JP4962757B2 - 空間3自由度パラレル機構の制御方法および空間3自由度パラレル機構 - Google Patents

空間3自由度パラレル機構の制御方法および空間3自由度パラレル機構 Download PDF

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Description

本発明は、工作機械の主軸頭やテーブルを3自由度で移動位置決めさせるパラレル機構の制御方法に関し、特に航空機部品を加工するミーリング機械に適用するに好適な空間3自由度パラレル機構の制御方法に関する。
この種のパラレル機構としては、米国特許US6,431,802Bに開示された図10のようなものがある。これは、3本のボールスクリュー5でZ軸方向に駆動される3つのキャリッジ3により主軸頭12をパラレル駆動するものである。3つのキャリッジ3と主軸頭12は3つの連結ロッド(8、9)により連結されている。キャリッジ3と連結ロッド8との連結手段はZ軸に垂直なピン10により、主軸頭12と連結ロッド9との連結手段はユニバーサルジョイント11によりなされている。この機構は簡略であるという利点がある。しかし、主軸頭の位置、角度を主軸頭から離れた3つのキャリッジ3の位置で検出し制御するため、連結ロッド8,9などの部品寸法に加工誤差があると直接位置決め誤差に響いてしまう。また、連結ロッド8,9等の熱変形による誤差が補正できない、といった問題点があった。このような誤差が出たまま制御すると、位置決め誤差が悪くなる、位置制御の制御性(応答性)が悪くなるという問題点があった。また、ピン10による連結であるので、換言するとロッド8,9両端のジョイントの自由度の和が4であり5より少ないため、連結ロッド9に曲げ応力が掛かり機構としての剛性が弱くなる、という問題点があった。
また、ヨーロッパ特許EP1,245,349Bには、図11に示すようなものが開示されている。これは、Z方向の3本のガイドウエイ2にスライダ4を乗せ、各スライダ4にペアとなったアーム3を連結し6本のアーム3で主軸頭に相当するヘッドプラットホーム5を支承する。各アーム3とスライダ4及びヘッドプラットホーム5との連結には球面ジョイント6,7が用いられる。この装置は球面ジョイント6、7を使用しているのでアーム3に曲げ応力が掛からず剛性が高い。しかし、ヘッドプラットホーム5から離れたスライダ4の位置でヘッドプラットホーム5の位置姿勢を検出し制御するため、上記と同様に、アーム3などの部品寸法に加工誤差があると直接位置決め誤差に響いてしまう。また、アーム3等の熱変形による誤差が補正できない、といった問題点があった。このような誤差を残したまま制御すると、位置決め誤差が悪くなる、位置制御の制御性(応答性)が悪くなるという問題点がある。また、隣接したアーム3とスライダ4、ガイドウエイ2が干渉するため、ヘッドプラットホーム5の旋回範囲が小さくなるという問題点があった。
日本特許、特開平11−10575号には、図12に示すようなものが開示されている。これは、エンドプレート6を駆動する3本のリンク7及びボールねじ19の他に、エンドプレート6の位置姿勢を検出するためのマスト1を設け、このマスト1のベースプレート3位置付近での位置姿勢を検出するようにしたものである。これも、位置検出精度は上記2件のものより良くなるものの、エンドプレート6から離れた位置で検出しているため、上記と同様に、マスト1の部品寸法に加工誤差があると直接位置決め誤差に響いてしまう。また、マスト1等の熱変形による誤差が補正できない、といった問題点があった。このような誤差を残したまま制御すると、位置決め誤差が悪くなる、位置制御の制御性(応答性)が悪くなるという問題点がある。また、この装置では、検出されたマスト1の3軸(l、θ、φ)を逆変換して各アクチュエーターの指令値にフィードバックをかけているが、逆変換関数の機構パラメータに製造誤差、熱変位等により実際の機械と誤差が生じた場合、いかんとも対処できないという問題点があった。
また、出願人はかって、特開2002−263973号で、6本のロッドでトラベリングプレートを保持するパラレルリンク機構であって演算位置情報と測定位置情報から機構パラメータの校正を行うものを提案した。しかしながら、測定位置情報の基礎となる現在位置の検出器が6個のモータ位置検出用エンコーダと各ロッドの回転角を検出する6個の角度センサであるので、トラベリングプレートの位置を直接的に検出するものではない。このため、12個の検出器により位置を検出し5自由度のトラベリングプレートの機構パラメータを推定しようとするものであり、演算負荷が大きいという問題点があった。また、トラベリングプレートから離れた箇所で現在位置を検出しフィードバックをかけて制御することになるから、機構パラメータに誤差があると、位置決め誤差が悪くなる、位置制御の制御性(応答性)が悪くなる、という問題点があった。さらに、検出軸が12軸となって機構が複雑であるという問題点もあった。
米国特許US6,431,802B ヨーロッパ特許EP1,245,349B 特開平11−10575号 特開2002−263973号
本発明は、上記の問題点を解決するためなされたものであり、その目的とするところは、機構を構成する部品の加工誤差、熱変位等による誤差を排除することにより、位置決め精度を高めると共に、位置制御の制御性(応答性)の良い空間3自由度パラレル機構の制御方法および装置を提供することにある。
上記の目的を達成するため、第1の態様の発明では、相対的に静止した系に3つの自由度で支承された可動体を3つのアクチュエーターにより駆動し3自由度で移動させる空間3自由度パラレル機構の制御方法であって、前記3つの自由度に対応した3軸の座標系での可動体の座標位置を検出する3つの可動体位置検出器が、各軸の軸上若しくは軸と平行な線上であって前記可動体の近傍に配置され、前記可動体の3軸の指令位置を機構パラメータに基づいて逆変換し前記アクチュエーターの逆変換指令位置に変換する指令位置逆変換手順と、前記3つの可動体位置検出器で検出された前記可動体の実測位置を前記機構パラメータに基づいて逆変換し前記アクチュエーターの逆変換実測位置を求める実測位置逆変換手順と、前記逆変換指令位置に前記逆変換実測位置をフィードバックして前記可動体の位置を制御する制御手順と、複数の前記逆変換指令位置とそれにそれぞれ対応する複数の前記逆変換実測位置の値を記憶する記憶手順と、前記記憶された複数の逆変換指令位置及び対応する逆変換実測位置に基づいて前記指令位置から前記逆変換指令位置への逆変換式に含まれる前記機構パラメータを同定する機構パラメータの同定手順と、所定のキャリブレーションタイミングで前記記憶された逆変換指令位置及び逆変換実測位置に基づいて同定された機構パラメータに従って古い機構パラメータを補正するキャリブレーション手順と、を備えることを特徴とする空間3自由度パラレル機構の制御方法が提供される。
上記のように構成すると、複数の逆変換指令位置及び対応する逆変換実測位置に基づいて機構パラメータを同定する同定手順を有するから、設計値だけではなく機構部品の加工誤差等も考慮に入れた機構パラメータが同定される。さらに、その機構パラメータが刻々と得られる逆変換指令位置及び対応する逆変換実測位置に基づいて補正、キャリブレーションされるから機構部品の熱変位にも対応して現在の正確な機構パラメータにより制御され、より正確な位置決めがされる。さらに、より正確な最新の機構パラメータによる位置を基礎にフィードバック制御がなされるから位置制御の制御性(応答性)が格段に良くなり、動作速度や軌跡精度が高いという優れた効果を奏する。
ここで、第2の態様の発明として、前記記憶された逆変換指令位置及び逆変換実測位置に基づいて前記所定のキャリブレーションを行うタイミングが、前記可動体が工作物の加工を行っていないタイミングである、ことを特徴とすることができる。このように構成すると、一つの工作物を加工中に機構パラメータが変化することが無くなり、工作物に機構パラメータの変化(補正)による段差等が付かないという効果がある。
そして、第3の態様の発明として、前記複数の逆変換指令位置の基礎となる指令位置が、機構パラメータの同定に必要な特別な複数の位置である、ことを特徴とすることができる。このように構成すると、通常の切削加工ではめったに移動しない位置まで機械を移動位置決めし、バランスのとれた位置で同定情報を収集するから、機構パラメータ同定の正確さが増し、また、同定の収束計算が速いという効果がある。
第4の態様の発明として、前記実測位置逆変換手順における前記可動体の実測位置の検出を、前記可動体による加工物の加工中に行うことを特徴とすることができる。このように構成すると、特別の動作をさせなくても機構パラメータの同定ができるという効果がある。また、実際の切削加工中の機構部品の熱変位に基づいた同定ができるという効果がある。
第5の態様の発明として、前記機構パラメータの同定手順が、パラメータ誤差が所定許容値以下になるまで収束計算を行う収束計算手順を備える、ことを特徴とすることができる。このように構成すると、パラメータ誤差を確実に許容値以下にすることができ、加工精度が向上するという効果がある。
第6の態様の発明として、前記機構パラメータの同定手順が、前記機構パラメータの数より多い数の前記逆変換式が得られるような多数の前記指令位置での逆変換実測位置に基づいて最小2乗法により算定される最小2乗法手順を備える、ことを特徴とすることができる。このように構成すると、冗長度を持った指令位置情報、検出位置情報から正しい機構パラメータに高速で近づくことができるという効果がある。
以上述べた6つの態様の発明は、いずれも方法の発明として記載したが、これらは物の発明として定義することも可能である。そこで、第7の発明の態様として、相対的に静止した系に3つの自由度で支承された可動体を3つのアクチュエーターにより駆動し3自由度で移動させる制御装置を有する空間3自由度パラレル機構であって、前記3つの自由度に対応した3軸の座標系での可動体の座標位置を検出する3つの可動体位置検出器が、各軸の軸上若しくは軸と平行な線上であって前記可動体の近傍に配置されていることと、前記制御装置が、前記可動体の3軸の指令位置を機構パラメータに基づいて逆変換し前記アクチュエーターの逆変換指令位置を求める指令位置逆変換手段と、前記3つの可動体位置検出器で検出された前記可動体の実測位置を前記機構パラメータに基づいて逆変換し前記アクチュエーターの逆変換実測位置を求める実測位置逆変換手段と、前記逆変換指令位置に前記逆変換実測位置をフィードバックして前記3つのアクチュエーターを駆動し前記可動体の位置を制御する制御手段と、複数の前記逆変換指令位置にそれぞれ対応する複数の前記逆変換実測位置の値を記憶する逆変換指令位置逆変換実測位置記憶手段と、前記逆変換指令位置逆変換実測位置記憶手段に記憶された複数の逆変換指令位置及び対応する逆変換実測位置に基づいて前記指令位置から前記逆変換指令位置への逆変換式に含まれる前記機構パラメータを同定する機構パラメータの同定手段と、所定のキャリブレーションタイミングで前記記憶された逆変換指令位置及び逆変換実測位置に基づいて同定された機構パラメータに従って古い機構パラメータを補正するキャリブレーション手段と、を備えることを特徴とする空間3自由度パラレル機構、が提供される。
このように構成すると、可動体の座標位置を検出する3つの可動体位置検出器が可動体の近傍に配置されているため、可動体から位置検出器までの部材の熱変形等による位置検出誤差が生じにくく、可動体のより正確な位置を検出しフィードバックすることができる。このため、より正確な位置制御が可能になると共に同定される機構パラメータもより正確になるという効果がある。また、古い機構パラメータを補正するキャリブレーション手段を備えるから、より正確な最新の機構パラメータを用いてのフィードバック制御が可能になり、その結果、制御の応答性(速応性)に優れ、動作速度や軌跡精度が高いという優れた効果がある。
さらに、第8の態様の発明として、前記アクチュエーターの位置を検出するアクチュエーター位置検出器を備え、前記3つの可動体位置検出器がそれぞれ前記アクチュエーター位置検出器よりも前記可動体の近傍に配置されていることを特徴とすることができる。このように構成すると、3つの可動体位置検出器が可動体のより近傍に確実に配置されるため、より正確な位置を検出しフィードバックすることができる。このため、制御性がより良くなるという優れた効果を奏する。
以上説明したように、本発明によれば、複数の逆変換指令位置及び対応する逆変換実測位置に基づいて機構パラメータを同定する同定手順を有するから、設計値だけではなく機構部品の加工誤差等も考慮に入れた機構パラメータが同定される。さらに、その機構パラメータが刻々と得られる逆変換指令位置及び対応する逆変換実測位置に基づいて補正、キャリブレーションされるから機構部品の熱変位にも対応して現在の正確な機構パラメータにより制御され、より正確な位置決めがされると共に、より正確な機構パラメータによる位置を基礎にフィードバック制御がなされるから位置制御の制御性(応答性)が格段に良くなるという優れた効果を奏する。その結果、制御の応答性(速応性)に優れ、動作速度や軌跡精度が高いという優れた効果がある。
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す空間3自由度パラレル機構の斜視図である。円筒状のハウジング(図示せず)に3本の直線ガイド21が固定されている。図示しないハウジングは相対的に静止した系である。3本の直線ガイド21は互いに平行でZ軸方向を向き120°毎に配置されている。その3本の直線ガイド21上に案内されZ軸方向に移動自在に3つの従動スライダ22が設けられている。その3つの従動スライダ22に環状の第1の可動サポート体23が固定されている。従って、第1の可動サポート体23はZ軸方向にのみ移動自在である。3つのうち1つの従動スライダ22にリニアエンコーダ45が組み込まれており、第1の可動サポート体23のZ軸位置を検出するZ軸位置検出器45をなしている。
その第1の可動サポート体23に半径中心方向に突出して設けられた軸24により、B軸方向に回転自在に第2の可動サポート体25が支承されている。第2の可動サポート体25は環状の部品である。第2の可動サポート体25の回転位置は軸24に設けられたロータリエンコーダ47により検出される。このロータリエンコーダ47は第2の可動サポート体25の回転軸であるB軸位置を検出するB軸位置検出器47をなしている。
第2の可動サポート体25上の上記B軸と垂直な方向に、中心を通る中心軸26がロータリージョイント27,27により回転自在に第2の可動サポート体25に支承されている。一方のロータリージョイント27にはロータリエンコーダ46が組み込まれ中心軸26の回転位置すなわちA軸位置を検出する。ロータリージョイント27に組み込まれたロータリエンコーダ46はA軸位置を検出するA軸位置検出器46をなしている。上記の第1の可動サポート体23、第2の可動サポート体25、中心軸26により可動体サポート体を構成する。
中心軸26の中央部には主軸頭30が一体に固定されている。主軸頭30は可動体を成すものであり、Z軸方向に移動可能であり、A軸、B軸の回りを回転可能である。換言すれば、X軸、Y軸方向の移動、C軸回りの回転を拘束されている。主軸頭30には主軸モータが搭載され主軸に装着された工具31を回転駆動し加工物を切削加工する。A軸とB軸との交差点32が主軸頭30の回転中心である。
一方、3本の直線ガイド21には従動スライダ22とは別に駆動スライダ33が配設され直線移動自在に支持されている。各駆動スライダ33は、各直線ガイド21に一端が固定された直線アクチュエーター34の出力端に連結され、Z軸方向に直線駆動され移動される。各直線アクチュエーター34にはアクチュエーター軸モータ38が内蔵されている。各駆動スライダ33、33、33と主軸頭30の底部は各ロッド35、35、35により連結されている。すなわち、各駆動スライダ33と各ロッド35とは3自由度を有する球面ジョイント36により連結され、各ロッド35と主軸頭30とは2自由度を有するユニバーサルジョイント37により連結されている。
ここで、3つの駆動スライダ33、33、33のZ軸位置座標をそれぞれU、U、Uとし、その位置座標を検出するリニアエンコーダ41、42、43はそれぞれの駆動スライダ33、33、33に組み込まれている。また、主軸頭30のZ軸位置を検出するリニアエンコーダ45は1つの従動スライダ22の中に、A軸の位置座標を検出するロータリエンコーダ46はロータリージョイント27の中に、B軸の位置座標を検出するロータリエンコーダ47は軸24の中に、それぞれ組み込まれていることは前述の通りである。このように、主軸頭30の位置(z,A,B)を直接的にエンコーダからなる各位置検出器45、46、47で検出できる点が、本実施の形態の利点である。このため主軸頭30の現在位置検出精度が本質的に高くなる。
従って、3つの直線アクチュエーター34,34,34を駆動し、3つの駆動スライダ33,33,33のZ軸上の位置(U、U、U)を制御することにより主軸頭30のZ軸、A軸、B軸の位置を制御することができる。例えば、3つの駆動スライダ33,33,33(U、U、U)を同時に同じ距離だけ負方向へ移動させると主軸頭30はその姿勢を保ったまま−Z軸方向に移動する。また、図面で上の直線ガイド21上の駆動スライダ33(U)を前進させ、下の2本の直線ガイド21,21上の駆動スライダ33,33(U、U)を後退させると、主軸頭30はB軸の回りを回転する。3つの駆動スライダ33,33,33の位置(U、U、U)により主軸頭30の位置姿勢がどのように変わるかは、ロッド35の長さ、主軸頭30での連結の位置、等で決定される機構パラメータPにより決定される。換言すれば、主軸頭30のZ軸、A軸、B軸位置は3つの駆動スライダ33,33,33の位置(U、U、U)と機構パラメータPの関数として表現される。
次に、主軸頭30の座標(z、A、B)から3つの直線アクチュエーター34,34,34つまり3つの駆動スライダ33,33,33のZ軸上の位置(U、U、U)を求める逆変換式について説明する。
図2は、図面上方の駆動スライダ33の位置Uを求める逆変換式を説明する空間3自由度パラレル機構の斜視図である。主軸頭30には工具31が装着されている。主軸頭30の回転中心の座標がOである。ロッド35のジョイント位置は、トラベリングプレート座標系から見るとSOTであり、グローバル座標系から見るとSである。直線ガイド21の前端の座標がS、後端の座標がS、駆動スライダ33の座標がUである。ロッド35の長さをRLとする。
主軸頭30の回転中心の座標Oは、数式1で表される。
Figure 0004962757
トラベリングプレート座標系から見たロッド35のジョイント位置SOTは、数式2で表される。
Figure 0004962757
これにより、グローバル座標系におけるジョイント位置Sが数式3のように表現される。
Figure 0004962757
ここで、Rは数式4で示されるマトリックスである。
Figure 0004962757
直線ガイド21の両端の位置をS、Sとし、S、Sの辺と、ロッド35の辺と、S,U(駆動スライド33の位置)の辺とからなる三角形に余弦定理を適用すれば、ロッド35の長さをRLとして、数式5のようになる。
Figure 0004962757
ここで、最後の余弦項が+になっているのは、S21=S−Sと逆方向のベクトルとなっているためである。
数式5をアクチュエーター座標Uについて解けば数式6が得られる。
Figure 0004962757
このときアクチュエーター座標Uは、主軸頭30の位置X=(z,A、B)の関数として得られるので、数式7のように表現することができる。
Figure 0004962757
ここで、数式8で表されるベクトルPは、アクチュエーターの位置U、U、Uと主軸頭30の位置及び姿勢X=(z,A、B)との幾何学的な関係を定義する機構パラメータであり、たとえば、ロッド35の長さや、主軸頭30上のジョイント位置、駆動スライド33の位置、角度、等を表す「機構パラメータ」である。ここで、nは機構パラメータの数である。
Figure 0004962757
次に、機構パラメータの同定演算について説明する。主軸頭位置Xは数式9で表される。
Figure 0004962757
ここで、iが1からkまであるのは、k箇所での主軸頭位置を示している。
主軸頭位置Xにおけるアクチュエーター座標U、U、Uへの逆変換式は、数式10で表現することができる。
Figure 0004962757
それぞれの機構パラメータについて全微分すると、数式11が得られる。
Figure 0004962757
k個の主軸頭位置について上式がk組得られることになる。つまり、k個の主軸頭位置について3k個の逆変換式が得られることになる。機構パラメータの数nより多い数の逆変換式が得られるように(n≧3kとなるように)、主軸頭位置の数kを決める。これらを行列表記すると、数式12が得られる。
Figure 0004962757
数式12を書き直せば、数式13のように表現できる。
Figure 0004962757
したがって、パラメータ誤差dPは、最小2乗法による解として、数式14のようになる。
Figure 0004962757
ここでJは、疑似逆行列であり、たとえば、数式15で求められる。
Figure 0004962757
パラメータ誤差dPを求めるのに最小2乗法の手法が用いられる。
これにより、1回目の機構パラメータの推定値P1が、数式16のように求められる。
Figure 0004962757
関数fは非線形であるため、初回に求められたP1を新たな機構パラメータ値として、上記演算を数式17のように繰り返し、パラメータ誤差dPが所定の許容値ε以下になるまで、収束計算を実行する。
Figure 0004962757
図3は、主軸頭位置(z,A、B)をアクチュエーター位置(U、U、U)に逆変換しフィードバック制御をする制御装置のブロック図である。主軸頭位置指令位置X(z,A、B)と、各エンコーダ51(図1の45、46、47)からの主軸頭位置エンコーダ値X’(z’,A’、B’)をそれぞれの逆変換手段52、53でアクチュエーター座標U(U、U、U)、U’( U’、U’、U’)に逆変換する。逆変換された指令位置Uとエンコーダ値U’は各軸毎に加算器54に入れられ減算されて差分が取られ(フィードバックされ)、位置誤差として出力される。位置誤差は位置比例ゲイン増幅器55で位置ループゲインKpp倍されて出力される。位置比例ゲイン増幅器55の出力は加算器56に送られ、軸の速度出力との差分が取られ速度フィードバックがかけられる。加算器56の出力は速度比例ゲイン増幅器57で速度ループゲインKvp倍されて図示しないサーボアンプに送られ、アクチュエーター軸モータ58(図1で38、38、38)を駆動する。アクチュエーター軸モータ58の速度出力は加算器56にフィードバックされる。アクチュエーター軸モータ58の出力により各軸が動きアクチュエーター軸エンコーダ値Uが変化する。つまり、速度出力の積分処理59である。
図4は、制御装置の第2の実施例を示すブロック図である。図3と同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。上記の図3の例では、速度ループのフィードバック情報をアクチュエーター軸モータ58の速度出力から取ったが、ここでは主軸頭位置エンコーダ値X’の逆変換値U’を微分器60で微分することにより速度情報を得、速度フィードバック値として加算器56に返している。
上記図3、図4のブロック図において加算器、増幅器等がハードとして存在するかのように記載して説明したが、これらの機能は全てMPUの処理として実現されることは云うまでもない。
図5は、機構パラメータPの同定作業を行う処理を示したフローチャートである。処理が始まると、まずステップS01で、そのときの指令位置を記憶する。同時に、ステップS02で、そのときのエンコーダ測定位置を記憶する。次に、ステップS03で、現在が機構パラメータの同定を行う時機か否かが判断される。同定を行う時機か否かの判断は、使用する工作機械、工作物により異なるが、例えば、ある程度のデータが記憶蓄積されたとき、あるいは、数個の加工物の加工が終了したとき、等が考えられる。NOであればステップS01に戻り情報の収集を続け、YESであればステップS04に進み機構パラメータの同定作業を実行する。
ステップS04では、数式14にしたがってパラメータ誤差dPが計算される。パラメータ誤差dPを計算する際に、冗長度の高い情報から演算するため最小2乗法の手順が用いられる。次に、ステップS05では、従前の機構パラメータPに算出されたパラメータ誤差dPを加えて機構パラメータPの補正、キャリブレーションを行う。数式16の作業である。次に、ステップS06で、パラメータ誤差dPが許容値εより小さいか否かが判断される。所定値εより大きくNOであればステップS04に戻り、補正された機構パラメータPに基づいて新たなパラメータ誤差dPを算出する。そして、ステップS05では、従前の機構パラメータPに算出されたパラメータ誤差dPを加えて機構パラメータPの再補正、再キャリブレーションを行う。ステップS04からステップS06を何度も繰り返し、パラメータ誤差dPが許容値εより小さくなるのを待つ。数式17の収束計算の作業である。
収束計算の結果、パラメータ誤差dPが許容値εより小さくなると、ステップS07に進み、収束計算された新しい機構パラメータPを記憶する。次に、ステップS08で現在加工中の加工物の加工の終了を待つ。これは、1つの加工物の加工中に機構パラメータPが変更されると、加工面に小さな段差が付いたりするおそれがあるので加工の終了を待つのである。加工が終了すると、ステップS09に進み、機構パラメータPを置き換え更新する。そして、処理を終了する。この処理は、工作機械の加工中も同定情報の収集が行われるから、加工中の熱変位等も機構パラメータに取り入れることができるという利点がある。
上記S01〜S09の処理では、加工物を加工中に位置情報等を収集することとしたが、加工をしていない状態で工作機械を所定の特別な複数の位置に位置決めし、そのときの位置情報等から機構パラメータPの同定を行っても良い。特別な複数の位置としては、たとえば、Z=0、−100、−200、(単位はmm)、A=−30、−15、0、+15、+30、(単位は度)、B=−30、−15、0、+15、+30、(単位は度)、の組合せで、3×5×5=75の座標ができ、逆変換式が75×3=225組の位置情報が収集できる。これらの式から機構パラメータの同定を行う。通常、機構パラメータの数より式の数を多くし、最小2乗法により測定誤差の影響を最小化する。
図6は、機構パラメータPの同定に必要な特別な複数の位置に機械を位置決めし、そのときのエンコーダ位置情報から機構パラメータPの同定を行う処理を示すフローチャートである。特別な複数の位置としては上記の75個の座標を採用するものとする。ステップS11では、機構パラメータの同定時機を待つ。同定時機としては工作機械を動作させる最初の時期、同じ工作物の加工が終わって次の種類の工作物を加工する前、等が考えられる。ステップS12では、75個の座標のうち次に測定する座標に各軸を移動させる。そして、ステップS13で、指令位置を記憶し、ステップS14で、各軸エンコーダによる測定位置を記憶する。そして、ステップS15で、75の同定座標位置を全て終了したか否かを調べ、未だ終了していなければステップS12に戻り、同定情報収集を繰り返す。同定情報収集が終了したら、ステップS15からステップS16に移る。
ステップS16からステップS19は、図5のステップS04からステップS07と全く同じである。すなわち、機構パラメータPの誤差dPを計算し、機構パラメータPの補正、キャリブレーションを行い、誤差dPが許容値ε以下になるまで収束計算を行う。そして、補正された新しい機構パラメータPを記憶する。最後に、ステップS20で、従前の機構パラメータPを新しい機構パラメータPと置き換え、処理を終了する。この処理は、通常の切削加工ではめったに移動しない位置まで機械を移動位置決めし、バランスのとれた位置で同定情報を収集するから、収束計算が速いという利点がある。
図7は、本発明の第2の実施の形態を示す斜視図である。図1と同じ部材には同じ符号を付け説明を省略する。ここでは、ロッド35ではなく、3本の直線伸縮型アクチュエーター73により主軸頭30の位置姿勢が制御される。静止系のプラットフォーム71に2自由度のユニバーサルジョイント72により直線伸縮型アクチュエーター73が3本取り付けられている。直線伸縮型アクチュエーター73はエンコーダ付き駆動モータ74を有し、エンコーダ付き駆動モータ74の回転位置にしたがって出力ロッド75が伸縮する。直線伸縮型アクチュエーター73の出力ロッド75は、3自由度の球面ジョイント76により主軸頭30の底部に連結されている。3本の直線伸縮型アクチュエーター73を伸縮させることにより、主軸頭30はその位置姿勢を制御される。この実施の形態は、空間3自由度パラレル機構を構成する部品点数が少なくなるという利点がある。
図8は、本発明の第3の実施の形態を示す斜視図である。図1と同じ部材には同じ符号を付け説明を省略する。静止系のプラットフォーム81に、3つの回転型アクチュエーター82が取り付けられている。回転型アクチュエーター82はその回転位置を検出するロータリエンコーダが組み込まれている。回転型アクチュエーター82の出力端には第1のレバー83が固定され一体に回転する。第1のレバー83の先端には2自由度のユニバーサルジョイント84が連結され、そのユニバーサルジョイント84に第2のレバー85が連結されている。第2のレバー85は球面ジョイント86により主軸頭30の底部に連結されている。3つの回転型アクチュエーター82を駆動し3本の第1のレバー83を旋回させることにより、主軸頭30はその位置姿勢を制御される。この実施の形態は、回転型のアクチュエーターを用いて空間3自由度パラレル機構を構成することができるという利点がある。
図9は、図1で説明した第1の実施の形態の空間3自由度パラレル機構を横フライス盤に適用した例を、一部を透視して示す斜視図である。基台91にコラム92が立設されている。そのコラム92のY軸方向の案内93、93に案内されてヘッドストック94がY軸方向に摺動自在である。ヘッドストック94はY軸モータ95により駆動制御される。相対的に静止した系であるヘッドストック94に、図1で説明した空間3自由度パラレル機構が組み込まれている。すなわち、ヘッドストック94に3本の直線ガイド21が固定されている。その直線ガイド21に案内され直線アクチュエーターにより駆動される駆動スライダに連結された3本のロッド35により、主軸頭30の位置(z,A、B)及び工具31の先端位置が制御される。
また、基台91上にはテーブル96が設置され、X軸方向の案内97、97によりテーブル96はX軸方向に摺動自在である。テーブル96はX軸モータ98により駆動制御される。したがって、この工作機械は、X、Y、Z、A、B、の5軸制御の工作機械となる。
本発明の第1の実施の形態を示す空間3自由度パラレル機構の斜視図である。 図面上方の駆動スライダの位置U1を求める逆変換式を説明する空間3自由度パラレル機構の斜視図である。 主軸頭位置(z,A、B)をアクチュエーター位置(U、U、U)に逆変換しフィードバック制御をする制御装置のブロック図である。 制御装置の第2の実施例を示すブロック図である。 機構パラメータPの同定作業を行う処理を示したフローチャートである。 機構パラメータPの同定に必要な特別な複数の位置に機械を位置決めし、そのときのエンコーダ位置情報から機構パラメータPの同定を行う処理を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態を示す斜視図である。 本発明の第3の実施の形態を示す斜視図である。 図1で説明した第1の実施の形態の空間3自由度パラレル機構を横フライス機械に適用した例を、一部を透視して示す斜視図である。 第1の従来例を示す一部破断斜視図である。 第2の従来例を示す斜視図である。 第3の従来例を示す斜視図である。
符号の説明
21 直線ガイド
22 従動スライダ
23 第1の可動サポート体(可動体サポート体)
25 第2の可動体サポート体(可動体サポート体)
26 中心軸(可動体サポート体)
30 主軸頭(可動体)
31 工具
33 駆動スライダ
34 直線アクチュエーター
35 ロッド
36 球面ジョイント
37 ユニバーサルジョイント

Claims (8)

  1. 相対的に静止した系に3つの自由度で支承された可動体を3つのアクチュエーターにより駆動し3自由度で移動させる空間3自由度パラレル機構の制御方法であって、
    前記3つの自由度に対応した3軸の座標系での可動体の座標位置を検出する3つの可動体位置検出器が、各軸の軸上若しくは軸と平行な線上であって前記可動体の近傍に配置され、
    前記可動体の3軸の指令位置を機構パラメータに基づいて逆変換し前記アクチュエーターの逆変換指令位置に変換する指令位置逆変換手順と、
    前記3つの可動体位置検出器で検出された前記可動体の実測位置を前記機構パラメータに基づいて逆変換し前記アクチュエーターの逆変換実測位置を求める実測位置逆変換手順と、
    前記逆変換指令位置に前記逆変換実測位置をフィードバックして前記可動体の位置を制御する制御手順と、
    複数の前記逆変換指令位置とそれにそれぞれ対応する複数の前記逆変換実測位置の値を記憶する記憶手順と、
    前記記憶された複数の逆変換指令位置及び対応する逆変換実測位置に基づいて前記指令位置から前記逆変換指令位置への逆変換式に含まれる前記機構パラメータを同定する機構パラメータの同定手順と、
    所定のキャリブレーションタイミングで前記記憶された逆変換指令位置及び逆変換実測位置に基づいて同定された機構パラメータに従って古い機構パラメータを補正するキャリブレーション手順と、
    を備えることを特徴とする空間3自由度パラレル機構の制御方法。
  2. 前記記憶された逆変換指令位置及び逆変換実測位置に基づいて前記所定のキャリブレーションを行うタイミングが、前記可動体が工作物の加工を行っていないタイミングである、ことを特徴とする請求項1に記載の空間3自由度パラレル機構の制御方法。
  3. 前記複数の逆変換指令位置の基礎となる指令位置が、機構パラメータの同定に必要な特別な複数の位置である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の空間3自由度パラレル機構の制御方法。
  4. 前記実測位置逆変換手順における前記可動体の実測位置の検出を、前記可動体による加工物の加工中に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の空間3自由度パラレル機構の制御方法。
  5. 前記機構パラメータの同定手順が、パラメータ誤差が所定許容値以下になるまで収束計算を行う収束計算手順を備える、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空間3自由度パラレル機構の制御方法。
  6. 前記機構パラメータの同定手順が、前記機構パラメータの数より多い数の前記逆変換式が得られるような多数の前記指令位置での逆変換実測位置に基づいて最小2乗法により算定される最小2乗法手順を備える、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空間3自由度パラレル機構の制御方法。
  7. 相対的に静止した系に3つの自由度で支承された可動体を3つのアクチュエーターにより駆動し3自由度で移動させる制御装置を有する空間3自由度パラレル機構であって、
    前記3つの自由度に対応した3軸の座標系での可動体の座標位置を検出する3つの可動体位置検出器が、各軸の軸上若しくは軸と平行な線上であって前記可動体の近傍に配置されていることと、
    前記制御装置が、
    前記可動体の3軸の指令位置を機構パラメータに基づいて逆変換し前記アクチュエーターの逆変換指令位置を求める指令位置逆変換手段と、
    前記3つの可動体位置検出器で検出された前記可動体の実測位置を前記機構パラメータに基づいて逆変換し前記アクチュエーターの逆変換実測位置を求める実測位置逆変換手段と、
    前記逆変換指令位置に前記逆変換実測位置をフィードバックして前記3つのアクチュエーターを駆動し前記可動体の位置を制御する制御手段と、
    複数の前記逆変換指令位置にそれぞれ対応する複数の前記逆変換実測位置の値を記憶する逆変換指令位置逆変換実測位置記憶手段と、
    前記逆変換指令位置逆変換実測位置記憶手段に記憶された複数の逆変換指令位置及び対応する逆変換実測位置に基づいて前記指令位置から前記逆変換指令位置への逆変換式に含まれる前記機構パラメータを同定する機構パラメータの同定手段と、
    所定のキャリブレーションタイミングで前記記憶された逆変換指令位置及び逆変換実測位置に基づいて同定された機構パラメータに従って古い機構パラメータを補正するキャリブレーション手段と、
    を備えることを特徴とする空間3自由度パラレル機構。
  8. 前記アクチュエーターの位置を検出するアクチュエーター位置検出器を備え、前記3つの可動体位置検出器がそれぞれ前記アクチュエーター位置検出器よりも前記可動体の近傍に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の空間3自由度パラレル機構。
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