以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1を用いて説明する。図1は本発明のノズル検査装置が組み込まれたインクジェットプリンタ10の概略構造を示したものである。このインクジェットプリンタ10は、記録液としてのY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色インクが収納されたインクカートリッジ11〜14を装着したキャリッジ20が図面左右方向に移動し、一方印刷媒体25が図面上下方向に移動するとき、キャリッジ20の図面下側に設けられた印刷ヘッド30からインク滴を吐出して、印刷媒体25に所定の画像等を印刷するものである。
キャリッジ20は、キャリッジベルト41に固定され、キャリッジベルト41がキャリッジモータ40によって駆動されるのに伴って、フレーム17に固定されたガイド21に沿って移動する。また印刷媒体25は、フレーム17に固定された駆動モータ26により駆動される図示しない紙送りローラーなどによって、図面上下方向に移動する。このとき、各色インクを吐出するため印刷ヘッドに設けられた複数のノズルから、印刷画像に相応した所定のインクの滴が吐出されることによって画像が正しく印刷される。従って、複数のノズルについて、各ノズルからインク滴が吐出されないと、印刷画像を正しく印刷することができないことになる。
このため、インクジェットプリンタ10では、電源投入時や、印刷対象物を印刷する印刷ジョブの開始前、印刷ジョブの途中、印刷ジョブの終了時などといった所定の時期で、検査を行うべき検査タイミングが到来した場合に、印刷ヘッドに設けられた複数のノズルに対して、ノズルからインク滴が吐出するか否かを検査するノズル検査が行われる。ノズル検査は、インクジェットプリンタ10に設けられた検査ボックス70の位置にキャリッジ20を移動し、後述する所定の検査モードによって定められた検査処理内容に基づいて行われ、各ノズルからのインク滴の吐出の有無を検査する。そして、検査の結果、インク滴が吐出されないノズルが有った場合は、インクジェットプリンタ10に設けられたクリーニングボックス18の位置にキャリッジ20を移動し、所定のクリーニング処置を行ってノズルをクリーニングする。
これらの動作についての主な制御は、フレーム17に取り付けられたメインコントロール基板(単にメイン基板)50と、キャリッジ20の端面に取り付けられたサブコントロール基板(単にサブ基板)60とによって行われる。これらの基板は、フレキシブル基板45によって接続され、それぞれの基板間でデータがやり取りできるように構成されている。
メイン基板50には、インクジェットプリンタ10の諸動作を制御するためのCPU51と、これらの動作に関するプログラムを記録したROM52と、動作に際して必要なデータを一時的に記憶したり読み出したりするためのRAM53と、データを書き込み消去可能なフラッシュメモリ54と、サブ基板60との間でのデータのやり取りやユーザーのパーソナルコンピュータ(PC)90など外部機器との情報のやり取りを行うためのインターフェイス(I/F)55とが備えられている。後述するノズル検査のための処理ルーチンプログラムは、ROM52に記憶されている。また、RAM53は印刷データのバッファ領域を有し、PC90からI/F55を介して出力された印刷ジョブのデータをこの領域に記憶する。
PC90においては、プリンタドライバにて印刷対象物としての画像等と印刷モードが設定され、画像等のデータに印刷モードを示すデータが付随された印刷ジョブのデータとしてプリンタに送信される。印刷モードは、画像等をプリンタでどのような印刷方法で印刷すべきかを指定する情報である。ここで、印刷方法とは、例えば印刷用紙の種類や、印刷対象物のデータの種類(画像かテキストか)、印刷解像度、印刷階調数、カラー印刷かモノクロ印刷か、印刷に用いるインクの種類、双方向印刷か単方向印刷か、などを含み、プリンタが印刷を行う際の方法を示すものである。なお、PC90を用いず、インクジェットプリンタ10のみで印刷が行われる場合は、インクジェットプリンタ10内にプリンタドライバに相当する機能を設け、この設けられたプリンタドライバに相当する機能にて印刷対象物としての画像等と印刷モードが設定され、画像等のデータと印刷モードを示す情報データとが印刷ジョブのデータ(単に「印刷データ」とも呼ぶ)として生成される。
一方、サブ基板60には、ノズル検査に関する所定の動作を実行するためのロジック回路などが構成されたASIC61が備えられている。従って、CPU51がROM52に記録されたノズル検査プログラムを読み出し、ASIC61との間で種々の信号データを授受することによって、CPU51とASIC61は所定の動作を実行して、ノズル検査を実施する。
次に、図2を用いてノズル検査装置の構成について具体的に説明する。図2は、帯電したインク滴を用い、印刷ヘッドに設けられた複数のノズルそれぞれからインクを吐出させるべくインクに圧力を加え、インク吐出の有無を判定するための装置構成を示す模式図である。キャリッジ20が検査ボックス70に対して所定の位置に移動すると、インクカートリッジ11〜14から図示しない供給経路によって印刷ヘッドに供給されたインクが、インク滴39として印刷ヘッド30から吐出される。
印刷ヘッド30に設けられている複数のノズルのそれぞれには、ノズル別にインクを吐出するために圧力を発生させる機構が、図2の下側円内に示したように形成されている。すなわち、圧電素子32に電圧をかけると、圧電素子32が変形して部材33を矢印方向(図面下側)へ押し下げ、例えばインクカートリッジ11から供給されたインク38を加圧するように構成されている。この結果、ノズルプレート34に設けられたノズル35から、インクがインク滴39として吐出されるのである。従って、検査対象のノズルに対応した圧電素子32に電圧をかけることで、そのノズルについてインク滴の吐出の有無を検査することができる。圧電素子32を変形させる電圧はドライバー基板31から圧電素子32の駆動信号として出力される。ドライバー基板は31、印刷ヘッド30の近傍でキャリッジ20内に設けられ、サブ基板60と図示しない結線部材によって結線され、ASIC61からの出力信号を受けて動作する。
ここで、検査対象ノズルに対応する圧電素子がどのようにして駆動されるのかを、図3を用いて説明する。図3は、検査対象ノズルからインク滴を吐出させるべく駆動される圧電素子の駆動方法を説明するための説明図である。本実施形態では、印刷ヘッド30には、Y、M、C、K、各色に対応したノズル列35Y、35M、35C、35Kが設けられ、それぞれのノズル列にはn=1〜180まで180個のノズルが形成されている。このように、本実施形態では印刷ヘッド30には合計720個の検査対象ノズルが形成されている。そして、検査対象のノズルからインク滴を吐出させるために、YMCKのノズル列ごとに、検査対象ノズルに対応する圧電素子32(図2参照)に対して、圧電素子を変形駆動する駆動信号DRVn(n=1〜180)がドライバー基板31から出力される。
駆動信号DRVnは、以下のように生成される。メイン基板50では、一画素分に相当する画像を印刷するための区間(キャリッジ20が一画素の間隔を横切る時間でセグメントとも呼ぶ)に、PvとP1、P2、P3の合計4つのパルス信号を有する単位信号(図3の吹き出し部分)が繰り返し存在する原信号ODRVと、印刷時インク滴を吐出するノズルを特定する印刷信号PRTnが生成される。
原信号ODRVは、ノズル内でインクが固まらないように圧電素子を微振動させてインクを振動させるためのパルス信号Pvと、それぞれノズルからインク一滴分のインク滴を吐出させるパルス信号P1、P2、P3とを有している。パルス信号P1のみでは小さいサイズのドットが、パルス信号P1とP2とでは中サイズのドットが、またパルス信号P1とP2とP3とでは大きいサイズのドットが、それぞれ印刷媒体に形成される。
印刷信号PRTn(n=1〜180)は、YMCK各ノズル列について、180個のノズルのうち、インク滴を吐出させるべきノズルに対応する圧電素子に、圧電素子を駆動する駆動信号DRVnを出力させる信号である。従って、印刷信号PRTnは印刷実行時には、印刷画像に基づいて、インクを吐出すべきノズルや吐出すべき印刷データ(ドット有無やその階調値)を選択してノズルに駆動信号を選択的に供給させる信号であるが、吐出検査時には検査のためにインクを吐出すべきノズルに駆動信号を選択的に供給するノズル選択信号となる。従って以降、ノズル検査において印刷信号をノズル選択信号とも呼ぶことにする。
これらの信号は、前述したようにASIC61を介してドライバー基板に設けられたマスク回路に出力される。マスク回路は、原信号のうち、印刷信号PRTnが出力されている間の信号が圧電素子に出力されるように回路構成されている。つまり、マスク回路によって、選択された検査対象ノズルに対応した圧電素子に、Pv、P1、P2、P3のパルス信号のうち印刷信号によって選択されたパルス信号が出力されるように構成されている。こうして、駆動信号DRVnは生成される。
ノズル検査では、このようにマスク回路によって生成された駆動信号DRVnが、印刷信号つまりノズル選択信号PRTnによって選択された検査対象ノズルに出力されるという手順が、1つのノズル列の180個のノズルについて順次繰り返される。そして、この手順がYMCK総てのノズル列に適用されることによって、印刷ヘッドに設けられた総てのノズルについて対応する圧電素子が順次駆動され、吐出検査が行われるのである。
さて、図2に戻り、吐出されたインク滴39は、検査ボックス70に設けられた電極部材71に着弾する。電極部材71はメッシュ状のSUS板などの金属材料で形成され、インク滴39の着弾受け領域となっている。着弾したインク滴39は、その後この電極部材を透過し、スポンジ状の樹脂等で形成されたインク吸収体72に吸収される。このように、電極部材71にはインクが堆積しないように構成されている。また電極部材71は、フレーム17と結線部材66によって電気的に接続されている。
ASIC61が備えられたサブ基板60には、電圧発生回路62が設けられている。ASIC61は、ノズル検査時にフレーム17に回路の一端が接続(接地)されている電圧発生回路62を動作させ、フレーム17に対する所定の電圧を生成した後、所定の抵抗値を有する抵抗64を通して、結線部材65から印刷ヘッド30に所定の電圧を印加する。もとより、印刷ヘッド30において電圧が印加される部分は、インク38と電気的に導通状態にある部分(例えばノズルプレート34)である。
このように、印刷ヘッド30と電極部材71とを2つの測定端子として、この測定端子間に所定の電圧を印加しておくと、ノズルからインク滴の吐出が有った場合は、帯電したインク滴の飛翔に起因して測定端子間の電圧が変化する。従って、測定端子間の電圧値を測定することによって、電圧変化があればインク滴の吐出有りを、無ければインク滴の吐出無しを検出することができる。本実施形態におけるノズル検査装置は以上のように構成されている。
CPU51は、ROM52、RAM53、およびASIC61を制御することによって図5〜図9のフローチャートに示した各ノズル検査処理を実行するための検査モード記憶部51a、画質取得部51b、検査モード選択部51c、ノズル検査部51d、クリーニング処置決定部51eとして機能する。そして、上述した構成を有するノズル検査装置を動作させ、各ノズルについてインク滴の吐出の有無を検査する。各部は主として以下の処理を司る。
検査モード記憶部51aは、それぞれ異なる検査処理内容を定めた検査モードを記憶する。本実施形態では、検査モード記憶部51aはROM52に相当し、後述する3つの検査モードを記憶しているものとする。各検査モードは、印刷モードに基づいて検査処理内容を定めたもので、予め印刷モードごとに紐付けしてROM52に記憶されている。もとより、検査処理内容は、印刷モードに加えて、印刷ヘッドに設けられたノズルの数や、前述したセグメントの時間などインクジェットプリンタ10の印刷性能を代表する特性値に応じて定めるようにしてもよい。あるいは、PC90等から出力されたユーザーの所望する検査モードに相当するデータを、CPU51がI/F55を介して受け取り、RAM53又はフラッシュメモリ54にこのデータを記憶することによって検査処理内容を定めることとしてもよい。
印刷モード情報取得部51bは、印刷データから、印刷モードに関する情報を取得する。CPU51は、PC90から出力されRAM53に記憶された印刷データから、付随された印刷モードに関する情報のデータを読み取ることによって、印刷モードに関する情報を取得する。
検査モード選択部51cは、印刷モード情報取得部が取得した印刷モードに関する情報に基づいて、印刷モードに対応する検査モードを、検査モード記憶部が記憶した3つの検査モードから選択する。CPU51は、RAM53に記憶された印刷データから取得した印刷モードに関する情報と、ROM52に記憶されている複数の検査モードに紐付けされている印刷モードとを比較することによって、複数の検査モードの中から1つ又は2つの検査モードを選択する。
ノズル検査部51dは、選択された検査モードに従ってノズル検査を実行し、ノズルからのインクの吐出の有無を検査する。CPU51は、ASIC61との間でデータをやり取りしながら、選択された検査モードに定められた検査処理内容に基づいて圧電素子を駆動する。そして、印刷ヘッド30と電極部材71との間の電圧変化を測定し、測定の結果、圧電素子の駆動時に、電圧変化が有った場合は検査対象のノズルからはインクの吐出有りを、電圧変化が無い場合は検査対象のノズルからはインクの吐出無しを検出する。
また、ノズル検査部51dは、選択された検査モードが2つの場合、最初の検査モードによるノズル検査の検査結果に応じて、2つの目の検査モードによるノズル検査を行うか否かも決定する。
さらに、クリーニング処置決定部51eは、ノズル検査部51dが行ったノズル検査結果に基づいて、ノズル検査部51dが行った検査モードに応じたクリーニング処置を行うか否かを決定する。予め検査モードに対応するクリーニング処置方法がROM52に格納され、CPU51は、ノズル検査結果に基づいてクリーニング処置を行うと決定した場合、検査モードに対応する処置方法をROM52から読み出してクリーニング処置を行うのである。
次に、各部が機能することによって行なわれるノズル検査処理を説明する前に、このノズル検査処理にて行われるノズルの駆動方法と、ノズルからのインクの吐出有無に伴って生ずる電圧変化の様子について、図4を用いて説明しておく。
図4(a)は、ノズルが1個ずつ駆動され、各ノズルに対してインク滴の吐出有無を検出する場合を示したタイミングチャートである。図示するように、原信号ODRVとノズル選択信号PRT1およびPRT2がマスク回路に出力されたとき、ノズルn=1に対して圧電素子の駆動信号DRV1が、ノズルn=2に対して圧電素子の駆動信号DRV2がそれぞれ出力される。
ノズル選択信号PRT1とPRT2によって、図示するように、ノズルn=1に対して8セグメント間単位信号が出力され(ON)、次の8セグメント間単位信号が出力されない(OFF)状態の経過後、ノズルn=2に対して8セグメント間単位信号が出力(ON)され、次の8セグメント間単位信号が出力されない(OFF)状態となる。以降、図示しないがノズルn=3、4・・が順次ノズル選択信号によって選択され、選択されたノズルに対応する圧電素子が順次駆動される。本実施形態では、このように8セグメント間単位信号が出力され、8セグメント間単位信号が出力されない「ON」と「OFF」状態を繰り返して、検査ノズルに対応する圧電素子が駆動される。なお横軸は時間軸Tを示している。
次に、測定端子間の電圧変化について説明する。まず、ノズル選択信号PRT1によって検査開始(T=0)から時間t1まで、ノズルn=1に対して8セグメント間単位信号が出力され、インク滴が吐出する場合、測定端子間に印加された所定の電圧Veは、図示するように吐出回数に合わせて漸次電圧降下し、閾値TH1を越えて△V1分減少する。その後、ノズルn=1は時間t1からt2までの8セグメント間駆動されないためインク滴は吐出されず、その結果測定端子間電圧は徐々に上昇増加し、その後値Veまで回復する。ここで、閾値TH1は、ノズルからインク滴が吐出したか否かを判定する際に用いる閾値である。本実施例では、測定端子間の電圧の減少値が閾値TH1を超えたとき電圧の減少が有ったと判定する。実際に測定される測定端子間電圧には、プリンタ外部からの電界ノイズなどに起因して、相当の範囲で変動が生じることがある。そのため、インク滴の吐出による電圧変化を精度良く検出するため閾値を設けるのである。
次に、ノズル選択信号PRT2によって時間t2から時間t3まで、ノズルn=2に対して8セグメント間単位信号が出力(ON)され、インク滴が吐出する場合測定端子間電圧Veは吐出回数に合わせて再び漸次電圧降下し、ノズルn=1と同様に△V1分減少する。その後、ノズルn=2は時間t3からt4までの8セグメント間駆動されないため(OFF)インク滴は吐出されず、その結果測定端子間電圧は徐々に上昇増加し、その後値Veまで回復する。このような電圧変化が、インク滴の吐出が有るごとに測定端子間において繰り返し発生する。もとより、インク滴が吐出されない場合は電圧変化が生じないため、図4(a)の横破線に示したよう電圧Veは変化しない。
そこで、圧電素子の駆動開始時と終了時における測定端子間の電圧値を測定し、この間の電圧変化が閾値TH1以上あればインク滴の吐出が有り、電圧変化が閾値以上無ければインクの吐出が無いと検出することができる。
一方、図4(b)は、ノズルが3個ずつ駆動され、3個同時にインク滴の吐出有無を検出する場合を示したタイミングチャートである。図示したようにノズル選択信号PRT1〜PRT3がマスク回路に同時に出力され、ノズルn=1〜3に対応する圧電素子の駆動信号DRV1〜DRV3が、8セグメント間同時に出力される。その後、8セグメントの時間経過後に、ノズル選択信号PRT4〜PRT6がマスク回路に同時に出力され、ノズルn=4〜6に対応する圧電素子の駆動信号DRV4〜DRV6が、8セグメント間同時に出力される。以降、ノズルn=7〜9、10〜12、・・・・というように順次同時に3個のノズルが選択され、対応する圧電素子が駆動される。
このとき、検査開始(T=0)から時間t1まで、ノズル選択信号PRT1〜PRT3によってノズルn=1〜3に対して8セグメント間単位信号が出力され、3つのノズルのうち少なくとも1つのノズル(図ではノズルn=1)からインク滴が吐出すれば、測定端子間電圧Veは図示するように吐出回数に合わせて漸次電圧降下し、少なくとも△V1分減少する。その後、時間t1からt2までの8セグメント間、どの圧電素子も駆動されないためインク滴は吐出されず、その結果測定端子間電圧は上昇増加し、値Veまで回復する。
次に、ノズル選択信号PRT4〜6によって時間t2から時間t3まで、ノズルn=4〜6に対して8セグメント間単位信号が出力されたとき、3つ総てのノズルからインク滴の吐出が無い場合は、帯電したインク滴の飛翔による電圧変化は生じないため、測定端子間電圧Veは電圧変化が生じない。従って、図4(b)の下側に示したように電圧Veは変化しない。
そこで、圧電素子の駆動開始時と終了時、つまり圧電素子の駆動信号の出力開始時と出力終了時における測定端子間の電圧値を測定し、この間の電圧変化が閾値TH1以上あれば3つのノズルのうち少なくとも1個のノズルからはインク滴の吐出が有り、電圧変化が閾値TH1以上無ければ3つの連続するノズルからはインクの吐出が無いと検出することができる。つまり、3ドット連続してドット抜けがあるか否かを判定することができるのである。閾値TH1はこのように、同時にインクを吐出する複数個(本実施例では3個)のノズルのうち少なくとも1個のノズルからインク滴の吐出があれば、電圧変化が閾値TH1を超えるように設定された値である。従って、電圧変化が閾値TH1を超えない場合は、複数個のノズル総てからインク滴が吐出されないことが判定できる。言い換えれば、複数個のノズルの個数を所定の個数に設定すれば、インクを吐出しないノズルが、所定の個数連続して存在するか否かを判定することが可能となる。
一方、3個のノズルのうち1個のノズルでもインク滴が吐出しない場合に、閾値を超えないように閾値TH2を設定するようにしてもよい。この場合の電圧Veの変化の様子を図4(b)の下部に示した。図示するように、3個総てのノズルからインク滴が吐出されたときには、電圧Veは破線で示した曲線の如く電圧降下し、電圧△V2分減少する。そこで、この電圧△V2よりも所定量小さい値となる閾値TH2を設定すれば、所定のノズル数(本実施例では3個)のノズルのうち、1個以上インク滴を吐出しないノズルがあった場合は、閾値TH2を超えないので、インク滴を吐出しないノズルが所定のノズル数のうち少なくとも1個存在するか否かを判定することができる。従って、この場合は、所定の個数連続する吐出無しノズルが存在する可能性のある数について、その最大数を検出することになる。
本実施形態は、以上説明した印刷ヘッド30と電極部材71との間の電圧変化を利用し、基本的に、印刷画像の画質に応じて所定数連続するノズルに対応する圧電素子を駆動し、所定数連続してドット抜けがあるか否かを検出することで、ノズル検査時間を短縮しようとするものである。
ここで、ノズル検査の検査タイミングについて説明する。インクジェットプリンタ10は、ノズル検査を実行すべき検査タイミングとなる条件を記憶しており、この条件に基づいて検査タイミングが到来したか否かを判定し、検査タイミングが到来したと判定したときにノズル検査を行う。記憶されている検査タイミングの条件は、前回検査してからの所定の時間、所定のインク滴吐出数、所定のパス数(印刷動作のためにキャリッジを印刷媒体に対して移動した回数)、所定の印刷ページ数などである。また、検査タイミングが到来した時点が印刷媒体への印刷途中であった場合は、印刷途中にある印刷媒体への印刷が終了した時点で、ノズル検査を実行してもよい。
それでは、本実施形態でのノズル検査装置が行うノズル検査処理について、図5〜図8のフローチャートを用いて説明する。図5は本実施形態のノズル検査装置が行うノズル検査処理フローを示したもので、図6〜図8は、各検査モードについてのサブルーチン処理を示したものである。
図5に示したノズル検査処理が開始されると、まず印刷データから印刷モードに関する情報を取得する(ステップS10)。次に、取得した印刷モードに関する情報から印刷データがテキストデータか否かを判定する(ステップS15)。
本実施形態では、CPU51は、印刷モードに関する情報から印刷対象物のデータの種類(画像かテキストか)を読み取って、印刷データがテキストデータか否かを判定する。ここで、CPU51は、PC90から出力されRAM53に記憶された印刷データの拡張子を、印刷対象物のデータの種類を象徴するデータとして読み取ってもよい。もとより、拡張子以外に印刷対象物のデータの種類を象徴するデータがあればそのデータを読み取ることとしてもよい。
判定の結果、テキストデータである場合(ステップS15:YES)、検査モード1で各ノズル列についてノズル検査を行う(ステップS20)。CPU51は、ROM52に記憶された検査モードに紐付けされている印刷モードと、RAM53に記憶された印刷データから読み取った印刷モードに関する情報とを比較し、検査モード1を選択する。なお、本実施形態では、ROM52に記憶されている検査モードの一つに紐付けされている印刷モードをテキストデータとしたが、テキストデータに限らず、ドキュメントデータなど文字データであれば、検査モード1が選択されるものとしてもよい。
検査モード1によるノズル検査について、図6を用いて説明する。本実施形態では、テキストデータの印刷時、連続するドット抜けは9個以内が許容数であることとし、検査モード1は、許容数9個に1個を加えて10個同時にノズルを駆動して吐出の有無を検査する処理内容とする。こうすれば、吐出無しのノズルが検出されると、10個連続する吐出無しノズルが存在することになり、許容数を超えたことを検出することができる。もとより、プリンタの印刷性能(例えば印刷解像度)や、印刷ヘッドに設けられたノズルの総数によって、連続するドット抜けの許容数が設定されている場合は、この許容数に対応する個数分連続して吐出無しのノズルが存在するか否かを検査処理内容とすることが好ましい。
また、本実施形態では、検査モード1によるノズル検査はYMCKの各ノズル列順に行われ、まずYのノズル列35Y(図3参照)が選択され、図6のフローチャートに示したノズル検査処理が実施される。その後図6に示した検査処理が他のM、C、Kのノズル列に対して順次行われるのである。なお、後述する検査モード2〜4において実施されるノズル検査処理も、検査モード1と同様にYMCK総てのノズル列に対して順次行われるものである。
この処理が始まると、ノズル検査の処理回数を示す「m」を1とし(ステップS201)、10個のノズルを同時に駆動する(ステップS202)。CPU51は、ASIC61からPRT1〜10までのノズル選択信号を出力させ、この結果DRV1〜10が出力される。こうして1回のノズル検査処理において10個のノズルから同時にインク滴を吐出させるべく圧電素子が駆動される。
次に、測定端子間電圧を測定する(ステップS203)。CPU51はASIC61に構成された図示しない電圧測定回路を動作させ、測定端子間、つまり印刷ヘッド30と電極部材71(図2参照)間の電圧を測定する。そして、測定した電圧について、電圧の変化があるか否かを判定する(ステップS205)。
判定の結果、電圧の変化が無かった場合(S205:NO)、インク滴の吐出無しのノズルが存在すると記録する(ステップS206)。CPU51は、RAM53に設けられた所定の記録エリアに、「存在」を示すデータを書き込んで記録する。その後、本処理ルーチンは終了する。つまり、この検査処理回数目のノズル検査において、インク滴が吐出されないノズルが10個連続して存在することが判明するため、この検査処理回数目で検査モード1での検査を終了するのである。
一方、判定の結果、電圧の変化が有った場合(S205:YES)、「m+1」を新たに「m」として(ステップS207)次のノズル検査処理に移る。そして、「m」が18より大きいか否かを判定し(ステップS208)、大きくない場合は(NO)、検査対象のノズル列について、総てのノズルが検査されていないので、ステップS202に戻り、次の10個のノズルを同時に駆動する処理を行い、以降ステップS203からS208までの処理を繰り返す。そして、ステップS208にて「m」が18より大きいと判定されると(YES)、検査モード1の処理は終了して、ステップS25(図5)へ戻る。
図5に戻り、ステップS25にて、吐出無しノズルが有ったか否かを判定する。そして、吐出無しのノズルが有った場合(YES)、クリーニング処置1を行う(ステップS30)。CPU51は、RAM53の所定の記録エリアに書き込まれたデータを読み取って、「存在」を示すデータが書き込まれているか否かを判定する。そしてデータが書き込まれていた場合、クリーニング処置1を選択し実施する。
ところで、通常行われるクリーニング処置方法は、クリーニングボックス18(図1参照)に設けられた吸引手段(図示せず)によって、ノズルに詰まったインクを吸引する方法が用いられる。そして、ノズルの詰まり具合に応じて一回のクリーニング処置における吸引回数、吸引時間を増減する場合がある。そこで、ステップS30にて行うクリーニング処置1は、ドット抜けが連続しないようにすればよいことから、連続する10個のノズルのうち少なくとも1つのノズルの詰まりが解消されればよいことになるので、一回のみの吸着回数処置、あるいは吸引時間の短い処置とする。このように、検査モードに応じたクリーニング処置を行うことによって、検査モードに合わせてクリーニング処置に要する時間も短縮することができる。
その後、ノズルのクリーニング処置結果を確認するため、再びステップS20に戻って検査モード1でノズル検査を行う。このように、ステップS25にて、吐出無しのノズルが有ったと判定された場合は、ステップS30とS20の処理が繰り返して行われることになる。
ステップS25にて、吐出無しノズルが無いと判定されると(NO)、ノズル検査処理は終了し、その後まだ印刷すべき印刷データがある場合は、印刷データの印刷処理を行うことになる。CPU51は、RAM53の所定の記録エリアに「存在」を示すデータが書き込まれていないことから、吐出無しノズルは「存在」しないと判定し、ノズル検査処理を終了する。その後、CPU51は、インクジェットプリンタ10の印刷動作を制御し、RAM53のバッファ領域に格納された印刷データの印刷を開始することになる。
さて、ステップS15にてテキストデータでない(NO)と判定されると、検査モード2でノズル検査を行う(ステップS40)。CPU51は、ROM52に記憶された検査モードに紐付けされている印刷モードと、RAM53に記憶された印刷データから読み取った印刷モードに関する情報とを比較し、検査モード2を選択する。本実施形態では、テキストデータ以外は画像データであるものとして扱うこととする。
ここで、印刷データが画像データの場合、印刷される印刷物の品質が許容される必須条件として、ドット抜けの連続数に対する許容数に加えて、連続するドット抜けの発生数にも許容数が設定されているものとする。本実施形態では、Kのノズル列35Kについては、3個連続するドット抜けが5箇所までが許容数であり、Y、M、Cのノズル列35Y、35M、35Cについては、3個連続するドット抜けが8箇所まで、4個連続するドット抜けが5箇所まで、5個連続するドット抜けが3箇所までが許容数となっているものとする。この場合、総てのノズル列について、各ノズル列のうち最も少ないドット抜けの連続数となる3個連続するドット抜けが発生している発生数を調べ、この発生数がノズル列35Kについては5個まで、ノズル列35Y、35M、35Cについては8+5+3=16個までであれば、各ノズル列の許容数以下となり、印刷される印刷物の許容品質に対する十分条件を満たすこととなる。
そこで、検査モード2は、まず、各色ノズル列に対して設定されている連続するドット抜けの許容数のうち、最も少ない個数分連続して吐出無しのノズルが、許容数+1を所定数として、この所定数以上存在するか否かを検査処理内容とするものである。つまり、3個連続吐出無しのノズルが所定数存在するか否かを検査処理内容とする。具体的には、前述したように、3個のノズルから同時にインク滴を吐出し、3個のノズルのうち1個でもインクの吐出があったときに生じる電圧変化が、閾値を超えるように予めこの閾値を設定する。そして、設定したこの閾値を超えたか否かによって、3個連続吐出無しのノズルが所定数存在するか否かを検査するのである。
もとより、プリンタの印刷性能(例えば印刷解像度)やノズルの総数によって、各色ノズル列に対して連続するドット抜けに対する許容数が設定されている場合は、検査モード2の検査処理内容について、これらの許容数に基づいて吐出無しノズルの連続数およびその総数を定めることが好ましい。また、許容数をそのまま所定数とし、所定数を越えるか否かを検査処理内容としても何ら差し支えない。
また、検査モード2によるノズル検査はYMCKの各ノズル列順に行われ、本実施形態では、まずYのノズル列35Yが選択される。その後、図7のフローチャートに示したノズル検査処理が他のM、C、Kのノズル列に対して順次行われるのである。
この処理が始まると、ノズル検査の処理回数を示す「p」を1とし(ステップS401)、3個のノズルを同時に駆動する(ステップS402)。CPU51は、ASIC61からPRT1〜3までのノズル選択信号を出力させ、この結果DRV1〜3が出力される。こうして1回のノズル検査処理において3個のノズルから同時にインク滴を吐出させるべく圧電素子が駆動される。
次に、測定端子間電圧を測定する(ステップS403)。CPU51はASIC61に構成された図示しない電圧測定回路を動作させ、測定端子間、つまり印刷ヘッド30と電極部材71(図2参照)間の電圧を測定する。そして、測定した電圧について、電圧の変化があるか否かを判定する(ステップS405)。
判定の結果、電圧の変化が無かった場合(S405:NO)、インク滴の吐出無しのノズル数に「1」を加算して記録し(ステップS406)、ステップS407に進む。CPU51は、ステップS405にて電圧の変化が無いと判定するたびに、RAM53に設けられた吐出無しノズル数を記録するエリアに「1」を加算して上書きする。一方、判定の結果、電圧の変化が有った場合(S405:YES)は、何もせずステップS407に進む。
ステップS407にて、「p+1」を新たに「p」とし、「p」が60より大きいか否かを判定し(ステップS408)、大きくない場合は(NO)、検査対象のノズル列について、総てのノズルが検査されていないので、ステップS402に戻り、次の3個のノズルを同時に駆動する処理を行い、以降ステップS403からS408までの処理を繰り返す。
そして、ステップS408にて「p」が60より大きいと判定されると(YES)、ステップS410にて吐出無しノズル数は所定数以下か否かを判定する。CPU51は、RAM53に記録されたインク滴の吐出なしノズル数を読み出し、所定数つまりKノズル列では「6(=5+1)」、YMCの各色ノズル列では「17(=16+1)」と比較する。
判定の結果、所定数以上であれば(S410:YES)、許容数を超えると記録する(ステップS411)。CPU51は、許容数を超える旨のデータをRAMの所定領域に記録する。一方、所定数より少なければ(S410:NO)、何もしない。以上説明したステップS401からS411までの処理が各色ノズル列に対して行われた後、検査モード2の処理を終了して、ステップS45(図5)へ戻る。
図5に戻り、ステップS45にて、各色ノズル列における吐出無しノズル数が許容数以下か否かを判定する。CPU51は、ステップS411にてRAM53に記録されたデータが存在するか否かによって判定する。判定の結果、記録されたデータが存在せず各色ノズル列が許容数以下であった場合は(S45:YES)、ノズル検査処理は終了し、その後印刷処理が開始されることになる。
一方、判定の結果、許容数より多い色ノズル列が存在した場合は(S45:NO)、ステップS50に進み、各色ノズル列について、検査モード3で検査する処理を行う。本実施形態では、各色ノズル列について、インクが吐出されないノズル番号(位置)を調べ、それぞれ異なる個数連続している吐出無しノズルが、所定数以上存在するか否かを検出する検査処理内容を検査モード3とする。具体的には、1個ずつ検査対象ノズルを選択してインク滴を吐出し、インク敵が吐出されないノズルの位置や個数を検査する。この結果、インク滴が吐出しないノズルの位置や個数から、インク滴の吐出無しノズルの連続数が判明するので、それぞれ異なる個数連続している吐出無しノズルが、所定数以上存在するか否かを検出することが可能となる。
前述したように、印刷対象物が画像データの場合、色ノズル列ごとにドット抜けの許容品質に対する必須条件が設定されているので、検査モード3は、この必須条件を満たすか否かを検査するべく実施される。従って、本実施形態では、検査モード3によるノズル検査は、検査モード2での検査において、許容数を満たさなかった色ノズル列に対して行われる。
もとより、総ての色ノズル列に対して行うこととしてもよい。十分条件を満たしたノズル列でも、その後ステップS60にて行うクリーニング処置2によって、まれに吐出無しノズルが増える場合がある。このような場合、検査モード3によってノズル位置を検出しておけば、吐出無しになったノズルを特定することができ、この特定されたノズルに好適なクリーニング処置を行うことができる。
検査モード3によるノズル検査について、図8を用いて説明する。この処理が始まると、ノズル検査の処理回数を示す「q」を1とし(ステップS501)、q番目つまり1番目のノズルを駆動する(ステップS502)。CPU51は、ASIC61からPRT1のノズル選択信号を出力させ、この結果DRV1が出力される。こうして1回のノズル検査処理において1個のノズルからインク滴を吐出させるべく圧電素子が駆動される。
次に、測定端子間電圧を測定する(ステップS503)。CPU51はASIC61に構成された図示しない電圧測定回路を動作させ、測定端子間、つまり印刷ヘッド30と電極部材71(図2参照)間の電圧を測定する。そして、測定した電圧について、電圧の変化があるか否かを判定する(ステップS505)。
判定の結果、電圧の変化が無かった場合(S505:NO)、ノズル列とノズル番号(q)を記録し(ステップS506)、ステップS507に進む。CPU51は、ステップS505にて電圧の変化が無いと判定するたびに、RAM53に設けられたノズル列とノズル番号を記録するエリアに、検査中のノズル列とノズル番号を追加記録する。一方、判定の結果、電圧の変化が有った場合は(S505:YES)、何もせずステップS507に進む。
ステップS507にて、「q+1」を新たに「q」とし、「q」が180より大きいか否かを判定し(ステップS508)、大きくない場合は(NO)、検査対象のノズル列について、総てのノズルが検査されていないので、ステップS502に戻り、次の2番目のノズルを駆動する処理を行い、以降ステップS503からS508までの処理を繰り返す。
そして、ステップS508にて「q」が180より大きいと判定されると(YES)、ステップS509にて、連続する吐出無しノズルの連続数と、その連続数吐出無しノズルの発生数を算出する。CPU51は、ステップS506にて記録されたノズル列とノズル番号から、連続する番号の連続数と、この連続数の発生数を算出する。
次に、ステップS510にて、各ノズル列に対してそれぞれの連続数とその発生数が、それぞれ所定数以上か否かを判定する。本実施形態では、Y、M、Cのノズル列35Y、35M、35Cについては、3個連続するドット抜けが8箇所まで、4個連続するドット抜けが5箇所まで、5個連続するドット抜けが3箇所までが所定数であることから、CPU51は、5個以上連続する吐出無しノズルが存在するか否か、また5個連続する吐出無しノズルが4(=3+1)個以上存在するか否か、また4個連続する吐出無しノズルが6(=5+1)個以上存在するか否か、さらに3個連続する吐出無しノズルが9(=8+1)個以上存在するか否かを判定する。
そして、判定の結果、所定数を超えた連続数が存在しているか、または、それぞれの連続数の発生回数が所定数を超えている場合は(S510:YES)、許容数を超えると記
録する(ステップS511)。CPU51は、許容数を超える旨のデータをRAMの所定領域に記録する。一方、所定数より少なければ(S510:NO)、何もしない。以上説明したステップS501からS511までの処理が各色ノズル列に対して行われた後、検査モード3の処理を終了して、ステップS55(図5)へ戻る。
図5に戻り、ステップS55では、各色ノズル列における吐出無しノズル数が許容数以下か否かを判定する。CPU51は、ステップS511にてRAM53に記録されたデータが存在するか否かによって判定する。記録データが存在せず各色ノズル列が許容数以下であると判定されると(S55:YES)、ノズル検査処理は終了し、その後まだ印刷すべき印刷データがある場合は、印刷処理が開始されることになる。
一方、判定の結果、許容数より多い色ノズル列が存在した場合は(S55:NO)、ステップS60に進みクリーニング処置2を行う。その後、ノズルのクリーニング処置結果を確認するため、再びステップS40に戻って検査モード2で検査処理を行い、上述したステップS40以降の処理が繰り返して行われる。
ところで、ステップS60にて行うクリーニング処置2は、ステップS30にて行うクリーニング処置1に比べて、ノズル詰まりを解消すべきノズルが特定される場合が多くなることから、特定されたノズルの詰まりを確実に解消するため、吸引処置を複数回行うこととするとよい。このように、検査モードに合わせてクリーニング処置方法を変えることによって、検査モードに合わせたクリーニング処置を行うことができ、クリーニング処置に要する時間を不要に長くすることを抑制することができる。
こうした処理が繰り返し行われることによって、3個連続してインク滴の吐出が無いノズルが存在しない状態になるか、あるいは、3個連続してインク滴の吐出が無いノズルが存在しても、ノズル列ごとに定められた許容数以下になれば、ノズル検査処理は終了する。以降、CPU51は、インクジェットプリンタの印刷動作を制御し、RAM53のバッファ領域に格納された印刷データの印刷を開始することになる。
以上、上述したように図5に示したノズル検査処理を行うことによって、ノズル検査時間を短縮することができる。すなわち、検査モード1では、テキストデータについて、許容されるドット抜けの連続数に対して+1個のノズル数を同時に駆動してノズル検査を行う。従って、例えば1度に10個ずつノズルを駆動すれば、1個ずつノズルを駆動する場合に比べて10倍速く検査することになり、ノズル検査に要する時間を短縮することが可能となる。また、クリーニング処置のあとに、クリーニング処置結果を確かめるべく再びノズル検査が行われるような場合は、このような検査が行われる回数分ノズル検査時間を短縮することになり、検査時間の短縮効果はさらに大きくなる。
また、検査モード2では、画像データについて、許容数が設けられたドット抜けの連続数のうち、最も少ない連続数と同じ個数分のノズルを同時に駆動してノズル検査を行う。従って、例えば1度に3個ずつノズルを駆動すれば、1個ずつノズルを駆動する場合に比べて3倍速く検査することになる。従って、ノズル検査に要する時間を短縮することが可能である。また、クリーニング処置のあとに、クリーニング処置結果を確かめるべくノズル検査が再び行われるような場合は、このような検査モード2が行われる回数分ノズル検査時間を短縮することになり、検査時間の短縮効果はさらに大きくなる。
ところで、検査モード3は、基本的に1個ずつノズルを検査するノズル検査方法であり、前述の特許文献1と同じく従来のノズル検査にて行われている検査方法である。従って、検査モード2でのノズル検査に引き続いて検査モード3が行われる場合は(ステップS45:NO)、従来のノズル検査に対して検査モード2のノズル検査分余計に検査することになる。しかしながら、引き続き検査モード3が行われない場合は(ステップS45:YES)、ノズル検査は検査モード2のみで済み、ノズル検査時間は相当に短縮される。つまり、通常インク滴が吐出されないノズルが連続して存在する確率が低いことが想定される場合は、検査モード3の前に検査モード2でノズル検査を行うことによって、印刷モードに見合ったノズル検査を適切に行うことができるとともに、ノズル検査時間を短縮することができ、印刷までの時間を早くすることが可能となる。
本発明は、上述のように、種々の印刷モードにおいて、主に印刷速度が優先される印刷モード、例えば上述のテキスト印刷の他に、モノクロ印刷、低解像度印刷、ドラフト印刷、等の印刷モードにおいては、検査モードにおいて、同時にインクを吐出する検査対象ノズルをより多数のノズル数とする検査モードを採用して検査時間の短縮を可能とするものである。一方、主に印刷画質が優先される印刷モード、例えば上述の画像印刷の他に、カラー印刷、高解像度印刷、等の印刷モードにおいては、検査モードにおいて、同時にインクを吐出する検査対象ノズルをより少数のノズル数とする検査モードを採用して、不吐出ノズルの存在をより詳細に把握することを可能とするものである。
以上、本発明について、一実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、図5のステップS50にて行う検査モード3でのノズル検査を、ノズル列とノズル位置を特定する検査処理内容としたが、ノズル列には依存せず、単にインク滴が吐出されないノズルの個数が所定数以上あるか否かを検査する処理内容としてもよい。これを検査モード4とする。検査モード4での検査によれば、ドット抜けの数が許容数以内か否かを検査することになるため、例えば印刷対象物が高精細な画像データのように、色に関係なくドット抜けの数が、印刷された印刷品質に影響するような場合のノズル検査に好適な検査となる。
検査モード4について、図9を用いて説明する。図9に示した検査モード4の処理ステップは、図8に示した検査モード3の処理ステップに対して、ステップS506aでの処理内容が異なることと、このためにステップS509の処理が不要であること以外は総て同じ処理ステップである。従って、ここではステップS506aのみ説明し、その他の処理ステップについては説明を省略する。
検査モード4におけるステップS506aでは、ステップS505において電圧変化が無い(NO)と判定されると、検査ノズルはインク滴が吐出されないノズルであるため、吐出無しノズル数に1個加算して記録する処理を行う。CPU51は、吐出無しノズルが検出される毎に、RAM53の吐出無しノズル数を記録するエリアに「1」を加算して記録する。従って、YMCK総てのノズル列について検査モード4によるノズル検査が終了すると、RAM53には、総てのノズルのうち、いくつのノズルがインク滴吐出無しのノズルかを示す数値が記録される。
なお、この検査モード4がステップS50にて行われた場合、ステップS55での判定処理の結果「NO」と判定された場合に行われるステップS60でのクリーニング処置は、前述したように、例えば吸引回数を増減するなど検査モード4に好適なクリーニング処置方法とすることが好ましい。こうすれば、クリーニング処置に要する時間が不要に長くなることを抑制することができる。
また、上記実施形態では、印刷対象物が画像データである場合、ステップS40では検査モード2でのノズル検査を行うこととしたが、検査モード1でのノズル検査を行うこととしてもよい。画像データの場合でも、所定数以上連続するドット抜けが発生していなければ、実際に印刷された画像が許容できるものである場合は、検査モード1でのノズル検査が好適な検査となり、検査モード2に対して検査時間が短縮できる。
また、上記実施形態では、検査モード2として、3個のノズル総てがインク滴の吐出無しか否かを検査することとしたが、3個のノズルのうち少なくとも1個吐出無しノズルが存在するか否かを検査することとしてもよい。具体的には、前述したように3個のノズルのうち1個でもインク滴が吐出しないノズルが有ったときの電圧変化が、その閾値を超えないような閾値TH2を設定し、この閾値TH2を用いてインク滴の吐出検査を行うのである。また、検査モード2をこのような検査モード2aにした場合、インク滴の吐出無しのノズル数が許容数より多いと判定されたときは(図5、ステップS45:NO)、検査モード3によるノズル検査を行わず、直ちにクリーニング処置を行うこととしてもよい。
こうすれば、インク滴の吐出無しノズルを1個も許容しないような最高の印刷品質を必要とする印刷対象物を印刷する場合、ノズル1個ずつノズル検査を行わなくても、このような検査モード2aによって少なくとも1個以上インク滴の吐出無しノズルが存在するか否かを判定することができるので、検査モード2aは有効である。また、検査モード3によるノズル検査を行わずクリーニング処置を行うことからノズル検査時間を短縮することも可能である。
また、上記実施形態では、印刷対象物がテキストデータである場合、ステップS20では検査モード1でのノズル検査を行うこととしたが、検査モード2でのノズル検査を行うこととしてもよい。テキストデータの場合でも、所定数以上連続するドット抜けが多数発生すると、実際に印刷された印刷物の印刷品質が許容できないものとなる場合は、検査モード2でのノズル検査が好適な検査となる。この場合、検査モード1に対して検査時間が長くなるものの、1個ずつノズルを検査するよりも短時間でノズル検査を行うことができる。もとより、テキストデータでも高精細な印刷品質が要求されるような場合は、検査モード3又は検査モード4にてノズル検査することとしても差し支えない。
また、上記実施形態では、図5のステップS15にて、印刷対象物のデータの種類(画像かテキストか)に基づいて検査モードを選択したが、これに限らず、印刷解像度、印刷階調数、カラー印刷かモノクロ印刷か、など前述した印刷モードに関する情報として設定されている他の指定情報に基づいて選択することとしてもよい。あるいは、これらの指定情報のうちの複数の指定情報に基づいて選択することとしてもよい。こうすれば、印刷データによって指定された印刷方法に適した印刷品質を得るためのノズル検査を実施することができる。
また、上記実施形態における検査モード1および検査モード2では、連続するドット抜けの許容数に対して1個多いノズル数を1回の処理工程で同時に駆動することとしたが、逆に許容数以下の数のノズルを同時に駆動することとしてもよい。
例えば検査モード1において、注目する10個の検査対象ノズルについて、引き続き駆動される次の10個の検査対象ノズル側から5個連続して吐出無しノズルが存在し、次の10個の検査対象ノズルについて、注目する10個の検査対象ノズル側から5個連続して吐出無しノズルが存在したとする。このとき前述の説明から明らかなように、それぞれ10個の検査対象ノズルについては吐出有りと判定され、この結果10個連続する吐出無しノズルは存在しないということになる。しかしながら、実際には注目する10個の検査対象ノズルと次の10個の検査対象ノズルとの間に、それぞれ5個の吐出無しノズルが存在するので、10個連続する吐出無しノズルが存在することになる。そこで、このような場合、1回の検査工程で同時に駆動するノズル数を5個とすれば、2回の検査処理分連続してノズル吐出無しを検出することによって、10個連続する吐出無しノズルを検出することができる。このように、許容数に対して、それ以下の数のノズル数を同時に駆動すれば、ノズル検査時間の短縮効果は少なくなるものの、許容数のノズルを精度よく検出することが可能となる。
また、上記実施形態では、1ノズルごとに8セグメント間連続する単位信号が出力(ON)され、8セグメント間単位信号が出力されない(OFF)ヘッド駆動信号を生成していたが、これに限らず、単位信号の出力時間を4セグメントや16セグメントとしたり、単位信号が出力されない時間を、同じく4セグメントや16セグメントとしたりするなど増加減少してもよい。もとより、図4にて説明したように、電圧Veの変化が顕著に現れるなど、検出が容易になる条件を予め調べ、その条件に合わせて単位信号を「ON」「OFF」するセグメント数を決めることが好ましい。こうすることで、測定端子間の電圧変化の検出が容易となりノズル検査精度が高くなる。
また、上記実施形態では、圧電素子を駆動して、ノズルからインク滴を吐出させることとしたが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけてインクを加熱し、発生した気泡によりインクを加圧してインク滴を吐出させるものとしてもよい。こうすれば、圧電素子を用いないインクジェットプリンタにも、本発明のノズル検査装置を適用することができる。
また、上記実施形態では、図2に示したように、帯電したインク滴の吐出による測定端子間の電圧変化を利用して、ノズルからのインク滴の吐出有無を検出することとしたが、これに限らず、例えば特許文献1に開示されている光を利用した方法など、その他の検出方法を用いてもよい。一例として、図10に、光を利用した方法を示した。
図10は、印刷ヘッド30のノズル列35Mについて、3個ずつノズルを検査する様子を示したもので、ノズルn=1〜3、n=4〜6、・・・というように1度に3つのノズルが検査される。図に示したように、網掛けで示したノズルn=4からn=6の3つのノズルからインク滴が吐出されているとすると、発光部91から出射されたレーザー光Lが、吐出したインク滴によって遮断される。このため、3つのノズルのうち少なくとも1つからインク滴が吐出されれば、このインク滴によって遮断されている間、レーザー光Lは受光部92に届かない未受光時間が発生する。言い換えれば、3つのノズルの総てからインク滴が吐出されない場合は、未受光時間は発生しないことになる。そこで、この未受光時間を検出し、ノズル駆動時に未受光時間が存在しなければ、3つのノズル総てがインク滴の吐出無しのノズルとして検出することができるのである。