JP4963775B2 - インナーライナー用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インナーライナー用ゴム組成物及び該ゴム組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤに関し、特に空気透過性が著しく低いインナーライナー用ゴム組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気入りタイヤの内面には、空気漏れを防止しタイヤ空気圧を一定に保つために、ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴム等の空気透過性の低いゴム成分を主成分とするインナーライナーが配設されている。該インナーライナーの空気透過性を更に下げることにより、空気のタイヤからの漏洩速度を低下させることができるため、インナーライナー用ゴム組成物には、更なる空気不透過性の向上が要求されている。
【0003】
一方、分子量の異なる二種類のポリマーに有機化された層状粘土鉱物を配合してなる複合体は、有機化された層状粘土鉱物の配合されていない複合体よりも、空気不透過性が改善されることが下記特許文献1に記載されている。特許文献1には、空気透過性の低いゴム成分に有機化された層状粘土鉱物を配合してなるゴム組成物の例が記載されているが、該ゴム組成物でも空気不透過性に改善の余地が有り、更に空気透過性の低いゴム組成物が求められている。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第6034164号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ゴム成分に層状粘土鉱物を配合してなるゴム組成物において、該ゴム組成物の空気透過性を低減するには、配合される層状粘土鉱物のアスペクト比を向上させることが有効であることを、本発明者らは理論的に推測した。これに対し、ブチルゴム等の空気透過性の低いゴム成分は極性が低く且つ分子量が大きいため、かかるゴム成分に有機化された層状粘土鉱物を配合し混練するだけでは、ゴム成分が層状粘土鉱物の層間にインターカレートし難く、その結果、層状粘土鉱物の各層が剥離せず、層状粘土鉱物のアスペクト比が向上しない。従って、層状粘土鉱物のアスペクト比を向上させるには、極性が低く且つ分子量が大きいゴム成分と有機化された層状粘土鉱物との相溶性を向上させることが有効であると考えられる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ゴム組成物中に存在する極性が低く且つ分子量が大きいゴム成分と有機化された層状粘土鉱物との相溶性を向上させ、従来のインナーライナー用ゴム組成物よりも空気透過性が更に低いゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゴム組成物をインナーライナーに用いた空気保持性の高い空気入りタイヤを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、極性が低く且つ分子量が大きいゴム成分に有機化された層状粘土鉱物を配合してなるゴム組成物において、更に特定の共重合体を配合することにより、ゴム成分と層状粘土鉱物との相溶性が向上して層状粘土鉱物のアスペクト比が向上し、その結果、ゴム組成物の空気透過性が更に低くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、ゴム成分に、(a)イソブチレン及び(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体と、有機化された層状粘土鉱物とを配合してなり、
前記共重合体の重量平均分子量が2000〜50000であり、
前記ゴム成分が、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化p-メチルスチレンを含有するイソブチレン・p-メチルスチレン共重合体及びそれらのブレンドからなる群から選択される
ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他のインナーライナー用ゴム組成物は、ゴム成分に、(a)イソブチレン、(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物及び(c)ハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体と、有機化された層状粘土鉱物とを配合してなり、
前記共重合体の重量平均分子量が2000〜50000であり、
前記ゴム成分が、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化p-メチルスチレンを含有するイソブチレン・p-メチルスチレン共重合体及びそれらのブレンドからなる群から選択される
ことを特徴とする。
【0011】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物の他の好適例においては、前記共重合体中の(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物単位の結合量が5〜70質量%である。
【0012】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物の他の好適例においては、前記共重合体中の(c)ハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物単位の結合量が65質量%以下である。
【0013】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物の他の好適例においては、前記(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物がp-ハロメチルスチレンである。
【0014】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物の他の好適例においては、前記共重合体の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し1〜50質量部である。
【0015】
上記ゴム成分としては、ブチルゴム及びハロゲン化p-メチルスチレンを含有するイソブチレン・p-メチルスチレン共重合体が特に好ましい。
【0016】
また、上記層状粘土鉱物は、モンモリロナイト及び/又はマイカであるのが好ましい。
【0017】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物の他の好適例においては、前記有機化された層状粘土鉱物は4級オニウム塩での有機化により得られたものである。
【0018】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物の他の好適例においては、前記有機化された層状粘土鉱物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し1〜100質量部である。
【0019】
また、本発明の空気入りタイヤは、上記インナーライナー用ゴム組成物をインナーライナーに用いたことを特徴とする。ここで、本発明の空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、ゴム成分に、(a)イソブチレン及び(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた二元共重合体、又は(a)イソブチレン、(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物及び(c)ハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた三元共重合体と、有機化された層状粘土鉱物とを配合してなる。
【0021】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物に使用する共重合体は、共重合体中にハロゲン基を含有するため通常のゴム成分より極性が高く、更に分子量も低いため、有機化された層状粘土鉱物の層間にインターカレートし易い。また、上記共重合体は、通常のゴム成分より極性が高いものの、イソブチレンや芳香族ビニル化合物といった極性の低い部分も備えるため、ゴム成分との相溶性も高い。そのため、該共重合体は、層状粘土鉱物の各層を剥離して層状粘土鉱物のアスペクト比を向上させることができる。以上の作用により、上記共重合体を有機化された層状粘土鉱物と共にゴム成分に配合してなる本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、空気透過性が著しく低くなる。
【0022】
また、上記共重合体は、米国特許6034164号に記載のゴム組成物に配合される低分子量ポリマーよりも分子量が更に低く、且つ該ポリマーより分子中のハロゲン量が高いため、有機化された層状粘土鉱物の層間に更にインターカレートし易い。そのため、本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、米国特許6034164号に記載のゴム組成物よりも更に空気透過性が低い。
【0023】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物を構成する共重合体の製造に用いるハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物としては、p-クロロメチルスチレン、p-ブロモメチルスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン等が挙げられ、これらの中でもp-クロロメチルスチレン、p-ブロモメチルスチレン等のp-ハロメチルスチレンが好ましい。上記共重合体中のハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物単位の結合量は、5〜70質量%であり、10〜70質量%が好ましい。共重合体中のハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物単位の結合量が5質量%未満では、有機化された層状粘土鉱物の層間にインターカレートし難く、70質量%を超えると、ゴム組成物の弾性率が高くなり、耐クラック性が悪化する。
【0024】
上記共重合体の製造に用いることができるハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等が挙げられ、これらの中でもスチレンが好ましい。上記共重合体の製造にハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物を用いることにより、製造された共重合体のゴムとの相溶性を向上させることができる。上記共重合体中のハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物単位の結合量は、65質量%以下が好ましく、5〜45質量%が更に好ましい。共重合体中のハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物単位の結合量が65質量%を超えると、ゴム組成物の弾性率が高くなり、耐クラック性が悪化する。
【0025】
上記共重合体の製造に用いるカチオン重合開始剤は、陽イオンを成長活性種とする連鎖重合反応であるカチオン重合を開始するための試薬であり、特に限定されるものではないが、例えば、三塩化ホウ素(BCl3)、塩化アルミニウム(AlCl3)、四塩化スズ(SnCl4)、四塩化チタン(TiCl4)、五塩化バナジウム(VCl5)、三塩化鉄(FeCl3)、三フッ化ホウ素(BF3)、クロロジエチルアルミニウム(Et2AlCl)、ジクロロエチルアルミニウム(EtAlCl2)等のルイス酸が挙げられ、これらの中でも四塩化チタンが好ましい。
【0026】
上記共重合体の重量平均分子量は2000〜50000である。上記共重合体の重量平均分子量が2000未満では、インナーライナーの耐破壊性が低下し、200000を超えると、有機化された層状粘土鉱物の層間に共重合体がインターカレートし難くなる。
【0027】
上記共重合体は、例えば、高分子合成の実験法(化学同人社)201ページにあるような方法、高分子化学第18巻389〜395ページの報告にある方法でカチオン重合することにより製造することができる。
【0028】
上記共重合体の製造に用いる溶媒としては、通常カチオン重合に用いられる溶剤を適宜用いることができ、例えば脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の炭化水素溶媒等が用いられる。この中でも芳香族炭化水素が好ましく、トルエンがより好ましい。かかる脂肪族炭化水素の具体例としては、ペンタン、ヘキサン等を、芳香族炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を、またハロゲン化炭化水素の具体例としては、クロロメタン、クロロエタン、塩化メチレン、1,1-ジクロロエタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等を例示できる。これらは、一種単独でも、二種以上を混合して使用してもよい。更に、これらの溶媒と共に少量の他の溶媒、例えば酢酸エチル等の酢酸エステルやニトロエタン等のニトロ基を持つ有機化合物を併用してもよい。
【0029】
上記共重合体の製造における重合温度は、-100℃〜-30℃が好ましい。-100℃未満では、重合反応の進行が遅く、-30℃を超えると、連鎖移動反応が激しく、分子量が著しく低下する傾向があるので好ましくない。
【0030】
また、上記共重合体の重合反応は、モノマーを実質的に液相下に保つのに充分な圧力下で行うのが望ましい。即ち、反応圧力は重合される各モノマーや、使用する溶媒及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力下で重合させることができ、このような高い圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で達成される。
【0031】
上記共重合体の製造においては、一般にモノマー、カチオン重合開始剤、溶媒等の製造に使用する全ての物質から、水、酸素、二酸化炭素等の触媒毒を除去するのが好適である。
【0032】
なお、上記共重合体と一見すると類似している共重合体として、エクソン社のエクスプロ(商品名)が市販されている。しかしながら、本発明のインナーライナー用ゴム組成物を構成する共重合体がモノマーの1つとしてハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物を用いて製造されるのに対し、該エクスプロは、イソブチレンと芳香族ビニル化合物とから共重合体を製造し、その後、ハロゲン化して製造される点で異なる。また、該エクスプロは、ハロゲン化された芳香族ビニル化合物単位の結合量が約2質量%以下と本発明に用いる共重合体よりも著しく低く、且つ分子量も30万〜50万と本発明に用いる共重合体よりも著しく大きい。これら物性の違いは主に製造法の違いに起因し、共重合体を製造した後にハロゲン化するよりも、ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物をモノマーの1つとして用いる方が、低分子量で且つハロゲン基含有量の高い共重合体を容易に得ることができる。
【0033】
本発明のインナーラーナー用ゴム組成物に用いるゴム成分としては、(i)天然ゴム(NR);(ii)スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H-NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム及びハロゲン化p-メチルスチレンを含有するイソブチレン・p-メチルスチレン共重合体等の合成ゴムが挙げられ、1種単独で用いても2種以上をブレンドして用いてもよい。これらゴム成分の中でも、空気透過性が低い点で、ブチルゴム及びハロゲン化p-メチルスチレンを含有するイソブチレン・p-メチルスチレン共重合体が好ましい。
【0034】
上記共重合体の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対し1〜50質量部が好ましい。上記共重合体の配合量が1質量部未満では、後述する層状粘土鉱物にインターカレートする共重合体の量が少ないため、ゴム組成物の空気不透過性を向上させる効果が小さく、50質量部を超えると、ゴム組成物の弾性率が高くなり、耐クラック性が悪化する。
【0035】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物を構成する有機化された層状粘土鉱物とは、層状粘土鉱物中のNa+等の交換性カチオンを、オニウム塩から生じるオニウムイオン等で置換して有機化したものである。
【0036】
上記層状粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、及びマイカ等が挙げられる。これらの層状粘土鉱物は、天然のものでも、合成されたものでもよい。また、これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これら層状粘土鉱物の中でも、有機溶剤に対する膨潤性に優れオニウムイオン等がインターカレートし易く、更に上記共重合体及びゴム成分と混練りした際に共重合体及びゴム成分の浸入により層間距離が拡大して、ゴムマトリックス中でナノオーダーで分散できる点で、モンモリロナイト及びマイカが好ましい。
【0037】
上記有機化された層状粘土鉱物としては、有機オニウム塩での有機化により得られたものが好ましく、4級オニウム塩での有機化により得られたものがより好ましい。有機オニウム塩としては、特にアンモニウム塩が好ましく、該有機オニウム塩を構成する有機オニウムイオンとしては、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン,オクチルアンモニウムイオン,2-エチルヘキシルアンモニウムイオン,ドデシルアンモニウムイオン,オクタデシルアンモニウムイオン,ジオクチルジメチルアンモニウムイオン,トリオクチルアンモニウムイオン,ジステアリルジメチルアンモニウムイオン,トリメチルオクタデシルアンモニウムイオン,ジメチルオクタデシルアンモニウムイオン,メチルオクタデシルアンモニウムイオン,トリメチルドデシルアンモニウムイオン,ジメチルドデシルアンモニウムイオン,メチルドデシルアンモニウムイオン,トリメチルヘキサデシルアンモニウムイオン,ジメチルヘキサデシルアンモニウムイオン,メチルヘキサデシルアンモニウムイオン,ジメチル,水素化獣脂,2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、ジメチルジ水素化獣脂アンモニウムイオン,1-ヘキセニルアンモニウムイオン,1-ドデセニルアンモニウムイオン,9-オクタデセニルアンモニウムイオン(オレイルアンモニウムイオン),9,12-オクタデカジエニルアンモニウムイオン(リノールアンモニウムイオン),9,12,15-オクタデカトリエニルアンモニウムイオン(リノレイルアンモニウムイオン)等を挙げることができる。
【0038】
上記層状粘土鉱物の有機化は、例えば、有機オニウムイオンを含む水溶液中に層状粘土鉱物を浸漬した後、該層状粘土鉱物を水洗して過剰な有機オニウムイオンを除去することにより得られる。こうして得られた有機化された層状粘土鉱物は、ゴム成分に配合、混練りすることにより、層状粘土鉱物がゴム成分中にナノオーダーの微粒子として分散され、極めて効果的にゴム組成物の空気不透過性を向上させることができる。
【0039】
上記有機化された層状粘土鉱物の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し1〜100質量部が好ましい。有機化された層状粘土鉱物の配合量が1質量部未満では、ゴム組成物の空気不透過性を向上させる効果が小さく、100質量部を超えると、硬さが増し、耐クラック性が悪化する。
【0040】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物には、上述した共重合体、ゴム成分及び有機化された層状粘土鉱物の他、通常ゴム業界で用いられている、カーボンブラック、シリカ等の充填剤、アロマチックオイル等の軟化剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等の各種配合剤を適宜配合することができる。
【0041】
本発明の空気入りタイヤは、上記インナーライナー用ゴム組成物をインナーライナーに用いたことを特徴とする。上述した本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、空気透過性が従来のインナーライナー用ゴム組成物より著しく低いため、かかるゴム組成物をインナーライナーに用いた本発明の空気入りタイヤは、空気保持性が著しく高い。
【0042】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、 本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(共重合体A製造例)
乾燥し、窒素置換された300mLのナスフラスコに、トルエン200mL、イソブチレン単量体18.2g、及びp-クロロメチルスチレン単量体7.8gを仕込み、これに開始剤TiCl4 0.75mmolを加えた後、-78℃で2.5時間重合を行った。重合系は重合開始から終了まで、全く沈殿は見られず均一で透明であった。重合転化率は、ほぼ100%であった。重合溶液にメチルアルコールを加えて乾燥し、共重合体Aを得た。この共重合体についてイソブチレン結合量、クロロメチルスチレン結合量及び重量平均分子量を測定し、表1に示す結果を得た。なお、重合体中のイソブチレン結合量及びクロロメチルスチレン結合量は、1H-NMRスペクトルの積分比より算出した。また、重量平均分子量(Mw)は、示差屈折計(RI)を用いたゲルパーミエイションクロマトグラフィ〔GPC;東ソー製HLC−8020、カラム;東ソー製GMH−XL(2本直列)〕により測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。
【0044】
(共重合体B製造例)
乾燥し、窒素置換された300mLのナスフラスコに、トルエン200mL、イソブチレン単量体13.6g、スチレン単量体7.6g、及びp-クロロメチルスチレン単量体9.1gを仕込み、これに開始剤TiCl4 0.75mmolを加えた後、-78℃で2.5時間重合を行った。重合系は重合開始から終了まで、全く沈殿は見られず均一で透明であった。重合転化率は、ほぼ100%であった。重合溶液にメチルアルコールを加えて乾燥し、共重合体Bを得た。この共重合体についてイソブチレン結合量、スチレン結合量、クロロメチルスチレン結合量及び重量平均分子量を測定し、表1に示す結果を得た。なお、重合体中のイソブチレン結合量、スチレン結合量及びクロロメチルスチレン結合量は、1H-NMRスペクトルの積分比より算出した。
【0045】
(共重合体C製造例)
乾燥し、窒素置換された300mLのナスフラスコに、塩化メチレン200mL、イソブチレン単量体19.3g、及びp-クロロメチルスチレン単量体4.8gを仕込み、これに開始剤TiCl4 0.75mmolを加えた後、-78℃で2.5時間重合を行った。重合系は重合開始から終了まで、全く沈殿は見られず均一で透明であった。重合転化率は、ほぼ100%であった。重合溶液にメチルアルコールを加えて乾燥し、共重合体Cを得た。この共重合体についてイソブチレン結合量、クロロメチルスチレン結合量及び重量平均分子量を測定し、表1に示す結果を得た。なお、重合体中のイソブチレン結合量及びクロロメチルスチレン結合量は、1H-NMRスペクトルの積分比より算出した。
【0046】
【表1】
【0047】
上記のようにして製造した共重合体を用いて、表2に示す配合のゴム組成物を調製し、該ゴム組成物に対し下記に示す方法で空気透過性を評価した。結果を表2に示す。
【0048】
<空気透過性>
空気透過試験機M−C1(東洋精機(株)製)を用いて60℃で各ゴム組成物の空気透過率を測定し、比較例1のゴム組成物の空気透過率を100として指数表示した。指数値が小さい程、空気透過率が小さく良好であることを示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2から、比較例1のゴム組成物に有機化モンモリロナイトを配合した比較例2のゴム組成物は、空気不透過性の向上が小さいことが分かる。これに対し、有機化モンモリロナイトと共に少なくとも分子中にクロロメチルスチレン単位を含む共重合体を配合した実施例のゴム組成物は、比較例2のゴム組成物より更に空気透過性が低いことが分かる。特に、実施例2で用いた共重合体Bは、分子中にスチレン単位を含むため、実施例1で用いた共重合体Aよりもゴム成分との相溶性に優れ、その結果、実施例2のゴム組成物は実施例1のゴム組成物より更に空気透過性が低かった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のインナーライナー用ゴム組成物よりも空気透過性が更に低いゴム組成物を提供することができる。また、該ゴム組成物をインナーライナーに用いることにより、従来の空気入りタイヤよりも空気保持性の高いタイヤを提供することができる。
Claims (12)
- ゴム成分に、(a)イソブチレン及び(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体と、有機化された層状粘土鉱物とを配合してなり、
前記共重合体の重量平均分子量が2000〜50000であり、
前記ゴム成分が、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化p-メチルスチレンを含有するイソブチレン・p-メチルスチレン共重合体及びそれらのブレンドからなる群から選択される
ことを特徴とするインナーライナー用ゴム組成物。 - ゴム成分に、(a)イソブチレン、(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物及び(c)ハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体と、有機化された層状粘土鉱物とを配合してなり、
前記共重合体の重量平均分子量が2000〜50000であり、
前記ゴム成分が、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化p-メチルスチレンを含有するイソブチレン・p-メチルスチレン共重合体及びそれらのブレンドからなる群から選択される
ことを特徴とするインナーライナー用ゴム組成物。 - 前記共重合体中の(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物単位の結合量が5〜70質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
- 前記共重合体中の(c)ハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物単位の結合量が65質量%以下であることを特徴とする請求項2に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
- 前記(b)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物がp-ハロメチルスチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
- 前記共重合体の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し1〜50質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
- 前記ゴム成分がブチルゴムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
- 前記ゴム成分がハロゲン化p-メチルスチレンを含有するイソブチレン・p-メチルスチレン共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
- 前記層状粘土鉱物がモンモリロナイト及び/又はマイカであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
- 前記有機化された層状粘土鉱物が4級オニウム塩での有機化により得られたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
- 前記有機化された層状粘土鉱物の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対し1〜100質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインナーライナー用ゴム組成物。
- 請求項1〜11の何れかに記載のインナーライナー用ゴム組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤ。
Priority Applications (1)
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