JP4949408B2 - 紙葉類識別方法および装置 - Google Patents
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Description
この種の紙葉類識別装置は、紙葉類のインクパターンや磁気パターンを検出する識別部を備え、該識別部が検出した光や磁気に基づいて符号化データを形成し、該符号化データを予め用意された基準データと比較照合することにより、紙葉類の種類や真偽を識別するようになっている(例えば、日本国特開2001−101472号公報、日本国特開2001−357429号公報、および日本国特許第3812858号公報を参照)。
ところで、このような識別方法を用いていた従来の紙葉類識別装置では、例えば、金種毎に色分けされていて、人の目でも簡単に見分けられるユーロ紙幣などを識別する場合にも、インクパターンや磁気パターンを検出して、パターン認識を行っていた。
しかしながら、このパターン認識は、検出した光や磁気に基づいて符号化データを形成する処理を要するため、非常に時間がかかるという問題があった。仮に、紙葉類識別装置の識別部に高性能なCPUなどを具備すれば、これらの処理の高速化を図ることができるが、これにより、紙葉類識別装置の製造コストの増加を招いてしまうという問題があった。
また、例えば、種類毎(金種毎)にサイズが顕著に異なる紙幣を識別する場合には、そのサイズを測定することにより、処理を簡略化することができるが、ユーロ紙幣のように金種毎に色が異なる紙葉類や汚れている紙葉類を単色情報のみで識別すると、正確にサイズを検出することができない虞があった。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、種類毎にサイズおよび色の異なる紙葉類を識別する際の処理速度を高速化し、かつ、コストを増加することなく高い精度で種類を識別することができる紙葉類の識別方法および装置を提供することにある。
また、本発明の上記目的は、前記ラインセンサが、搬送方向と直交する方向に沿って配設され、搬送される前記紙葉類に対して複数回のライン検出を繰り返すことにより前記紙葉類を面状に走査する構成であり、前記第1判定ステップが、前記ラインセンサにより得られた前記検出サイズデータである搬送方向と直交する方向における前記紙葉類の札幅を、識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成された閾値と比較して、前記札幅が前記閾値内に含まれている前記ライン検出の回数を計数するとともに、その計数結果に基づいて前記識別候補の中から1種類の識別対象種を選定することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記第1判定ステップが、前記センシングユニットの一部を構成する光学センサによって得られた前記検出サイズデータである搬送方向における前記紙葉類の札長を、前記参照サイズデータと比較することにより、前記計数の対象とする複数の候補種を選定することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記複数の候補種が、2種類であることによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記第2判定ステップが、前記検出光量データを色相、彩度、および明度に符号化して3次元データを生成するとともに、該3次元データを前記参照光量データと比較して色データの分布傾向を参照することにより、前記紙葉類の種類を特定することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記第2判定ステップが、前記検出光量データを色相、彩度、および明度に符号化して3次元データを生成し、該3次元データから前記明度のパラメータを削除した2次元データを算出し、かつ、該2次元データを前記参照光量データと比較して色データの分布傾向を参照することにより、前記紙葉類の種類を特定することによって、効果的に達成される。
さらに、本発明の上記目的は、前記光が、赤色光、緑色光、青色光、赤外光より成る群から選ばれた2種以上であることによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、搬送される紙葉類に光源波長の異なる数種類の光を照射して得られる反射光または透過光の光量を検出するラインセンサを含むセンシングユニットを用いて、種類毎にサイズおよび色の異なる紙葉類を識別する紙葉類識別装置において、識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成された参照サイズデータおよび参照光量データを記憶する記憶手段と、前記センシングユニットによって検出された前記紙葉類の検出サイズデータと前記参照サイズデータとに基づいて、前記識別候補の中から識別対象種を選定する第1判定手段と、前記ラインセンサによって検出された前記紙葉類の検出光量データを、前記識別対象種の前記参照光量データおよび前記識別候補のうちサイズ順が前記識別対象種と隣接する少なくとも1種類の前記参照光量データと比較することにより、前記紙葉類の種類を特定する第2判定手段とを備えることによって、達成される。
また、本発明の上記目的は、前記ラインセンサが、搬送方向と直交する方向に沿って配設され、搬送される前記紙葉類に対して複数回のライン検出を繰り返すことにより前記紙葉類を面状に走査する構成であり、前記第1判定手段が、前記ラインセンサにより得られた前記検出サイズデータである搬送方向と直交する方向における前記紙葉類の札幅を、識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成された閾値と比較して、前記札幅が前記閾値内に含まれている前記ライン検出の回数を計数するとともに、その計数結果に基づいて前記識別候補の中から1種類の識別対象種を選定することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記第1判定手段が、前記センシングユニットの一部を構成する光学センサによって得られた前記検出サイズデータである搬送方向における前記紙葉類の札長を、前記参照サイズデータと比較することにより、前記識別候補の中から前記計数の対象とする複数の候補種を選定することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記複数の候補種が、2種類であることによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記第2判定手段が、前記検出光量データを色相、彩度、および明度に符号化して3次元データを生成するとともに、該3次元データを前記参照光量データと比較して色データの分布傾向を参照することにより、前記紙葉類の種類を特定することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記第2判定手段が、前記検出光量データを色相、彩度、および明度に符号化して3次元データを生成し、該3次元データから前記明度のパラメータを削除した2次元データを算出し、かつ、該2次元データを前記参照光量データと比較して色データの分布傾向を参照することにより、前記紙葉類の種類を特定することによって、効果的に達成される。
さらに、本発明の上記目的は、前記光が、赤色光、緑色光、青色光、赤外光より成る群から選ばれた2種以上であることによって、効果的に達成される。
以上のように構成された本発明に係る紙葉類の識別方法および装置によれば、種類毎にサイズおよび色の異なる紙葉類を識別する際に、2段階の判定を行い、第1判定では、紙葉類の検出サイズデータに基づいて識別候補の中から識別対象種を選定し、第2判定では、紙葉類の検出光量データを第1判定で選定された識別候補の参照光量データと比較することにより、紙葉類の種類を特定するようになっている。これにより、インクパターンや磁気パターンを検出してパターン認識を行う必要がないため、識別部の構成が簡略化され、識別処理の高速化を低コストで実現することができるとともに、識別部の小型化を図ることができる。
また、第2判定で参照する参照光量データの対象を、第1判定で選定された1種類の識別対象種および識別候補のうちサイズ順がこの識別対象種と隣接する種類に限定することにより、データを比較する処理時間を短縮することができる。
また、第1判定で識別候補の中から計数の対象とする複数の候補種を、搬送方向における紙葉類の札長に基づいて選定された2種類に限定することにより、検出ラインの回数を計数する処理時間を短縮することができるとともに、紙葉類の札幅および札長に基づいて紙葉類のサイズ識別を行うので、紙葉類のサイズを高精度に検知することができる。
また、第2判定で赤色光、緑色光、および青色光の3波長の検出光量データを色相、彩度、および明度に符号化して3次元データを生成し、さらに該3次元データから明度のパラメータを削除した2次元データを算出して、色データの分布傾向を参照することにより、紙葉類の汚れによる影響を軽減することができるとともに、処理速度の向上を図ることができる。
第2図は、本発明の実施形態に係る紙葉類識別装置の繰出搬送機構を概略的に示す説明図である。
第3図は、本発明の実施形態に係る紙葉類識別装置の識別センサの配置を示す平面図である。
第4図は、本発明の実施形態に係る紙幣識別装置の制御構成例を概略的に示すブロック図である。
第5図は、本発明の実施形態に係る紙葉類識別装置1の紙葉類識別機能を概略的に説明するブロック図である。
第6図は、本発明の実施形態に係る紙葉類の札幅の算出を説明する図である。
第7図は、本発明の実施形態に係る札幅が閾値内に含まれる検出ラインの回数を計数した結果の一例を示す図である。
第8図は、本発明の実施形態に係る紙葉類の特定領域を一例を説明するための図であって、(a)は流通券20ユーロの算出結果であり、(b)は市場汚れ券20ユーロの算出結果である。
第9図は、本発明の実施形態に係る表色系の変換の一例として、ユーロ紙幣の各金種の分布を示すGrb表色系のグラフである。
第10図は、本発明の実施形態に係る色データの分布の一例として、5ユーロと10ユーロの分布を示すL*a*b表色系のグラフである。
第11図は、本実施形態に係る紙葉類識別装置の識別処理例を示すフローチャートである。
第1図は、本発明の第1実施形態に係る紙葉類計数装置の概観を示す斜視図である。同図において、紙葉類計数装置1は、筐体2の上部前方側に、紙幣などの紙葉類が重積状態で充填されるホッパ部3を備え、その下方の筐体2の前面部には、紙葉類の計数・識別処理を行う際に種々の設定を行うとともに、それらの処理状態等を表示するための操作表示部4を備えている。この操作表示部4は、処理操作の入力などを行うための複数の操作ボタン4Aと、該操作ボタン4Aによる入力情報や計数状態などを表示するための液晶表示パネル4Bとを有し、操作ボタン4Aの入力操作によって、例えば複数国の紙幣の計数・識別処理などが実行される。
また、紙葉類計数装置1は、筐体2の下部前方側に、計数済みの紙葉類が整列集積されるスタッカ部5を備え、その上方には、計数対象から排除された紙葉類、すなわち識別手段により異種と判断された紙葉類などが集積されるリジェクト部6を備えている。なお、符号5Aで示す部材は、スタッカ部5に搬送されてきた紙葉類を受止めて、スタッカ部5に整列集積させるための羽根車である。
第2図は、本発明の実施形態に係る紙葉類識別装置1の繰出搬送機構を概略的に示す説明図である。同図において、ホッパ部3は、紙葉類の有無を検知するホッパセンサPS1と、ホッパ部3に充填されている紙葉類を最下位から順次繰り出し繰出機構7とを備え、ホッパ部センサPS1による検出信号または操作ボタン4Aによる操作に応じて繰出機構7が作動し、ホッパ部3に充填された紙葉類が紙葉類識別装置1の内部に形成された搬送路8に送り出される。繰出機構7を構成するローラは、クラッチを介して動力伝達され、紙葉類を所定時間繰り出し、ブレーキをかけて紙葉類の追走や重送を防止するようになっている。
搬送路8の経路中には、投光器と受光器とからなり、搬送される紙葉類の異常(紙葉類のジャム等)や紙葉類の位置などを検出する光学センサPS2〜PS5,VP1,VP3が配設されている。
繰出機構7の直後(下流側)に配された繰出制御センサPS2は、繰出機構7のクラッチおよびブレーキの制御に用いられ、該繰出制御センサPS2の下流に配された識別制御センサVP1は、搬送される紙葉類の斜行度合いなどの検出に用いられる。この識別制御センサVP1の下流には、識別部の一部を構成するラインセンサLSおよび磁気センサMGと、複数枚の紙葉類が重なった状態で搬送されていないかを検出する重送センサDBLとが配されている。
これらのセンサの搬送路8上における平面的な配置は、第3図に示すような配置である。識別制御センサVP1は、光学通過センサであり、通過する紙葉類Pの札長PL(搬送方向であるY方向の寸法)の検出などに用いられる。ラインセンサはLSは、赤色光、緑色光、および青色光の3色の可視光による反射型センサと、赤外光による透過型センサとを備え、紙葉類Pが搬送されるのに伴って紙葉類Pを面状に走査し、紙葉類P上の各位置での反射光や透過光などの物理量の分布を検出するものであり、紙葉類Pの種類の識別、方向や札幅PW(搬送方向に直交するX方向の寸法)の検出などに用いられる。一方、磁気センサMGは、紙葉類の真偽などを識別するのに用いられる。
上記各種センサによる識別や検出を終えた紙葉類は、搬送路8のリジェクト部6とスタッカ部5とに分岐する地点に配設されたフリッパ9によって、リジェクト部6またはスタッカ部5に振り分けられる。このフリッパ9は、紙葉類の先端が振分制御センサVP3に達した際にソレノイドが駆動することにより揺動し、搬送路8を主搬送路8a側(スタッカ部5方面)から分岐搬送路8b側(リジェクト部6方面)に切り換える。識別部によって正常と判断された紙葉類(計数対象と認められた紙葉類)は、フリッパ9を経て主搬送路8aに沿って搬送され、主搬送路通過センサPS5でカウントされた後に、羽根車5Aによってスタッカ部5に整列集積される。一方、識別部によって異種や異常と判断された紙葉類(計数対象から排除された紙葉類)は、ソレノイドが作動してフリッパ9が下方に揺動することにより、分岐搬送路8bに沿ってリジェクト部6に搬送される。スタッカ部5の紙葉類の存在は、スタッカ部センサPS3によって検出され、リジェクト部6の紙葉類の存在は、リジェクト部センサPS4によって検出される。
紙葉類の繰出機構7や羽根車6Aなどの繰出搬送機構は、筐体2内の下方に設けられたメインモータ10によって駆動される。メインモータ10は、上記各種センサによって、ジャムや斜行搬送などの異常が検出されると停止するようになっている。また、筐体2の下方には、上述したフリッパ9のソレノイド、メインモータMM、各種センサや、後述する制御部などを駆動するためのパワーユニット11が設けられている。
第4図は、本発明の実施形態に係る紙幣識別装置1の制御部の構成例を概略的に示すブロック図である。同図において、センシングユニット21は、ラインセンサLS、磁気センサMG、重送センサDBL、および光学センサPS2〜PS5,VP1,VP3などに接続され、これら各種センサの出力を信号変換して、その検出信号をバス22を介してCPU(マイクロプロセッサ等)23に供給する。駆動部24は、CPU23からの駆動指令信号にしたがってメインモータ10、フリッパ9のソレノイド、繰出機構7のクラッチおよびブレーキなどを駆動して、繰出搬送機構を作動させる。操作部25は、操作表示部4に設けられた操作ボタン4Aによって構成され、表示部26は、操作表示部4に設けられた液晶表示パネル4Bによって構成される。ROM27およびRAM28は、所定の記録媒体によって構成され、制御プログラムや紙葉類の識別データ等を記憶する。さらに、RAM28は、CPU22のメインメモリとして使用され、操作部25から入力されたデータやパラメータ等を記憶する。
第5図は、本発明の実施形態に係る紙葉類識別装置1の紙葉類識別機能を概略的に説明するブロック図である。なお、本実施形態では、以下に説明する紙葉類識別処理は、第4図に示したCPUシステムによって実現されるものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
同図において、センシングユニット21の一部を構成する各種センサによって検出された紙葉類Pの各データは、センシングユニット21でA/D変換され、RAM28に一時記憶される。本実施形態では、紙葉類Pの種類を識別するパラメータとして、識別制御センサVP1により得られた紙葉類の札長(PL)データと、ラインセンサLSの4波長光(赤色反射光,緑色反射光,青色反射光,および赤外透過光)×所定回数(通過する1枚の紙葉類に対するライン検出の回数)により得られた紙葉類の札幅(Pw)データと、ラインセンサLSの3波長光(赤色光,緑色光,および青色光)の反射光を検出することにより得られた検出光量データとが用いられる。
本実施形態に係る紙葉類識別手段は、大別すると、候補種選定手段31A、札幅算出手段31B、ライン数計数手段31C、および識別対象種手段31Dを含む第1判定手段31と、平均値算出手段32A、データ変換手段32B、および種類特定手段32Bを含む第2判定手段32とから構成され、第1判定手段31では、紙葉類Pのサイズ情報に基づいて種類の識別を行い、一方、第2判定手段32では、紙葉類Pの色情報に基づいて種類の識別を行うようになっている。
候補種選定手段31Aは、RAM28に一時記憶されている札長データを、識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成されてROM27に記憶されている参照サイズデータと比較して、2種類の候補種を選定する。
札幅算出手段31Bは、RAM28に一時記憶されている札幅データから、ライン検出毎に得られた札幅を算出する。ここで、各札幅は、第6図に示すように、ライン検出により得られたデータから紙葉類のエッジを抽出することにより算出される。
ライン数計数手段31Cは、第7図のユーロ紙幣の計数結果例に示すように、札幅算出手段31Bにより得られた札幅を、識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成されてROM27に記憶された閾値と比較して、該閾値内に含まれているライン検出の回数を各波長毎に計数する。
識別対象種選定手段31Dは、ライン数計数手段31Cで得られた計数結果に基づいて、候補種選定手段31Aによって選定された2種類の候補種(10EU,20EU)のうち大きい候補種(20EU)からカウントの有無をチェックして、1種類の識別対象種を選定する。この実施例では、20EUでカウントされた検出ラインがあるので、識別対象種を20EUと選定するが、仮に20EUでカウントされた検出ラインが0の場合には、識別対象種を10EUと選定する。
平均値算出手段32Aは、RAM28に一時記憶されている赤色反射光、緑色反射光、および青色反射光の検出光量データから、識別対象種毎に予め設定されている特定領域におけるセンサ出力の平均値をラインセンサLSに設けられた各チャンネル毎に算出する。紙葉類は、種類毎に特徴さが出やすい領域を有するため、この領域を特定領域として設定することで、紙葉類の全域におけるセンサ出力の平均値の算出および3次元データの生成をすることなく、紙葉類の種類を識別することができる。第8図は、紙葉類の特定領域の一例を説明するための図であって、(a)は流通券20ユーロの算出結果であり、(b)は市場汚れ券20ユーロの算出結果である。同図において、(a)のグラフと(b)とを比較すると、楕円で囲まれた箇所(色の薄い透かし部分)のデータ変動が大きくなっている(赤色反射光と青色反射光のセンサ出力の強弱関係が逆転している)。したがって、20ユーロ紙幣の識別の場合には、このような箇所を特定領域として判定に使用するのは好ましくないため、色の濃い部分(同図では青の強い部分)を特定領域として判定に使用する。
データ変換手段32Bは、色の数値化処理において比較的色の分別率がよいGrb表色系の変換式を用いて、平均値算出手段32Bにより得られた特定領域におけるセンサ出力の平均値を、色相、彩度、および明度に符号化して3次元の色データを生成し、該3次元データから明度のパラメータを除外して2次元の色データに変換する。第9図は、この表色系の変換の一例として、ユーロ紙幣の各金種の分布を示すGrb表色系のグラフである。色の判定は3次元データでは判定が難しいため、同グラフでは、RGBを簡潔に2次元データに変換している。一般的な明度は、[赤×0.299+緑×0.587+青×0.114]という式から求められることから、明度の大半は緑の要素で示されていることがわかる。そこで、本実施形態では、明度(G)=緑、r(色素)=赤−緑、b(色素)=青−緑として、3次元データを生成し、該3次元データから明度(G)のパラメータを除外したデータで分布を表現する。
なお、本実施形態では、色の数値化処理にGrb表色系を用いたが、本発明はこれに限定されず、例えばL*a*b*表色系を用いて3次元データを生成し、該3次元データからL*(輝度)のパラメータを除外したデータで分布するようにしても、上述したGrb表色系とほぼ同様の効果を得ることができる。
種類特定手段32Cは、予めROM27に記憶されている参照光量データの色の分布傾向を参照して、データ変換手段32Bによって得られた2次元の色データが、どの種類に含まれるかを判断し、紙葉類Pの種類を特定する。ここで、本実施形態における識別対象の紙葉類は、種類毎にサイズおよび色の異なる紙葉類であって、特に、第1判定手段31で選定された識別対象種と、識別候補のうちサイズ順が識別対象種と隣接する種類とでは、色が大きく異なる紙葉類である(例えば、ユーロ紙幣など)。したがって、本実施形態に係る種類特定手段32Cでは、色の分布傾向を参照する際に、第1判定手段31で選定された識別対象種と、識別候補のうちサイズ順が識別対象種より1つ大きい種類とを比較するようになっている。第10図は、色データの分布の一例として、5ユーロと10ユーロの分布を示すL*a*b表色系のグラフである。同図において、5ユーロ領域と10ユーロ領域との間に示されている2本の太線は、それぞれの領域の境界を表す閾値であり、ブロック矢印Aより右側に分布されれば5ユーロと判断され、ブロック矢印Bより左側に分布されれば10ユーロと判断される。なお、同図において、色データが2本の太線の間に分布された場合には、識別不能と判断され、その紙葉類は、異種の紙葉類と同様、リジェクト部6に送られる。
このように、本実施形態に係る紙葉類識別手段では、第1判定手段31により1種類の識別対象種に絞り込み、第2判定手段32で色の分布傾向を参照する際に、該識別対象種と、識別候補のうちサイズ順が識別対象種より1つ大きい種類とを比較するだけでよいので、判定処理回路の構造を簡易化することができるとともに、判定処理速度の高速化を図ることができる。
次に本実施形態に係る紙葉類識別装置の識別処理例を図11のフローチャートを参照にしながら説明する。
まず、識別制御センサVP1により検出され、RAM28に一次記憶されている紙葉類の札長データを取得し(ステップS11)、取得した札長データと識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成されてROM27に記憶されている参照サイズデータとを比較して、2種類の候補種を選定する(ステップS12)。
次に、ラインセンサLSにより検出され、RAM28に一時記憶されている札幅データを取得し(ステップS13)、取得した札幅データに基づいて、ラインセンサLSの各ライン検出により得られたデータから紙葉類のエッジを算出し、ライン検出毎に得られた札幅を算出する(ステップS14)。
次に、識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成されてROM27に記憶された閾値内に含まれる札幅を検出した検出ラインの回数を計数し(ステップS15)、ステップS12で選定した2種類の候補種の閾値内に含まれた検出ラインの回数を比較して、1種類の識別対象種を選定する(ステップS16)。
次に、ラインセンサLSにより検出され、RAM28に一時記憶されている3波長光(赤色光,緑色光,および青色光)の反射光の検出光量データを取得し、識別対象種毎に予め設定されている特定領域におけるセンサ出力の平均値をラインセンサLSに設けられた各チャンネル毎に算出し(ステップS17)、その後、そのセンサ出力の平均値を、色相、彩度、および明度に符号化して3次元の色データを生成し、該3次元データから明度のパラメータを除外して2次元の色データに変換する(ステップS18)。そして、予めROM27に記憶されている参照光量データを参照して、色の分布傾向が識別対象種と該識別対象種よりサイズ順が一つ大きい種類のどちらに属するかを判断し、紙葉類の種類を特定する(ステップS19)。
以上のように、本発明の実施形態に係る紙葉類識別装置1によれば、種類毎にサイズおよび色の異なる紙葉類を識別する際に、第1判定手段31が、紙葉類の検出サイズデータに基づいて識別候補の中から識別対象種を選定し、第2判定手段32が、紙葉類の検出光量データを、第1判定手段31により選定された識別候補の参照光量データと比較することにより、紙葉類の種類を特定するようになっている。これにより、インクパターンや磁気パターンを検出してパターン認識を行う必要がないため、識別処理回路の構成が簡略化され、識別処理の高速化を低コストで実現することができるとともに、識別部の小型化を図ることができる。
以上、本発明を具体的に説明してきたが、本発明はそれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
Claims (14)
- 搬送される紙葉類に光源波長の異なる数種類の光を照射して得られる反射光または透過光の光量を検出するラインセンサを含むセンシングユニットを用いて、種類毎にサイズおよび色の異なる紙葉類を識別する紙葉類識別方法であって、
識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成された参照サイズデータおよび参照光量データを記憶する記憶ステップと、
前記センシングユニットによって検出された前記紙葉類の検出サイズデータと前記参照サイズデータとに基づいて、前記識別候補の中から識別対象種を選定する第1判定ステップと、
前記ラインセンサによって検出された前記紙葉類の検出光量データを、前記識別対象種の前記参照光量データおよび前記識別候補のうちサイズ順が前記識別対象種と隣接する少なくとも1種類の前記参照光量データと比較することにより、前記紙葉類の種類を特定する第2判定ステップと
を含むことを特徴とする紙葉類識別方法。 - 前記ラインセンサは、搬送方向と直交する方向に沿って配設され、搬送される前記紙葉類に対して複数回のライン検出を繰り返すことにより前記紙葉類を面状に走査する構成であり、
前記第1判定ステップは、前記ラインセンサにより得られた前記検出サイズデータである搬送方向と直交する方向における前記紙葉類の札幅を、識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成された閾値と比較して、前記札幅が前記閾値内に含まれている前記ライン検出の回数を計数するとともに、その計数結果に基づいて前記識別候補の中から1種類の識別対象種を選定する請求の範囲第1項に記載の紙葉類識別方法。 - 前記第1判定ステップは、前記センシングユニットの一部を構成する光学センサによって得られた前記検出サイズデータである搬送方向における前記紙葉類の札長を、前記参照サイズデータと比較することにより、前記計数の対象とする複数の候補種を選定する請求の範囲第2項に記載の紙葉類識別方法。
- 前記複数の候補種は、2種類である請求の範囲第3項に記載の紙葉類識別方法。
- 前記第2判定ステップは、前記検出光量データを色相、彩度、および明度に符号化して3次元データを生成するとともに、該3次元データを前記参照光量データと比較して色データの分布傾向を参照することにより、前記紙葉類の種類を特定する請求の範囲第1項ないし第4項のいずれかに記載の紙葉類識別方法。
- 前記第2判定ステップは、前記検出光量データを色相、彩度、および明度に符号化して3次元データを生成し、該3次元データから前記明度のパラメータを削除した2次元データを算出し、かつ、該2次元データを前記参照光量データと比較して色データの分布傾向を参照することにより、前記紙葉類の種類を特定する請求の範囲第1項ないし第4項のいずれかに記載の紙葉類識別方法。
- 前記光は、赤色光、緑色光、青色光、赤外光より成る群から選ばれた2種以上である請求の範囲第1項ないし第4項のいずれかに記載の紙葉類識別方法。
- 搬送される紙葉類に光源波長の異なる数種類の光を照射して得られる反射光または透過光の光量を検出するラインセンサを含むセンシングユニットを備え、種類毎にサイズおよび色の異なる紙葉類を識別する紙葉類識別装置であって、
識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成された参照サイズデータおよび参照光量データを記憶する記憶手段と、
前記センシングユニットによって検出された前記紙葉類の検出サイズデータと前記参照サイズデータとに基づいて、前記識別候補の中から識別対象種を選定する第1判定手段と、
前記ラインセンサによって検出された前記紙葉類の検出光量データを、前記識別対象種の前記参照光量データおよび前記識別候補のうちサイズ順が前記識別対象種と隣接する少なくとも1種類の前記参照光量データと比較することにより、前記紙葉類の種類を特定する第2判定手段と
を備えることを特徴とする紙葉類識別装置。 - 前記ラインセンサは、搬送方向と直交する方向に沿って配設され、搬送される前記紙葉類に対して複数回のライン検出を繰り返すことにより前記紙葉類を面状に走査する構成であり、
前記第1判定手段は、前記ラインセンサにより得られた前記検出サイズデータである搬送方向と直交する方向における前記紙葉類の札幅を、識別候補となる紙葉類の種類毎に予め生成された閾値と比較して、前記札幅が前記閾値内に含まれている前記ライン検出の回数を計数するとともに、その計数結果に基づいて前記識別候補の中から1種類の識別対象種を選定する請求の範囲第8項に記載の紙葉類識別装置。 - 前記第1判定手段は、前記センシングユニットの一部を構成する光学センサによって得られた前記検出サイズデータである搬送方向における前記紙葉類の札長を、前記参照サイズデータと比較することにより、前記計数の対象とする複数の候補種を選定する請求の範囲第9項に記載の紙葉類識別装置。
- 前記複数の候補種は、2種類である請求の範囲第10項に記載の紙葉類識別装置。
- 前記第2判定手段は、前記検出光量データを色相、彩度、および明度に符号化して3次元データを生成するとともに、該3次元データを前記参照光量データと比較して色データの分布傾向を参照することにより、前記紙葉類の種類を特定する請求の範囲第8項ないし第11項のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
- 前記第2判定手段は、前記検出光量データを色相、彩度、および明度に符号化して3次元データを生成し、該3次元データから前記明度のパラメータを削除した2次元データを算出し、かつ、該2次元データを前記参照光量データと比較して色データの分布傾向を参照することにより、前記紙葉類の種類を特定する請求の範囲第8項ないし第11項のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
- 前記光は、赤色光、緑色光、青色光、赤外光より成る群から選ばれた2種以上である請求の範囲第8項ないし第11項のいずれかに記載の紙葉類識別装置。
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