近年、10GHzを超えるような、より周波数の高い信号を伝送することが可能な配線基板が要求されている。
そのためには、接地配線を、インダクタンスをより低くし、抵抗の低い接地性とする必要があることから、接地配線の厚みを厚くしなければならない。しかし、その場合、接地配線の厚さに応じて信号線路の厚さも厚くなるため、信号線路の高周波信号の伝送性が低くなるという問題があった。
つまり、接地配線の厚みを厚くするためには、例えば、スクリーン印刷で用いる印刷製版のメッシュの線径を太くして接地配線となる金属ペーストの印刷厚みを厚くする必要があり、このメッシュの線径の増大に応じて印刷された金属ペーストの表面にメッシュ跡が残るとともに、接地配線と同時に印刷される信号線路も、その表面が粗くなって、信号線路の伝送性が低くなってしまう。特に、例えば周波数が10GHzを超えるような高周波信号は、いわゆる表皮効果により主として信号線路の非常に薄い表面部分のみを伝送されるため、その伝送経路である表面部分が粗くなることに起因して不要な反射等が生じやすくなり、伝送性の劣化が顕著となる。
また、印刷厚みが厚くなると金属ペーストの自重により、信号線路の外縁よりペーストが外側にはみ出して、外縁が更に粗くなり、伝送性の劣化が顕著となる。
本発明は上述の問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、接地配線を、低インダクタンス、低抵抗での接地とすることが可能で、かつ信号線路において、高周波信号の伝送特性に優れた配線基板およびそれを用いる電子装置を提供することにある。
本発明の配線基板は、互いに積層された複数の絶縁層を有する絶縁基板と、該絶縁基板の内部に設けられており、積層方向において対向する上側信号線路および下側信号線路を有する1対の信号線路と、該1対の信号線路を積層方向と直交する方向の両側から挟んでなる1対の接地配線とを含み、積層方向における断面視において、前記1対の接地配線の上端の高さが前記上側信号線路の上端の高さ位置に対応しており、前記1対の接地配線の下端の高さが前記下側信号線路の下端の高さ位置に対応していることを特徴とするものである。
また、本発明の配線基板は好ましくは、前記1対の信号線路および前記1対の接地配線が、1つの絶縁層内に配置されることを特徴とするものである。
また、本発明の配線基板は好ましくは、前記1対の信号線路が、前記隣接する絶縁層のそれぞれに被着形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の配線基板は好ましくは、前記1対の信号線路が、積層方向における断面視で、間隙を有して配置されていることを特徴とするものである。
また、本発明の配線基板は好ましくは、前記1対の信号線路の積層方向におけるそれぞれの高さが、同一であることを特徴とするものである。
また、本発明の配線基板は好ましくは、前記1対の信号線路が、平面透視で、互いの外縁が重なるよう配置されていることを特徴とするものである。
また、本発明の配線基板は好ましくは、前記1対の信号線路が、互いに絶対値が同じな逆電位の信号が伝送されることを特徴とするものである。
また、本発明の配線基板は好ましくは、積層方向における断面視で、前記1対の信号線路と前記1対の接地配線を含む絶縁層内において、前記1対の接地配線と、前記接地配線の上端同士を結んだ線と、前記接地配線の下端同士を結んだ線とで囲まれる領域の絶縁体と、前記1対の接地配線に隣接する絶縁体が、組成が異なることを特徴とするものである。
また、本発明の電子部品装置は好ましくは、前記配線基板と、該配線基板に搭載される電子部品とを備えていることを特徴とするものである。
本発明の配線基板によれば、複数の絶縁層を積層してなる絶縁基板の内部に、積層方向に対向する1対の信号線路と、1対の信号線路を積層方向と直交する方向の両側から挟んでなる1対の接地配線を有する配線基板であって、積層方向における断面視において、1対の信号線路が、1対の接地配線と、前記接地配線の上端同士を結んだ線と、前記接地配線の下端同士を結んだ線とで囲まれる領域内に配置されていることから、接地配線の厚さ(配線基板の積層方向に対する厚み、以下同意)に対向して配置される1対の信号線路は、それぞれの厚さを接地配線よりも薄くすることができる。
そのため、信号線路を薄くすることができることから、金属ペーストの印刷厚みを薄くすることができる。従って、メッシュ跡やペーストが外縁より外側にはみ出すことが抑制され、表面が粗くなることを抑制できる。それゆえ、表面がスムーズとなり、高周波信号の伝送特性を向上させることができる。
また、信号線路は上下1対にしたため、他からのノイズが入ってきても、弊害が起きにくい。
また、信号線路の厚さを考慮することなく接地配線の厚さを厚くすることができることから、接地配線の厚みを、インダクタンスが低く、抵抗の低い接地性とするのに十分な厚みとすることができる。
さらに、接地性の高い1対の接地配線と、前記接地配線の上端同士を結んだ線と、前記接地配線の下端同士を結んだ線とで囲まれる領域内に信号線路が配置されるため、外部のノイズは1対の接地配線で、領域内への通過が阻害され、信号線路に外部のノイズが入り込むことが抑制される。
したがって、接地配線を、低インダクタンス、低抵抗での接地とすることが可能で、かつ信号線路において、高周波信号の伝送特性に優れた配線基板を提供することができる。
また、本発明の配線基板によれば、1対の信号線路および1対の接地配線が、1つの絶縁層内に配置されることから、互いに電磁的な結合の強い差動伝送方式で信号を伝送する、1対の信号線路の形成がより容易になる。そのため、外部からのノイズが1対の信号線路に重畳して影響を与えたとしても、1対の信号線路において、同時に同じ電位が変動するため、1対の信号線路の電圧の差に変化が生じない。つまりノイズは1対の信号線路の間で相殺(キャンセル)されてノイズと認識されなくなり、信号はより確実、正確に伝送される。したがって、外部のノイズに強い、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板を提供できる。
さらに、接地配線や信号線路等が、1つの絶縁層内に配置されるため、配線基板を、セラミックグリーンシート積層法により形成されるセラミック多層基板や、ビルドアップ法により形成される多層プリント配線板等の形態で製作する際に、接地配線や信号線路の形成が容易である。そのため、配線基板としての生産性を高める上で有効である。
また、本発明の配線基板によれば、1対の信号線路が、隣接する絶縁層のそれぞれに被着形成されていることから、信号線路を他の絶縁層内に配置する必要がなく、より小型化に優れた配線基板を提供できる。
さらに、隣接する絶縁層のそれぞれに、別個に信号線路を形成してから位置合わせすればよいため、例えば、1つの絶縁層の両面に、正確に対向し合うように1対の信号線路を形成する必要がなく、生産性や精度を向上させることが容易な、配線基板を提供できる。
さらにまた、本発明の配線基板によれば、1対の信号線路が、積層方向における断面視で、間隙を有して配置されていることから、例えば間隙の距離を一定に確保することにより1対の信号線路の間の電磁的な結合(リアクタンス)を安定させることができる。そのため、1対の信号線路のインピーダンスの安定した、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板を提供できる。
また、間隙により一対の信号線路が互いに有効に電気的に絶縁され、電気的短絡等の不具合が抑制されるため、電気的信頼性が向上する。
さらにまた、本発明の配線基板よれば、1対の信号線路の積層方向におけるそれぞれの高さが、同一であることから、対向し合う信号線路において、信号の伝送特性が同じとなり、よりインピーダンスの安定した、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板を提供できる。
さらにまた、本発明の配線基板によれば、1対の信号線路が、平面透視で、互いの外縁が重なるよう配置されていることから、対向し合う信号線路において信号の伝送特性が同じとなり、よりインピーダンスの安定した、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板を提供できる。
さらにまた、本発明の配線基板によれば、1対の信号線路が、互いに絶対値が同じな逆電位の信号が伝送されることから、例えば、隣接する絶縁層の間に配置された1対の信号線路において、絶対値が同じで電位が逆になるように分かれて信号が伝送される。そのため、差動伝送方式による信号の伝送がより有効に行なわれ、1つの信号線路で必要な信号の立ち上がり/立ち下がり幅(電位差、電圧)が1/2以下になり、信号の立ち上がり/立ち下がりに要する時間が1/2以下になり、電力消費の少ない、信号をより高周波で作動させることができるため、高周波信号の伝送特性に優れた配線基板を提供できる。
さらにまた、本発明の配線基板によれば、積層方向における断面視で、前記1対の信号配線と前記1対の接地配線を含む絶縁層内において、前記1対の接地配線で囲まれる領域の絶縁体と、前記1対の接地配線に隣接する絶縁体が、組成が異なることを特徴とすることから、1対の信号線路がお互いに短絡することはより確実に防止され、お互いの距離が一定に保たれた、よりインピーダンスの安定した、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板を提供できる。
また、前記1対の信号配線と前記1対の接地配線を含む絶縁層内において、前記1対の接地配線で囲まれる領域の絶縁体の誘電率を始めとする電気特性を前記1対の接地配線に隣接する絶縁体の電気特性と合わす必要がなく、両領域でそれぞれの特性を持った回路を形成できる。
さらにまた、本発明の電子部品装置は好ましくは、前記配線基板と、該配線基板に搭載される電子部品とを備えていることから、よりインピーダンスの安定した、より高周波信号の伝送特性に優れた電子装置を提供することができる。
以下、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す断面図であり、同図において、1は複数の絶縁層1aを積層して成る絶縁基板、2は信号線路、3は接地配線である。これら絶縁基板1、信号線路2、接地配線3により配線基板9が基本的に構成されている。なお、以降の図において、同じ構造のものについては、同番号を付与する。また、各図は、本発明を概念的に示すものであり、一部拡大等して記載している。
絶縁基板1は、酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミック焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体等のセラミック焼結体、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の有機樹脂、または酸化アルミニウム等の無機粉末をエポキシ樹脂等の有機樹脂で結合してなる複合材料等の電気絶縁材料から成る絶縁層が複数積層されて形成されている。
絶縁基板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る絶縁層が複数積層されて成る場合には以下のようにして作製される。まず、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の原料粉末に適当な有機バインダー、溶剤を添加混合して泥漿状のセラミックスラリーを作製し、このセラミックスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法等のシート成形技術を採用してシート状となすことによって、セラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得る。しかる後、セラミックグリーンシートを所定の順に上下に積層して生セラミック成形体と成す。この生セラミック成形体を還元雰囲気中で約1600℃の高温で焼成することによって、絶縁基板1が製作される。
また、例えばエポキシ樹脂から成る場合であれば、ガラス布基材に未硬化のエポキシ樹脂を含浸させた後、切断、積層、加熱硬化等の加工を施すことにより作製される。
また、絶縁基板1の内部には、積層方向に対向する1対の信号線路2が配置されている。
信号線路2は、半導体素子や発振素子等の電子部品等に対して送受信される電気信号を伝送する機能をなす。
信号線路2を伝送される信号は、例えば、配線基板9に電子部品(図示せず)を搭載した場合に、その電子部品と配線基板が実装される外部の電気回路基板の回路との間で授受される信号であり、例えば10GHz帯といった高周波信号が伝送される。
他方、電子部品としては、IC、LSI等の半導体集積回路素子、LD(半導体レーザ)、LED(発光ダイオード)、PD(フォトダイオード)、CCD(電荷結合素子)、ラインセンサ、イメージセンサ等の光半導体素子、MEMS(Micro Electro Mechanical System)用半導体素子、圧電振動子、水晶振動子等の振動子、容量素子その他の種々の電子部品が用いられる。
例えば、信号線路2の一部を、絶縁基板1に形成した貫通導体等(図示せず)を介して絶縁基板1の主面等の露出面に導出させるとともに、絶縁基板1の主面に電子部品を搭載し、電子部品の電極(図示せず)を信号線路2の導出部分にボンディングワイヤや半田等の導電性接続材(図示せず)を介して電気的に接続することにより、信号線路2と電子部品とを電気的に接続させることができる。
なお、信号線路2は、絶縁基板1の内部だけでなく、絶縁基板1の主面(上面や下面)や側面等に設けられていても構わない。
また、絶縁基板1の内部には、信号線路2を積層方向と直交する方向の両側から挟んでなる1対の接地配線3が形成されている。
接地配線3は、例えば、電子部品の接地電極(図示せず)と電気的に接続されて電子部品の接地を確保できるほか、外部からのノイズを防ぐと同時に、信号線路2のインピーダンスを制御する機能等を有している。
なお、信号線路2および接地配線3は、タングステンやモリブデン、マンガン、銅、銀、パラジウム、金、白金等の金属材料により形成される。
信号線路2および接地配線3は、例えばタングステンから成る場合であれば、タングステンの粉末に適当な無機フィラー粉末、有機溶剤、バインダー等を添加して金属ペーストを作製し、その金属ペーストを絶縁基板1(絶縁層)となるセラミックグリーンシートに所定の信号線路2や接地配線3のパターンで、スクリーン印刷法等の手段で印刷しておくことにより形成される。
また、金属材料は、メタライズ層の形態ではなく、めっき層や蒸着層、金属箔等の形態で所定パターンに形成されたものであってもよい。例えば、エポキシ樹脂基板の表面に銅箔が取着された銅張り基板に、電解めっき法や無電解めっき法で形成された銅めっき層でもよい。
また、1対の信号配線2は、積層方向(絶縁層が積層される方向)における断面視において、1対の接地配線3と、接地配線3の上端同士を結んだ線と、接地配線3の下端同士を結んだ線とで囲まれる領域内に配置されている。
本発明の配線基板9において、複数の絶縁層1aを積層してなる絶縁基板1の内部に、積層方向に対向する1対の信号線路2と、1対の信号線路2を積層方向と直交する方向の両側から挟んでなる1対の接地配線3を有し、積層方向における断面視において、1対の信号線路2が、1対の接地配線3と、接地配線3の上端同士を結んだ線と、接地配線3の下端同士を結んだ線とで囲まれる領域内に配置されることが重要である。
このことにより、接地配線3の厚さに相当する範囲内に、積層方向(接地配線の厚さ方向)に対向して配置される1対の信号線路2は、それぞれの厚さを接地配線3よりも薄くすることができる。
そのため、信号線路2を薄くすることができることから、金属ペーストの印刷厚みを薄くすることができる。従って、メッシュ跡やペーストが外縁より外側にはみ出すことが抑制され、表面が粗くなることを抑制できる。それゆえ、表面がスムーズとなり、高周波信号の伝送特性を向上させることができる。
また、信号線路2は上下1対にしたため、他からのノイズが入ってきても、弊害が起きにくい。
また、信号線路2の厚さを考慮することなく接地配線3の厚さを厚くすることができるので、インダクタンスが低く、抵抗の低い接地性をもたすのに十分な厚みを接地配線3で確保することができる。
したがって、接地配線3が、低インダクタンス、低抵抗での接地とすることが可能で、かつ信号線路2において、高周波信号の伝送特性に優れた配線基板9を提供することができる。
この場合、並設されている1対の接地配線3によって、1対の信号線路2に他の信号線路からノイズが入り込むのを有効に防止することができるので、ノイズに起因する伝送特性の劣化も有効に防止される。
なお、1対の信号線路2の厚みを薄くすることによりその積層方向に対する縦断面積は減少するが、高周波信号は主に信号線路の表面部分を伝送されるので、その表面部分を滑らかにして不要な反射等を防ぐことにより伝送特性を大きく向上させることができる。
積層方向に対する縦断面視において、1対の接地配線3の間に、積層方向に対向する1対の信号線路2を配置させるには、例えば、次のような方法を用いることができる。
すなわち、複数のセラミックグリーンシートに接地配線3が挿入される平行な線状、長方形状の貫通孔(図示せず)を形成し、その内部に接地配線3となる金属ペーストを印刷方法で挿入する。この場合、貫通孔の位置は複数のセラミックグリーンシートで同じにしておく。そして、その複数のセラミックグリーンシートの中の1対のセラミックグリーンシートに、信号線路2となる金属ペーストをセラミックグリーンシートの厚みよりも厚みを薄く印刷する。印刷位置およびパターンは1対のセラミックグリーンシートで同じにしておく。その後、複数のセラミックグリーンシートを、1対の線路導体同士が対向するように積層し、焼成することにより、1対の信号線路2が、1対の接地配線3が挟む領域内に配置される。
なお、1対の信号線路2が印刷された1対のセラミックグリーンシートの間に、接地導体3となる金属ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを挟んで積層してもよい。
この場合、1対の信号線路2となる金属ペーストは、印刷厚みが薄いので、印刷製版に用いるメッシュの線形を微細なものとすることができ、これに応じて、印刷された金属ペーストの表面を滑らかなものとすることができる。また、印刷される金属ペーストの厚みが薄いので、金属ペーストが自重で外側に広がるといった不都合も有効に防止される。
一方、接地配線3は、その厚みが厚いため、インダクタンスが低く、抵抗の低い接地性を付与することができる。
なお、本発明において、接地配線3は上記のように金属ペースト等にてスクリーン印刷法等の手段で印刷しておくことにより形成することもできるが、それ以外として、接地配線3を、絶縁基体1aに貫通孔を設け、その貫通孔に導電性の材料を充填させたいわゆる貫通導体として形成することもできる(図示せず)。
この場合において、貫通導体は一般的に知られている方法にて作製することができ、例えば、絶縁基体1aに所定の形状の打ち抜き加工を行い、貫通孔を作製した後、スクリーン印刷法によりW、Mo、Mn、Cu、Ag、Pd、Au、Ptなどの導体ペーストを貫通孔に充填することにより作製できる。
なお、接地配線3を貫通導体により作製する場合において、多数の貫通導体を配置する場合においては、その貫通導体同士の距離を、1/4λ以下とするのが好ましい。
そして、このような配線基板9は、例えば、絶縁基板1の主面に電子部品を搭載し、電子部品の電極(図示せず)を信号線路2の導出部分にボンディングワイヤや半田等の導電性接続材(図示せず)を介して電気的に接続し、必要に応じて電子部品を蓋体や封止用樹脂等で封止することにより、信号線路2を介して電子部品と外部の電気回路との間で(高周波の)電気信号の授受が可能な電子装置となる。
例えば、電子部品が絶縁基板1の主面に電子部品を搭載し、その電子部品を、蓋体を用いて気密封止する場合であれば、絶縁基板1の電子部品が搭載されている領域を覆うような蓋体(図示せず)を準備し、蓋体を絶縁基板1の主面に取着して、絶縁基板1と蓋体とで形成される容器の内部に電子部品を封止することにより電子装置が形成される。
蓋体は、鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属材料や、酸化アルミニウム質焼結体等のセラミック材料、樹脂、ガラス等により形成される。また、蓋体の絶縁基板1に対する取着は、ろう材や樹脂、ガラス等の接合材を介した接合、溶接等の手段により行なわれる。
このようにして得られた電子装置は、各種センサ装置,携帯電話,コンピュータ,ルータ等の電子機器に組み込まれる部品として使用される。
図2は本発明の配線基板の実施の形態の他の一例を示す断面図であり、同図において、1対の信号線路2および1対の接地配線3が、1つの絶縁層1a内に配置されている。本発明において、図2のように信号線路2と同じ層間に、信号線路2を挟むように接地配線3を形成する場合、いわゆるコプレナー伝送路等を形成したりするのに用いることができる。この場合においては、次のような効果を得ることができる。
すなわち、信号線路2を他の絶縁層1a内に配置する必要がなく、より小型化に優れた配線基板9を提供できる。
また、信号線路2は、絶縁層1a内に位置するため、隣接する他の絶縁層1aにより外部の電磁的な影響が減少し、配線基板内あるいは外部からノイズを受けることがより効果的に防止された、より一層伝送特性が良好な高周波信号の伝送特性に優れた配線基板9を提供することができる。
さらに詳しくは、互いに電磁的な結合の強い差動伝送方式で信号を伝送する、1対の信号線路2の形成がより容易になる。そのため、外部からのノイズが1対の信号線路2に重畳して影響を与えたとしても、1対の信号線路2において、同時に同じ電位が変動するため、1対の信号線路の電圧の差には変化が現れない。つまりノイズは1対の信号線路2の間で相殺(キャンセル)されてノイズと認識されなくなり、信号はより確実、正確に伝送される。したがって、外部のノイズに強い、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板9を提供できる。
また、絶縁層1aの間に接地配線3や信号線路2を形成するスペースが不要なので、配線基板9の小型化に有効である。
このような配線基板9は、携帯電話、パソコン等の、小型化が要求される電子機器の部品として適している。
すなわち、1対のセラミックグリーンシートのそれぞれの一表面に、スクリーン印刷法で、1対の接地配線3となる金属ペーストを平行な線状、長方形状等のパターンで印刷した後、その間に、接地配線3よりも薄く、信号線路2となる金属ペーストを印刷する。印刷位置およびパターンは1対のセラミックグリーンシートで同じにしておく。その後、セラミックグリーンシートを、接地配線3となる金属ペースト同士が重なるようにして積層して焼成することにより、1対の接地配線3の間に、積層方向に対向する1対の信号線路2が配置される。この場合、接地配線となる金属ペーストは、一方のセラミックグリーンシートの表面にのみ、厚く印刷するようにしてもよい。
さらには、配線基板9を、セラミックグリーンシート積層法等の手段により形成されるセラミック多層基板や、ビルドアップ法等により形成される多層プリント配線板等の形態で製作する際に、接地配線3や信号線路2の形成が容易である。つまり、例えばセラミックグリーンシートや有機樹脂絶縁層の表面に、金属ペーストの印刷や蒸着法、めっき法等の薄膜導体形成加工等を施すことにより容易に、接地配線3や信号線路2となる導体を形成することができる。そのため、配線基板9としての生産性を高める上で有効である。
さらに、本実施例において、1対の信号線路2および1対の接地配線3を、隣接する絶縁層1aのそれぞれに被着形成されている。
本発明の配線基板9において、1対の信号線路2および1対の接地配線3を、隣接する絶縁層1aの間に配置する場合には、1対の信号線路2が、隣接する絶縁層1aのそれぞれに被着形成されていることがより一層好ましい。この構成を備えることから、信号線路2を他の絶縁層内に配置する必要がなく、より小型化に優れた配線基板を提供できる。
図3は本発明の配線基板の実施の形態の他の一例を示す断面図であり、同図において、1対の信号線路が、間隙を有して、それぞれの高さが同一となっている。
本発明の配線基板9において、1対の信号線路2が、積層方向における断面視で、間隙を有して配置されていることが好ましい。ここで、間隙とは、本発明の配線基板の積層方向における断面図にて、1対の信号線路が重なり合うことなく、また積層方向に対する横断面視にて、同一平面上に1対の信号線路が配置されない状態、すなわち多くとも1つの信号線路のみが配置される状態のことを意味する。ただし、1対の信号線路が重なっていなければよく、これら1対の信号線路の間に絶縁層等を介することはかまわない。この構成を備えることから、例えば間隙の距離を一定に確保することにより1対の信号線路2の間の電磁的な結合(リアクタンス)を安定させることができるため、1対の信号線路2のインピーダンスの安定した、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板9を提供できる。
また、間隙により一対の信号線路が互いに有効に電気的に絶縁され、電気的短絡等の不具合が抑制されるため、電気的信頼性が向上する。
さらにまた、本発明の配線基板9において、1対の信号線路2の積層方向におけるそれぞれの高さが、同一であることが好ましい。この構成を備えることから、対向し合う信号線路2において、信号の伝送特性が同じとなり、よりインピーダンスの安定した、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板9を提供できる。
信号線路2の厚さは、金属ペーストの印刷厚さや、めっき層、蒸着層等の薄膜導体の形成時間、電流(密度)等により所定の範囲に制御することができる。
図4は本発明の配線基板の実施の形態の他の一例を示す断面図であり、同図において、1対の信号線路が、平面透視で互いの外縁が重なるように配置されている。
本発明において、1対の信号線路2が、平面透視で、互いの外縁が重なるよう配置されていることが好ましい。この構成を備えることから、対向し合う信号線路2において信号の伝送特性が同じとなり、よりインピーダンスの安定した、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板9を提供できる。
さらにまた、本発明において、1対の信号線路2が、互いに絶対値が同じな逆電位の信号が伝送されることが好ましい。この構成を備えることから、例えば、隣接する絶縁層1aの間に配置された1対の信号線路2に分かれて信号が伝送される。信号は絶対値が同じで電位が逆になるように分かれる。そのため、差動伝送方式による信号の伝送がより有効に行なわれ、1つの信号線路で必要な信号の立ち上がり/立ち下がり幅(電位差、電圧)が1/2以下になり、信号の立ち上がり/立ち下がりに要する時間が1/2以下になり、電力消費の少ない、信号をより高周波で作動させることができるため、高周波信号の伝送特性に優れた配線基板9を提供できる。
1対の信号線路2の厚みは4μm乃至8μm、1対の接地導体3の厚みは20μm乃至30μmに設定することが好ましい。
1対の信号線路2の厚みを4μm乃至8μm、1対の接地導体3の厚みを20μm乃至30μmに設定することにより、低インピーダンスで、かつ接地性を高く維持しつつ、接地配線3の表面をスムーズで伝送特性が良好なものとすることができ、より高い高周波信号の伝送が可能となる。
また、隣接する絶縁層1aのそれぞれに、別個に信号線路2を形成してから位置合わせすればよいため、例えば、1つの絶縁層1aの両面に、正確に対向し合うように形成する必要がなく、生産性や精度を向上させることが容易な、配線基板9を提供できる。
図5は本発明の配線基板の実施の形態の他の一例を示す断面図であり、同図において、1対の信号線路2および1対の接地配線3を含む絶縁層内において、1対の接地配線3で囲まれる領域の絶縁体1bと、前記1対の接地配線3に隣接する絶縁体1cが、組成が異なる。
ここで、本発明の配線基板によれば、積層方向における断面視で、前記1対の信号配線と前記1対の接地配線を含む絶縁層内において、前記1対の接地配線で囲まれる領域の絶縁層と、前記1対の接地配線に隣接する絶縁層が、組成が異なることを特徴とすることから、より電気的に高度な機能を持った配線基板9を提供できる。
本発明の配線基板9において、1対の信号線路2を、隣接する絶縁層1aのそれぞれに被着形成して、1対の信号線路2および1対の接地配線3を、1つの絶縁層内に配置する場合には、1対の接地配線3と、接地配線3の上端同士を結んだ線と、接地配線3の下端同士を結んだ線とで囲まれる領域(接地配線3で挟まれる領域)の絶縁層1bと、1対の接地配線3に隣接する絶縁体1cが、組成が異なるようにすることもでき、多くの場合その方が好ましい。この構成を備えることから、1対の信号線路2がお互いに短絡することはより確実に防止され、お互いの距離が一定に保たれた、よりインピーダンスの安定した、より高周波信号の伝送特性に優れた配線基板9を提供できる。
また、前記1対の信号配線2と前記1対の接地配線3を含む絶縁層内において、前記1対の接地配線3と、接地配線3の上端同士を結んだ線と、接地配線3の下端同士を結んだ線とで囲まれる領域の絶縁体1bの誘電率を始めとする電気特性を前記1対の接地配線3に隣接する絶縁体1cの電気特性と合わす必要がなく、両領域でそれぞれの特性を持った回路を形成できる。
また、例えば、セラミック多層配線基板の形態で製作される場合に、絶縁層1aとなるセラミックグリーンシートに、絶縁体1bとなるセラミックペーストを塗布すること等により容易に製作することができるため生産が容易である。
この場合、絶縁体1bは、例えば絶縁層1aと同様の絶縁材料により形成され、1対の接地配線3に隣接する絶縁体1cは、1a、1bとは組成が異なる。ここで組成が異なるとは、絶縁体を構成する成分の種類そのものが異なる場合や、含有量が異なる場合や、これら両方が異なる場合を意味する。絶縁体1bは、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合には、絶縁層1aを形成するのと同様の材料を用い、有機溶剤の添加量等で粘度を調整してセラミックペーストを作製し、これを、セラミックグリーンシートに印刷された、信号線路2となる金属ペーストを覆うように塗布することにより、形成することができる。その際、1対の接地配線3に隣接する絶縁層1cも絶縁体1bと同様に、有機溶剤の添加量等で粘度を調整したセラミックペーストを作製し、これを、絶縁層1aとなるセラミックグリーンシートに印刷塗布することにより作製することができる。
また、絶縁体1bの材料が、樹脂材料の場合であれば、絶縁体1bは、未硬化で流動性を有するエポキシ樹脂を、エポキシ樹脂基板の表面に金属箔やめっき層等の形態で形成された信号線路2を覆うように塗布し、その後硬化させることにより、形成することができる。
なお、本発明の電子装置は、配線基板9と該配線基板に電気的に接続される電子部品とを備えたことから、本構成の電子装置は、より高周波信号の伝送特性に優れた電子装置とするうえで好適である。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、信号線路2の一部を絶縁基板1の表面に導出する場合の導出部分や、接地配線3の外部に露出する表面は、ニッケルや金、銅またはこれらを主成分とする合金等のめっき層で被覆することにより、露出表面の酸化腐食を有効に防止することができ、より優れた信頼性の配線基板を構成することができる。またこの場合、信号線路2の導出部分に電子部品を接続するときの半田の濡れ性やボンディングワイヤのボンディング性等の特性も向上させることができる。
その他、絶縁体1bおよび1cの組成を同一とするとともに、それらの組成と隣接する絶縁層1aの組成を異なるように作製することもできる。