砒素と鉄を含有する液から、沈殿反応によって鉄砒素化合物を生成させる際、その化合物に非晶質(アモルファス)のゲル状沈殿物が多く含まれると、ろ過性が非常に悪くなる。また非晶質は残渣のボリュームが非常に大きいため取扱いにくい。さらに、砒素の固定(溶出を抑止すること)も困難である。
発明者らは詳細な検討の結果、非晶質の沈殿物が生成するか結晶質のスコロダイト型沈殿物が生成するかの臨界的なpHは1.2であることを突き止めた。最終的にpH1.2以下の状態で液を十分に撹拌すれば、反応途中で生成した非晶質も一旦再溶解したのち結晶質として再析出し、結果的に結晶性の良い(すなわち非晶質の配合量が非常に少なく、ろ過が容易な)鉄砒素化合物が分離回収可能となる。この非晶質が再溶解し結晶質として再析出する過程を以下「コンバージョン過程」いうことがある。
砒素をスコロダイト(FeAsO4・2H2O)型の化合物として固定化するという観点からは、砒素の沈殿率を高めること、すなわち、反応后液中の砒素濃度をできるだけ低くすることが望ましい。そのためには、反応前液中のFeとAsの濃度について、スコロダイトの化学量論的なFe/Asモル比よりも、Feを少し過剰にした方が有利であると考えられる。ところが、発明者らの研究によれば、結晶性の良い鉄砒素化合物を生成させながら、反応液中の砒素濃度を限りなくゼロに近付けることは非常に困難であることがわかった。Fe/Asのモル比を1より大きくしても、鉄の沈殿率はあまり上昇せず、共沈する砒素の沈殿率も改善されない。砒素の沈殿率を改善するにはpHを高めることが有利であるが、pHが1.2以上になると結晶性の悪い鉄砒素化合物が生成してしまい、砒素の固定(溶出が抑止される特性の付与)そのものが困難になる。つまり、砒素の溶出が極めて少ない結晶性の良い鉄砒素化合物を沈殿生成させる場合、反応后液中への砒素の残留は避けることができない。この后液には鉄も含まれるため、反応前液に戻して繰り返し使用するには適さない。したがって、后液は特別な処理(例えば湿式亜鉛プロセスやアルカリを使った処理)に供して処理される。
そこで本発明では視点を変え、結晶性の高い鉄砒素化合物を沈殿生成させるに際し、反応后液中の砒素濃度を限りなくゼロに近付けようというのではなく、鉄の濃度が極めて低い后液が得られる手法を採用する。反応后液中の鉄濃度が極めて低ければ、砒素が残っていても、被処理液に戻して使用することができる。あるいは、酸として硫酸が存在する液であれば石膏製造プロセスに利用することもできる。
図1に、本発明の砒素含有液の処理方法についての代表的なフローを示す。
以下、本発明の製法をより詳細に説明する。
処理対象となる砒素含有液は、非鉄製錬等で発生する種々のものが使用できる。砒素の含有量は、後述の鉄塩を混合し、必要に応じてpH調整を終えた段階の「反応前液」において、砒素濃度20g/L以上、好ましくは30g/L以上とすることが可能な液であることが望ましい。砒素濃度が高い方が、処理する際に一度にできる砒素の処理量が増大するため生産性が向上する。また、砒素濃度に応じて、ろ過、連続処理、他の薬剤の添加量を制御すればより効率的に処理可能となる。なお、砒素イオンは、溶液中において5価砒素イオンであることが望ましい。すなわち、反応中に5価の砒素イオンが存在すればよいのであって、どのように存在させるかは酸化還元反応を利用するなど、適宜選択すればよい。
この砒素含有液(被処理液)に2価の鉄イオン供給源となる塩類を混合する。塩類としては、硫酸塩、硝酸塩、塩化物のどれでも構わないが、経済的には硫酸塩が優れている。鉄塩は液体として混合してもよいし、固体物質として液中に添加して加熱撹拌中に溶解させてもよい。固体物質としての鉄塩は、例えば硫酸第一鉄7水和物などが一般的である。この物質はチタンの製錬の副産物として多量に発生し、それをそのまま使用できるメリットがある。固体物質の鉄塩を水で溶解してから砒素含有液に混合することも可能であるが、その場合は反応前液中の砒素濃度が若干下がることを考慮に入れて、砒素濃度を調整しておく必要がある。反応中において、2価の鉄イオンが存在すればよいのであって、2価の鉄イオンの添加方法は、適宜選択すればよい。被処理溶液に適合して選択してもよい。
鉄と砒素の比率は、后液中にできるだけ鉄を残さないようにするために、スコロダイト(FeAsO4・2H2O)のモル比に対して鉄が過剰にならないようにする。具体的にはFe/Asのモル比が0.8〜1.0の範囲となるようにする。0.85〜1.0の範囲とすることがより好ましく、0.9〜1.0とすることが一層好ましい。
ここで、反応前液(反応開始時の温度に昇温された状態)のpHを2.0以下とすることが好ましい。pHが2.0より高くても、反応が進行するとpHが低下するので、最終的にpHが1.2以下に下がれば、非晶質ゲルをコンバージョン過程によって結晶質のスコロダイトに変化させることが可能である。しかし、pHが高いと非晶質ゲルの生成量が多くなり、場合によっては撹拌が困難になるので、反応前pHを2.0以下とすることが好ましく、1.0〜1.5あるいは1.0〜1.2の範囲とすることが極めて有効である。必要に応じてpHを調整するために酸を添加する。酸は 塩酸、硝酸、硫酸のどれを用いても構わない。添加した鉄塩から供給される陰イオンと同種の陰イオンを含む酸を使用することが、塩類の資源化を目指す観点からは好ましい。鉄塩として硫酸塩を用いる場合、硫酸によってpHを調整するのが通常である。
なお、沈殿反応の進行に伴ってpHが低下するのは、鉄塩として供給された鉄が酸化されスコロダイト(FeAsO4・2H2O)型の結晶として析出する際、加水分解反応が同時に起こるためである。鉄塩が硫酸鉄の場合だと、例えば下記(1)式のように加水分解反応で硫酸H2SO4が生成し、この酸によってpHが低下する。
2H3AsO4+2FeSO4+1/2O2 +3H2O→ 2(FeAsO4・2H2O)+2H2SO4 ……(1)
反応前液において砒素濃度は20g/L以上であることが望ましく、25g/L以上がより好ましい。砒素濃度が高いことはpHが低いときの沈殿率向上に有効である。また砒素濃度は沈殿析出物の粒子径・比表面積に影響を及ぼし、洗浄性に優れた粗い粒子をえるためにも反応前液において砒素濃度20g/L以上を確保することが望ましい。ただし、砒素濃度が過剰に高いと、反応前のpHが1.2〜2の場合は、反応の初期に析出するゲル(非晶質物質)によって液が固まってしまう場合がある。この場合は撹拌・混合が十分にできなくなり、酸化剤を供給し続けても反応は止まってしまい、最終的に析出物は非晶質ゲルのままとなる。
鉄と砒素の沈殿物が生成する反応は、例えば上記(1)式のように、砒素の鉄共沈反応であると考えられる。この反応は概ね50℃以上で進行する。粒子の大きさを制御して粗大化させるという観点では70℃以上とすることが好ましく、90℃以上が一層好ましい。100℃以下であれば大気圧下のオープンタンクで反応させることができる。経済的には100℃以下のオープンタンク系の反応が好まれるが、酸化反応を促進するためには密閉容器において酸素分圧を高める操作を行うことが有効である。オートクレーブなどの密閉耐熱容器を用いて100℃を超える温度で反応させると、さらに酸化反応が促進される。
スコロダイト型の結晶を沈殿させる反応には酸化剤が必要である。酸化剤としては一般には酸素ガスや空気が適当であると考えられるが、過酸化水素、オゾン、希釈した酸素ガスも原理的に酸素イオン、または分子が液中で発生すれば使用可能である。また、反応を進行させるには液を撹拌する必要がある。析出反応が進むと液はスラリーとなるので、強撹拌することが望ましい。
前述のように、本発明では反応前液のFe/Asモル比を、鉄が砒素より過剰にならないように調整する。この場合、欠点として、Asの沈殿率が低下することが挙げられる。発明者らは詳細な研究の結果、中和剤あるいは酸化助剤を添加することによって、この問題が解決できることを見出した。中和剤または酸化助剤によって、沈殿反応で生成する酸((1)式では右辺のH2SO4)を消費させ、沈殿反応の進行を促進させるのである。また、触媒として機能する銅を添加する手法を採用することもできる。さらに、酸素分圧を高めた高温容器中で反応を進行させる手法を採用することもできる。
中和剤としては例えばNaOH、Mg(OH)2等が使用できる。金属マンガン、金属亜鉛、金属銅も、中和剤として選択することができる。これらは酸を消費してマンガン塩、亜鉛塩、銅塩などになる。ただし、カルシウムを使うと硫酸性の溶液では石膏が析出し、鉄砒素化合物と共沈してしまうので、本発明ではカルシウム分を添加しない方がよい。
酸化助剤としては銅酸化物、亜鉛酸化物、マンガン酸化物などが使用できる。これらの物質は、酸化剤として機能する。これらによってFe2+がFe3+になりやすくなり、主たる酸化剤(酸素ガス)によるスコロダイトの生成を補助する効果が得られる。酸化作用の強いオゾン、過酸化水素なども酸化助剤として使用できる。塩素ガスやNaClOなどの強力な酸化剤も使用できるが、この場合は液中にハロゲンが混入するため、例えばCu2Cl2等を使用して脱ハロゲンを行う必要がある。
中和剤や酸化助剤は、1種類だけを添加することもできるし、2種類以上を複合添加してもよい。これらは、(1)式のような沈殿反応の進行に伴って酸が生成し始めた以降に添加を開始する。例えば、反応開始後0.3時間程度待ってから添加を開始するのがよい。添加操作は、中和剤または酸化助剤の全量を一度に添加してもよいし、断続的あるいは連続的に添加してもよい。ただし、その中和剤・酸化助剤のトータル添加量は、沈殿反応終了後のスラリーを固液分離したろ液(反応后液)の鉄濃度が2.0g/L以下となる量を確保する必要がある。反応后液中の鉄濃度が2.0g/L以下であれば、被処理液に戻して再利用を繰り返しても弊害が生じない。反応后液中の鉄濃度が1.0g/L以下となるように中和剤・酸化助剤のトータル添加量を確保することがより好ましい。実際の作業としては、反応前液の砒素濃度や鉄濃度に応じて中和剤または反応助剤の添加量と反応后液中の鉄濃度の関係を予備実験等により予め求めておき、そのデータに基づいて添加量を決定する手法が好適に採用できる。反応により生成する酸が(1)式のように硫酸である場合、例えば8g/Lの硫酸が消費される以上のトータル添加量を確保することが望ましく、15g/Lの硫酸が消費される以上のトータル添加量を確保することがより好ましい。
一方、中和剤または酸化助剤を過剰に添加すると生成した酸の消費量が多くなり、沈殿反応終了後のスラリーのpH(反応後pH)が1.2を超える場合がある。そうなると結晶性の良い鉄砒素化合物が得られなくなる。したがって、中和剤・酸化助剤のトータル添加量は反応後pHが1.2以下となる範囲に抑える必要があるが、本発明では後述のように不純物の影響をより受けにくく析出反応に適した状態とするために、反応後pHは1より小さい範囲とする。また、沈殿反応進行中に、前記中和剤または酸化助剤を、それまでに生成した酸の全量を消費し尽くさないように添加量・添加速度をコントロールすることが望ましい。
触媒として銅含有物質を添加することも有効である。銅は、下記反応式のようにFe2+を効率良く酸化するのに役立つ。
Cu2++Fe2+ → Cu++Fe3+
2Cu++1/2O2+2H+ → 2Cu2++H2O
以上のような酸化促進操作によって液中の鉄を高い沈殿率で沈殿させる。銅含有物質の添加時期は、反応開始前であっても構わないし、反応進行中であってもかまわない。銅含有物質のトータル添加量は、反応后液の鉄濃度が2.0g/L以下となる量を確保する必要がある。ただし、過剰に添加すると后液の脱銅処理に負荷がかかり好ましくない。后液の利用方法にもよるが、Cu濃度で概ね10g/L以下の添加量とすれば効果がある。前述の中和剤や酸化助剤と複合添加する場合は、それら全体の添加量を、反応后液の鉄濃度が2.0g/L以下となる量とすればよい。
酸素分圧を高めた高温容器中で反応を進行させる場合は、容器として例えばオートクレーブが好適に使用できる。上記の中和剤、酸化助剤、触媒を添加しなくても、気相部の酸素分圧を高めた高温下で酸化剤を作用させることによって前記(1)式の反応が促進され、Fe/Asモル比が1以下の状況下でも砒素の沈殿率を向上させることができ、かつ反応后液に残る鉄の量を顕著に低減できる。反応温度が低い場合や、気相部の酸素分圧が低い場合は、中和剤、酸化助剤または触媒の添加に頼らなければ后液中の鉄濃度を十分に低減できない。種々検討の結果、反応時の温度は100℃以上を確保し、気相部の酸素分圧(ゲージ圧)は0.1MPa以上を確保することが必要である。温度の上限については特に制限されないが、概ね250℃以下の範囲が実用的である。例えば150〜200℃程度が好適である。酸素分圧は0.1〜0.5MPa程度とすればよく、例えば0.2±0.05MPaに管理する手法が採用できる。
析出反応の終了時点はpHの挙動をモニターすることで判断でき、通常、1〜2時間程度でほぼ終了しているとみられる。ただし、コンバージョン過程を利用した結晶化・熟成を十分に行わせるために、酸素ガスあるいは空気を酸化剤に使用する場合だと、3時間以上の反応時間(熟成時間を含む)を確保することが望ましい。この熟成を終了するまで撹拌を継続する。なお、密閉容器中の反応ではpH挙動を直接モニターすることは困難であるが、温度・酸素分圧に応じた種々の実験データを予め採取しておくことなどにより、適切な終了時点を判断することができる。
ここで、反応後の液(熟成を終えたスラリー)のpH(反応後pH)は、前述のように1.2以下になっている必要がある。これよりpHが高いと非晶質が多量に残留する。本発明では、反応後pHを1より小さい範囲とする。pHが1より小さい領域では、強酸性のため他の不純物の影響をより受けにくくなり、析出反応に適した状態となる。酸化剤の添加方法は、気体であれば、吹き込み、バブリング、連続、間欠等を適宜選択すればよい。固体、液体においても同様に粒状、粉状、噴霧、噴射など適宜選択すればよい。
反応後の液は固液分離される。固液分離の方法はフィルタープレス、遠心分離、デカンターなどどれでも構わない。
固液分離によって得られた反応后液は、砒素や、加水分解によって生じた酸(例えば硫酸)、および中和剤または酸化助剤に由来する陽イオンを含んでいるが、鉄は2.0g/L以下の濃度に低減されている。この液は、被処理液である砒素含有液に戻して再利用することができる。また、硫酸性の液であれば石膏の製造プロセスでも利用できる。陽イオンが高濃度であれば、いずれ析出するため、ブリードオフなどの操作が必要となる。陽イオンが銅の場合は砒素含有液に利用する前段階で銅の電解採取を実施し、電解尾液に遊離酸、砒素を残すことができる。循環型システムとしてはこれが好ましい。亜鉛やマンガンは、電解すると砒素のほうが先に析出するので好ましくない。これらはブリードオフで回収する。液には遊離酸が存在するといっても、硫酸濃度で20〜80g/L程度であるため、酸濃度としては希薄である。そのため被処理液に戻す際には適宜、濃硫酸を追加しても構わない。
固液分離された固形分は、結晶質のスコロダイト型鉄砒素化合物を主体とするものであるが、この固形分からは若干ながら砒素が溶出値が見られる。これは、反応后液の砒素濃度が比較的高いため、鉄砒素化合物に砒素が付着しているためである(スコロダイト型鉄砒素化合物そのものからは砒素の溶出はほとんど生じない)。そこで、砒素不溶出の処理が実施される。例えば固形分をリパルプし、溶出する砒素に対してFe/Asモル比が約4程度、かつpHが4以上の液に調整して共沈反応させる手法が採用できる。液のFe/As比を4にする場合、仮に液中の溶出砒素濃度が5〜10mg/Lと多くても、添加する鉄濃度は14.9から29.8mg/Lと少量で足りることになる。これによりリパルプ液中の鉄・砒素が沈殿しても、先に生成していたスコロダイトの品位にはほとんど影響を与えない、つまり砒素含有量30%以上が確保できる。鉄の供給源として、ここでは簡易的行なうためにFe3+が供給される物質を使用することができる。pH調整はNaOHやMg(OH)2を用いて行なうとよい。
その後、固形分に付着している若干量の未反応液を除去するために洗浄を行う。この洗浄は、例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、遠心分離機で追加水をケーキ内に貫通させるようにして行うと、少ない水の量で効率的に付着液を除去することができる。リパルプ洗浄を行なう場合は、カウンターカレント式で洗浄すれば効率的である。
洗浄された固形分は、砒素がおよそ30質量%、鉄もおよそ30質量%、残りは酸化物としての酸素、水素からなる化合物である。砒素濃度が薄い状態から析出させれば粒子径は小さくなるが、反応前、または途中において液の砒素濃度を20g/L以上とすれば粗い粒子からなる化合物(例えば平均粒子径は20μm前後)が得られ、BET法による比表面積も小さくなる(例えば1.0m2/g未満)。この鉄砒素化合物はスコロダイト型結晶に対応するX線回折ピークを有するものであり、砒素の溶出が顕著に抑止され、極めて減容されており、保管や廃棄に有用である。また、他の砒素を利用する産業において原料となる可能性がある。
以下に示す比較例1、2、実施例1〜6はオープンタンク系の実験、実施例7〜10は密閉系の実験である。
〔比較例1〕
出発原料として、砒素は、市販の試薬(和光純薬工業製)の砒素溶液でAs=500g/L(5価)の溶液を純水で希釈して使用した。鉄塩は、試薬(和光純薬工業製)の硫酸第1鉄・7水和物FeSO4・7H2Oを用いた。
これらの物質と純水を混合して、砒素濃度50g/L、鉄濃度36.20g/Lの砒素・鉄含有液0.7Lを調製した。この液のFe/Asモル比は0.97である。この液を容量2Lのガラス製ビーカーに移し、2段タービン撹拌羽根・邪魔板4枚をセットし、回転数1000rpmで強撹拌しながら95℃になるよう加熱した。この時点で液をごく少量サンプリングし、そのサンプル液を60℃に冷却したのち、液のpH、ORPを測定した。pHはガラス電極、ORPはAg/AgCl電極を用いて測定した。そのpHは1.36であった。測定後の液は反応容器へ戻した。pH調整のための酸は添加しなかった。したがって、この95℃の液が本発明でいう反応前液に相当し、反応前pHは1.36である。
この反応前液を95℃に保持したまま、撹拌しながら純度99%の酸素ガス(O2)を容器内に吹き込んだ。酸素ガス流量は1.0L/minとした。酸素ガス吹き込み開始から7時間、撹拌状態、温度、ガス流量を保持した。途中、1時間毎に液をサンプリングしpH、ORPを測定した。測定後の液は容器へ戻した。7時間経過時点で最後に測定したスラリーのpH値を反応後pHとする。
反応が終わった液(溶液・析出物の混合スラリー)の温度が70℃に低下したのち、ろ過面積0.01m2のアドバンテック製(東洋ろ紙株式会社)加圧ろ過器(型番:KST−142)を用いてろ過(固液分離)した。ろ過に当たって加圧ガスとして空気を使用し、加圧力(ゲージ圧)は0.4MPaにした。そのときのろ過時間を測定することで単位面積あたりのろ過速度を求めた。ろ過により得た后液は滴定による酸濃度(FA=Free Acid)の測定および組成分析に供した。ろ過により得た固形分はウェットケーキであり、これをパルプ濃度100g/Lとして純水で1時間リパルプ洗浄したのち再びろ過した。リパルプ洗浄時の撹拌強度は2段タービンディスク、500rpm、邪魔板4枚にして行なった。ろ過開始時の液温度は30℃とした。ろ過時間は上記のろ過とほぼ同じであった(以下の各例において同じ)。
洗浄とろ過の終わった固形分を60℃で18時間乾燥した。乾燥前後の重量を測定することで水分値を算出した。乾燥した固形分は「洗浄1回目」の試料として組成分析、溶出試験、粒度分布計による粒径測定、N2ガス吸着法(BET法)による比表面積測定、比重測定、圧縮密度測定、XRDによる回折パターン測定、電子顕微鏡による結晶粒子の形状観察を実施した。
溶出試験は環境庁告示13号に則った方法で行った。すなわち、固形分とpH=5の水を1対10の割合で混合し、しんとう機で6時間しんとうさせた後、固液分離して、ろ過した液を組成分析した。我が国では、この試験による砒素の溶出基準は0.3mg/Lと定められている。
粒度分布計による粒径の測定は、堀場製作所製のLA−500を用いた。
BET測定は、ユアサアイオニクス製モノソーブを用いてBE1点法による方法で行なった。
比重測定は、Beckman式比重測定で行なった。
圧縮密度は、1トン成形による固形分のかさ密度を測定した。
X線回折パターンの測定は、リガクRINT−2500を用いて、Cu−Kα、管電圧40kV、管電流300mA、走査速度0.01°/sec、走査角度2θ=5°から85°、シンチレーションカウンター使用の条件で行った。
電子顕微鏡は、日立製作所製S−4500、FE−SEM(電界放射型SEM)を用いて、加速電圧を5kVと低くして行なった。
さらに固形分については、洗浄を繰返す操作を実施した。一部の固形分は上述したように分析評価で使用したため、残っているサンプルを用いて行なった。湿量基準(WBと略記)で100gに対し水を1リットルになるように洗浄した。この時点では乾量基準(DBと略記)で50g残っていた。このときの水分値が12.26%(WB)だったので、ウェットベースで57gとなる。そこで570mLの水を加えてリパルプ洗浄を行なった。撹拌強度は2段タービンディスク、500rpm、邪魔板4枚にして行なった。洗浄時間は1時間、温度は30℃とした。洗浄が終了した後、再びろ過した。ろ過後のウェットケーキを約20g分取して時計皿に取り、60℃で18時間乾燥させた。得られた乾燥試料を「洗浄2回目」の試料として、上記と同様の手法で溶出試験に供した。
残りの約37gのウェットケーキをさらに洗浄した。固体(WB)と純水の比率は1対10である。上記と同様の方法で洗浄後、乾燥まで実施した。得られた乾燥試料を「洗浄3回目」の試料として、上記と同様の手法で溶出試験に供した。
試験条件および結果を表1〜4に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.97、95℃の反応で砒素は79.7%の沈殿率で沈殿させることができ、固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が16.59μmであり、BET値が0.23m2/gと非常に小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターン(図2に例示されるものと同様のもの、以下の各例において同じ)から、この物質はスコロダイト型の結晶であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された。溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で1.49mg/Lと少し高かったが、洗浄を繰り返すと0.15mg/Lとなり、溶出基準(0.3mg/L)を満足した。ただ、反応后液に残った鉄の濃度が7.27g/Lと高く、后液を前工程で繰り返すには問題があった。鉄の沈殿率が79.9%と低いことが原因である。
〔比較例2〕
比較例1と同様の操作を実施した。ただし反応前液の砒素濃度は50g/Lであるが、鉄濃度を33.50g/Lと少なくした。この液のFe/Asモル比は0.90である。95℃に昇温した時点でpH、ORPを測定したところ、若干pHが下がり反応前pHは1.22となったが、その他の反応条件は比較例1と同様であった。
試験条件および結果を表1〜4に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.90、95℃の反応で砒素は75.0%の沈殿率で沈殿させることができ、固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が17.15μmであり、BET値が0.22m2/gと非常に小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターンから、この物質はスコロダイト型の結晶であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された。溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で3.06mg/Lと少し高かったが、洗浄を繰り返すと0.29mg/Lとなり、溶出基準(0.3mg/L)を満足した。ただ、反応后液に残った鉄の濃度が6.26g/Lと高く、后液を前工程で繰り返すには問題があった。鉄の沈殿率が81.3%と低いことが原因である。
〔実施例1〕
比較例2と同様に、反応前液の砒素濃度を50g/L、鉄濃度を33.50g/Lとした。この液のFe/Asモル比は0.90である。比較例2と同様の手法で95℃にて酸素ガスを吹き込み反応を開始させた。ただしここでは、発生した硫酸濃度10g/L分ずつを中和する目的で、酸素ガス吹き込み開始後2時間の時点から、濃度200g/Lに調整されたNaOH水溶液をパスツールピペットを用いてゆっくりと添加した。液量が0.7リットルなので、NaOH量は0.7×10(g/L)÷98×40×2=5.714gである。NaOH水溶液は200g/Lで液比重が1.2だったので、5.714÷200×1000×1.2=34.3gのNaOH水溶液を添加した。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後2.5時間経過)した時点から、上記のNaOH水溶液を34.3g添加した。累計で68.6gである。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後3.0時間経過)した時点から、上記のNaOH水溶液を34.3g添加した。累計で102.9gである。累計の硫酸中和量は30g/Lである。そしてこの後、NaOHの添加は行なわず、酸素ガスを吹き込みながら95℃で撹拌を継続した。反応終了は比較例2と同じく7時間とし、その後、比較例2と同様の操作を行った。
試験条件および結果を表1〜4に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.90、95℃の反応で砒素は88.6%の沈殿率で沈殿させることができ、固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が14.56μmであり、BET値が0.23m2/gと非常に小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターン(図2)から、この物質はスコロダイト型の結晶であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された(図4)。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で1.81mg/Lとやや高かった。ただし、溶出した砒素の重量割合を計算すると、パルプ濃度100g/L中に砒素含有割合32.82%なので、32.82g/Lの砒素濃度中から1.81mg/Lの砒素濃度の溶出値であるから、1.81÷1000÷32.82×1000000=55ppmと溶出量は非常に少ないと言える。
ここではさらに、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、上記とは別の洗浄方法で砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが99.1gであったので991mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は58mg/L、鉄濃度は15mg/L、pHは2.43、ORPは370mVであった。ここにポリ鉄を2.6mL添加した。これは{58(mg/L)÷74.922×55.847×0.991(L)×10(当量)−15(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。
〔実施例2〕
実施例1と同様に、反応前液の砒素濃度を50g/L、鉄濃度を33.50g/Lとした。この液のFe/Asモル比は0.90である。実施例1と同様の手法で95℃にて酸素ガスを吹き込み反応を開始させた。ただしここでは、反応開始前(酸素ガス吹き込み開始前)に触媒としてタンパン(CuSO4・5H2O)をCu濃度で5g/Lになるように添加した。具体的には、液量が0.7Lなので、13.75gを添加した。反応前pHは0.97であった。その他の条件、操作は実施例1と同じである。
試験条件および結果を表1〜4に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.90、95℃の反応で砒素は91.6%の沈殿率で沈殿させることができ、固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が12.08μmであり、BET値が0.42m2/gと非常に小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターンから、この物質はスコロダイト型の結晶であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で1.27mg/Lとやや高かった。ただし、溶出した砒素の重量割合を計算すると、パルプ濃度100g/L中に砒素含有割合31.37%なので、31.37g/Lの砒素濃度中から1.27mg/Lの砒素濃度の溶出値であるから、1.27÷1000÷31.37×1000000=40ppmと溶出量は非常に少ないと言える。
ここでは実施例1と同様に、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが106.99gであったので1070mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は39mg/L、鉄濃度は6mg/L、pHは1.84、ORPは397mVであった。ここにポリ鉄を1.9mL添加した。これは{39(mg/L)÷74.922×55.847×1.07(L)×10(当量)−6(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。
〔実施例3〕
実施例1と同様に、反応前液の砒素濃度を50g/L、鉄濃度を33.50g/Lとした。この液のFe/Asモル比は0.90である。実施例1と同様の手法で95℃にて酸素ガスを吹き込み反応を開始させた。ただしここでは、発生した硫酸濃度10g/L分ずつを中和する目的とORPを上昇させる目的で、酸素ガス吹き込み開始後2時間の時点で、試薬の銅粉を添加した。液量が0.7リットルなので、0.7×10(g/L)÷98×63.546=4.539gの銅粉を添加した。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後2.5時間経過)した時点で、銅粉を4.539g添加した。累計で9.078gである。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後3.0時間経過)した時点で、銅粉を4.539g添加した。累計で13.617gである。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後3.5時間経過)した時点で、銅粉を4.539g添加した。累計で18.156gである。累計の硫酸中和量は40g/Lである。そしてこの後、銅粉の添加は行なわず、酸素ガスを吹き込みながら95℃で撹拌を継続した。その他の操作は実施例1と同じである。
試験条件および結果を表1〜4に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.90、95℃において、反応の途中で生成する遊離酸を部分的に中和しつつ銅の酸化触媒作用を利用すると、砒素は92.6%の沈殿率で沈殿させることができ、鉄の沈殿率は99.9%と非常に良好な結果であった。固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が17.86μmであり、BET値が0.25m2/gと非常に小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターンから、この物質はスコロダイト型の結晶であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で1.92mg/Lとやや高かった。ただし、溶出した砒素の重量割合を計算すると、パルプ濃度100g/L中に砒素含有割合31.46%なので、31.46g/Lの砒素濃度中から1.92mg/Lの砒素濃度の溶出値であるから、1.92÷1000÷31.46×1000000=61ppmと溶出量は非常に少ないと言える。
ここでは実施例1と同様に、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが108.18gであったので1080mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は35mg/L、鉄濃度は0mg/L、pHは2.50、ORPは332mVであった。ここにポリ鉄を1.76mL添加した。これは{35(mg/L)÷74.922×55.847×1.08(L)×10(当量)−0(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。
〔実施例4〕
実施例1と同様に、反応前液の砒素濃度を50g/L、鉄濃度を33.50g/Lとした。この液のFe/Asモル比は0.90である。実施例1と同様の手法で95℃にて酸素ガスを吹き込み反応を開始させた。ただしここでは、発生した硫酸濃度10g/L分ずつを中和する目的とORPを上昇させる目的で、酸素ガス吹き込み開始後2時間の時点で、試薬の酸化銅CuOを添加した。液量が0.7リットルなので、0.7×10(g/L)÷98×79.546=5.68gの酸化銅を添加した。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後2.5時間経過)した時点で、酸化銅を5.68g添加した。累計で11.36gである。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後3.0時間経過)した時点で、酸化銅を5.68g添加した。累計で17.04gである。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後3.5時間経過)した時点で、酸化銅を5.68g添加した。累計で22.72gである。累計の硫酸中和量は40g/Lである。そしてこの後、酸化銅の添加は行なわず、酸素ガスを吹き込みながら95℃で撹拌を継続した。その他の操作は実施例1と同じである。
試験条件および結果を表1〜4に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.90、95℃において、反応の途中で生成する遊離酸を部分的に消費しつつ銅の酸化触媒作用を利用すると、砒素は91.7%の沈殿率で沈殿させることができ、鉄の沈殿率は100%と非常に良好な結果であった。固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が10.81μmであり、BET値が0.47m2/gと非常に小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターンから、この物質はスコロダイト型の結晶であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で2.58mg/Lとやや高かった。ただし、溶出した砒素の重量割合を計算すると、パルプ濃度100g/L中に砒素含有割合31.67%なので、31.67g/Lの砒素濃度中から2.58mg/Lの砒素濃度の溶出値であるから、2.58÷1000÷31.67×1000000=81ppmと溶出量は非常に少ないと言える。
ここでは実施例1と同様に、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが106.69gであったので1067mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は44mg/L、鉄濃度は0mg/L、pHは2.53、ORPは337mVであった。ここにポリ鉄を2.2mL添加した。これは{44(mg/L)÷74.922×55.847×1.07(L)×10(当量)−0(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。
〔実施例5〕
実施例1と同様に、反応前液の砒素濃度を50g/L、鉄濃度を33.50g/Lとした。この液のFe/Asモル比は0.90である。実施例1と同様の手法で95℃にて酸素ガスを吹き込み反応を開始させた。ただしここでは、発生した硫酸濃度10g/L分ずつを中和する目的とORPを上昇させる目的で、酸素ガス吹き込み開始後2時間の時点で、試薬の酸化亜鉛ZnOを添加した。液量が0.7リットルなので、0.7×10(g/L)÷98×81.37=5.81gの酸化亜鉛を添加した。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後2.5時間経過)した時点で、酸化亜鉛を5.81g添加した。累計で11.62gである。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後3.0時間経過)した時点で、酸化亜鉛を5.81g添加した。累計で17.43gである。さらに30分経過(酸素ガス吹き込み開始後3.5時間経過)した時点で、酸化亜鉛を5.81g添加した。累計で23.24gである。累計の硫酸中和量は40g/Lである。そしてこの後、酸化亜鉛の添加は行なわず、酸素ガスを吹き込みながら95℃で撹拌を継続した。その他の操作は実施例1と同じである。
試験条件および結果を表1〜4に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.90、95℃において、反応の途中で生成する遊離酸を酸化亜鉛を利用して部分的に消費させると、砒素は91.8%の沈殿率で沈殿させることができ、鉄の沈殿率は99.6%と非常に良好な結果であった。固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が12.01μmであり、BET値が0.35m2/gと非常に小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターンから、この物質はスコロダイト型の結晶であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で1.63mg/Lとやや高かった。ただし、溶出した砒素の重量割合を計算すると、パルプ濃度100g/L中に砒素含有割合32.08%なので、32.08g/Lの砒素濃度中から1.63mg/Lの砒素濃度の溶出値であるから、1.63÷1000÷32.08×1000000=51ppmと溶出量は非常に少ないと言える。
ここでは実施例1と同様に、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが106.79gであったので1068mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は47mg/L、鉄濃度は2mg/L、pHは2.50、ORPは337mVであった。ここにポリ鉄を2.33mL添加した。これは{47(mg/L)÷74.922×55.847×1.08(L)×10(当量)−2(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。
〔実施例6〕
実施例1と同様に、反応前液の砒素濃度を50g/L、鉄濃度を33.50g/Lとした。この液のFe/Asモル比は0.90である。実施例1と同様の手法で95℃にて酸素ガスを吹き込み反応を開始させた。ただしここでは、発生した硫酸濃度10g/L分ずつを中和する目的とORPを上昇させる目的で、酸素ガス吹き込み開始後2時間の時点で、試薬の二酸化マンガンMnO2を添加した。液量が0.7リットルなので、0.7×10(g/L)÷98×86.94÷88.5%(純度)=7.0gの二酸化マンガンを添加した。さらに15分経過(酸素ガス吹き込み開始後2.25時間経過)した時点で、二酸化マンガンを7.0g添加した。累計で14.0gである。累計の硫酸中和量は20g/Lである。そしてこの後、二酸化マンガンの添加は行なわず、酸素ガスを吹き込みながら95℃で撹拌を継続した。その他の操作は実施例1と同じである。
試験条件および結果を表1〜4に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.90、95℃において、反応の途中で生成する遊離酸を二酸化マンガンの酸化力を利用して部分的に消費させると、砒素は92.7%の沈殿率で沈殿させることができ、鉄の沈殿率は99.6%と非常に良好な結果であった。固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が9.91μmであり、BET値が2.02m2/gであった。X線回折パターンから、この物質はスコロダイト型の結晶であることを確認された。SEMによる形状観察では若干表面状態が荒れた様子が見られたが、全体的には粗い結晶粒子が観察された。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で5.19mg/Lとやや高かった。
ここでは実施例1と同様に、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが116.91gであったので1169mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は43mg/L、鉄濃度は0mg/L、pHは2.00、ORPは559mVであった。ここにポリ鉄を2.34mL添加した。これは{43(mg/L)÷74.922×55.847×1.17(L)×10(当量)−0(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。
〔実施例7〕
表5に示す組成の砒素含有液を使用し、密閉系のオートクレーブの試験を実施した。上記砒素含有液に、試薬のFeSO4および純水を加えて、砒素濃度50.13g/L、鉄濃度36.13g/Lの被処理液を0.7Lを用意した。この液のFe/Asモル比は0.97である。これを容量1Lのチタン製オートクレーブに入れ、2段タービン撹拌羽根をセットして、密閉した。気相部の容積は全容積1Lから被処理溶液0.7Lと撹拌羽根その他の器具の容量を差し引くと概ね0.1Lである。この段階では、FeSO4がまだ完全に溶解しておらず、スラリー状となっていたが、オートクレーブ中での昇温過程で完全に溶解することが予め予備実験により確認されている。pHやORPの経時変化は密閉容器のため測定することができないので、反応後pHについてのみ、60℃に降温した状態で測定した。反応前pHはオープン系の試験(95℃)よりpH=約1と判断される。
液を500rpmで撹拌しながら昇温し、気相部に存在する不活性ガス(初期の空気に由来するもの)をできるだけ排除するために、100℃の状態で気相部に通じるバルブを一旦開き、ゲージ圧がゼロになるまで内部のガスを追い出した。その後、再度密閉状態とし、175℃まで昇温し、その温度に保った。気相部のゲージ圧は約0.8MPaまで上昇した。その後、純度99%以上の酸素ガスを容器内に吹き込んだ。気相部の酸素分圧は0.2MPaに設定した。その状態を維持するためにゲージ圧(全圧)が0.2+0.8=1.0MPaとなるように酸素ガス導入バルブを調整した。圧力計の指示が下がってきた場合は酸素ガスの供給バルブの開度を大きくして、酸素ガスの導入量を増大させ、酸素分圧を約0.2MPaに維持した。この状態で撹拌を継続しながら5時間保持した。
その後、酸素ガスの導入を止め、ヒーターをOFFにして、撹拌は継続しながら約1時間かけて液を100℃以下まで冷却した。その後、容器を大気開放して、容器内部の液を沈殿物と共に取り出した。これを比較例1に記載した方法でろ過、洗浄し、前述の各種測定・観察に供した。
試験条件および結果を表6〜8に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.97、175℃において、酸素分圧を0.2MPaに高めた状態で反応を進行させると、砒素は93.9%の沈殿率で沈殿させることができ、鉄の沈殿率は97.7%と非常に良好な結果であった。固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が32.4μmであり、BET値が0.79m2/gと小さいことから、粗い粒子からなるものである。この物質はX線回折により結晶質であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で3.22mg/Lとやや高かった。ただし、溶出した砒素の重量割合を計算すると、パルプ濃度100g/L中に砒素含有割合34.47%なので、34.47g/Lの砒素濃度中から3.22mg/Lの砒素濃度の溶出値であるから、3.22÷1000÷34.47×1000000=93ppmと溶出量は非常に少ないと言える。
ここでは実施例1と同様に、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが111.65gであったので1117mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は44mg/L、鉄濃度は13mg/L、pHは1.90、ORPは490mVであった。ここにポリ鉄を2.21mL添加した。これは{44(mg/L)÷74.922×55.847×1.117(L)×10(当量)−13(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。
〔実施例8〕
表5に示す組成の砒素含有液を使用し、実施例7と同様に、密閉系のオートクレーブの試験を実施した。ただしここでは、反応温度を175℃から200℃に変更した。それ以外は実施例7と同条件で実験を行った。
試験条件および結果を表6〜8に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.97、200℃において、酸素分圧を0.2MPaに高めた状態で反応を進行させると、砒素は94.5%の沈殿率で沈殿させることができ、鉄の沈殿率は98.1%と非常に良好な結果であった。固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が23.92μmであり、BET値が0.54m2/gと小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターンから、この物質はX線回折により結晶質であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で2.21mg/Lとやや高かった。ただし、溶出した砒素の重量割合を計算すると、パルプ濃度100g/L中に砒素含有割合34.72%なので、34.72g/Lの砒素濃度中から2.21mg/Lの砒素濃度の溶出値であるから、2.21÷1000÷34.72×1000000=64ppmと溶出量は非常に少ないと言える。
ここでは実施例1と同様に、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが104.55gであったので1046mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は37mg/L、鉄濃度は9mg/L、pHは1.83、ORPは493mVであった。ここにポリ鉄を1.75mL添加した。これは{37(mg/L)÷74.922×55.847×1.046(L)×10(当量)−9(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。
〔実施例9〕
表5に示す組成の砒素含有液を使用し、実施例7と同様に、密閉系のオートクレーブの試験を実施した。ただしここでは、被処理液の砒素濃度50.13g/L、鉄濃度33.69g/Lとして、Fe/Asモル比を0.9に変更した。また、反応後のスラリーを1日放置後、固液分離した。それ以外は実施例7と同条件で実験を行った。
試験条件および結果を表6〜8に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.90、175℃において、酸素分圧を0.2MPaに高めた状態で反応を進行させると、砒素は89.6%の沈殿率で沈殿させることができ、鉄の沈殿率は98.8%と非常に良好な結果であった。固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が26.63μmであり、BET値が0.45m2/gと小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターンから、この物質はX線回折により結晶質であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で5.72mg/Lとやや高かった。
ここでは実施例1と同様に、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが91.2gであったので912mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は38mg/L、鉄濃度は5mg/L、pHは1.88、ORPは441mVであった。ここにポリ鉄を1.58mL添加した。これは{38(mg/L)÷74.922×55.847×0.912(L)×10(当量)−5(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。
〔実施例10〕
表5に示す組成の砒素含有液を使用し、実施例9と同様に、密閉系のオートクレーブの試験を実施した。ただしここでは、反応温度を175℃から200℃に変更した。それ以外は実施例9と同条件で実験を行った。
試験条件および結果を表6〜8に示す。
砒素濃度50g/L、Fe/Asモル比=0.90、200℃において、酸素分圧を0.2MPaに高めた状態で反応を進行させると、砒素は89.4%の沈殿率で沈殿させることができ、鉄の沈殿率は99.2%と非常に良好な結果であった。固形分は水分が少なく砒素品位が30%を超えるものが得られた。つまり非常にコンパクトな形で砒素を析出させることができた。この物質は平均粒子径が23.87μmであり、BET値が0.43m2/gと小さいことから、粗い粒子からなるものである。X線回折パターン(図3)から、この物質はX線回折により結晶質であることを確認された。SEMによる形状観察では粗い結晶粒子が観察された(図5)。反応后液の鉄濃度は2.0g/L以下と低く、前工程に戻して利用することが可能なレベルであった。
この反応后液を撹拌しながら、生石灰(CaO)を加えてpH=2まで中和を行った。硫酸系の溶液であり、石膏が析出したが、鉄の沈殿はなく、石膏が着色することはなかった。したがって、この洗浄后液は石膏の製造にも利用可能であることが確認された。
溶出試験の結果、砒素の溶出量は洗浄1回目で2.21mg/Lとやや高かった。ただし、溶出した砒素の重量割合を計算すると、パルプ濃度100g/L中に砒素含有割合35.11%なので、35.11g/Lの砒素濃度中から2.21mg/Lの砒素濃度の溶出値であるから、2.21÷1000÷35.11×1000000=63ppmと溶出量は非常に少ないと言える。
ここでは実施例1と同様に、本例の上記条件で別途作成した鉄砒素化合物(反応終了後に固液分離し、未洗浄のもの)を用いて、砒素不溶出処理を行った。すなわち、1回目のリパルプ洗浄時に、ポリ鉄(硫酸第二鉄;Fe3+の溶液、鉄濃度で160g/L)を添加して、さらにNaOH液で洗浄液をpH=5に中和した。具体的には、未洗浄時のケーキが92.4gであったので924mLの純水でリパルプを実施した。このときの洗浄水の砒素濃度は42mg/L、鉄濃度は3mg/L、pHは1.82、ORPは432mVであった。ここにポリ鉄を1.8mL添加した。これは{42(mg/L)÷74.922×55.847×0.924(L)×10(当量)−3(mg/L)}÷160(g/L)から計算した値である。NaOH液は200g/L濃度のものを用いてパスツールピペットでゆっくりと滴定した。固液分離後、得られたケーキを60℃で乾燥し、その乾燥物質について上記の溶出試験を実施した。その結果、砒素溶出値は0.3mg/L未満であった。