JP5070525B2 - タリウム含有鉄・砒素化合物およびその製法並びに砒素・タリウム含有水溶液の処理方法 - Google Patents

タリウム含有鉄・砒素化合物およびその製法並びに砒素・タリウム含有水溶液の処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、タリウムを含有する鉄・砒素酸化化合物であって、特に砒素とタリウムが同時に不溶化して存在し、砒素およびタリウムの廃棄や保管に適した物質およびその製法に関する。また、砒素とタリウムを含有する水溶液の処理方法に関する。
非鉄製錬においては、工程の途中で種々の製錬中間物が発生し、また、様々な形態の製錬原料が使用される。これらの製錬中間物や製錬原料には有価金属が含まれている一方で、砒素(As)やタリウム(Tl)といった人体に有害な元素が含まれるものもある。
湿式亜鉛製錬を例に挙げると、亜鉛精鉱(亜鉛硫化物原料)を硫酸浸出して得られる「亜鉛浸出残渣」の中に砒素が含まれ、「亜鉛浸出液」の方にタリウムが含まれる。砒素は、亜鉛浸出残渣を処理する過程で例えば砒化銅として回収される。タリウムは、亜鉛浸出液を処理する過程で一部はカドミウム等とともに除去されるが、タリウムの処理には多大なコストが費やされている。
砒素は半導体原料として有用であるが、廃棄に回される分も多い。これまでに、砒素を溶出しないように固定化する処理方法が種々検討されてきた。例えば特許文献1には、砒化銅など砒素濃縮パルプに鉄源と酸素を加え、150〜200℃(423〜473K)に加熱して、砒素を結晶性の安定な化合物として固定する方法が記載されている。特許文献2には、砒素含有液に鉄溶液と酸素を加え、150〜175℃でスコロダイト(FeAsO4・2H2O)を主体とする結晶性化合物を合成し、その後、スコロダイトに混入した銅を溶出させ、砒素品位を高めたスコロダイト中に砒素を固定する方法が記載されている。
一方、タリウムは、湿式亜鉛製錬での発生量は砒素に比べわずかであるが、環境問題からその固定方法の確立が強く求められている。しかし、タリウムを固定する技術については、未だ十分に研究が進んでいるとは言えず、その固定方法は明確にされていない。唯一、非特許文献1にはタリウムがジャロサイトとして沈殿する可能性が記載されている。タリウムジャロサイトはTlFe3(SO42(OH)6の化合形態をとると考えられる。しかし、この場合にタリウムが不溶化されているかどうか、確認されていない。ジャロサイトは本来不安定な物質であることから、この手法によってタリウムが安定に固定できることは考えにくい。
特開平11−277075号公報 特開2000−219920号公報 J.M.Zinck and J.E.Dutrizac、「The behaviour of zinc, cadmium, thallium, tin, selenium during ferrihydrite precipitation from sulphate media」、CIM Bulletin Environment Technical Paper、1998年4月、vol.91、No.1019、p.94−101
本発明はこのような現状に鑑み、砒素とタリウムを同時に固定できる新たな化合物を提供しようというものである。また、そのプロセスによって砒素とタリウムを含有する水溶液を顕著に無害化しうる当該水溶液の処理方法を提供しようというものである。
上記課題を達成するために、本発明では、砒素イオンとタリウムイオンと2価の鉄イオンを含む水溶液を酸化剤存在下で150℃を超える温度域、好ましくは165〜210℃に加熱して、タリウムを鉄および砒素と共に沈殿析出させることにより、結晶性の化合物を合成する手法を採用する。これにより、砒素とタリウムが不溶化したタリウム含有鉄・砒素化合物が得られる。この化合物はスコロダイトとは異なる結晶構造を有し、質量割合で砒素20%以上例えば32〜38%、タリウム1000ppm以上例えば2500〜3700ppmを含む。
前記酸化剤として酸素ガスを使用することが好適である。この場合、例えばオートクレーブ中で、気相部の酸素分圧(ゲージ圧)を0.1〜0.5MPaに維持し、水溶液を撹拌しながら沈殿反応を進行させると良い。
本発明によれば、人体に有害であるにもかかわらず、物質中へ安定な形で固定する方法が見出されていなかったタリウムについて、同じく人体に有害である砒素と共に固定することが可能になった。したがって本発明は、非鉄製錬工程で発生する砒素およびタリウムの廃棄や保管に関し、安全性向上に寄与するものである。
特許文献1、2に示されるように、砒素を固定する手法としては鉄・砒素酸化化合物を形成させることが有効である。特に、特許文献2のようにスコロダイトとして砒素を固定すると、スコロダイト中に含有される銅をリパルプ工程により除去できる点で効果的である。
そこで発明者らは、スコロダイトを合成する沈殿過程でタリウムを共沈させたとき、タリウムが溶出しない物質が得られる可能性について種々検討を行ってきた。しかしながら、スコロダイトを合成する沈殿反応において、タリウムは沈殿せず、固定化できないことがわかった。反応温度を150℃まで上昇させても、スコロダイトは析出するものの、タリウムは沈殿せず液中に残る。
ところが、反応温度を150℃よりもさらに上昇させていくと、スコロダイトとは異なる結晶構造の物質が合成されるようになり、そのとき砒素と共にタリウムも沈殿することがわかった。しかもその合成された新しい鉄・砒素化合物に取り込まれたタリウムは極めて溶出しにくいことが明らかになった。このとき、砒素についてもスコロダイトと同様に溶出が抑止される。すなわち、砒素とタリウムを同時に固定できる化合物が得られるのである。
以下、この化合物の製法について説明する。
《原料物質》
上記の化合物を合成するためには、処理の対象となる砒素含有物質およびタリウム含有物質、並びに鉄含有物質、酸化剤が必要である。
〔砒素含有物質〕
水系溶媒中で砒素がイオンとして存在しうる物質であれば種々のものが採用できる。湿式亜鉛製錬で生じる砒化銅を処理対象とする場合であれば、例えば特許文献2に開示されるように、当該砒化銅のパルプに希薄な硫酸溶液を加えてパルプ濃度が50〜200g/L(g/1000cm3)となるように調整した後、酸素を加えて該パルプを溶解した硫酸酸性の砒素含有液を採用することができる。この場合、砒素含有液中には銅や亜鉛などの有価金属が比較的多量に含まれるが、本発明の製法は水熱合成反応であるため、不純物を特に厳しく制限する必要はない。
ただし、有価金属の含有量をできるだけ低減した化合物を得るためには、不純物を除去する処理を経た砒素含有物質を使用することが好ましい。そのような処理方法としては、本出願人による特願2006−126896号に開示の処理が適用できる。すなわち、砒化銅、硫化砒素等の砒素含有物質に対し、アルカリ浸出・酸化工程、アルカリ土類金属置換工程、洗浄工程、硫酸溶解工程、を施すことにより不純物を低減した砒素含有溶液を用意することができる。
〔タリウム含有物質〕
水系溶媒中でタリウムが1価のイオンとして存在しうる物質であれば種々のものが採用できる。例えばTl2SO4を主体とする物質や、TlClを主体とする物質が挙げられる。3価のタリウム物質も存在するが、3価のタリウムは不安定で、ハロゲン存在下でなければ1価になる。湿式亜鉛製錬の浄液工程で生じるカドミウムを含んだタリウム残渣を使用することもできる。発明者らの検討の結果、タリウム残渣中のカドミウムは、本発明に従って合成される化合物中に取り込まれない。鉄の加水分解により酸が発生するので、その酸の影響で液中に溶解したまま留まるものと考えられる。カドミウムを含む原料物質を使用して合成された化合物は、固液分離または洗浄の過程でカドミウムを除去すれば問題ない。タリウム含有物質中の不純物についても、特に厳しく制限する必要はない。
〔鉄含有物質〕
水系溶媒中において2価の鉄イオンが供給される塩類が採用される。硫酸塩、硝酸塩、塩化物のどれでも構わないが、経済的には硫酸塩が好ましい。例えば、硫酸第一鉄7水和物(FeSO4・7H2O)が好適である。これはチタン製錬の副産物として多量に存在し、それをそのまま使用することができる。予め鉄塩を溶解させた水溶液を用意してもよいが、例えば上記のFeSO4・7H2Oを合成反応の昇温過程で撹拌しながら溶解させても構わない。
〔酸化剤〕
酸化剤としては酸素ガスを使用することが好ましい。本発明では後述のようにオートクレーブなどの密閉容器中で水溶液の温度を上昇させ、酸化反応を起こさせる。酸化剤として空気を使用すると、反応に消費されない不活性ガス成分によって容器内の圧力が上昇し、ガスを送り込めなくなってしまう。酸素ガス以外の使用可能な酸化剤としては、過酸化水素水、オゾン、二酸化マンガンなどが挙げられる。
《工程》
〔被処理液の調製〕
前記の砒素含有物質、タリウム含有物質および鉄含有物質を混合した溶液を作る。後述の実施例に示されるように、本発明によって合成されるタリウム含有鉄・砒素化合物における鉄、砒素、タリウムのモル比は、例えばFe:As:Tl=1:1:0.003程度である。したがって、各原料物質から供給される鉄、砒素、タリウムが過不足なく当該化合物の生成に使用されると仮定すれば、鉄、砒素、タリウムのモル比が上記に近い比率となるようにすればよいことになる。しかし、実際にはその通りにはいかない。種々検討の結果、下記(1)式および(2)式を満たす範囲のモル比に調整することが好ましい。
0.9≦Fe/As≦2.0 ……(1)
0.0025≦Tl/As≦0.1 ……(2)
特に、(1)式に替えて下記(1)’式を採用することがより好ましい。
1.3≦Fe/As≦1.7 ……(1)’
また、(2)式に替えて下記(2)’式を採用することがより好ましく、下記(2)’’式を採用することが一層好ましい。
0.0025≦Tl/As≦0.01 ……(2)’
0.0030≦Tl/As≦0.0050 ……(2)’’
液中における砒素の濃度は、例えば1g/L(リットル)程度と低くても、鉄、砒素、タリウムのモル比が上記の関係にある限り、目的とするタリウム含有鉄・砒素化合物の合成は可能である。しかし、工業的な規模での生産性を考慮すると処理前の液中における砒素濃度は10g/L以上とすることが望ましく、例えば10〜100g/Lの範囲で調整すればよい。不純物が比較的多い場合は砒素濃度を20g/L以上とすることが好ましく、30g/L以上が一層好ましい。また、砒素濃度は析出する化合物の粒子径および比表面積に影響を及ぼす。したがって、洗浄性に優れた粗い粒子の化合物を得るという観点からも、砒素濃度は20g/L以上とすることが望ましい。
液中におけるタリウム濃度および鉄濃度は、砒素の濃度を上記のように設定した上で、鉄、砒素、タリウムのモル比が前記(1)式および(2)式、好ましくは前記(1)’式および(2)’式を満たすように調整すればよい。
液のpHは2以下とすることが望ましく、1以下が一層望ましい。
〔化合物の合成〕
上記のようにして準備した被処理液を、オートクレーブのような密閉可能な耐圧・耐熱容器(以下、単に「容器」という)に入れ、ある程度の容積の気相部分を残して密閉状態としたのち、撹拌しながら昇温していく。前述のように、鉄含有物質として固体物質を使用し、この昇温過程で溶解させても構わない。その場合は、鉄含有物質が溶解した後の液が、上述の条件を満たすようにする。
容器の気相部には初期の空気に由来する不活性ガス(主として窒素)が存在するが、酸化による化合物の合成反応を効率よく進行させるために、この不活性ガスはできるだけ容器から排出しておくことが望ましい。オートクレーブにおいてこの操作を比較的簡単に行うには、例えば次のようにすればよい。すなわち、液温が100℃に達したとき、容器内の気相部は、液が蒸発して生じた水蒸気と初期の空気との混合ガスに満ち、ゲージ圧で概ね0.1MPaを示すようになる。この状態で一旦、容器内の気相部に通じるバルブ(パージバルブ)を開き、ゲージ圧がゼロになるまで内部のガスを放出させる。これによって初期の空気に由来する不活性ガスは大部分が排気される。その後バルブを閉じ、さらに昇温を続ける。
150℃を超える所定の反応温度に達したら、一定温度に維持されるようにヒーター出力を調整し、この温度でのゲージ圧P1(MPa)を読み取る。その後、気相部または液相部につながるガス導入管のバルブを開いて酸化剤である酸素ガスを容器内に供給する。前記の圧力P1は酸素ガス導入前に気相部に存在していたガスの全圧を示しているが、上記のように内部のガスを放出させる操作を行った後に密閉状態で150℃を超える温度に昇温した場合、P1に占める初期の空気に由来する酸素分圧は僅かである。そこで、容器内の気相部を所定の酸素分圧PO2(MPa)にコントロールするためには、反応中、容器内の気相部の全圧を示す圧力計の指示がP1+PO2になるように、ガス導入管のバルブを調製すればよい。発明者らの詳細な検討の結果、反応中の容器内酸素ガス分圧PO2がゲージ圧で0.1〜0.5MPaの範囲にあれば結果に大きな差は生じないことが確認された。なお、酸素ガスに替えて他の酸化剤を液中に投入しても構わない。
上記のように酸素ガス(または他の酸化剤)を容器中に添加すると沈殿反応が生じる。液を撹拌することにより反応が進行するが、100℃を超える高温での水熱合成反応であるため、必ずしも強撹拌とする必要はない。本発明で目的とするタリウムが固定された鉄・砒素酸化化合物を合成するには、少なくとも150℃を超える温度域で沈殿させることが必要である。反応温度が低いとスコロダイトが生成してしまい、その場合にはタリウムが共沈しない。160℃以上とすることが望ましく、170℃以上が一層好ましい。一方、反応温度があまり高いと、全圧が上昇しすぎて装置への負荷が過大となり、作業性も低下する。工業的な規模では210℃以下の範囲で反応温度を設定することが効果的である。
酸化化合物の沈殿反応が進行するに伴って、容器内に供給される酸素が消費される。反応の終了は酸素ガスの消費がなくなったこと、すなわち、一定のゲージ圧を維持するために酸素ガスの供給が必要なくなったことによって判断できる。5h(時間)の反応時間を確保すれば充分であり、多くの場合、1〜2h程度で反応が終了する。
〔固液分離〕
反応後のスラリーは、温度を100℃未満に低下させた後、固液分離に供される。固液分離はフィルタープレス、遠心分離、デカンターなど一般的な手法で実施できる。
固液分離によって発生した液(后液)は、例えば硫酸酸性の場合FeSO4の加水分解でH2SO4が発生することにより、pHが1より低くなる。酸化還元電位ORPは400mV以上になる。この后液中には極微量であるが未反応の砒素、鉄、タリウムが存在する他、加水分解で生じた酸(例えば硫酸)が存在する。この后液は製錬工程内で酸を含む液として再利用される。
固液分離によって発生した固形分(沈殿物)は、付着している未反応元素を除去するために洗浄に供される。被処理液として砒素濃度が例えば20g/L以上と高い液を使用した場合には、粒子径が15μm前後、BET比表面積が1m2/g未満と粗く、水分の少ないものが得られる。そのような固形分はろ過性、洗浄性に優れるので、例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、遠心分離機などにより洗浄水が固形分ケーキを貫通するように洗浄すると、比較的少量の水で効率良く付着物質の除去ができる。リパルプ洗浄を行う場合でも、カウンターカレント式で洗浄を行うことで水の節約効果が大きくなる。
洗浄された固形分は、質量割合で砒素20%以上、タリウム1000ppm以上を含む。例えば、砒素32〜38%より具体的には34〜37%、タリウム2500〜3700ppmより具体的には2900〜3400ppm、鉄23〜30%より具体的には25〜28%、を含むものが得られる。残部は酸化化合物としての酸素、水素が大部分を占める。この物質は、反応温度が低くタリウムが共沈しない場合に得られるスコロダイトと比べ、硫黄分が少なくなっているのが特徴である。もし、前述のジャロサイトとしてタリウムが沈殿しているのであれば、硫黄分が増大するはずであるから、この物質はスコロダイトでもなく、ジャロサイトでもない、新たな結晶構造を有するタリウム含有鉄・砒素酸化化合物である。
このタリウム含有鉄・砒素酸化化合物は、砒素とタリウムの溶出が極めて起こりにくく、これら両元素の固定化を同時に実現したものである。したがって、これは砒素およびタリウムの廃棄、堆積または保管に極めて適した固形物質であると言える。
《比較例1》
出発原料として以下のものを用いた。
・砒素含有物質: As濃度500g/Lの砒素溶液の試薬(和光純薬工業社製)を純水などで希釈したもの。
・タリウム含有物質: Tl2SO4の試薬(和光純薬工業社製)。
・鉄含有物質: 硫酸第一鉄7水和物FeSO4・7H2Oの試薬(和光純薬工業社製)。
これらを秤量し、純水と混合して、砒素濃度50g/L、鉄濃度55.91g/L、タリウム濃度0.5g/Lの被処理液0.7Lを用意した。この場合、モル比でFe/As=1.5、Tl/As=0.0037となる。
この被処理液を容量1Lのオートクレーブに移し、撹拌羽根(2段パドル翼)、および液相に通じる挿入ガス管をセットして密閉した。気相部の容積は全容積1Lから被処理溶液0.7Lと撹拌羽根その他の器具の容量を差し引くと概ね0.1Lである。撹拌羽根を1000rpmで回転させて液を強撹拌しながら95℃になるよう昇温した。気相部に存在する不活性ガス(初期の空気に由来するもの)をできるだけ排除するために、95℃の状態で気相部に通じるバルブを一旦開き、ゲージ圧がゼロになるまで内部のガスを追い出した。その後、再度密閉状態とし、95℃に保持したまま、純度99%の酸素ガスを容器内に吹き込んだ。密閉容器内での反応なので圧力が上昇する。気相部の酸素分圧が概ね0.2MPaに維持されるように、酸素ガス導入バルブを調整しながら酸素を吹き込んだ。この状態で撹拌を継続しながら5h保持した。この間に沈殿物の合成反応は終了している。
表1に、被処理液の条件および反応条件を示す(以下の各例において同じ)。
5h経過後、温度が100℃以下であることを確認し、密閉容器内の圧力を下げるために気相部に通じるバルブを開いた。反応終了後の溶液・沈殿物混合スラリーを取り出し、70℃以下の温度でろ過することにより固液分離した。ろ過の方法は加圧ろ過方式で行なった。具体的にはアドバンテック製の1.5リットル加圧ろ過器を用いた。ろ過面積は0.01m2である。これにPTFEのメンブランフィルター(目開きが1μmのもの)をセットした。ろ過器の上部よりスラリーを投入し、蓋をした後、エアーコンプレッサーで加圧された圧力0.4MPaの空気を用いて加圧ろ過を行い、ろ過器下部より固液分離された液を回収した。この操作を下部より加圧した空気が噴出するまで行なった。加圧を開始した時点から、下部より空気が吹き出し始める時点までの時間を計測し、これをろ過時間とした。そして、ろ過時間から単位面積あたりのろ過速度を算出し、ろ過性を評価した。このろ過速度がろ過面積1m2あたり5〜10L/min以上であれば、工業的規模での操業に適した良好なろ過性を有していると判断される。
ろ過した后液について、pH測定、ORP測定、滴定による酸濃度(FA=Free Acid)の測定、液濃度の組成分析を行った。また、液濃度からAs、Fe、Tlの沈殿率を求めた。
表2に、ろ過性および后液の測定結果を示す(以下の各例において同じ)。
一方、ろ過した固形分(ウェットケーキ)については、リパルプ洗浄を行った。このとき洗浄液には純水を用い、パルプ濃度100g/L、温度30℃として、2段タービンディスク(邪魔板4枚)で500rpmの撹拌を1h行った。その後、再び上記と同様の方法でろ過することにより固液分離した。ろ過時間は前記の場合とほぼ同じであった。
分離された固形分について、水分を含んだ重量を測定した。その後、これを60℃で18hの乾燥処理に供し、乾燥固形物を得た。乾燥前後の重量差から、洗浄後の固形分に含まれる水分量を算出した。
乾燥固形物について、組成分析を行い、As、Fe、S、Tlの含有量(質量%またはppm)を調べた。その分析値からFe/As原子比およびTl/As原子比を算出した。また、As1トンを固定するために発生する乾燥固形物の量(発生量)を算出した。
表3に、固形分についてのこれらの測定結果を示す(以下の各例において同じ)。
乾燥固形物について、さらに、粒度分布、BET比表面積、比重、圧縮密度、X線回折パターンを測定した。
粒度分布は、堀場製作所(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置LA−500を用いて測定し、平均粒径D50、および粒径5μm以下の粒子の体積割合を求めた。
BET比表面積は、ユアサアイオニクス(株)製、モノソーブを用いて、BET一点法により測定した。
比重は、Beckman式比重測定装置で測定した。
圧縮密度は、1トン成形による固形分のかさ密度を測定することにより求めた。
X線回折は、(株)リガク製、RINT−2500を用いて、以下の条件で行った。
Cu−Kα線使用、管電圧40kV、管電流300mA、走査速度0.01°/sec、走査角度2θ:5〜85°、シンチレーションカウンター使用。
図1にX線回折パターンを示す(以下の各例において同じ)。
次に、乾燥固形物について、環境庁告示13号に則った方法で溶出試験を行った。すなわち、乾燥固形物とpH=5の水を質量比で1対10の割合で混合し、しんとう機で6hしんとうさせた後、固液分離して、ろ液を組成分析した。
表4に、乾燥固化物に上記測定結果および溶出試験結果を示す(以下の各例において同じ)。
《比較例2》
反応温度を125℃として、比較例1と同様の実験を行った。
ただし、この場合、反応温度を100℃より高温とするために、オートクレーブでの昇温過程および反応時の取扱いが少し異なる。すなわち、ここでは以下のようにした。
被処理液オートクレーブに入れ、密閉状態とし、1000rpmで強撹拌しながら100℃になるよう昇温した。気相部に存在する不活性ガス(初期の空気に由来するもの)をできるだけ排除するために、100℃の状態で気相部に通じるバルブを一旦開き、ゲージ圧がゼロになるまで内部のガスを追い出した。その後、再度密閉状態とし、125℃まで昇温し、その温度に保った。125℃で気相部のゲージ圧は0.23MPa付近で一定となった。その後、純度99%の酸素ガスを容器内に吹き込んだ。気相部の酸素分圧が概ね0.2MPaに維持されるように、ゲージ圧が約0.43MPaとなるように酸素ガス導入バルブを調整した。この状態で撹拌を継続しながら5h保持した。この間に沈殿物の合成反応は終了している(以下の各例において同じ)。
その他の実験条件は比較例1と同じである。
《比較例3》
反応温度を150℃として、比較例1と同様の実験を行った。
ただし、この場合、オートクレーブでの昇温過程および反応時の取扱いを比較例2と同様の手順とし、150℃での気相部の酸素分圧が概ね0.2MPaに維持されるように、ゲージ圧が約0.65MPaとなるように酸素ガス導入バルブを調整した。
《実施例1》
反応温度を175℃として、比較例1と同様の実験を行った。
ただし、この場合、オートクレーブでの昇温過程および反応時の取扱いを比較例2と同様の手順とし、175℃での気相部の酸素分圧が概ね0.2MPaに維持されるように、ゲージ圧が約1.0MPaとなるように酸素ガス導入バルブを調整した。
《実施例2》
反応温度を200℃として、比較例1と同様の実験を行った。
ただし、この場合、オートクレーブでの昇温過程および反応時の取扱いを比較例2と同様の手順とし、200℃での気相部の酸素分圧が概ね0.2MPaに維持されるように、ゲージ圧が約1.7MPaとなるように酸素ガス導入バルブを調整した。
〔結果について〕
比較例1、2、3のように、反応温度が150℃以下の場合、タリウムの共沈が起こらず、タリウムを固形物中に固定することができなかった。得られた固形物はスコロダイト型の結晶構造を持つものである(図1)。
これに対し、反応温度を150℃よりも上昇させた実施例1、2では、97%以上の高い沈殿率でタリウムの共沈が起こり、タリウムを含有する鉄・砒素酸化化合物が得られた。これは、スコロダイトやジャロサイトとは結晶構造が異なる新規物質であり(図1)、溶出試験の結果、砒素、タリウムとも溶出量が0.3mg/L以下をクリアし、環境基準に適合する物質が得られることがわかった。すなわち、砒素とタリウムを同時に固定することのできる物質が製造できた。この物質は、固液分離工程でのろ過性も良好であり、工業的規模での製造は充分可能であると期待される。
比較例および実施例で得られた沈殿固化物についてのX線回折パターン。

Claims (8)

  1. 砒素イオンとタリウムイオンと2価の鉄イオンを含む水溶液を酸化剤存在下で150℃を超える温度域に加熱して、タリウムを鉄および砒素と共に沈殿析出させる工程を有する、砒素とタリウムが不溶化したタリウム含有鉄・砒素化合物の製法。
  2. 加熱温度域を165〜210℃とする請求項1に記載のタリウム含有鉄・砒素化合物の製法。
  3. 前記酸化剤が酸素ガスである請求項1または2に記載のタリウム含有鉄・砒素化合物の製法。
  4. オートクレーブ中で、気相部の酸素分圧(ゲージ圧)を0.1〜0.5MPaに維持し、水溶液を撹拌しながら沈殿反応を進行させる請求項3に記載のタリウム含有鉄・砒素化合物の製法。
  5. 前記結晶性の化合物は、結晶構造がスコロダイトと異なるものである請求項1〜4のいずれかに記載のタリウム含有鉄・砒素化合物の製法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の製法で得られる化合物の結晶構造を有し、質量割合で砒素20%以上、タリウム1000ppm以上を含む、砒素とタリウムが不溶化したタリウム含有鉄・砒素化合物。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の製法で得られる化合物の結晶構造を有し、質量割合で砒素32〜38%、タリウム2500〜3700ppmを含む、砒素とタリウムが不溶化したタリウム含有鉄・砒素化合物。
  8. 砒素イオンとタリウムイオンと2価の鉄イオンを含む水溶液を酸化剤存在下で150℃を超える温度域に加熱して、タリウムを鉄および砒素と共に沈殿析出させる工程を有する、砒素およびタリウム含有水溶液の処理方法。
JP2006210264A 2006-08-01 2006-08-01 タリウム含有鉄・砒素化合物およびその製法並びに砒素・タリウム含有水溶液の処理方法 Expired - Fee Related JP5070525B2 (ja)

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