特許文献1に開示されるヒートローラにおいては、ヒートローラの周面に複数の電極が設けられて、複数の電極間で電流が流れるので、面状発熱体において電流が流れて発熱する領域(発熱領域)が、電流の流れ方向に複数できることになる。
面状発熱体において発熱領域が電流の流れ方向に複数できる場合には、電極の配置間隔、各発熱領域における面状発熱体の発熱層の厚さバラツキ等によって、各発熱領域における電気抵抗値が完全には同一にならないことがある。そのため、各発熱領域のうち、電気抵抗値の低い領域に多くの電流が流れ、相対的に発熱量が多くなる。このようにして、面状発熱体表面の電流の流れ方向における発熱量分布が不均一になり、ヒートローラ表面の電流の流れ方向における温度分布が不均一となる。
このようなヒートローラを定着装置の加熱定着ローラに適用して、ローラ表面の温度分布が不均一になると、均一な定着能力が達成できない。そのため、記録媒体上に形成された定着画像には、光沢ムラ、定着強度のバラツキが発生し、定着画像の品位が低下してしまう。
したがって本発明の目的は、ローラ表面に形成された面状発熱体からなる発熱層において、発熱層の電流の流れ方向における電気抵抗値バラツキが発生するのを防止して発熱量分布の均一化が可能となり、定着ローラ表面の温度分布を均一化して、均一な定着能力が達成可能な定着装置を提供することである。また、このような定着装置を備えた画像形成装置を提供することである。
本発明は、定着ローラと前記定着ローラに対向する加圧ローラとを備え、定着ローラと加圧ローラとで形成する定着ニップ部において、記録媒体上に担持されているトナー像を記録媒体上に加熱加圧して定着する定着装置であって、
前記定着ローラ表面には、正の抵抗温度特性を有する面状発熱体からなり、電流が供給されることによって発熱する発熱層が形成され、
前記発熱層には、発熱層に流れる電流の流れ方向が定着ローラの軸線方向と略直交する方向となるように、一組の電極部が定着ローラの軸線方向と平行に形成され、
前記発熱層において、前記一組の電極部の間に挟まれる2つの領域のうち、面積の小さい方の領域が電流を流さない電極絶縁部であることを特徴とする定着装置である。
また本発明は、前記電極絶縁部は、前記発熱層の面積に対する電極絶縁部の面積割合が、0.1%以上3%以下となるように形成されることを特徴とする。
また本発明は、前記定着ローラは、ローラ基材の外周面に前記発熱層が形成され、最外層にはトナー付着が防止可能な離型層が形成されることを特徴とする。
また本発明は、前記定着ローラ表面の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段によって検出された温度データに基づいて、前記定着ローラの表面温度が所定の温度となるように、前記発熱層への給電電力を制御する温度制御手段とを備えることを特徴とする。
また本発明は、前記発熱層に給電する電圧が印加される接点部が、前記定着ローラの表面に対向して設けられ、
前記発熱層の幅手方向両端部には、前記接点部に印加された電圧によって流れる電流を受電して前記電極部に供給する受電部が、周方向全体にわたって形成され、
前記受電部は、前記定着ローラが軸線まわりに回転するときに、前記接点部に摺動して受電するように構成されることを特徴とする。
また本発明は、定着ローラと発熱支持ローラとの間に張架された無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトを介して前記定着ローラに対向する加圧ローラとを備え、前記発熱支持ローラが前記定着ベルトと接触して定着ベルトを加熱し、前記定着ベルトと前記加圧ローラとで形成する定着ニップ部において、記録媒体上に担持されているトナー像を記録媒体上に加熱加圧して定着する定着装置であって、
前記発熱支持ローラ表面には、正の抵抗温度特性を有する面状発熱体からなり、電流が供給されることによって発熱する発熱層が形成され、
前記発熱層には、発熱層に流れる電流の流れ方向が定着ローラの軸線方向と略直交する方向となるように、一組の電極部が発熱支持ローラの軸線方向と平行に形成され、
前記発熱層において、前記一組の電極部の間に挟まれる2つの領域のうち、面積の小さい方の領域が電流を流さない電極絶縁部であることを特徴とする定着装置である。
また本発明は、前記発熱支持ローラは、支持ローラ基材の外周面に前記発熱層が形成され、最外層には前記定着ベルトとの間の摩擦力が低減可能な保護層が形成されることを特徴とする。
また本発明は、前記定着ベルト表面の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段によって検出された温度データに基づいて、前記定着ベルトの表面温度が所定の温度となるように、前記発熱層への給電電力を制御する温度制御手段とを備えることを特徴とする。
また本発明は、前記発熱層に給電する電圧が印加される接点部が、前記発熱支持ローラの表面に対向して設けられ、
前記発熱層の幅手方向両端部には、前記接点部に印加された電圧によって流れる電流を受電して前記電極部に供給する受電部が、周方向全体にわたって形成され、
前記受電部は、前記発熱支持ローラが軸線まわりに回転するときに、前記接点部に摺動して受電するように構成されることを特徴とする。
また本発明は、前記発熱層の幅手方向の長さは、定着ニップ部を通過する記録媒体の最大幅よりも長く設定されることを特徴とする。
また本発明は、前記定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
本発明によれば、定着ローラ表面には、正の抵抗温度特性を有する面状発熱体からなり、電流が供給されることによって発熱する発熱層が形成される。そして、発熱層には、発熱層に流れる電流の流れ方向が定着ローラの軸線方向と略直交する方向となるように、一組の電極部が定着ローラの軸線方向と平行に形成される。さらに、発熱層において、一組の電極部の間に挟まれる2つの領域のうち、面積の小さい方の領域には、電流を流さない電極絶縁部が形成される。
たとえば、発熱層において、一組の電極部の間に挟まれる2つの領域のそれぞれに電流が流れて、2つの発熱領域が形成された場合には、電極の配置間隔や各発熱領域における発熱層の厚さバラツキ等によって、各発熱領域における電気抵抗値が完全には同一にならないことがある。そのため、各発熱領域のうち、電気抵抗値の低い領域に多くの電流が流れ、相対的に発熱量が多くなる。このようにして、発熱層の電流の流れ方向における発熱量分布が不均一になる。
これに対して、発熱層は、一組の電極部の間に挟まれる2つの領域のうち、面積の小さい方の領域が電流を流さない電極絶縁部であるので、発熱領域を面積の大きい方の一領域に規定することができる。そのため、電流の流れ方向における電気抵抗値バラツキが発生するのを、面積の大きい方の一領域で防止して、発熱量分布の均一化が可能となる。そのため、発熱層において面積の大きい方の一領域である発熱領域に対応する定着ローラ表面において、電流の流れ方向における温度分布の均一化が可能となり、定着ニップ部における均一な定着能力が達成可能となる。したがって、光沢ムラ、定着強度のバラツキのない均一で高品位な定着画像を得ることができる。
また本発明によれば、電極絶縁部は、発熱層の面積に対する電極絶縁部の面積割合が、0.1%以上3%以下となるように形成される。これによって、電極絶縁部における充分な絶縁性を確保することができるとともに、発熱層における発熱領域の面積が小さくなり過ぎるのを防止して、発熱領域において発生した熱が定着ローラ表面全体に伝導し、定着ローラ表面における均一な温度分布を維持することができる。
また本発明によれば、定着ローラは、ローラ基材の外周面に発熱層が形成され、最外層にはトナー付着が防止可能な離型層が形成される。発熱層は、ローラ基材の外周面に形成されているので、発熱層から記録媒体に接触する定着面までの熱伝導距離が短くなる。そのため、発熱層の発熱による定着ローラ表面の温度制御性が向上し、定着ローラ表面の温度をより高精度に制御することができる。また、定着ローラにおける定着面となる最外層には、離型層が形成されているので、記録媒体上に担持されるトナーが定着ローラ表面に付着するのを防止することができる。
また本発明によれば、温度検知手段が定着ローラ表面の温度を検出する。そして、温度制御手段は、検出された温度データに基づいて、定着ローラの表面温度が所定の温度となるように、発熱層への給電電力を制御する。そのため、記録媒体が通過する定着ニップ部を形成する定着ローラ表面の温度が所定の温度となるように、直接高精度に制御することができる。
また本発明によれば、発熱層に給電する電圧が印加される接点部が、定着ローラの表面に対向して設けられている。そして、発熱層の幅手方向両端部には、接点部に印加された電圧によって流れる電流を受電して電極部に供給する受電部が、周方向全体にわたって形成されている。そして、受電部は、定着ローラが軸線まわりに回転するときに、接点部に摺動して受電するように構成される。そのため、定着ローラが軸線まわりに回転しているときにも、接点部から受電部に安定して給電することができる。
また本発明によれば、定着装置は、発熱支持ローラが定着ベルトと接触して定着ベルトを加熱し、定着ベルトと加圧ローラとで形成する定着ニップ部において、記録媒体上に担持されているトナー像を記録媒体上に加熱加圧して定着する。このような定着装置において、発熱支持ローラ表面には、正の抵抗温度特性を有する面状発熱体からなり、電流が供給されることによって発熱する発熱層が形成される。そして、発熱層には、発熱層に流れる電流の流れ方向が発熱支持ローラの軸線方向と略直交する方向となるように、一組の電極部が発熱支持ローラの軸線方向と平行に形成される。さらに、発熱層において、一組の電極部の間に挟まれる2つの領域のうち、面積の小さい方の領域が電流を流さない電極絶縁部である。
発熱層においては、一組の電極部の間に挟まれる2つの領域のうち、電極絶縁部が形成されていない側の領域にのみ電流が流れ、発熱する発熱領域が面積の大きい方の一領域に規定される。そのため、電流の流れ方向における電気抵抗値バラツキが発生するのを、面積の大きい方の一領域で防止して、発熱量分布の均一化が可能となる。そのため、発熱層の発熱領域に対応する発熱支持ローラ表面において、電流の流れ方向における温度分布の均一化が可能となる。これによって、発熱支持ローラは、定着ベルト表面の温度分布が均一となるように、定着ベルトを加熱することができる。したがって、定着ベルトと加圧ローラとで形成される定着ニップ部における均一な定着能力が達成可能となる。
また本発明によれば、発熱支持ローラは、支持ローラ基材の外周面に発熱層が形成され、最外層には定着ベルトとの間の摩擦力が低減可能な保護層が形成される。発熱層は、支持ローラ基材の外周面に形成されているので、発熱層から定着ベルトまでの熱伝導距離が短くなる。そのため、発熱層の発熱による定着ベルト表面の温度制御性が向上し、定着ベルト表面の温度をより高精度に制御することができる。また、発熱支持ローラにおける定着ベルトと接触する面となる最外層には、保護層が形成されているので、定着ベルトが発熱支持ローラと接触して摺動しても、発熱支持ローラ表面が摩耗するのを防止することができる。そのため、発熱支持ローラ表面に形成される発熱層が、長期間にわたって安定して均一に発熱することができる。
また本発明によれば、温度検知手段が定着ベルト表面の温度を検出する。そして、温度制御手段は、検出された温度データに基づいて、定着ベルトの表面温度が所定の温度となるように、発熱層への給電電力を制御する。そのため、記録媒体が通過する定着ニップ部を形成する定着ベルト表面の温度が所定の温度となるように、直接高精度に制御することができる。
また本発明によれば、発熱層に給電する電圧が印加される接点部が、発熱支持ローラの表面に対向して設けられている。そして、発熱層の幅手方向両端部には、接点部に印加された電圧によって流れる電流を受電して電極部に供給する受電部が、周方向全体にわたって形成されている。そして、受電部は、発熱支持ローラが軸線まわりに回転するときに、接点部に摺動して受電するように構成される。そのため、発熱支持ローラが軸線まわりに回転しているときにも、接点部から受電部に安定して給電することができる。
また本発明によれば、発熱層の幅手方向の長さは、定着ニップ部を通過する記録媒体の最大幅よりも長く設定される。これによって、発熱層は、記録媒体が通過する幅範囲に対応した領域において均一に発熱し、定着ニップ部の幅範囲における温度分布の均一化が可能となる。
また本発明によれば、画像形成装置が、定着面の温度分布の均一化が可能となった前記定着装置を備える。そのため、光沢ムラ、定着強度のバラツキのない均一で高品位な画像を形成することができる。
図1は、本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、読み取った原稿の画像データやネットワーク等を介して送信された画像データに基づいて記録媒体である記録紙1に対して多色および単色の画像を形成する装置である。画像形成装置100は、可視像形成ユニット10と、給紙トレイ20と、記録紙搬送手段30と、定着装置40とを備える。画像形成装置100は、ブラック(K)およびカラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色の各色相に対応した画像データを用いて、各色相に対応した可視像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにおいて画像形成を行う。4色相に対応する可視像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは、記録紙1が搬送される搬送路に沿って一列に配列した所謂タンデム式の画像形成装置である。
記録紙搬送手段30は、一対の駆動ローラ31およびアイドリングローラ32によって架張され、所定の周速度に制御されて回動方向Bに回動する無端状の搬送ベルト33を有し、給紙トレイ20から供給された記録紙1を、搬送ベルト33に静電吸着させて、可視像形成ユニット10に向かう方向である搬送方向Aに搬送する。
可視像形成ユニット10は、記録紙搬送手段30によって搬送される記録紙1に画像を形成する。可視像形成ユニット10を構成する各部材は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色相に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。可視像形成ユニット10は、感光体ドラム11と、帯電ローラ12と、レーザ光照射手段13と、現像器14と、転写ローラ15と、クリーナー16とを含んで構成される。
帯電ローラ12は、感光体ドラム11の表面を所定の電位に均一に帯電させる接触方式の帯電器である。帯電ローラ12に代えて、帯電ブラシを用いた接触方式の帯電器、または、帯電ワイヤを用いた非接触方式の帯電器を用いることもできる。
レーザ光照射手段13は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによって変調されたレーザビーム等の光ビームのそれぞれを、対応する感光体ドラム11に照射する。感光体ドラム11は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによる静電潜像を形成する。
現像器14は、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に現像剤であるトナーを供給し、静電潜像をトナー像に現像する。各可視像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kに備えられる現像器14のそれぞれは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相のトナーを収納しており、感光体ドラム11に形成された各色相の静電潜像を、各色相のトナー像に顕像化する。クリーナー16は、現像・画像転写後における感光体ドラム11上の表面に残留したトナーを除去・回収する。
転写ローラ15は、顕像化されたトナー像を、トナーとは逆極性のバイアス電圧を印加して、顕像化されたトナー像を、搬送手段30によって搬送される記録紙1に順次転写する。トナー像が転写された記録紙1は、駆動ローラ31の曲率によって搬送ベルト33から剥離された後、定着装置40に搬送される。
図2は、本発明の第1実施形態である定着装置40の構成を示す断面図である。また、図3は、定着装置40が有する定着ローラ41の構成を示す断面図である。また、図4は、定着ローラ41に形成される発熱層53の周面を展開した図である。定着装置40は、定着ローラ41と、加圧ローラ42とを含んで構成される。定着装置40においては、定着ローラ41および加圧ローラ42は、所定の荷重(本実施の形態では300N程度)で互いに圧接し、それらの間に定着ニップ部(定着ローラ41および加圧ローラ42が互いに当接する部分)を形成している。
定着装置40は、所定の定着速度(本実施の形態では200mm/sec)および複写速度(本実施の形態ではA4サイズ紙横送りで30枚/分)で、記録紙1が定着ニップ部を通過したとき、記録紙1上に担持されているトナー像1aを記録紙1上に加熱加圧して定着する装置である。記録紙1が定着ニップ部を通過する時には、定着ローラ41は記録紙1のトナー像形成面に当接する一方、加圧ローラ42は記録紙1におけるトナー像形成面とは反対の面に当接するようになっている。なお、定着速度とは所謂プロセス速度であり、複写速度とは1分あたりのコピー枚数のことである。また、記録紙1上に形成されるトナー像1aは、未定着のトナー画像であり、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナーおよびキャリア)、磁性現像剤(磁性トナー)等のトナー現像剤によって形成される。
定着ローラ41は、中空のロール形状であり、加圧ローラ42に圧接することで定着ニップ部を形成すると同時に、軸受け部58に支持された状態で、図示しない駆動モーターにより回転軸線まわりに回転駆動することによって、定着ニップ部を通過する記録紙1を搬送する。定着ローラ41は、図3に示すように、その内側から順にローラ芯金51、ゴム層52、発熱層53、離型層54が形成された積層構造からなる。ローラ芯金51に、ゴム層52、発熱層53、離型層54を積層する方法は、従来よく知られた方法を用いることができる。ローラ芯金51には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等を用いることができるが、本実施の形態では、ローラ芯金51は鉄からなり、厚さ0.8mm程度に形成する。
ゴム層52は、絶縁層かつ弾性層としての役割を担い、シリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料からなっている。本実施の形態では、ゴム層52は、厚さ500μm程度のシリコンゴムからなる層である。ゴム層52は、ローラ芯金51と発熱層53との間に形成されて、両者間の絶縁を確保するので、発熱層53に供給される電流がローラ芯金51に流れるのを防止することができる。また、ゴム層52は、弾性層としての役割も果たす。定着ローラ41が弾性層としてのゴム層52を有することによって、定着ローラ41表面が、記録紙1上のトナー像1aの凹凸に対応して弾性変形し、トナー像1aを覆い包むように接触するので、特にトナー量の多いカラートナー像に対して良好に定着を行うことができる。なお、定着ローラ41の表面にゴム層52を形成せずに、ローラ芯金51上に絶縁層を形成したハードローラとしてもよい。このようなハードローラは、記録紙1上のトナー量が少ないモノクロ単色トナー像に対する定着ローラとして好適に使用できる。
発熱層53は、定着ローラ41表面を加熱して(たとえば、定着ローラ41表面の温度が190℃となるように加熱する)、定着ニップ部を通過する記録紙1を加熱するために、電流が供給されることによって発熱する層である。ここで、発熱層53は、ローラ芯金51よりも外側に形成されているので、発熱層53から記録紙1に接触する定着面である後述の離型層54までの熱伝導距離が短くなる。そのため、発熱層53の発熱による定着ローラ41表面の温度制御性が向上し、定着ローラ41表面の温度をより高精度に制御することができる。
また、発熱層53は、ゴム層52よりも内側の層として、ローラ芯金51表面に積層するように形成してもよい。これによって、ゴム層52の変形に伴う発熱層53の変形がないので、発熱層53の耐久性を向上することができる。この場合には、発熱層53とローラ芯金51との間の絶縁を確保するために、軸受け部58に、セラミックがいしなどの非導電性部材を配設する。
発熱層53は、発熱部53Aと、受電絶縁部55と、受電部57と、電極部59と、電極絶縁部50とを含んで構成されている。ここで、発熱層53において、発熱部53Aと、受電絶縁部55と、受電部57と、電極部59と、電極絶縁部50とを形成する方法は、従来よく知られた方法を用いることができる。発熱部53Aは、電流が供給されることによって発熱する部分であり、正の抵抗温度特性(Positive Temperature Coefficient特性、略称PTC特性)を有する材料によって形成されている。ここで、PTC特性とは、発熱部53Aに温度分布が生じた場合、温度の高い部分の電気抵抗値が高くなる特性のことである。
また、発熱部53Aの定着ローラ41の軸線方向に対応する方向である幅手方向の長さは、定着ニップ部を通過する記録紙1の最大幅よりも長く設定される。これによって、発熱部53Aは、記録紙1が通過する幅範囲に対応した領域において均一に発熱し、定着ローラ41表面の記録紙1が通過する幅範囲における温度分布の均一化が可能となる。本実施の形態では、A3サイズ記録用紙1の幅298mmよりも長い、330mmに設定されている。そして、発熱部53Aの層厚は、200μm程度に設定されている。
発熱部53Aを構成する材料は、チタン酸バリウムをベースとした半導体セラミックスなどを挙げることができる。チタン酸バリウムをベースとしたPTC特性を有する材料は、半導電性から絶縁性に転移する。すなわち、結晶構造が正方晶系から立方晶系へ相転移することに伴い自発分極が消失し、分域もなくなって、PTC特性を示すことになる。
また、発熱部53Aを構成する材料として、有機材料または有機無機複合体の耐熱性ポリマーに導電性フィラーを充填した複合材料を挙げることもできる。耐熱性ポリマーとしては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。また、PTC特性は、前記耐熱性ポリマーのガラス転移または結晶転移によって実現される。
発熱部53Aは、インピーダンスが大きく電気回路的に取扱が容易であり、しかも定着ローラ41表面に形成が容易で比較的安価な材料であることが好ましいことから、前記耐熱性ポリマーに導電性フィラーを充填する。導電性フィラーとしては、金属、カーボン、酸化物、炭化物、窒化物粒子であり、たとえば、ニッケル、銅、タングステン、チタン、銀、金、アルミニウム、活性炭、グラファイト、黒鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化バナジウム、酸化レニウム、炭化珪素、窒化チタン、TiB2、ZrB2、WSi2、TiC、TiO2などの導電性粒子を挙げることができる。
導電性粒子のサイズは、0.1〜100μmの範囲が好ましい。0.1μm未満の粒子では、非常に微細であるために均一に分散するのが困難である。100μmを超える粒子では、均一に分散するのが困難であり、かつ電気抵抗値調整が困難である。また、導電性粒子は、10〜70体積%の割合で含ませることが好ましい。10%未満では、導電性を示さない。一方、70%を超えると粒子間に十分なベースポリマーである耐熱性ポリマーを含ませることが困難になり、発熱部53Aの層形状を保つことができない。
また、高温での耐熱性ポリマーの耐久性を向上するために、硬化剤を加えることができる。これらの硬化剤は、耐熱性ポリマーの種類に応じて選択し、たとえば、ポリイソシアネート、脂肪族または芳香族ポリアミン、チオ尿素、酸無水物等の通常に用いられる硬化剤を挙げることができる。
発熱層53が有する受電部57は、電源45から印加された電圧によって流れる電流を摺動接点部56を介して受電する部分であり、発熱部53Aの幅手方向両端部外側に、周方向全体にわたって形成される。この受電部57は、発熱部53Aの幅手方向一端部側に第1受電部57aが設けられ、他端部側に第2受電部57bが設けられている。第1受電部57aおよび第2受電部57bは、銅やアルミニウムなどの良導電体からなる。ここで、摺動接点部56は、第1受電部57aおよび第2受電部57bと対向するように、定着ローラ41の周方向に複数設けられて、定着ローラ41が軸線まわりに回転するときに、受電部57a,57bが摺動することによって、電源45から印加された電圧によって流れる電流を受電部57a,57bに給電する部分である。このような構成によって、定着ローラ41が軸線まわりに回転しているときにも、摺動接点部56から受電部57a,57bに安定して給電することができる。
さらに、発熱層53には、受電部57a,57bによる受電に基づいて、発熱部53Aに電流を供給する電極部59が設けられている。電極部59としては、第1受電部57aから発熱部53Aの他端部側に向けて発熱部53Aの幅手方向に対して平行に延びる第1電極部59aが設けられ、第2受電部57bから発熱部53Aの一端部側に向けて発熱部53Aの幅手方向に対して平行に延びる第2電極部59bが設けられている。第1電極部59aおよび第2電極部59bは、銅やアルミニウムなどの良導電体からなる。このように一組の電極部59a,59bが形成されることによって、発熱部53Aに流れる電流の流れ方向は、発熱部53Aの幅手方向に対して略直交する方向C(記録紙1が定着ニップ部を通過して搬送される方向)となる。
この発熱部53Aへの通電によって発熱部53Aは、発熱して温度上昇し、熱伝導によって定着ローラ41表面を加熱する。発熱部53Aは、所定の発熱量で発熱するように、一組の電極部59a,59b間の電気抵抗値が、好ましくは5〜60Ω、さらに好ましくは8〜45Ωに設定される。本実施の形態では、発熱部53Aは、印加電圧100Vで1000Wの発熱量が得られるように、一組の電極部59a,59b間の電気抵抗値が10Ωに設定されている。
また、発熱部53Aにおいて、第1電極部59aと第2電極部59bとの間に挟まれる2つの領域のうち、1つの領域には、電流を流さないポリイミドやフッ素樹脂等の耐熱性樹脂やペースト状のセラミックス材料を塗布焼成したものなどの絶縁体からなる電極絶縁部50が形成されている。つまり、発熱部53Aにおいては、第1電極部59aと第2電極部59bとの間に挟まれる2つの領域のうち、電極絶縁部50が形成されていない側の領域にのみ電流が流れ、発熱する発熱領域が一領域に規定される。
たとえば、一組の電極部の間に挟まれる2つの領域のそれぞれに電流が流れて、2つの発熱領域が形成された場合には、電極の配置間隔や各発熱領域における発熱層の厚さバラツキ等によって、各発熱領域における電気抵抗値が完全には同一にならないことがある。そのため、各発熱領域のうち、電気抵抗値の低い領域に多くの電流が流れ、相対的に発熱量が多くなる。このようにして、発熱部の電流の流れ方向における発熱量分布が不均一になる。
これに対して、発熱部53Aにおいては、発熱領域が一領域に規定されているので、発熱部53Aの発熱領域において、電流の流れ方向における電気抵抗値バラツキが発生するのを防止して発熱量分布の均一化が可能となる。そのため、発熱部53Aの発熱領域に対応する定着ローラ41表面において、電流の流れ方向における温度分布の均一化が可能となり、定着ニップ部における均一な定着能力が達成可能となる。したがって、光沢ムラ、定着強度のバラツキのない均一で高品位な定着画像を得ることができる。
ここで、第1電極部59aと第2電極部59bとを近接させて、その間隙に電極絶縁部50を形成するようにし、発熱部53Aの面積に対する電極絶縁部50の面積が、所定の割合で小さくなるようにするのが好ましい。このとき、発熱部53Aの面積に対する電極絶縁部50の面積割合は、0.1〜3%となるように設定するのが好ましい。面積割合が0.1%より小さい場合には、電極絶縁部50における充分な絶縁性を確保することができない。また、面積割合が3%より大きい場合には、発熱部53Aにおける発熱領域の面積が小さくなり過ぎて、発熱領域において発生した熱が、定着ローラ41表面全体に伝導するのが困難となり、定着ローラ41表面における均一な温度分布が維持できなくなる。
また、発熱層53の幅手方向において第1受電部57aの内側には、周方向全体にわたって第1受電絶縁部55aが形成されて、第1受電部57aと第2電極部59bとの間で直接電流が流れないようになっている。また、発熱層53の幅手方向において第2受電部57bの内側には、周方向全体にわたって第2受電絶縁部55bが形成されて、第2受電部57bと第1電極部59aとの間で直接電流が流れないようになっている。第1受電絶縁部55aおよび第2受電絶縁部55bは、ポリイミドやフッ素樹脂等の耐熱性樹脂やペースト状のセラミックス材料を塗布焼成したものなどの絶縁体からなる。
離型層54は、定着ローラ41における最外層であり、加圧ローラ42と接触して定着ニップ部を形成する層である。そのため、離型層54は、定着ニップ部を通過する記録紙1上のトナー像1aが、定着ローラ41表面に付着するのを防止することが可能な材料から形成する必要がある。さらに、離型層54は、発熱部53Aにおいて発生した熱を定着ローラ41表面の全体に伝導させて、記録紙1を加熱するための伝熱性を有する必要がある。このような離型層54を構成する材料としては、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂およびこれらの混成材料を挙げることができる。
加圧ローラ42は、定着ローラ41に対向しかつ圧接し、回転軸線まわりに回転自在に設けられている。加圧ローラ42は、定着ローラ41の回転に従動して回転する。加圧ローラ42は、その内側から順に芯金、弾性層、離型層が形成された3層構造からなっている。芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、離型層にはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が適している。また、加圧ローラ42の内部には、加圧ローラ42を加熱するヒーターランプが配置されている。制御回路(不図示)が電源回路(不図示)からヒーターランプに定格電力(たとえば、450W)を供給(通電)させることによって、ヒーターランプが発光し、ヒーターランプから赤外線が放射される。これによって、加圧ローラ42の内周面が赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ42全体が加熱される。
また、定着装置40においては、温度検知手段として、定着ローラ41の周面には定着ローラ側サーミスタ43、加圧ローラ42の周面には加圧ローラ側サーミスタ44が配設されており、それぞれの表面温度を検出するようになっている。そして、各サーミスタ43,44によって検出された温度データに基づいて、温度制御手段としての制御回路(不図示)が、定着ローラ41、加圧ローラ42の表面温度を所定の温度にするように、発熱層53およびヒーターランプへの給電電力(通電)を制御する。このとき、定着ローラ41の発熱層53と、加圧ローラ42のヒーターランプとは独立した通電回路となっている。
以上のように構成された定着装置40の定着ローラ41においては、前述したように、発熱部53Aに形成される一組の電極部59a,59b間に挟まれる1つの領域に、電極絶縁部50が形成されるので、電流の流れ方向における電気抵抗値バラツキが発生するのを防止して発熱量分布の均一化が可能となり、電流の流れ方向における温度分布の均一化が可能となる。
次に、定着ローラ41表面の軸線方向(電流の流れ方向に直交する方向)における温度分布について説明する。図5は、通紙前における定着ローラ41表面の軸線方向に対する発熱量分布および温度分布を示した図である。また、図6は、通紙時における定着ローラ41表面の軸線方向に対する温度分布、電気抵抗値分布および発熱量分布を示した図である。また、図7は、通紙時における発熱層53表面の通電状態を模式的に示す図である。
定着ニップ部に記録紙1が通過する前においては、定着ローラ41の発熱部53Aは、幅手方向(定着ローラ41の軸線方向に対応する方向)に均一に発熱する。そのため、定着ローラ41表面の軸線方向における発熱量分布は、図5(a)に示すように、均一である。したがって、定着ローラ41表面の軸線方向における温度分布も、図5(b)に示すように、均一である。
定着ニップ部に記録紙1が通過している場合には、定着ローラ41表面の軸線方向における記録紙1の通紙幅領域外の両端部は、記録紙1に熱を奪われないため、温度が上昇する。このとき、記録紙1の通紙幅領域は、大サイズ紙の方が小サイズ紙よりも大きくなるので、定着ローラ41表面の軸線方向における両端部の温度上昇領域幅は、大サイズ紙の通紙時の方が小さくなる。
定着ニップ部に記録紙1が通過して、定着ローラ41表面の軸線方向に温度分布が生じた場合、PTC特性を有する材料から形成される発熱部53Aでは、定着ローラ41表面の温度の高い領域に対応して、電気抵抗値が高くなる領域部分(高電気抵抗部)が幅手方向両端部に形成され、相対的に電気抵抗値が低くなる領域部分(低電気抵抗部)が幅手方向中央部に形成される。
このとき、発熱部53Aにおける電流の流れ方向は幅手方向に直交する方向なので、発熱部53Aにおいては、図7(a)に示すように、高電気抵抗部と低電気抵抗部とは、並列接続回路として通電することができる。この状態では、高電気抵抗部と低電気抵抗部とは、同じ電圧値の電圧が印加されることになる。そのため、定着ローラ41の周面に設けられた定着ローラ側サーミスタ43によって検出された温度データに基づいて、温度制御手段が発熱部53Aへの通電を制御すると、発熱部53Aにおける発熱量は、高電気抵抗部が低電気抵抗部よりも低下する。ここで、本実施の形態では、定着ローラ側サーミスタ43は、定着ローラ41の周面において通紙幅の範囲内に設けられている。これによって、温度制御手段は、定着ローラ側サーミスタ43が記録紙1の通紙幅範囲において検出した温度データに基づいて、発熱部53Aへの通電を制御することができるので、通紙幅範囲の温度を直接高精度に制御することができる。
このようにして、発熱部53Aの高電気抵抗部の発熱量が低下するので、定着ローラ41表面において高電気抵抗部に対応する領域であり、温度が高かった軸線方向両端部における温度が低下する。そのため、定着ローラ41表面の軸線方向における温度分布の均一化が可能となる。したがって、定着ローラ41表面の軸線方向両端部における温度上昇領域幅が大きくなる小サイズ紙を連続的に通紙する場合であっても、定着ローラ41表面における温度ムラを抑制するために、小サイズ紙のスループットを低下させる必要がなく、均一高品位な画像をより高いスループットで得ることができる。
一方、定着ニップ部に記録紙が通過して定着ローラ表面の軸線方向に温度分布が生じ、発熱部に高電気抵抗部と低電気抵抗部とが形成された場合に、発熱部における電流の流れ方向が幅手方向に平行であるときは、図7(b)に示すように、高電気抵抗部と低電気抵抗部とは、直列接続回路として通電することになる。このような場合、高電気抵抗部と低電気抵抗部とは等しい電流が流れることになり、高電気抵抗部でより多くの電力が消費されることになる。そのため、定着ローラ41表面において高電気抵抗部に対応する領域である軸線方向両端部の温度がさらに上昇し、温度ムラがより顕著になってしまう。この温度ムラによって、定着装置の構成部材の耐熱温度を超えるおそれがある。あるいは、定着ローラの軸線方向両端部における温度上昇を抑制するために、小サイズ紙のスループットを大きく低下させることが必要となる。
図8は、本発明の第2実施形態である定着装置60の構成を示す断面図である。また、図9は、定着装置60が有する発熱支持ローラ62の構成を示す断面図である。第2実施形態である定着装置60は、第1実施形態の定着装置40に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
定着装置60は、定着ローラ61と、加圧ローラ42と、発熱支持ローラ62と、定着ベルト63とを含んで構成される。定着装置60においては、定着ベルト63が定着ローラ61と発熱支持ローラ62との間に張架され、加圧ローラ42が定着ベルト63を介して定着ローラ61に対向するように配置されている。つまり、定着装置60においては、定着ベルト63と加圧ローラ42とで定着ニップ部を形成することになる。そして、定着ローラ61、加圧ローラ42および発熱支持ローラ62のそれぞれの軸線方向は、平行となっている。
定着装置60においては、発熱支持ローラ62が定着ベルト63と接触して定着ベルト63を加熱し、定着ローラ61は、定着ベルト63からの熱伝導で加熱される。定着装置60が有する定着ローラ61は、その表面に発熱層が形成されていない以外は、定着装置40が有する定着ローラ41と同様である。
定着ベルト63は、発熱支持ローラ62によって所定の温度に加熱され、定着ニップ部を通過する記録紙1を加熱する。定着ベルト63は、無端状のベルトで、加熱支持ローラ62と定着ローラ61によって懸架され、定着ローラ61に所定の角度で巻きかかっている。定着ベルト63は、定着ローラ61の回転時には、定着ローラ61に従動して回転するようになっている。定着ベルト63は、ポリイミド等の耐熱性樹脂あるいはステンレスやニッケル等の金属材料からなる中空円筒状の基材63aの表面に、耐熱性および弾性に優れたエラストマー材料(たとえばシリコンゴム)からなる弾性層63bが形成され、さらにその表面に、耐熱性および離型性に優れた合成樹脂材料(たとえばPFAやPTFE等のフッ素樹脂)からなる離型層63cが形成された3層構造となっている。また、基材63aとしては、ポリイミドにフッ素樹脂を内添してもよい。これによって、発熱支持ローラ62との摺動負荷を低減することができる。
発熱支持ローラ62は、軸線まわりに回転自在に設けられており、定着ローラ61の回転に従動して回転する。発熱支持ローラ62は、中空のロール形状であり、その内側から順にローラ芯材71、発熱層53、保護層74が形成された積層構造からなる。ローラ芯材71は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなり、厚さ0.1mm程度に形成されている。
そして、ローラ芯材71表面に形成される発熱層53は、前述した定着ローラ41が有する発熱層と同様であり、発熱部53Aにおいて、第1電極部59aと第2電極部59bとの間に挟まれる2つの領域のうち、電極絶縁部50が形成されていない側の領域にのみ電流が流れ、発熱する発熱領域が一領域に規定されている。そのため、発熱部53Aの発熱領域において、電流の流れ方向における電気抵抗値バラツキが発生するのを防止して発熱量分布の均一化が可能となる。そのため、発熱部53Aの発熱領域に対応する発熱支持ローラ62表面において、電流の流れ方向における温度分布の均一化が可能となる。したがって、発熱支持ローラ62は、定着ベルト63表面の温度分布が均一となるように、定着ベルト63を加熱することができる。したがって、定着ベルト63と加圧ローラ42とで形成される定着ニップ部における均一な定着能力が達成可能となる。したがって、光沢ムラ、定着強度のバラツキのない均一で高品位な定着画像を得ることができる。
また、発熱部53Aの発熱支持ローラ62の軸線方向に対応する方向である幅手方向の長さは、定着ニップ部を通過する記録紙1の最大幅よりも長く設定される。これによって、発熱部53Aは、記録紙1が通過する幅範囲に対応した領域において均一に発熱し、定着ベルト63表面の記録紙1が通過する幅範囲における温度分布の均一化が可能となる。
保護層74は、発熱支持ローラ62の表面における最外層であり、定着ベルト63と接触する層である。そのため、保護層74は、発熱層53で発生した熱を定着ベルト63に伝達するための伝熱性を有するとともに、定着ベルト63との間の摩擦力が低減可能な材料から形成する必要がある。このように保護層74が形成されることによって、定着ベルト63に熱を伝導させるとともに、定着ベルト63が発熱支持ローラ62と接触して摺動しても発熱支持ローラ62表面が摩耗するのを防止することができる。そのため、発熱支持ローラ62表面に形成される発熱層53が、長期間にわたって安定して均一に発熱することができる。保護層74を構成する材料としては、PFAやPTFE等のフッ素樹脂を挙げることができる。そして、本実施の形態では、保護層74の厚さは、30μmである。
また、定着装置60においては、温度検知手段として、定着ベルト63を介して発熱支持ローラ62の周面に対向する位置に、発熱支持ローラ側サーミスタ64が配設されている。発熱支持ローラ側サーミスタ64は、定着ベルト63表面の温度を検出する。そして、発熱支持ローラ側サーミスタ64によって検出された温度データに基づいて、温度制御手段が、定着ベルト63の表面温度を所定の温度にするように、発熱層53への通電を制御する。
ここで、本実施の形態では、発熱支持ローラ側サーミスタ64は、定着ベルト63において、記録紙1と接触する幅の範囲内に設けられている。これによって、温度制御手段は、発熱支持ローラ側サーミスタ64が記録紙1と接触する幅の範囲内において検出した温度データに基づいて、発熱部53Aへの通電を制御することができるので、定着ベルト63において記録紙1と接触する範囲の温度を直接高精度に制御することができる。
以上のような本実施の形態は、発明の例示に過ぎず、発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば、画像形成装置において、搬送ベルトによって搬送される記録紙上に、転写ローラによってトナー像を転写する構成例を示した。しかしながら本発明は、これに限定するものではなく、画像形成装置における転写機構が、中間転写ベルトを用いた構成や、感光体ドラムから記録紙に直接転写するような構成であってもよい。
また、記録紙上にトナー像を静電転写した後に、定着装置によって加熱加圧して定着する構成を示したが、記録紙への転写と同時にトナー像を加熱加圧して定着するような構成であってもよい。このような場合、本発明において特徴的な構成である面状発熱体からなる発熱層は、たとえば、転写ローラ表面に形成すればよい。