JP6450489B1 - 塑性加工木材 - Google Patents

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Abstract

【課題】元の木材よりも機械的強度を強くし、節がある場合でも割れ(クラック、亀裂)のないこと。【解決手段】塑性加工木材PWは、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により元の木材DWの気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とした高密度濃色領域の表層部Fと、また、表層部Fとは反対面側で加熱圧縮により元の木材DWの気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の表層部Fよりも低い圧縮率とした中密度濃色領域の裏層部Rと、表層部Fと裏層部Rの間に介在し加熱圧縮により元の木材DWの気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内の表層部F及び裏層部Rよりも低い圧縮率とした低密度薄色領域の内層部Iとが形成されたものであり、木口面において表層部Fと内層部Iの境界及び内層部Iと裏層部Rの境界に形成された年輪線RLの屈曲点f1,f2を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、杉材等の軟質な木材に対してその厚み方向に圧縮力が加えられた塑性加工木材に関するもので、特に、節が存在する場合でも割れ(クラック、亀裂)が入ることなく機械的強度が高められた塑性加工木材に関するものである。
近年の熱帯雨林の減少による地球温暖化の問題、地球環境の保護の観点から、特に、従来の木質合板に使用されてきたラワン等の広葉樹資源の乱伐採による深刻な枯渇化を受けて、ラワン材以外の木質材料の開発が要望されているところ、我が国では、杉、檜等の針葉樹が適宜計画伐採や間伐等で比較的安定に入手し易いことから、ラワン材等の代替材料として、それら杉、檜等の針葉樹の有効活用の検討が活発に試みられている。
ところが、杉、檜等の針葉樹の材木は、ラワン等の広葉樹の材木と比較して軟質であり強度が低いことから、そのままではラワン材等の代替材料として使用することは困難である。
そこで、杉材、檜材のように低密度で強度や硬度が不足しているものにあっては、例えば、本発明者が先に特許を取得している特許文献1等で開示したように、圧縮して高密度化することによる強度特性の改良を行うことで、建築材料、家具材料等として実用化している。
ここで、建築材料、家具材料等として木材を利用する場合、従来においては、加工性や外観性から節のない木材が好まれる傾向があった。ところが、近年、消費者の嗜好性の多様化等により、節のある木材こそ自然の木材らしくて自然な模様、風合いを醸しだしており、本来の木を感じる良さがあるとして、節のある木材を選択する消費者も増えている。特に、杉、檜等の針葉樹の原木にあっては、従来の合板等に使用されてきた広葉樹の原木と比較して、節が多く存在することから、枝打ち処理の労力等を考慮すると、節のある木材を選択的に排除するよりも節のある木材を活用できる技術の確立が望まれる。
しかしながら、木材の節の部分は高比重で非常に硬いものとなっている。そのうえ、木材の圧縮強度には異方性が存在し、特に、木材の繊維方向の圧縮(縦圧縮、木口面の加圧)と木材の繊維方向に対して垂直方向の圧縮(放射方向圧縮、板目面の加圧)とでは圧縮応力に対するひずみの大きさが大きく異なっており、木材の繊維方向(縦圧縮、木口面の加圧)は圧縮され難いが、木材の繊維方向に対して垂直方向(放射方向圧縮、板目面の加圧)は圧縮され易くなっているところ、木材の節は、その繊維走向が木目の繊維方向に対して垂直方向に存在する。
したがって、節が高比重で硬いことに加え、例えば、木材の繊維方向に対して垂直方向に圧縮力を加える圧縮(放射方向圧縮、板目面の加圧)では、加える圧縮力の方向に節の繊維が走向しており、年輪の木目と節部の繊維走向の相違による圧縮強度の異方性からしても、節の部分は、極めて圧縮され難いものとなっている。
例えば、図3(a)に示すように、板目材において年輪に対して略接線を成している木目側(板目材の中央寄り)にある節の場合、その節は、年輪の木目の繊維方向に対して垂直方向(板目面に対して直交方向)に存在し、節の繊維が木口面で山形状に表れる木材の年輪に対して直交方向に走向している。
このため、1対の熱板プレス等を用いて板目材の厚み全体をその年輪の繊維方向に対して垂直方向に圧縮(放射方向圧縮、板目面の加圧)したとき、その圧縮方向に繊維が走向する硬い節が存在していると、その節の部分では圧縮され難いことで大きな圧縮応力が生じる。また、節周辺においても年輪の木目の繊維走向に乱れ、傾斜があることで比較的大きな圧縮応力が生じ易い。したがって、節の繊維方向に無理な圧縮力が加えられると、節の繊維やその周辺の木材の繊維が座屈して或いは破壊されて、節部に割れ(クラック、亀裂)等が発生する。更に、節及びその周辺の割れ(クラック、亀裂)が広がることで板目面の繊維方向にも割れが生じる。
また、例えば、図4(a)に示すように、板目材において年輪が略並行をなしている木目側(板目面の端部寄りの追柾部分)にある節の場合、その節は、年輪の木目の繊維方向に対して垂直方向(板目面に対して直交方向)に存在するも、節の繊維走向に傾斜がある。
このため、例えば、1対の熱板プレス等を用いて板目材の厚み全体をその年輪の繊維方向に対して垂直方向に圧縮(放射方向圧縮、板目面方向の加圧)したとき、硬い節の部分では圧縮され難いことで比較的大きな圧縮応力が生じ、また、節周辺においても年輪の木目の繊維走向に乱れ、傾斜が生じていることで比較的大きな圧縮応力が生じ易い。したがって、節部に無理な圧縮力が加えられると、節の繊維の傾斜が大きくなって木材内部に割れ(クラック、亀裂)等が発生する。特に、高い圧縮力を加えた際には、木材表面にまで、割れ(クラック、亀裂)が達する。
そこで、節のある木材の活用に関し、特許文献2では、節が存在する木材の裏面側であって節部分の下位位置を切除して凹部を形成し、節のある部分とそれ以外の部分で圧縮量を相違させることで、節に過大な圧縮力を加えないようにする圧密処理の提案がなされている。
特許5138080号公報(特開2007−112029号公報) 特開2010−042529号公報
ところが、特許文献2の技術においては、木材の節に対応する裏面側の一部を切除することから、その切除部位、態様によっては、熱板でプレスした際に、厚み全体に均一に圧縮力が掛かり難くなり、内部の応力に偏りが生じて、特定部位に歪、ストレスが入りやすくなる。このため、加熱圧縮の処理時に割れ(クラック、亀裂)等が生じやすくなる。また、木材の幅方向(木材の厚み方向に対して直角方向)で、節がある木材組織の領域と節がない木材組織の領域との圧密度が異なることで、周囲環境条件の変化による膨張収縮率に差が生じる。このため、周囲環境条件の変化によって歪みや変形等の寸法形状変化が生じやすくなることが予測され、更に、強度等の木材特性の品質の一定化も困難である。しかも、節の寸法形状は一定でなく木材によって相違することから、木材毎に節の寸法形状の測定、その節に対応する凹部の切除寸法の特定等に煩雑な作業を必要とする。
そこで、本発明は、元の木材よりも機械的強度を強くし、節がある場合でも割れ(クラック、亀裂)のない塑性加工木材の提供を課題とするものである。
請求項1の発明の塑性加工木材は、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により前記木材が塑性加工されてなる塑性加工木材であって、前記加熱圧縮された表層部及びその反対側の裏層部が、前記表層部及び前記裏層部の間に介在する内層部よりも高い圧縮率によって、前記圧縮率を異にする3層構造とし、木口面に表れる前記表層部と前記内層部の境界及び前記内層部と前記裏層部の境界に年輪線の屈曲点を有するものである。
ここで、上記木材の木目の長さ方向(木立方向、立木方向)に対して垂直方向の加熱圧縮とは、板目取りまたは追柾取り等に木取りされた製材に対し、その年輪の繊維方向(木立方向、立木方向)に対して垂直方向にプレス等を用いて外力を加えた加熱圧縮により、木材の木口面の面積を小さくしたことを意味するものである。通常、板目材であれば、圧縮による歪量を考慮すると、木材の板目面側をプレス圧縮することにより木材の木口面の面積が小さくされるが、木材の板目面をプレス圧縮するか柾目面をプレス圧縮するかは、木材の種類等によって決定することも可能である。
なお、上記板目面とは、木材の年輪の繊維方向(木目の長さ方向)と並行にあって年輪線の接線方向に切断された材面のことである。また、上記木口面とは、木材の年輪の繊維方向に対して交差する方向に切断された材面、即ち、木材の繊維方向に対して垂直または斜めに切断された材面のことである。更に、上記柾目面とは、木材の年輪の繊維方向と並行にあって年輪線の放射方向(半径方向)に切断された材面のことである。加えて、上記追柾(流れ柾、半柾と云われることもある)とは、柾目と板目の中間的な木取りまたは木目のことである。また、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により前記木材が塑性加工されてなる塑性加工木材とは、木材の圧縮成形により圧密加工された木材であることを意味する。
上記表層部は、圧縮率が最も高い高密度塑性加工領域であり、高圧縮率により気乾比重、繊維密度が高くなった領域である。この表層部の圧縮率は、後述で定義する元の木材の密度に対する圧縮率で45%以上が好ましい。45%以上とする圧縮率であれば、木材の性質が変化して硬度が顕著に増すためである。
上記裏層部は、前記表層部に対して反対面側に形成され、圧縮率が前記表層部に次いで高い中密度塑性加工領域であり、前記表層部よりも低い圧縮率であるが内層部よりは高い圧縮率により気乾比重、繊維密度が高くなった領域である。
上記内層部は、前記表層部と前記裏層部の間に介在し、圧縮率が最も低い低密度塑性加工領域であり、低圧縮率のために気乾比重、繊維密度が低い領域である。
これら、前記表層部と前記裏層部と前記内層部によって、前記圧縮率を異にする3層構造からなる少なくとも前記表層部と前記裏層部を圧縮した表層圧縮としている。
これら表層圧縮した表層部、裏層部及び内層部は、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向(加熱圧縮方向)において、即ち、木材の厚み方向において、表層部、内層部、裏層部の順に一体的に連続する構造である。表層部と内層部、また、内層部と裏層部は圧縮率の相違による明らかな密度差があることで、木口面に表れる年輪線において、前記表層部と前記内層部の境界上、及び、前記内層部と前記裏層部の境界上に屈曲点を有する。
ここで、上記木口面の年輪線とは、木口面から見て、質が緻密に形成されている線状の部分を意味し、木口面に表れる木目のことである。
そして、上記木口面において前記表層部と前記内層部の境界に年輪線の屈曲点を有するとは、前記表層部と前記内層部の圧縮率の相違、即ち、細胞の圧縮変形量の相違が、早材部の細胞の圧縮変形による空隙の減少、細胞壁の重複による早材部と年輪線を構成している晩材部との配列状態に影響し、前記表層部と前記内層部で明らかな密度差があることにより、年輪線の曲線方向が変わる点があることを意味する。つまり、塑性加工による前記表層部と前記内層部の圧縮率の相違が、早材部と晩材部より構成される年輪幅に表れ、その年輪幅の相違が木口面の年輪線に屈曲として顕在化したものであり、その屈曲点は前記表層部と前記内層部の境界上に存在している。
また、上記木口面において前記内層部と前記裏層部の境界に年輪線の屈曲点を有することについても、前記内層部と前記裏層部の圧縮率の相違、即ち、細胞の圧縮変形量の相違が、早材部の細胞の圧縮変形による空隙の減少、細胞壁の重複による早材部と年輪線を構成している晩材部との配列状態に影響し、前記内層部と前記裏層部で明らかな密度差があることにより、年輪線の曲線方向が変わる点が存在することを意味する。つまり、塑性加工による前記内層部と前記裏層部の圧縮率の相違が、早材部と晩材部より構成される年輪幅に表れ、その年輪幅の相違が木口面の年輪線に屈曲として顕在化したものであり、その屈曲点は前記内層部と前記裏層部の境界上に存在している。
なお、表層部及び裏層部は木材の木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材の厚み方向を上下方向としたとき、その上下の層のことである。そして、木目の長さ方向に対して垂直方向である木材の厚み方向において、圧縮率が最も高い高密度塑性加工領域を表層部とし、また、その反対面側の表層部よりも圧縮率の低い中密度塑性加工領域を裏層部とし、その間に介在する圧縮率の最も低い低密度塑性加工領域を内層部として、圧縮率、密度の相違が木口面における年輪の屈曲で表層部と内層部と裏層部を認識できるところ、例えば、塑性加工木材を床材等として使用する場合、通常、圧縮率の最も高い表層部を使用面、意匠面側とされる。しかし、必ずしも表層部側を使用面、意匠面側としてその使用方向までを特定するものではない。また、通常、加熱圧縮による歪み量から、例えば、板目材の場合、その木表側の板目面側が表層部側となり、木裏側の板目面側が裏層部側となる。なお、塑性加工した木材の樹種は、特に問われず、針葉樹または広葉樹の何れでもよい。例えば、杉、松(カラマツ等)、檜、欅、ウォールナット(胡桃)、イエローポプラ等が用いられる。更に、個々の塑性加工木材について、その節部の有無を問うものでもない。
また、前記表層部側からその反対面側の前記裏層部側までの厚み方向の密度分布は、前記表層部の表面側及び前記裏層部の裏面側から前記内層部の中心側に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化しているものである。即ち、前記表層部と前記内層部、また、前記内層部と前記裏層部には明らかな密度差があるが、各表層部、内層部、裏層部内において、その密度分布は均一でなく、それらの密度は表層部の表面や裏層部の裏面に近いほど高く、木材内側に向かって徐々に低下しているものである。
請求項2の発明の塑性加工木材は、前記加熱圧縮による前記表層部の圧縮率が、前記木材の気乾密度に対する圧縮率で45%以上、65%以下の範囲内とされ、前記加熱圧縮による前記裏層部の圧縮率が、前記木材の気乾密度に対する圧縮率で15%以上、40%以下の範囲内とされ、前記加熱圧縮による前記内層部の圧縮率が、前記木材の気乾密度に対する圧縮率で10%以上、30%以下の範囲内とされたものである。
ここで、上記木材の気乾密度に対する圧縮率とは、元の木材の気乾密度〈kg/m〉と塑性加工木材の特定の層の気乾密度〈kg/m〉から算出したものであり、
圧縮率〈%〉
=[1−{(元の木材の気乾密度)/(塑性加工木材の特定の層の気乾密度)}]
×100 ・・(A)
で定義されるものである。
例えば、杉材を塑性加工してなる塑性加工木材において、高密度濃色領域である表層部のみを切削して取出し、その表層部の気乾密度を測定したときに表層部の気乾密度が760〈kg/m〉であるとすると、杉材の気乾密度は平均380〈kg/m〉であるから、上記(A)式より、表層部の圧縮率は50%である。
そして、上記圧縮率は、最終製品の寸法形状に対応するものであり、最終製品の気乾密度を測定し、元の木材の気乾密度からの変化を算出したものである。
上記気乾密度とは、木材を大気中で放置、乾燥し気乾含水率に達したときの木材密度で、通常、気乾含水率として含水率15%の時の密度で表すものであり、木材を乾燥させた時の単位体積当たりの重さである。
例えば、自然物の国産或いは国内でよく使用される材木の杉の平均気乾密度は380〈kg/m〉、檜の平均気乾密度は440〈kg/m〉、カラマツの平均気乾密度は500〈kg/m〉、ドドマツの平均気乾密度は440〈kg/m〉、エゾマツの平均気乾密度は430〈kg/m〉、アカマツの平均気乾密度は520〈kg/m〉、キリの平均気乾密度は300〈kg/m〉、クリの平均気乾密度は600〈kg/m〉、ヒバの平均気乾密度は470〈kg/m〉、ケヤキの平均気乾密度は690〈kg/m〉、ウォールナットの気乾密度は470〈kg/m〉、ブナの平均気乾密度は650〈kg/m〉、ナラの平均気乾密度は630〈kg/m〉、クリの平均気乾密度は600〈kg/m〉、カバの平均気乾密度は600〈kg/m〉、イタジイの平均気乾密度は610〈kg/m〉、カリンの平均気乾密度は610〈kg/m〉、ファルカタの平均気乾密度は270〈kg/m〉は0.27、マラパパイヤの平均気乾密度は500〈kg/m〉、グメリナの平均気乾密度は450〈kg/m〉、ゴムの平均気乾密度は640〈kg/m〉、イエローポプラの平均気乾密度は450〈kg/m〉、イタリアポプラの平均気乾密度は350〈kg/m〉、アカシアマンギウムの平均気乾密度は630〈kg/m〉である。
請求項3の発明の塑性加工木材は、前記表層部の気乾密度に対し、前記内層部の気乾密度が0.35倍以上、0.65倍以下の範囲内であり、前記裏層部の気乾密度が0.6倍以上、0.8倍以下の範囲内であるものである。
なお、上記気乾密度の測定は、例えば、高密度濃色領域である表層部、低密度薄色領域である内層部、中密度濃色領域である裏層部をそれぞれ切削して切り離すことで測定できる。
請求項4の発明の塑性加工木材は、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に加熱圧縮された両面側の表層部及びその反対側の裏層部を、前記表層部及び前記裏層部の間に介在する内層部よりも高い圧縮率によって前記内層部よりも濃色の色調とされ、木口面において前記表層部と前記内層部の境界、及び、前記内層部と前記裏層部の境界に年輪線の屈曲点を有し、前記表層部と前記内層部の境界上の前記年輪線の屈曲点の屈曲度が前記裏層部と前記内層部の境界上の前記年輪線の屈曲点の屈曲度よりも大きいものである。
また、前記表層部側からその反対面側の前記裏層部側までの厚み方向の密度分布は、前記表層部の表面側及び前記裏層部の裏面側から前記内層部の中心側に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化しているものである。即ち、前記表層部と前記内層部、また、前記内層部と前記裏層部には明らかな密度差があるが、各表層部、内層部、裏層部内において、その密度分布は均一でなく、それらの密度は表層部の表面や裏層部の裏面に近いほど高く、木材内側に向かって徐々に低下しているものである。
ここで、上記木材の木目の長さ方向(木立方向、立木方向)に対して垂直方向の加熱圧縮とは、板目取りまたは追柾取り等に木取りされた製材に対し、その年輪の繊維方向(木立方向、立木方向)に対して垂直方向にプレス等を用いて外力を加えた加熱圧縮により、木材の木口面の面積を小さくしたことを意味するものである。通常、板目材であれば、圧縮による歪量を考慮すると、木材の板目面側をプレス圧縮することにより木材の木口面の面積が小さくされるが、木材の板目面をプレス圧縮するか柾目面をプレス圧縮するかは、木材の種類等によって決定することも可能である。
なお、上記板目面とは、木材の年輪の繊維方向(木目の長さ方向)と並行にあって年輪線の接線方向に切断された材面のことである。また、上記木口面とは、木材の年輪の繊維方向に対して交差する方向に切断された材面、即ち、木材の繊維方向に対して垂直または斜めに切断された材面のことである。更に、上記柾目面とは、木材の年輪の繊維方向と並行にあって年輪線の放射方向(半径方向)に切断された材面のことである。加えて、上記追柾(流れ柾、半柾と云われることもある)とは、柾目と板目の中間的な木取りまたは木目のことである。また、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により前記木材が塑性加工されてなる塑性加工木材とは、木材の圧縮成形により圧密加工された木材であることを意味する。
上記表層部は、内層部よりも高い圧縮率により気乾比重、繊維密度が高くなり濃色化した濃色領域である。なお、この表層部の圧縮率は、元の木材の密度に対する圧縮率で45%以上が好ましい。45%以上とする圧縮率であれば、木材の性質が変化して硬度が顕著に増すためである。
上記裏層部は、前記表層部に対して反対面側に形成され、内層部よりも高い圧縮率により気乾比重、繊維密度が高くなり濃色化した濃色領域である。
上記内層部は、前記表層部と前記裏層部の間に介在し、前記表層部及び裏層部よりも低い圧縮率のために気乾比重、繊維密度が低いことで前記表層部及び前記裏層部よりも薄色の色調を呈する薄色領域である。
これら表層部、裏層部及び内層部は、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向(加熱圧縮方向)において、即ち、木材の厚み方向において、表層部、内層部、裏層部の順に一体的に連続する構造である。表層部と内層部、また、内層部と裏層部は圧縮率の相違による明らかな密度差があることで、その密度差が色調の濃淡として表れ、内層部に比して表層部及び裏層部では濃色の色調を呈し、表層部及び裏層部に比して内層部では薄色の色調を呈している。即ち、表層部及び裏層部が内層部よりも高い圧縮率によって、相対的な比較で木口面では表層部及び裏層部が内層部よりも濃色化して表れていることを意味する。換言すると、木口面において内層部は表層部及び裏層部よりも薄色である。
また、上記木口面の年輪線とは、木口面から見て、質が緻密に形成されている線状の部分を意味し、木口面に表れる木目のことである。
そして、この木口面の年輪線が、濃淡の相違により区別できる前記表層部と前記内層部の境界上、及び、同じく濃淡の相違により区別できる前記内層部と前記裏層部の境界上に屈曲点を有する。
ここで、上記木口面において前記表層部と前記内層部の境界に年輪線の屈曲点を有するとは、前記表層部と前記内層部の圧縮率の相違、即ち、細胞の圧縮変形量の相違が、早材部の細胞の圧縮変形による空隙の減少、細胞壁の重複による早材部と年輪線を構成している晩材部との配列状態に影響し、前記表層部と前記内層部で明らかな密度差があることにより、年輪線の曲線方向が変わる点があることを意味する。つまり、塑性加工による前記表層部と前記内層部の圧縮率の相違が、早材部と晩材部より構成される年輪幅に表れ、その年輪幅の相違が木口面の年輪線に屈曲として顕在化したものであり、その屈曲点は前記表層部と前記内層部の境界上に存在している。
また、上記木口面において前記内層部と前記裏層部の境界に年輪線の屈曲点を有することについても、前記内層部と前記裏層部の圧縮率の相違、即ち、細胞の圧縮変形量の相違が、早材部の細胞の圧縮変形による空隙の減少、細胞壁の重複による早材部と年輪線を構成している晩材部との配列状態に影響し、前記内層部と前記裏層部で明らかな密度差があることにより、年輪線の曲線方向が変わる点が存在することを意味する。つまり、塑性加工による前記内層部と前記裏層部の圧縮率の相違が、早材部と晩材部より構成される年輪幅に表れ、その年輪幅の相違が木口面の年輪線に屈曲として顕在化したものであり、その屈曲点は前記内層部と前記裏層部の境界上に存在している。
そして、上記表層部と前記内層部の境界上の前記年輪線の屈曲点の屈曲度が前記裏層部と前記内層部の境界上の前記年輪線の屈曲点の屈曲度よりも大きいとは、前記表層部では前記内層部よりも高い圧縮率によって年輪幅が前記内層部に比して縮小し、また、前記裏層部においても前記内層部よりも高い圧縮率により年輪幅が前記内層部に比して縮小し、それら年輪幅の変化が濃淡で区別できる前記表層部と前記内層部の境界上、及び、濃淡で区別できる前記内層部と前記裏層部の境界上で、木口面の年輪線の屈曲という形で表れているが、前記表層部に比して前記裏層部の圧縮率が高いことで、木口目に表れる前記表層部の年輪幅の縮小の変化が前記裏層部の年輪幅の縮小の変化よりも大きく、それら変化の相違が屈曲変化の相違として、前記内層部の年輪線に対する前記裏層部の年輪線の屈曲よりも前記内層部の年輪線に対する前記表層部の年輪線の屈曲が大きくなっていること意味する。即ち、前記表層部の高圧縮率により木口目に表れる前記表層部の年輪線が緩勾配であるのに対し、前記裏層部が前記表層部よりも低い圧縮率であることで、木口目に表れる前記裏層部の年輪線の勾配が急勾配であるから、木口目に表れる前記内層部側から前記表層部側にかけての年輪線の屈曲の変化は、前記内層部側から前記裏層部側にかけての年輪線の変化よりも急角度である。
なお、木目の長さ方向に対して垂直方向である木材の厚み方において、表層部と内層部の境界上、及び、内層部と裏層部の境界上の年輪線のうち、その屈曲点の屈曲度が大きい方が表層部と内層部の境界側であり、年輪線の屈曲度合い、内層部との色調比較で表層部と裏層部を認識できるところ、例えば、塑性加工木材を床材等として使用する場合、通常、年輪線の屈曲度合い大きく、前記内層部側から前記表層部側にかけての年輪線の変化が急勾配である方、即ち、圧縮率が裏層部よりも高くなっている表層部を使用面、意匠面側とされる。しかし、必ずしも表層部側を使用面、意匠面側としてその使用方向までを特定するものではない。また、通常、加熱圧縮による歪み量から、例えば、板目材の場合、その木表側の板目面側が表層部側となり、木裏側の板面側が裏層部側となる。そして、表層部及び裏層部は木材の木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材の厚み方向を上下方向としたとき、その上下の層のことである。なお、塑性加工した木材の樹種は、特に問われず、針葉樹または広葉樹の何れでもよい。例えば、杉、松(カラマツ等)、檜、欅、ウォールナット(胡桃)、イエローポプラ等が用いられる。更に、個々の塑性加工木材について、その節部の有無を問うものでもない。
請求項5の発明の塑性加工木材は、前記表層部の厚みに対し、前記内層部の厚みが2倍以上、5倍以下の範囲内であり、前記裏層部の厚みが0.5倍以上、1倍以下の範囲内であるものである。なお、各表層部、内層部、裏層部は木口面において濃淡の相違により区別でき、それらの厚みは、前記木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の厚みを意味する。なお、このときの厚みは、最終的に製品化された厚みであり、塑性加工(圧密加工)後に前記表層部等が切削加工されている場合、その切削加工された後の厚みを基準とする。
請求項1の発明に係る塑性加工木材によれば、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により前記木材が塑性加工されてなる塑性加工木材であって、前記加熱圧縮された表層部及びその反対側の裏層部が、前記表層部及び前記裏層部の間に介在する内層部よりも高い圧縮率によって、前記表層部と前記裏層部と前記内層部からなる表層圧縮材とし、かつ、木口面に表れる前記表層部と前記内層部の境界及び前記内層部と前記裏層部の境界に年輪線の屈曲点を形成したものである。
このような請求項1の発明に係る塑性加工木材は、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮で、表面側からその反対面側の裏面側までの厚み方向において、その表層側及び裏層側で圧縮率を高くし、その間の内部を低い圧縮率とする塑性加工材であるから、表層側及び裏層側が圧縮され易く木材内部が圧縮され難い状態とされ、木材内部に圧縮によるストレスが掛かり難いようにされたものである。
こうして請求項1の発明に係る塑性加工木材は、木材内部における圧縮ストレスを少なくしたものであるから、節部が存在する場合であっても、その節部の組織全体に無理な圧縮力が加えられていない。特に、木材内部で節部の繊維に過剰なストレスが掛かり難いようにされたものである。そして、このように木材内部が圧縮され難い状態とされたものであるが、加熱圧縮処理時には節部及びその周囲の高い吸放湿特性によって節部の周囲で木材組織の繊維が軟化し変形しやすく、加熱圧縮力による節部の動きが規制されていないものである。
なお、前記表層部と前記裏層部と前記内層部からなる表層圧縮材は、木口面に表れる前記表層部と前記内層部の境界及び前記内層部と前記裏層部の境界に年輪線の屈曲点を形成したものであるが、木材が自然物であるから、明確な年輪線の屈曲点が現れるのみではなく、場所によっては明確な年輪線の屈曲点が現れない場合も、複数現れる場合もある。
よって、請求項1の発明に係る塑性加工木材によれば、節部が存在する場合であっても、木材内部で節部やその周囲の繊維に圧縮による過剰なストレスが掛かり難く、加熱圧縮力による節部の応力の発生を少なくしたものであるから、節部やその周囲の繊維の傾き、座屈、潰れ、破壊等が生じ難く、木材の割れ(クラック、亀裂)が生じ難いものである。
また、請求項1の発明に係る塑性加工木材によれば、表層部を最も高い圧縮率の高密度塑性加工領域として元の木材の傷付き易さを解消でき、更に、内層部よりも高い圧縮率の表層部及び裏層部で内層部を平行的に挟んだ3層構造により、機械的に安定した強度となるから、元の木材よりも機械的強度を強くできる。そして、内層部よりも高い圧縮率の表層部及び裏層部で内層部を挟んでいることで、表裏で膨張収縮率のバランスがよい。特に、膨張収縮率の大きい木表側を表層部としたとき、そこを高密度の塑性加工とする一方で、膨張収縮率の小さい木裏側の裏層部を表層部よりも低い圧縮率の塑性加工とするから、元の木材の表裏の膨張収縮率の差がバランスされる。更に、節部及びその周囲の高い吸放湿特性により周囲環境条件の変化でそこに収縮膨張力が生じても、内層部は圧縮率の低い低密度塑性加工領域であるから、そこが緩衝作用を持つ。よって、周囲環境条件が変化したときでも内部の応力の発生が少ないものとなる。
したがって、節部が存在する場合であっても、周囲環境条件の変化で節部に掛かるストレスは少なく、木材の割れ(クラック、亀裂)を生じさせない対応である。また、全体の歪みの発生も少なく、寸法形状安定性が高いものである。
また、前記表層部側からその反対面側の前記裏層部側までの厚み方向の密度分布は、前記表層部の表面側及び前記裏層部の裏面側から内側に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化していることから、木材の厚み方向で密度差の急激な変化が生じないことで、収縮膨張力の相違による応力の集中も生じ難いものである。よって、節部が存在する場合であっても、周囲環境条件の変化による節部へのストレスを小さくでき、節部の割れ(クラック、亀裂)、木材の割れ、全体の歪み等が生じ難い。
請求項2の発明に係る塑性加工木材によれば、前記表層部は、前記加熱圧縮により前記木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とされ、前記裏層部は、前記木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の圧縮率とされ、前記内層部は、前記加熱圧縮により前記木材の気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内の圧縮率とされたものである。
本発明者らは、板目材や追柾材等の木取り、木目の相違を問わず、また、木材に大きな節や多数の節がある場合でも、割れ(クラック、亀裂)を生じさせることなく、安定した品質で強度等の木材特性を得るために、鋭意実験研究を重ねた結果、前記表層部、前記裏層部及び前記内層部を所定の圧縮率の範囲内とし圧縮率を制御する塑性加工によって、板目材や追柾材等の木取り、木目の相違を問わず、また、節部の占有率が10%〜20%と高くても、割れ(クラック、亀裂)等を生じさせることなく強度等の木材特性の安定した品質が得られ、歩留まりも高いものとなることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
即ち、例えば、気乾比重が0.48以下の杉、檜等の軟質な木材の場合、前記表層部は、前記木材の密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とし、前記裏層部は、前記木材の密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の圧縮率とし、前記内層部は、前記木材の密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内の圧縮率とする各層の圧縮率の制御により、請求項1に記載の効果に加えて、板目材や追柾材等の木取り、木目の相違を問わず、節部の占有率が10%〜20%と高くても、割れ(クラック、亀裂)等がなく、例えば、床材等として使用しても傷跡や凹みが付き難い実用的に十分な硬度や材強度等の強度特性を持った安定した品質の塑性加工木材となる。
請求項3の発明に係る塑性加工木材によれば、前記表層部の気乾密度に対し、前記内層部の気乾密度が0.35〜0.65倍の範囲内であり、前記裏層部の気乾密度が0.6〜0.8倍の範囲内である。
本発明者らの実験研究によれば、加熱圧縮により各層の気乾密度が上記範囲内とされる塑性加工によって、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、全体で膨張収縮率のバランスがよく、周囲環境条件が変化したときの木材の収縮膨張による内部の応力を少なくできる。よって、木材に10%〜20%の高い占有率で節部が存在している場合であっても、周囲環境条件が変化したときの収縮膨張率の違いによるストレスで木材内部の節部Kやその周囲で割れ(亀裂、クラック)が生じることがなく、安定した品質が確保される。
請求項4の発明に係る塑性加工木材によれば、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により前記加熱圧縮された両面側の表層部及びその反対側の裏層部が、前記表層部及び前記裏層部の間に介在する内層部よりも高い圧縮率によって前記内層部よりも濃色の色調を呈し、また、前記木口面に表れる前記表層部と前記内層部の境界及び前記内層部と前記裏層部の境界に年輪線の屈曲点を有し、そして、前記表層部と前記内層部の境界上の年輪線の屈曲点の屈曲度が前記裏層部と前記内層部の境界上の年輪線の屈曲点の屈曲度よりも大きいものである。
このように木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮で、表面側からその反対面側の裏面側までの厚み方向において、その表層部及び裏層部がその間の内層部よりも高い圧縮率により濃色化し、表層部及び裏層部と内層部との圧縮率、密度差の相違により、木口面に表れる表層部と内層部の境界及び内層部と裏層部の境界に年輪線の屈曲点を有することになる塑性加工は、表層側及び裏層側が圧縮され易く内部が圧縮され難い状態とされて木材内部に圧縮によるストレスが掛かり難いようにしたものである。特に、前記表層部と前記内層部の境界上の年輪線の屈曲点の屈曲度が前記裏層部と前記内層部の境界上の年輪線の屈曲点の屈曲度よりも大きいものとする塑性加工は、表層部の圧縮率、密度と裏層部の圧縮率、密度を相違させる加熱圧縮であり、加熱圧縮処理時に内部の応力の集中を緩和したものである。
また、前記表層部側からその反対面側の前記裏層部側までの厚み方向の密度分布は、前記表層部の表面側及び前記裏層部の裏面側から内側に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化していることから、木材の厚み方向で密度差の急激な変化が生じないことで、収縮膨張力の相違による応力の集中も生じ難いものである。よって、節部が存在する場合であっても、周囲環境条件の変化による節部へのストレスを小さくでき、節部の割れ(クラック、亀裂)、木材の割れ、全体の歪み等が生じ難い。
こうして、請求項4の発明に係る塑性加工木材によれば、木材内部における圧縮ストレスを少なくしたものであるから、節部が存在していても、その節部の組織全体に無理な圧縮力が加えられることがない。また、木材内部が圧縮され難い状態とされたものであるが、加熱圧縮処理時には節部及びその周囲の高い吸放湿特性によって節部の周囲で木材組織の繊維が軟化し変形しやすく、加熱圧縮力による節部の動きが規制されていないものである。
よって、木材内部で節部やその周囲の繊維に圧縮による過剰なストレスが掛かり難く、加熱圧縮力による節部の応力の発生を少なくしたものであるから、節部やその周囲の繊維の傾き、座屈、潰れ、破壊等が生じ難く、木材の割れ(クラック、亀裂)が生じ難いものである。
更に、表層部を最も高い圧縮率の高密度塑性加工領域として元の木材の傷付き易さを解消でき、更に、内層部よりも高い圧縮率の表層部及び裏層部で内層部を平行的に挟んだ3層構造により、機械的に安定した強度となるから、元の木材よりも機械的強度を強くできる。そして、内層部よりも高い圧縮率の表層部及び裏層部で内層部を挟んでいることで、表裏で膨張収縮率のバランスがよい。特に、膨張収縮率の大きい木表側を表層部としたとき、そこを高密度の塑性加工とする一方で、膨張収縮率の小さい木裏側の裏層部を表層部よりも低い圧縮率の塑性加工とするから、元の木材の表裏の膨張収縮率の差がバランスされる。更に、節部及びその周囲の高い吸放湿特性により周囲環境条件の変化でそこに収縮膨張力が生じても、内層部は圧縮率の低い低密度塑性加工領域であるから、そこが緩衝作用を持つ。よって、周囲環境条件が変化したときでも内部の応力の発生が少ないものとなる。
したがって、節部が存在する場合であっても、周囲環境条件の変化で節部に掛かるストレスは少なく、木材の割れ(クラック、亀裂)を生じさせない対応である。また、全体の歪みの発生も少なく、寸法形状安定性が高いものである。
請求項5の発明に係る塑性加工木材によれば、前記表層部の厚みに対し、前記内層部の厚みが2〜5倍の範囲内であり、前記裏層部の厚みが0.5〜1倍の範囲内である。
本発明者らの実験研究によれば、加熱圧縮により各層の厚みが上記範囲内とされる塑性加工によって、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、木表側板目面または追柾面での測定で直径1cm以上の大きな節部が木材の厚み方向に貫いて存在する場合でも、節部に掛かる圧縮ストレスを少なくできて、節部やその周辺の繊維の座屈、破壊等による木材の割れ(クラック、亀裂)等が発生し難い。その上、圧縮による節部及びその周囲の顕著な濃色化、黒色化が抑えられ、表面意匠性が損なわれることもない。また、表裏の厚み、圧縮率のバランスもよく、周囲環境条件が変化しても高い寸法形状安定性を確保でき、節部がある場合でも節部やその周囲の割れが生じ難い。
図1は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の実施例として板目材を示す説明図で、(a)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材を形成するための塑性加工前の木材の斜視図、(b)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の斜視図、(c)はその木口面を示した正面図であり、表層部及び裏層部とその間の内層部とでの濃淡の違い及び年輪線の走向を示した説明図である。 図2は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の実施例として追柾材を示す説明図で、(a)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材を形成するための塑性加工前の木材の斜視図、(b)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の斜視図、(c)はその木口面を示す正面図であり、表層部及び裏層部とその間の内層部とでの濃淡の違い及び年輪線の走向を示した説明図である。 図3は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の実施例として図2に示した追柾材について、図2とは反対側の木口面側から見たときの説明図で、(a)は図2に示した塑性加工前の木材について図2とは反対側の木口面側から見たときの斜視図、(b)は図2に示した塑性加工木材について図2とは反対側の木口面側から見たときの斜視図、(c)はその木口面を示す正面図であり、表層部及び裏層部とその間の内層部とでの濃淡の違い及び年輪線の走向を示した説明図である。 図4は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の実施例として節部がある場合の説明図で、(a)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材を形成するための塑性加工前の木材としての板目材の斜視図、(b)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の斜視図、(c)はその木口面を示す正面図であり、表層部及び裏層部とその間の内層部とでの濃淡の違い及び年輪線の走向を示した説明図である。 図5は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の実施例として節部がある場合の別の例を示す説明図で、(a)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材を形成するための塑性加工前の木材としての板目材の斜視図、(b)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の斜視図、(c)はその木口面を示す正面図であり、表層部及び裏層部とその間の内層部とでの濃淡の違い及び年輪線の走向を示した説明図である。 図6は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材を形成する手順の一例を示す説明図で、(a)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材を形成するための塑性加工前の木材としての板目材の斜視図、(b)は木材の乾燥を説明するための説明図、(c)は木材の水分付加を説明する説明図、(d)は木材の加熱圧縮を説明する説明図、(e)は塑性加工木材の説明図である。 図7は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材を形成する手順の一例を示す説明図で、(a)は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材を形成するための塑性加工前の木材としての追柾材の斜視図、(b)は木材の乾燥を説明するための説明図、(c)は木材の水分付加を説明する説明図、(d)は木材の加熱圧縮を説明する説明図、(e)は塑性加工木材の説明図である。 図8は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材を形成するための塑性加工木材製造装置の一例を示す概略構成の断面図である。 図9は本発明の実施の形態に係る塑性加工木材の製造工程の一例を説明するための説明図で、(a)は塑性加工する木材の供給の説明図、(b)は加熱圧縮開始状態の説明図、(c)は密閉状態での加熱圧縮状態の説明図、(d)は密閉状態での蒸気圧制御処理の説明図、(e)は密閉状態での冷却状態の説明図、(f)は塑性加工木材の取り出しの説明図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は、同一または相当する部分及び機能を意味するものであるから、ここでは重複する説明を省略する。
例えば、図4(a)や図5(a)に示すように、針葉樹等の原木を板目取り、追柾取り等して製材された木材に節部Kが存在する場合、その節部Kは節部K以外の組織に比して高比重で硬いことから、木材の強度特性を高めるための圧縮力を加えても節部Kは圧縮され難い。
更に、木材の圧縮強度の異方性から、木材の強度特性を高めるために、通常、年輪の繊維方向(木目の長さ方向)に対し垂直方向に加圧、例えば、板目材であれば板目面に対し加圧(放射方向の圧縮)を行うところ、図4(a)や図5(a)に示すように、木材の節部Kは、木目の長さ方向に対し垂直方向、つまり、圧縮方向にその繊維が走向するから、圧縮に強い。
こうして節部Kが高比重で硬くなっていることに加え、年輪線RLと節部Kの繊維走向の方向性の相違からしても、節部Kは非常に圧縮され難いものとなっている。
したがって、例えば、図4(a)に示したように、年輪に対して略接線を成している木目側(板目材の中央寄り)にある節部Kでは、その繊維が木目の長さ方向に対し垂直方向に略直線的に走向しているところ、木材の強度特性を高めるために、1対の熱板プレス等を用いて木材の厚み方向の両面側から圧縮力を加えて木材の厚み全体を高圧縮しようとすると、その圧縮方向に節部Kの繊維が走向することで、その節部Kに大きな圧縮応力が生じ、節部Kの繊維が座屈して破壊、割れ(クラック、亀裂)等が生じる。更に、節部Kの周辺においても年輪の木目の繊維走向に乱れ、傾斜があることで割れ(クラック、亀裂)等が生じることもある。
また、図5(a)に示すように、追柾部分にある節部Kでは、その繊維が木目の長さ方向に対し垂直方向で傾斜して(板目面に対し傾いて)走向しているところ、木材の強度特性を高めるために、1対の熱板プレス等を用いて木材の厚み方向の両面側から圧縮力を加えて木材の厚み全体を高圧縮しようとすると、その圧縮方向に節部Kの繊維が傾斜して走向することで、その節部Kにも比較的大きな圧縮応力が生じ、節部Kの繊維の傾斜が大きくなって木材内部に割れ(クラック、亀裂)等が生じる。節部Kの周辺においても年輪の木目の繊維走向に乱れ、傾斜があることで割れ(クラック、亀裂)等が生じることもある。
特に、従来、木材を圧密化して塑性加工するための十分な化学変化を得るために、木材を繊維飽和点以下の所定の含水率に乾燥させてから圧密加工を行っているところ、一般的に、木材の乾燥は、その表面側から水分が蒸発していく。このため、表面側と同じくらいに内部を十分に乾燥させようとした場合には表面側で乾燥割れが生じ易くなる。したがって、表面側よりも内部の含水率が高い状態で圧密加工の加熱圧縮処理に供されることになる。特に、木材に節部Kが存在する場合には、節部K周囲の水分の吸放湿特性が高いことで、乾燥過程で、節部Kの割れ(クラック、亀裂)、節抜け等が生じやく、節部Kの割れ、節抜け等を生じさせない程度に乾燥させた木材では、内部の含水率が表面側よりもずっと高いものとなってしまう。
そして、このように表面側よりも内部の含水率が高い木材に対し、例えば、1対の熱板プレス等を用いて面接触による加熱圧縮処理を行うと、木材の内部に荷重が掛かり易くて内部に局部的な圧縮変形が発生し易くなる。即ち、木材の内部にストレスが入り易い。このため、木材に節部Kが存在していると、木材の内部で節部Kに過剰なストレスが掛かることで、節部Kの繊維の座屈変形、潰れ、破壊等が生じ易くなり、木材内部に割れ(クラック、亀裂)が生じ易くなる。この木材の内部割れは木材の表面側にまで広がることもある。
加えて、節部K及びその周囲には、豊富な樹脂分が存在することで、1対の熱板プレス等を用いて木材の厚み全体を高圧縮した際には、節部K及びその周囲から多量のヤニが析出し、それが熱板プレスに付着して熱板プレスを汚染する。熱板プレスに対し多くのヤニが付着した際には、熱板プレスに木材が接着して圧縮後に熱板プレスが木材から離れ難くなることもある。
更に、木材の厚み全体を高圧縮した場合には、節部K及びその周囲の比重が高まることで、木材表面の節部Kの濃色化、黒色化が顕著になり、意匠性を損ねてしまう問題もあった。
そこで、本発明者らは、木材に節部Kが存在しても、割れ(クラック、亀裂)を生じさせることなく機械的強度を強めた塑性加工木材を得るべく、鋭意実験研究を繰り返したところ、次のような問題解決に至った。
即ち、図1乃至図5で示すように、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により、その加熱圧縮方向の両面側のうち表層部Fで最も圧縮率を高め、表層部Fとは反対面側の裏層部Rを表層部Fよりも低い圧縮率とし、そして、表層部Fと裏層部Rの間に表層部F及び裏層部Rよりも低い圧縮率の内層部Iを設けて、木材の厚さ方向で圧縮率つまりは密度を変化させた圧密加工によって、木材全体に圧縮によるストレスが入り難いようにし、特に、木材内部に圧縮ストレスが掛かり難いようにした。これにより、木材に節部Kが存在する場合でも、木材内部で節部Kの繊維に過剰なストレスが掛からないことで節部Kの繊維が潰され難くなり割れ(クラック、亀裂)を生じさせることなく機械的強度を強めることができる。
具体的には、図1乃至図5で示したように、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材の厚み方向に加熱圧縮を行い、加熱圧縮により高い圧縮率、例えば、元の木材である加工前木材NW1,NW2,NW3,NW4(以下、加工前木材NW1,NW2,NW3,NW4を特に区別しないときには、単に『加工前木材NW』とする)の気乾密度に対する圧縮率で30%〜70%、好ましくは、45%〜65%の範囲内(最終製品の寸法形状に対応する気乾密度からの算出)とされ、高い圧縮率により比重、繊維密度が高くなり濃色化した高密度塑性加工領域の表層部Fを形成し、また、表層部Fとは反対面側で表層部Fよりも低い圧縮率、例えば、元の木材である加工前木材NWの気乾密度に対する圧縮率で10%〜45%、好ましくは、15%〜40%の範囲内(最終製品の寸法形状に対応する気乾密度からの算出)とされ、表層部Fよりは低いが内層部Iよりは高い圧縮率により気乾比重、繊維密度が高くなり濃色化した中密度塑性加工領域の裏層部Rを形成し、更に、表層部Fと裏層部Rの間で表層部F及び裏層部Rよりも低い圧縮率、例えば、元の木材である加工前木材NWの気乾密度に対する圧縮率で5%〜35%の範囲内、より好ましくは、10%〜30%の範囲内(最終製品の寸法形状に対応する気乾密度からの算出)とされ、表層部F及び裏層部Rよりも低い圧縮率により表層部Fと裏層部Rよりも薄色の色調を呈した低密度塑性加工領域の内層部Iを形成した塑性加工木材PW1,PW2,PW3,PW4(以下、塑性加工木材PW1,PW2,PW3,PW4を特に区別しないときには、単に『塑性加工木材PW』とする。)とする。
このように木材の木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材の厚み方向で圧縮率を相異させて密度を変化させた塑性加工では、木材全体に加熱圧縮によるストレスが入り難く、節部Kが存在してもその節部K全体に無理な圧縮力、ストレスがかからないようにしている。
特に、表層部Fを最も高い圧縮率とし、表層部Fとは反対面側の裏層部Rを表層部Fよりも低い圧縮率とし、更に、表層部Fと裏層部Rの間に介在する内層部Iを最も低い圧縮率とする塑性加工は、木材の内部である内層部Iを表裏層側に比べ圧縮され難い状態とし、即ち、上下方向からの平面的なプレス圧縮によっても荷重が掛かり難い領域とし、更に、表裏で圧縮率が相違することで、木材の厚み方向に対して加えた加熱圧縮力に対する木材内部の応力の集中が緩和され、木材内部に掛かる圧縮ストレスが少なくされたものである。
したがって、木材に節部Kが存在する場合でも、その節部K全体に無理な圧縮力、ストレスが掛からず、特に、木材内部で節部Kの繊維に過剰なストレスが掛からないことで、節部Kの繊維の座屈、潰れ、破壊等が生じ難いものとなり、木材の割れ(クラック、亀裂)が生じ難くなる。
即ち、表層部Fを最も高い圧縮率とし、表層部Fとは反対面側の裏層部Rを表層部Fよりも低い圧縮率とし、更に、表層部Fと裏層部Rの間に介在する内層部Iを最も低い圧縮率とする塑性加工は、内層部Iが最も低い圧縮率であることで木材内部が圧縮され難い状態とされ、また、表裏で圧縮率が相違することで特定方向の圧縮力による木材内部に生じる内部の応力の集中が緩和されたことから、木材内部に入る圧縮ストレスが少ない状態で強度特性が高められたものである。このように、表層部Fを最も高い圧縮率とし、表層部Fとは反対面側の裏層部Rを表層部Fよりも低い圧縮率とし、更に、表層部Fと裏層部Rの間に介在する内層部Iを最も低い圧縮率とする塑性加工によれば、木材内部に過剰なストレスが掛からないから、図4に示したように、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に略直線的に節部Kの繊維が走向している場合でも、また、図5に示したように、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に節部Kが斜めに走向している場合でも、木材内部で節部Kやその周囲の繊維に過剰なストレスが掛からないことで、節部Kやその周囲の繊維の傾き、座屈変形、潰れ、破壊等が生じ難い。
そして、このように加熱圧縮処理時に、木材内部に加熱圧縮によるストレスが掛かり難い状態としても、節部K周囲ではその高い吸放湿特性によって、木材組織が軟化し変形しやすく、木材の厚さ方向の両面側からの加熱圧縮力により、節部Kが木材内部側に押圧されても、節部K周囲の木材組織の軟化変形によって節部Kの動きを規制しない。即ち、節部Kの動きが拘束され難い。よって、節部Kに生じる加熱圧縮力に対する応力も小さく、内部の応力の発生も少ないものである。
特に、節部Kの組織は、木材の木表側から木裏側にかけてサイズが縮小する傾向にあることで、木材の表裏面側から内部に向かって節部Kが押圧されても、サイズが大きい木表側の節部Kの組織の変化をサイズが小さい木裏側の節部K組織の周囲の木材組織の軟化変形によって節部Kの変形、動き、移動を吸収できる。このため、圧縮力を加えても節部Kに発生する応力は小さく、節部Kの破壊等を生じさせない対応となる。
こうして、節部Kが存在する場合でも、木材内部で節部Kやその周囲の繊維に過剰な圧縮ストレスが掛からず、また、加熱圧縮力による内部の応力の発生、集中も少ないことで、節部Kやその周囲の繊維の傾き、座屈、潰れ、破壊等が生じ難く、木材の割れ(クラック、亀裂)が生じ難いものとなっている。
また、このように節部K全体に過剰なストレスが入り難いことで、節部Kからの多量のヤニの析出が抑えられるから、節部Kがあっても、加熱圧縮で使用する熱プレス板にヤニが接着して圧密加工後に木材が熱プレス板から剥がれなくなる事態が生じることもない。更に、節部K全体が圧縮されるものでないから、製品化後に周囲環境条件が変化した際に節部Kからヤニが多量に析出して商品価値を低下させるようなこともない。加えて、節部K全体が高圧縮されないことから、節部K及びその周囲の顕著な濃色化、黒色化が抑えられ、良好な外観を保持できる。
そして、本実施の形態の塑性加工木材PWは、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材の厚み方向で圧縮率、密度を変化させるものではあるが、木材の幅方向、即ち、木材の木目の長さ方向に対して直角方向では圧縮率が極端に変化するものでないから、木材の幅方向で周囲環境条件の変化による膨張収縮率に差がないから歪みや変形等の寸法形状変化は生じ難い。また、木材の幅方向で圧縮率、密度の極端な変化がないから強度等の木材特性の品質も安定している。しかも、節部Kの位置、寸法形状等に対応する操作も必要ないから、生産性に優れる。
ここで、本発明者らが気乾比重が0.48以下の軟質な木材、例えば、杉、檜、イエローポプラ等の木材を用いて実験研究を行ったところ、元の木材の気乾密度に対する圧縮率で表層部Fを45%未満の圧縮率(最終製品の寸法形状に対応する気乾密度からの算出)とする塑性加工である場合、元の木材に対する表面硬度の上昇が低く、傷付き易さを解消できずに実用に耐え得る強度特性が得られなかった。一方で、表層部Fの圧縮率(最終製品の寸法形状に対応する気乾密度からの算出)を65%超えとする塑性加工である場合、高い圧縮力での加熱圧縮が要求されて表層部Fのみならず内層部I及び裏層部Rも高圧縮率とされ厚み全体が高圧縮される塑性加工となるから、木材内部に掛かるストレスが高く、木材に節部Kが存在していると、節部Kやその周囲の繊維に破壊等が生じて、節部Kの割れ(亀裂、クラック)、木材割れが生じる。
また、内層部Iの圧縮率(最終製品の寸法形状に対応する気乾密度からの算出)を10%未満とする塑性加工では、低い圧縮力での加熱圧縮が要求されるところ、そのような低い圧縮力では、実用に耐え得る高い表面硬度を得ることができなかった。一方で、内層部Iの圧縮率(最終製品の寸法形状に対応する気乾密度からの算出)が30%を超えるような塑性加工では、木材全体に加熱圧縮によるストレスが入り易くなり、特に、木材内部に掛かるストレスが高くなり、板目材や追柾材等の製材の違いによっては、そこに10%〜20%の高い占有率で節部Kが存在すると、節部Kやその周囲の繊維の潰れ、座屈、破壊等が生じ易くなり、節部Kの割れ(亀裂、クラック)、木材割れの頻度が高くなった。
更に、裏層部Rの圧縮率(最終製品の寸法形状に対応する気乾密度からの算出)を15%未満とする塑性加工では、木材の表裏で周囲環境条件の変化による膨張収縮率の差が大きくなることで、木材の表裏面のバランスが悪く、周囲環境条件の変化によって木材内部にストレスが生じやすくなり、そのストレスによって節部Kに割れ等が生じることもあった。また、節部Kがない場合でも、周囲環境条件の変化により歪みが生じ易くなり、寸法安定性が損なわれたり機械的強度の安定性が低下したりした。一方で、裏層部Rの圧縮率(最終製品の寸法形状に対応する気乾密度からの算出)が40%を超えるような塑性加工では、表層部Fの圧縮率に近づくことで、加熱圧縮処理において、内部の応力が集中しやすくなり、木材内部に掛かるストレスが高くなる。このため、木材内部に節部Kが存在すると、その節部Kに無理なストレスが掛かり、節部Kやその周囲の繊維の潰れ、座屈、破壊等が生じ易くなって、節部Kの割れ(亀裂、クラック)や木材割れが生じ易くなった。
即ち、木材に節部Kが存在する場合でも割れ(クラック、亀裂)のない塑性加工とするためには、木材の圧縮量、密度の制御が非常に重要であり、表層部Fを加熱圧縮により元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とし、裏層部Rを元の木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の圧縮率とし、内層部Iを加熱圧縮により元の木材の気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内の圧縮率とする塑性加工によれば、板目材や追柾材等の製材の相違を問わず、木材に10%〜20%の高い占有率で節部Kが存在している場合であっても、実用に耐え得る強度特性が得られるうえ、割れ(亀裂、クラック)が生じ難いものとなる。なお、以下、特段記載のない限り、圧縮率は最終製品の寸法形状に対応する気乾密度から算出したものである。
特に、表層部Fが元の木材の気乾密度に対する圧縮率で65%以下、内層部Iが元の木材の気乾密度に対する圧縮率で40%以下では、板目材や追柾材等の製材の相違を問わず木材内部にストレスが入り難い塑性加工となり、更に、元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とする表層部Fに対し、裏層部Rを元の木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内とする塑性加工では、表層部Fと裏層部Rの圧縮率に差を設けていることで、木材の厚み方向の表裏面側から加えられる圧縮力による応力の木材内部への集中を緩和できる。このため、板目材や追柾材等の製材の相違を問わず、木材に10%〜20%の高い占有率で節部Kが存在している場合であっても、節部Kに掛かるストレスは少なくて節部Kやその周囲の繊維の潰れ、座屈、破壊等が生じない。
よって、木材に節部Kが存在しても、木材割れ(亀裂、クラック)が生じない塑性加工である。
また、表層部Fを元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とし、裏層部Rを元の木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の圧縮率とすると、周囲環境条件の変化による膨張収縮率の相違により生じる応力が木材内に集中するのが緩和される。特に、板目材では、通常、膨張収縮率の大きい木表側を表層部Fとしてそこを高密度の塑性加工とする一方で、膨張収縮率の小さい木裏側の裏層部Rを表層部Fよりも低い圧縮率の塑性加工とするから、元の木材の表裏の膨張収縮率の差が校正され、表裏のバランスが良くなる。したがって、周囲環境条件が変化したときでも膨張収縮率の相違によるストレスが生じ難い。よって、木材に10%〜20%の高い占有率で節部Kが存在している場合であっても、周囲環境条件が変化したときの収縮膨張率の違いによるストレスで節部Kやその周囲で割れ(亀裂、クラック)が生じることもない。また、表裏のバランスに優れるから、周囲環境条件が変化した時の歪みの発生も少なく、寸法形状安定性も高く、機械的強度も安定する。
更に、このように表層部Fを元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とし、裏層部Rを元の木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の圧縮率とする塑性加工では、木材の幅方向、即ち、木目の長さ方向に対して直角方向に木材の長さが圧縮により延びるのを抑えることができ、板目材や追柾材等の製材の違いによる比重差を少なくできる。即ち、木目、年輪模様が相違する板目材と追柾材とでは、木目の長さ方向に対して垂直方向の圧縮力を加えたときの圧縮応力、圧縮強度の相違から、木材の幅方向への延び変形が相違するところ、表層部Fと裏層部Rの圧縮率が上記範囲内であれば、節部Kが存在する場合であっても木材の幅方向への延び変形の差を少なくでき、比重差を少なくできる。よって、板目材や追柾材等の木取り、木目の相違を問わず安定した品質が得られる。
そして、表層部Fが元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%以上、内層部Iが元の木材の気乾密度に対する圧縮率で10%以上では、表面側が実用に耐え得る硬度に圧密化された塑性加工となり、元の木材の表面の傷付き易さが解消される。特に、表層部Fが元の木材の気乾密度に対する圧縮率で50%以上では、高い硬度、耐摩耗性、耐衝撃性が要求される床材等として利用しても集中荷重や衝撃荷重による傷跡や凹みが付き難く、材強度が高まる。
なお、ここでの圧縮率は、最終製品の寸法形状に対応する表層部F、内層部I、裏層部Rの各層の気乾密度を測定し、元の木材の気乾密度に対して、表層部F、内層部I、裏層部Rの各層の気乾密度がどのくらい変化したか(増大の変化)を圧縮率として表現したものである。
ここで、図1乃至図5で示したように、本実施の形態の塑性加工木材PWでは、圧縮率の相違による明らかな密度差から、木材の厚み方向において、濃色領域の表層部F、薄色領域の内層部I、濃色領域の裏層部Rが順に形成されており、これら濃色領域の表層部F、薄色領域の内層部I、濃色領域の裏層部Rは木口面で濃淡の色調で区別できる。
そこで、表層部F、内層部I、裏層部Rの各層を木目の繊維方向に対して並行方向(木口面に対して垂直方向)に切りだして、各層毎の気乾密度を測定することで、下記の式(A)より各層毎の圧縮率を求めることが可能である。
圧縮率〈%〉
=[1−{(元の木材の気乾密度)/(塑性加工木材PWの表層部F,内層部I,裏層部Rの気乾密度)}]×100 ・・(A)
本実施の形態の塑性加工木材PWが、例えば、杉であるときには、元の木材としての杉材の気乾密度は平均380〈kg/m〉であるから、加熱圧縮により元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とした表層部Fの気乾密度は、約690〜1090kg/mの範囲内であり、加熱圧縮により元の木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の圧縮率とした裏層部Rの気乾密度は、約440〜600kg/mの範囲内であり、加熱圧縮により元の木材の気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内の圧縮率とした内層部Iの気乾密度は、約420〜550kg/mの範囲内である。
なお、元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内とした表層部Fの圧縮率、元の木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内とした裏層部Iの圧縮率及び元の木材の気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内とした内層部Iの圧縮率は、最終製品の寸法形状に対応する気乾密度から算出したものである。即ち、最終製品の平滑性の確保のため、また、使用目的に見合った必要な厚みからすると、通常、圧密加工後には木材の表面を切削加工することから、圧密加工後に表裏面を例えば、1〜4mm程度切削加工した後の最終製品の寸法形状に対応した気乾密度の測定で、圧縮率を表現している。なお、このときの圧縮率は、各層を平面的に切り出して、特定層の全体の気乾密度から圧縮率を算出したものであり、密度分布からすると、即ち、特定層の特定の一部分を切り出した測定では、必ずしも上記範囲内に該当しないこともある。また、自然物を相手にするものであり測定等による誤差を有しても、実施できないものでなく、誤差の介入を否定するものではない。
本実施の形態の圧密加工では、後述するように、例えば、1対の熱板プレス(上プレス盤10Aと下プレス盤10B)を用いて木材の厚み方向に加熱圧縮力を加えた場合、熱板プレスに接触する木材の表裏面側ほど圧密度が高くなり、表裏面側から木材内部に向かって圧密度が徐々に低下することになる。ここで、木材の年輪線RLに着目すると、木材の木表側に比して木裏側では、材面(板目面)に対する年輪線RLの傾斜角度α(図6及び図7における境界線Bと木口面の年輪線RLとがなす鋭角側の交差角度α)が大となる傾向にある。そして、材面(板目面)に対する年輪線RLの傾斜角度αが大きいと圧縮変形が生じ難くなる。そこで、後述するように、木材の木裏側に対向させる下プレス盤10Bを固定し、木材の木表側に対向させる上プレス盤10Aを下降させる加熱圧縮とする。これにより熱板プレスに接触する木材の表裏面側が最も高圧縮されるが、表裏面側から木材内部に向かっての圧縮変形は、木裏側よりも木表側の方が圧縮変形され易く木表側で圧縮量が高くなって圧密度が増し裏層部Bよりも表層部Fで圧密された厚みが大きい。表裏で圧縮の差があるから木材の厚み方向に対して加えた加熱圧縮力に対する木材内部の応力の集中も緩和される。
このため、切削加工前でみれば、即ち、最終的に製品化されるときの切削代を含めての圧密加工後の表層部Fの気乾密度の分布は、約600〜1100kg/mの範囲内にあり、圧密加工後の表層部Fの全体の気乾密度からすると約700〜1100kg/mの範囲内で圧縮率は約45〜65%の範囲内であり、裏層部Rの気乾密度の分布は、約500〜1100kg/mの範囲内にあり、裏層部Rの全体の気乾密度からすると約600〜1100kg/mの範囲内で圧縮率は約45〜65%の範囲内であるが、最も圧密度が高い表裏面を切削加工、例えば、木表側の表面を1mm、木裏側の裏面を2mm程度切削加工することで、表裏面側から木材内部に向かっての圧縮変形は、木裏側の裏層部Bよりも木表側の表層部Fの方が圧密度が高く裏層部Bよりも表層部Fで圧密された厚みが大きかったことで、最終製品の寸法形状に対応する気乾密度の測定では、表層部Fは元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率となり、表層部Fとは反対面側の裏層部Rは元の木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の圧縮率となり、表層部F及び裏層部Rの間に介在する内層部Iは、元の木材の気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内の圧縮率となる。
なお、木材の材種による年輪幅、強度や、年輪線RLの走向や、木材の厚み方向に加熱圧縮力を加えたときの加熱圧縮の方向に対する直角方向の延び等によっては、木材の幅方向の中央部側と端部側の圧密度の差が生じることもあるが、最終製品の寸法形状に対応する気乾密度から算出した圧縮率は各表層部F、内層部I、裏層部Rの全体を切り出して測定した気乾密度から算出したものである。
特に、本発明者らの実験研究によれば、本実施の形態の塑性加工木材PWは、表層部Fの気乾密度に対し、内層部Iの気乾密度が0.35〜0.65倍の範囲内であり、裏層部Rの気乾密度が0.6〜0.8倍の範囲内が好ましい。加熱圧縮により各層の気乾密度が上記範囲内であれば、膨張収縮率のバランスがよく、周囲環境条件が変化したときでも木材内部にストレスが生じ難い。このため、木材に10%〜20%の高い占有率で節部Kが存在している場合であっても、周囲環境条件が変化したときの収縮膨張率の違いによるストレスで木材内部の節部Kやその周囲で割れ(亀裂、クラック)が生じることもない。また、周囲環境条件が変化しても全体の歪みの発生も少なくて寸法形状安定性が高く、安定した高い品質を確保できる。
更に、本発明者らの実験研究によれば、表層部Fに対する内層部Iの厚みの比率は、表層部Fの厚みに対し、内層部Iの厚みが2〜5倍の範囲内が好ましい。加熱圧縮により表層部Fと内層部Iの厚みの割合が上記範囲内であれば、内層部Iの内部まで(奥まで)ストレスが掛かり難いものとなる。更に、裏層部Rの圧縮率を適度に高くして、表層部Fとのバランス、つまりは寸法形状安定性を確保できる。また、表層部Fに対する裏層部Rの厚みの比率は、表層部Fの厚みに対し、裏層部Rの厚みが0.5〜1倍の範囲内が好ましい。表層部Fと裏層部Rの厚みの割合が上記範囲内であれば、木材内側における内部の応力の集中を緩和できる。
よって、木表側板目面または追柾面での測定で、例えば、直径1cm以上の大きな節部Kが厚み方向に貫通して存在する場合でも、また、節部Kの占有率が10%〜20%のものでも、節部Kに掛かる圧縮ストレスが少なくて、節部Kの繊維の座屈、押し潰れ、破壊等が生じ難く、木材割れ(亀裂、クラック)が生じ難い塑性加工となる。また、節部Kが厚み方向に貫通して存在する場合でも、圧縮による節部K及びその周囲の顕著な濃色化、黒色化が抑えられ、表面意匠性を保持できる。更に、表裏の厚み、圧縮率のバランスもよく周囲環境条件が変化しても高い寸法形状安定性を確保できる。
なお、本実施の形態の塑性加工木材PWの全体の圧縮率については、元の木材(加工前木材NW)の厚みに対する圧縮率で、即ち、元の木材の全体厚みを基準とし、圧縮後の塑性加工木材PWの全体厚みから換算した圧縮率で、20%〜50%の範囲内、好ましくは、25%〜45%の範囲内である。本発明者らの実験研究によれば、全体厚みに対する圧縮率が低すぎると、表層部Fにおいて十分に高い圧縮率、強度が得られない一方で、圧縮率が高すぎると、木材内部に掛かるストレスが増し、節部Kが存在していると、節部Kやその周辺で割れが生じやすくなる。元の木材の厚みに対する圧縮率で、20%〜50%の範囲内、好ましくは、25%〜45%の範囲内であれば、節部Kが存在しても割れ等が生じることなく表面硬度を高めることができ、かつ、節部Kの濃色化、黒色化が抑えられ外観性も良好である。
例えば、本実施の形態の塑性加工木材PWの全体厚みは、使用目的に見合った必要な厚みに設定されるが、最終的に製品化されるときの切削代を含めても、好ましくは、20mm〜50mmの範囲内、より好ましくは、20mm〜40mmの範囲内である。本発明者らの実験研究によれば、全体厚みが薄すぎるものでは、各層を所定の圧縮率で制御しようとすると、厚み全体の圧縮率が高められる塑性加工となることで、節部Kが存在していると割れ(クラック、亀裂)が生じる頻度が高くなる。また、厚みの薄い木材の塑性加工であると圧縮代が少なくなることで、表層部Fで必要な強度、硬度が得られ難くなる。一方、全体厚みが厚すぎる塑性加工木材PWでは、厚みの厚い木材NWの加工であるから、加熱圧縮前の乾燥処理で乾燥割れが生じない程度で木材内部の含水率を十分に低下させることが難しくなり、木材の内部が圧縮され易くなってストレスが掛かり易くなる。このため、節部Kがあると割れ(クラック、亀裂)が生じる頻度が高くなる。よって、塑性加工木材PWの全体の厚みが、好ましくは、20mm〜50mmの範囲内、より好ましくは、20mm〜35mmの範囲内であれば、木材の厚み方向で所定の圧縮率に制御できて実用的な強度を確保でき、節部Kがあっても割れ(クラック、亀裂)が生じ難い塑性加工となり、高い歩留まりを確保できる。
そして、最終的に製品化されるときの切削代(例えば、通常、1〜4mm)を含めても、表層部Fの厚みは、例えば、2mm〜7mmの範囲内、好ましくは、2mm〜5mmの範囲内であり、内層部Iの厚みは、10mm〜45mmの範囲内、好ましくは、15mm〜30mmの範囲内であり、裏層部Rの厚みは、2mm〜6mmの範囲内、好ましくは、2mm〜5mmの範囲内である。
ここで、このように木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に加熱圧縮を加えて、加熱圧縮により元の木材(加工前木材NW)の気乾密度に対する圧縮率が45%〜65%の範囲内である高密度塑性加工領域の表層部Fと、表層部Fとは反対面側で加熱圧縮により元の木材(加工前木材NW)の気乾密度に対する圧縮率が15%〜40%の範囲内で表層部Fよりも低い圧縮率である中密度塑性加工領域の裏層部Rと、表層部Fと裏層部Rの間に介在し加熱圧縮により元の木材(加工前木材NW)の気乾密度に対する圧縮率が10%〜30%の範囲内で表層部F及び裏層部Rよりも低い圧縮率である低密度塑性加工領域の内層部Iとを形成した塑性加工木材PWでは、図1乃至図5等に示すように、木口面に表れている色調が特徴的に変化し、更に、木口面に表れている年輪線RLの走向が、高密度塑性加工領域の表層部Fと低密度塑性加工領域の内層部Iとの境界、及び、低密度塑性加工領域の内層部Iと中密度塑性加工領域の裏層部Rと境界で特徴的に変化している。
即ち、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向で圧縮率を変化させた塑性加工であることで、加熱圧縮により元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とした高密度塑性加工領域の表層部F、及び、表層部Fとは反対面側で加熱圧縮により元の木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の表層部Fよりも低い圧縮率とした中密度塑性加工領域の裏層部Rは色調が濃色であるのに対し、加熱圧縮により元の木材の気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内の表層部F及び裏層部Rよりも低い圧縮率とした低密度塑性加工領域の内層部Iは表層部F及び裏層部Rよりも薄色である。
更に、このように木材の木目の長さ方向に対して垂直方向で圧縮率を変化させ所定の圧縮率に制御した塑性加工であることで、元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とした高密度濃色領域の表層部Fと、元の木材の気乾密度に対する圧縮率が10%〜30%の範囲内で表層部Fよりも低い圧縮率であり木材の厚み方向で表層部Fの片面側(下側)に位置する低密度薄色領域の内層部Iとの木口面に表れる境界線BL上では、年輪線RLの屈曲点(遷移点)fが存在している。更に、元の木材の気乾密度に対する圧縮率が10%〜30%の範囲内で裏層部Rよりも低い圧縮率である低密度薄色領域の内層部Iと、加熱圧縮により元の木材の気乾密度に対する圧縮率が15%〜40%の範囲内で表層部Fとは反対面側で内層部Iの片面側(下側)に位置する中密度濃色領域の裏層部Rとの木口面に表れる境界線BL上においても、年輪線RLの屈曲点(遷移点)fが存在している。
即ち、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向において、圧縮量、密度、塑性加工の特性の相違や変化が木口面に年輪線RLの屈曲点f,fとして表れており、木口面において濃色領域の表層部Fと薄色領域の内層部Iとの境界線BL上に年輪線RLが屈曲した点(屈曲点)fを有し、また、薄色領域の内層部Iと濃色領域の裏層部Rとの境界線BL上に年輪線RLが屈曲した点(屈曲点)fを有する。
特に、表層部Fの圧縮率が元の木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の最も大きい圧縮率とされ、内層部Iの圧縮率が元の木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の最も小さい圧縮率とされ、裏層部Rの圧縮率が元の木材の気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内とされていると、表層部Fと内層部Iの圧縮率の差が、裏層部Rと内層部Iの圧縮率の差よりも大きいから、木口面において、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点の屈曲度fよりも大きく、表層部Fで走向する年輪線RLは、裏層部Rに走向する年輪線RLよりも緩やかな傾斜となる。
ここで、屈曲点fの屈曲度とは、木口面において、屈曲点fから内層部Iの年輪線RLを表層部Fに向かって延長する直線状の仮想線Iを引いたときその仮想線Iに対する表層部Fの年輪線RLの傾き角度θのことである。また、屈曲点fの屈曲度とは、木口面において、屈曲点fから内層部Iの年輪線RLを裏層部R1に向かって延長する直線状の仮想線Iを引いたときその仮想線Iに対する裏層部Rの年輪線RLの傾き角度θのことである。そして、屈曲点fの屈曲度が屈曲点fの屈曲度よりも大きいとは、θ>θであることを意味する。(図1及び図2参照)
即ち、木目の長さ方向に対して垂直方向で圧縮率を相異させて密度を変化させた塑性加工では、その所定の圧縮率、密度の相違や変化が木材の色調の濃淡として、また、木口面で年輪線RLの走向の屈曲として表れる。特に、塑性加工による各層の圧縮率の相違が、早材部と晩材部より構成される年輪幅にも表れ、その年輪幅の相違が木口面の年輪線RLに屈曲として顕在化し、その屈曲点f,fは表層部Fと内層部Iの境界線BL上及び内層部Iと裏層部Rの境界線BL上に存在している。そして、内層部Iに対する表層部Fと裏層部Rの圧縮率の違いが、屈曲点f、fの屈曲度の相違となっている。
したがって、本実施の形態の塑性加工木材PWは、表層部F及びその反対面側の裏層部Rが、表層部F及び裏層部Rの間に介在する内層部Iよりも高い圧縮率によって内層部Iよりも濃色の色調を呈し、木口面に表れる表層部Fと内層部Iとの境界及び内層部Iと裏層部Rとの境界に年輪線RLの屈曲点f,fを有し、表層部Fと内層部Iとの境界上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が内層部Iと裏層部Rとの境界上の年輪線Rの屈曲点fの屈曲度よりも大きいものである発明として捉えることもできる。
そして、このように表層部F及びその反対側の裏層部Rが、表層部F及び裏層部Rの間に介在する内層部Iよりも高い圧縮率であることで内層部Iよりも濃色の色調を呈し、また、木口面に表れる表層部Fと内層部Iの境界線BL、及び、内層部Iと裏層部Rの境界線BLに年輪線Rの屈曲点f,fを有し、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度よりも大きくするようにする塑性加工についても、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材の厚み方向で圧縮率を相異させて密度を変化させたものであるから、全体に加熱圧縮によるストレスが入り難いものである。即ち、節部Kが存在してもその節部K全体に無理な圧縮力、ストレスをかけないようにしている。
特に、表層部F及び裏層部Rは内層部Iよりも濃色化し、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点の屈曲度fよりも大きくした塑性加工は、内層部Iの圧縮率が表層部F及び裏層部Rよりも低くて木材の内部である内層部Iを表裏層側に比べ圧縮され難い状態とし、更に、表層部Fよりも裏層部Rの圧縮率を低くし表層部F及び裏層部Rで圧縮率が相違することで、即ち、表層部Fと内層部Iの圧縮率の差と、裏層部Rと内層部Iの圧縮率の差が相違していることで、圧縮による内部の応力の集中が緩和され、木材内部に圧縮ストレスがかからないようにしたものである。
したがって、木材に節部Kが存在する場合でも、その節部K全体に無理な圧縮力、ストレスが掛からないようにし、特に、木材内部で節部Kの繊維に過剰なストレスが掛からないことで、節部Kの繊維の座屈、潰れ、破壊等が生じ難く木材が割れを生じさせないものである。
こうして、表層部F及び裏層部Rは内層部Iよりも濃色化し、木口面において表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点の屈曲度fよりも大きくした塑性加工についても、表層部Fを最も高い圧縮率とし、表層部Fとは反対側の裏層部Rを表層部Fよりも低い圧縮率とし、更に、表層部Fと裏層部Rの間に介在する内層部Iを最も低い圧縮率とするものである。よって、内層部Iが最も低い圧縮率であることで木材内部が圧縮され難い状態とされ、また、表裏で圧縮率が相違することで特定方向の圧縮力による木材内部に生じる内部の応力の集中が緩和されたことから、木材内部に入る圧縮ストレスが少ない状態で強度特性が高められたものである。
更に、本発明者らの実測によれば、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が±0〜30度の範囲内が好ましい。
ここで、屈曲点fの屈曲度が±0〜30度とは、木口面において、屈曲点fから内層部Iの年輪線RLを表層部Fに向かって延長する直線状の仮想線Iを引いたときその仮想線Iに対する表層部Fの年輪線RLの傾き角度θ=±0〜30度である。なお、屈曲との表現からすれば、厳密には表層部Fの年輪線RLの傾きθ=0度とならないが、自然物を相手にするものであるから、θ≒0度の場合もあるので、傾き角度θ=±0〜30度と表現することとする。
表層部Fの圧縮率を高めることで硬度が高まり表面の傷付き易さを解消できるが、高圧縮とすると、木材内部や表面に割れ(クラック、亀裂)が生じ易くなるところ、本発明者らは、木口面に表れる屈曲点fの屈曲度に注目し、屈曲度が所定の範囲内であれば、割れ等が入らないで表面の硬度が増した安定した強度が得られ、高い製品品質を確保できることを見出した。そして、割れ等が入らないで表面硬度が増し安定した強度を確保できるときの屈曲点fの屈曲度を測定したところ、屈曲点fの屈曲度が±0〜30度の範囲内、即ち、年輪線RLの傾き角度θ=±0〜30度が好ましいことが確認された。
本発明者らの実測によれば、傾き角度θ>30度となる高圧縮とすると、表層部Fと内層部Iの境界にストレスの集中、年輪線RLの座屈変形により割れ(クラック、亀裂)が入りやすくなるが、屈曲点fの屈曲度が±0〜30度の範囲内、つまり、年輪線RLの傾き角度θ=±0〜30度とすることで、割れ等が入らないで表面が傷付き難くなり、安定した強度が得られ、高い製品品質を確保できる。
なお、上述したような屈曲度の大小、屈曲度の特定については、理想的には、節部Kの無い木材に関しては、木口面に表れる全ての年輪線RLに対して該当することになるが、自然物を相手にするものであり、また、節部Kのある木材では節部Kの周囲では年輪線RLの乱れが生じることから、実用的には、木口面に表れる全ての年輪線RLに対して厳格に上記の屈曲度の大小、特定の屈曲角度の条件を満たしていることを要求するものではなく、木口面にはそのような条件を満たしていない年輪線RLが数割存在しても実質的に問題がない。
ここで、図1乃至図5等で示すように、このような本実施の形態の塑性加工木材PWは、その木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材の厚み方向において順に高密度塑性加工領域である表層部Fと、低密度塑性加工領域である内層部Iと、中密度塑性加工領域である裏層部Rが連続して形成されている構造である。
そして、それら圧縮率の相違による明らかな密度差により、表層部F及び裏層部Rが濃色領域であるのに対し、それらの間の内層部Iが薄色領域である3層の区別が見られるが、木材の厚み方向の密度分布については、表層部F、内層部I、裏層部Rの各層で密度が均一ではなく、表層部Fの表面側及び裏層部Rの裏面側から内側に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化している。本発明者らの実験研究によれば、例えば、25mm厚の塑性加工木材PWでは、表層部Fの表面から10〜18mm程度の深さまで徐々に密度の低下が見られ、それ以降の深さでは、裏層部Rの裏面に近づくにつれ徐々に密度が高くなることを確認している。なお、杉材等では年輪線の間を構成している早材部と年輪線を構成している晩材部とが存在するところ、それら早材部と晩材部で密度差が存在するため、表層部Fの表面側及び裏層部Rの裏面側から内側に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化しているも、厳密にはその間の密度の変化は必ずしも直線的に密度の高い値から低い値に下降するのではなく、上下動する。
したがって、このように表層部Fの表面側及び裏層部Rの裏面側から内部に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化させた塑性加工では、各層の境界で膨張収縮率の差が大きく相違するものでないので、そこに周囲環境条件の変化による膨張収縮率の相違による大きな内部の応力が発生することはなく、周囲環境条件の変化によっても節部Kの割れ(クラック、亀裂)は生じ難く、また、全体の歪み等も生じ難い。
ここで、このような構成の本実施の形態の塑性加工木材PWを製造する方法について、その一例を、主に、図6乃至図9を参照して説明する。
まず、図1乃至図5で示したような本実施の形態の塑性加工木材PW1,PW2,PW3,PW4の原材料となる加工前木材NW1,NW2,NW3,NW4が、前以って所定の寸法に製材される。この加工前木材NW1,NW2,NW3,NW4の厚み、幅、長さは、それを圧密加工してなる塑性加工木材PW1,PW2,PW3,PW4の用途、目的等によって相違するが、通常、断面正方形または長方形の角材として製材されたものが使用される。なお、図1、図4及び図5で示した塑性加工木材PW1,PW3,PW4は、板目材として製材された加工前木材NW1,NW3,NW4の塑性加工の例であり、図2及び図3で示した塑性加工木材PW2は、追柾材として製材された加工前木材NW2の塑性加工の例である。
ここで、加熱圧縮による割れを防止するために、加工前木材NWとしては、木口面と木裏側板目面(樹心側板目面)または追柾面とが直角に交じわる境界線Bと木口面の年輪線RLとがなす鋭角側の交差角度α(年輪角α)が60度以下の範囲内である板目材または追柾材を用いるのが好ましい(図6及び図7参照)。境界線Bと木口面の年輪線RLとがなす鋭角側の交差角度αが60度以下であれば、加熱圧縮により年輪の座屈変形による早材部の割れが生じ難い。特に、節部Kが存在し、節部Kの周囲で年輪線RLの乱れがあっても、それ以外の部分の年輪角αが60度以下であれば、節部Kやその周囲で割れ等を生じることのない加熱圧縮が可能である。
なお、この加工前木材NWについて、辺材(白太・白身)または心材(赤身)を問うものではないが、一般的にスギ等の針葉樹においてはヤ二の量が多いところ、心材に比べ辺材の部分では加熱圧縮によるヤ二の表出量が少ないことから、辺材の占有量が多いほど好適に用いることができる。また、辺材は心材に比べ明るい色彩であることから、圧密したときの濃色変化が心材よりも抑制され、良好な外観が保持される。
加工前木材NWは、間伐材、風害・水害・雪害・森林火災・凍害・虫害等の自然災害によって倒れたり芯割れを起こしたりして丸太の状態では使えなくなった傷害木材、端材等を用いてもよい。これによって、低コスト化を図ることができ、また、環境美化にも貢献することができる。
所定厚みの木材に製材された加工前木材NWは、図8及び図9に示す塑性加工木材装置100を用いて所定の圧密加工を行う前に、繊維飽和点以下の含水率となるように乾燥される。繊維飽和点以下の含水率、好ましくは、気乾状態以下の含水率となるように一旦乾燥させることで木材の内部側で強度を持たせ、また、木材の表面側で後の加熱圧縮より十分な化学変化を起こさせることができる。なお、木材の含水率とは、水分を含まない木材重量(全乾重量,ドライベース)に対する水分重量の割合であり、例えば、高周波含水率計等の測定器を用いて測定が可能である。一般的に、その木材の表面側から水分が蒸発することから、木材の含水率は、その表面に近くなるほど低くなるが、ここでの含水率は木材全体の含水率として測定される値を示す。
このときの含水率が低いほど木材の表裏面側で圧縮を集中させて圧縮率を高めることが可能であるが、木材の含水率を必要以上に低くし過ぎると、木材の収縮により強度が損なわれ乾燥過程で割れ等が生じる。また、木材に節部Kが存在する場合には、節部K及びその周辺の水分の吸放湿性特性が高く、水分が蒸発しやすいことで、乾燥過程で節部K及びその周辺に割れ、亀裂等が発生しやすくなる。
そこで、本発明者らの実験研究によれば、スギ等の針葉樹であれば、加工前木材NWを全体の含水率が5%〜15%の範囲内となるように乾燥させて乾燥木材DWとするのが好ましい。より好ましくは、含水率が8%〜10%の範囲内である。
木材全体の含水率として測定される含水率が、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下であれば、木材の内部側の含水率が極めて低い状態となり木材の内部側が高い繊維強度を持って圧縮され難い状態となる。これより、後に水分付加される木材の表裏面側に後の加熱圧縮による圧縮が集中することになり、木材の内部側に圧縮ストレスが掛かり難くなる。よって、節部Kが存在する場合でも、後の加熱圧縮で木材の内部に圧縮ストレスが掛かり難いことで、節部Kに無理な圧縮力が加えられないから、節部Kの繊維の座屈、破壊等が生じ難い。また、このように木材内部の含水率を極めて低い状態としても、節部Kが存在すると、その節部Kの周囲では節部Kの高い吸湿特性によって後の加熱圧縮時に組織が適度に柔らかくなるから、節部Kが外力を受けたときでも節部Kの動きに追従して組織を変形させることができ、節部Kやその周辺に大きな応力、ストレスが掛かることがない。そして、木材全体の含水率として測定される含水率が、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上であれば、木材内部で圧縮され難い強度を確保でき、節部Kが存在する場合でも、節抜けが生じ難く、また、その後の寸法変化も生じにくい状態となる。
加工前木材NWを所望の含水率にする乾燥は、公知の乾燥装置、例えば、公知の高温蒸気を熱源とし、冷凍機等を内蔵する人工乾燥機D(図6(b)や図7(b)参照)等により所定条件に乾燥することができる。この際、加工前木材NWの全体含水率が予め測定され、このときの含水率や加工前木材NWの樹種、その厚み等をパラメータとし、乾燥後に所定の含水率となるように、人工乾燥機D等の乾燥装置における乾燥条件、即ち、所定の温度、湿度、乾燥時間(スギ材の場合には、例えば、乾燥温度が約40〜100℃、乾湿球温度差が約1〜30℃、乾燥期間が3〜10日程度)等が設定される。なお、通常、乾燥期間中において乾燥温度は徐々に上昇させ、湿度は徐々に下降させるように設定される。
なお、加工前木材NWを所定の含水率に乾燥させる手段は、人工的な乾燥に限定されることなく、自然乾燥との併用であってもよい。また、上記では原木、丸太から切り出した木材を所定の寸法に製材してから乾燥させる説明としたが、本発明を実施する場合には、原木、丸太から切り出した木材を所定の含水率まで乾燥させてから所定の寸法に製材してもよい。
続いて、本実施の形態においては、木材の厚み方向の表裏側を加熱圧縮し易くするために、加工前木材NWを所定の含水率となるように乾燥させることで形成された乾燥木材DWの表面側に対して水分付加、即ち、加湿を行う。
例えば、図6(c)や図7(c)に示すように、水Wが張られた水槽5内の水Wの中に乾燥木材DW全体を浸漬することにより、乾燥木材DWの表面側に対して水分付加を行うことができる。なお、乾燥木材DWを浸漬するための水槽5内の水Wの中に乾燥木材DWを浸漬するに際しては、枠体や金網状の容器等に入れ、乾燥木材DWが浮力で浮き上がらないようにするため、乾燥木材DWの上面側に、ストッパー、蓋等が設けられる。
このときの水分付加は、例えば、浸漬時間を30秒〜60秒程度とし、表面側から内部に向かって水分が浸透しても上記含水率を調整した乾燥木材DWと比して全体の含水率が3%以下の上昇に抑えられる程度で行われる。即ち、一般的に、水分の浸透は、木材の板目方向や柾目方向からに比して、導管の通路口がある木材の木口面側からの浸透が高いところ、ここでの水分付加は、木材の目方向に関係なく木材の表面全体が水分で濡れて加湿される程度であり、木材内部に浸透するとしてもその深さは1mm以内であり、木材全体の水中への浸漬によって加熱圧縮される面(木材の厚み方向の表裏面)以外に水分が付加されていても、それが1mm以内の深さであれば所定の圧縮率とする圧縮に実質的に問題がない。
なお、本発明を実施する場合には、後の加熱圧縮で木材内部の圧縮変形を抑えて木材の表裏側に圧縮を集中させることができればよいから、乾燥木材DWの全表面に水分を付加させなくても、加熱圧縮される面のみを選択的に付加してもよい。即ち、乾燥木材DWの少なくとも加熱圧縮される面である木材の厚み方向の表裏面に水分を付加できればよい。乾燥木材の表面側に水分を付加する手段も、水中への木材の浸漬に限らず、特定の面に水をスプレー等で噴霧、吹き付けをしても良いし、刷毛等で水を塗布しても良い。
そして、所定の含水率とした乾燥木材DWであれば、それを水中に短時間浸漬させるだけで、乾燥木材の表面側に水分が直ぐに付加され、特に、全体を水中に浸漬させる場合であっても、短時間の浸漬では、木材の目方向(木口面または板目面または柾目面)で浸透率の差も殆ど見られず、表面側の水分付加による材強度の低下により、後の加熱圧縮で表面側が加熱圧縮され易くなるという効果が得られる。
次に、このようにして乾燥木材DWの表面側に水分が付加されることで形成された表面含水木材WWに対し、加熱圧縮及び圧縮固定化による圧密加工を行う。
ここで、図8及び図9に示すように、表面含水木材WWに対して圧密加工を行う塑性加工木材製造装置100は、主として、上プレス盤10Aと下プレス盤10Bとの2分割された構造体によって内部空間ISを形成するプレス盤10と、下プレス盤10Bの周縁部10bに対向する上プレス盤10Aの周縁部10aに配設され、上プレス盤10Aの所定の上下動の範囲で内部空間ISを密閉状態とするシール部材11と、上プレス盤10Aの上面側から内部空間IS内に連通され、内部空間IS内に蒸気を供給するための配管口12aを有する配管12と、その上流側のバルブV4と、下プレス盤10Bの側面側から内部空間IS内に連通され、内部空間IS内から水蒸気を排出するための配管口13aを有する配管13と、配管13内の蒸気圧を検出する圧力計P2と、その下流側のバルブV5と、バルブV5に接続されたドレン配管14等から構成されている。
プレス盤10の上プレス盤10A及び下プレス盤10B内には、それらを高温の水蒸気を通すことによって所望の温度に昇温するための配管路15,16が形成されており、これら配管路15,16には蒸気供給側の配管ST1から分岐された配管ST2,ST3、蒸気排出側の配管ET1,ET2がそれぞれ接続されている。そして、蒸気供給側の配管ST1,ST2,ST3の途中にはバルブV1,V2,V3、配管ST1内の蒸気圧を検出する圧力計P1が配設されており、蒸気排出側の配管ET1,ET2は、バルブV6を介してドレン配管14に接続されている。
更に、プレス盤10には、上プレス盤10A及び下プレス盤10B内に形成された配管路15,16に水蒸気に換えて低温の冷却水を通すことによって所望の温度に冷却する冷却水供給側の配管ST11から分岐された配管ST12,ST13が、上記配管ST2,ST3にそれぞれ接続されている。また、冷却水供給側の配管ST11,ST12,ST13の途中にはバルブV11,V12,V13が配設されている。
なお、配管ST1に水蒸気を供給するボイラ装置、配管ST11に冷却水を供給する冷却水供給装置、プレス盤10の固定側の下プレス盤10Bに対して上プレス盤10Aを上昇/下降させ加圧するための油圧機構を含むプレス昇降装置は省略されている。
本実施の形態では、プレス盤10の上プレス盤10A及び下プレス盤10Bの加熱に高温の水蒸気を導入しているが、本発明を実施する場合、プレス盤10の加熱媒体は高温の水蒸気に限定されず、油等を用いてもよいし、木材を高周波加熱、マイクロ波加熱、加熱ヒータ等の加熱手段で加熱することも可能である。特に、木材に対する高周波加熱は、マイクロ波による誘電過熱よりも、マイクロ波よりも若干周波数の低い高周波で、木材の中心から加熱する方法が好適である。
プレス盤10においては、木材の厚み方向の表裏面全体をプレス可能な平面サイズの平面金型が使用され、その材質は特に問われるものでないが、木材が鉄イオン汚染により黒色化しないように、例えば、ステンレス、アルミニウム等の鋼材を使用したり、表面含水木材WWとの接触表面にメッキ加工を施したりする。特に、ステンレス鋼、アルミニウム鋼等からなるプレス盤10や、メッキ処理が施されたプレス盤10によれば、表裏面に節部Kが存在する表面含水木材WWに対しプレス盤10で加熱圧縮する場合であっても、節部Kから溶出したヤニ等の樹脂分がプレス盤10に付着することによる木材への変色汚染を防止でき、また、節部Kに対してプレス盤10に傷や凹み等が生じ難い強度を有する。 更に、内部空間ISを密閉状態とするためのシール部材11も、その材質は特に問われるものでないが、通常、耐熱性や耐水性に優れたシリコンゴム、シリコン樹脂等が使用される。
このように構成された塑性加工木材製造装置100を用いて表面含水木材WWを圧密化するにあたっては、まず、図9(a)に示すように、プレス盤10を構成する固定側の下プレス盤10Bに対して、可動側の上プレス盤10Bを上昇させておき、固定側の下プレス盤10Bに表面含水木材WWを載置する。
ここで、本実施の形態において、上プレス盤10Aと下プレス盤10Bとの2分割されたプレス盤10によってプレス圧縮される方向は、表面含水木材WWの木目の長さ方向に対して垂直方向の面(木材の厚み方向の表裏面)に対し直角方向に圧縮力が加えられる。
例えば、図6(d)に示すように、表面含水木材WWが板目材の場合には、その木目の長さ方向に対して垂直方向の板目面のうち木裏側(年輪の内側)をプレス盤10の下プレス盤10Bに載置する。即ち、板目面の木裏側を下プレス盤10Bに対向させて、板目面の木表側を上プレス盤10Aに対向させて配置し、表面含水木材WWの木目の長さ方向に対して垂直な板目面側がプレス盤10にてプレス圧縮される面となる。
図7(d)に示すように、表面含水木材WWが追柾材の場合には、その木目の長さ方向に対して垂直方向の追柾面をプレス盤10の下プレス盤10Bに載置し、表面含水木材WWの木目の長さ方向に対して垂直な追柾面側がプレス盤10にてプレス圧縮される面となる。
加熱圧縮処理を行うにあたり、このように表面含水木材WWの木目の長さ方向に対して垂直な面側をプレス盤10の上プレス盤10A及び下プレス盤10Bに対向させ、固定側の下プレス盤10Bに載置した表裏層含水木材WWに対し、図9(b)に示すように、まず、上プレス盤10Aを所定圧力(例えば、0.05〜0.3〔MPa〕)にて下降させて表面含水木材WWの上面、即ち、木目の長さ方向に対して垂直方向の上面側に所定時間(例えば、10秒〜120秒)当接させる。このとき、上プレス盤10Aの配管路15及び下プレス盤10Bの配管路16に所定温度(例えば、110〜210〔℃〕、昇温処理時間10〜25[分])の水蒸気を通して上プレス盤10A及び下プレス盤10Bは所定温度(例えば、110〜210〔℃〕)に加熱されている。
そして、固定側の下プレス盤10Bに対して上プレス盤10Aの圧縮圧力が所定圧力(例えば、2〜5〔MPa〕、20〜50kg/cm2)に設定され上プレス盤10Aを下降させていき(例えば、処理時間0.5〜3〔分〕、圧縮スピード15〜100〔mm/分〕)、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bにて表面含水木材WWを加熱圧縮していく。上プレス盤10Aが下降し、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bにより表面含水木材WWが加熱圧縮されて、上プレス盤10Aの周縁部10aが下プレス盤10Bの周縁部10bに当接したとき、図9(c)に示すように、上プレス盤10Aの周縁部10aに配設されたシール部材11によって、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bにて形成される内部空間ISが密閉状態となる。
このとき、表面含水木材WWの内部が低含水率で高強度状態とされているのに対し、高温状態とされた上プレス盤10A及び下プレス盤10Bが当接される表面含水木材WWの表裏面(上面及び下面)には水分が付加されて表裏面が濡れていることで、その表裏面は圧縮されやすく、また、木材の表裏面に上プレス盤10A及び下プレス盤10Bが当接されているために木材の表裏面側の余剰水分が水蒸気化されても表裏面側から逃げることなく内側に浸透していき、その水分が浸透した範囲で圧縮率が高まることになる。よって、内層側に掛かるストレスを少なくできる。このため、内側に節部Kの組織が存在してもその節部Kに掛かるストレスを少なくできる。そして、このときに圧縮率が高められた領域が、図1乃至図5等で示したように、圧密加工による密度の高まりによって表層部F及び裏層部Rの濃色領域とされる。つまり、圧密加工により表層部Fと、表層部Fとは反対側の裏層部Rと、それらの間の内層部Iとの3層構造が形成された塑性加工木材PWとなる。
ここで、木材の含水率、プレス盤10の圧力、加熱温度、加熱時間、圧縮スピード等の調節によって、可動側の上プレス盤10Aに対向し水分付加された上層側で45%〜65%の範囲内の圧縮率とする高密度濃色領域となる表層部F、固定側の下プレス盤10Bに対向する下層側で上層側(表層部F)より低い圧縮率の15%〜40%の範囲内の圧縮率とする中密度濃色領域となる裏層部R、上層側及び下層側よりも低い圧縮率の10%〜30%の範囲内の圧縮率とする低密度淡色領域となる内層部Iを形成できるように、木材の樹種や乾燥木材の含水率等をパラメータとして予め実験等によって最適値が設定される。
特に、乾燥によって表面含水木材WWの内側が所定の低含水率で高強度状態とされ、また、表面含水木材WWの表面側に水分が付加されていることで、所定温度に加熱したプレス盤10について、下プレス盤10Bを固定し、上プレス盤10Aを可動させて表面含水木材WWの上面に所定の圧力で当接し所定の圧縮スピードで下降させると、木材内層側の高い繊維強度といった力学的特性から、また、表面側の水分及び高熱による木材成分の化学特性変化による強度低下(ヘミセルロースやリグニン等の非晶成分等の加水分解、軟化点の低下)から、上面側が最も圧縮されやすく、次いで下面側が圧縮されやすくなっている一方で、それらの内側では圧縮ストレスが掛かり難く上層側及び下層側よりも低い圧縮率となる。
なお、本実施の形態において、プレス盤10の上プレス盤10A及び下プレス盤10Bによって形成される内部空間ISがシール部材11を介して密閉状態となったときにおける内部空間ISの上下方向の寸法間隔は、プレス盤10によって表面含水木材WWが厚みに対して所定圧縮率の塑性加工木材PWとなるときの厚み方向の仕上がり寸法に設定されている。このため、表面含水木材WWの厚み全体の圧縮率、即ち、表面含水木材WWの圧縮による板厚の変化(圧縮量)は、上プレス盤10Aの周縁部10aが下プレス盤10Bの周縁部10bに当接することで決まることとなる。
例えば、製材された加工前木材NWの全体厚みが30mmである場合、その30mmの全体厚みに対して20%の圧縮率とする圧縮であると塑性加工木材PWの全体厚みが24mm、30%の圧縮率で圧縮すると塑性加工木材PWの全体厚みが21mm、圧縮率が40%で圧縮すると塑性加工木材PWの全体厚みが18mmとなる。製材された加工前木材NWの全体厚みが40mmである場合、その40mmの全体厚みに対して20%の圧縮率とする圧縮であると塑性加工木材PWの全体厚みが32mm、30%の圧縮率で圧縮すると塑性加工木材PWの全体厚みが28mm、圧縮率が40%で圧縮すると塑性加工木材PWの全体厚みが24mmとなる。製材された加工前木材NWの全体厚みが50mmである場合、その50mmの全体厚みに対し20%の圧縮率とする圧縮であると塑性加工木材PWの全体厚みが40mm、30%の圧縮率で圧縮すると塑性加工木材PWの全体厚みが35mm、圧縮率が40%で圧縮すると塑性加工木材PWの全体厚みが30mmとなる。
なお、上プレス盤10Aの周縁部10aや下プレス盤10Bの周縁部10bを、例えば、厚さを規制するための治具、型枠、ゲージ等で構成すると、塑性加工木材PWの所望とする仕上がり厚みに応じて上プレス盤10Aの周縁部10aや下プレス盤10Bの周縁部10bの高さが調整可能とされる。更に、このとき表面含水木材WWの側面側で、例えば、横方向(水平方向)への延びを規制するための図示しない規制具(スペーサ)を配置することも可能である。規制具によって表面含水木材WWが横方向(水平方向)に延びる変化、即ち、圧縮方向に対して直角方向の延び変化を規制しておけば、特定の寸法、比重に固定化しやすくなり、製品間のばらつきを防止でき高い品質を確保できる。このような規制をした場合には、木材の幅方向の端部でその密度が高まることもある。また、逆に、規制をしない場合には、木材の幅方向の端部が中央側よりも密度が低くなることもある。木材の幅方向の密度差によっては、圧密加工後に木材の幅方向の端部側の表面を切削加工することも可能である。
次に、図9(d)に示す内部空間ISの密閉状態で、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bの圧縮圧力が維持され、かつ、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bが所定温度(例えば、110〜210〔℃〕)のまま、木材の加熱圧縮処理の定着、所謂、木材の固定化処理を行う。
例えば、バルブV4に接続された配管12、配管口12a(図8)を介して、密閉状態とされた内部空間ISに所定の蒸気圧を供給し、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bの圧縮圧力及び加熱温度を加熱圧縮の際の圧力及び加熱温度と同じ所定圧力及び温度に保持したまま、密閉状態の内部空間ISが所定の温度及び蒸気圧で所定時間(例えば、20分〜90分)保持される。内部空間ISに所定温度(例えば、110〜210〔℃〕)の高温水蒸気を導入し、密閉状態の内部空間ISを所定の温度及び蒸気圧とすることにより、高温高圧の蒸気の作用によって密閉状態の内部空間IS内に配置されている加熱圧縮された木材全体に対し十分な化学変化を生じさせ性状を一様化させる。これにより、この後の冷却圧縮を解除したときに戻りのない塑性加工木材PWを形成できる。
なお、このとき表面含水木材WWの周囲面とその内部とでは高温高圧の蒸気圧が出入り自在となっているが、加熱圧縮された木材の含水率によっては、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bで密閉状態とされている内部空間IS内が所定の蒸気圧となるように調節してもよい。例えば、表裏含水木材Wの表裏側の含水率に基づく内部空間IS内の余分な水分が除去され、内部空間IS内が所定の蒸気圧となるように調節される。この際、内部空間ISの密閉状態で加熱圧縮された木材の固定化処理が行われているときに、蒸気圧制御処理として圧力計P2で内部空間ISの蒸気圧が検出され、バルブV5が適宜、開閉される。これにより、配管口13a、配管13を通って内部空間ISからドレン配管14側に高温高圧の水蒸気を排出できる。また、必要に応じて、密閉状態とされている内部空間ISに所定の蒸気圧を適宜供給することもできる。
そして、図9(d)に示すように、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bによる加熱圧縮から冷却圧縮へと移行する直前に、蒸気圧制御処理としてバルブV5が開状態とされることで配管口13a、配管13を通って圧縮空間ISからドレン配管14側に高温高圧の水蒸気が排出される。これにより、木材の加熱圧縮処理、所謂、木材の固定化がより促進されることとなる。この際、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bを特定温度に維持するための水蒸気も一旦、供給停止される。
最後に、図9(e)に示すように、上プレス盤10Aの配管路15及び下プレス盤10Bの配管路16に常温の冷却水を通すことによって、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bを常温前後まで冷却し、所定時間(例えば、20〜90〔分〕)保持される。なお、このときの固定側の下プレス盤10Bに対する上プレス盤10Aの圧縮圧力は、加熱圧縮の際の圧力と同じ所定圧力(例えば、2〜5〔MPa〕)に保持したまま、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bを冷却する。
その後、図9(f)に示すように、固定側の下プレス盤10Bに対して上プレス盤10Aを上昇させ、内部空間ISから仕上がり品である塑性加工木材PWを取出して一連の処理工程が終了する。
この後、必要に応じて、平面性を確保するために、表層部Fの表面の片面のみを切削加工してもよいし、表層部F及び裏層部Rの両面(表裏面)や側面を切削加工してもよい。 また、必要に応じて、水分や汚れ対策として樹脂等による表面コーティグが施されることもある。
以上説明してきた製造方法によって、木材NWの木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により木材NWが圧密化されてなる塑性加工木材PWであって、加熱圧縮による圧縮率が高い高密度濃色領域である表層部Fと、表層部Fとは反対面側に形成され、加熱圧縮による圧縮率が表層部Fよりも低い中密度濃色領域である裏層部Rと、表層部Fと裏層部Rの間に形成され、加熱圧縮による圧縮率が表層部F及び裏層部Rよりも低く薄色の色調を呈する低密度薄色領域である内層部Iとからなり、密度分布が表層部F及び裏層部Rの表面から木材内部に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化している塑性加工木材PWを製造することが可能である。
このように、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bによる面接触で加熱圧縮し、密閉状態の内部空間ISに保持された木材の圧密化の固定では、熱効率よく圧縮変形して圧縮後の戻りも少ないから、安定して高品質の製品を提供できる。
しかし、本発明を実施する場合には、上述した製造方法に限定されることなく、例えば、圧縮ローラや圧延ロールを用いた製造であってもよい。
以上説明してきたように、上記実施の形態の塑性加工木材PWは、木材NWの木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により木材NWが塑性加工されてなる塑性加工木材PWであって、加熱圧縮された表層部F及びその反対側の裏層部Rが、表層部F及び裏層部Rの間に介在する内層部Iよりも高い圧縮率によって、表層部Fと裏層部Rと内層部Iの3層からなる表層圧縮材には、木材の木口面に表れる表層部Fと内層部Iの境界及び内層部Iと裏層部Rの境界に形成された年輪線RLの屈曲点f,fとを具備するものである。
また、上記実施の形態の塑性加工木材PWは、木材NWの木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により木材NWが塑性加工されてなる塑性加工木材PWであって、加熱圧縮による圧縮率が最も高い高密度濃色領域である表層部Fと、表層部Fとは反対面側に形成され、加熱圧縮による圧縮率が表層部Fよりも低い中密度濃色領域である裏層部Rと、表層部Fと裏層部Rの間に介在し、加熱圧縮による圧縮率が表層部F及び裏層部Rよりも低くて表層部F及び裏層部Rよりも薄色の色調を呈する低密度薄色領域である内層部Iとを具備するものである。
このような上記実施の形態の塑性加工木材PWは、木材NWの木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮で、表面側からその反対面側の裏面側までの厚み方向において、その表層側及び裏層側で圧縮率を高くし、その間の内部を低い圧縮率とする塑性加工であるから、表層側及び裏層側が圧縮され易く木材内部が圧縮し難い状態とされ、木材内部に圧縮によるストレスが掛かり難いようにされたものである。更に、表層部Fが最も高い圧縮率の高密度とされ、表層部Fとは反対側の裏層部Rが表層部Fよりも低い圧縮率であり、表層部Fと裏層部Rで圧縮率の差があるから、木材の厚み方向に対して加えた加熱圧縮力に対する木材内部の応力の集中が緩和されたものである。
こうして上記実施の形態の塑性加工木材PWは、木材内部における圧縮ストレスを少なくしたものであるから、節部Kが存在する場合であっても、その節部Kの組織全体に無理な圧縮力が加えられず、特に、木材内部で節部Kの繊維に過剰なストレスが掛からないようにしたものである。そして、このように木材内部を圧縮し難い状態とされたものでも、加熱圧縮処理時に節部K及びその周囲の高い吸放湿特性によって節部Kの周囲は木材組織の繊維が軟化して変形しやすく、加熱圧縮力による節部Kの動きは規制されない。
よって、上記実施の形態の塑性加工木材PWによれば、節部Kが存在する場合であっても、木材内部で節部Kやその周囲の繊維に過剰なストレスが掛からず、加熱圧縮力による節部Kの応力の発生も少ないことで、節部Kやその周囲の繊維の傾き、座屈、潰れ、破壊等が生じ難く、木材の割れ(クラック、亀裂)が生じ難いものである。
特に、表層部Fは加熱圧縮により元の木材NWの気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率とされ、裏層部Rは、元の木材NWの気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の圧縮率とされ、内層部Iは、加熱圧縮により元の木材NWの気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内の圧縮率とされることで、板目材や追柾材等の木取り、木目の相違を問わず、また、節部Kの占有率が10%〜20%と高くても、割れ(クラック、亀裂)等がなく、例えば、床材等として使用しても傷跡や凹みが付き難い実用的に十分な硬度や強度を有し木材特性が安定した塑性加工木材PWとなる。
また、上記実施の形態の塑性加工木材PWによれば、表層部Fを最も高い圧縮率の高密度塑性加工領域として元の木材NWの傷付き易さを解消でき、更に、内層部Iよりも高い圧縮率の表層部F及び裏層部Rで内層部Iを平行的に挟んだ3層構造により、機械的に安定した強度となるから、元の木材NWよりも機械的強度を強くできる。そして、内層部Iよりも高い圧縮率の表層部F及び裏層部Rで内層部Iを挟んでいることで、表裏で膨張収縮率のバランスがよい。特に、膨張収縮率の大きい木表側を表層部Fとしたとき、そこを高密度の塑性加工とする一方で、膨張収縮率の小さい木裏側の裏層部Rを表層部Fよりも低い圧縮率とする塑性加工とするから、元の木材NWの表裏の膨張収縮率の差が縮小、バランスされる。更に、節部K及びその周囲の高い吸放湿特性により周囲環境条件の変化でそこに収縮膨張力が生じても、内層部Iは圧縮率の低い低密度塑性加工領域であるから、そこが緩衝作用を持つ。よって、周囲環境条件が変化しても内部の応力の発生が少ないものとなる。
更に、上記実施の形態の塑性加工木材PWは、表層部F側からその反対面側の裏層部R側までの厚み方向の密度分布が、表層部Fの表面側及び裏層部Rの裏面側から内側に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化していることから、木材の厚み方向で密度差の急激な変化が生じないことで、収縮膨張力の相違による応力の集中も生じ難いものである。
したがって、上記実施の形態の塑性加工木材PWは、節部Kが存在する場合であっても、周囲環境条件の変化によって節部Kに掛かるストレスが少なく、節部Kやその周囲での割れ、木材の割れ(クラック、亀裂)を生じさせない対応であり、また、全体の歪み等の発生も生じ難く、寸法形状安定性が高いものである。
特に、表層部Fの厚みに対し、内層部Iの厚みが2〜5倍の範囲内であり、裏層部Rの厚みが0.5〜1倍の範囲内であると、木表側板目面または追柾面での測定で、例えば、直径1cm以上の大きな節部Kが厚み方向に貫通して存在する場合でも、また、節部Kの占有率が10%〜20%のものでも、節部Kに掛かる圧縮ストレスが少なく、節部Kの繊維の座屈、押し潰れ、破壊等が生じ難いものである。節部Kが厚み方向に貫通して存在する場合でも、圧縮による節部K及びその周囲の顕著な濃色化、黒色化が抑えられ、表面意匠性が確保される。更に、表裏の厚み、圧縮率のバランスもよくなるから、周囲環境条件が変化したときの膨張収縮率の相違による内部の応力集中を抑えることができる。
また、表層部Fの気乾密度に対し、内層部Iの気乾密度が0.35〜0.65倍の範囲内であり、裏層部Rの気乾密度が0.6〜0.8倍の範囲内であると、全体で膨張収縮率のバランスがよく、周囲環境条件が変化したときの木材の収縮膨張による内部の応力発生を少なくできる。
よって、木材に10%〜20%の高い占有率で節部Kが存在している場合であっても、周囲環境条件が変化したときの収縮膨張率の違いによるストレスで節部Kやその周囲で割れ(亀裂、クラック)が生じることがなく、安定した品質が確保される。
また、複数の塑性加工木材PWをそれら木目の長さ方向を一致させて幅方向に横継ぎ接合して大きな寸法の木材(板材)を形成する場合にあっても、幅方向で収縮膨張率が略等しいから、周囲環境条件の変化によって接合面に負荷が掛かることはなく、大きな応力が生じ難いから、節部Kが存在する場合であっても、木材割れや歪み等が生じ難いものである。
加えて、このように節部K全体に過剰なストレスが入り難いことで、製品化後に周囲環境条件が変化した際でも、節部Kからヤニが多量に析出することもなく、ヤニの析出による商品価値の低下もない。更には、節部K全体が高圧縮されないから、節部K及びその周囲の顕著な濃色化、黒色化が抑えられ、良好な外観を保持できる。
当然、元の木材NWの全体の体積低下や全体比重が高くなることの重量増加が抑えられ、歩留まりも良好である。
更に、上記実施の形態は、木材NWの木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により木材NWが塑性加工されてなる塑性加工木材PWであって、加熱圧縮された両面側の表層部F及びその反対面側の裏層部Rが、表層部F及び裏層部Rの間に介在する内層部Iよりも高い圧縮率によって内層部Iよりも濃色の色調を呈し、木口面に表れる表層部Fと内層部Iの境界線BL上及び内層部Iと裏層部Rの境界線BL上に年輪線RLの屈曲点f,fを有し、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度よりも大きい塑性加工木材PWの発明と捉えることもできる。
このように表層部F及び裏層部Rが内層部Iよりも高い圧縮率によって濃色の色調を呈し、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度よりも大きくする塑性加工も、圧縮方向の表層側及び裏層側で圧縮率を高くし、その間の木材内部を低い圧縮率とする塑性加工であるから、表層側及び裏層側が圧縮され易く木材内部が圧縮し難い状態とされ、木材内部に圧縮によるストレスが掛かり難いようにされたものである。特に、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度よりも大きくする塑性加工であり、表層部Fと裏層部Rの圧縮率を相違させた塑性加工であるから、加熱圧縮処理時に内部の応力の集中が緩和されたものである。
このように表層部F及び裏層部Rが内層部Iよりも高い圧縮率によって濃色の色調を呈し、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度よりも大きくする塑性加工も、木材内部における圧縮ストレスを少なくしたものであるから、節部Kが存在する場合であっても、その節部Kの組織全体に無理な圧縮力が加えられず、特に、木材内部で節部Kの繊維に過剰なストレスが掛かり難い。そして、このように木材内部を圧縮し難い状態とされたものでも、加熱圧縮処理時に節部K及びその周囲の高い吸放湿特性によって節部Kの周囲は木材組織の繊維が軟化し変形しやすく加熱圧縮による節部Kの動きが規制されない。
よって、節部Kが存在する場合であっても、木材内部で節部Kやその周囲の繊維に過剰なストレスが掛からず、加熱圧縮力による節部Kの応力の発生も少ないことで、節部Kやその周囲の繊維の傾き、座屈、潰れ、破壊等が生じ難く、木材の割れ(クラック、亀裂)が生じ難いものである。
また、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度よりも大きくする塑性加工は、表層部Fを最も高い圧縮率の高密度塑性加工領域としたものであり、元の木材NWの傷付き易さを解消できる。更に、内層部Iよりも高い圧縮率の表層部F及び裏層部Rで内層部Iを平行的に挟んだ3層構造により、機械的に安定した強度となるから、元の木材NWよりも機械的強度を強くできる。そして、内層部Iよりも高い圧縮率の表層部F及び裏層部Rで内層部Iを挟んでいることで、表裏で膨張収縮率のバランスがよい。特に、表層部Fと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度が裏層部Rと内層部Iの境界線BL上の年輪線RLの屈曲点fの屈曲度よりも大きくする塑性加工は、膨張収縮率の大きい木表側を表層部Fとしたとき、そこを高密度の塑性加工とする一方で、膨張収縮率の小さい木裏側の裏層部Rを表層部Fよりも低い圧縮率とする塑性加工であるから、元の木材NWの表裏の膨張収縮率の差が縮小、バランスされる。更に、節部Kの高い吸放湿特性により周囲環境条件の変化でそこに収縮膨張力が生じても、内層部Iは圧縮率の低い低密度塑性加工領域であるから、そこが緩衝作用を持つ。よって、周囲環境条件が変化したときでも内部の応力の発生が少ないものとなる。
したがって、節部Kが存在する場合であっても、周囲環境条件の変化によって節部Kに掛かるストレスが少なく、木材の割れ(クラック、亀裂)を生じさせない対応であり、また、全体の歪みの発生も少なく、寸法形状安定性が高いものである。
なお、このような本実施の形態の塑性加工木材PWは、例えば、床、デッキ、腰板、ダイニングテーブル等のテーブルの天板、学童机等に適用することができる。
また、上記実施の形態は、節があった場合でも割れのない塑性加工木材PWとして節の問題を解決するものであるが、当然、節がない木材にも適用されて製品として商品化されるものであり、図1乃至図5等で示したように、節の有無を問わずに適用されるものである。
そして、本発明を実施する場合には、塑性加工木材PWとしては、例えば、杉、松(カラマツ、ドドマツ、リュウキュウマツ等)、檜、欅、ウォールナット(胡桃)、イエローポプラ等を用いることが可能である。特に、杉材は、我が国において広く分布しており、間伐材等を容易に大量に入手することができ、環境保全に貢献できるうえ、加工も施しやすい。また、圧密化によって高硬度を獲得でき、木材の厚み方向に加熱圧縮した際に、木材は幅方向の延びが少ないから、幅方向の密度分布のばらつきが生じ難く比重等の木材特性、品質の安定化が可能である。
上記実施の形態の塑性加工木材は、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により表層部を最も高い圧縮率の高密度塑性加工領域とし、前記表層部とは反対面側の裏層部を前記表層部よりも低い圧縮率の中密度塑性加工領域とし、前記表層部と前記裏層部の間の内層部を前記表層部及び前記裏層部よりも低い圧縮率で前記表層部及び前記裏層部よりも薄色の色調を呈する低密度塑性加工領域としたものである。
ここで、上記木材の木目の長さ方向(木立方向、立木方向)に対して垂直方向の加熱圧縮とは、板目取りまたは追柾取り等に木取りされた製材に対し、その年輪の繊維方向(木立方向、立木方向)に対して垂直方向にプレス等を用いて外力を加えた加熱圧縮により、木材の木口面の面積を小さくしたことを意味するものである。通常、板目材であれば、圧縮による歪量を考慮すると、木材の板目面側をプレス圧縮することにより木材の木口面の面積が小さくされるが、木材の板目面をプレス圧縮するか柾目面をプレス圧縮するかは、木材の種類等によって決定することも可能である。
なお、上記板目面とは、木材の年輪の繊維方向(木目の長さ方向)と並行にあって年輪線の接線方向に切断された材面のことである。また、上記木口面とは、木材の年輪の繊維方向に対して交差する方向に切断された材面、即ち、木材の繊維方向に対して垂直または斜めに切断された材面のことである。更に、上記柾目面とは、木材の年輪の繊維方向と並行にあって年輪線の放射方向(半径方向)に切断された材面のことである。加えて、上記追柾(流れ柾、半柾と云われることもある)とは、柾目と板目の中間的な木取りまたは木目のことである。また、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により前記木材が塑性加工されてなる塑性加工木材とは、木材の圧縮成形により圧密加工された木材であることを意味する。
上記表層部は、圧縮率が最も高い高密度塑性加工領域であり、高圧縮率により気乾比重、繊維密度が高くなり濃色化した濃色領域である。この表層部の圧縮率は、後述で定義する元の木材の密度に対する圧縮率で45%以上が好ましい。45%以上とする圧縮率であれば、木材の性質が変化して硬度が顕著に増すためである。
上記裏層部は、前記表層部に対して反対面側に形成され、圧縮率が前記表層部に次いで高い中密度塑性加工領域であり、前記表層部よりも低い圧縮率であるが内層部よりは高い圧縮率により気乾比重、繊維密度が高く濃色化した濃色領域である。
上記内層部は、前記表層部と前記裏層部の間に介在し、圧縮率が最も低い低密度塑性加工領域であり、低圧縮率のために気乾比重、繊維密度が低いことで前記表層部及び前記裏層部よりも薄色の色調を呈する薄色領域である。
これら表層部、裏層部及び内層部は、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向(加熱圧縮方向)において、即ち、木材の厚み方向において、表層部、内層部、裏層部の順に一体的に連続する構造である。表層部と内層部、また、内層部と裏層部は圧縮率の相違による明らかな密度差があることで、その密度差が色調の濃淡として表れ、内層部に比して表層部及び裏層部では濃色の色調を呈し、表層部及び裏層部に比して内層部では薄色の色調を呈している。即ち、表層部及び裏層部が内層部よりも高い圧縮率によって、相対的な比較で木口面では表層部及び裏層部が内層部よりも濃色化して表れていることを意味する。換言すると、木口面において内層部は表層部及び裏層部よりも薄色である。
なお、表層部及び裏層部は木材の木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材の厚み方向を上下方向としたとき、その上下の層のことである。そして、木目の長さ方向に対して垂直方向である木材の厚み方向において、圧縮率が最も高い高密度濃色領域を表層部とし、また、その反対面側の表層部よりも圧縮率の低い中密度濃色領域を裏層部として、圧縮率、密度、内層部との色調比較で表層部と裏層部を認識できるところ、例えば、塑性加工木材を床材等として使用する場合、通常、圧縮率の最も高い表層部を使用面、意匠面側とされる。しかし、必ずしも表層部側を使用面、意匠面側としてその使用方向までを特定するものではない。また、通常、加熱圧縮による歪み量から、例えば、板目材の場合、その木表側の板目面側が表層部側となり、木裏側の板目面側が裏層部側となる。なお、塑性加工した木材の樹種は、特に問われず、針葉樹または広葉樹の何れでもよい。例えば、杉、松(カラマツ等)、檜、欅、ウォールナット(胡桃)、イエローポプラ等が用いられる。更に、個々の塑性加工木材について、その節部の有無を問うものでもない。
上記実施の形態の塑性加工木材によれば、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向である前記木材の厚み方向の加熱圧縮によって、表層部を最も高い圧縮率の高密度塑性加工領域とし、前記表層部とは反対面側の裏層部を前記表層部よりも低い圧縮率の中密度塑性加工領域とし、前記表層部と前記裏層部の間に介在する内層部を前記表層部及び前記裏層部よりも低い圧縮率で前記表層部及び前記裏層部よりも薄い色合いとなる低密度塑性加工領域としたものである。
上記実施の形態の塑性加工木材は、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮で、表面側からその反対面側の裏面側までの厚み方向において、その表層側及び裏層側で圧縮率を高くし、その間の内部を低い圧縮率とする塑性加工であるから、表層側及び裏層側が圧縮され易く木材内部が圧縮され難い状態とされ、木材内部に圧縮によるストレスが掛かり難いようにされたものである。
上記実施の形態の塑性加工木材は、木材内部における圧縮ストレスを少なくしたものであるから、節部が存在する場合であっても、その節部の組織全体に無理な圧縮力が加えられていない。特に、木材内部で節部の繊維に過剰なストレスが掛かり難いようにされたものである。そして、このように木材内部が圧縮され難い状態とされたものであるが、加熱圧縮処理時には節部及びその周囲の高い吸放湿特性によって節部の周囲で木材組織の繊維が軟化し変形しやすく、加熱圧縮力による節部の動きが規制されていないものである。
上記実施の形態の塑性加工木材によれば、節部が存在する場合であっても、木材内部で節部やその周囲の繊維に圧縮による過剰なストレスが掛かり難く、加熱圧縮力による節部の応力の発生を少なくしたものであるから、節部やその周囲の繊維の傾き、座屈、潰れ、破壊等が生じ難く、木材の割れ(クラック、亀裂)が生じ難いものである。
また、上記実施の形態の塑性加工木材によれば、表層部を最も高い圧縮率の高密度塑性加工領域として元の木材の傷付き易さを解消でき、更に、内層部よりも高い圧縮率の表層部及び裏層部で内層部を平行的に挟んだ3層構造により、機械的に安定した強度となるから、元の木材よりも機械的強度を強くできる。そして、内層部よりも高い圧縮率の表層部及び裏層部で内層部を挟んでいることで、表裏で膨張収縮率のバランスがよい。特に、膨張収縮率の大きい木表側を表層部としたとき、そこを高密度の塑性加工とする一方で、膨張収縮率の小さい木裏側の裏層部を表層部よりも低い圧縮率の塑性加工とするから、元の木材の表裏の膨張収縮率の差がバランスされる。更に、節部及びその周囲の高い吸放湿特性により周囲環境条件の変化でそこに収縮膨張力が生じても、内層部は圧縮率の低い低密度塑性加工領域であるから、そこが緩衝作用を持つ。よって、周囲環境条件が変化したときでも内部の応力の発生が少ないものとなる。
したがって、節部が存在する場合であっても、周囲環境条件の変化で節部に掛かるストレスは少なく、木材の割れ(クラック、亀裂)を生じさせない対応である。また、全体の歪みの発生も少なく、寸法形状安定性が高いものである。
なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
F 表層部
R 裏層部
I 内層部
PW1,PW2,PW3,PW4 塑性加工木材
NW1,NW2,NW3,NW4 加工前木材
RL 年輪線
BL,BL 境界線
,f 屈曲点

Claims (5)

  1. 木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により前記木材が塑性加工されてなる塑性加工木材であって、
    前記加熱圧縮による圧縮率が最も高い高密度塑性加工領域である表層部及びその反対側で前記表層部よりも低い圧縮率の中密度塑性加工領域である裏層部が、前記表層部及び前記裏層部の間に介在する低密度塑性加工領域である内層部よりも高い圧縮率によって、前記表層部と前記裏層部と前記内層部の3層からなり、前記表層部側からその反対面側の前記裏層部側までの厚み方向の密度分布が、前記表層部の表面側及びその反対面側の前記裏層部の裏面側から内部に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化している表層圧縮材には、
    前記木材の木口面に表れる前記表層部と前記内層部の境界及び前記内層部と前記裏層部の境界に形成された年輪線の屈曲点と
    を具備することを特徴とする塑性加工木材。
  2. 前記表層部は、前記加熱圧縮により前記木材の気乾密度に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率であり、前記裏層部は、前記木材の気乾密度に対する圧縮率で15%〜40%の範囲内の圧縮率であり、前記内層部は、前記加熱圧縮により前記木材の気乾密度に対する圧縮率で10%〜30%の範囲内の圧縮率であることを特徴とする請求項1に記載の塑性加工木材。
  3. 前記表層部の気乾密度に対し、前記内層部の気乾密度が0.35〜0.65倍の範囲内であり、前記裏層部の気乾密度が0.6〜0.8倍の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塑性加工木材。
  4. 木材の木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により前記木材が塑性加工されてなる塑性加工木材であって、
    前記加熱圧縮された両面側である表層部及びその反対側の裏層部が、前記表層部及び前記裏層部の間に介在する内層部よりも高い圧縮率で、前記表層部側からその反対面側の前記裏層部側までの厚み方向の密度分布が、前記表層部の表面側及びその反対面側の前記裏層部の裏面側から内部に向かって徐々に密度の高い状態から低い状態に変化しており、木口面に表れる前記表層部と前記内層部の境界及び前記内層部と前記裏層部の境界に年輪線の屈曲点を有し、前記表層部と内層部の境界上の年輪線の屈曲点の屈曲度が前記裏層部と内層部の境界上の年輪線の屈曲点の屈曲度よりも大きいことを特徴とする塑性加工木材。
  5. 前記表層部の厚みに対し、前記内層部の厚みが2〜5倍の範囲内であり、前記裏層部の厚みが0.5〜1倍の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の塑性加工木材。
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