JP4952707B2 - ガスバリア性シート、ガスバリア性シートの製造方法、及び製品 - Google Patents

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本発明は、ガスバリア性シート、このガスバリア性シートの製造方法、及びこのガスバリア性シートを用いた製品に関し、さらに詳しくは、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、接着性に優れ、ハードコート性に優れ、ガスバリア性に優れ、生産性に優れるガスバリア性シート、この製造方法、及びこのガスバリア性シートを用いた製品に関する。
基材フィルム上に無機物や有機物の薄膜を形成して高いガスバリア性を発現させる試みは従来から行われている。
特許文献1には、可撓性基材の片面又は両面に、基材に近い側から重合成分としてアクリル系モノマー及び/又はアクリル系重合性プレポリマーのみを含むUV硬化性樹脂の硬化物からなる厚さ0.1〜10μmのアクリル系樹脂層及び厚さ20〜100nmの無機バリア層が順次積層した積層構造を設けたガスバリア性フィルムが紹介されている。
同文献によれば、上記の特定のUV硬化性樹脂を用いて特定の厚さのUV硬化樹脂層を可撓性基材上に直接形成し、さらにその上に特定の厚さの無機バリア層を積層した場合に、良好なガスバリア性を示しながら、その製造工程においてカールの発生がほとんど起こらないガスバリア性フィルムが得られるとのことである。そして、無機バリア層に用いるセラミック材料としては、SiO、AlO、SiO、SiN、SiO、SiN、AlO、AlN、AlO、及びAlN等が例示されている。
また、特許文献2には、樹脂成形体の少なくとも片面を所定の表面処理用組成物で処理した表面処理樹脂成形体が紹介されている。そして、上記表面処理用組成物は、形成される被膜に可撓性を付与するための有機化合物(イ)、この有機化合物(イ)中のアミノ基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物(ロ)、所定の有機金属化合物(ハ)、及び溶媒(ニ)を含有する。具体的には、有機化合物(イ)としてポリエチレンイミン、化合物(ロ)としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、化合物(ハ)としてテトラメトキシシラン、溶媒(ニ)としてメタノールが実施例1では用いられている。
特開2005−313560号公報(請求項1、第0012段落、第0039段落) 特開平8−295848号公報(請求項1,7、第0008段落、第0011段落、第0015段落、第0030段落)
特許文献1においては、特定の厚さのアクリル系樹脂膜と、無機材料からなる特定の厚さのガスバリア層とを組み合わせることにより、ガスバリア性フィルム(以下、ガスバリア性フィルムを「ガスバリア性シート」という。)のガスバリア性とカールの発生の抑制とを両立している。
しかしながら、同文献に記載のガスバリア性シートにおいては、多層の積層構造を作製することやアニール処理を行うこと等を目的として製造の後工程においてより厳しい条件で熱処理を行った場合に、アクリル系樹脂膜が加熱されて黄変しやすくなる。そして、アクリル系樹脂膜の黄変によってガスバリア性シートが着色することになるため、同文献に記載のガスバリア性シートは、より厳しい基準でみた場合に、耐熱性に課題を残すものとなっている。
また、特許文献2における、樹脂成形体の少なくとも片面を所定の表面処理用組成物で処理された表面処理樹脂成形体(以下、表面処理樹脂成形体も「ガスバリア性シート」という。)は、ガスバリア性、透明性、耐熱性、及びカールの発生の抑制に未だ課題を有するものであることが判明した。
すなわち、ガスバリア性シートの用途として、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を考慮した場合、通常、水蒸気透過率が0.1g/m/day(g/m・day)以下で、酸素透過率が0.1cc/m/day・atm(cc/m・day・atm)以下の高いガスバリア性を有することが求められる。しかしながら、特許文献2の実施例に示されるとおり、特許文献2のガスバリア性シートではこうした高いガスバリア性を達成することができない。
また、ガスバリア性シートの用途として、有機ELディスプレイ等を考慮した場合、ガスバリア性シートの透明性を高くすることが望まれる。しかしながら、特許文献2においては、形成される皮膜に可撓性を付与するために有機化合物(イ)を用いているため、皮膜中に有機官能基が多くなり可視光領域に光吸収を持ちやすくなる。その結果、ガスバリア性シートの透明性が低下しやすい。このため、透明性にも課題がある。
さらに、有機化合物(イ)により皮膜中に有機官能基が多く存在するために、温度負荷によってガスバリア性シートが着色しやすく、耐熱性にも課題がある。
そして、ガスバリア性シートの用途として、有機ELディスプレイ等を考慮した場合、作製工程上、高温下での保持におけるガスバリア性シートの変形(カール)を抑制することが望まれる。しかしながら、特許文献2においては、形成される皮膜に可撓性を付与するために有機化合物(イ)を用いているため、皮膜中に有機官能基が多くなって膜応力も強くなるので湾曲が発生しやすい傾向となる。このため、カール抑制の観点からも課題がある。
加えて、上述のとおり、ガスバリア性、透明性、耐熱性、及びカールの発生の抑制機能を有する高性能なガスバリア性シートの開発が望まれるが、これに加えて、生産性の高いガスバリア性シートの開発も望まれている。すなわち、より生産性・量産性を向上させ、低コスト化を図る観点から、ロール状に巻かれた長尺の基材を引き出して走行させながら、この基材上にガスバリア層等を連続的に形成してガスバリア性シートを製造する、いわゆるロール・ツー・ロール方式の製造方法を良好に採用できるガスバリア性シート及びその製造方法の開発も望まれている。より具体的には、後述するように、ロール・ツー・ロール方式の製造方法は、ガスバリア性シートに対する製造時の熱負荷や応力の負荷が大きくなるので、ガスバリア性シートの耐熱性を付与しつつ、適度な柔軟性を付与することも重要である。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ガスバリア性に優れ、生産性に優れるガスバリア性シート、このガスバリア性シートの製造方法、及びこのガスバリア性シートを用いた製品を提供することにある。さらに、ハードコート性にも優れ、接着性にも優れるガスバリア性シート、このガスバリア性シートの製造方法、及びこのガスバリア性シートを用いた製品を提供することにある。
本発明者は、アンカー層にポリシロキサン重合体を用い、このポリシロキサン重合体の構造を制御することにより、耐熱性が高く、透明性もすぐれ、堅さと柔軟性とのバランスに優れるガスバリア性シートを得ることができることを見出した。すなわち、ガスバリア性シートに適度の堅さを付与することができるので温度負荷があってもカールがしにくく、ハードコート性も良好にしやすくなる。そして、このアンカー層の上にSiを含む所定の組成のガスバリア層を設けることにより、アンカー層とガスバリア層との2層でガスバリア機能を確保することができるようになって、高いレベルのガスバリア性が達成できることを見出した。さらに、基材、アンカー層、及びガスバリア層がそれぞれ接して設けられた場合には、ガスバリア層のSiとアンカー層中のSiとの親和性が高くなり、かつ、Si−C結合が基材との接着性を高めるために、基材、アンカー層、及びガスバリア層の接着性を高くすることができることを見出した。加えて、ロール・ツー・ロール方式の製造方法では、ガスバリア層形成時の熱や基材が引っ張られることによる応力の影響が大きくなるので、アンカー層の耐熱性、耐プラズマ性、堅さと柔軟性のバランスをさらに改良することが必要となるが、上記所定のポリシロキサン重合体を含有するアンカー層を用いることにより上記耐熱性、耐プラズマ性、堅さと柔軟性のバランスを良好に改良することができることを見出した。これにより、ロール・ツー・ロール方式の製造方法を用いても良好な特性を有するガスバリア性シートを得られるようになる。
上記課題を解決するための本発明のガスバリア性シートは、基材と、該基材の一方の面の側に設けられたアンカー層と、該アンカー層の上に設けられたガスバリア層と、を有するガスバリア性シートにおいて、前記アンカー層が、シロキサン化合物と、重合時に該シロキサン化合物が有する水酸基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物Aと、から構成されるポリシロキサン重合体を含有し、前記ガスバリア層が、酸化珪素と導電性材料との混合物又は複合物を含有することを特徴とする。
この発明によれば、アンカー層が、シロキサン化合物と、重合時にこのシロキサン化合物が有する水酸基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物Aと、から構成されるポリシロキサン重合体を含有し、ガスバリア層が、酸化珪素と導電性材料との混合物又は複合物を含有するので、ポリシロキサン重合体の構造を制御してアンカー層の透明性、耐熱性、及び堅さを制御し、アンカー層とガスバリア層との2層でガスバリア性を確保することができ、さらに、基材、アンカー層、及びガスバリア層がそれぞれ接して設けられた場合には、アンカー層中のSiとガスバリア層中のSiとによりアンカー層とガスバリア層との相互作用が高まるとともに、アンカー層中のSi−C結合が基材との相互作用を良好にする。そして、アンカー層の耐熱性・耐プラズマ性が良好になるので、生産性の高いロール・ツー・ロール方式の製造方法を用いてアンカー層上にガスバリア層を形成した場合においてもガスバリア性シートの特性を良好にしやすくなる。その結果、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ガスバリア性に優れ、生産性に優れ、加えてハードコート性にも優れ、接着性にも優れるガスバリア性シートを提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの好ましい態様においては、前記化合物Aがカルボン酸エステルである。
この発明によれば、化合物Aがカルボン酸エステルであるので、ポリシロキサン重合体が重合する際の重合スピードの調節が行いやすくなり、その結果、アンカー層の形成が行いやすくなる。
上記課題を解決するための本発明のガスバリア性シートの製造方法は、本発明のガスバリア性シートの製造方法であって、アンカー層をロール・ツー・ロール方式で形成するアンカー層形成工程と、ガスバリア層をロール・ツー・ロール方式で形成するガスバリア層形成工程と、を有することを特徴とする。
この発明によれば、本発明のガスバリア性シートの製造方法であって、アンカー層をロール・ツー・ロール方式で形成するアンカー層形成工程と、ガスバリア層をロール・ツー・ロール方式で形成するガスバリア層形成工程と、を有するので、耐熱性・耐プラズマ性・堅さと柔軟性のバランスが良好となる所定のポリシロキサン重合体を含有するアンカー層を用いることにより、生産性の高いロール・ツー・ロール方式の製造方法を用いてアンカー層上にガスバリア層を形成した場合においても、ガスバリア性シートの特性を良好にしやすくなる。さらに、アンカー層の透明性、耐熱性、及び堅さを制御し、アンカー層とガスバリア層との2層でガスバリア性を確保することができ、さらに、基材、アンカー層、及びガスバリア層がそれぞれ接して設けられた場合には、アンカー層中のSiとガスバリア層中のSiとによりアンカー層とガスバリア層との相互作用が高まるとともに、アンカー層中のSi−C結合が基材との相互作用を良好にする。その結果、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ガスバリア性に優れ、生産性に優れ、加えてハードコート性にも優れ、接着性にも優れるガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法の好ましい態様においては、前記ガスバリア層形成工程での前記ガスバリア層の形成がイオンプレーティング法で行われる。
この発明によれば、ガスバリア層形成工程でのガスバリア層の形成がイオンプレーティング法で行われるので、ガスバリア層形成時の熱的な影響がより大きくなり、耐熱性・耐プラズマ性の高い所定のアンカー層を設ける意義が大きくなるので、その結果、本発明のガスバリア性シートの製造方法を用いる意義が大きくなる。
上記課題を解決するための本発明の製品は、本発明のガスバリア性シートを用いた製品であって、該製品が、ディスプレイ、照明、又は太陽電池であることを特徴とする。
この発明によれば、本発明のガスバリア性シートを用いた製品であって、この製品が、ディスプレイ、照明、又は太陽電池であるので、より高いガスバリア性が必要とされる製品に本発明のガスバリア性シートが用いられることになり、その結果、より高性能なディスプレイ、照明、及び太陽電池を提供することができる。
本発明によれば、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ガスバリア性に優れ、生産性に優れるガスバリア性シートを提供することができる。さらに、ハードコート性にも優れ、接着性にも優れるガスバリア性シートを提供することができる。
本発明によれば、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ガスバリア性に優れ、生産性に優れるガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。さらに、ハードコート性にも優れ、接着性にも優れるガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
本発明によれば、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ガスバリア性に優れ、生産性に優れるガスバリア性シートを用いた製品を提供することができる。さらに、ハードコート性にも優れ、接着性にも優れるガスバリア性シートを用いた製品を提供することができる。
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[ガスバリア性シート]
図1は本発明のガスバリア性シートの一例を示す模式的な断面図である。
本発明のガスバリア性シート1は、図1に示すように、基材2と、基材2の一方の面11の側に設けられたアンカー層9と、アンカー層9の上に設けられたガスバリア層3と、を有する。詳細は後述するが、ガスバリア性シート1の形態を用いることにより、ポリシロキサン重合体の構造を制御してアンカー層9の透明性、耐熱性、及び堅さを制御し、アンカー層9とガスバリア層3との2層でガスバリア性を確保することができるようになる。さらに、基材2、アンカー層9、及びガスバリア層3がそれぞれ接して設けられているので、アンカー層9中のSiとガスバリア層3中のSiとによりアンカー層9とガスバリア層3との相互作用が高まるとともに、アンカー層9中のSi−C結合が基材2との相互作用を良好にする。そして、アンカー層9の耐熱性・耐プラズマ性が良好になるので、生産性の高いロール・ツー・ロール方式の製造方法を用いてアンカー層9上にガスバリア層3を形成した場合においてもガスバリア性シート1の特性を良好にしやすくなる。その結果、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ガスバリア性に優れ、生産性に優れ、加えてハードコート性にも優れ、接着性にも優れるガスバリア性シート1を提供することができるようになる。
本発明のガスバリア性シートの層構成は上記説明した内容に限られるものではない。例えば、基材及びアンカー層、アンカー層及びガスバリア層は、必ずしも接触させる必要はなく、場合によっては、基材とアンカー層との間、アンカー層とガスバリア層との間に他の層を適宜挿入してもよい。さらに、各層の積層の順番も本発明の要旨の範囲内において適宜変更可能である。こうした層の積層に関するバリエーションは、本発明の要旨の範囲内において適宜行うことができる。
以下、ガスバリア性シート1を構成する各要素について説明する。
(基材)
基材2としては、各種の基材を用いることができ、主にはシート状やフィルム状、巻き取りロール状のものが用いられる。基材2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリシルセスキオキサン、ポリノルボルネン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、非晶質シクロポリオレフィン、セルローストリアセテート等のフレキシブル基板を用いることができる。基材2が樹脂製である場合、用いる樹脂としては上記例示した樹脂を適宜混合して用いてもよい。また、基材2が樹脂製である場合、好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上の耐熱性を有するものが適当である。
こうした樹脂製の基材2としては、具体的には、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルム(例えば、日本ゼオン株式会社のゼオネックス(登録商標)やゼオノア(登録商標)、JSR株式会社のARTON等)、ポリカーボネートフィルム(例えば、帝人化成株式会社のピュアエース等)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、帝人化成株式会社製のもの等)、セルローストリアセテートフィルム(例えば、コニカミノルタオプト株式会社のコニカタックKC4UX、KC8UX等)、ポリエチレンナフタレートフィルム(例えば、帝人デュポンフィルム株式会社のテオネックス(登録商標)等)の市販品を挙げることができる。
基材2の厚さは、可撓性及び形態保持性の観点から、通常10μm以上、好ましくは50μm以上、また、通常200μm以下、好ましくは150μm以下とする。
基材2を、透明性が必要とされる有機ELディスプレイ等の発光素子の基板として用いる場合には、基材2は無色透明であることが好ましい。基材2とともにガスバリア層3等の他の膜を無色透明とすることにより、ガスバリア性シート1を透明とすることが可能となる。より具体的には、例えば400nm〜700nmの範囲内での基材2の平均光透過度が80%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。こうした光透過度は基材2の材質と厚さに影響されるので両者を考慮して構成される。
基材2の表面は、平滑であることが好ましい。具体的には、基材2の表面の算術平均粗さ(Ra)は、通常0.3nm以上とする。この範囲とすれば、基材2に適度な表面粗さを付与することができ、基材2を巻き取りロールとした際に互いに接触する基材2同士の接触面に滑りが生じにくくなる。また、基材2の表面の算術平均粗さ(Ra)は、通常100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下とする。この範囲とすれば、基材2の平滑性が向上し、有機ELディスプレイ等の表示素子を作製する際に発生することのある短絡を抑制できる利点が発揮されやすくなる。なお、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601−2001(ISO4287−1997準拠)に従って測定すればよい。
基材2は、熱に対して変形しにくいことが好ましい。ガスバリア性シート1が有機ELディスプレイに適用される場合には、ヒートサイクル試験のような加熱・冷却のストレスに対してもガスバリア性シート1が変形しないことが求められるからである。具体的には、基材2の線膨張係数は、通常5ppm/℃以上、また、通常80ppm/℃以下、好ましくは50ppm/℃以下とする。線膨張係数の測定は、従来公知の方法を用いて行えばよく、例えばTMA法(熱機械分析法)を挙げることができる。TMA法に用いる測定装置としては、例えば、示差膨張方式熱機械分析装置であるリガク 製 CN8098F1を用いることができる。
基材2として樹脂製のものを用いる場合には、その製造方法も従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。また、樹脂製の基材2を用いる場合には、延伸フィルムを用いてもよい。延伸の方法も従来公知の一般的な方法を用いればよい。延伸倍率は、基材2の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍とすることが好ましい。
基材2の表面は、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、UV照射処理、大気圧プラズマ処理、易接着化処理等の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。
(アンカー層)
アンカー層9は、シロキサン化合物と、重合時にこのシロキサン化合物が有する水酸基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物Aと、から構成されるポリシロキサン重合体を含有する。より具体的には、ポリシロキサン重合体は、シロキサン化合物と化合物Aとを重合させることによって得られるものである。これにより、ポリシロキサン重合体の構造を制御してアンカー層9の透明性、耐熱性、及び堅さを制御することができ、その結果、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ハードコート性に優れるガスバリア性シート1を提供することができる。より具体的には、シロキサン化合物の重合度や架橋度を化合物Aによって制御したポリシロキサン重合体を得ることができる。このため、ポリシロキサン重合体が有するSi−O結合の比率を調整してアンカー層9の透明性、耐熱性、及び堅さを制御することができる。
アンカー層9に含有させるポリシロキサン重合体における、シロキサン化合物と化合物Aとの重合は、シロキサン化合物が水酸基を有する場合には、この水酸基を化合物Aの官能基とを反応させることによって行われる。シロキサン化合物が水酸基を有するものでない場合には、シロキサン化合物をアルコール溶液等中に存在させることで置換基交換を行い、シロキサン化合物に形成される水酸基を利用する。このように、少なくとも重合時にはシロキサン化合物は水酸基を有することとなるので、この水酸基を化合物Aの官能基と反応させて重合を進行させればよい。すなわち、「シロキサン化合物が有する水酸基」とは、シロキサン化合物が元々有する水酸基か、又は重合時にシロキサン化合物に形成される水酸基のことと考えればよい。
アンカー層9においては、さらに、アンカー層9中のSi−C結合が基材2との相互作用を良好にする。特に基材2に樹脂を用いる場合に、基材2とアンカー層9とを接して設けることにより、これら樹脂とアンカー層9中のSi−C結合との親和性が高くなる。より具体的には、基材2にポリエステル樹脂を用いる場合に、ポリエステル樹脂のC−C結合とアンカー層9中のSi−C結合との相互作用が特に高くなる。その結果、接着性に優れるガスバリア性シート1を提供することができる。
シロキサン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等のシラザン類、またこれらの錯体化合物、メチルトリアセトキシシラン、トリメチルシラノール等、またはこれらの化合物を含む高分子有機化合物類が挙げられる。
上記のシロキサン化合物のうち、重合の際の反応性を制御する観点から、ヘキサメチルジシラザン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、及びテトラブトキシシランの少なくとも1つを用いるのが好ましく、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランの少なくとも1つを用いるのがより好ましい。
重合時にシロキサン化合物が有する水酸基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物Aは、上記シロキサン化合物の重合度を制御するために用いられるものである。化合物Aを用いることにより、アンカー層9の透明性を確保しつつ、アンカー層9の堅さ、耐熱性、及び耐プラズマ性を制御することができるので、アンカー層9ひいてはガスバリア性シート1のカール発生が抑制されやすくなるとともに、製造時におけるガスバリア層3の成膜時の基材2に対する熱的な影響を緩和することができる。また、ガスバリア性シート1へのハードコート性を確保しやすくなる。
こうした化合物Aは、重合時にシロキサン化合物中の水酸基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物であるが、化合物Aは珪素を分子内に有さないことが好ましい。これは、化合物Aが珪素を含むと、ポリシロキサン重合体の物性の制御がしにくくなるからである。上記官能基は、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、オキサゾリニル基、これら官能基から誘導される基等を挙げることができる。
化合物Aは、特に制限はないが、カルボン酸エステルを用いることが好ましく、低級のカルボン酸エステルを用いることがより好ましく、分子内のカルボン酸エステル(−COOR:Rは1価の有機基)の数が1以上、3以下のカルボン酸エステルを用いることがさらに好ましい。これにより、ポリシロキサン重合体が重合する際の重合スピードの調節が行いやすくなり、その結果、アンカー層9の形成が行いやすくなる。例えば、化合物Aに酸性の強いものを用いると重合のスピードが速くなりすぎてポリシロキサン重合体が析出する等の現象が起きやすくなり、また、化合物Aに脂肪酸エステルを用いると、ポリシロキサン重合体の重合スピードが確保できず良好な成膜が難しくなる場合がある。
化合物Aとしては、例えば、蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、吉草酸メチル、蓚酸ジメチル、マロン酸ジメチル、琥珀酸ジメチル、蟻酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、蓚酸ジエチル、マロン酸ジエチル、及び琥珀酸ジエチル等を挙げることができる。これら化合物Aのうち、ポリシロキサン重合体を含有する塗布液を用いてアンカー層9を形成する方法を用いる場合に、反応進行に伴って発生する塗布液の塗布性の不良を抑制する観点から、蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、マロン酸ジメチル、及び蓚酸ジメチルの少なくとも1つを用いるのが好ましく、蟻酸メチル、酢酸メチル、マロン酸ジメチル、及び蓚酸ジメチルの少なくとも1つを用いるのがより好ましい。
アンカー層9には、ポリシロキサン重合体以外の材料を適宜含有させてもよい。例えば、ポリシロキサン重合体を含有する塗布液を用いてアンカー層9を形成する方法を用いる場合に、この塗布液の分散性を向上・確保する観点から、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、及びポリエチレングリコール等の界面活性剤をさらに含有させてもよい。ポリシロキサン重合体以外の材料を含有させる場合には、その含有量は、通常、3重量%以上、15重量%以下とする。
アンカー層9は、その組成が、Si:O:N:C=100:50〜250:0〜50:10〜200であることが好ましい。これにより、アンカー層9の柔軟性と剛直性とが両立しやすくなり、その結果、平坦性、可撓性、基材2の熱膨張・収縮への追従がより良好となりやすい。上記元素のうち、Si、O、N、Cは、主としてポリシロキサン重合体に由来するものとなる。O(酸素)の組成比は、より好ましくは100以上、さらに好ましくは150以上とする。N(窒素)の組成比は、より好ましくは40以下とする。C(炭素)の組成比は、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上、また、より好ましくは190以下とする。
アンカー層9の組成が、上記範囲となっているかは、従来公知の分析法を用いて分析することができる。こうした分析法としては、例えば、XPS(X線光電子分析装置)法を挙げることができる。本発明においては、XPSの測定は、XPS(VG Scientific社製ESCA LAB220i−XL装置)により測定している。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300Kcps〜1McpsとなるX線源であるMgKα線を用い、直径約1mmのスリットを使用している。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行っている。測定後の解析は、上述のXPS装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、C:1s、N:1s、O:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行っている。このとき、C:1sのピークのうち、炭化水素に該当するピークを基準として、各ピークシフトを修正し、ピークの結合状態を帰属させる。そして、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1.0に対して、Si=0.87、N=1.77、O=2.85)を行い、原子数比を求めている。得られた原子数比について、Si原子数を100とし、他の成分である、C、N、及びOの原子数を算出して成分割合としている。
アンカー層9の厚さは、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上とする。アンカー層9の厚さを上記範囲とすれば、アンカー層9の厚さを十分に確保してガスバリア性シート1を硬くすることによりハードコート性を確保しやすくなる。また、アンカー層9の厚さは、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下とする。アンカー層9の厚さを上記範囲とすれば、ハードコート性を確保しつつも所定の柔軟性をガスバリア性シート1に付与しやすくなる。
(ガスバリア層)
ガスバリア層3は、酸化珪素と導電性材料との混合物又は複合物を含有する。これにより、ガスバリア層3の密度が高くなり、ガスバリア性を高くしやすくするとともに、所定量の酸素の導入により膜応力を低減させることでカールも発生しにくくなる。特に、有機ELディスプレイ等の耐久試験として行われるヒートサイクル試験後においても、カールの発生が抑制され、ガスバリア性能も維持されるガスバリア性シート1を提供することができる。
さらに、ガスバリア性シート1においては、アンカー層9とガスバリア層3との2層でガスバリア性を確保することができる。その結果、ガスバリア性に特に優れるガスバリア性シート1を提供することができる。さらに、ガスバリア層3とアンカー層9とを接して設ける場合には、ガスバリア層3が珪素を含有する膜となるので、ガスバリア層3及びアンカー層9のいずれにもSiが存在することになり、ガスバリア層3とアンカー層9との相互作用が高まる。その結果、接着性に優れるガスバリア性シート1を提供することができる。
ガスバリア層3中に、酸化珪素と導電性材料とが混合物で存在するとは、ガスバリア層3中で酸化珪素と導電性材料とがそれぞれ別個に存在する(例えば、相分離して存在する)場合をいい、酸化珪素と導電性材料とが複合体として存在するとは、酸化珪素と導電性材料とが反応して複合酸化物、複合酸窒化物等の化合物として存在する場合をいう。酸化珪素と導電性材料とを併用する意義は、導電性材料の使用によりガスバリア層3の密度を上げることができる一方で、ガスバリア層3を柔らかくすることができる点にある。そこで、これらの点につき以下さらに詳しく説明する。
酸化珪素は安価であるという利点がある一方で、一定のガスバリア性を有するが、近年の高性能化によってより高いガスバリア性を発揮することが望まれる。こうした場合に、導電性材料を酸化珪素と併用することにより、ガスバリア層3の構造が緻密となって、ガスバリア層3のガスバリア性が向上する利点が発揮されやすくなる。特に、酸化珪素及び導電性材料を含む蒸着源材料を用いてイオンプレーティング法を用いる場合に上記効果が発揮されやすくなる。こうした製造方法の詳細については後述する。
酸化珪素と導電性材料とを併用するもう1つの利点は、ガスバリア層3の膜質を柔らかくすることができる点にある。例えば、ガスバリア性が高く有用な材料である酸窒化珪素(SiON)は、膜質として硬くなる傾向を有するので、ロール・ツー・ロール方式の製造方法に適用するには不向きな材料と考えられる。すなわち、ロール・ツー・ロール方式で製造されたガスバリア性シートは、ロール状に巻き取られて一定の曲率を有する状態で長時間保存されることとなるので、酸窒化珪素を用いたガスバリア層においては、膜質の堅さにより経時でクラックが発生することが懸念される。これに対して、本発明では、上述のとおり、酸化珪素と導電性材料との併用でガスバリア層3を柔軟に形成しやすくなるので、上記のような経時でのクラックの発生を抑制しやすくなる。
ガスバリア層3に用いる酸化珪素としては、珪素と酸素とから構成される化合物であればよく特に制限はないが、好ましくは二酸化珪素を用いる。二酸化珪素は、SiO(ここでのxは1.8〜2.2の範囲内であり、通常、SiOで表される。)で表すことができる。
ガスバリア層3に用いる導電性材料は、導電性を有する材料であれば特に制限はなく、好ましくは無機材料が用いられる。導電性材料としては、例えば、体積抵抗率が1.4μΩ・cm以上、1kΩ・cm以下の材料を挙げることができる。なお、本発明においては、JIS−K7194準拠4探針法で測定された体積抵抗率を用いている。こうした導電性材料としては、例えば、金属、合金、及び金属化合物を挙げることができる。
すなわち、ガスバリア層3に用いる導電性材料としては、例えば、アルミニウム、珪素、銅、銀、ニッケル、クロム、金、白金、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、及びこれら金属の合金を挙げることができる。これら金属又は合金は一部酸化されていてもよい。上記金属や合金のうち、導電性の観点から好ましいのは、金、銀、銅、白金、インジウム、錫、亜鉛、及びこれら金属の合金であり、コストの観点から好ましいのは、アルミニウム、錫、亜鉛、及びこれらの金属の合金である。また、ガスバリア層3に柔軟性を付与するという観点からは、錫、亜鉛を用いることが好ましい。
また、ガスバリア層3に用いる導電性材料を金属化合物とする場合には、例えば、インジウム、亜鉛、錫、セリウム、及びこれら金属の合金の酸化物、窒化物、酸窒化物を挙げることもできる。上記材料のうち、導電性の観点から好ましいのは、インジウム、亜鉛、錫、及びこれら金属の合金の酸化物、窒化物、酸窒化物であり、コストの観点から好ましいのは、錫、亜鉛、錫の合金、及び亜鉛の合金の酸化物、窒化物、酸窒化物である。ガスバリア層3に柔軟性を付与するという観点からは、錫や亜鉛の酸化物を用いることが好ましい。
導電性材料につき、上記では、酸化珪素と導電性材料とを別々に説明したが、これは、ガスバリア層3中で、酸化珪素と導電性材料とが混合物の状態で存在することを想定した場合である。
ガスバリア層3中で、酸化珪素と導電性材料とが複合体として存在する場合には、当該複合体は、例えば、SiMaO、SiMaO等の化学式で表すことができる。ここで、Maは、1種の金属元素又は2種以上の異なる金属元素を表し、例えば、Sn、Zn、Al、Ti等から選ばれる金属元素を用いることが好ましい。ガスバリア層3の膜質を確保する点から好ましいのは、Sn又はZnである。また、ガスバリア層3に柔軟性を付与するという観点から好ましいのも、SnやZnである。
ガスバリア層3が、所定の元素を含有しているか否かは、例えば、Si、Ma(例えば、Sn、Zn、Al、Ti)、Oの原子数比を求めることにより確認することができる。こうした原子数比を求める方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、XPS(X線光電子分析装置)等の分析装置で得られた結果で評価できる。本発明においては、XPSの測定は、XPS(VG Scientific社製ESCA LAB220i−XL)により測定している。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300Kcps〜1McpsとなるX線源であるMgKα線を用い、直径約1mmのスリットを使用している。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行っている。測定後の解析は、上述のXPS装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、C:1s、Sn:3d、Zn:2p、Al:2p、Ti:2p、O:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行っている。このとき、C:1sのピークのうち、炭化水素に該当するピークを基準として、各ピークシフトを修正し、ピークの結合状態を帰属させる。そして、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1.0に対して、Si=0.87、Sn=24.72、Zn=27.30、Al=0.57、Ti=7.90、O=2.85)を行い、原子数比を求めている。得られた原子数比について、Si原子数を1とし、他の成分であるMaとOの原子数を算出して成分割合としている。
ガスバリア層3の厚さは、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは150nm以下とする。ガスバリア層3の厚さを上記範囲とすれば、ガスバリア層3のガスバリア性を高くしつつ、カールの発生も抑制しやすくなる。
ガスバリア層3を、透明性が必要とされる有機ELディスプレイ等の発光素子のガスバリア層として用いる場合には、ガスバリア層3は透明であることが好ましい。ガスバリア層3とともに基材2等の他の膜を透明とすることにより、ガスバリア性シート1を透明とすることが可能となる。より具体的には、例えば400nm〜700nmの範囲内でのガスバリア層3の平均光透過度が75%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。こうした光透過度はガスバリア層3の組成や厚さに影響されるので両者を考慮して構成される。
(その他の層)
上記説明した、基材2、アンカー層9、及びガスバリア層3以外にも、必要に応じて他の層を用いることもできる。こうしたものとしては、例えば、透明導電層、ハードコート層、吸湿層、放熱層、反射防止層、帯電防止層、防汚層、防眩層、カラーフィルタ及び平滑化層を挙げることができる。これらのうち、反射防止層、帯電防止層、防汚層、防眩層、カラーフィルタは、光学粘着剤を介して本発明のガスバリア性シートと貼り合わせることで、所望の機能を得てもよい。こうした各層は、従来公知のものを適宜用いればよい。
(ガスバリア性シートの特性)
ガスバリア性シート1は、通常、水蒸気透過率が0.1g/m/day(g/m・day)以下で、酸素透過率が0.1cc/m/day・atm(cc/m・day・atm)以下の高いガスバリア性を示す。
ガスバリア性シート1を、透明性が必要とされる有機ELディスプレイ等の発光素子のガスバリア性シートとして用いる場合には、ガスバリア性シート1は透明であることが好ましい。この場合、具体的には、全光線透過率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上とする。また、色味(YI)は、好ましくは5以下、より好ましくは3以下とする。YIが高いほどガスバリア性シート1が黄色く見えるため、外観上YIを上記範囲に制御することが好ましい。なお、全光線透過率及びYIの測定は、例えば、分光測色計を用いて測定することができる。本発明においては、全光線透過率及びYIの測定は、SMカラーコンピューターSM−C(スガ試験機製)を使用して測定している。そして、測定は、JIS K7105に準拠して実施している。
ガスバリア性シート1は、所定のアンカー層9と所定のガスバリア層3との組み合わせによりカールの発生が抑制される。図2は、ガスバリア性シートのカールの度合いを測定する方法を示す模式的な断面図である。まず、ガスバリアシート1を所定の大きさに切り出し、ガスバリア性シートサンプル10を準備する。そして、ガスバリア性シートサンプル10をステンレス鋼製の基板6上に置き、ガスバリア性シートサンプル10の頂点8とステンレス鋼製の基板6との直交距離Lを測定する。そして、直交距離Lの大きさに応じて、所定の評価基準を用い、ガスバリア性シートのカールの発生度合いを評価すればよい。
さらに、ガスバリア性シートサンプル10に対して耐熱試験(ヒートサイクル試験)を実施し、ヒートサイクル試験後に直交距離Lを再度測定することにより、ヒートサイクル試験後のガスバリア性シート1のカール度合いの評価を行うこともできる。具体的には、ガスバリア性シートサンプル10を、150℃のオーブンで3時間保持する操作を繰り返し5回行うことによりヒートサイクル試験を実施する。そして、ヒートサイクル試験後のガスバリア性シートサンプル10を、再度ステンレス鋼製の基板6上に置き、ガスバリア性シートサンプル10の頂点とステンレス鋼製の基板6との直交距離Lを測定する。そして、直交距離Lの大きさに応じて、所定の評価基準を用い、ガスバリア性シート1のカールの発生度合いを評価すればよい。こうした方法で評価される直交距離Lは、ヒートサイクル試験の前後において、通常3mm以下となるように制御される。より高性能のガスバリア性シート1を得る観点から、直交距離Lは、1mm以下となるように制御することが好ましい。
ガスバリア性シート1は、所定のアンカー層9と所定のガスバリア層3との組み合わせにより、基材2、アンカー層9、及びガスバリア層3がそれぞれ接して設けられた場合には、基材2とアンカー層9との接着性、及びアンカー層9とガスバリア層3との接着性が良好となる。また、基材2とアンカー層9との間、アンカー層9とガスバリア層3との間に所定の膜を挿入することにより接着性が確保できる場合もある。こうしたガスバリア層3、アンカー層9、基材2等の接着性の程度を見積もる方法として、例えば、クロスカット試験による評価を挙げることができる。本発明においては、クロスカット試験をJIS−K5400の8.5.1の記載に準拠して行っている。具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ガスバリア層3を貫通して基材2等に達する切り傷を縦横につけて、100個のマス目状とし、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番 24mm幅)をマス状の切り傷面に張り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がす。そして、剥離後の面を目視により観察し、100個のマス目における層残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を接着性の尺度とし、接着性(%)=(1−(剥がれたマス目/100マス))×100を算出して評価する。
上記のクロスカット試験を、ガスバリア性シート1の製造直後と、耐湿熱試験後と、の両方で行えば、製造後の状態におけるガスバリア層3、アンカー層9、基材2等の接着性だけでなく、この接着性の持続性を評価することもできる。そして、耐湿熱試験の方法としては、例えば、温度60℃/湿度95%RHの環境に調整した恒温恒湿器を用い、この恒温恒湿器内に1000時間ガスバリア性シート1を保持することによって行うことができる。
本発明のガスバリア性シートは、フィルム状の形態で用いられることが好ましい。フィルム状とすることにより、ディスプレイ、照明、及び太陽電池等の用途に適用しやすくなる。また、本発明のガスバリア性シートは、巻き取りロール状の形態で用いることも可能であり、有機ELディスプレイ等の製造の後工程に合わせて適宜用いればよい。なお、本発明のガスバリア性シートは、有機ELディスプレイ等の基板として用いることができるだけでなく、封止用の硝子や缶の代替となる封止用フィルムとしても適用が可能である。
[ガスバリア性シートの製造方法]
本発明のガスバリア性シートの製造方法は、アンカー層をロール・ツー・ロール方式で形成するアンカー層形成工程と、ガスバリア層をロール・ツー・ロール方式で形成するガスバリア層形成工程と、を有する。これにより、所定のポリシロキサン重合体を含有するアンカー層の耐熱性・耐プラズマ性が良好になるので、生産性の高いロール・ツー・ロール方式の製造方法を用いて、アンカー層上にガスバリア層を形成した場合においてもガスバリア性シートの特性を良好にしやすくなる。さらに、アンカー層の透明性、耐熱性、及び堅さを制御し、アンカー層とガスバリア層との2層でガスバリア性を確保することができ、さらに、基材、アンカー層、及びガスバリア層がそれぞれ接して設けられた場合には、アンカー層中のSiとガスバリア層中のSiとによりアンカー層とガスバリア層との相互作用が高まるとともに、アンカー層中のSi−C結合が基材との相互作用を良好にする。その結果、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ガスバリア性に優れ、生産性に優れ、加えてハードコート性にも優れ、接着性にも優れるガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法は、上述のとおり、アンカー層形成工程と、ガスバリア層形成工程とを必須とするが、これら以外の工程を適宜行ってもよいことはいうまでもない。具体的に説明すれば、図1のガスバリア性シート1は、基材2を準備する基材準備工程、アンカー層9を形成するアンカー層形成工程、ガスバリア層3を形成するガスバリア層形成工程を順次行うことによって製造されるが、用いる層構成に応じて適宜用いる工程を選択すればよい。以下、代表的な工程につき説明を行う。
(基材準備工程)
基材準備工程は、基材を準備する工程である。基材の製造方法については、図1に示すガスバリア性シート1に用いる基材2の説明を行った際に、樹脂製の基材を用いる場合を例にとって説明したとおり、従来公知の方法を用いて基材を製造することにより準備すればよい。そこで説明の重複を避けるためここでの説明は省略する。また、基材を準備した後、これを洗浄してからその後の工程に用いるようにしてもよい。但し、アンカー層形成工程及びガスバリア層形成工程がロール・ツー・ロール方式で行われるので、基材は長尺に形成し、これを巻き取ってロール状の形態になるように準備する。
(アンカー層形成工程)
アンカー層形成工程では、アンカー層はロール・ツー・ロール方式で形成される。本発明においては、アンカー層に特定のポリシロキサン重合体を用いることにより、アンカー層が耐熱性、耐プラズマ性を備えることとなり、ロール・ツー・ロール方式でガスバリア層を形成した場合でも基材への熱的な影響をアンカー層がブロックして良好な特性を有するガスバリア性シートの製造が可能となる。また、堅さと柔軟性とのバランスに優れたアンカー層を用いることにより、ロール・ツー・ロール方式での製造時のクラック発生も抑制できる。本発明において、特定のポリシロキサン重合体を含有するアンカー層を用いるのは、枚葉のシート状の基材を用いてガスバリア性シートを製造する場合には問題とならない、こうしたロール・ツー・ロール方式の製造方法に特有の点もあるからである。
すなわち、ロール・ツー・ロール方式の製造方法では、巻き出しロールから基材が引き出され、走行する基材上にガスバリア層が形成されることになる。ここで、ガスバリア層は、後述するように、酸化珪素及び導電性材料の混合物又は複合体(無機材料)を真空成膜することによって形成するのが一般的なので、移動する基材上に一定の厚さを持つようにガスバリア層を成膜しようとすると、成膜速度を上げて(ハイレートで)上記無機材料を基材に堆積させることになる。その結果、無機材料が基材に衝突する際に基材に与える熱的影響が大きくなると推測される。特に、ロール・ツー・ロール方式では、通常、基材にはフレキシブルな樹脂材料を用いるので、基材が相対的に熱に弱く、ガスバリア層の成膜時の基材の熱劣化がより大きくなると推測される。このため、基材を熱から守るために、基材とガスバリア層との間に一定の耐熱性・耐プラズマ性等を有するアンカー層を設けることが必要となる。
さらに、ロール・ツー・ロール方式の製造方法では、巻き出しロールから引き出された基材が引っ張られた状態で、基材上へのガスバリア層の成膜が行われる。上述のとおり、基材は通常フレキシブルな樹脂基材から構成されるので、一定の力で引っ張られた状態でガスバリア層の成膜が行われると、瞬間的に軽く延伸された基材上にガスバリア層が形成されることになると推測される。一方、ガスバリア層は、上述のとおり所定の無機材料で構成されるので、膜質として硬くなる傾向にあり、基材ほどの柔軟性がないのが通常である。すなわち、ぴんと張った基材の上に膜質として硬いガスバリア層が成膜されることとなる。ところが、製造後は基材にかかった張力は解除されるので、今度は、基材は、微視的にせよ元の状態に戻ろう(縮もう)とすると推測される。しかしながら、基材の元に戻ろうという力に硬い膜質を有するガスバリア層が追従できないことが原因と推測されるクラックがガスバリア層に発生しやすくなり、ガスバリア性を確保しにくくなる。このため、製造時には張力がかかった基材上に基材よりも硬いガスバリア層が形成される一方で、製造後は上記張力が解除されるという、ロール・ツー・ロール方式の製造方法の特殊性に鑑み、基材とガスバリア層との間に両者の応力を緩和してガスバリア層のクラック発生を抑制するようなアンカー層を設ける必要がある。
こうした、ロール・ツー・ロール方式の製造方法の特殊性に鑑みて検討を行った結果、アンカー層を形成するポリシロキサン重合体を所定の構造にすることで、アンカー層の耐熱性、耐プラズマ性を確保しつつも一定の柔軟性を有する層とすることができるようになる。
アンカー層形成工程におけるアンカー層の形成は、通常、ロール状に巻かれた長尺の基材が供給装置等を用いてロールから引き出され、基材を走行させた状態で、ポリシロキサン重合体等を含有する塗布液を塗布して塗布層を形成する。次いで、この塗布層を乾燥(熱処理)してアンカー層を形成し、その後、巻き取り装置等を用いてアンカー層が形成された基材を巻き取る。長尺の基材を引き出す(巻き出す)ための供給装置や、これを巻き取るための巻き取り装置には、従来公知のものを用いることができる。そこで、以下では、ポリシロキサン重合体等を含有する塗布液について説明した後、この塗布液の塗布方法、熱処理方法、プロセススピード等について順次説明する。
アンカー層形成工程に用いるポリシロキサン重合体の塗布液は、通常、適当な溶媒を調整して、その溶媒中にシロキサン化合物と化合物Aと所定の割合で投入しポリシロキサン重合体を重合し、さらに必要に応じてポリシロキサン重合体以外の材料を添加することによって得ることができる。溶媒は1種類であってもよいし、2種類以上の混合溶媒であってもよい。混合溶媒を用いる場合には、主溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びt−ブタノール等を用いることができる。そして、塗布面の均一性を上げる観点から、副溶媒として、例えば、蟻酸等の低沸点溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシド等の高沸点溶媒を1種類以上用いることができる。混合溶媒における主溶媒の含有量は、通常60重量%以上、90重量%以下とする。但し、基材の表面形状及び親疎水性によって、溶媒の配合は調整される。例えば、接触角が高角度である撥水性の基材に対しては、疎水基を多く有するエーテル及び飽和炭化水素を主溶媒とする場合もある。
シロキサン化合物と化合物Aとを重合する際には、シロキサン化合物及び化合物Aの投入比率、投入方法、温度、雰囲気等を適宜制御すればよい。具体的には、投入比率は、シロキサン化合物及び化合物Aにおいて、上述した所望の重合比(組成)を考慮して適宜制御すればよい。また投入方法は、ポリシロキサン重合体をスムースに重合するために、シロキサン化合物及び化合物Aを一度に投入せずに、投入量を制御して徐々に投入することが好ましい。さらに温度も、通常−20℃以上、60℃以下とすればよい。そして、重合の際の雰囲気は、酸化等を防止するために不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気としては、例えば、アルゴン雰囲気や窒素雰囲気を挙げることができる。このほか、所望のポリシロキサン重合体を得るために従来公知の制御を適宜行ってもよい。なお、シロキサン化合物及び化合物Aの詳細については、すでに説明したとおりなので、ここでの説明は省略する。
また、ポリシロキサン重合体を重合した後に、アンカー層の厚さを制御する観点から、追加で溶媒を添加して固形分濃度を調整してもよい。このときの溶媒の少なくとも一部は重合時と同様の溶媒を用いることが好ましく、例えば混合溶媒を用いた場合には主溶媒と同様の溶媒を少なくとも用いることが好ましい。
こうして得たポリシロキサン重合体の塗布液を、走行する基材上に連続的に塗布して乾燥(熱処理)をしてアンカー層が形成される。塗布は、塗布層を均一に薄く形成できる方法であればよく特に制限はない。こうした塗布方法としては、通常、ダイコート法、スピンコート法、グラビアコート法、(キス)リバースコート法、コンマコート法、リップコート法、CAP(毛細管)コート法、ナイフコート法、及びディップコート法等が適宜使用される。これらの方法を、製造ラインやプロセススピード等に合わせて適宜採用すればよいが、工業生産性や厚さ制御の容易性から、ダイコート法を用いることが好ましい。また、乾燥(熱処理)は、用いる溶媒の沸点やポリシロキサン重合体の構造等を考慮して乾燥温度・時間の制御を適宜行えばよい。具体的には、ポリシロキサン重合体の塗布液の溶媒に低沸点溶媒のみを用いる場合には室温乾燥でもよいが、高沸点溶媒を併用する場合には加熱乾燥を行うことが好ましい。
アンカー層形成工程においては、上記説明したとおり、通常、ロール状に巻かれた長尺の基材がロールから引き出され、基材を走行させた状態でポリシロキサン重合体の塗布液の塗布、乾燥(熱処理)が行われる。こうしたアンカー層の形成は、5m/min以上のプロセススピードで行われることが好ましい。すなわち、アンカー層形成工程におけるアンカー層の形成が、5m/min以上のプロセススピードで走行する基材上にポリシロキサン重合体の塗布液を塗布することによって行われることが好ましい。これにより、工業的に十分に速いプロセススピードで生産を行うことが可能となり、その結果、生産性の高いガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。プロセススピードは、より好ましくは7m/min以上、さらに好ましくは10m/min以上とする。これにより、さらに生産性を良好に確保しやすくなる。
(ガスバリア層形成工程)
ガスバリア層形成工程では、ガスバリア層はロール・ツー・ロール方式で形成される。すなわち、巻き出しロールから、アンカー層が積層された基材が引き出され、走行するアンカー層上にガスバリア層が連続的に形成される。次いで、巻き取り装置等を用いて、基材/アンカー層の被成膜体にガスバリア層が形成された積層体を巻き取っていく。ここで、ガスバリア層の形成は、特に制限はないものの、通常、真空成膜法を用いて行われる。
ガスバリア層形成工程で用いられる真空成膜法は、特に制限はないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、Cat−CVD法やプラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法等を挙げることができる。これら真空成膜法のうち、ガスバリア層形成工程でのガスバリア層の形成がイオンプレーティング法で行われることが好ましい。これにより、ガスバリア層形成時の熱的な影響がより大きくなり、耐熱性・耐プラズマ性の高い所定のアンカー層を設ける意義が大きくなるので、その結果、本発明のガスバリア性シートの製造方法を用いる意義が大きくなる。より具体的には、イオンプレーティング法は、プラズマを蒸発源材料に照射して蒸発源材料を蒸発させて、励起・蒸発された材料がアンカー層上に堆積することになる。加えて、上述のとおり、ロール・ツー・ロール方式ではハイレートでの成膜となるために、堆積する材料のエネルギーはより大きくなる傾向となる。このため、これら粒子が基材に与える熱的な影響を抑制するために、アンカー層に特定のポリシロキサン重合体を用いて製造を行う意義が大きくなる。
さらに、ガスバリア層形成工程でイオンプレーティング法を用いる場合に、ガスバリア層に酸化珪素と導電性材料との混合物又は複合物を含有させる意義も大きくなる。なぜなら、絶縁性材料である酸化珪素とともに導電性材料がイオンプレーティングに用いられる蒸発源材料中に導入されているので、プラズマガンから照射されるプラズマが蒸発源材料に集中的に照射されやすくなるからである。すなわち、酸化珪素のような絶縁性材料単体にプラズマを照射すると、材料表面でのチャージアップや蒸着チャンバーのフローティング部分以外(アース電位部)へプラズマが放電されてプラズマが不安定になり、連続した成膜が行いにくくなる。そこで、導電性材料を蒸発源材料に導入することにより、プラズマの照射が蒸発源材料に集中しやすくなるという作用が奏され、連続した成膜を良好に行いやすくなる。さらに、蒸発源材料中での酸化珪素と導電性材料との分散均一性を高めれば、蒸発源材料中で均一に分散した導電性材料によってプラズマが蒸発源材料の内部まで浸透しやすくなるという作用も奏されやすくなる。このように、蒸発源材料へのプラズマの集中的な照射の作用と、プラズマの蒸発源材料内部への浸透の作用と、が相乗的に発揮されて蒸発源材料の励起が効率よく行われると推測される。そして、蒸発源材料の励起が効率良く行われるために、イオン化率が上昇してガスバリア層の膜質が大きく改善されるものと推測される。
ところで、イオンプレーティング法を採用する場合には、一般的には、プラズマを照射した場合に固相→気相と昇華する性質を有する蒸発源材料を用いることが試みられる。これは、プラズマ照射をした場合に、固相→液相→気相と相変化を起こす蒸発源材料では、液相を経る分だけ成膜速度が遅くなり、成膜時間が長くなるからである。ここで、本発明者の検討によれば、酸化珪素系の材料のうち特に二酸化珪素は、プラズマ照射時に固相→液相→気相と相変化を起こす性質を有するが、酸化珪素と導電性材料とを組み合わせて得られる蒸発源材料は、より溶融しやすくなり液相状態を経てから気化される傾向が助長されることがわかった。したがって、イオンプレーティング法における成膜速度の向上や成膜時間の短縮という観点からは、一見すると、酸化珪素への導電性材料の適用は行いにくいといえる。しかしながら、本発明者がさらに検討を進めた結果、蒸発源材料に導電性材料を導入することによってプラズマガンから照射されるプラズマが蒸発源材料に集中的に照射されるようになり、プラズマの出力が安定して連続的な成膜が良好に行いやすくなることがわかった。加えて、蒸発源材料に小粒径の導電性材料を導入すれば、蒸発源材料の溶融の促進により、蒸発源材料の内部へのプラズマの浸透がより一層進み、蒸発源材料の励起が効率よく行われる結果、成膜されるガスバリア層のガスバリア性が著しく向上することがわかった。こうしたガスバリア性の著しい向上は、ガスバリア性シートにとって非常に有用なものといえる。
こうした観点から、イオンプレーティング法に用いる蒸発源材料に、ガスバリア層を構成する酸化珪素と導電性材料との混合物又は複合物とほぼ同一の組成の材料を用いることが好ましい。こうした蒸着源材料は、通常、粉末状の酸化珪素及び導電性材料を原料として混合してこれを焼結することによって得られる。そして、上述のように、蒸着源材料中で導電性材料の分散性が確保されるように、蒸着源材料の原料たる酸化珪素及び導電性材料ともに、その平均粒径が5μm以下となるようにすることが好ましい。また、緻密なガスバリア層を得るという観点から、平均粒径が5μm以下の酸化珪素の粉末100重量部に対して、平均粒径が5μm以下の導電性材料の粉末を5重量部以上100重量部以下の重量比で混合して、これを焼結することが好ましい。混合は両粉末が均一になるように行えばよく、混合の方法は従来公知の方法を適宜用いることができる。また、焼結の方法も従来公知の方法の適宜用いることができる。具体的には、焼結の際の雰囲気や温度は、原料となる酸化珪素の粉末及び導電性材料の粉末の特性を考慮して、適宜制御すればよい。なお、原料粉末たる酸化珪素の粉末及び導電性材料の粉末の「平均粒径」は、所定量(例えば1g)の粉末を粒度分布計(コールターカウンター法)で測定すればよい。また、酸化珪素の組成や導電性材料の組成等の詳細については、すでに説明したとおりなので、ここでの説明は省略する。なお、蒸発源材料の原料、組成、製造方法等については、特願2007−162497号明細書に記載された事項を適宜参照して用いてもよい。
ガスバリア層形成工程では、上記の蒸発源材料を用い、上述のとおりイオンプレーティング法を行うことが好ましい。イオンプレーティング法とは、真空蒸着とプラズマの複合技術であり、原則としてガスプラズマを利用して、蒸発粒子の一部をイオンもしくは励起粒子とし、活性化して薄膜を形成する方法である。イオンプレーティング法においては、反応ガスのプラズマを利用して蒸発粒子と結合させ、化合物膜を合成させる反応性イオンプレーティングを用いてもよい。プラズマ中の操作であるため、安定なプラズマを得るのが第1条件であり、低ガス圧の領域での弱電離プラズマによる低温プラズマを用いる場合が多い。このため、混合物や複合酸化物を形成する場合に好ましく用いられる。放電を起こす手段から、直流励起型と高周波励起型に大別されるが、ほかに蒸発機構にホローカソード、イオンビームを用いる場合もある。
(その他の工程)
本発明のガスバリア性シートの製造方法においては、上記説明した基板準備工程、アンカー層形成工程、及びガスバリア層形成工程以外にも、ガスバリア性シートに採用する積層構造によって、透明導電層形成工程やハードコート層形成工程等、その他の工程を適宜用いることができる。
[製品]
本発明の製品は、本発明のガスバリア性シートを用いる製品であって、この製品が、ディスプレイ、照明、又は太陽電池である。これにより、より高いガスバリア性が必要とされる製品に本発明のガスバリア性シートが用いられることになり、その結果、より高性能なディスプレイ、照明、及び太陽電池を提供することができる。
本発明のガスバリア性シートは、一般には、上記製品の封止フィルム又はフィルム基板として用いられる。そして、ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等を挙げることができる。また、照明としては、例えば、有機EL照明等を挙げることができる。そして、太陽電池としては、例えば、シリコン太陽電池や化合物半導体を用いた太陽電池等を挙げることができる。このように、ディスプレイ、照明、及び太陽電池は、本発明のガスバリア性シートを用いること以外は、従来公知の部材を適宜用いて形成することができる。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
(ガスバリア性シートの製造)
<基材準備工程>
基材として、厚さが100μmである、ロール状に巻かれた長尺のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(テオネックス(登録商標)Q65F、帝人デュポンフィルム株式会社製)を用いた。
<アンカー層形成工程>
ポリシロキサン重合体の塗布液は、以下のようにして製造した。まず、エタノール61.16gの攪拌下に蟻酸10.01gを少量ずつ添加して、蟻酸のエタノール溶液を調製した。次いで、この溶液を窒素雰囲気下で40℃に加熱し、還流下でテトラエトキシシラン(TEOS)20.83gと、蓚酸ジメチル(化合物A)3.03gと、を滴下して、TEOSと化合物Aとを重合させた。滴下後、室温まで放冷してポリシロキサン重合体の塗布液を調製した。そして、この塗布液に、エタノール:メタノール=2:1の混合溶液を添加し、重量比が1:1(固形分濃度5重量%)となるように希釈した。
次に、ロール状に巻かれた上記長尺のPENフィルムを、供給装置を用いて引き出し、このPENフィルムを走行させながら、その表面に上記のようにして準備したポリシロキサン重合体の塗布液をダイコートにて塗布した。次いで、予備加熱が60℃/1分、熱硬化条件が120℃/3分として、厚さ1μmのアンカー層を形成した。なお、PENフィルムの走行速度(プロセススピード又はライン速度)は、10m/minとした。そして、長尺のPENフィルム上に連続的に形成されたアンカー層を、巻き取り装置を用いて再度ロール状に巻き取った。
<ガスバリア層形成工程>
まず、イオンプレーティング法に用いる蒸着源材料を以下のようにして準備した。
二酸化珪素粉末であるSiO粉末(東ソーシリカ製、粒度分布計・コールターカウンター法で測定された平均粒径:2μm)を100重量部に対し、酸化錫であるSnO粉末(高純度化学社製、粒度分布計・コールターカウンター法で測定された平均粒径:1μm、JIS−K7194準拠4探針法で測定された体積抵抗率が10Ω・cm)を30重量部加えて混合して、原料粉末を得た。この原料粉末にバインダーとして、2%セルロース水溶液を滴下しながら原料粉末を回転させて、10mmφの球状体を得た。その後、焼成炉に入れ、1000℃で1時間保持し、7mmφの塊状物からなるイオンプレーティング用の蒸発源材料(SiOSn)を得た。
上記のようにして得た蒸着源材料を用い、巻取式イオンプレーティング装置を用いて、ガスバリア層を成膜した。具体的には、上記「アンカー層形成工程」で得られた、ロール状に巻き取られた基材/アンカー層の被成膜体を、供給装置を用いて引き出し、この被成膜体を走行させながら、アンカー層上にガスバリア層が形成されるようにガスバリア層の成膜を行った。すなわち、上記蒸発源材料(SiOSn)にプラズマを照射してイオンプレーティング法を行い、被成膜体の走行速度(プロセススピード又はライン速度)を0.5m/minとし、厚さ50nmのSiOSn膜(ガスバリア層)を得た。詳細な成膜条件は以下のとおりである。
成膜条件:
印加電力 10kW
蒸着材料 二酸化珪素/酸化錫=100重量部/30重量部
アルゴン流量 12sccm
成膜圧力 0.04Pa
ライン速度 0.5m/min
以上の工程を経て得られたガスバリア性シートを以後の測定に供するため、適当な大きさに裁断した。
(組成の分析:アンカー層)
アンカー層の組成(ポリシロキサン重合体の構成や重合比)は、XPS(VG Scientific社製ESCA LAB220i−XL装置)により測定した。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300Kcps〜1McpsとなるX線源であるMgKα線を用い、直径約1mmのスリットを使用した。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行った。測定後の解析は、上述のXPS装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、C:1s、N:1s、O:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行った。このとき、C:1sのピークのうち、炭化水素に該当するピークを基準として、各ピークシフトを修正し、ピークの結合状態を帰属させた。そして、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1.0に対して、Si=0.87、N=1.77、O=2.85)を行い、原子数比を求めた。得られた原子数比について、Si原子数を100とし、他の成分である、C、N、及びOの原子数を算出して成分割合とした。アンカー層の組成分析を行った結果、Si:O:N:C=100:223:32:157であった。
(組成の分析:ガスバリア層)
ガスバリア層の組成(SiSnにおけるx、yの値)は、XPS(VG Scientific社製ESCA LAB220i−XL)により測定した。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300Kcps〜1McpsとなるX線源であるMgKα線を用い、直径約1mmのスリットを使用した。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行った。測定後の解析は、上述のXPS装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、Sn:3d、O:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行った。このとき、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1.0に対して、Si=0.87、Sn=24.72、O=2.85)を行い、原子数比を求めた。得られた原子数比について、Si原子数を1とし、他の成分であるSnとOの原子数を算出して成分割合とした。その結果、x=0.5、y=2.5であった。
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率は、測定温度37.8℃、湿度100%Rhの条件下で、水蒸気透過率測定装置(米国MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31:商品名)を用いて測定した。なお、測定に用いた水蒸気透過率測定装置の検出限界は、0.05g/m・dayであるが、水蒸気透過率の測定を行ったところ、検出限界以下であった。
(酸素透過率の測定)
酸素透過率は、測定温度23℃、湿度90%Rhの条件下で、酸素ガス透過率測定装置(米国MOCON社製、OX−TRAN 2/20:商品名)を用いて測定した。なお、測定に用いた酸素ガス透過率測定装置の検出限界は、0.05cc/m・day・atmであるが、酸素透過率を測定したところ検出限界以下であった。
(全光線透過率と色味(YI)の測定)
ガスバリア性シートの全光線透過率とYIは、SMカラーコンピューターSM−C(スガ試験機製)を使用して測定した。測定は、JIS K7105に準拠して実施した。その結果、全光線透過率は89.9%、Y1は1.8であった。
(カールの評価)
カールの発生度合いの評価は、以下のようにして行った。すなわち、作製したガスバリア性シートを15cm×15cmに切り出して、図2に示すガスバリア性シートサンプル10を得た。そして、同図に示すように、ガスバリア性シートサンプル10をステンレス鋼製の基板6上に置き、ガスバリア性シートサンプル10の頂点8とステンレス鋼製の基板6との直交距離Lを測定した。そして、直交距離Lの大きさに応じて、下記評価基準でガスバリア性シートのカールの発生度合いを評価した。その結果、「○」の評価となった。
○:直交距離が1mm以下
△:直交距離が1〜3mm
×:直交距離が3mmより大きい
次に、ガスバリア性シートサンプル10に対してヒートサイクル試験を実施し、ヒートサイクル試験後に直交距離Lを再度測定した。ヒートサイクル試験は、ガスバリア性シートサンプル10を、150℃のオーブンで3時間保持した後室温まで冷却する操作を繰り返し5回行うことにより実施した。そして、ヒートサイクル試験後のガスバリア性シートサンプル10を、再度ステンレス鋼製の基板6上に置き、ガスバリア性シートサンプル10の頂点とステンレス鋼製の基板6との直交距離Lを測定し、直交距離Lの大きさに応じ上記評価基準でガスバリア性シートのカールの発生度合いを評価した。その結果、「○」の評価となった。
(接着性の評価)
ガスバリア性シートの接着性をクロスカット試験によって評価した。具体的には、JIS−K5400の8.5.1の記載に準拠して評価を行った。すなわち、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ガスバリア層を貫通して基材に達する切り傷を縦横につけて、100個のマス目状とし、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番 24mm幅)をマス状の切り傷面に張り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がした。そして、剥離後の面を目視により観察し、100個のマス目における層残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を接着性の尺度とし、接着性(%)=(1−(剥がれたマス目/100マス))×100を算出して評価した。
上記のクロスカット試験を、ガスバリア性シート製造直後と、耐湿熱試験後と、の両方で行った。耐湿熱試験は、エスペック社製のデジタル恒温恒湿器PR−3Kを用い、温度60℃/湿度95%RHの環境下で1000時間ガスバリア性シートを保持することによって行った。
その結果、ガスバリア性シート製造直後の接着性は100%、耐湿熱試験後の接着性も100%であった。
[比較例1]
ガスバリア層を設けなかったこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。そして、実施例1で行った評価のうち、水蒸気透過率の測定、酸素透過率の測定、及び全光線透過率と色味(YI)の測定を行った。その結果、水蒸気透過率は1.4g/m・day、酸素透過率は3.5cc/m・day・atm、全光線透過率は90.1%、YIは−0.5(青色)となった。
[比較例2]
アンカー層を設けなかったこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。そして、実施例1で行った評価のうち、接着性の評価を行った。その結果、ガスバリア性シート製造直後の接着性は100%、耐湿熱試験後の接着性は95%であった。
[比較例3]
アンカー層を、化合物Aを用いずTEOSのみから構成されるポリシロキサン重合体で形成したこと以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートの製造を試みた。具体的には、メタノール32.04gに純水18.01gを加えた溶液を調製した。次いで、この溶液を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、還流下でTEOS20.83gを滴下して1時間攪拌して、塗布液を調製した。この塗布液を用いて基材上へ塗膜形成を試みたが、重合剤が含まれていないために水分による自然重合となって塗工面に粒子が発生したり膜厚むらが生じたりし、ガスバリア性シートを製造することができなかった。
[実施例2]
アンカー層を、TEOS及びマロン酸ジメチル(化合物A)を所定量用いるポリシロキサン重合体で形成したこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートの製造を試みた。以下に、ガスバリア性シートの製造方法につき、実施例1との相違点についてのみ説明する。
具体的には、ポリシロキサン重合体の塗布液を、以下のようにして製造した。まず、エタノール61.16gの攪拌下に蟻酸10.01gを少量ずつ添加して、蟻酸のエタノール溶液を調製した。次いで、この溶液を窒素雰囲気下で40℃に加熱し、還流下でTEOS20.83gと、マロン酸ジメチル(化合物A)3.39gと、を滴下して、TEOSとマロン酸ジメチルとを重合させた。滴下後、室温まで放冷してポリシロキサン重合体の塗布液を調製した。そして、この塗布液に、エタノール:メタノール=1:1の混合溶液を添加し、重量比が1:1(固形分濃度5重量%)となるように希釈した。
次に、ロール状に巻かれた上記長尺のPENフィルムを、供給装置を用いて引き出し、このPENフィルムを走行させながら、その表面に上記のようにして準備したポリシロキサン重合体の塗布液をダイコートにて塗布した。次いで、予備加熱を60℃/1分、熱硬化条件を150℃/15分として、厚さ1μmのアンカー層を形成した。なお、PENフィルムの走行速度(プロセススピード又はライン速度)は、10m/minとした。そして、長尺のPENフィルム上に連続的に形成されたアンカー層を、巻き取り装置を用いて再度ロール状に巻き取った。また、アンカー層の組成分析を行った結果、Si:O:N:C=100:240:15:186であった。
以上の工程を経て得られたガスバリア性シートを以後の測定に供するため、適当な大きさに裁断した。そして、ガスバリア性シートの各種の特性につき、実施例1と同様の評価を行った。なお、水蒸気透過率の測定は、実施例1とは異なり、より高い測定限界(0.5mg/m/day)まで測定できる装置を用いた。
水蒸気透過率:0.009g/m・day
酸素透過率:0.05cc/m・day・atm
全光線透過率:87.1%
YI:2.1
カールの評価:ヒートサイクル試験前後でいずれも「○」
接着性の評価:製造直後100%、耐湿熱試験後95%
[参考例1]
基材を長尺のPENフィルムからシート状(毎葉)のPENフィルムに変更し、ロール・ツー・ロール方式の製造方法を採用しなかったこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
得られたガスバリア性シートの各種の特定につき、実施例1と同様の評価を行った。
水蒸気透過率:0.05g/mday(測定限界)
酸素透過率:0.05cc/m・day・atm(測定限界)
全光線透過率:86.2%
YI:2.7
カールの評価:ヒートサイクル試験前後でいずれも「○」
接着性の評価:製造直後100%、耐湿熱試験後100%
[比較例4]
アンカー層形成工程を以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
<アンカー層形成工程>
ロール状に巻かれた長尺のPENフィルム(基材)を、供給装置を用いて引き出し、このPENフィルムを走行させながら、その表面に下記組成の塗布液をダイコートにて塗布した。次いで、温度120℃で3min乾燥させた後、150mJの紫外線を照射して1μmの厚さになるようにアンカー層を硬化させて形成した。なお、PENフィルムの走行速度(プロセススピード又はライン速度)は、10m/minとした。そして、長尺のPENフィルム上に連続的に形成されたアンカー層を、巻き取り装置を用いて再度ロール状に巻き取った。
塗布液の組成
イソシアヌル酸OE変性ジアクリレート(東亞合成株式会社製:M−215):40重量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバガイギー製 商品名:イルガキュア184):2重量部
トルエン:60重量部
以上の工程を経て得られたガスバリア性シートを以後の測定に供するため、適当な大きさに裁断した。そして、ガスバリア性シートの各種の特性につき、実施例1と同様の評価を行った。
水蒸気透過率:0.6g/mday
酸素透過率:0.05cc/m・day・atm
全光線透過率:90.0%
YI:0.9
カールの評価:ヒートサイクル試験前後でいずれも「×」
接着性の評価:製造直後100%、耐湿熱試験後75%
[比較例5]
基材を長尺のPENフィルムからシート状(毎葉)のPENフィルムに変更し、ロール・ツー・ロール方式の製造方法を採用しなかったこと、以外は比較例4と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
得られたガスバリア性シートの各種の特性につき、実施例1と同様の評価を行った。
水蒸気透過率:0.06g/mday
酸素透過率:0.05cc/m・day・atm
全光線透過率:89.2%
YI:1.0
カールの評価:ヒートサイクル試験前後でいずれも「○」
接着性の評価:製造直後100%、耐湿熱試験後100%
本発明のガスバリア性シートの一例を示す模式的な断面図である。 ガスバリア性シートのカールの度合いを測定する方法を示す模式的な断面図である。
符号の説明
1 ガスバリア性シート
2 基材
3 ガスバリア層
6 ステンレス鋼製の基板
8 頂点
9 アンカー層
10 ガスバリア性シートサンプル
11 一方の面
12 他方の面

Claims (5)

  1. 基材と、該基材の一方の面の側に設けられたアンカー層と、該アンカー層の上に設けられたガスバリア層と、を有するガスバリア性シートにおいて、
    前記アンカー層が、シロキサン化合物と、重合時に該シロキサン化合物が有する水酸基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物Aと、から構成されるポリシロキサン重合体を含有し、
    前記ガスバリア層が、酸化珪素と、体積抵抗率が1.4μΩ・cm以上、1kΩ・cm以下の導電性の無機材料との混合物又は複合物を含有することを特徴とするガスバリア性シート。
  2. 前記化合物Aがカルボン酸エステルである、請求項1に記載のガスバリア性シート。
  3. 請求項1又は2に記載のガスバリア性シートの製造方法であって、
    アンカー層をロール・ツー・ロール方式で形成するアンカー層形成工程と、
    ガスバリア層をロール・ツー・ロール方式で形成するガスバリア層形成工程と、
    を有することを特徴とするガスバリア性シートの製造方法。
  4. 前記ガスバリア層形成工程での前記ガスバリア層の形成がイオンプレーティング法で行われる、請求項3に記載のガスバリア性シートの製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載のガスバリア性シートを用いた製品であって、該製品が、ディスプレイ、照明、又は太陽電池であることを特徴とする製品。
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