JP4959293B2 - 鋳鋼片の表層処理装置及び鋳鋼片の表層処理方法 - Google Patents

鋳鋼片の表層処理装置及び鋳鋼片の表層処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば鋼の連続鋳造鋳片や、圧延途中の鋼片などの鋳鋼片の表層を、プラズマによって加熱したり、溶融処理するための表層処理装置および表層処理方法に関する。
例えば連続鋳造後の鋳片や圧延途中の鋼片の表層を改質する処理には、プラズマ加熱装置が用いられている(特許文献1参照)。
プラズマ加熱装置は、例えば搬送される鋳片に対向配置された、トーチを陰極、鋳片を陽極とする直流プラズマのプラズマトーチを備え、当該プラズマトーチと鋳片との間にプラズマアークを発生させ、そのプラズマアークの熱によって鋳片を加熱して溶融し、その表層を例えば改質処理するようになっている。
かかる技術を用いて比較的幅の広い鋳片を加熱する場合、鋳片の幅方向全体にプラズマアークを当てて、鋳片を加熱する必要がある。このため、例えば、交流磁場の電磁力を用いてプラズマアークを鋳片の幅方向に往復移動させて鋳片を加熱することが提案されている(特許文献2参照)。この交流磁場の電磁力を用いてプラズマアークを往復移動させる方法は、プラズマトーチをスキャンさせる方法に比べて、機械的な部品点数を少なくできる点で優れている。
特開2004−195512号公報 特開昭54−142154号公報
以上の従来技術の下では、さらに幅広の鋳片に対して加熱処理するには、複数のプラズマトーチを等間隔で、鋳片の幅方向に沿って並列に配置することが行われる。かかる場合、プラズマトーチのピッチは100mm程度が適当とされている。それは次のような理由による。すなわちこの種の加熱処理に使用されるプラズマトーチの径は60mm程度であり、さらにプラズマトーチ相互間には、トーチ設置上のスペースが20mm程度以上必要であることから、結局プラズマトーチのピッチは80mm以上必要となる。一方、1本のプラズマトーチあたりの処理幅を増すためにトーチ出力を増加させようとすると、アークに使用するアルゴンガスの流速が増し、流動が層流から乱流に遷移し、アークが乱れて材料の溶融処理部の凹凸がひどくなるので、プラズマトーチのピッチは120mm程度が上限である。したがって、これらの事情に鑑みて結局、プラズマトーチのピッチは100mm程度が適当とされているのである。
このように、プラズマトーチのピッチが100mm程度の場合、並列配置された両端のプラズマトーチの、トーチを着火しないことによる調整代は、片側100mm程度である。
しかしながら、連続鋳造鋳片、特にスラブと呼ばれる板用の長方形断面の鋳片の連続鋳造においては、短辺の機械的移動により鋳造中に幅を変更する技術が一般に用いられており、1m以下から2m以上まで数cm刻みで幅が変更されている。かかる場合においても、良質な製品を製造するためには、鋳片表面を均一に加熱して溶融させる必要がある。すなわち数cm〜1mの範囲で幅が変わるスラブ鋳片に対してもプラズマアークによって均一に加熱、溶融させる必要がある。
この点、既述したように、並列配置された両端のプラズマトーチの、トーチを着火しないことによる調整代は、片側100mm程度であるから、それ以下の幅調整は従来不可能であった。また調整しないまま、両端のプラズマトーチを着火してアークを形成すると、鋳片のエッジ部分が過剰に溶融されたり、あるいは鋳片の側面までアークが回りこんでしまうなどして、処理不良が発生するおそれがあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、幅が異なった鋳片であっても、トーチを着火しないことによる調整以外に、プラズマアークの往復移動幅の片側のみを調整することで、たとえば100mm以下の調整幅であってもこれを好適に実現して、さまざまな幅の鋳鋼片に対して、プラズマアークによって均一に加熱したり、溶融させて表層処理を行うことを目的としている。
前記目的を達成するため、本発明は、鋳鋼片との間にプラズマアークを発生させる複数のプラズマトーチが、鋳鋼片の幅方向に沿って並列に配置された表層処理装置において、交流磁場によって前記プラズマアークを鋳鋼片の幅方向に往復移動させる第1の交流磁場発生装置と、前記第1の交流磁場とは逆向きの磁場を発生させる第2の交流磁場発生装置と、を有し、前記第1の交流磁場発生装置は、プラズマトーチの並列方向に渡って配置されかつプラズマトーチによって発生するプラズマアークの前後に配置された第1の交流磁場コイルであり、前記第2の交流磁場発生装置は、両端のプラズマトーチの各々の外側に配置され、かつプラズマトーチの並列方向からみてプラズマトーチによって発生するプラズマアークの前後に位置する第2の交流磁場コイルであり、前記第2の交流磁場コイルは、プラズマトーチの並列方向に沿って中心側に移動可能であることを特徴としている。
このように本発明においては、プラズマアークを鋳鋼片の幅方向に往復移動させる第1の交流磁場発生装置である前記の第1の交流磁場コイルの他に、第1の交流磁場コイルとは逆向きの磁場を発生させる第2の交流磁場発生装置である前記の第2の交流磁場コイルを有しているので、たとえば両端のプラズマトーチによるプラズマアークに対して、両端側からこの第2の交流磁場コイルを当該アークに近づけることで、この第2の交流磁場コイルによる交流磁場で、第1の交流磁場コイルによる磁場を両端側から次第に打ち消すことができ、当該アークの外側の移動幅(振れ幅)を調整することができる。つまり第1の交流磁場コイルによるアークの振れ幅の、外側だけの部分を調整することができる。それゆえ、たとえば100mm以下の調整幅であってもこれに対処できる。また第2の交流磁場コイルの中心側への移動程度によって、両端のプラズマトーチの外側への触れ幅を調整することができる。
第2の交流磁場発生装置による磁場強度は可変であってもよい。これによって、さらに触れ幅の微調整が行える。
プラズマアークを生じさせるプラズマトーチの数と前記第2の交流磁場コイルの移動先の位置とを、処理対象となる鋳鋼片の幅に応じて制御する制御部を有していてもよい。これによって、鋳鋼片の幅に応じて自動的に、着火するプラズマトーチの数と触れ幅を調整することができる。
前記複数の直流プラズマトーチの並列方向の両側に配置され、前記プラズマトーチによるプラズマアークと同じ方向に電流を流す導線をさらに備えていてもよい。
複数のプラズマトーチを並設した場合、複数本のプラズマアークの電流によって形成される直流磁場の相互作用により、各プラズマアークに中央方向の電磁力が発生し、プラズマアークが中央側に偏ってしまうことがあるが、このようにプラズマアークと同じ方向に電流を流す導線をさらに設けることで、それによって発生させた直流磁場によってプラズマアークの電流による磁場を打ち消し、プラズマアークに作用する電磁力を除去し、前記したような偏りを是正することができる。したがって幅の異なる鋳鋼片を処理するに際して、着火するプラズマトーチの数が外側から変動する場合には、例えば導線の電流値を調整して、導線の電流による磁場を調整することにより、各プラズマアークにおける直流磁場を打ち消すことができる。
前記導線は、プラズマトーチの並列方向に沿って中心側に移動可能であってもよい。これによって、例えば鋳鋼片の幅が変動した場合に、導線と鋳鋼片との距離を調整して、プラズマアークにおける直流磁場を打ち消すことができる。
別な観点によれば、本発明は、鋳鋼片との間にプラズマアークを発生させる複数のプラズマトーチを、鋳鋼片の幅方向に沿って並列に配置し、プラズマアークによって鋳鋼片の表面を処理する表層処理方法において、第1の交流磁場によって、プラズマアークを鋳鋼片の幅方向に往復移動させると共に、前記第1の交流磁場と逆向きの第2の交流磁場によって、幅方向両端のプラズマアークの幅方向外側への移動幅を制御することを特徴としている。
かかる場合、幅方向両端のプラズマアークの前記幅方向外側への移動幅を制御する際に、プラズマアークが前記外側に移動しているときのプラズマアークの出力を制御するようにしてもよい。こうすることで、幅方向外側への移動幅が小さくなった分、プラズマアークの出力を減じて、単位面積当たり、より均一な熱量を加えることができ、全体的に均一な処理が可能になる。
本発明によれば、処理対象となる鋳鋼片の幅が変わっても、その両端に対するアークの照射幅を調整してこれを均一に加熱して処理することができ、高品質の製品を製造することができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる表層処理装置1の構成の概略を正面からみた模式図であり、図2は同じく平面からみた模式図である。
この表層処理装置1は、水平方向に搬送される鋳片Hの搬送ライン上に設けられている。表層処理装置1は、例えば搬送される鋳片Hの上方に配置された複数、たとえば7本のプラズマトーチT1〜T7を、鋳片Hの幅方向Aに沿って並列に有している。プラズマトーチの本数は任意である。これらプラズマトーチT1〜T7は、直流電源2からの電圧の印加によって、各々鋳片Hとの間に直流プラズマによるプラズマアークPを形成させる。各プラズマアークPには、鋳片H側からプラズマトーチ側に電流が流れている。プラズマトーチT1〜T7の着火本数、並びに出力の制御は制御装置3によって制御される。
プラズマトーチT1〜T7の下方であって、かつ鋳片Hの搬送方向Bの前後、すなわちプラズマトーチT1〜T7によって形成されるプラズマアークPの搬送方向Bの前後には、第1の交流磁場発生装置としての、電磁コイル11、12が相互に平行となるように設けられている。これら電磁コイル11、12は、交流電源13からの交流電流の供給によって、各プラズマアークPに周期的にローレンツ力を作用させて、各プラズマアークPを、供給される交流の周波数に応じて鋳片Hの幅方向Aに往復移動させる。なおより正確にいうと、当該往復移動は、プラズマトーチの下端部を中心としてプラズマアークPが往復回動する動きに近いものである。
プラズマトーチT1〜T7のうちの、一端に位置するプラズマトーチT1の外側には、第2の磁場発生装置としての電磁コイル21、22が相互に平行となるように配置され、また他端に位置するプラズマトーチT7の外側には、第2の磁場発生装置としての電磁コイル23、24が相互に平行となるように配置されている。したがって、電磁コイル21、22と電磁コイル23、24は対向配置されている。電磁コイル21、22、23、24は、各々同型同大のループ状の形状を有しており、電磁コイル21、22、23、24は、交流電源25から交流電流が供給されると、電磁コイル11、12とは逆向きの磁場を同期して発生させる。なお電磁コイル21、22、23、24の磁場強度は電磁コイル11、12と同一である。交流電源25の出力は、主制御装置31によって制御される。電磁コイル11、12の交流電源13と、電磁コイル21、22、23、24の交流電源25との間の位相制御は、主制御装置31が行なう。
電磁コイル21、22は2個で1組となって支持部材26によって支持され、当該支持部材26は、例えばシリンダなどの水平移動機構27に取り付けられており、電磁コイル21、22は、プラズマトーチT1〜T7の並列方向、すなわち幅方向Aに沿って、中心側(プラズマトーチT4側)に移動可能である。また電磁コイル23、24も、支持部材28によって支持され、当該支持部材28は、水平移動機構29に取り付けられており、プラズマトーチT1〜T7の並列方向、すなわち幅方向Aに沿って、中心側(プラズマトーチT4側)に移動可能である。これら水平移動機構27、29の移動量は、主制御装置31によって制御される。
前記したように電磁コイル21、22は相互に平行となるように配置され、電磁コイル23、24も相互に平行となるように配置されているが、電磁コイル21、22間の間隔、並びに電磁コイル23、24間の間隔は、図2の破線で示したように、幅方向Aに沿って、中心側(プラズマトーチT4側)に移動した際、電磁コイル11とプラズマトーチTとの間に電磁コイル22、24が進入し、電磁コイル12とプラズマトーチTとの間に電磁コイル21、23が進入するように設定されている。すなわち、本実施の形態では、プラズマトーチTによって発生するプラズマアークを挟んで電磁コイル11、12の内側に、電磁コイル21、22、23、24が進入可能となるように配置されている。なおこれに限らず、プラズマアークを挟んで電磁コイル11、12の外側に、電磁コイル21、22、23、24が進入可能となるように、電磁コイル21、22間の間隔、電磁コイル23、24間の間隔を各々設定してもよい。
本実施の形態にかかる表層処理装置1は、以上のような構成を有しており、直流電源2からの電圧を印加すると、プラズマトーチT1〜T7と鋳片Hとの間に直流プラズマによるプラズマアークPが形成され、また電磁コイル11、12に交流電源13から交流電流が供給されると、形成されたプラズマアークPは、鋳片Hの幅方向Aに往復移動する。ただし、本実施の形態では、ループ状の電磁コイル11、12を使用しているので、図3に示したように、本実施の形態におけるプラズマアークPの前記往復移動は、プラズマトーチTの下端部近傍を中心とした往復回動に近い移動である。したがって、本明細書では説明の便宜上、当該往復移動を揺動と呼称し、そのときの鋳片Hの表面上の移動距離を振れ幅という。すなわち図3において、鋳片Hの表面においてプラズマアークPが照射されている幅方向Aの長さDが振れ幅である。そして例えばプラズマトーチT2に即して言えば、トーチの中心線Cの内側(プラズマトーチT4側)の振れ幅をDin、トーチの中心線Cの外側(プラズマトーチT1外側)の振れ幅をDoutとする。
交流電源13からの交流電流によって電磁コイル11、12のみの交流磁場の影響下では、図3の下側の図に示したように、磁束密度の分布は、トーチの中心線Cを中心とする線対称であり、したがって、形成されたプラズマアークPにおいては、内側の振れ幅Din=外側の振れ幅Doutである。またこの種の処理においては、振れ幅Dは通常100mm程度であり、さらに既述したように、プラズマトーチT1〜T7の並列配置のピッチ(トーチの中心間距離)は、100mmであるから、実施の形態にかかる表層処理装置1のように7本のプラズマトーチT1〜T7を備えている場合には、適切に処理できる鋳片Hの幅Mの上限は700mmであり、両端側から順次プラズマトーチTを着火しないことによる、調整代は片側100mmである。
したがって、例えば処理対象となる鋳片Hの幅Mが500mmの場合には、両端の7本のプラズマトーチT1、T7を着火しなければよく、これによって、500mm幅の鋳片Hに対して、プラズマトーチT2〜T6の5本のトーチによるプラズマアークによって、500mm幅の鋳片Hは、幅方向Aに渡って全域でプラズマアークによる均一な処理が可能になる。
しかしながら例えば650mm幅の鋳片Hの場合、鋳片Hのセンターをずらさないことを前提とすると、つまり調整代が片側100mm未満の場合にはプラズマトーチT1〜T7の着火制御だけでは適切に対応できない。すなわち、例えば先ほどの例のように7本のプラズマトーチT1〜T7によって処理すると、そのときの両端のプラズマトーチT1、T7のプラズマアークにおける外側の振れ幅Doutが過大となり、鋳片Hの幅方向のエッジ部が過剰溶融状態になり、アーク自体が鋳片の側面に回り込んだり、溶融部分がたれ落ちるおそれがある。また5本のプラズマトーチT2〜T6によって処理すると、鋳片の両端から各々75mmずつの領域が未処理となってしまう。
本実施の形態によれば、このような例えば650mm幅の鋳片Hに対しても適切な処理が可能である。すなわち、両端のプラズマトーチT1、T7の外側に配置されている電磁コイル21、22及び電磁コイル23、24を中心側(プラズマトーチT4側)に移動させ、着火している両端のプラズマトーチT1、T7の外側の振れ幅Doutを、鋳片Hの幅に応じて小さくすることが可能である。
これをプラズマトーチT1に即して説明すると、図4、図5に示したように、水平移動機構27によって電磁コイル21、22の先端をプラズマトーチT1の外側から、プラズマトーチT1の近傍まで進入させる。そうすると、電磁コイル21、22の交流磁場は、プラズマアークPを揺動させている電磁コイル11、12の交流磁場とは逆向きの磁場であるから、図6に示したように、電磁コイル21、22の進入に伴って、端部側から次第に電磁コイル11、12の交流磁場を打ち消す事ができる。そしてそのように電磁コイル11、12の交流磁場が打ち消されるに従い、端部側、つまり外側の振れ幅Doutは小さくなっていく。そして鋳片Hの幅の調整代に応じて、電磁コイル11、12の交流磁場による打ち消し度合い、すなわち電磁コイル21、22の進入度合い(中心側への移動距離)を調整すれば、鋳片Hの幅に対して適切な外側の振れ幅Doutを設定することができる。例えば前記した650mm幅の鋳片Hの場合には、着火している両端のプラズマトーチT2、T6のプラズマアークの外側の振れ幅Doutが、各々25mmとなるように、電磁コイル21、22及び電磁コイル23、24の中心側への移動距離を制御すればよい。
したがって本発明によれば、処理対象である鋳片Hの幅が変動しても、電磁コイル21、22及び電磁コイル23、24の中心側への移動距離を制御することで、常に適切な溶融処理を実施することができる。
なおそのような電磁コイル21、22及び電磁コイル23、24の中心側への移動距離を制御するだけではなく、電磁コイル21、22及び電磁コイル23、24に供給する交流のパワーも調整することで、さらに外側の振れ幅Doutの微細な制御も可能である。
前記した電磁コイル21、22及び電磁コイル23、24の中心側への移動距離は、着火している両端のプラズマトーチTのプラズマアークの外側の振れ幅Doutと、処理対象である鋳片Hのエッジ部分の状況をみて制御すればよいが、例えば予め実験等によって得られた鋳片Hの幅Mと、着火するプラズマトーチTの本数、及び電磁コイル21、22及び電磁コイル23、24の中心側への移動距離との相関データを取得しておき、当該データに基づいて、処理対象である鋳片Hの幅Mに応じて主制御装置31が自動的にこれらを制御するようにしてもよい。
なお処理対象である鋳片Hのエッジ部分の状況をみて制御するにあたっては、例えばCCDカメラでエッジ部分を撮像し、鋳片Hのエッジ部分の画像処理データを用いることで好適に制御することができる。すなわち一般に溶接で使用されるフィルターを使用したCCDカメラ撮像画像では、プラズマ入熱が十分な領域は白く高い輝度を発する。したがって処理対象である鋳片Hの端部の画像処理データを用いて、鋳片Hの端部のコーナー位置と輝度が高いラインの外側と材料(鋳片H)の接点とを比較し、例えば接点が端部より内側にある場合、プラズマの振幅をフィードバック制御によってより外側に移動させるようにして、接点が端部と重なるように調整することができる。
ところで、前記したように、プラズマアークの外側の振れ幅Doutを内側の振れ幅Dinよりも小さくした場合、外側の振れ幅Doutの部分に対応する鋳片Hの表層では、内側の振れ幅Dinに対応する表層よりも単位面積当たりの投入熱量が多くなり、外側の振れ幅Doutを内側の振れ幅Dinよりも相当程度小さく制御した場合には、溶融状態が外側の振れ幅Doutの部分と内側の振れ幅Dinの部分とでは、無視できないほどの不均一さが発生する場合がある。
このような事態に防止するため、プラズマアークが外側に揺動した際には、それに同期してプラズマアークの出力を小さくするように制御すればよい。例えば前出の650mm幅の鋳片Hを処理する際、着火している両端のプラズマトーチT1、T7のプラズマアークの外側の振れ幅Doutを、各々25mmとなるように制御した場合、すなわち外側の振れ幅Doutが内側の振れ幅Dinの1/2の場合には、プラズマアークが外側に揺動した際にプラズマアークの出力を1/2に減じればよい。これによって、外側の振れ幅Doutの部分と内側の振れ幅Dinの部分は、単位面積当たり、同量の熱量が投入されることになり、外側の振れ幅Doutの部分と内側の振れ幅Dinの部分とを、均一に溶融処理することができる。
このような制御は、例えば外側の振れ幅Doutと振れ内側の幅Dinの比と、交流電源13、25の周波数信号とに基づく同期信号とに拠って、主制御装置31が、直流電源2を制御する制御装置3を制御することで実現できる。
ところで、複数のプラズマトーチTを並列配置した場合、複数のプラズマアークの電流により形成される磁場の相互作用によって,各プラズマアークに中央方向の電磁力が作用し、鋳片H上においてプラズマアークが中央側に偏ってしまうことがある。かかる場合、当該偏りが大きい場合には、鋳片Hが幅方向Aに不均一に加熱されたり、溶融されたりして,例えば鋳片の表層改質処理に斑が生じるおそれがある。
図7、図8に示した第2の実施の形態にかかる表層処理装置51は、それを是正するものである。すなわち、この表層処理装置51においては、前記した第1の交流磁場発生装置としての電磁コイル11、12、第2の交流磁場発生装置としての電磁コイル21、22、23、24の他に、複数の直流プラズマによって発生する中央方向の電磁力を打ち消すための機構である、導線としての金属棒61、62、63、64を備えている。
より詳述すると、例えばプラズマトーチT1側についていえば、例えば銅製の円筒管により形成された金属棒61、62が、プラズマアークPと同方向の垂直方向(鋳片Hの表面の法線方向)に向けて設けられている。金属棒61、62は、プラズマトーチTと鋳片Hとの間に形成されるプラズマアークPと同程度の高さに配置され、なおかつその全長はプラズマアークPよりも長く設定されている。また金属棒61、62同士は平行に配置されている。
金属棒61、62は、支持部材71を介して例えばシリンダなどの水平移動機構72に取り付けられており、プラズマトーチTの並列方向、すなわち幅方向Aに沿って中心側に移動し、金属棒61、62は、それぞれ鋳片Hの幅方向Aの端部に対して進退できる。金属棒61、62は、平面から見てプラズマトーチTの配列された直線Lに対して線対称の位置にそれぞれ配置されている。また、金属棒61、62は、鋳片H側に移動した際にプラズマトーチT及びプラズマアークPに接触しないように直線Lから所定距離離れて配置されている。
プラズマトーチT7側の外側に配置されている金属棒63、64についても、金属棒61、62と同様に配置され、支持部材73を介して水平移動機構74に取り付けられている。金属棒61、62、63、64内部には、冷媒となる水が流れる冷媒流路が形成されている。これにより、金属棒61、62、63、64の発熱による温度上昇を抑えられている。
本実施の形態においては、これら金属棒61、62、63、64は、側面からみて、並列配置されたプラズマトーチTを挟んだ、搬送方向Bの前後であってかつ、電磁コイル11、12と並列配置されているプラズマトーチTの間に位置するように配置されている。そして前記した電磁コイル21、22の間の間隔、及び電磁コイル23、24間の間隔は、先の表層処理装置1よりも大きく設定され、電磁コイル11、12に対して、搬送方向Bに沿って、各々外側に配置されている。
もちろんこれら限らず、金属棒61、62、63、64についても、側面から見て搬送方向Bに沿って各々電磁コイル11、12に対して外側に配置してもよく、また金属棒61、62、63、64及び、電磁コイル21、22、23、24の双方とも側面から見て搬送方向Bに沿って各々電磁コイル11、12に対して内側に配置してもよい。またさらに、図8とは逆の状態、すなわち電磁コイル21、22、23、24は、側面から見て搬送方向Bに沿って各々電磁コイル11、12に対して内側に配置し、金属棒61、62、63、64は同じく外側に配置してもよい。
金属棒61、62は、直流電源75に接続され、金属棒63、64は、直流電源76に接続されている。かかる構成により、金属棒61、62、63、64には、直流のプラズマアークPと同じ方向の電流を所望の電流値で流すことができる。これら金属棒61、62、63、64に流れる直流電流によって、鋳片H上の領域に直流磁場を形成し、並列に発生しているプラズマアークPの電流の相互作用で形成される磁場を打ち消すことができる。こうして磁場が打ち消されることにより、各プラズマアークPには、互いに引き寄せ合う電磁力、すなわち前記した中方に向かう力が働かなくなる。
直流電源75、76、並びに水平移動機構72、74は、主制御装置31によって制御されている。そして例えば、鋳片Hの幅Mに応じて、着火するプラズマトーチT(プラズマアークを形成するプラズマトーチの数)を選択し、さらにそのプラズマトーチTが使用された際に各プラズマアークPにおける磁場が打ち消されるように金属棒61、62、63、64の移動先の位置と電流値が選択される。
表層処理装置51は、以上のような構成を有しているので、金属棒61、62、63、64の幅方向Aに沿った中心側の移動に従い、その直流磁場によって、プラズマアークPの電流の相互作用で形成される磁場を打ち消すことができ、その結果、先に述べたような、鋳片H上におけるプラズマアークが中央側に偏ってしまう現象を防止することが可能である。したがって、第1の実施の形態にかかる表層処理装置1よりもさらに幅方向に均一な表層処理を、鋳片Hに対して実施することができる。
以上の実施の形態では,金属棒61、62、63、64は移動可能であったが,固定されていてもよい。かかる場合、各金属棒61、62、63、64の電流値を調整することで、プラズマアークPにおける磁場を打ち消すことができる。なお,そのように金属棒61、62、63、64が固定されている場合において,金属棒61、62、63、64は,側面から見てプラズマトーチTの列の直線L上に配置されていてもよい。
上記実施の形態の表層処理装置は,例えば鋳片Hを加熱したり、鋳片Hに炭素などの添加物を供給して,表層溶融改質処理を行う際に使用される。また本発明は,鋳片Hに炭素以外の添加元素やその合金を添加して行われる表層改質処理にも適用できる。さらに本発明の処理対象は、鋳片に限られず,鋼片であってもよい。
連続鋳造が完了した鋳片を切断した後、先に説明した表層処理装置1を用いて当該鋳片に対してプラズマ加熱溶融による表層改質処理を行った。サンプルとした鋳片は、厚さが250mmであり、鋳造中に幅を1200mmから50mm減じて1150mmにした、0.2質量%C鋼の連続鋳造鋳片の表層5mmを、10mm/sの搬送速度で溶融処理した。用いた装置のプラズマトーチTの本数は、12本であり、各トーチのピッチは100mmである。
先ず、第2の交流磁場発生装置としての電磁コイル21、22、23、24を作動させずに処理した結果、最初の1200mm幅の鋳片に対しては、鋳片幅方向に十分均一でエッジ部分も良好な溶融状態が得られたが、後半の1150mm幅の鋳片のときには、エッジ部分が過剰溶融となり、端部から溶融部がたれ落ちる問題が発生した。
一方第2の交流磁場発生装置としての電磁コイル21、22、23、24を作動させるとともに、幅方向外側にプラズマアークが揺動する際に、これと同期してプラズマの出力を1/2にしたところ、1150mm幅の鋳片であっても、全体に溶融深さが5mm±0.5mmの均一な溶融状態が得られ、端部の溶け落ち現象も抑えることができた。
本発明は、幅が変動する鋳鋼片を幅方向に対して均一に表層処理する際に有用である。
第1の実施の形態にかかる表層処理装置の構成の正面からみた概略を示す模式図である。 第1の実施の形態にかかる表層処理装置の構成の平面からみた概略を示す模式図である。 電磁コイルによる交流磁場とプラズマアークとの揺動状態を示す説明図である。 電磁コイルを中心側に移動させた状態を示す正面から見た説明図である。 電磁コイルを中心側に移動させた状態を示す平面から見た説明図である。 電磁コイルを中心側に移動させた際の交流磁場とプラズマアークとの揺動状態を示す説明図である。 第2の実施の形態にかかる表層処理装置の構成の正面からみた概略を示す模式図である。 第2の実施の形態にかかる表層処理装置の構成の平面からみた概略を示す模式図である。
符号の説明
1 表層処理装置
2 直流電源
11、12、21、22、23、24 電磁コイル
13、25 交流電源
27、29 水平移動機構
31 主制御装置
H 鋳片
P プラズマアーク
A 幅方向
B 搬送方向

Claims (7)

  1. 鋳鋼片との間にプラズマアークを発生させる複数のプラズマトーチが、鋳鋼片の幅方向に沿って並列に配置された表層処理装置において、
    交流磁場によって前記プラズマアークを鋳鋼片の幅方向に往復移動させる第1の交流磁場発生装置と、
    前記第1の交流磁場とは逆向きの磁場を発生させる第2の交流磁場発生装置と、を有し、
    前記第1の交流磁場発生装置は、プラズマトーチの並列方向に渡って配置されかつプラズマトーチによって発生するプラズマアークの前後に配置された第1の交流磁場コイルであり、
    前記第2の交流磁場発生装置は、両端のプラズマトーチの各々の外側に配置され、かつプラズマトーチの並列方向からみてプラズマトーチによって発生するプラズマアークの前後に位置する第2の交流磁場コイルであり、
    前記第2の交流磁場コイルは、プラズマトーチの並列方向に沿って中心側に移動可能であることを特徴とする、鋳鋼片の表層処理装置。
  2. 前記第2の交流磁場発生装置による磁場強度は可変であることを特徴とする、請求項1に記載の鋳鋼片の表層処理装置。
  3. プラズマアークを生じさせるプラズマトーチの数と前記第2の交流磁場コイルの移動先の位置とを、処理対象となる鋳鋼片の幅に応じて制御する制御部を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の鋳鋼片の表層処理装置。
  4. 前記複数のプラズマトーチの並列方向の両側に配置され、前記プラズマトーチによるプラズマアークと同じ方向に電流を流す導線を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の鋳鋼片の表層処理装置。
  5. 前記導線は、プラズマトーチの並列方向に沿って中心側に移動可能であることを特徴とする、請求項に記載の鋳鋼片の表層処理装置。
  6. 鋳鋼片との間にプラズマアークを発生させる複数のプラズマトーチを、鋳鋼片の幅方向に沿って並列に配置し、プラズマアークによって鋳鋼片の表層を処理する表層処理方法において、
    第1の交流磁場によって、プラズマアークを鋳鋼片の幅方向に往復移動させると共に、
    前記第1の交流磁場と逆向きの第2の交流磁場によって、両端のプラズマアークの幅方向外側への移動幅を制御することを特徴とする、鋳鋼片の表層処理方法。
  7. 前記両端のプラズマアークの前記幅方向外側への移動幅を制御する際には、プラズマアークが前記外側に移動しているときのプラズマアークの出力を制御することを特徴とする、請求項に記載の鋳鋼片の表層処理方法。
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