JP6944225B1 - 積層塑性加工木材 - Google Patents

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Abstract

【課題】木材に節があってもクラック、亀裂等の割れが生じ難く、かつ、意匠性を両立させることができ、節のある材料の有効活用を図ることができること。【解決手段】積層塑性加工木材LPWは、3枚以上の木材NWをそれらの木目の長さ方向に対して垂直方向に積層し、木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により圧密加工し、一体に接合してなる積層塑性加工木材LPWであって、加熱圧縮により高圧縮された厚みの薄い表裏層の2枚の意匠材PWD1,PWD2と、表裏の2枚の意匠材PWD1,PWD2間に介在し意匠材PWD1,PWD2より低圧縮の厚みのある1枚以上の内層材PWIとを具備する。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、檜材、杉材等の軟質な木材を複数枚積層してなる積層木材に対し木目の長さ方向に対して垂直な方向に圧縮力を加えて圧密加工し、かつ、一体に接合されてなる積層塑性加工木材であって、特に、節が存在する場合でも、クラック、亀裂等の割れを生じさせることなく機械的強度を高めることができる積層塑性加工木材に関するものである。
近年、地球温暖化の問題、即ち、温室効果ガスである二酸化炭素量の増大が懸念されているところ、木材には二酸化炭素の吸収、固定が期待できるから、建築物や家具等に木材を使うことは、森林の伐採、循環を促し、しいては地球温暖化の防止に貢献することになると云われている。例えば、学校用の学童机等の学校家具においても地域材等の木材を使用することが文部科学省等より推奨されている。特に、国産の木材や、地域材を活用すれば、輸送時に発生する二酸化炭素量の消費も少なくて済み、国内の森林保全にも繋がる。
ここで、我が国では森林の約4割が人工林であり、そのうち杉、檜等の針葉樹が半分以上を占めているとされており、杉、檜等の針葉樹は、適宜計画伐採や間伐等で比較的安定に入手しやすい木材となっている。
しかしながら、杉、檜等の針葉樹は、軟質で強度、硬度が低いことから、そのままでは建築材料、家具材料等の用途には不向きである。
一方、我が国では、外国産の木材を多く輸入し、国内産の木材の需要が大きく落ち込んだ経緯があり、山村の人口減少、林業の担い手の減少等から、森林の手入れが十分になされていない現状がある。森林の手入れとして、例えば、適切な時期に枝打ちがなされていないと、枝が生えて節のある樹木となる。特に、杉、檜等の針葉樹は、従来の合板等に使用されてきた広葉樹と比べ、節が多く存在する。
したがって、国産の木材や、地域材を利用するにあたり、コストからすれば、節のある材料を活用できるのが好ましい。即ち、節の少ない材料は、それを生産するのに樹木の枝打ち等の手入れがなされた樹木から得られるものであり、更に、一般的に、節の少ない木材は、柱取りした側板等の丸太の一部からしか採取できないことから、貴重で付加価値の高い材料であり、高価なものとならざるを得ない。特に、現在の手入れ不足な森林が増加している状況からすると、節の少ない材料の値段は今後更に高騰することが予測される。 これに対し、節のある材料であれば安価に調達できる。このため、節のある材料の有効利用が求められている。
しかしながら、節のある材料は、節周囲の繊維の走行がねじれたり曲がったりしていことから、節の少ない材料に比べ、加工性に難があり、強度に劣る問題がある。
ここで、特許文献1で開示するように、本発明者らは先に、杉材等の軟質な木材であってもそれを圧縮して高密度化することで強度特性を改良できる技術を確立している。
特許文献1は、1本の木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に加熱圧縮してその全体厚みの密度分布を所定に圧縮することで、節がある場合でも割れ(クラック、亀裂)のない木材とする技術を開示している。
特許6450489号公報
ところが、特許文献1の圧密加工した節のある塑性加工木材の製品は、節の程度によっては、それが外面に表れることから、使用者にとっての美観の好みにならないこともあった。特に、木材面積の少ない家具においては、節の位置、濃淡、模様等がその木材製品の意匠性、美観を大きく左右することから、節の存在が購買の決め手になることもある。このため、節のある木材を使用していてもそれが目立たない製品についても要望があった。
また、特許文献1の技術においては、1本の厚みのある木材を圧密加工して床材等に製品化するものであり、製材に厚みがあるから、節のある材料を使用したときに、乾燥過程で、節の割れや節抜けを生じることがあり、高い歩留まりの確保が困難であった。
そこで、本発明は、木材に節があってもクラック、亀裂等の割れが生じ難く、かつ、意匠性を両立させることができ、節のある材料の有効活用を図ることができる積層塑性加工木材の提供を課題とするものである。
請求項1の発明の積層塑性加工木材は、3枚以上の複数枚の木材をその木目の長さ方向に対して垂直方向に積層し、前記木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により圧密加工し、かつ、一体に接合してなる積層塑性加工木材であって、前記加熱圧縮により高圧縮され高密度で厚みの薄い表裏層の2枚の意匠材と、前記表裏層の2枚の意匠材間に挟まれ前記意匠材よりも低圧縮とされた低密度で厚みのある1枚以上の内層材とを具備したものである。
ここで、上記3枚以上の木材をその木目の長さ方向に対して垂直方向に積層し、前記木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により圧密加工し、かつ、一体に接合してなるとは、3枚以上の複数枚の木材を木目の長さ方向に対して垂直方向に積層してなる積層材に対して木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により、積層材を圧縮成形して圧密加工したものであることを意味し、予め木材間に接着剤等を塗布して積層した積層材を加熱圧縮して圧密加工することにより圧密加工の加熱圧縮と同時に接着剤等を硬化させて積層した木材同士を一体に接合したものであってもよいし、予め一体に積層接着した積層材を加熱圧縮して圧密加工したものであってもよいし、接着剤等を介在させることなく木材を積層してなる積層材を加熱圧縮して圧密加工した後、一体に積層接着するようにしたものであってもよい。なお、上記木目の長さ方向に対して垂直方向に積層は、木目の長さ方向に対する垂直方向の面、即ち、木口面及び木端面以外の面で積層することを意味し、積層枚数は3枚以上であればよく、奇数枚であっても偶数枚であってもよい。
また、上記木目の長さ方向(木立方向、立木方向)に対して垂直方向の加熱圧縮とは、板目取りまたは追柾取り等に木取りされた製材に対し、その年輪の繊維方向(木立方向、立木方向)に対して垂直方向にプレス等を用いて外力を加えた加熱圧縮により、木材の木口面の面積を小さくしたことを意味するものである。通常、板目材であれば、圧縮による歪量を考慮すると、木材の板目面側にプレス盤を当ててプレス圧縮することにより木材の木口面の面積が小さくされるが、木材の板目面側をプレス圧縮するか柾目面側をプレス圧縮するかは、木材の種類等によって決定することも可能である。
なお、上記板目面とは、木材の木目の長さ方向、即ち、年輪の繊維方向と並行にあって年輪線の接線方向に切断された材面のことである。また、上記木口面とは、木材の年輪の繊維方向に対して交差する方向に切断された材面、即ち、木材の木目の長さ方向に対して垂直または斜めに切断された材面のことである。更に、上記柾目面とは、木材の年輪の繊維方向と並行にあって年輪線の放射方向(半径方向)に切断された材面のことである。加えて、上記追柾(流れ柾、半柾と云われることもある)とは、柾目と板目の中間的な木取りまたは木目のことである。
上記2枚の意匠材は、積層接合している木材のうちの表裏の外層、即ち、表層及び裏層の2枚の木材であり、共に、意匠材間に介在する内層材よりも高圧縮されて緻密で厚みが薄くされたものであり、意匠材間に介在する内層材よりも木材組織の細胞が多く圧縮変形し、即ち、細胞の圧縮変形量が大きく、高密度化されたものである。
上記1枚以上の内層材は、積層接合している木材のうち、表層及び裏層である2枚の意匠材間に介在し、前記意匠材よりも低圧縮とされ細胞の圧縮変形量が少なく低密度で厚みが厚いものである。上記内層材は、1枚であってもよいし、2枚以上の複数枚であってもよく、好ましくは、1枚〜3枚であり、その枚数は、積層塑性加工木材の用途、目的、木材の種類等によって決定される。
そして、上記意匠材及び内層材は、一方の意匠材、1枚以上の内層材、及び他方の意匠材の順に、木目の長さ方向に対して垂直方向に積層接合されたものである。互いの木材の境界は、質が緻密な線によって、または、木口面の年輪線の変化によって互いに区別できるものである。上記意匠材及び内層材の積層は、各木材の木目の長さ方向に対して垂直方向である厚み方向、即ち、木口面及び木端面以外の面で積層されたものであり、表裏層の意匠材については、その表裏面の使用方向までを特定するものではない。また、上記意匠材及び内層材の積層は、互いに木目の長さを一致させて積層してもよいし、木目の長さ方向に対して直交する方向に積層するものであってもよい。更に、個々の木材について、節の有無は問わず、節のない木材であっても当然に使用できる。
ここで、上記厚みは、木材の木目長さ方向に対して垂直方向の厚みを意味し、対面する木材間の比重差の大きい個所では接合面が必ずしも均一でない場合も存在するから、平均厚みでの比較とする。そして、上記積層塑性加工木材では、平滑性の確保から、通常、圧密加工後に、その表裏面が切削加工されることから、切削加工された後の厚みに相当する。
なお、木材の樹種は、特に問われず、針葉樹または広葉樹の何れでもよい。例えば、杉、檜、松(カラマツ、トドマツ、エゾマツ、アカマツ等)、サワラ、ウォールナット(胡桃)、イエローポプラ、イタリアポプラ、モミノキ、ツガ、トウヒ、イチイ、アスナロ、桐、ヒバ、カバ、イタジイ、カリン、ファルカタ、グメリナ、センダン、ユリノキ等が用いられる。特に、杉材、檜材は、我が国で広く分布し、間伐材等を容易に多量に入手できるから、環境保全に貢献できる。また、針葉樹の杉材、檜材では、木材組織の空隙率が高いから、熱伝導が低く、触れたときの温もりを強く感じられる。
請求項の発明の積層塑性加工木材の前記各意匠材は、その厚みが、前記1枚の内層材または2枚以上の各内層材の厚みに対し、0.3倍〜0.8倍、好ましくは、0.4倍〜0.6倍の範囲内であるものである。
なお、上記厚みは、対面する木材間の比重差の大きい個所では加熱圧縮が必ずしも均一でない場合も存在するから、平均厚みとする。
請求項の発明の積層塑性加工木材の前記各意匠材は、前記加熱圧縮により元の木材の気乾比重に対する圧縮率で45%〜65%、好ましくは、50%〜60%の範囲内の圧縮率であり、前記1枚の内層材または2枚以上の各内層材は、前記加熱圧縮により元の木材の気乾比重に対する圧縮率で15%〜42%、好ましくは、20〜40%の範囲内の圧縮率であるものである。
ここで、上記元の木材の気乾比重に対する圧縮率とは、元の木材の気乾比重と前記各意匠材、内層材の気乾比重とから算出したものであり、以下の式から求めたものである。
圧縮率〈%〉
=[1−[(元の木材の気乾比重)/(意匠材または内層材の気乾比重)]]
×100
なお、これら意匠材、内層材の気乾比重は、互いに接合している意匠材、内層材の個々の木材をその接合面で切り離すことで測定できる。
請求項2の発明の積層塑性加工木材の前記意匠材及び前記内層材は、互いに前記木目の長さ方向を一致させて積層されたものである。
請求項3の発明の積層塑性加工木材の前記各意匠材は、その木表側の板目面または追柾面側がプレス面とされたものである。
上記木表側の板目面または追柾面側がプレス面とは、加熱圧縮された積層塑性加工木材の表裏面に木表側の板目面または追柾面が位置していることを意味する。即ち、積層した木材の表裏となる面に木表側の板目面または追柾面が位置するように配置し、その木表側の板目面または追柾面側に加熱圧縮するプレス盤が接触して、木表側の板目面または追柾面側からプレスされたことを意味する。なお、「木表」とは、木口面から見て樹皮に近い方の板目面または追柾面という。また、木表とは反対側の年輪の中心、芯材に近い方の面を「木裏」という。
請求項4の発明の積層塑性加工木材は、その気乾比重が元の木材の気乾比重の1.2倍以上、1.7倍以下、好ましくは、1.3倍以上、1.6倍以下の範囲内であるものである。
上記記気乾比重とは、木材を大気中で乾燥した時、即ち、気乾含水率に達した時の比重で、通常、含水率15%の時の比重で表すものであり、木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値である。数値が大きいほど重く、小さいほど軽いことを表す。
請求項5の発明の積層塑性加工木材の前記意匠材と前記内層材とは、前記各意匠材の木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の年輪角度θDと、前記1枚の内層材または2枚以上の各内層材の木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面面とが交わる鋭角側の年輪角度θIとが、θD<θIであるものである。
上記木口面の年輪線とは、木口面から見て、質が緻密に形成されている線状の部分を意味し、木口面に表れる木目のことである。
ここで、木材は、自然物であり、特に、節が存在する場合には、必ずしも木口面の年輪線の流れが規則的になるものでないから、木口面に表れた全ての年輪線と木裏側の板目面または追柾面とのなす交差角度である年輪角度θD,θIがθD<θIであることまでは要求されず、木口面の複数の年輪線の年輪角度θD,θIの平均がθD<θIであればよい。
請求項6の発明の積層塑性加工木材の前記各意匠材は、その木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の年輪角度θDが0°<θD≦30°、好ましくは、0°<θI≦25°、であり、前記1枚の内層材または2枚以上の各内層材は、その木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面面とが交わる鋭角側の角度θIが5°≦θI≦80°、好ましくは、10°≦θI≦70°であるものである。
ここで、木材は、自然物であり、特に、節が存在する場合には、必ずしも木口面の年輪線の流れが規則的になるものでないから、木口面に表れた全ての年輪線と木裏側の板目面または追柾面とのなす交差角度である年輪角度θD,θIの全てが上記数値の範囲であることまでは要求されず、各木材の木口面の複数の年輪角度θD,θIの平均が上記数値範囲内であればよい。
請求項の発明の積層塑性加工木材は、その全体の厚みが15mm以上、40mm以下、好ましくは、18mm以上、35mm以下の範囲内であり、前記各意匠材の厚みが1.5mm以上、10mm以下、好ましくは、1.5mm以上、8mm以下の範囲内であり、前記1枚の内層材または2枚以上の各内層材の厚みが、6mm以上、15mm以下、好ましくは、8mm以上、13mm以下の範囲内であるものである。
なお、上記厚みも、対面する木材間の比重差の大きい個所で必ずしも均一でない場合も存在するから、平均厚みとする。
請求項の発明の積層塑性加工木材は、ブリネル硬さが15N以上、30N以下、好ましくは、18N以上、30N以下、より好ましくは、18N以上、25N以下の範囲内であるものである。
上記ブリネル硬さ(HB)は、JIS Z 2101の木材の試験方法に準拠し、積層塑性加工木材の一方の意匠材側から直径10mmの鋼球を毎分0.5mmの速度で深さ約0.32(1/π)mmまで圧入した時の押込荷重を、荷重を除いた後に残った窪みの表面積で割って求めたものである。なお、木材は自然物であり、また、早材部及び晩材部でも硬さに違いがあることから、ここでは、任意の12個所の位置を測定した平均とする。
請求項の発明の積層塑性加工木材の前記意匠材及び前記内層材のうちの対向する面の1か所以上には、節部による凸状部と前記節部による押圧で変形した凹状部による接合面を有するものである。
上記節部による凸状部と前記節部による押圧で変形した凹状部による接合面とは、木材間の接合に起伏がある接合面を意味する。即ち、加熱圧縮時に一方の木材の硬い節部がそこに重ねた他方の木材の対向箇所を押圧して変形することにより、互いに接合した木材間の接合面に節部による凸状部と節部に押された変形で形成された凹状部が対向してできる起伏が存在すること、つまり、木口面、木端面(側面)から見れば木材間の接合線に屈曲、凹凸が存在することを意味する。
請求項1の発明に係る積層塑性加工木材は、木材の木目の長さ方向に対して垂直方向に前記木材が複数枚積層されてなる積層木材を、前記木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により塑性加工し、また、一体に接合したものであり、前記加熱圧縮による圧縮量が大きくて厚みが小さい2枚の意匠材が表裏層に配設し、前記表裏層の2枚の意匠材よりも圧縮量が小さくて厚みが大きい1枚以上の内層材が前記2枚の意匠材間に配設したものである。
この請求項1の発明の積層塑性加工木材によれば、表裏の意匠面を形成する意匠材を高圧縮とする一方、意匠材間に介在する内層材は低圧縮とした塑性加工であり、元の木材よりも機械的強度を強くでき、また、表面硬度を高めることができるうえ、表裏の意匠材間に介在する内部の内層材では、意匠材よりも低圧縮であるから、また、表裏で圧縮率をバランスしていることで圧縮による歪みが入り難いから、節のある材料を用いても、その節には強い圧縮力が掛かり難いものである。特に、木材を重ねた積層木材の塑性加工であり、木材に節があり部分的に比重が異なる硬い箇所があっても、木材同士を重ねて加熱圧縮するものでは、比重の高い硬い節の箇所が、それに重ねた木材の低比重な箇所が加熱圧縮で柔らかくなり硬い節の押圧により変形することで、節の動きが拘束されないから、節に過剰な圧縮応力、内部応力が掛かり難いものである。よって、節があっても、クラック、亀裂等の割れが生じ難いものとなる。また、複数枚の木材を積層接合したものであるから、内層材や一方の意匠材に節のある材料を用いたとしても、使用面なる他方の意匠材に節のない材料を使用すれば使用面では意匠性を維持することも可能となる。
加えて、請求項1の発明の積層塑性加工木材によれば、複数枚の木材を積層接合かつ圧密加工して1枚の厚みを出すものであり、原材料の各1枚の製材の厚みは薄くてもよいから、圧密加工前の乾燥工程での乾燥時間の短縮化が可能であり、乾燥の負荷を少なくできる。よって、節がある材料を使用したときでも、乾燥による節割れ、節抜けが生じ難くでき、歩留まりの向上を可能とする。
請求項の発明に係る積層塑性加工木材によれば、前記各意匠材は、その厚みが、前記1枚の内層材または2枚以上の各内層材の厚みに対し、0.3〜0.8倍の範囲内である。圧縮加工しても意匠材の厚みが、内層材の厚みに対し、0.3〜0.8倍の範囲内であるものでは、使用面側とする意匠材に重ねた内層材に節がある場合でも、その節及び節周囲の濃色化、黒色化した模様が使用面側とする意匠材に表出しない厚みであり、また、表面硬度も高くできる。よって、表面強度、硬度と表面意匠性を両立できる。
請求項の発明に係る積層塑性加工木材によれば、前記意匠材は、前記加熱圧縮により元の木材の気乾比重に対する圧縮率で50%〜60%の範囲内の圧縮率であり、前記内層材は、前記加熱圧縮により元の木材の気乾比重に対する圧縮率で20%〜40%の範囲内の圧縮率であるから、針葉樹を使用して軽量としても高い表面硬度が得られる。よって、軽量性と高い表面硬度とを両立できる。
こうして、請求項1の発明の積層塑性加工木材によれば、木材に節があってもクラック、亀裂等の割れが生じ難く、かつ、意匠性を両立させることができ、節のある材料の有効活用を図ることができる。
請求項2の発明に係る積層塑性加工木材によれば、前記意匠材及び前記内層材は、互いに前記木目の長さ方向を一致させて積層されていることから、節のある材料を使用したときでも、積層された対向する相手材の木材組織を加熱圧縮時に節部が押圧しやすく、節に圧縮ストレスが掛かり難い。よって、節が多い場合や、木材の表裏面を貫く節が存在する場合や、直径20mm以上の節が存在する場合であっても、節やその周囲でのクラック、亀裂等の割れが生じ難いものである。したがって、請求項1に記載の効果に加えて、塑性加工の更なる歩留りの向上を可能とする。
請求項3の発明に係る積層塑性加工木材によれば、前記各意匠材は、木表側の板目面または追柾面側がプレス面とされた配置であるから、圧縮による歪量、内部抵抗が少ない圧縮方向で圧縮されたものである。また、積層塑性加工木材の表裏面に各意匠材の木表側の板目面または追柾面がくるから、収縮の異方性がバランスされたものである。よって、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、木材の内部割れや歪みが生じ難いものであり、寸法形状安定性も高いものである。
請求項4の発明に係る積層塑性加工木材によれば、その気乾比重が元の木材の気乾比重の1.2倍以上、1.7倍以下であるから、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、表面硬度、強度と軽量性とを両立できる。
請求項5の発明に係る積層塑性加工木材によれば、前記意匠材と前記内層材とは、前記意匠材の木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の年輪角度θDと、前記内層材の木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面面とが交わる鋭角側の年輪角度θIとが、θD<θIである。年輪角度がθD<θIの関係の意匠材と内層材では、意匠材の圧縮変形量が大きいものであり、加熱圧縮時に内部応力が生じ難いものである。よって、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、節があってもクラック、亀裂等の割れを生じさせることなく、表面硬度を高めることが可能である。
請求項6の発明に係る積層塑性加工木材によれば、前記意匠材は、その木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の年輪角度θDが0°<θD≦30°であり、前記内層材は、その木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面面とが交わる鋭角側の角度θIが5°≦θI≦80°であるから、加熱圧縮時の年輪の座屈変形が小さいものである。よって、節が存在しても木材内部の割れが生じ難く、また、歪み等も入り難いものである。したがって、請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の効果に加えて、品質の安定化を可能とする。
請求項の発明に係る積層塑性加工木材によれば、前記積層塑性加工木材は、その全体の厚みが15mm以上、40mm以下の範囲内であり、前記各意匠材の厚みが1.5mm以上、10mm以下の範囲内であり、前記1枚の内層材または2枚以上の各内層材の厚みが、6mm以上、15mm以下の範囲内であるから、使用面側とする意匠材に重ねた内層材に節がある場合でも、その節及び節周囲の濃色化、黒色化した模様が使用面側とする意匠材に表出しない厚みであり、かつ、薄い全体厚みで軽量とするも、表面硬度が確保される。よって、請求項1乃至請求項の何れか1つに記載の効果に加えて、表面硬度・強度、表面意匠性及び軽量性を両立できる。
請求項の発明に係る積層塑性加工木材によれば、ブリネル硬さが15N以上、30N以下の範囲内であるから、筆記やカッター等による浅い細かい傷が付き難い表面硬さである。よって、請求項1乃至請求項の何れか1つに記載の効果に加えて、学校用の学童机やオフィス、食卓の机等の天板にも好適である。
請求項の発明に係る積層塑性加工木材によれば、前記意匠材及び前記内層材のうちの対向する面の1か所以上に節部による凸状部と前記節部による押圧で変形した凹状部による接合面を有することから、請求項1乃至請求項の何れか1つに記載の効果に加えて、節のある材料の使用により安価なものとなる。
図1(a)は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の一例として3枚の木材を使用する説明図であり、図1(b)は図1(a)の3枚の木材を積層した積層木材の説明図であり、図1(c)は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の説明図であり、図1(b)の積層材を圧密加工し、一体に接合した説明図である。 図2(a)は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の一例として4枚の木材を使用する説明図であり、図2(b)は図2(a)の4枚の木材を互いに特定の面で積層した積層木材の説明図であり、図2(c)は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の説明図であり、図2(b)の積層材を圧密加工し、一体に接合した説明図である。 図3(a)は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の一例として4枚の木材を使用する説明図であり、図3(b)は図3(a)の4枚の木材を互いに図2とは相違する特定の面で積層した積層木材の説明図であり、図3(c)は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の説明図であり、図3(b)の積層材を圧密加工し、一体に接合した説明図である。 図4(a)は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の一例として5枚の木材を使用する説明図であり、図4(b)は図4(a)の4枚の木材を互いに特定の面で積層した積層木材の説明図であり、図4(c)は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の説明図であり、図4(b)の積層材を圧密加工し、一体に接合した説明図である。 図5は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材を形成するための塑性加工木材製造装置の一例を示す概略構成の断面図である。 図6は本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の製造工程の一例を説明するための説明図で、(a)は塑性加工する積層木材の供給の説明図、(b)は加熱圧縮開始状態の説明図、(c)は密閉状態での加熱圧縮状態の説明図、(d)は密閉状態での蒸気圧制御処理の説明図、(e)は密閉状態での冷却状態の説明図、(f)は積層塑性加工木材の取り出しの説明図である。 図7は、本図1(c)に示した本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材の木口面の拡大説明図である。
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図7を参照しながら説明する。
なお、本実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は、同一または相当する部分及び機能を意味するものであるから、ここでは重複する説明を省略する。
まず、本発明の実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWの原材料となる加工前の木材NWが、前以て所定の寸法に製材されることについて説明する。
加工前の木材NWの厚み、幅、長さは、それを積層して圧密加工してなる積層塑性加工木材LPWの用途、目的等によって相違するが、通常、断面長方形または正方形の角材、即ち、立方体または直方体の木材、板材として製材されたものが使用される。好ましくは、板目材または追柾材として製材された木材NWが使用される。なお、板目材とは、原木の年輪の接線方向に製材、即ち、板目取りした木材であり、追柾材は、原木の年輪に対して直交するように製材する柾目取りと原木の年輪の接線方向に製材する板目取りの中間的な木取りの木材である。板目材では、通常、年輪の繊維方向に対し垂直な断面で切断した木口面(2面)、板目面(木表及び木裏の2面)、柾目面(2面)を有する。追柾材であれば、通常、木材の繊維方向に対し垂直な断面で切断した木口面(2面)、板目と柾目の中間的な木目の追柾面(木表及び木裏の2面)、柾目面(2面)を有する。なお、図1乃至図4は、板目材の例で説明する。
なお、積層塑性加工木材LPWの原材料とする木材NWについて、辺材(白太・白身)または心材(赤身)を問うものではないが、一般的に杉材等の針葉樹においてはヤ二の量が多いところ、心材に比べ辺材の部分では加熱圧縮によるヤ二の表出量が少ないことから、辺材の占有量が多いほど好適に用いることができる。また、辺材は心材に比べ明るい色彩であることから、圧密したときの濃色変化が心材よりも抑制され、良好な外観が保持される。また、積層塑性加工木材LPWの原材料とする木材NWは、間伐材、風害・水害・雪害・森林火災・凍害・虫害等の自然災害によって倒れたり芯割れを起こしたりして丸太の状態では使えなくなった傷害木材、端材等を用いてもよい。低コスト化を図ることができ、また、環境美化にも貢献することができる。
所定厚みに製材された木材NWは、後述の図5及び図6に示す塑性加工木材製造装置100を用いて所定の圧密加工を行う前に、繊維飽和点以下の含水率となるように乾燥される。繊維飽和点以下の含水率、好ましくは、気乾状態以下の含水率となるように一旦乾燥させることで強度を持たせ、また、後の加熱圧縮により十分な化学変化を起こさせることができる。なお、木材の含水率とは、水分を含まない木材重量(全乾重量、ドライベース)に対する水分重量の割合であり、例えば、高周波含水率計等の測定器を用いて測定が可能である。一般的に、その木材の表面側から水分が蒸発することから、木材の含水率は、その表面に近くなるほど低くなるが、ここでの含水率は木材全体の含水率として測定される値を示す。
木材NWを所望の含水率にする乾燥は、公知の乾燥装置、例えば、公知の高温蒸気を熱源とし、冷凍機等を内蔵する人工乾燥機等により所定条件に乾燥することができる。この際、木材NWの全体含水率が予め測定され、このときの含水率や木材NWの樹種、その厚み等をパラメータとし、乾燥後に所定の含水率となるように、人工乾燥機等の乾燥装置における乾燥条件、即ち、所定の温度、湿度、乾燥時間(杉材や檜材等の場合には、例えば、乾燥温度が約40〜100℃、乾湿球温度差が約1〜30℃、乾燥期間が3〜10日程度)等が設定される。通常、乾燥期間中において乾燥温度は徐々に上昇させ、湿度は徐々に下降させるように設定される。
なお、含水率を低下させることで強度を高めることが可能であるが、木材NWの含水率を必要以上に低くし過ぎると、木材NWの収縮により強度が損なわれ乾燥過程で割れ等が生じる。特に、木材NWに節部Kが存在する場合には、節部K及びその周辺の水分の吸放湿性特性が高く、水分が蒸発しやすいことで、乾燥過程で節部K及びその周辺に割れ、亀裂等が発生しやすくなる。
そこで、例えば、杉材、檜材等であれば、木材NWを全体の含水率が5%〜15%の範囲内となるように乾燥させるのが好ましい。より好ましくは、含水率が8%〜10%の範囲内である。
ここで、本実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWでは、複数枚の木材NW(NWD1,NWD2,NWI1,NWI2,NWI3等)を積層し、その積層体LWに対し加熱圧縮による圧密加工を施して1枚の積層塑性加工木材LPWとしての厚みを出すものであり、原材料の製材した各1枚(1本)の木材NW(NWD1,NWD2,NWI1,NWI2,NWI3等)の厚みは薄くできる。即ち、例えば、学校用の学童机、学習机、オフィスの仕事机、家庭のダイニングテーブル等の机等の天板や棚板等の用途として使用できる積層塑性加工木材LPWとして、3枚以上の薄い厚みの木材NWを重ねてそれを加熱圧縮するものであり、例えば、厚みが10mm〜30mm、好ましくは、12〜25mmの範囲内である薄い厚みの木材NWの乾燥である。
よって、積層塑性加工木材LPWの原材料とする各木材NWの乾燥は、少ない乾燥時間で済み、また、表面の乾燥割れも生じ難いものであり、更に、木材内部の含水率を表面側の含水率に近づけることが可能である。即ち、積層塑性加工木材LPWを所定の厚みとするも、原材料とする各木材NWは薄い厚みにできるから、乾燥による負荷を少なくできる。よって、原材料とする木材NWに節のある材料を用いたときでも、乾燥による節割れ、節抜けを生じさせ難いものであり、歩留まりを良くできる。また、木材NWの内部と表面側とで含水率のばらつきを少なくできるから、後の加熱圧縮で局部的な圧縮変形、ストレスを生じさせ難いものとなり、加熱圧縮による木材の内部割れも防止され、節が存在してもそこにクラック、亀裂等の割れが生じ難いものとなる。加えて、木材NWの乾燥時間が少ないから、生産性もよいものである。
なお、本発明を実施する場合には、木材NWを所定の含水率に乾燥させる手段は、人工的な乾燥に限定されることなく、自然乾燥との併用であってもよい。また、上記では原木、丸太から切り出した木材を所定の寸法に製材してから乾燥させる説明としたが、本発明を実施する場合には、原木、丸太から切り出した木材を所定の含水率まで乾燥させてから所定の寸法に製材してもよい。
次に、このようにして所定の含水率に乾燥した木材NW(NWD1,NWD2,NWI1,NWI2,NWI3等)は、互いの木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材NWの厚み方向で接着剤を介在させて積層し、積層木材LWを形成する。
本実施の形態においては、3枚以上の複数枚の木材NWを積層するが、木材NWの積層枚数は、積層塑性加工木材LPWの用途、目的等に応じて設定される。
図1乃至図4に示したように、本実施の形態では、木材NW(NWD1,NWD2,NWI1,NWI2,NWI3等)は互いの木目の長さを一致させて積層している。
互いに木目の長さを一致させて積層していれば、後述するように、木材NWに節部Kが存在しても、加熱圧縮したときに、積層している対向する相手材の木材組織を節が押圧しやすく、節部Kに圧縮ストレスが掛かり難いものとなる。よって、節が多い場合、例えば、10%〜20%の高い占有率で節が存在し、部分的な比重差が大きい場合や、木材NWの表裏面を貫く節が存在する場合や、直径20mm以上の節が存在する場合であっても、加熱圧縮時に節が潰れたりその周囲で座屈変形が生じたりするのが防止され節部Kにクラック、亀裂等の割れが生じ難いものとなる。
また、本実施の形態では、木材NWを積層してなる積層木材LWの表裏面は、木表側の板目面または追柾面となるように木材NWD1,NWD2を配置する。即ち、積層木材LWは、その表裏層に配置する各木材NWD1,NWD2の木表側の板目面または追柾面を意匠面とし、それとは反対側の各木材NWD1,NWD2の木裏側の板目面または追柾面側を積層する中間層の木材NWI(NWI1,NWI2,NWI3等)との対向面とする。
これより、加熱圧縮時に積層木材LWを挟む1対のプレス盤10A,10Bによって表裏層、即ち、意匠面側のNWD1,NWD2が圧縮変形しやすく、加熱圧縮時に生じる圧縮応力を少なくできる。よって、年輪の座屈変形による木材割れを防止でき、また、内部応力を少なくできるから、節のある材料を使用したときでも、加熱圧縮時にその節に亀裂、クラック等の割れが入り難いものとなる。加えて、表裏で圧縮率や収縮の異方性がバランスされるから、局部的な圧縮変形、ストレスを生じさせ難いものであり、圧縮による歪みも少なく、また、圧密加工後の周囲環境条件の変化によって膨張収縮力が生じたとしても寸法形状安定性が高い。
本実施の形態の積層塑性加工木材LPWを、例えば、学校用の学童机、学習机、オフィスの仕事机、家庭のダイニングテーブル等の机に使用される天板や棚板等に適用する場合の事例で説明すると、積層塑性加工木材LPWの原材料となる加工前の木材NWとして、杉材または檜材等の針葉樹を使用したときに、例えば、厚みが6mm〜15mmの範囲内である3枚の木材NWD1,NWD2,NWI1、4枚の木材NWD1,NWD2,NWI1,NWI2、または5枚の木材NWD1,NWD2,NWI1,NWI2,NWI3を積層して積層材LWとすることができる。このとき3枚〜5枚の木材NWD1,NWD2,NWI1,NWI2,NWI3を積層した積層木材PWの全体厚みは、例えば、20mm〜75mmの範囲内、好ましくは、25mm〜60mmの範囲内である。しかし、本発明を実施する場合には、積層塑性加工木材LPWの原材料となる木材NWの枚数、厚みはこれに限定されるものではない。なお、実際には積層木材LWの木材NW間には接着剤が塗布されるが、上記厚みは接着剤の塗布厚みは無視した値である。ここで、以下、NWD1,NWD2,NWI1,NWI2,NWI3を特に区別しないときには、単に「木材NW」とし、また、表裏層の木材NWD1,NWD2間に配置する内層の木材NWI1,NWI2,NWI3についても特に区別しないときには、単に「木材NWI」とする。
図1は、木材NWを3枚積層した例である。3枚の木材NWD1,NWD2,NWI1を積層してなる積層木材LWは、各木材NWD1,NWD2,NWI1が互いに木目の長さを一致させて、木目の長さ方向に対して垂直方向に積層したものであり、その表裏層に位置する各木材NWD1,NWD2の木表側の板目面または追柾面を意匠面とした配置である。
また、図2及び図3は、木材NWを4枚積層した例である。4枚の木材NWD1,NWD2,NWI1,NWI2を積層してなる積層木材LWは、各木材NWD1,NWD2,NWI1,NWI2が互いに木目の長さを一致させて、木目の長さ方向に対して垂直方向に積層したものであり、その表裏層に位置する各木材NWD1,NWD2の木表側の板目面または追柾面を意匠面とした配置である。このとき、表裏層の木材NWD1及び木材NWD2間に配置する内層の2枚の木材NWI1,NWI2は、互いに重ね合わせる対向面を、図3に示すように木表側の板目面または追柾面側同士、または、図4に示すように木裏側の板目面または追柾面側同士とするのが好ましい。これにより収縮の異方性がバランスされるから、圧縮による歪みも少なく、また、圧密加工後の周囲環境条件の変化によって膨張収縮力が生じたとしても寸法形状安定性が高いものとなる。
即ち、図2の4枚の木材NWD1,NWD2,NWI1,NWI2を積層してなる積層木材LWは、表裏層の木材NWD1,NWD2の木裏側の板目面または追柾面側が内層の木材NWI1,NWI2の木裏側の板目面または追柾面側と対向し、内層の木材NWI1,NWI2同士は、木表側の板目面または追柾面側で対向したものである。このように表裏層の木材NWD1,NWD2の木裏側の板目面または追柾面側が内層の木材NWI1,NWI2の木裏側の板目面または追柾面側と対向するものでは、加熱圧縮時に積層木材LWを挟む1対のプレス盤10A,10Bによって表裏層の木材NWD1,NWD2が圧縮変形しやすいから、即ち、圧縮力を集中させやすいから、表面硬度をより高めることが可能である。更に、加熱圧縮力による内部応力を少なくできるから、節が多い場合や、木材の表裏面を貫く節が存在する場合や、直径20mm以上の節が存在する場合であっても、加熱圧縮時に節部Kにクラック、亀裂等の割れが入り難いものとなる。なお、表裏層の木材NWD1及び木材NWD2間に配置する内層の木材NWを2枚以上の偶数枚とする場合では、このように木表側と木裏側とを交互に反転させて積層配置して圧縮の異方性をバランスすれば、歪みの発生も防止できる。
一方で、図3の4枚の木材NWD1,NWD2,NWI1,NWI2を積層してなる積層木材LWは、表裏層の木材NWD1,NWD2の木裏側の板目面または追柾面側が内層の木材NWI1,NWI2の木表側の板目面または追柾面側と対向し、内層の木材NWI1,NWI2同士は、木裏側の板目面または追柾面側で対向したものである。このように表裏層の木材NWD1,NWD2の木裏側の板目面または追柾面側が内層の木材NWI1,NWI2の木表側の板目面または追柾面側と対向するものでは、積層木材LWの表裏が対称関係となり木材NW同士が相互に作用し合って特定方向の反り変形、歪み等が防止される。よって、寸法形状安定性がより高いものとなる。
何れにせよ、表裏層の木材NWD1及び木材NWD2間に積層する内層の木材NWIを偶数枚とする場合には、互いに木表側の板目面または追柾面同士及び木裏側の板目面または追柾面同士を対向させて積層接着することで、収縮の異方性がバランスされ、特定方向の反り変形、歪み等を防止できるから寸法形状安定性をよくできる。
また、図4は、木材NWを5枚積層した例である。5枚の木材NWD1,NWD2,NWI1,NWI2、NWI3を積層してなる積層木材LWでも、各木材NWD1,NWD2,NWI1,NWI2、NWI3が互いに木目の長さを一致させて、木目の長さ方向に対して垂直方向に積層したものであり、その表裏層に位置する各木材NWD1,NWD2の木表側の板目面または追柾面を意匠面とした配置である。このとき、表裏層の木材NWD1,NWD2間に積層する内層の3枚の木材NWI1,NWI2、NWI3のうち2枚の木材NWIは、互いに重ね合わせる対向面を、木表側の板目面または追柾面側同士、または、木裏側の板目面または追柾面側同士とするのが好ましい。これにより収縮の異方性がバランスされるから、圧縮による歪みも少なく、また、圧密加工後の周囲環境条件の変化によって膨張収縮力が生じたとしても寸法形状安定性が高いものとなる。
即ち、表裏層の木材NWD1及び木材NWD2間に積層する内層の木材NWIを3枚以上上の奇数枚であっても、その一部にて木表側と木裏側を対向させることがあっても、その他は互いに木表側の板目面若しくは追柾面同士または木裏側の板目面若しくは追柾面同士を対向させて積層接着することで、圧縮による歪み等を防止することが可能となる。また、圧密加工後の周囲環境条件の変化によって膨張収縮力が生じたとしても、互いの重ね合わせた木材同士が相互に作用し合って特定方向の反り変形を防止できるから、寸法形状安定性を確保することが可能となる。
ここで、積層塑性加工木材LPWの原材料の木材NWに節のある材料を用いる場合には、木材NWの節部Kのある個所に、別の木材NWの節のない箇所を重ねるのが好ましい。即ち、木材NWの節部Kのある箇所に対向させる相手材の部分(1cm3単位)は、節部Kがある箇所より低比重で繊維が低密な部分である。こうした木材組織の節のない箇所、即ち、節部Kがない低比重で繊維が低密な部分では、加熱圧縮したときに、木材NWの節部Kに押圧されて軟化変形できることで、全体の圧縮率によりその圧縮にあった緩衝効果が得られ、加熱圧縮しても節がその環境に従うから、木材NWの節部Kに圧縮ストレスが掛かり難いものとなる。つまり、節がある材料を用いても、木材NW同士の積層により木目の長さ方向に対して垂直方向、即ち、木材NWの厚み方向で比重の相違、粗密を形成することで、加熱圧縮時に木材NWの節周囲の繊維の座屈変形が抑えられ、節やその周囲に過剰なストレスが掛かり難いものとなる。更に、本実施の形態では、表裏層の木材NWD1及び木材NWD2を高圧縮としても内層の木材NWIは低圧縮であるから、木材NWに節のある材料を使用しても、その節部Kに無理な圧縮荷重が掛かり難く、硬い節部Kに歪み、ストレスが入り難い。また、表裏で圧縮がバランスされるから、局部的な圧縮変形、ストレスを生じさせ難いものでもある。よって、節部Kの潰れ、破損、亀裂、クラック等の割れを生じさせることなく圧密加工により元の木材よりも機械的強度を高くした積層塑性加工木材LPWを得ることができる。
そして、本実施の形態では、加熱圧縮前に積層する木材NW同士の対向面には、接着剤が塗布される。
木材同士を接着するための接着剤としては、後の1対のプレス盤10A,10B、即ち、ホットプレスを用いた加熱圧縮工程の条件で木材同士を一体に接合することができるものであればよい。例えば、木材同士を接着するための接着剤としては、水性ビニールウレタン系接着剤(水性高分子イソシアネート系接着剤)、ウレタン樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、尿素樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、合成ゴム系接着剤等を使用することができる。特に、本実施の形態では、後述する加熱圧縮時に硬化させることにより木材同士を接着する熱硬化性の接着剤や、2液混合反応硬化型の接着剤が使用される。このときの接着剤の塗布量は、接着剤の種類等により決定されるが、例えば、水性ビニールウレタン系接着剤であれば、その塗布量は200g/m2以上とするのが好ましい。水性ビニールウレタン系接着剤であれば針葉樹からなる木材でも接着剤が浸透し易く、後の加熱圧縮工程で木材同士が強固に接着される十分な接着強度が得られる。特に、節がある材料の場合には、その節部Kにも浸透し、後の加熱圧縮工程で節部Kにかかる圧縮応力の緩和を可能、節の保護を可能とするから、後の加熱圧縮工程での節部Kの割れ防止に効果的である。
なお、接着剤の塗布手段は特に問われず、木材NWの片面側に接着剤を塗布する作業であってもよいし、奇数枚の積層であれば、偶数枚目に配置する木材NWの両面に塗布すれば、少ない手間、工数で接合のための接着剤の塗布を可能とする。
このとき、接着剤を介在させて3枚以上の複数枚の木材NWを積層してなる積層木材LWは、その表裏層の木材NWD1,NWD2に乾燥後に水分を付加して含水させた木材を使用してもよい。即ち、本発明を実施する場合には、上述したように所定の含水率となるように乾燥させたのち、木材を積層したときにその上層側及び下層側のNWD1,NWD2を加熱圧縮し易くするために、積層したときに上層側及び下層側に配置する木材NWD1,NWD2に対して水分付加、即ち、加湿を行ってもよい。例えば、水中に乾燥後の木材NWD1,NWD2全体を所定時間浸漬(例えば、浸漬時間を5分程度)することにより所定の含水率とする水分付加を行うことができる。乾燥した木材NWD1,NWD2の表面側に水分を付加する手段は、水中への木材NWD1,NWD2の浸漬に限らず、特定の面に水をスプレー等で噴霧、吹き付けをしても良いし、刷毛等で水を塗布しても良い。
次に、こうして接着剤を介在させて3枚以上の複数枚の木材NWを積層してなる積層木材LWに対し、加熱圧縮することにより、加熱圧縮及び圧縮固定化による圧密加工と接着剤の硬化による木材同士の接合を行う。
ここで、図5及び図6に示すように、複数枚の木材NWを積層した積層木材LWに対して圧密加工を行う塑性加工木材製造装置100は、主として、上プレス盤10Aと下プレス盤10Bとの2分割された構造体によって内部空間ISを形成するプレス盤10と、下プレス盤10Bの周縁部10bに対向する上プレス盤10Aの周縁部10aに配設され、上プレス盤10Aの所定の上下動の範囲で内部空間ISを密閉状態とするシール部材11と、上プレス盤10Aの上面側から内部空間IS内に連通され、内部空間IS内に蒸気を供給するための配管口12aを有する配管12と、その上流側のバルブV4と、下プレス盤10Bの側面側から内部空間IS内に連通され、内部空間IS内から水蒸気を排出するための配管口13aを有する配管13と、配管13内の蒸気圧を検出する圧力計P2と、その下流側のバルブV5と、バルブV5に接続されたドレン配管14等から構成されている。
プレス盤10の上プレス盤10A及び下プレス盤10B内には、それらを高温の水蒸気を通すことによって所望の温度に昇温するための配管路15,16が形成されており、これら配管路15,16には蒸気供給側の配管ST1から分岐された配管ST2,ST3、蒸気排出側の配管ET1,ET2がそれぞれ接続されている。そして、蒸気供給側の配管ST1,ST2,ST3の途中にはバルブV1,V2,V3、配管ST1内の蒸気圧を検出する圧力計P1が配設されており、蒸気排出側の配管ET1,ET2は、バルブV6を介してドレン配管14に接続されている。
更に、プレス盤10には、上プレス盤10A及び下プレス盤10B内に形成された配管路15,16に水蒸気に換えて低温の冷却水を通すことによって所望の温度に冷却する冷却水供給側の配管ST11から分岐された配管ST12,ST13が、上記配管ST2,ST3にそれぞれ接続されている。また、冷却水供給側の配管ST11,ST12,ST13の途中にはバルブV11,V12,V13が配設されている。
なお、配管ST1に水蒸気を供給するボイラ装置、配管ST11に冷却水を供給する冷却水供給装置、プレス盤10の固定側の下プレス盤10Bに対して上プレス盤10Aを上昇/下降させ加圧するための油圧機構を含むプレス昇降装置は省略されている。
本実施の形態では、プレス盤10の上プレス盤10A及び下プレス盤10Bの加熱に高温の水蒸気を導入しているが、本発明を実施する場合、プレス盤10の加熱媒体は高温の水蒸気に限定されず、油等を用いてもよいし、木材を高周波加熱、マイクロ波加熱、加熱ヒータ等の加熱手段で加熱することも可能である。特に、木材に対する高周波加熱は、マイクロ波による誘電過熱よりも、マイクロ波よりも若干周波数の低い高周波で、木材の中心から加熱する方法が好適である。
鉄等からなるプレス盤10においては、積層木材LWの積層方向に対して垂直方向の表裏面全体をプレス可能な平面サイズの平面金型が使用され、その材質は特に問われるものでないが、木材が鉄イオン汚染により黒色化しないように、例えば、金型にはステンレス、アルミニウム等の鋼材を使用したり、積層木材LWの表裏の接触表面にメッキ加工を施したりする。更に、内部空間ISを密閉状態とするためのシール部材11も、その材質は特に問われるものでないが、通常、耐熱性や耐水性に優れたシリコーンゴム、シリコーン樹脂等が使用される。
このように構成された塑性加工木材製造装置100を用いて積層木材LWを圧密化するにあたっては、まず、図6(a)に示すように、プレス盤10を構成する固定側の下プレス盤10Bに対して、可動側の上プレス盤10Bを上昇させておき、固定側の下プレス盤10Bに積層木材LWを載置する。
ここで、本実施の形態において、上プレス盤10Aと下プレス盤10Bとの2分割されたプレス盤10によってプレス圧縮される方向は、積層木材LWの木目の長さ方向に対して垂直方向の面(積層木材LWの厚み方向に対して垂直な表裏面)に対し直角方向に圧縮力が加えられる。
このとき本実施の形態では、積層木材LWの表裏面を木表側の板目面または追柾面とするから、積層木材LWの表裏層(外層)のうちの一方(図においては下層)の木材NWD2の板目面または追柾面の木表側を下プレス盤10Bに対向させて、他方(図においては上層)の木材NWD1の板目面または追柾面の木表側を上プレス盤10Aに対向させて配置し、積層木材LWの木目の長さ方向に対して垂直方向の面の木表側の板目面または追柾面側がプレス盤10にてプレス圧縮される面となる。
加熱圧縮処理を行うにあたり、このように積層木材LWの木目の長さ方向に対して垂直な面側をプレス盤10の上プレス盤10A及び下プレス盤10Bに対向させ、固定側の下プレス盤10Bに載置した積層木材LWに対し、図6(b)に示すように、まず、上プレス盤10Aを所定圧力(例えば、0.05〜0.3〔MPa〕)にて下降させて積層木材LWの上面、即ち、木材NWD1の木目の長さ方向に対して垂直方向の木表側の板目面または追柾面に所定時間(例えば、10秒〜120秒)当接させる。このとき、上プレス盤10Aの配管路15及び下プレス盤10Bの配管路16に所定温度(例えば、110〜210〔℃〕、昇温処理時間10〜25[分])の水蒸気を通して上プレス盤10A及び下プレス盤10Bは所定温度(例えば、110〜210〔℃〕)に加熱されている。
そして、固定側の下プレス盤10Bに対して上プレス盤10Aの圧縮圧力が所定圧力(例えば、2〜5〔MPa〕、20〜50kg/cm2)に設定され上プレス盤10Aを下降させていき(例えば、処理時間0.5〜3〔分〕、圧縮スピード15〜100〔mm/分〕)、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bにて積層木材LWを加熱圧縮していく。上プレス盤10Aが下降し、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bにより積層木材LWが加熱圧縮されて、上プレス盤10Aの周縁部10aが下プレス盤10Bの周縁部10bに当接したとき、図6(c)に示すように、上プレス盤10Aの周縁部10aに配設されたシール部材11によって、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bにて形成される内部空間ISが密閉状態となる。
なお、本実施の形態において、プレス盤10の上プレス盤10A及び下プレス盤10Bによって形成される内部空間ISがシール部材11を介して密閉状態となったときにおける内部空間ISの上下方向の寸法間隔は、プレス盤10によって積層木材LWの厚みに対して所定圧縮率の塑性加工木材PWとなるときの厚み方向の仕上がり寸法に設定されている。このため、積層木材LWの厚み全体の圧縮率、即ち、積層木材LWの圧縮による板厚の変化(圧縮量)は、上プレス盤10Aの周縁部10aが下プレス盤10Bの周縁部10bに当接することで決まることとなる。このときのプレス盤10の圧力、加熱温度、加熱時間、圧縮スピード等は、木材の樹種や乾燥木材の含水率等をパラメータとして予め実験等によって最適値が設定される。
こうして所定温度に加熱したプレス盤10について、下プレス盤10Bを固定し、上プレス盤10Aを可動させて積層木材LWの上面に所定の圧力で当接し所定の圧縮スピードで下降させると、積層木材LWの表裏層側から木材成分の化学特性変化による強度低下(ヘミセルロースやリグニン等の非晶成分等の加水分解、軟化点の低下)が生じて細胞が圧縮変形し細胞内空の空隙が減少していく。
特に、本実施の形態では、3枚以上の木材NWを積層してなる積層木材LWを1対のプレス盤10で挟み込んで加熱圧縮するものであり、その表裏層の木材NWD1,NWD2側から加熱圧縮されるが、製材した木材NW同士を任意に組み合わせて積層していることで、表裏層の木材NWD1,NWD2と内層の木材NWIとで木材組織が連続するものではなく、表裏層の木材NWD1,NWD2と内層の木材NWIの間で木材組織が変化するものであるから、また、表裏層の木材NWD1,NWD2の木表側から木裏側に向かって加熱圧縮するものであり表裏層の木材NWD1,NWD2の木表側から木裏側に向かって、通常、年輪線RLの角度が急になり比重、硬度、繊維強度も高いことで圧縮変形し難くなるものである。特に、表裏層の木材NWD1,NWD2よりも内層の木材NWIの年輪角度が小さいものでは、後述する意匠材PWD1,PWD2と内層材PWI1の圧縮率の差を大きくすることが可能であり、節があってもその割れを生じさせることなく、意匠材PW1,PW2の圧縮率を高めて表面硬度を高くすることが可能である。
したがって、それら加熱圧縮したときの力学的特性の相違から、積層木材LWの表裏層に配置する木材NWD1,NWD2を高圧縮し、表裏層の木材NWD1,NWD2間に配置する内層の木材NWIでは表裏層の木材NWD1,NWD2よりも低圧縮とすることかできる。
そして、このように本実施の形態では、複数枚の木材NWを積層して積層木材LWとし、それを1対のプレス盤10A,10Bで挟み込んで加熱圧縮するものであるから、木材NWに節部Kが存在しても、それに重ねた対向する相手側の木材NWの節のない低比重な部分の木材成分が加熱圧縮時に軟化し、硬い節部Kによる押圧によって変形するから、硬い節部Kに圧縮ストレスを掛けない。更に、積層木材LWの表裏層の木材NWD1,NWD2を高圧縮とするも表裏層の木材NWD1,NWD2間に配置する内層の木材NWIでは表裏層の木材NWD1,NWD2よりも低圧縮であるから、節部Kが存在しても節部Kに過剰な圧縮力が掛からない。よって、積層した木材NWに節部Kがあっても、加熱圧縮時に節の破壊、潰れやその周囲の繊維に座屈変形が生じ難く、節部Kにクラック、亀裂等の割れが生じ難い。
なお、上プレス盤10Aの周縁部10aや下プレス盤10Bの周縁部10bを、例えば、厚さを規制するための治具、型枠、ゲージ等で構成すると、塑性加工木材PWの所望とする仕上がり厚みに応じて上プレス盤10Aの周縁部10aや下プレス盤10Bの周縁部10bの高さが調整可能とされる。更に、このとき積層木材LWの側面側で、例えば、横方向(水平方向)への延びを規制するための図示しない規制具(スペーサ)を配置することも可能である。規制具によって積層木材LWが横方向(水平方向)に延びる変化、即ち、圧縮方向に対して直角方向の延び変化を規制しておけば、特定の寸法、比重に固定化しやすくなり、製品間のばらつきを防止でき高い品質を確保できる。このような規制をした場合には、木材の幅方向の端部でその密度が高まることもある。また、逆に、規制をしない場合には、木材の幅方向の端部が中央側よりも密度が低くなることもある。木材の幅方向の密度差によっては、圧密加工後に木材の幅方向の端部側の表面を切削加工することも可能である。更に、製品化の際には、積層木材LWの木目の長さ方向や、その木目の長さ方向に直交する幅方向に複数の積層木材LWを配置して一体に圧密加工及び接合を行うことも可能である。
次に、図6(d)に示す内部空間ISの密閉状態で、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bの圧縮圧力が維持され、かつ、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bが所定温度(例えば、110〜210〔℃〕)のまま、木材の加熱圧縮処理の定着、所謂、木材の固定化処理を行う。
例えば、バルブV4に接続された配管12、配管口12a(図5)を介して、密閉状態とされた内部空間ISに所定の蒸気圧を供給し、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bの圧縮圧力及び加熱温度を加熱圧縮の際の圧力及び加熱温度と同じ所定圧力及び温度に保持したまま、密閉状態の内部空間ISが所定の温度及び蒸気圧で所定時間(例えば、20分〜90分)保持される。内部空間ISに所定温度(例えば、110〜210〔℃〕)の高温水蒸気を導入し、密閉状態の内部空間ISを所定の温度及び蒸気圧とすることにより、高温高圧の蒸気の作用によって密閉状態の内部空間IS内に配置されている加熱圧縮された木材に対し十分な化学変化を生じさせ性状を一様化させる。これにより、この後の冷却圧縮を解除したときに戻りのない積層塑性加工木材LPWを形成できる。
このとき加熱圧縮された木材の周囲面とその内部とでは高温高圧の蒸気圧が出入り自在となっているが、加熱圧縮された木材の含水率によっては、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bで密閉状態とされている内部空間IS内が所定の蒸気圧となるように調節してもよい。例えば、木材の表裏側の含水率に基づく内部空間IS内の余分な水分が除去され、内部空間IS内が所定の蒸気圧となるように調節される。この際、内部空間ISの密閉状態で加熱圧縮された木材の固定化処理が行われているときに、蒸気圧制御処理として圧力計P2で内部空間ISの蒸気圧が検出され、バルブV5が適宜、開閉される。これにより、配管口13a、配管13を通って内部空間ISからドレン配管14側に高温高圧の水蒸気を排出できる。また、必要に応じて、密閉状態とされている内部空間ISに所定の蒸気圧を適宜供給することもできる。
そして、図6(d)に示すように、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bによる加熱圧縮から冷却圧縮へと移行する直前に、蒸気圧制御処理としてバルブV5が開状態とされることで配管口13a、配管13を通って圧縮空間ISからドレン配管14側に高温高圧の水蒸気が排出される。これにより、木材の加熱圧縮処理、所謂、木材の固定化がより促進されることとなる。この際、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bを特定温度に維持するための水蒸気も一旦、供給停止される。
最後に、図6(e)に示すように、上プレス盤10Aの配管路15及び下プレス盤10Bの配管路16に常温の冷却水を通すことによって、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bを常温前後まで冷却し、所定時間(例えば、20〜90〔分〕)保持される。なお、このときの固定側の下プレス盤10Bに対する上プレス盤10Aの圧縮圧力は、加熱圧縮の際の圧力と同じ所定圧力(例えば、2〜5〔MPa〕)に保持したまま、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bを冷却する。
その後、図6(f)に示すように、固定側の下プレス盤10Bに対して上プレス盤10Aを上昇させ、加熱圧縮及び圧縮固定化による圧密加工を終えた積層塑性加工木材LPWPを内部空間ISから取出して一連の処理工程が終了する。内部空間ISから取出された積層塑性加工木材LPWPは、一連の処理工程における加熱、冷却により木材NW間に塗布した接着剤が硬化し、一体に木材同士が積層接合したものとなっている。
この後、通常は、製品の平面性を確保するために、積層塑性加工木材LPWPの表面の片面のみ或いは両面を切削加工する。また、側面を切削加工してもよい。積層塑性加工木材LPWPの切削加工を終え、仕上がり品となる積層塑性加工木材LPWとなる。必要に応じて、積層塑性加工木材LPWの表面には水分や汚れ対策として樹脂等による表面コーティグが施されることもある。
そして、本実施の形態において、このような製造方法で製造する積層塑性加工木材LPWは、木材NWが積層されてなる積層木材LWを1対のプレス盤10A,10Bで挟み込んでプレスすることにより、積層木材LWの表裏層に位置する木材NWD1,NWD2を高圧縮し、表裏層の木材NWD1,NWD2間に位置する内層の木材NWIを表裏層の木材NWD1,NWD2よりも低圧縮とする塑性加工としたものである。
また、本実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWは、複数枚の木材NWを互いに特定方向で積層しそれら木材NW間に接着剤を介在させてなる積層木材LWを上述の塑性加工木材製造装置100を用いて加熱圧縮することにより、接着剤によって互いに木材同士が一体に積層接合したものである。
特に、本実施の形態では、加熱圧縮前に積層木材LWの木材NW間に接着剤を塗布したことにより、積層木材LWの圧密加工を行う加熱圧縮時に接着剤を硬化させ、木材NW同士を一体に接合する。即ち、積層木材LWの加熱圧縮により、圧密加工すると共に木材同士を接合する。これより、木材NW同士を別途プレス盤等による圧締で接着剤を介して一体に接合してから圧密加工する場合に比して、或いは、積層して圧密加工した木材同士を圧密加工後に別途プレス盤等による圧締で接着剤を介して一体に接合する場合に比して、少ない製造工程数で済み製造時間も短縮する。
即ち、本実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWは、積層木材LWの表裏層に配置した木材NWD1,NWD2が加熱圧縮により高圧縮された厚みの薄い2枚の意匠材PWD1,PWD2と、積層木材LWの表裏層の木材NWD1,NWD2間に配置した内部の1枚以上の木材NWIが加熱圧縮により表裏層の意匠材PWD1,PWD2よりも低圧縮とされた厚みのある1枚以上の内層材PWI(PWI1,PWI2,PWI3等)とから形成され、意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIが互いに積層接合して一体化されているものである。なお、以下、表裏層の意匠材PWD1,PWD2間に配置する内層材PWI1,PWI2,PWI3について特に区別しないときには、単に「内層材PWI」とする。
ここで、意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIの個々の木材は、それらの互いの境界に質が緻密に形成された接合線Lや年輪線RLの変化によって互いに区別できるものであり、積層塑性加工木材LPWの表裏層に配設する意匠材PWD1,PWD2では、高圧縮により細胞の圧縮変形量が大きく、年輪線RLの幅が狭くて緻密で厚みが薄いのに対し、意匠材PWD1,PWD2間に配設した内層材PWIでは、意匠材PWD1,PWD2よりも低圧縮で細胞の圧縮変形量が少なく年輪線RLの幅があり低密で厚みがある。したがって、意匠材PWD1,PWD2と内層材PWIとでは、加熱圧縮による細胞の圧縮変形量に大きな相違がある。
詳細には、本実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWにおいて、意匠材PWD1,PWD2は、加熱圧縮により元の木材NWの気乾比重に対する圧縮率で45%〜65%、好ましくは、50%〜60%の範囲内の圧縮率で圧縮され、内層材PWIは、加熱圧縮により元の木材NWの気乾比重に対する圧縮率で10%〜40%、好ましくは、20%〜40%の範囲内の圧縮率で圧縮されたものである。これより、全体の比重に比べ表面を高比重にでき、軽量性と表面硬度、強度も両立できる。
なお、圧縮率は、元の木材NWの気乾比重と、積層塑性加工木材LPWの各意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIを接合面で切り出して測定した気乾比重とから圧縮率を算出したものであり、節の存在による比重差からすると、特定の一部分を切り出した測定では、必ずしも上記範囲内に該当しないこともある。また、自然物を相手にするものであり測定等による誤差を有しても、実施できないものでなく、誤差の介入を否定するものではない。
本実施の形態において、こうした意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIの圧縮率の相違は、上述したように、所定に製材した木材NW同士の組み合わせ、積層によって、木材NW間で木材組織の変化があり、そこに抵抗が生じることを利用し、表裏層の木材NWD1,NWD2を大きく圧縮変形する一方、表裏層の木材NWD1,NWD2間の内部の木材NWIでは圧縮変形量を抑えたものである。そして、このように所定に製材した木材NW同士を組み合わせ積層したものを圧密加工するものでは、表裏層の木材NWD1,NWD2と内部の木材NWIとの組み合わせ方によって、例えば、積層する木材NWの年輪角度の大小の組み合わせや、節のある材料と節のない材料の組み合わせ等で、圧密加工した積層塑性加工木材LPWの表面硬度等の特性の制御も容易に可能となる。
こうした意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIからなる本実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWは、意匠材PWD1,PWD2と内層材PWIで互いに圧縮量、圧密度が相違しているも圧密加工や木材同士の接着剤による接合によってそれら全体では、元の木材NW、積層木材LWよりも機械的強度が強いものである。特に、圧密加工により意匠材PWD1,PWD2は内層材PWIよりも高圧縮されて細胞内腔の空隙が少なくなり、硬くて強い木質になっている。
このように、積層木材LWの表裏層に配置した木材NWD1,NWD2を加熱圧縮により高圧縮してなる厚みの薄い2枚の意匠材PWD1,PWD2と、積層木材LWの木材NWD1,NWD2間に配置した内部の木材NWIを加熱圧縮してなり意匠材PWD1,PWD2よりも低圧縮で厚みのある1枚以上とした内層材PWIとから構成される本実施の形態の積層塑性加工木材LPWでは、その表裏層の意匠材PWD1,PWD2のみを高圧縮することで、全体では低圧縮率、低比重として軽量性を確保しても、高い表面硬さを得ることができる。
よって、例えば、杉材や檜材等の比重の軽い木材を使用して圧密加工し所定の圧縮率、密度分布の意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIからなる積層塑性加工木材LPWでは、硬質で比重の高い例えば、ミズナラ、ケヤキ等の広葉樹の木材に比べて、表面硬さは同等以上としてもそれら広葉樹の木材より軽くすることが可能である。即ち、軽量性と表面硬度との両立を可能とする。
杉材または檜材等の針葉樹を圧密加工する例で説明すると、積層塑性加工木材LPWの気乾比重を加工前の木材NWの気乾比重の1.2倍以上、1.7倍以下の範囲内にするのが好ましく、より好ましくは、1.3倍以上、1.6倍以下の範囲内である。これにより高圧縮とした意匠材PWD1,PWD2によって高い表面硬度、強度として元の木材の傷付きやすさを解消しつつ、軽量性を確保できる。
特に、意匠材PWD1,PWD2は、加熱圧縮により元の木材NWの気乾比重に対する圧縮率で45%〜65%、好ましくは、50%〜60%の範囲内の圧縮率で高圧縮されたことにより、木材の性質が変化して表面硬度が顕著に増したものである。
こうして表面硬度、強度と軽量性を両立できると、例えば、容易な持ち運びや筆記、カッター等による傷付き難さが必要とされる学校用の学習机等の天板用途等にも好適になり、更に、机等の天板や棚板等の用途としてそれが軽量であれば、天板や棚板等に使用した場合でもそれを支持する脚等の支持部材の設計自由度を高めることも可能となる。
また、こうした高圧縮の厚みの薄い意匠材PWD1,PWD2とその間の低圧縮の厚みの厚い内層材PWIからなる本実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWでは、積層木材LWに対する全体の体積低下や全体比重が高くなることの重量増加が抑えられるから、高圧縮した意匠材PWD1,PWD2により高い表面硬度を確保できるも、軽量であり、また、体積低下を抑えていることで、安価に提供できる。
更に、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWは、その表裏層の意匠材PWD1,PWD2が高密で硬くあるも、それら意匠材PWD1,PWD2間の内層材PWIでは意匠材PWD1,PWD2よりも低密であるから、元の木材NWの軟質な特性により、緩衝機能を有し、小物等の物が衝突したときでも、或いは、壁や床等の物に衝突したときでも、その衝撃を吸収し緩和できる。よって、積層塑性加工木材LPWに衝撃が加わったとしても、衝撃音が少なく、意匠材PWD1,PWD2に傷が付き難いうえ、衝突した相手物もその傷付き、破損等が防止される。更に、例えば、学習机等の天板に使用したときには、筆記音等の吸収効果、防音効果も期待できる。また、表裏層の意匠材PWD1,PWD2を高圧縮で高密とするもその内部の内層材PWIが低圧縮で低密であるから、例えば、天板等の用途として使用した際に脚等の支持部材を取付けるときでも、それを接合する螺子、釘等の接合部材が入りやすいうえ、内層材PWIよりも高密な意匠材PWD1,PWD2によって接合部材の保持力を高くできる。更に、内部の内層材PWIが低密であることで、木口面や木端面側を切断する場合も切断しやすく、切断加工、組付けが容易である。
そして、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWは、木材NW同士を重ね合わせて圧密加工し、また、積層接着したものであり、特に、複数枚の木材NWを互いに特定方向で積層した積層木材LWに対し、表裏層に配置した木材NWD1,NWD2の厚みを高圧縮し、表裏のNWD1,NWD2間に配置した内部の木材NWIを表裏層の木材NWD1,NWD2よりも低圧縮とし、各木材NWの全体の厚みを均一に圧縮するものではなく、表裏層に配置した木材NWD1,NWD2とそれらの間の内層の木材NWIとで圧縮率を相違させている。好ましくは、意匠材PWD1,PWD2の圧縮率が内層材PWIの圧縮率に対し、1.5倍〜5倍の範囲内、より好ましくは、2倍〜4倍の範囲内である。気乾比重でみると、意匠材PWD1,PWD2の気乾比重は、内層材PWIの気乾比重に対し、1.3倍以上、1.8倍以下が好ましく、より好ましくは、1.4倍以上、1.6倍以下の範囲内であるものである。
よって、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWによれば、積層木材LWの表裏層に配置した木材NWD1,NWD2の厚みを高圧縮してなる意匠材PWD1,PWD2によって高い表面硬度、強度を確保できる一方、積層木材LWの表裏層の木材NWD1,NWD2間に配した中間層の木材NWIの厚みを意匠材PWD1,PWD2よりも低圧縮とした内層材PWIにしたことで、加熱圧縮時に積層木材LWの全体厚みに強い圧縮力が掛からないものである。
また、上下方向からの平面的なプレス圧縮で、内部の内層材PWIを低圧縮とする一方、内層材PWIを挟む意匠材PWD1,PWD2を高圧縮とし、表裏のバランスが良いから、加熱圧縮時に特定方向の応力集中、ストレスが入り難いものである。
加えて、圧密加工の加熱圧縮により木材組織を軟化変形できることで、木材NW同士を重ねて加熱圧縮すると、節部Kがあっても、硬い節部Kが、対向する相手材、即ち、別の重ねた木材NWの節のない軟化変形しやすい低比重な柔らかい箇所を押圧し、そこに食い込む。したがって、加熱圧縮したときに節部Kの動きが拘束、規制されない。即ち、木材NWに節部Kが存在しても、それに重ねた対応する相手材の木材組織が軟化変形することで、木目の長さ方向に対して垂直な方向で圧縮力が加えられたときに、節部Kの動きが拘束、規制されない。よって、節部Kに加熱圧縮力に対する応力が生じ難く、節部Kに強い圧縮荷重が掛からない。
つまり、節部Kにおいては、高比重で硬いうえ、年輪線RLと節部Kの繊維方向の相違により圧縮され難く圧縮に強いものであるところ、木材NWに節部Kがあっても、木材NWを重ね合わせて圧密加工するから、木目の長さ方向に対して垂直な方向で圧縮力が加えられたときに、圧縮に強い節部Kが、節部Kのある木材に重ねた別の木材の加熱圧縮により軟化したところを押圧し、その押圧により相手材が軟化変形することで、木目の長さ方向に垂直な方向の圧縮力に対し緩衝されるから、節部Kに無理な圧縮力、ストレスが掛かり難い。
こうして、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWでは、節部Kが存在したとしても、表裏層の意匠材PWD1,PWD2を高圧縮とし、内部の内層材PWIを低圧縮としたことで、積層した木材の内部に強い圧縮力、圧縮ストレスが掛からないことに加え、節部Kのある個所に重ねた相手材の木材組織が軟化変形することで、節部Kに強い圧縮荷重、圧縮ストレスが掛からず節部Kの圧縮応力の発生が少ない。よって、節のある材料を用いても、例えば、木材NWに木目の長さ方向に対し垂直方向にまたは斜めに節部Kが走行している場合でも、加熱圧縮時にそれら節部Kの潰れ、クラック、亀裂等の割れが生じ難いものである。
特に、このように表裏層の意匠材PWD1,PWD2を高圧縮とし、内部層の内層材PWIを低圧縮として内部に圧縮ストレスを掛け難い圧密加工であることに加え、木材NWを積層し圧密加工するものでは、木材NWに節部Kが存在しても、それに重ねた対応する相手材の木材組織の軟化変形によって、節部Kに強い圧縮荷重が掛かり難いから、表裏面側である意匠材PWD1,PWD2の圧縮率を高めても、節部Kが割れに難いものである。よって、節部Kのクラック、亀裂等の割れを生じさせることなく、表面硬度、強度を高めることが可能となる。
また、節部Kの組織は、木材の木表側から木裏側にかけてサイズが縮小する傾向にあるが、意匠材PWD1,PWD2では、木表側の板目面または追柾面側がプレス面とされたものであるから、高圧縮される意匠材PWD1,PWD2に節が存在しても、木目の長さ方向に垂直な方向の圧縮力で、それに重ねる低圧縮の内層材PWIの対応する軟化した箇所を押圧変形しやすい。よって、高圧縮される意匠材PWD1,PWD2に節が存在しても、それに重ねる低圧縮の内層材PWIによって加熱圧縮力による節の動きが拘束され難いいことで、表裏層の意匠材PWD1,PWD2の高圧縮による高い表面硬度、強度と節部Kのクラック、亀裂等の割れが生じ難い意匠面を両立できる。
加えて、本実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWにおいては、各意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIは、互いに木目の長さ方向を一致させて積層されていることから、節のある材料を使用したときでも、加熱圧縮時に積層された対向する相手材の木材組織を節が押圧しやすいから、節部Kにかかる圧縮ストレスを小さくできる。よって、節が多い場合、例えば、10%〜20%の高い占有率で節が存在し、部分的な比重差が大きい場合や、木材の表裏面を貫く節が存在する場合や、直径20mm以上の節が存在する場合であっても、節やその周囲でのクラック、亀裂等の割れが生じ難いものである。
このように節のある材料を使用して圧密加工してなる積層塑性加工木材LPWでは、図1乃至図4に示すように、木材NWの節部Kの硬い箇所が、対向する相手材、即ち、別の重ねた木材NWの節のない軟化変形しやすい柔らかい箇所を押圧したことにより、意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIのうちの対向する面の1か所以上に節部Kによる凸状部Pと節部Kで変形した凹状部Dによる接合面BFを有する。
そして、木材NWに節のある材料を使用して圧密加工したことにより、意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIのうちの対向する面の1か所以上に節部Kによる凸状部Pと節部Kで変形した凹状部Dによる接合面BFを有する積層塑性加工木材LPWでは、節が硬いから、内部抵抗力が高いことで、意匠材PWD1,PWD2に加熱圧縮力を集中させ、意匠材PWD1,PWD2の高密度化、高比重化を可能とし、表面硬度、強度を高めることも可能である。
即ち、意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIのうちの対向する面の1か所以上に節部Kによる凸状部Pと節部Kで変形した凹状部Dによる接合面BFを有する積層塑性加工木材LPWによれば、より高い表面硬度、強度が得られる。よって、筆記やカッター等による浅い細かいな傷も付き難いものになり、そのような傷付きが生じやすい学校用の学童机、家庭用の学習机、オフィスや食卓の机等の天板用途にも好適である。
加えて、節部Kが積層した相手材に食い込むことで接合強度を高めることが可能となり、積層塑性加工木材LPW全体の機械的強度の向上も可能となる。
また、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWは、その表裏面側の意匠材PWD1,PWD2が高密度に圧密化していることによって、周囲環境条件が変化したときの水分の吸放湿が抑制されるから、周囲環境条件が変化しても寸法形状安定性が高いものである。即ち、圧密加工により元の木材から厚みを薄くしても歪みが入り難いものであり、薄い厚みでも歪みが生じ難いものである。よって、総重量が少なく、薄い厚みで軽くても、高い表面硬度、強度が得られる。したがって、天板や棚板等に使用した場合でもそれを支持する脚等の支持部材の設計自由度を高めることが可能となる。
特に、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWの意匠材PWD1,PWD2は、木表側の板目面または追柾面側がプレス面とされた配置である。即ち、積層塑性加工木材LPWの表裏面が木表側の板目面または追柾面であり、1対のプレス盤10A,10Bによる加熱圧縮時に木表側の板目面または追柾面を1対のプレス盤10A,10Bに対向させたものである。したがって、圧縮による歪量、内部抵抗が少ない圧縮方向で圧縮されたものであるから、節が多くても節の潰れ、破損、割れ等が生じ難く、しかも、意匠材PWD1,PWD2に加熱圧縮力をより集中させ、意匠材PWD1,PWD2の表面硬度、強度を高めることが可能となる。また、意匠材PWD1,PWD2の表裏で収縮の異方性がバランスされたものである。よって、加熱圧縮による歪みが入り難く、また、節があっても内部割れが生じ難いものであり、周囲環境条件が変化しても寸法形状安定性が高いものである。更に、内層材PWIよりも高い圧縮密度の意匠材PWD1,PWD2で内層材PWIを平行的に挟んだ複層構造により、機械的にも安定した強度となる。
そして、このように複数枚の木材NWを積層し、それを圧密加工した積層塑性加工木材LPWでは、意匠材PWD1,PWD2の一方や内層材PWIに節のある材料を用いたとしても、意匠材PWD1,PWD2の他方に節のない材料を使用することで使用面の表面意匠性を維持できる。
ここで、本発明者らの実験研究によれば、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWは、意匠材PWD1,PWD2の木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とがなす鋭角側の交差角度である年輪角度θD、及び、内層材PWIの木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面面とがなす鋭角側の交差角度である年輪角度θIが、θD<θIであるものが好ましい。意匠材PWD1,PWD2の木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とがなす鋭角側の交差角度である年輪角度θDと、内層材PWIの木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とがなす鋭角側の交差角度である年輪角度θIとの関係がθD<θIであるものは、意匠材PWD1,PWD2に加熱圧縮力が集中し、意匠材PWD1,PWD2の圧縮変形量が大きいものであるから、高い表面硬度が得られる。また、加熱圧縮時の表裏層の木材NWD1,NWD2の内部抵抗も少なく、加熱圧縮時に生じる内部応力が少ないと共に、内層材PWIに掛かる加熱圧縮力を小さくできるから、節が多く存在する場合、例えば、10%〜20%の高い占有率で節が存在し、部分的な比重差が大きい場合や、木材NWの表裏面を貫く節が存在する場合や、直径20mm以上の節が存在する場合であっても、節やその周囲でのクラック、亀裂等の割れが生じ難いものとなる。
更に、本発明者らの実験研究によれば、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWは、意匠材PWD1,PWD2の木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とがなす鋭角側の交差角度である年輪角度θDが0°<θD≦30°の範囲内、好ましくは、0°<θD≦20°であり、内層材PWIの木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とがなす鋭角側の交差角度である年輪角度θIが5°≦θI≦80°、好ましくは、10°<θD≦70°の範囲内であるものが好ましい。当該範囲内であるものは、意匠材PWD1,PWD2に加熱圧縮力が集中し、意匠材PWD1,PWD2の圧縮変形量が大きいものであるから、高い表面硬度が得られる。特に、全体の比重に比べ表面を高比重にでき、軽量性と表面硬度、強度を両立できる。また、加熱圧縮時の各木材NWの内部抵抗が少なく、加熱圧縮時に生じる内部応力が少ないから、加熱圧縮による年輪線RLの座屈変形が防止されたものであり、クラック、亀裂等の内部割れが生じ難いものである。そして、節が多く存在する場合、例えば、10%〜20%の高い占有率で節が存在し、部分的な比重差が大きい場合や、木材NWの表裏面を貫く節が存在する場合や、直径20mm以上の節が存在する場合であっても、節やその周囲でのクラック、亀裂等の割れが生じ難いものとなる。
なお、年輪角度θD、θIについては、理想的には、節部Kの無い木材に関しては、木口面に表れる全ての年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とがなす交差角度θD、θIに対して該当することになるが、自然物を相手にするものであり、また、節部Kのある木材では節部Kの周囲では年輪線RLの乱れが生じ、例えば、節のない箇所では、早材部及び晩材部からなる1年輪が弧状であるが、節のある個所ではその年輪の流れを変えるように木目の長さ方向に対して略垂直方向に節が走向するから、実用的には、木口面に表れる全ての年輪線RLに対して厳格に上記の角度の条件を満たしていることを要求するものではなく、木口面にはそのような条件を満たしていない年輪線RLが数割存在しても実質的に問題がなく、平均値が上記の角度の条件を満たしていればよい。
ところで、最終製品の平滑性の確保のため、通常、圧密加工後の積層塑性加工木材LPWPの表裏の一方または両方の面を切削加工するところ、本実施の形態の表層側を高圧縮する圧密加工では、表面の切削量が0.5〜1mm単位の違いでも切削した表面硬度、強度に大きく影響することが判明した。
また、意匠材PWD1,PWD2の厚みが少なすぎると、それに重なる内層材PWIに節のある材料を使用したとき、その節部Kの模様が使用面とされる方の意匠材PWD1,PWD2の表面に表出する恐れがある。
そこで、本発明者らの鋭意実験研究によれば、表面意匠性を確保し、かつ、高い表面硬度とする厚みからすれば、好ましくは、意匠材PWD1,PWD2の厚みが、内層材PWIの厚みに対し、0.3〜0.8倍の範囲内、より好ましくは、0.4〜0.6倍の範囲内である。当該範囲内の厚みとするものでは、使用面とされる方の意匠材PWD1,PWD2に重ねた内層材PWIに節がある場合でも、その節及び節周囲の濃色化、黒色化した濃淡模様が使用面とされる方の意匠材PWD1,PWD2の表面に表出しない厚みとなり、表面意匠性が良く、かつ、高い表面強度、硬度が得られる。
更に、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWは、その全体の厚みが、好ましくは、15mm以上、40mm以下、より好ましくは、18mm〜35mmの範囲内であり、意匠材PWD1,PWD2の厚みが、好ましくは、1.5mm以上、10mm以下、より好ましくは、1.5mm以上、8mm以下の範囲内であり、内層材PWIの厚みが、好ましくは、6mm以上、15mm以下、より好ましくは、8mm以上、13mm以下の範囲内である。意匠材PWD1,PWD2の厚みが当該範囲内であれば、使用面とされる方の意匠材PWD1,PWD2に重ねた内層材PWIに節が存在しても、その節部Kの模様が使用面とされる方の意匠材PWD1,PWD2の表面に表出することない厚みとなり、良好な意匠表面で、かつ、高い表面強度、硬度が得られる。特に、杉材、檜材等の針葉樹の使用により薄い全体厚みで軽量性が確保される。よって、学校用の学童机やオフィス、家庭の食卓の机等の天板や棚板等に適用したときでもそれを支える脚等の支持部材の設計自由度を高くできる。
更に、意匠材PWD1,PWD2の高圧縮な圧密加工により周囲環境条件が変化しても吸放湿し難いから、厚みが薄くてもかし難く寸法形状安定性が高いものである。
ここで、檜材からなる厚みが12〜15mmの範囲内である木材NWを使用し、元の木材NWの気乾比重に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率で圧縮された表裏の2枚の意匠材PWD1,PWD2と、元の木材NWの気乾比重に対する圧縮率で10%〜40%の範囲内の圧縮率で圧縮された1枚の内層材PWIとが積層接合した積層塑性加工木材LPWPを作製し、その表裏面側を2mm〜3mm切削して積層塑性加工木材LPWを形成し、その積層塑性加工木材LPWについてブリネル硬さHBを測定した。積層塑性加工木材LPWは、使用する木材の厚みや、切削厚みを相違させて、厚みや圧縮率が相違する複数枚を作製しそれらのブリネル硬さHBを測定した。
具体的には、ブリネル硬さHBは、JIS Z 2101の木材の試験方法に準拠し、作製した積層塑性加工木材LPWに対し、その一方の意匠材PWD1,PWD2側から直径10mmの鋼球を毎分0.5mmの速度で深さ約0.32(1/π)mmまで圧入し、その時の荷重を接触面積で割ることにより求めたものである。なお、ブリネル硬さは、各木材の12個所で測定した平均値のうち最も高いブリネル硬さHBの測定値を表1に示した。
また、比較のために、現行の学校用の学習机の天板の表層に用いられているゴム集成材及び未圧縮の檜材、ナラ材についても同様にブリネル硬さHBを測定した。
これらブリネル硬さHBの測定結果を表1に示す。
Figure 0006944225
表1に示すように、所定の圧密加工をした積層塑性加工木材LPWでは、ゴム集成材、未圧縮の檜材及びナラ材よりも比重が小さく軽量であるにも関わらず、最もブリネル硬さが硬いものとなった。よって、この積層塑性加工木材LPWによれば、軽量性及び高い表面硬度、強度とが両立し、高い表面硬度、強度によって筆記、カッター等による傷付きも生じ難く、そのうえ、軽量であるから、持ち運びが容易で、更に、机等の天板や棚板等を支持する脚の設計自由度を高めることも可能である。したがって、容易な持ち運びや筆記、カッター等による傷付き難さが必要とされる学校用の学習机等の天板用途等にも好適である。また、ゴム集成材及び未圧縮の檜材、ナラ材は天然の木材であるから、硬度、強度等の特性や品質のばらつきも大きくなるのに対し、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWでは圧密加工により硬度、強度を高くするものであるから、硬度・強度等の特性や品質のばらつきが抑えられ、商品において硬度、強度不足による不良品の発生も少なく、天板等としての商品価値を高くできるものである。
こうして、本実施の形態の積層塑性加工木材LPWは、ブリネル硬さが15N以上、30N以下、好ましくは、18N以上、30N以下、より好ましくは、18N以上、25N以下の範囲内である。当該範囲内であれば、筆記やカッター等による浅い細かい傷が付き難い、即ち、傷痕が付き難い高い表面硬さ、強度であり、かつ、節があっても割れ難いいものとなる。そして、このような圧密加工で木材の表面硬度を高めたものでは、木材本来の木目、温かみ等の質感も有するものであり、学校用の学童机やオフィス、食卓の机等の天板にも好適である。
以上、説明してきたように、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWは、3枚以上の木材NWをその木目の長さ方向に対して垂直方向に積層し、木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により圧密加工し、かつ、一体に接合してなる積層塑性加工木材LPWであって、表裏層に位置し加熱圧縮により高圧縮された厚みの薄い2枚の意匠材PWD1,PWD2と、表裏層の2枚の意匠材PWD1,PWD2間に位置し意匠材PWD1,PWD2よりも低圧縮とされた厚みのある1枚以上の内層材PWIとを具備するものである。
即ち、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWは、木材NWの木目の長さ方向に対して垂直方向に木材NWを複数枚積層してなる積層木材LWを、木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により塑性加工し、また、一体に接合したものであり、加熱圧縮による圧縮量が大きくて厚みが小さい2枚の意匠材PWD1,PWD2が表裏層に配設し、2枚の意匠材PWD1,PWD2よりも加熱圧縮による圧縮量が小さくて厚みが大きい1枚以上の内層材PWIが2枚の意匠材PWD1,PWD2間に配設したものである。
したがって、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWによれば、表裏の意匠面を形成する意匠材PWD1,PWD2を高圧縮とする一方、意匠材PWD1,PWD2間の内層材PWIは低圧縮とした塑性加工であり、元の木材NWよりも機械的強度を強くでき、また、表面硬度を高めることができるうえ、表裏の意匠材PWD1,PWD2以外の内部の内層材PWIでは、意匠材PWD1,PWD2よりも低圧縮であるから、また、表裏で圧縮率をバランスしていることで圧縮による歪みが入り難いから、節のある材料を用いても、その節には強い圧縮力が掛かり難いものである。特に、木材NWを重ねた積層木材LWの塑性加工であり、木材NWに節があり部分的に比重が異なる硬い箇所があっても、木材NW同士を重ねて加熱圧縮するものでは、硬い節の箇所を、加熱圧縮により軟化し硬い節の押圧により変形可能な低比重な箇所で受けることができるから、節に過剰な圧縮応力、内部応力が掛かり難いものである。よって、節があっても、その節部Kにクラック、亀裂等の割れが生じ難いものである。また、意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIとの3枚以上の木材の積層接合であり、内層材PWIや一方の意匠材PWD1,PWD2に節のある材料を用いたとしても、他方の意匠材PWD1,PWD2に節のない材料を使用すれば使用面では意匠性を維持することが可能である。
加えて、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWによれば、複数枚の木材NWを積層、圧密加工して1枚の厚みを出すものであり、原材料の各1枚の製材の厚みは薄くてもよいから、圧密加工前の乾燥工程での乾燥時間の短縮化が可能であり、乾燥による負荷を少なくできる。よって、節がある材料を使用したときでも、乾燥による節割れ、節抜けを生じ難くでき、歩留まりの向上を可能とする。
加えて、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWによれば、意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIは互いに一体に接合しているから、製品化後の膨張収縮による歪み、反りの発生による接合面での剥離を防止できる。
こうして、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWによれば、意匠材PWD1,PWD2や内層材PWIに節があってもその節部Kにクラック、亀裂等の割れが生じ難いものであり、かつ、意匠性を両立させることができ、節のある材料の有効活用を図ることができる。
特に、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWによれば、意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIは、互いに木目の長さ方向を一致させて積層されていることから、節のある材料を使用したときでも、加熱圧縮時に積層された対向する相手材の木材組織を節が押圧しやすく、節に圧縮ストレスが掛かり難い。よって、節が多い場合、例えば、10%〜20%の高い占有率で節が存在し、部分的な比重差が大きい場合や、木材の表裏面を貫く節が存在する場合や、直径20mm以上の節が存在する場合であっても、節やその周囲でのクラック、亀裂等の割れを生じさせ難いものである。したがって、塑性加工時の更なる歩留りの向上を可能とする。
また、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWにおいて、各意匠材PWD1,PWD2と内層材PWIは、意匠材PWD1,PWD2の木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の年輪角度θDと、内層材PWIの木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の角度θIとが、θD<θIであるものは、意匠材PWD1,PWD2の圧縮変形量が大きいものであり、加熱圧縮時の内部応力が少ないものである。よって、圧縮による歪みも少なく、また、節があってもクラック、亀裂等の割れを生じることなく、高い表面硬度が得られる。
更に、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWにおいて、各意匠材PWD1,PWD2は、その木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の年輪角度θDが0°<θD≦30°であり、1枚または2枚以上の各内層材PWIは、その木口面に表れる年輪線RLと木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の年輪角度θIが5°≦θI≦80°であるものは、加熱圧縮による年輪の座屈変形が少ないものである。よって、節が存在しても木材内部の割れが生じ難いものであり、また、歪み等も入り難いものである。したがって、品質の安定化を可能とする。
加えて、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWによれば、各意匠材PWD1,PWD2は、木表側の板目面または追柾面側がプレス面とされた配置であるから、圧縮による歪量、内部抵抗が少ない圧縮方向で圧縮されたものである。また、積層塑性加工木材LPWの表裏面に各意匠材PWD1,PWD2の木表側の板目面または追柾面がくるから、収縮の異方性がバランスされたものである。よって、節があっても内部割れが生じ難いものであり、かつ、寸法形状安定性も高いものである。
そして、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材において、その気乾比重が元の木材の気乾比重の1.2倍以上、1.7倍以下であれば、表面硬度、強度と軽量性との両立を可能とする。
特に、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWによれば、意匠材PWD1,PWD2は、加熱圧縮により元の木材NWの気乾比重に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率であり、内層材PWIは、加熱圧縮により元の木材NWの気乾比重に対する圧縮率で10%〜40%の範囲内の圧縮率であるから、針葉樹を使用して軽量としても高い表面硬度が得られる。よって、軽量性と高い表面硬度とを両立できる。
また、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWにおいて、意匠材PWD1,PWD2の厚みが、内層材PWIの厚みの0.3〜0.8倍の範囲内であるものでは、使用面側とする意匠材PWD1,PWD2の一方に重ねた内層材PWIに節部Kがある場合でも、その節及び節周囲の濃色化、黒色化した模様が使用面側とする意匠材PWD1,PWD2に表出しない厚みであり、また、表面硬度も高くできる。よって、表面硬度・強度と表面意匠性を両立できる。
更に、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWにおいて、その全体の厚みが15mm以上、40mm以下の範囲内であり、意匠材PWD1,PWD2の厚みが1.5mm以上、10mm以下の範囲内であり、内層材PWIの厚みが、6mm以上、15mm以下の範囲内であるものでは、使用面側とする意匠材PWD1,PWD2の一方に重ねた内層材PWIに節部Kがある場合でも、その節及び節周囲の濃色化、黒色化した模様が使用面側とする意匠材PWD1,PWD2に表出しない厚みであり、かつ、薄い全体厚みで軽量とするも、高い表面硬度が確保される。よって、表面硬度・強度、表面意匠性及び軽量性を両立できる。
そして、上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWにおいて、ブリネル硬さが15N以上、30N以下の範囲内であるものでは、筆記やカッター等による浅い細かい傷が付き難い表面硬さであるから、学校用の学童机、家庭用の学習机、オフィスの仕事机、食卓の机等の天板にも好適である。
上記実施の形態に係る積層塑性加工木材LPWにおいて、意匠材PWD1,PWD2及び内層材PWIのうちの対向する面の1か所以上に節部Kによる凸状部Pと節部Kで変形した凹状部Dによる接合面BFを有するものは、節があってもその周囲の木材組織が軟化変形することより節の動きが規制、拘束されず、節部Kにクラック、亀裂等の割れが入ることなく圧密加工したものである。したがって、節のある材料の使用により安価なものとなる。また、節がある木材では、圧縮し難く抵抗するから、表面硬度を高めることも可能となる。
ところで、所定の幅広や長尺の天板や棚板等の製品を形成する場合にあっては、複数の積層塑性加工木材LPWをそれら木目の長さ方向を並行にして、その厚み方向に対して垂直な幅方向に、即ち、横方向に連接し、横継ぎ接合して所定の幅寸法としたり、複数の積層塑性加工木材LPWをその木目の長さ方向に、即ち、縦方向に連接し、縦継ぎ接合して所定の長さ寸法としたりすることが可能である。このとき、加工前の積層木材LWを木目の長さ方向に対して直角な幅方向に複数枚横接ぎし、及び/または、木目の長さ方向に複数枚縦接ぎして圧密加工してもよい。積層塑性加工木材LPWでは、高圧縮に圧密加工した意匠材PWD1,PWD2の存在によって周囲環境条件が変化したときの吸放湿特性、即ち、膨張収縮への変化が少なく寸法形状安定性があるから、複数の積層塑性加工木材LPWを横継ぎや縦接ぎ接合しても、周囲環境条件の変化によってその接合面に負荷が掛かかり割れや歪み等が生じ難いものである。また、周囲環境条件の変化によって大きな応力が生じ難いから、節部Kが存在する場合であっても、木材割れや歪み等が生じ難いものである。
ところで、節及びその周囲には豊富な樹脂分が存在することで、そこに過剰な加熱圧縮力が加えられた場合には、ヤニが析出する恐れがあるが、上記実施の形態の積層塑性加工木材LPWによれば、節部Kに過剰なストレスが入り難いことで、節部Kからの多量のヤニの析出が抑えられる。よって、節部Kがあっても、加熱圧縮で使用するプレス盤10等に節部Kからのヤニが接着して1対のプレス盤10を汚染する恐れもなく、圧密加工後に積層塑性加工木材LPWが1対のプレス盤10から剥がれなくなる事態が生じることもない。また、節部Kが高圧縮されるものでもないから、製品化後に周囲環境条件が変化した際に節部Kからヤニが多量に析出して商品価値を低下させるようなこともない。
なお、上記実施の形態では、上プレス盤10A及び下プレス盤10Bによる面接触で加熱圧縮し、密閉状態の内部空間ISに保持された木材の圧密化の固定では、熱効率よく圧縮変形して圧縮後の戻りも少ないから、安定して高品質の製品を提供できる。
しかし、本発明を実施する場合には、圧密加工は上述した製造方法に限定されることなく、例えば、圧縮ローラや圧延ロールを用いた製造であってもよい。
そして、本実施の形態の塑性加工木材PWは、高い表面硬度、強度であるから、耐摩耗性、耐衝撃性も高く、天板や棚板以外の用途にも好適である。即ち、学校用の学習机、学童机、ダイニングテーブル等の机の天板や棚板に限らず、例えば、家具、台所板、階段板、床、デッキ、腰板等に適用することができる。
なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
LPW 積層塑性加工木材
NWD1,NWD2,NWI1,NWI2,NWI3 加工前の木材
PWD1,PWD2 意匠材
PWI1,PWI2,PWI3 内層材
RL 年輪線
凸状部P
凹状部Q
接合面BF

Claims (9)

  1. 3枚以上の木材をその木目の長さ方向に対して垂直方向に積層し、前記木目の長さ方向に対して垂直方向の加熱圧縮により圧密加工し、かつ、一体に接合してなる積層塑性加工木材であって、
    前記加熱圧縮により高圧縮された厚みの薄い表裏層の2枚の意匠材と、
    前記2枚の意匠材間に挟まれ前記意匠材よりも低圧縮とされた厚みのある1枚以上の内層材
    を具備し
    前記意匠材は、その厚みが、前記内層材の厚みに対し、0.3〜0.8倍の範囲内であり、前記加熱圧縮により元の木材の気乾比重に対する圧縮率で45%〜65%の範囲内の圧縮率であり、
    前記内層材は、前記加熱圧縮により元の木材の気乾比重に対する圧縮率で10%〜40%の範囲内の圧縮率であることを特徴とする積層塑性加工木材。
  2. 前記意匠材及び前記内層材は、互いに前記木目の長さ方向を一致させて積層されていることを特徴とする請求項1に記載の積層塑性加工木材。
  3. 前記各意匠材は、その木表側の板目面または追柾面側がプレス面とされた配置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層塑性加工木材。
  4. 前記積層塑性加工木材は、その気乾比重が元の木材の気乾比重の1.2倍以上、1.7倍以下の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の積層塑性加工木材。
  5. 前記意匠材と前記内層材とは、前記意匠材の木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の年輪角度θDと、前記内層材の木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面面とが交わる鋭角側の年輪角度θIとが、θD<θIであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の積層塑性加工木材。
  6. 前記意匠材は、その木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面とが交わる鋭角側の年輪角度θDが0°<θD≦30°であり、前記内層材は、その木口面に表れる年輪線と木裏側の板目面または追柾面面とが交わる鋭角側の年輪角度θIが5°≦θI≦80°であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の積層塑性加工木材。
  7. 前記積層塑性加工木材は、その全体の厚みが15mm以上、40mm以下の範囲内であり、前記意匠材の厚みが1.5mm以上、10mm以下の範囲内であり、前記1枚の内層材または前記2枚以上の各内層材の厚みが、6mm以上、15mm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の積層塑性加工木材。
  8. 前記積層塑性加工木材は、ブリネル硬さが15N以上、30N以下の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1つに記載の積層塑性加工木材。
  9. 前記意匠材及び前記内層材のうちの対向する面の1か所以上に節部による凸状部と前記節部の押圧で変形した凹状部による接合面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1つに記載の積層塑性加工木材。
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