以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1を用いて説明する。図1は本発明の吐出検査装置が組み込まれたインクジェットプリンタ10の概略構造を示したものである。このインクジェットプリンタ10は、記録液としてのY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色インクが収納されたインクカートリッジ11〜14を装着したキャリッジ20が図面左右方向に移動し、印刷媒体25が図面上下方向に移動するとき、キャリッジ20の図面下側に設けられた印刷ヘッド30からインク滴を吐出して、印刷媒体25に所定の印刷画像等を印刷するものである。
キャリッジ20は、キャリッジモータ40を駆動して回転されるキャリッジベルト41に固定されている。キャリッジベルト41が回転されるのに伴って、キャリッジ20は、フレーム17に固定されたガイド21に沿って移動する。キャリッジモータ40の回転方向を切り替えることにより、キャリッジベルト41の回転方向が切り替わり、キャリッジ20に設けられた印刷ヘッド30が印刷媒体25の図面左右方向(主走査方向)に往復移動する。尚、印刷ヘッド30が主走査方向に片道分1回移動することを1パスと称し、移動した回数をパス数と称する。
また印刷媒体25は、フレーム17に固定された駆動モータ26により駆動される図示しない紙送りローラーなどによって、図面上下方向に移動する。このとき、印刷ヘッドに設けられた各色インクを吐出するための複数のノズルから、印刷の対象となる画像に相応した所定のインク滴が吐出されることによって画像が正しく印刷できる。
このため、インクジェットプリンタ10では、通常、電源投入時や、印刷ジョブの開始前などに、印刷ヘッド30に設けられた複数のノズルからインク滴が吐出するか否かを検査する吐出検査が行われる。
ところで、前述したように、印刷ジョブの開始後の印刷中において、インクの増粘などによってノズルが目詰まりした場合は、ノズルが目詰まりしたまま印刷を続けていると、インク滴がノズルから吐出されないため放熱されず、ヘッドの損傷を生じることがある。このため、更に、インクジェットプリンタ10では、印刷途中にも吐出有無の検査を行うようにする。印刷途中に行う吐出検査の検査プログラムは、印刷ジョブによって印刷が開始されると起動される。吐出検査では、インクジェットプリンタ10に設けられた検査ボックス70の位置にキャリッジ20を移動し、所定の吐出検査処理を行い複数のノズルからのインク滴の吐出有無を検査する。
これらの動作についての主な制御は、フレーム17に取り付けられたメインコントロール基板(単にメイン基板)50と、キャリッジ20の端面に取り付けられたサブコントロール基板(単にサブ基板)60とによって行われる。これらの基板は、フレキシブル基板45によって接続され、それぞれの基板間でデータがやり取りできるように構成されている。
メイン基板50には、インクジェットプリンタ10の諸動作を制御するためのCPU51と、これらの動作に関するプログラムを記録したROM52と、動作に際して必要なデータを一時的に記憶したり読み出したりするためのRAM53と、サブ基板60との間でのデータのやり取りや、ユーザーのパソコンなど外部機器との情報のやり取りを行うためのインターフェイス(I/F)55とが備えられている。後述する各実施例での吐出検査のための処理ルーチンプログラムは、ROM52に記憶されている。
サブ基板60には、吐出検査に関する所定の動作を実行するためのロジック回路などが構成されたASIC61が備えられている。従って、CPU51がROM52に記録された吐出検査プログラムを読み出し、ASIC61との間で種々の信号データを授受することによって、CPU51とASIC61は所定の動作を実行して、吐出検査を実施する。
次に、図2を用いて吐出検査装置の仕組みについて具体的に説明する。図2は、帯電したインク滴39を用い、印刷ヘッド30に設けられた複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させるべくインクに圧力を加え、インクの吐出有無を判定するための装置構成を示す模式図である。キャリッジ20が検査ボックス70に対して所定の位置に移動すると、インクカートリッジ11から図示しない供給経路によって印刷ヘッド30に供給されたインクが、インク滴39として印刷ヘッド30から吐出される。
印刷ヘッド30に設けられている複数のノズルのそれぞれには、ノズル別にインクを吐出するための圧力発生機構が、図2の下側円内に示したように形成されている。すなわち、圧電素子32に電圧をかけると、圧電素子32が変形して部材33を矢印方向(図面下側)へ押し下げ、例えばインクカートリッジ11から供給されたインク38を加圧するように構成されている。この結果、ノズルプレート34に設けられたノズル35から、インクがインク滴39として吐出されるのである。従って、検査対象のノズルに対応した圧電素子に電圧をかけることで、それらのノズルについてインク滴の吐出有無を検査することができる。圧電素子32を変形(以降「駆動」とも呼ぶ)させる電圧はドライバー基板31から圧電素子の駆動信号として出力される。ドライバー基板31は、印刷ヘッド30の近傍でキャリッジ20内に設けられ、サブ基板60と図示しない結線部材によって結線され、ASIC61からの出力信号を受けて動作する。
吐出されたインク滴39は、検査ボックス70に設けられた電極部材71に着弾する。電極部材71はメッシュ状のSUS板などの金属材料で形成され、インク滴39の着弾受け領域となっている。着弾したインク滴39は、その後この電極部材71を透過し、スポンジ状の樹脂等で形成されたインク吸収体72に吸収される。このように、電極部材71にはインクが堆積しないように構成されている。また電極部材71は、フレーム17と結線部材66によって電気的に接続されている。
CPU51は、フレーム17に回路の一端が接続(接地)されている電圧発生回路62を動作させ、フレーム17に対して所定の電圧を生成した後、吐出検査処理の間スイッチング用トランジスタ63をオンにし、所定の抵抗値を有する抵抗64を通して、結線部材65から印刷ヘッド30に電圧を印加する。もとより、印刷ヘッド30において電圧が印加される部分は、インク38と電気的に導通状態にある部分(例えばノズルプレート34)である。
CPU51は、印刷ヘッド30とフレーム17とを測定端子とし、その測定端子間の電圧値を測定する。そして、圧電素子が駆動信号によって駆動される前後の電圧値の変化を検知し、所定の電圧値の変化量を超えたか否かによって、検査対象ノズルについてインク滴の吐出有無を判定する。
図3は、本実施例の印刷ヘッド30に設けられたノズルの配置を示す図である。印刷ヘッド30には、Y、M、C、K、各色に対応したノズル列35Y、35M、35C、35Kが設けられ、各ノズル列には180個のノズルが形成され、合計720個のノズル35が配置されている。
尚、本実施例では、図3の印刷ヘッド30のノズルについての配置情報として、ノズル列の順番、各ノズル列のノズルから吐出するインクの色、各ノズル列に含まれるノズル数についての情報がROM52に記憶されているものとする。
次に、ノズルに対応した圧電素子がどのように駆動されるのかについて説明する。図4は、圧電素子の駆動方法を説明するための説明図である。検査対象のノズルからインク滴を吐出させるために、検査対象となるノズル番号nのノズルに対応する圧電素子に対して、圧電素子を変形駆動する駆動信号DRVn(n=1〜180)を出力する。
駆動信号DRVnの生成について以下説明する。メイン基板50では、一画素分に相当する画像を印刷するための区間(キャリッジ20が一画素の間隔を横切る時間でセグメントとも呼ぶ)に、Pv、P1、P2、P3の合計4つのパルス信号を有する単位信号(図2の吹き出し部分)が繰り返し存在する原信号ODRVと、印刷信号PRTnが生成される。
原信号ODRVに含まれるパルス信号Pvは、ノズル内でインクの粘度が増加しないように圧電素子を微振動させてインクを振動させるための信号である。また、原信号ODRVに含まれるパルス信号P1、P2、P3は、それぞれノズルからインク一滴分のインク滴を吐出させるパルス信号である。パルス信号Pv、P1、P2、P3からパルス信号を選択し、駆動信号DRVnとして対応する圧電素子に出力すると、選択したパルス信号によって印刷媒体に形成されるドットのサイズを選択できる。具体的には、パルス信号P1を選択すると小さいサイズのドットが、パルス信号P1とP2を選択すると中サイズのドットが、またパルス信号P1とP2とP3を選択すると大きいサイズのドットが、それぞれ印刷媒体に形成される。インクの吐出検査を行うときは、吐出時の電圧値の変化量が大きいため検出精度が高いので、P1、P2、P3のパルス信号を選択して、駆動信号DRVnとして対応する圧電素子に信号を出力する。
印刷信号PRTn(n=1〜180)は、YMCK各ノズル列について、180個のノズルのうち、インク滴を吐出させるべきノズルを特定するとともに、原信号ODRVにおけるパルス信号を選択する信号である。従って、印刷信号PRTnは印刷実行時には、印刷データ(ドット有無やその階調値)に基づいて、インクを吐出すべきノズルや出力すべきパルス信号を選択してノズルに選択的に供給させる信号であるが、吐出検査時には検査のためにインクを吐出すべきノズルを特定するとともに、出力すべきパルス信号を選択する信号である。
これらの信号は、前述したようにASIC61を介してドライバー基板31に設けられたマスク回路に出力される。マスク回路は、原信号のうち、印刷信号PRTnによって選択されたパルス信号が、同じく印刷信号PRTnによって特定されたノズルに対応する圧電素子に出力されるように回路構成されている。つまり、マスク回路によって、選択された検査対象ノズルに対応した圧電素子に、Pv、P1、P2、P3のパルス信号のうち印刷信号によって選択されたパルス信号が出力されるように構成され、マスク回路から駆動信号DRVnとして出力される。こうして駆動信号DRVnは生成されるのである。もとより、印刷信号PRTnが総てのパルス信号を選択しない信号であった場合は、駆動信号DRVnは、総てのパルス信号が存在しない状態になる。
このような仕組みを有するインクジェットプリンタ10に組み込まれた吐出検査装置は、基本的にCPU51がROM52、RAM53、およびASIC61と連携動作することで、本発明の吐出検査装置として機能する。つまり、図2に示したように、CPU51は、ノズル群分割部61a、吐出検査部61b、印刷部61c、割り込み設定部61d、印刷ヘッド移動部61eとして機能することによって、上述した構成を有する吐出検査装置を動作させ、各ノズルについてインク滴の吐出の有無を検査する。各部は主として以下の処理を司る。
ノズル群分割部61aは、印刷ヘッドに設けられた複数のノズルを複数のノズル群に分割する。具体的には、ノズル番号とノズル群番号との対応関係とノズルについての情報を記録できる対応表をRAM53に記憶領域として設け、ROM52に記憶されたノズル列数、ノズル列の順番、各ノズル列のノズルから吐出するインクの色、ノズル列に含まれるノズル数についての情報を読み出し、各ノズル列のノズル番号の1番から180番までを分割するノズル群番号に対応させる。そして、各ノズル列のノズル番号とノズル群番号との対応関係をRAM53の記憶領域に設けた対応表に記憶させる。
吐出検査部61bは、分割したぞれぞれのノズル群に含まれる複数のノズルについて、複数のノズルからのインクの吐出有無の検査を行う。具体的には、前述のRAM53に記憶された対応表を参照し、各タイミングでの吐出検査を行うノズル群に対応するノズル番号を取得する。次に、取得したノズル番号に対応する印刷信号PRTnを出力する。出力された印刷信号PRTnによって、検査対象のノズル群に含まれるノズルを選択するとともに、原信号ODRVからパルス信号を選択し、選択したノズルに対応する圧電素子に、駆動信号DRVnとして出力する。そして、印刷ヘッド30とフレーム17とを測定端子とし、圧電素子が駆動信号によって駆動される前後の電圧値の変化を検知し、検出した電圧値の変化量が閾値を超えたか否かによって、検査対象ノズルについてインク滴の吐出有無を判定する。
また、吐出検査部61bは、後述する割り込み設定部61dにより設定された割り込みタイミングで、分割された複数のノズル群についての吐出有無の検査を分散して行う。
印刷部61cは、印刷データから印刷信号PRTnによって、インクを吐出する対象となるノズルを選択するとともに、原信号ODRVからパルス信号を選択し、選択したノズルに対応する圧電素子に、駆動信号DRVnとして出力することにより、印刷ヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吐出して印刷媒体へ印刷データを印刷する。
割り込み設定部61dは、吐出有無の検査を行うため、印刷データの印刷処理を中断させる割り込みタイミングを、印刷処理量を用いて設定する。
印刷ヘッド移動部61eは、キャリッジモータ40の駆動を制御し、印刷ヘッド30を印刷媒体の図面左右方向(主走査方向)に往復移動させる。
それでは、本実施形態での吐出検査装置が行う吐出検査処理について、2つの実施例を用いて説明する。第一実施例は、印刷ヘッドに設けられた総てのノズルを検査対象とした場合についての実施例であり、第二実施例は、印刷ヘッドに設けられたノズルのうち印刷画像のデータに基づいて選択した複数のノズルを検査対象とした場合についての実施例である。
(第一実施例)
第一実施例を図5のフローチャートに従って説明する。図5に示した吐出検査処理は、印刷ヘッド30に設けられた総てのノズルを複数のノズル群に分割し、印刷処理量によって所定回数設定された割り込みタイミングで、各ノズル群に含まれる複数のノズルについて吐出検査を行うものである。第一実施例では、割り込みタイミングを設定するために用いる印刷処理量として、印刷ヘッド30が移動した移動量であるパス数を用いる。
この処理が開始されると、ステップS110にて、各ノズル番号に対応する各ノズル群番号を設定することにより、印刷ヘッドに設けられた複数のノズルを複数のノズル群に分割する。具体的には、ROM52からノズル列の順番、各ノズル列のノズルから吐出するインクの色、各ノズル列に含まれるノズル数を読み出して、各ノズル列のノズルのノズル番号に対応するノズル群番号を付与する。そして、ノズル番号とノズル群番号との対応関係を対応表として作成し、RAM53に設けた所定の記録エリアに記憶させる。
ちなみに、本実施例では、1つのノズル列を2つのノズル群に分割することとする。従って、Y(イエロー)のノズル番号1から90までのノズルにはノズル群番号1を対応させ、Y(イエロー)のノズル番号91から180までのノズルにはノズル群番号2を対応させる。同様にM(マゼンタ)のノズル番号1から90までのノズルにはノズル群番号3を対応させ、M(マゼンタ)のノズル番号91から180までのノズルにはノズル群番号4を対応させる。同様に、C(シアン)のノズル番号1から90までのノズルにはノズル群番号5を対応させ、C(シアン)のノズル番号91から180までのノズルにはノズル群番号6を対応させ、同様に、K(ブラック)のノズル番号1から90までのノズルにはノズル群番号7を対応させ、K(ブラック)のノズル番号91から180までのノズルにはノズル群番号8を対応させる。
このようにして、図3に示すように、印刷ヘッド30に設けられた720個のノズル35が、太い破線で囲われた領域で示すノズル群80から87までの8個のノズル群に分割されたことになる。
次に、図5のステップS120にて、ノズル群番号bに1を設定する。ステップS130にて、印刷処理量として用いるパス数pに1を設定する。
次に、ステップS140にて、印刷画像を印刷媒体に印刷する。ステップS150にて、印刷画像をすべて印刷したか否かを判定し、すべて印刷した場合は(ステップS150:Yes)、処理を終了する。まだ印刷画像をすべて印刷していない場合は(ステップS150:No)、ステップS160に進む。
ステップS160にて、パス数pが所定のパス数を超えたか否かを判定し、パス数pが所定のパス数を超えた場合は(ステップS160:Yes)、ステップS180に進み、印刷処理を中断する。パス数pが所定のパス数を超えていない場合は、(ステップS160:No)ステップS170に進み、ステップS170にて、パス数pに1を加算した後に、ステップS140に戻り、再び、印刷を行う。判定に用いる所定のパス数は、ノズルが目詰まりしたまま続けて印刷してもヘッドの損傷を発生しないパス数を設定する。本実施例では、500回が所定のパス数としてデフォルトで設定されているものとする。もとより、ROM52にインクの特性(粘度など)に応じた複数のパス数を記憶させておいて、吐出検査時に使用するインクの特性に対応したパス数を読み出して設定してもよい。
次に、ステップS180にて、印刷ヘッド30を検査ボックス70のインクを吐出して吐出検査可能な所定の位置に移動する。そして、RAM53に記憶した対応表を読み出し、ノズル群番号1に対応するノズル番号を取得する。取得したノズル番号による印刷信号PRTnを出力することによって、ノズル群番号1のノズル群に含まれる総てのノズルに対応する圧電素子に駆動信号DRVnを出力して、測定端子間の電圧値の変化量を検出する吐出検査を行う。
ところで、ノズルからインクが吐出されたときの電圧値の変化量は吐出するノズル数とともに大きくなる。従って、総てのノズルから吐出したときの電圧値の変化量は最大となり、総てのノズルから吐出しなかったときの電圧値の変化量は0になる。つまり、吐出無しのノズルの個数が増えると、電圧値の変化量は減るという関係にある。
総てのノズルの数に対して、吐出無しのノズルが発生する割合が少ない場合は、前述した発熱が少なく、隣接するノズルからのインクの吐出によって、放熱が行われるので、蓄熱による影響は少なくなり、ヘッドの損傷を受ける確率が低い。そこで、本実施例では、インクを吐出しないノズルがヘッドの損傷を受ける確率が低い数のノズル数を超えているか否かについて判定を行うこととし、インクを吐出しないノズルがこの個数以下の数であった時に超える値を閾値として設定する。
例えば、本実施例で同時に吐出が行われるノズルの個数90個に対して、ヘッドの損傷が生じない吐出無しのノズルが3個であったとき、吐出無しのノズルが3個あったときのの電圧値の変化量を閾値として設定する。
次に、ステップS190にて、ステップS180にて検出された電圧値の変化量が閾値を超えたか否かを判定する。前述したように、閾値は、吐出しないノズルが所定の個数のノズルが存在したときに検出可能な変化量である。判定の結果、電圧値の変化量が閾値を超えた場合は(ステップS190:Yes)、吐出しないノズルが所定の個数未満であるので、ステップS210に進む。一方、電圧値の変化量が閾値を超えない場合は(ステップS190:No)、吐出しないノズルが所定の個数以上発生しているので、ステップS200に進む。ステップS200にて、吐出しないノズルが所定の個数以上あるノズル群であるとして、ノズル群番号1をメイン基板50に搭載されたRAM53に記憶させる。
次に、ステップS210にて、ノズル群番号に1を加算する。ステップS220にて、
ノズル群番号bは分割したノズル群の総数を超えたか否かを判定する。ノズル群の個数bが総数を超えた場合は(ステップS220:Yes)、ステップS230に進み、印刷処理を行った後、本実施例のフローチャートの処理を終了する。ノズル群の個数bが総数を超えない場合は(ステップS220:No)、ステップS130に戻る。ステップS130にて、印刷ヘッドの移動量pに1を設定する。ステップS140以下、上述した処理を再び行う。
尚、ステップS220において、ノズル群番号bがノズル群の総数を超えた場合(ステップS220:Yes)に、ステップS120に戻って、ノズル群番号bに1を設定し、ノズル群番号の1番から再び吐出検査を繰り返してもよい。こうすれば、印刷が終了するまで(ステップS150:Yes)ノズル群ごとにノズルの目詰まりを繰り返して検出できるので、ヘッドの損傷を抑制できる。
ここで、ステップS140からステップS170の処理を繰り返して、印刷ヘッドの移動を繰り返して印刷を行っているときに、ステップS160にてパス数が500回になる毎に、ステップS140の印刷を中断し、ステップS180の吐出検査に進む。
ステップ160にてパス数が500回になる毎に、ステップS140の印刷を中断した時点が割り込みタイミングが設定された時点になる。以上の処理を行うことにより、印刷データの印刷を開始してから終了するまでの割り込みタイミングの設定回数は、印刷データを印刷するために必要なパス数を500回で割って得られる商の値が、割り込みタイミングの設定回数となる。
例えば、1200パスからなる印刷画像を印刷した場合は、印刷を開始してから500パスになった時点で1回目の割り込みタイミングが設定され、1000パスになった時点で2回目の割り込みタイミングが設定され、割り込みタイミングの設定回数は2回となる。
以上説明したように、第一実施例によれば、印刷処理の処理中に設定された複数の割り込みタイミング毎に、分割されたノズル群を順次吐出検査するので、分割された複数のノズル群を印刷処理中に分散して検査することができる。従って、総てのノズルについて、
吐出検査間のパス数に対して印刷データのパス数が相当に多い場合には、印刷処理中にインク滴の吐出無しの状態が発生したか否かを少なくとも1回検出することができるので、圧力発生機構の損傷を回避できる。また、印刷中にノズルが目詰まりした場合に、ノズルが目詰まりしたことをより早く検出することができるので、圧力発生機構の損傷を回避できる。
また、印刷ヘッドの移動量について、例えば印刷媒体への1行分の印刷を行う移動量、いわゆる1パスを1単位として、このパス数が所定の回数になったら吐出検査を実行する割り込みタイミングとして設定できる。従って、吐出検査が行われるタイミングでは1行分の印刷が終了しているので、1行の途中で印刷が中断したとき発生する印刷の境目の無い品質の良い印刷が可能である。
また、それぞれのノズル群について、ノズル群に含まれる総てのノズルを同時にまとめて吐出検査することにより、一つのノズルずつ順次吐出検査を行うより短い時間で検査ができる。
(第二実施例)
第一実施例は、印刷ヘッド30に設けられた総てのノズルを分割した場合について説明したが、第二実施例は、印刷画像のデータの色に基づいて選択された複数のノズルを分割し、分割したノズル群の個数と同じ回数を設定した割り込みタイミングで検査する場合であり、図6を用いて説明する。
図6は、第一実施例で説明した図2の模式図にノズル選択部61fを追加したものである。図6のノズル選択部61fは、印刷データに基づいて、印刷ヘッド30に設けられた複数のノズルのうちから、印刷データに含まれるインクを吐出する対象となるノズルを選択する機能を司る。
第二実施例の処理について、処理のフローチャートを示す図7と本実施例で使用する印刷ヘッド30に設けられたノズルの配置と分割を説明する図8を用いて説明する。図7のフローチャートは、図5のフローチャートにステップS101、ステップS102、ステップS111及びステップS112の処理を追加したものである。
まず、ステップS101にて、CPU51はRAM53に格納された印刷データを解析し、印刷データがモノクロデータかカラーデータなのかを検出する。本実施例では、印刷データはモノクロデータであるとし、印刷データから使用するインクはK(ブラック)であると検出する。
次に、ステップS102にて、ROM52に記憶されたノズル列の順番、各ノズル列のノズルから吐出するインクの色、各ノズル列に含まれるノズル数の情報を読み出し、K(ブラック)のインクを吐出するノズルの個数180個を取得する。この取得処理によって、図8に示すように、K(ブラック)のノズル列35Kに配置された180個のノズル35が選択されたことになる。
次に、ステップS110にて、選択した複数のノズルを複数のノズル群に分割する。本実施例では、2つのノズル群に分割するものとして説明する。具体的には、第一実施例で説明したように、ノズルのノズル番号にノズル群番号を対応させ、対応関係を示す対応表をRAM53の記憶領域に記憶する。図8の太い破線で囲われた領域で示すノズル群86に含まれるノズル番号1から90までのノズルには、ノズル群番号1を対応させ、太い破線で囲われた領域で示すノズル群87に含まれるノズル番号91から180までのノズルにはノズル群番号2を対応させる。第一実施例で説明したように、ステップS180での吐出検査では、対応表を参照してノズル群に対応するノズル番号を取得し、取得したノズル番号による印刷信号PRTnをマスク回路に出力し、ノズル番号に対応する圧電素子に駆動信号DRVnを出力することになる。
ステップS111にて、後述する割り込みタイミングを設定する際に使用する印刷処理量として、印刷ヘッドの移動量であるパス数を算出する。印刷データを解析して印刷画像を印刷するに必要なパス数を算出する。
次に、ステップS112にて、上述のステップS111にて算出された印刷画像を印刷するに必要なパス数を本実施例の分割数2に1を足した数値3で割って得られる商の値を算出し、算出した値を後述するステップS160で判定する際に使用する所定のパス数とする。例えば、印刷画像のパス数が1800パスである場合は、分割数2に1を足した3で割った値600パスが所定のパス数として設定される。
以降のステップS120からステップS230までの処理内容は、第一実施例の図5のフローチャートの処理と同じ内容の処理を行う。
ステップS130からステップS220の処理を繰り返して印刷処理を行っているときに、ステップS160にて所定のパス数を超えると、印刷処理を停止し、ステップS180の吐出検査に進む。すなわち、ステップS160での判定処理において、所定のパス数を超えたときに、割り込みタイミングが設定され、印刷処理を中断し、ステップS180にて吐出検査を開始する。
第一実施例では、ステップS160にて、デフォルト設定された所定のパスを用いて判定していたが、第二実施例では、ステップS112で算出した所定のパス数を用いて、ステップ160での判定を行う。
ステップS130からステップS220の処理を繰り返して印刷を行っているときに、ステップS112で算出した所定のパス数を用いて、ステップ160での判定を行うと、割り込みタイミングの設定回数とノズルの分割数は同じになる。例えば、前述の1800パスからなる印刷画像の印刷を開始すると、パス数が600パスを超えた時点で1回目の割り込みタイミングが設定され、1200パスを超えた時点で2回目の割り込みタイミングが設定される。すなわち、割り込みタイミングの発生回数は2であり、ノズル群の分割数は2となり、割り込みタイミングの設定回数とノズルの分割数は同じになる。
更に、印刷画像を印刷するに必要なパス数を分割数に1を加算した値で割った商の値を所定のパス数として設定していることから、等間隔のインターバルで割り込みタイミングを設定することができる。例えば、上述の例での1800パスからなる印刷画像では、印刷ヘッドの移動量が600パスである等間隔のインターバルで割り込みタイミングが設定される。
ところで、上記第二実施例では、説明したように、割り込みタイミングを等間隔で設定するため、パス数によっては、割り込みタイミングが1パスの途中になる。この場合、パス数は整数にまるめて設定した値とするので、ヘッドの損傷を受けるパス数を超える場合も有り得る。そこで、1パスの途中で割り込みタイミングを設定することとしてもよい。こうすることにより、等しい印刷処理量の間隔で割り込みタイミングが設定されるので、ヘッドの損傷を抑制できる。
以上説明したように、第二実施例によれば、印刷データに基づいて、印刷データを印刷するために必要なノズルを検査対象ノズルとして選択するので、総てのノズルを検査対象とした場合に比べて検査対象ノズル数が少ない。このような場合、検査対象のノズル数が少なくなることから、1ノズルあたりの検査時間が同じ場合は、検査対象ノズル総てを吐出検査する時間が短くなるので、吐出無しとなったノズルがより早く検出できることが期待できる。
また、割り込みタイミングの所定回数を、分割した複数のノズル群の分割数と同じ数に設定することにより、分割した個数のノズル群の検査について、分割した個数と同じ回数を設定した割り込みタイミングに分散して行うので、印刷データの印刷が開始されて終了するまでに、分割した総てのノズル群の検査を行うことができる。
第二実施例では、印刷データに基づいて、K(ブラック)のインクを吐出するノズルを選択して検査対象のノズルとしたが、印刷データに、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の色が含まれる場合は、それらのインクを吐出するノズルが選択されて検査対象のノズルとして、吐出検査が行われる。
このような場合において、印刷ヘッドに設けられた複数のノズルについて、検査対象のノズルが色別のノズル群に分割されるので、ノズルの色別の順番で吐出検査を行うことができる。従って、例えば、印刷データを印刷したとき、最も吐出回数が多い色のノズルを優先して吐出検査することが可能となる。また、インクの色によって増粘速度が異なる場合は、増粘速度が速い方の色から吐出検査を行うことが可能となる。この結果、印刷時に発生する確率が高いと想定される色のノズルについて吐出無しノズルを早く検出することができるので、ヘッドの損傷を回避させることが可能となる。
以上、本発明について、一実施形態における二つの実施例を用いて説明したが、本発明は、こうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下に変形例をあげて説明する。
(第一変形例)
印刷ヘッドに設けられた複数のノズルからのインクの吐出を回復する動作を行う吐出回復動作部を備え、吐出回復動作部は、それぞれのノズル群についての吐出有無の検査の検査結果において、吐出無しのノズルが所定の個数以上あったときは、それぞれのノズル群についての吐出有無の検査が終了した時、吐出を回復する動作を行うようにしてもよい。例えば、吐出無しのノズルの個数が3個あるとヘッドの損傷を受ける確率が高い場合は、吐出無しのノズルの所定の個数を3個に設定し、吐出無しのノズルが3個以上あったときは、それぞれのノズル群についての吐出有無の検査が終了した時、吐出を回復する動作を行うようにするのである。
図9は、本変形例の装置構成を示す模式図で、図2の装置構成を示す模式図に吐出回復動作部61gを追加したものである。CPU51がROM52、RAM53、およびASIC61と連携動作することで、吐出回復動作部61gとして機能する。
吐出回復動作部61gは、吐出回復動作を行うための二つの機能を司る。一つの機能は、印刷ヘッド30をクリーニングボックス18の位置に移動し、印刷ヘッド30設けられた複数のノズルからインクを吐出させてフラッシングを行う機能である。フラッシングにおけるインクの吐出方法は、前述したように、図4のASIC61から出力された印刷信号PRTnと原信号ODRVに含まれるパルス信号P1、P2、P3とから、サブ回路に備えられたマスク回路によって必要なパルスを選択して圧電素子に駆動信号DRVnとして出力し、目詰まりしたインクを吐出させる方法である。
もう一つの機能は、印刷ヘッドを図1のクリーニングボックス18の位置に移動し、ゴムなどの弾性版片(図示せず)によって印刷ヘッド30の全面をワイピングする手段と、キャップ(図示せず)によって印刷ヘッドをキャッピングする手段と、ポンプ(図示せず)によって印刷ヘッド30のキャッピングされた空間に負圧を発生させる手段とを制御して目詰まりしたインクを吐出させるクリーニングを行う機能である。
このように、吐出検査の検査結果において、吐出無しのノズルが所定の個数以上あったときは、吐出を回復する動作としてフラッシングやクリーニングを行うことにより、吐出を回復する動作によってノズルの目詰まりを取り除いてインクを吐出できるようになるので、ノズルが損傷を受けることを防止できる。
吐出回復動作部61gは、二つの機能を使い分けて機能させることができる。割り込みタイミングによって行われた吐出検査の検査結果において、吐出無しのノズルが所定の個数以上あったとき、1ページに印刷される画像の印刷をしている途中であれば、1パスの印刷を終了した時点でフラッシングを行い、1ページに印刷される画像の印刷が終了した時点であれば、1ページに印刷される画像の印刷が終了した時点で、クリーニングを行う。
クリーニングの動作時間はフラッシングの動作時間より長いので、1ページの印刷途中でクリーニングを行うと、1ページに印刷された印刷画像に、色目の違いが発生することがある。このように、フラッシングとクリーニングの二つの機能を使い分けることにより、1ページの印刷途中では、フラッシングを行い、1ページに印刷された印刷画像に、色目の違いが発生しないようにして印刷品質の低下を防止することができる。
また、フラッシングでは、完全にノズルの目詰まりを取り除くことができない場合がある。このような場合は、吐出無しのノズルが所定の個数以上あったとき、1ページの印刷途中でクリーニングを行ってもよい。こうすれば、ノズルが目詰まりしてからヘッドの損傷を受ける時間内に目詰まりを取り除くことができるので、ヘッドの損傷が発生することを防止できる。
また、割り込みタイミングに吐出検査したノズル群において吐出無しのノズルが所定の個数あったときは、他のノズル群においても、同様に吐出無しのノズルが所定の個数あると想定して、印刷ヘッドに含まれるノズルの総てを対象としてクリーニングを行う。従って、印刷を開始してから各割り込みタイミングによって中断された各印刷時間は、ノズルが目詰まりしてもヘッドの損傷を受けない時間内とすることができるので、所定の個数のノズルが目詰まりしたノズル群が有った場合でも、ヘッドの損傷が発生しないようにすることができる。
(第二変形例)
上記実施例と上記変形例では、印刷ヘッドの移動量(パス数)を印刷処理量として用いて割り込みタイミングを設定していたが、印刷媒体に印刷した枚数を印刷処理量として割り込みタイミングを設定してもよい。
1ページに印刷される印刷画像の印刷が中断されると、中断するまでに印刷された画像と中断後に印刷を再開して印刷された画像との境界が発生し、その境界において、印刷ヘッド30の位置ズレが生じ易く、印刷されない部分や印刷が重なった部分が発生し易い。そこで、印刷データを印刷媒体に印刷した枚数を印刷処理量として用いて割り込みタイミングを設定することにより、1ページに印刷される印刷画像の印刷を終了し、次の印刷媒体の印刷を開始するまでの時点で割り込みタイミングが設定されることから、1ページに印刷された印刷画像において、印刷を中断することなく連続して印刷できるので、印刷されない部分や印刷が重なった部分が発生しない。
(第三変形例)
上記実施例と上記変形例では、ノズル群に含まれる総てのノズルに対応する圧電素子に駆動信号DRVnを同時に出力して吐出検査を行ったが、ノズル群に含まれる予め定められた数のノズルに対応する圧電素子に同時に駆動信号DRVnを出力して吐出検査をおこなってもよい。
こうすれば、それぞれのノズル群について、予め定められた複数のノズルを同時に吐出検査することにより、一つの検査対象ノズルずつ、順次吐出検査する時間より、短い時間で検査ができる。
また、吐出検査の判定精度を向上させることもできる。例えば、第一実施例のように、一つのノズル群に含まれるノズル数90個から同時に吐出させる場合、検出する吐出無しノズル数が3個以上であるというように、同時に吐出させるノズル数に比べて検出する吐出無しノズル数が少ない場合、電圧値の最大変化量と閾値との差が少ないため、閾値の設定精度に依存して検出精度が低くなることがある。そこで、一つのノズル群のうち、例えば、検出するノズル数が3個であるとした場合、3個のノズルを同時に吐出させれば、少なくとも1個のノズルから吐出したときは電圧値の変化が有ったとして判定でき、電圧値の変化がなかったときは、3個のノズルからの吐出は無しとして判定できるので、電圧値の変化が有るか無いかのみを検出することによって判定できるため、検出精度が高くなる。
(第四変形例)
上記実施例と上記変形例で説明した吐出検査は、ノズル群に含まれる総てのノズルや、ノズル群に含まれる予め定められた複数のノズルを同時に吐出検査していたが、ノズル群に含まれる各ノズルを一個ずつ順次吐出して吐出検査を行ってもよい。以下処理方法について説明する。
図4に示すASIC61からの原信号ODRを印刷信号PRTnにより、各ノズル群に含まれるノズル番号に対応する圧電素子ごとに駆動信号DRVnを出力することにより、一個ずつ順次吐出して吐出検査を行う。
次に、1個ずつのノズルの吐出検査結果から、所定の個数の吐出無しのノズルが隣接して配置されているかどうかの情報を得る。所定の個数の吐出無しのノズルが隣接して配置されている場合は、吐出の回復動作を行い、所定の個数の吐出無しのノズルが隣接して配置されていない場合は、中断していた印刷を再び開始する。
このように、ノズル群に含まれる各ノズルを一個ずつ順次吐出して吐出検査を行うことにより、吐出無しのノズルが隣接して配置されているかどうかを判定することができる。前述したように、インクを吐出しないノズルが隣接した場合は、蓄熱され易いので、ヘッドの損傷が発生する確率は高いが、吐出しないノズルが隣接していない場合は、ヘッドの損傷が発生する確率は低くなる。
そこで、前述したように、一個ずつのノズルについて吐出検査をすることにより、隣接する吐出無しのノズルが所定の個数あるか否かを検出し、インクの吐出の回復動作を行うか否かについて決定できる。従って、隣接する吐出無しのノズルが所定の個数あることを検出したときにインクの吐出回復動作を行えばよいので、印刷ジョブによって印刷を開始してから印刷を終了するまでの時間を短くすることができる。
(第五変形例)
上記実施例と上記変形例では、1つのノズル列を2つのノズル群に分割したが、本変形例では、ヘッドの損傷につながる連続する所定数の不吐出ノズルの検出が可能なノズル群に分割する。
インクジェットヘッドにおいては、インク供給装置からヘッド30にインクを供給するが、インク供給の過程で気泡が大量に混入あるいは発生することがある。この場合、ヘッド内に侵入した気泡によって、ノズル列中の連続する多数のノズルからいっせいにインクが吐出しなくなる。
吐出しないノズルが連続して並んでいる場合は、隣接するノズルからインクが吐出することによって奪われるべき熱が、隣接するノズルからインクが吐出しないので、放熱されず、ヘッドの損傷が発生してしまう。そこで、ノズル群に含まれる総てのノズル数を、ヘッドの損傷につながる連続する吐出無しノズルが検出可能なように設定する。そして。ノズル群単位に吐出検査を行えば、吐出しないノズルが連続して並んでいる場合を検出できるので、ヘッドの損傷を防止することができる。
また、インクを吐出しないノズル群を検出したとき、ノズル群単位で吐出回復動作を行うようにすれば、フラッシングやクリーニングを行う対象となるノズル数が少ないことから、吐出するインク滴の量を最小限にすることができる。
次に、本変形例の吐出検査について説明する。尚、本変形例では、1ノズル群のノズル数は5個とする。従って、分割されるノズル群の数は、前述の実施例よりも相当に多くなることから、吐出検査間のパス数も少なく設定する。本変形例では、所定のパス数として4パスを設定する。もちろん、これに限定されるものでなく、更に増減してもよいし、所定のパス数として1パスを設定してもよい。
本変形例では、ノズル列をノズル数5個のノズル群にわけ、1回の検査タイミングで1ノズル群を検査対象とし、次の検査タイミングで前回検査対象としたノズル群の隣の1ノズル群を検査対象とし、検査タイミングごとに順次隣のノズル群を検査対象としていく。なお1回の検査タイミングで複数のノズル群を順次検査してもよいが、検査の所要時間を考慮して、連続印刷休止時間が長くならないよう、1回の検査タイミングにおける検査量を適宜設定すればよい。
次に、1個のノズルからインクが吐出したことを検出できる電圧値の変化量を閾値として設定し、ノズル群に含まれる総てのノズルを同時に吐出検査を行う。検出した電圧値の変化量が閾値を超えたときはインクの吐出があったと検出される。検査対象ノズル群中の不吐出ノズルあるいは吐出ノズルの位置は特定できないが、吐出したノズルが検査対象の1ノズル群中に1個以上あったことが検出されることになる。そこで、前の検査対象ノズル群あるいは次の検査対象ノズル群においてもインクの吐出がありと検出されれば、今回の検査でインクの吐出がありと検出されることによって、連続するインク不吐出ノズル数は最大でも8個以内ということになる。本変形例の場合、ヘッドの損傷につながる連続する不吐出ノズル数が9個であるということを試験によって予め求めておき、このことから1ノズル群のノズル数を5個に設定している。よって、連続する不吐出ノズル数はヘッドの損傷につながる連続する吐出無しのノズル数9個以上ではないことから、ヘッドの損傷を発生させることがない。この場合は、吐出回復動作を行う必要はない。
一方、検出した電圧値の変化量が閾値を超えなかったときは、吐出検査を行ったノズル群において、インクを吐出したノズルがなく、前の検査および次の検査で検査対象ノズル群としたノズル群において、検出した電圧値の変化量が閾値を超え、それぞれ1個以上のノズルでインクの吐出ありと検出されたとしても、今回吐出検査を行ったノズル群を含む連続するノズル群においてヘッドの損傷につながる連続する不吐出ノズル数9個以上である可能性があるので、ヘッドの損傷を防止するため、吐出回復動作を行う必要がある。この場合は、前述した第一変形例の吐出回復動作によって吐出回復を行えばよい。
本変形例では、検査対象とする1ノズル群中のノズル数を、N=(A+1)/2、 N:1ノズル郡中のノズル数、A:ヘッドの損傷につながる連続する吐出無しノズル数、ただしNが少数の場合は安全側へ設定し切り捨てる、と設定している。ヘッドの損傷につながる連続する吐出無しノズル数は、ヘッドの構造、形状、材料、駆動条件等によって異なり、試験によって予め求められる。なお、1ノズル群中のノズル数については、上記の式に限定されるものではなく、ヘッドの損傷につながる連続する吐出無しノズル数に基づいて設定されていればよい。また、本変形例では、隣り合う2つのノズル群の検査結果に基づいて連続する不吐出ノズルの存在を判定しているが、連続する3個以上のノズル群の検査結果に基づいて連続する不吐出ノズルの存在を判定してもよい。また、隣りのノズル群における不吐出ノズルの存在は考慮せず、当該検査対象ノズル群の検査結果のみから連続する不吐出ノズルの存在を判断してもよい。この場合は、隣りのノズル群を順次検査対象ノズル群としていくことは必須ではない。
(その他の変形例)
また、あるいは、上記実施例と上記変形例では、印刷処理量としてパス数を用いて割り込みタイミングを設定したが、時間を用いてもよい。印刷処理を開始してからの時間が所定の時間になったら割り込みタイミングを設定する。こうすれば、インクの粘度は時間に比例するので、インクが増粘して目詰まりするまでの時間内に割り込みタイミングをタイミングよく設定できる。
また、あるいは、印刷処理量としてインク滴の個数を用いてもよい。印刷処理量としての吐出インク滴の個数が所定の個数になったら、割り込みタイミングを設定してもよい。通常、ノズルからインクを吐出した回数が増えればヘッドの損傷を受ける確率が増す。こうすれば、吐出したインク滴の個数がヘッドの損傷を受けないインク滴の個数に到達する前に、割り込みタイミングを設定することができる。
また、上記実施例及び上記変形例では、インクジェットプリンタ10に、インク滴39の着弾受け領域であって吐出検査のための専用の領域となる検査ボックス70にインク滴を吐出して吐出検査を行うこととしたが、これ以外を着弾受け領域としてもよい。例えば、図1において、インクジェットプリンタ10に設けられたクリーニングボックス18を吐出検査のための領域としてもよい。この場合、クリーニングボックス18内に、電極部材71に相当する電極を設けておけばよい。また、印刷媒体25を裏面から支持するプラテン(図示せず)を吐出検査のための領域としてもよい。プラテンには、説明を省略するが、インクミストを吸収するための電極が溝部を形成して設けられている場合があり、この電極を用いれば吐出検査を行うことができる。また、フチ無し印刷の場合、この溝部がインク滴の着弾受け領域にもなることからも吐出検査のための領域として好適である。あるいは、図示しないが、ノズル先端におけるインクのメニスカス増粘を抑制するためのフラッシングを行う際のフラッシング領域に電極を設けることで、フラッシング領域を吐出検査のための領域としてもよい。
こうすれば、インクジェットプリンタ10内に吐出検査のための専用の領域を設ける必要が無いので、吐出検査のための領域を設けるためにインクジェットプリンタを大きくすることを回避できる。また、インクジェットプリンタに既に備えられている部材を吐出検査のための部材として兼用することができるので、インクジェットプリンタのコストアップを抑制できる。
また、上記実施例と上記変形例では、記録ヘッド30と電極部材71との間に吐出検査用の電圧を印加する際、記録ヘッド30側がプラス電位になるように印加したが、電極部材71側がプラス電位になるように印加することとしてもよい。こうすれば、記録ヘッド30付近に高い電圧を生成する回路を形成することが困難な構成を有するインクジェットプリンタのような場合など、記録ヘッド30側に高い電圧を印加できない場合でも、吐出検査用の電圧を印加することができる。なお、この場合、インク滴が吐出したとき、記録ヘッドの電圧は増加(プラス)方向に変化する。つまり、上記実施形態ではノズルからインク滴が吐出されると電圧がマイナスの方向に変化したが、この場合は、プラスの方向に変化することになる。
さらに、上記実施例と上記変形例では、ASIC61をキャリッジ20上に設けて、印刷ヘッド30を測定端子としたが、ASIC61をキャリッジ以外のインクジェットプリンタ10内に設けて、電極部材71を測定端子としてもよい。さらに、電極部材71側がプラス電位になるように電圧印加してもよいし、マイナス電位になるように電圧印加してもよい。
また、上記実施例と上記変形例は、帯電したインク滴による電極間の電解強度の変化を検出する場合の実施例であるが、従来例のように、光の光路と交差するようにインク滴を吐出させて光が遮蔽されるか否かを検出する場合にも、本発明の吐出検査装置を適用することができる。
また、上記実施例と上記変形例では、圧電素子を駆動して、ノズルからインク滴を吐出させることとしたが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけてインクを加熱し、発生した気泡によりインクを加圧してインク滴を吐出させるものとしてもよい。こうすれば、圧電素子を用いないインクジェットプリンタにも、本発明の吐出検査装置を適用することができる。
また、上記実施例と上記変形例では、一例として、印刷媒体にインク滴を吐出するインクジェットプリンタについて、これに組み込まれた吐出検査装置を説明したが、本発明はこれに限るものではないことは勿論である。例えば、ガラス基板や樹脂基板に記録液を吐出して配線パターンやカラーフィルタや有機ELディスプレイ等の画素の形成を行うインクジェット記録装置など、インクジェット方式を用いて記録液を吐出することによって、パターンや画像や図形、文字などを記録媒体に記録する装置でも、同様に本発明の吐出検査装置を適用することができるものである。
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