JP2010143091A - ガスバリア性シート、ガスバリア性シートの製造方法、及び製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材2と、基材2の一方の面11の側に設けられたアンカー層9と、アンカー層9の上に設けられたガスバリア層3と、を有するガスバリア性シート1において、アンカー層9が、シロキサン化合物と、重合時にこのシロキサン化合物が有する水酸基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物Aと、から構成されるポリシロキサン重合体を含有し、ガスバリア層3が、酸化珪素と導電性材料との混合物又は複合物を含有することによって、上記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
図1は本発明のガスバリア性シートの一例を示す模式的な断面図である。
基材2としては、各種の基材を用いることができ、主にはシート状やフィルム状、巻き取りロール状のものが用いられる。基材2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリシルセスキオキサン、ポリノルボルネン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、非晶質シクロポリオレフィン、セルローストリアセテート等のフレキシブル基板を用いることができる。基材2が樹脂製である場合、用いる樹脂としては上記例示した樹脂を適宜混合して用いてもよい。また、基材2が樹脂製である場合、好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上の耐熱性を有するものが適当である。
アンカー層9は、シロキサン化合物と、重合時にこのシロキサン化合物が有する水酸基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物Aと、から構成されるポリシロキサン重合体を含有する。より具体的には、ポリシロキサン重合体は、シロキサン化合物と化合物Aとを重合させることによって得られるものである。これにより、ポリシロキサン重合体の構造を制御してアンカー層9の透明性、耐熱性、及び堅さを制御することができ、その結果、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ハードコート性に優れるガスバリア性シート1を提供することができる。より具体的には、シロキサン化合物の重合度や架橋度を化合物Aによって制御したポリシロキサン重合体を得ることができる。このため、ポリシロキサン重合体が有するSi−O結合の比率を調整してアンカー層9の透明性、耐熱性、及び堅さを制御することができる。
ガスバリア層3は、酸化珪素と導電性材料との混合物又は複合物を含有する。これにより、ガスバリア層3の密度が高くなり、ガスバリア性を高くしやすくするとともに、所定量の酸素の導入により膜応力を低減させることでカールも発生しにくくなる。特に、有機ELディスプレイ等の耐久試験として行われるヒートサイクル試験後においても、カールの発生が抑制され、ガスバリア性能も維持されるガスバリア性シート1を提供することができる。
上記説明した、基材2、アンカー層9、及びガスバリア層3以外にも、必要に応じて他の層を用いることもできる。こうしたものとしては、例えば、透明導電層、ハードコート層、吸湿層、放熱層、反射防止層、帯電防止層、防汚層、防眩層、カラーフィルタ及び平滑化層を挙げることができる。これらのうち、反射防止層、帯電防止層、防汚層、防眩層、カラーフィルタは、光学粘着剤を介して本発明のガスバリア性シートと貼り合わせることで、所望の機能を得てもよい。こうした各層は、従来公知のものを適宜用いればよい。
ガスバリア性シート1は、通常、水蒸気透過率が0.1g/m2/day(g/m2・day)以下で、酸素透過率が0.1cc/m2/day・atm(cc/m2・day・atm)以下の高いガスバリア性を示す。
本発明のガスバリア性シートの製造方法は、アンカー層をロール・ツー・ロール方式で形成するアンカー層形成工程と、ガスバリア層をロール・ツー・ロール方式で形成するガスバリア層形成工程と、を有する。これにより、所定のポリシロキサン重合体を含有するアンカー層の耐熱性・耐プラズマ性が良好になるので、生産性の高いロール・ツー・ロール方式の製造方法を用いて、アンカー層上にガスバリア層を形成した場合においてもガスバリア性シートの特性を良好にしやすくなる。さらに、アンカー層の透明性、耐熱性、及び堅さを制御し、アンカー層とガスバリア層との2層でガスバリア性を確保することができ、さらに、基材、アンカー層、及びガスバリア層がそれぞれ接して設けられた場合には、アンカー層中のSiとガスバリア層中のSiとによりアンカー層とガスバリア層との相互作用が高まるとともに、アンカー層中のSi−C結合が基材との相互作用を良好にする。その結果、透明性に優れ、耐熱性が高く、カールがしにくく、ガスバリア性に優れ、生産性に優れ、加えてハードコート性にも優れ、接着性にも優れるガスバリア性シートの製造方法を提供することができる。
基材準備工程は、基材を準備する工程である。基材の製造方法については、図1に示すガスバリア性シート1に用いる基材2の説明を行った際に、樹脂製の基材を用いる場合を例にとって説明したとおり、従来公知の方法を用いて基材を製造することにより準備すればよい。そこで説明の重複を避けるためここでの説明は省略する。また、基材を準備した後、これを洗浄してからその後の工程に用いるようにしてもよい。但し、アンカー層形成工程及びガスバリア層形成工程がロール・ツー・ロール方式で行われるので、基材は長尺に形成し、これを巻き取ってロール状の形態になるように準備する。
アンカー層形成工程では、アンカー層はロール・ツー・ロール方式で形成される。本発明においては、アンカー層に特定のポリシロキサン重合体を用いることにより、アンカー層が耐熱性、耐プラズマ性を備えることとなり、ロール・ツー・ロール方式でガスバリア層を形成した場合でも基材への熱的な影響をアンカー層がブロックして良好な特性を有するガスバリア性シートの製造が可能となる。また、堅さと柔軟性とのバランスに優れたアンカー層を用いることにより、ロール・ツー・ロール方式での製造時のクラック発生も抑制できる。本発明において、特定のポリシロキサン重合体を含有するアンカー層を用いるのは、枚葉のシート状の基材を用いてガスバリア性シートを製造する場合には問題とならない、こうしたロール・ツー・ロール方式の製造方法に特有の点もあるからである。
ガスバリア層形成工程では、ガスバリア層はロール・ツー・ロール方式で形成される。すなわち、巻き出しロールから、アンカー層が積層された基材が引き出され、走行するアンカー層上にガスバリア層が連続的に形成される。次いで、巻き取り装置等を用いて、基材/アンカー層の被成膜体にガスバリア層が形成された積層体を巻き取っていく。ここで、ガスバリア層の形成は、特に制限はないものの、通常、真空成膜法を用いて行われる。
本発明のガスバリア性シートの製造方法においては、上記説明した基板準備工程、アンカー層形成工程、及びガスバリア層形成工程以外にも、ガスバリア性シートに採用する積層構造によって、透明導電層形成工程やハードコート層形成工程等、その他の工程を適宜用いることができる。
本発明の製品は、本発明のガスバリア性シートを用いる製品であって、この製品が、ディスプレイ、照明、又は太陽電池である。これにより、より高いガスバリア性が必要とされる製品に本発明のガスバリア性シートが用いられることになり、その結果、より高性能なディスプレイ、照明、及び太陽電池を提供することができる。
(ガスバリア性シートの製造)
<基材準備工程>
基材として、厚さが100μmである、ロール状に巻かれた長尺のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(テオネックス(登録商標)Q65F、帝人デュポンフィルム株式会社製)を用いた。
ポリシロキサン重合体の塗布液は、以下のようにして製造した。まず、エタノール61.16gの攪拌下に蟻酸10.01gを少量ずつ添加して、蟻酸のエタノール溶液を調製した。次いで、この溶液を窒素雰囲気下で40℃に加熱し、還流下でテトラエトキシシラン(TEOS)20.83gと、蓚酸ジメチル(化合物A)3.03gと、を滴下して、TEOSと化合物Aとを重合させた。滴下後、室温まで放冷してポリシロキサン重合体の塗布液を調製した。そして、この塗布液に、エタノール:メタノール=2:1の混合溶液を添加し、重量比が1:1(固形分濃度5重量%)となるように希釈した。
まず、イオンプレーティング法に用いる蒸着源材料を以下のようにして準備した。
印加電力 10kW
蒸着材料 二酸化珪素/酸化錫=100重量部/30重量部
アルゴン流量 12sccm
成膜圧力 0.04Pa
ライン速度 0.5m/min
アンカー層の組成(ポリシロキサン重合体の構成や重合比)は、XPS(VG Scientific社製ESCA LAB220i−XL装置)により測定した。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300Kcps〜1McpsとなるX線源であるMgKα線を用い、直径約1mmのスリットを使用した。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行った。測定後の解析は、上述のXPS装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、C:1s、N:1s、O:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行った。このとき、C:1sのピークのうち、炭化水素に該当するピークを基準として、各ピークシフトを修正し、ピークの結合状態を帰属させた。そして、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1.0に対して、Si=0.87、N=1.77、O=2.85)を行い、原子数比を求めた。得られた原子数比について、Si原子数を100とし、他の成分である、C、N、及びOの原子数を算出して成分割合とした。アンカー層の組成分析を行った結果、Si:O:N:C=100:223:32:157であった。
ガスバリア層の組成(SiSnxOyにおけるx、yの値)は、XPS(VG Scientific社製ESCA LAB220i−XL)により測定した。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300Kcps〜1McpsとなるX線源であるMgKα線を用い、直径約1mmのスリットを使用した。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行った。測定後の解析は、上述のXPS装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、Sn:3d、O:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行った。このとき、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1.0に対して、Si=0.87、Sn=24.72、O=2.85)を行い、原子数比を求めた。得られた原子数比について、Si原子数を1とし、他の成分であるSnとOの原子数を算出して成分割合とした。その結果、x=0.5、y=2.5であった。
水蒸気透過率は、測定温度37.8℃、湿度100%Rhの条件下で、水蒸気透過率測定装置(米国MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31:商品名)を用いて測定した。なお、測定に用いた水蒸気透過率測定装置の検出限界は、0.05g/m2・dayであるが、水蒸気透過率の測定を行ったところ、検出限界以下であった。
酸素透過率は、測定温度23℃、湿度90%Rhの条件下で、酸素ガス透過率測定装置(米国MOCON社製、OX−TRAN 2/20:商品名)を用いて測定した。なお、測定に用いた酸素ガス透過率測定装置の検出限界は、0.05cc/m2・day・atmであるが、酸素透過率を測定したところ検出限界以下であった。
ガスバリア性シートの全光線透過率とYIは、SMカラーコンピューターSM−C(スガ試験機製)を使用して測定した。測定は、JIS K7105に準拠して実施した。その結果、全光線透過率は89.9%、Y1は1.8であった。
カールの発生度合いの評価は、以下のようにして行った。すなわち、作製したガスバリア性シートを15cm×15cmに切り出して、図2に示すガスバリア性シートサンプル10を得た。そして、同図に示すように、ガスバリア性シートサンプル10をステンレス鋼製の基板6上に置き、ガスバリア性シートサンプル10の頂点8とステンレス鋼製の基板6との直交距離Lを測定した。そして、直交距離Lの大きさに応じて、下記評価基準でガスバリア性シートのカールの発生度合いを評価した。その結果、「○」の評価となった。
△:直交距離が1〜3mm
×:直交距離が3mmより大きい
ガスバリア性シートの接着性をクロスカット試験によって評価した。具体的には、JIS−K5400の8.5.1の記載に準拠して評価を行った。すなわち、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ガスバリア層を貫通して基材に達する切り傷を縦横につけて、100個のマス目状とし、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番 24mm幅)をマス状の切り傷面に張り付け、消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がした。そして、剥離後の面を目視により観察し、100個のマス目における層残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を接着性の尺度とし、接着性(%)=(1−(剥がれたマス目/100マス))×100を算出して評価した。
ガスバリア層を設けなかったこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。そして、実施例1で行った評価のうち、水蒸気透過率の測定、酸素透過率の測定、及び全光線透過率と色味(YI)の測定を行った。その結果、水蒸気透過率は1.4g/m2・day、酸素透過率は3.5cc/m2・day・atm、全光線透過率は90.1%、YIは−0.5(青色)となった。
アンカー層を設けなかったこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。そして、実施例1で行った評価のうち、接着性の評価を行った。その結果、ガスバリア性シート製造直後の接着性は100%、耐湿熱試験後の接着性は95%であった。
アンカー層を、化合物Aを用いずTEOSのみから構成されるポリシロキサン重合体で形成したこと以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートの製造を試みた。具体的には、メタノール32.04gに純水18.01gを加えた溶液を調製した。次いで、この溶液を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、還流下でTEOS20.83gを滴下して1時間攪拌して、塗布液を調製した。この塗布液を用いて基材上へ塗膜形成を試みたが、重合剤が含まれていないために水分による自然重合となって塗工面に粒子が発生したり膜厚むらが生じたりし、ガスバリア性シートを製造することができなかった。
アンカー層を、TEOS及びマロン酸ジメチル(化合物A)を所定量用いるポリシロキサン重合体で形成したこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートの製造を試みた。以下に、ガスバリア性シートの製造方法につき、実施例1との相違点についてのみ説明する。
酸素透過率:0.05cc/m2・day・atm
全光線透過率:87.1%
YI:2.1
カールの評価:ヒートサイクル試験前後でいずれも「○」
接着性の評価:製造直後100%、耐湿熱試験後95%
基材を長尺のPENフィルムからシート状(毎葉)のPENフィルムに変更し、ロール・ツー・ロール方式の製造方法を採用しなかったこと、以外は実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
酸素透過率:0.05cc/m2・day・atm(測定限界)
全光線透過率:86.2%
YI:2.7
カールの評価:ヒートサイクル試験前後でいずれも「○」
接着性の評価:製造直後100%、耐湿熱試験後100%
アンカー層形成工程を以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
ロール状に巻かれた長尺のPENフィルム(基材)を、供給装置を用いて引き出し、このPENフィルムを走行させながら、その表面に下記組成の塗布液をダイコートにて塗布した。次いで、温度120℃で3min乾燥させた後、150mJの紫外線を照射して1μmの厚さになるようにアンカー層を硬化させて形成した。なお、PENフィルムの走行速度(プロセススピード又はライン速度)は、10m/minとした。そして、長尺のPENフィルム上に連続的に形成されたアンカー層を、巻き取り装置を用いて再度ロール状に巻き取った。
イソシアヌル酸OE変性ジアクリレート(東亞合成株式会社製:M−215):40重量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバガイギー製 商品名:イルガキュア184):2重量部
トルエン:60重量部
酸素透過率:0.05cc/m2・day・atm
全光線透過率:90.0%
YI:0.9
カールの評価:ヒートサイクル試験前後でいずれも「×」
接着性の評価:製造直後100%、耐湿熱試験後75%
基材を長尺のPENフィルムからシート状(毎葉)のPENフィルムに変更し、ロール・ツー・ロール方式の製造方法を採用しなかったこと、以外は比較例4と同様にしてガスバリア性シートを製造した。
酸素透過率:0.05cc/m2・day・atm
全光線透過率:89.2%
YI:1.0
カールの評価:ヒートサイクル試験前後でいずれも「○」
接着性の評価:製造直後100%、耐湿熱試験後100%
2 基材
3 ガスバリア層
6 ステンレス鋼製の基板
8 頂点
9 アンカー層
10 ガスバリア性シートサンプル
11 一方の面
12 他方の面
Claims (5)
- 基材と、該基材の一方の面の側に設けられたアンカー層と、該アンカー層の上に設けられたガスバリア層と、を有するガスバリア性シートにおいて、
前記アンカー層が、シロキサン化合物と、重合時に該シロキサン化合物が有する水酸基と反応しうる官能基を分子内に有する化合物Aと、から構成されるポリシロキサン重合体を含有し、
前記ガスバリア層が、酸化珪素と導電性材料との混合物又は複合物を含有することを特徴とするガスバリア性シート。 - 前記化合物Aがカルボン酸エステルである、請求項1に記載のガスバリア性シート。
- 請求項1又は2に記載のガスバリア性シートの製造方法であって、
アンカー層をロール・ツー・ロール方式で形成するアンカー層形成工程と、
ガスバリア層をロール・ツー・ロール方式で形成するガスバリア層形成工程と、
を有することを特徴とするガスバリア性シートの製造方法。 - 前記ガスバリア層形成工程での前記ガスバリア層の形成がイオンプレーティング法で行われる、請求項3に記載のガスバリア性シートの製造方法。
- 請求項1又は2に記載のガスバリア性シートを用いた製品であって、該製品が、ディスプレイ、照明、又は太陽電池であることを特徴とする製品。
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