の紡績工程を通して10番手および20番手の紡績糸を得た。この紡績糸に13回/inchの撚りを掛け、経糸/緯糸=10番手/20番手および打込み本数(本/kg)を経糸/緯糸=20/16とした平織物を得た。この織物の目付けは185g/mであった
この平織物をスクリムとし、その両面に上記と同様の条件で製造したポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の短繊維からなるウェブを積層してニードルパンチ法にて、一体に成形して、フィルターを製造した。フィルターの総目付は、500g/mであった。これらの原糸、スクリム(織物)の特性およびフィルターの評価結果は表1に示すとおりであった。
[実施例4]
用いる溶媒をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に変更した以外は実施例3と同様にしてポリマー溶液Dを製造し、得られたポリマー溶液Dを紡糸原液として、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。得られた繊維、織物などの力学特性などを実施例1の値とあわせて表1に示した。これらの原糸、スクリム(織物)の特性およびフィルターの評価結果は表1に示すとおりであった。
[比較例1〜2]
60℃の温水浴での洗浄を行わないこと以外は、それぞれ実施例1および実施例2と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造した。得られた繊維、織物などの特性は表1に示すとおりであった。
[比較例3〜4]
60℃の温水浴での洗浄を行わないこと以外は、それぞれ実施例3および実施例4と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。得られた繊維、織物などの特性は表1に示すとおりであった。
本発明によれば、力学特性、耐熱性等の良好で繊維中に残存する低分子量成分ならびに溶媒量の少なく、かつ高強度で、乾熱収縮率が小さいメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるスクリムが提供される。特に、このスクリムは、酸性雰囲気下の使用での物性の低下を抑制することができるため、本発明に係るスクリムおよびフィルター濾布は、より過酷な高温酸性雰囲気においても、優れた耐熱性、耐薬品性、耐久性を示すので、都市ゴミ焼却炉の排ガス、工場排気ガス等の排ガス中の微粒子を捕集するバッグフィルターなどで好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. 繊維中に残存する残存溶媒量が1.0質量%以下であり、300℃での乾熱収縮率が3.0%以下であり、かつ破断強度が3.0cN/dtex以上であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を、経糸および緯糸とする織物からなることを特徴とするフィルター用スクリム。
  2. 上記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が、25℃の20質量%硫酸水溶液に600時間浸漬した後の強度保持率が60%以上である請求項1記載のフィルター用スクリム。
  3. 上記織物の目付が100〜700g/mである請求項1記載のフィルター用スクリム。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載のスクリムを用いたフィルター。
  5. 請求項1〜3いずれかに記載のスクリムとメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなるフェルトとで構成した濾布を備えた請求項4のフィルター。
  6. 上記フェルトを構成するメタ型全芳香族ポリアミド繊維が、繊維中に残存する残存溶媒量が1.0質量%以下であり、300℃での乾熱収縮率が3.0%以下であり、かつ破断強度が3.0cN/dtex以上である請求項5記載のフィルター。
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