JP4953726B2 - 圧密化単板の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、密閉容器に排気管を設けて、プレスを維持した状態で排気管から高圧水蒸気を放出し密閉空間内を減圧することが記載されているが、その場合においても、単板内部に高圧水蒸気が残留し、それによる割れの発生を防止することができない。
非特許文献1の方法は、非密閉系での圧密化処理であるため、短時間では圧縮変形を充分に固定化することができない。
本発明(第1、第2発明)では、単板を圧縮しながら加熱して圧密化単板を製造する。圧密化単板の製造に用いる原料としては、生単板を用いる。ここで、生単板とは、原木を濡れた状態でロータリーレース(ベニヤレース)によって数ミリから十数ミリの厚さに切削した単板をいう。
生単板1枚中には含水率のムラ(バラツキ)がある場合が多いが、含水率ムラの低減処理を行うことで、圧密処理後の膨らみや反りが防止され、凹凸や割れのない表面状態の良好な圧密化単板が効率良く得られる。
水中浸漬処理は、生単板を、水中に浸漬する処理であるが、水中に浸漬するのと同視できる程度に、生単板の全体に十分に水を接触させる処理であっても良い。本明細書において、水には温水も含まれる。
水中浸漬処理に用いる水は、温度が10〜35℃程度の常温の水であっても良いし、温水であっても良い。
水中浸漬処理には、温水を用いることが好ましい。温水の温度は、例えば40〜100℃とすることができるが、50℃以上の温水、特に60℃以上の温水、とりわけ70℃以上の温水を用いることが、処理時間の短縮や表面状態の良好な圧密化単板を得る観点から好ましい。温水の好ましい温度の上限は、好ましくは100℃程度であり、より好ましくは95℃未満である。100℃以下の温水を用いることで、簡易な設備で低コストに実施できる。
尚、単板の含水率は、下記の式で求められる。
含水率(%)=(W1−W2)/W2 ×100
(W1:乾燥前の重量(g)、W2:全乾重量(g)
全乾重量:乾燥機中で100〜105℃で乾燥し、恒量に達したと認められるときの重量)
生単板の乾燥は、含水率を一旦低下させる処理である。
乾燥方法は、特に制限されないが、例えば、温度及び湿度を一定に維持可能な乾燥装置内に放置して乾燥させることができる。乾燥条件としては、温度が20〜40℃、相対湿度が60〜90%、及びその条件下での放置時間が12〜48時間が挙げられる。
この乾燥は、単板の含水率が50%以下、特に10〜20%となる程度まで行うことが好ましい。
乾燥後の水中浸漬処理の場合は、常温の水であっても、表面状態が十分に良好な圧密化単板が得られるので、温度が50℃未満の水、特に温度が10〜35℃程度の常温の水を用いることが、簡易な設備で低コストに実施する点から好ましい。
また、水中浸漬処理後の単板の含水率は、50〜120%、特に70〜100%であることが、表面状態の良好な圧密化単板を得る観点から好ましい。
低比重軟質木の単板とは、比重が0.2〜0.5のものをいう。また、低比重軟質木の単板は、好ましくは比重0.25〜0.45のものであり、例えばファルカータ(albizzia falcataria)(比重0.30)、ラジアータパイン(pinus radiata)(比重0.43)、中国ポプラ(populus)(比重0.35)、スギ(cryptomeria japonica)(比重0.38)等を挙げることができる。
生単板としては、その厚みが、例えば1〜15mmのものを用いることができ、より好ましくは1〜7mmである。
単板は、圧縮率30〜70%程度、特に圧縮率30〜50%程度に圧縮することが好ましい。例えば、圧密化単板の用途を合板の表板及び裏板用単板、フロアー台板の表面単板として考えた場合には、圧密化単板の厚さは0.5〜2.0mmであることが好ましく、その圧縮率は30〜70%であることが好ましく、圧密前の厚さは1〜7mmであることが好ましい。
圧縮率は、下記式で求められる。
圧縮率(%)=(圧縮前厚さ(mm)−圧縮後厚さ(mm))/圧縮前厚さ(mm) ×100
(但し、圧縮後厚さは、加熱及び加圧後、容器から取り出し、冷却した後の厚みである。)
そして、下型11と上型12とを、凸部12aを凹部11aの開口部に嵌合させるようにして組み合わせることにより、内部に密閉空間が形成される。
下型11の下部には、密閉空間内の高圧水蒸気を排出する排気弁(リークバルブ)14が設けられている。
畳織金網とは、縦線は太い線を使用し間隔を開けて、横線は細い線を使用しお互いが接するまで網目を詰めるようにして織った畳表状の織り方の金網であり、平織と綾織の2種類の織り方がある。
平畳織金網は、縦線と横線を交互に組み合わせて織り上げた金網であり、一般的に使用されている平織金網のような平面的な網目ではなく、縦線と横線によってつくられた空間を粒子が通過するため、液体や空気のろ過、脱水に適した金網である。また、太い線径を使用しているため金網の強度が強く、高圧力下での耐久性に優れている。
綾畳織金網は、縦線と横線がお互いに2本以上乗り越して織り上げた綾織式の畳織金網であり、平畳織金網に比べて太い線径を使用して細かく織ることができるため、緻密で強固な、分離用金網である。
平織金網(非畳織金網)では金網が単板にくい込んでしまうため金網を使う効果がない。そのため、本発明で使用する金網は、高温、高圧力状態で耐久性の高い畳織金網である。金網の網目が圧密単板に転写しにくくするためにメッシュが細かく耐久性の高い綾畳織金網を使用することが望ましい。
図3に、平畳織の金網の一例を示し、図4に、綾畳織の金網の一例を示した。
平織の金網を2枚重ねて使用した場合には、金網の耐久性が低く、また、圧密化単板表面に網目が付きやすい。
(準備工程)
先ず、上述したような前処理を行った単板1を、図1に示すように、一対の畳織金網2,3間に挟んだ状態で、圧密治具10内にセットする。圧密治具10は、加熱手段を有する加圧装置、例えばホットプレス(図示せず)に取り付ける。具体的には、ホットプレスの上盤に上型12を固定し、下盤に下型11を固定する。圧密治具10は、ホットプレスにより加熱され、単板の加熱温度はホットプレスにより調節する。尚、圧密化単板の厚さ調整は、下型の凹部の底部にスペーサー(金属板)15を設置して行う。
圧密治具10の上型が、畳織金網2に接する程度までプレス上盤を下降させ5秒〜15秒、単板1を加熱する。この加熱により木材をある程度軟化させることができる。これは、単板内部の水分が水蒸気化し、圧密治具からわずかに漏れる程度が望ましい。時間が短いと軟化が不充分となり密閉が不充分となる場合や、単板が潰れた状態となる場合がある。また、時間が長いと単板内部の水分が蒸発し圧縮変形の固定化が不充分となる。
圧密治具10の上型と下型とを密着させてOリング13を圧縮することにより、圧密治具10内部が密閉された状態となる。この状態においては、単板1と畳織金網2,3との積層体に対して、ホットプレスによる圧力と熱が加わっており、また、木材中の水分が気化し水蒸気が発生することで、圧密治具10の内部圧力が上昇し水蒸気処理が行われる。これにより、単板1が圧縮されると共に、その圧縮変形状態が永久固定化される。
ホットプレス等の加圧機構によるプレス圧力は、2.9〜4.9N/mmであることが好ましく、加熱温度は180〜220℃、特に200〜220℃であることが好ましい。加熱時間は、加熱温度によるが、120秒から10分であることが好ましく、60秒から5分であることがより好ましい。
加熱圧締状態でリークバルブ14を開き密閉治具内部の高圧水蒸気を排出し、密閉治具内部を大気圧に減圧する。
(乾燥工程)
加熱圧締状態を1分〜2分程度維持し圧密化単板を乾燥する。
(冷却工程)
密閉容器を開放し圧密化単板を取り出した後、圧密化単板をコールドプレスで冷却する。この冷却工程は、圧密化単板のあばれ、波打が減少するため、行うことが好ましい。
尚、上述した方法においては、加圧装置の加熱手段により、圧密治具10(容器)を加熱したが、圧密治具10の下型や上型自体に加熱手段を設けても良く、また、圧密治具10の下型及び/又は上型は、加圧手段の上盤又は下盤と一体不可分とされていても良い。また、下型の凹部の底部にスペーサー15を設置するのに代えて、凹部の深さの異なる下型に交換して、圧縮率や圧密化単板の厚み等を調整することもできる。
(実施例1(参考例))
ファルカータから得られた平面視正方形状の含水率未調整の生単板(350mm×350mm×2.65mm,含水率85%)に、含水率ムラの低減処理として水中浸漬処理を行った。具体的には、温度25℃の水に生単板を3時間浸漬させた。3時間の処理後に水中から取り出した単板は、壁に立て掛けて10分間程度放置し水を切った。この時点の単板の含水率は120%であった。
このようにして水中浸漬処理を行った後の単板を、綾畳織の金網(メッシュ250μ、開き目85μ、空隙率30%、平面視における形状及び寸法は単板と同じ,単板の両側で同じ金網を使用)間に挟んだ。
そして、その2枚の金網に挟んだ状態の単板を、上述した構成の圧密治具10における凹部11a(内寸500mm×500mm)内に配置し、上述した好ましい圧密化処理と同様にして、圧密治具10を密閉した状態で、単板と両畳織金網との積層体を圧縮しながら加熱した後、減圧、乾燥、冷却して、圧密化単板を得た。大気圧への減圧後には、直ちにプレスを解圧した。
第1圧締工程の加熱温度及び加熱時間は、200℃及び10秒とし、第2圧締工程の加熱温度及び加熱時間は、200℃及び180秒とした。また、第1圧締工程のプレス圧力は0.05N/mm2、第2圧締工程のプレス圧力は3.9N/mm2とした。
冷却工程は、温度は室温(10℃〜20℃)、プレス圧力1.0N/mm2で60秒間隔行った。尚、圧縮率は、50%とした。
水中浸漬処理として、生単板を、温度70℃の温水に30分間浸漬させた以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を得た。70℃の温水から取り出し、壁に立て掛けて2〜3分間程度放置し水を切った時点の単板の含水率は90%であった。
含水率ムラの低減処理として、下記条件にて、生単板の乾燥及びその後の水中浸漬処理を行った以外は、実施例1と同様にして圧密化単板を得た。
乾燥:温度30℃、相対湿度90%に設定した恒温恒湿機(タバイエスペック社製恒温恒湿機)内に24時間放置、乾燥後の含水率10〜20%
水中浸漬処理:温度25℃の水中に3時間浸漬、浸漬処理後の含水率70%
実施例1で用いたものと同じ生単板を、温風循環式の乾燥機(タバイエスペック社製パーフェクトオーブン)に収容し、温風温度40℃で、1時間乾燥させた。乾燥後の含水率は70%であった。
この乾燥処理後の単板を、実施例1と同様の綾畳織の金網に挟んで、実施例1と同様の条件にて加熱圧縮処理を行った。
実施例1で用いたものと同じ生単板を、水中浸漬処理を行わない以外は、実施例1と同様にして加熱圧縮処理を行った。
(永久固定化の確認)
得られた圧密化単板について、圧縮変形状態が固定化されているか否かを確認するため、下記方法により回復度した。その結果を表1に示した。
(回復度の算出方法)
圧密化単板から得た試験片(50mm×50mm)を105℃で24時間乾燥し、全乾後の試験片の厚さを測定し、その厚さを回復前の厚さLCとした。
試験片を70℃の温水に2時間浸漬した。
温水浸漬後の試験片を105℃で24時間乾燥し、全乾後の試験片の厚さを測定し、その厚さを回復後の厚さLRとした。
次式より回復度を求めた。
回復度(%)=(LR−LC)/(L0−LC)×100
L0:圧密化前の厚さ(生単板の厚さと同じ)、LC :回復前の厚さ、LR :回復後の厚さ
(評価)
実施例及び比較例の方法で表2に示す枚数の圧密化単板を製造し、それぞれの表面状態を目視にて観察した。それらの結果を表2に示した。
○:欠点なし(軽微な凹凸及び使用上有害な凹凸の何れもなく、割れもない。)
△:軽微な凹凸による厚さ不良
×:割れ又は使用上有害な凹凸がある。
2,3 畳織金網
10 圧密治具(密閉可能な容器)
11 下型
11 凹部
12 上型
20 合板
Claims (2)
- 密閉可能な容器内に単板を収容し、該容器を密閉した状態下に、該単板に対して加熱圧縮処理を行う圧密化単板の製造方法において、
生単板に、含水率ムラの低減処理を行った後、前記加熱圧縮処理を行い、
前記含水率ムラの低減処理が、生単板を、温度50℃以上の温水に浸漬する温水浸漬処理であり、該温水浸漬処理により単板の含水率を50〜130%とした後、前記加熱圧縮処理を行う、圧密化単板の製造方法。 - 密閉可能な容器内に単板を収容し、該容器を密閉した状態下に、該単板に対して加熱圧縮処理を行う圧密化単板の製造方法において、
生単板に、含水率ムラの低減処理を行った後、前記加熱圧縮処理を行い、
前記含水率ムラの低減処理が、乾燥及びその後の水中浸漬処理であり、該乾燥及びその後の水中浸漬処理により単板の含水率を50〜120%とした後、前記加熱圧縮処理を行う、圧密化単板の製造方法。
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