JP4947165B2 - 液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置 - Google Patents

液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置 Download PDF

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Description

本発明は、被噴射液を吐出する液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置に関し、特にインク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を介して圧電素子を設けて、圧電素子の変位によりインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置に関する。
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドが実用化されている。このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、ノズル開口に連通する複数の圧力発生室が設けられた流路形成基板と、各圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子と、圧力発生室の共通の液体室であるリザーバの少なくとも一部を構成するリザーバ部が設けられたリザーバ形成基板と、流路形成基板の他方面側に接合されたノズル開口を有するノズルプレートとからなる構成のものが知られている。また、リザーバ形成基板の圧電素子に対向する領域には、圧電素子の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可能な圧電素子保持部が設けられている。そして、各圧力発生室の長手方向一端部側には、リザーバ内のインクを各圧力発生室に供給するためのインク供給路が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、リザーバ形成基板に設けられたリザーバ部の開口部には、リザーバ部の開口部を塞ぐと共にリザーバ部にインクを供給するインク導入口が設けられた液体導入口形成板としてコンプライアンス基板が接合されており、インクに残留した気泡がリザーバ部に入ると、リザーバ部の圧力発生室の列方向に延びる圧力発生室側の側壁とコンプライアンス基板とで画成される隅部に気泡が溜まりやすく、特に、隅部の圧力発生室の列方向両端部の角部に気泡が溜まりやすい。このリザーバ部に溜まった気泡が、印刷中にインクと共にノズル開口から吐出されると、インク吐出不良が発生してしまい印刷品質が劣化してしまうという問題がある。なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけではなく、勿論、インク以外を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても、同様に存在する。
特開2000−296616号公報(段落[0100]、第1図及び第2図)
本発明はこのような事情に鑑み、印刷品質及び信頼性を向上した液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、液滴を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室が画成された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して前記圧力発生室に対応する領域に設けられて前記圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側に接合され且つ前記圧力発生室の長手方向一端部に連通して液体を供給するリザーバの一部を構成する厚さ方向に貫通したリザーバ部の設けられたリザーバ形成基板とを具備する液体噴射ヘッドであって、前記リザーバ形成基板の前記流路形成基板とは反対側上には、前記リザーバ部の開口に連通する液体導入口が設けられた液体導入口形成板が形成され、前記液体導入口形成板側の前記リザーバ部の少なくとも開口部近傍に、当該リザーバ部の側壁から当該開口部内方の途中までせり出すように突出した突部が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第1の態様では、リザーバ部の最も気泡が滞留する領域に突部を設けることによって、液体供給口から液体を取り込んだ際に、液体に含有する気泡がリザーバ部内に滞留することがない。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記リザーバ形成基板の前記リザーバ部の開口部近傍に形成された前記突部が、前記圧力発生室の列方向全体に亘って設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第2の態様では、リザーバ部に突部を容易に且つ高精度に形成することができ、また、気泡の滞留を防止することができる。
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記リザーバ形成基板の前記リザーバ部の開口部近傍に形成された前記突部が、前記圧力発生室の列方向に対応する領域の両端部のみに設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第3の態様では、突部が圧力発生室の列方向に対応する領域のみに設けられているので、気泡が滞留し易い箇所のリザーバ形成基板の形状を最小限の範囲で変えればよい。
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記突部が、当該リザーバ部の厚さ方向の前記開口部側のみに設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第4の態様では、リザーバ部の最も気泡が滞留する領域に突部を容易に且つ高精度に形成することができる。
本発明の第5の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記突部が、前記リザーバ部の厚さ方向に亘って設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第5の態様では、突部によってリザーバ部内に気泡が滞留するのを確実に防止できる。
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記リザーバ形成基板が単結晶シリコンからなると共に、前記リザーバ部及び前記突部が両面からエッチングされて形成されたものであることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第6の態様では、リザーバ部及び突部を同時に且つ高精度に形成することができる。
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる第7の態様では、液体吐出特性が実質的に安定し且つ信頼性を向上した液体噴射装置を実現することができる。
本発明の第8の態様は、液滴を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室が画成された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して前記圧力発生室に対応する領域に設けられて前記圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側に接合され且つ前記圧力発生室の長手方向一端部に連通して液体を供給するリザーバの一部を構成する厚さ方向に貫通したリザーバ部の設けられたリザーバ形成基板と、当該リザーバ形成基板の前記流路形成基板とは反対側上に形成されて、前記リザーバ部に液体を供給する液体導入口が設けられた液体導入口形成板とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記リザーバ形成基板の両面にマスク膜を形成すると共に、両面の前記マスク膜のそれぞれに、当該リザーバ部の厚さ方向に相対向する縁部の位置が一部異なる開口部を形成し、前記リザーバ形成基板の両面から前記マスク膜を介してエッチングすることにより、前記リザーバ部を形成すると共に前記液体導入口形成板側の前記リザーバ部の少なくとも開口近傍に当該リザーバ部の側壁から当該開口部内方の途中までせり出すように突出した突部を形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第8の態様では、突部を形成する工程を増やすことなく、リザーバ部と突部とを同時に且つ高精度に形成することができる。
実施形態1に係る記録ヘッドの概略を示す斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係るリザーバ形成基板の底面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態2に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 一実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では、面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。
この流路形成基板10には、その他方面側から保護膜51をマスクとして異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が形成されている。また、各列の圧力発生室12の長手方向外側には、後述する接合基板となるリザーバ形成基板30に設けられるリザーバ部31に連通し、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成する連通部13が形成されている。また、連通部13はインク供給路14を介して各圧力発生室12の長手方向一端部とそれぞれ連通されている。
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、このように、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。
ここで、異方性エッチングは、シリコン単結晶基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。例えば、本実施形態では、シリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(111)面とが出現し、(110)面のエッチングレートと比較して(111)面のエッチングレートが約1/180であるという性質を利用して行われる。かかる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うことができ、圧力発生室12を高密度に配列することができる。
本実施形態では、各圧力発生室12の長辺を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板10をほぼ貫通して弾性膜50に達するまでエッチングすることにより形成されている。ここで、弾性膜50は、シリコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵される量がきわめて小さい。
このような流路形成基板10の厚さは、圧力発生室12を配列密度に合わせて最適な厚さを選択すればよく、圧力発生室12の配列密度が、例えば、1インチ当たり180個(180dpi)程度であれば、流路形成基板10の厚さは、220μm程度であればよいが、例えば、200dpi以上と比較的高密度に配列する場合には、流路形成基板10の厚さは100μm以下と比較的薄くするのが好ましい。これは、隣接する圧力発生室12間の隔壁の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるからである。本実施形態では、詳しくは後述するが、流路形成基板10の厚さを70μmとした。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.05〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又は不錆鋼などからなる。ノズルプレート20は、一方の面で流路形成基板10の一面を全面的に覆い、流路形成基板10であるシリコン単結晶基板を衝撃や外力から保護する補強板の役目も果たす。また、ノズルプレート20は、流路形成基板10と熱膨張係数が略同一の材料で形成するようにしてもよい。この場合には、流路形成基板10とノズルプレート20との熱による変形が略同一となるため、熱硬化性の接着剤等を用いて容易に接合することができる。
ここで、インク滴吐出圧力をインクに与える圧力発生室12の大きさと、インク滴を吐出するノズル開口21の大きさとは、吐出するインク滴の量、吐出スピード、吐出周波数に応じて最適化される。例えば、1インチ当たり360個のインク滴を記録する場合、ノズル開口21は数十μmの直径で精度よく形成する必要がある。
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、厚さが例えば、約1.0μmの弾性膜50の上に、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁膜55を介して、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70、及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。なお、上述した例では、圧電素子300の下電極膜60、弾性膜50及び絶縁膜55が振動板として作用する。また、圧電素子300の上電極膜80の長手方向一端部近傍から流路形成基板10の圧力発生室12の端部近傍まで、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が延設されている。そして、このリード電極90は、流路形成基板10の端部近傍で図示しない駆動ICと電気的に接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60上、絶縁膜55上及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有するリザーバ形成基板30が接着剤を介して接合されている。このリザーバ部31は、本実施形態では、リザーバ形成基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
また、リザーバ部31の流路形成基板10とは反対側には、詳しくは後述するリザーバ部31の開口部を塞ぐと共にリザーバ部31にインクを供給するインク導入口44が設けられた液体導入口形成板としてコンプライアンス基板40が接合されている。そして、リザーバ部31の最も気泡が溜まりやすい領域、本実施形態では、コンプライアンス基板40とリザーバ部31の圧力発生室12の列方向に延びる圧力発生室12側の側壁とで画成される隅部の圧力発生室12の列方向に亘って全体に、リザーバ部31の側壁からリザーバ部31の開口部内方の途中まで庇状にせり出すように突出した突部33が設けられている。この突部33によってリザーバ部31内に気泡が滞留するのを確実に防止している。この突部33は、本実施形態では、圧力発生室12の長手方向の断面が三角形状となる三角柱形状を有し、リザーバ部31の側壁の開口部側にのみ設けられている。
また、リザーバ形成基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。このようなリザーバ形成基板30としては、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることがより好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料で厚さが約400μmのシリコン単結晶基板を用いて形成した。また、詳しくは後述するが、リザーバ部31及び突部33は、本実施形態では、シリコン単結晶基板からなるリザーバ形成基板30を両面からエッチングすることにより形成されている。
このようなリザーバ形成基板30上には、リザーバ部31の開口部を塞ぐと共にリザーバ部31にインクを供給するインク導入口44の設けられた液体導入口形成板としてコンプライアンス基板40が接合されている。コンプライアンス基板40は、封止膜41及び固定板42とからなる。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
また、コンプライアンス基板40のリザーバ部31に相対向する領域には、リザーバ100にインクを供給するためのインク導入口44が形成されている。このインク導入口44は、圧力発生室12側とは突部33を挟んだ反対側に設けられている。このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口44からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
このように、リザーバ部31内の最も気泡が滞留する領域に突部33を設けることによって、インク導入口44からインクを取り込んだ際に、インクに含有した気泡がリザーバ部31内に滞留することがなく、リザーバ部31内に溜まった気泡が印刷中にノズル開口21からインクと共に吐出されず、印刷品質及び信頼性を向上することができる。また、本実施形態では、リザーバ部31の角部のみに突部33を設けるようにしたため、突部33によりコンプライアンス基板40の弾性変形を規制することがなく、コンプライアンス基板40によるコンプライアンスを確保することができる。
以上説明した本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法について図3〜図8を参照して詳細に説明する。なお、図3〜図5及び図7は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。まず、図3(a)に示すように、流路形成基板10となるシリコン単結晶基板を約1100℃の拡散炉で熱酸化して二酸化シリコンからなる弾性膜50を形成する。このとき、一方面には、弾性膜50が形成され他方面には、後の工程でマスクパターンとして用いられる保護膜51が形成される。次に、図3(b)に示すように、この弾性膜50上に酸化ジルコニウム等からなる絶縁膜55を形成する。
次に、図3(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとからなる下電極膜60を絶縁膜55の全面に形成後、所定形状にパターニングする。次に、図3(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを順次積層し、これらを同時にパターニングして圧電素子300を形成する。次に、図3(e)に示すように、リード電極90を形成する。具体的には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を流路形成基板10の全面に亘って形成すると共に、各圧電素子300毎にパターニングする。以上が膜形成プロセスである。
次に、流路形成基板10に接合されるリザーバ形成基板30の製造方法について説明する。まず、図4(a)に示すように、リザーバ形成基板30となるシリコン単結晶基板を約1100℃の拡散炉で熱酸化して二酸化シリコン層を形成し、両面に設けられた二酸化シリコン層をそれぞれパターニングすることによって、両面のそれぞれに開口部34a、35aを有するマスク膜34、35を形成する。マスク膜35の開口部35aは、リザーバ部31の流路形成基板10側の開口と同じ大きさとなるように形成し、マスク膜34の開口部34aは、圧力発生室12の列方向に延びる開口縁部の圧力発生室12側を開口部35aの開口縁部よりも内側となるようにずらし、その他の開口縁部は、開口部35aと相対向する位置が同一となるように形成する。
次に、図4(b)〜図5(b)に示すように、リザーバ形成基板30の両面からマスク膜34、35を介してアルカリ溶液による異方性エッチングを行うことにより、リザーバ形成基板30にリザーバ部31と突部33とを形成する。詳しくは、シリコン単結晶基板からなるリザーバ形成基板30をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、図4(b)に示すように、リザーバ形成基板30の両面の開口部34a、35aから徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(111)面とが出現し、リザーバ形成基板30の両面に第1の(111)面と第2の(111)面とで画成された凹部36が形成される。そして、エッチングを続けると、図4(c)に示すように、両面の凹部36の底面が互いに連通し、第2の(111)面によって断面が三角形状に突出した側壁が形成される。さらに、エッチングを続けると、図5(a)に示すように、リザーバ形成基板30の両面側に表面に対して垂直な面が徐々に出現する。そして、最終的には、図5(b)に示すように、リザーバ形成基板30の厚さ方向で相対向する開口縁部の位置が同一の側壁は、表面に対して垂直となる。また、リザーバ形成基板30の厚さ方向で相対向する開口縁部の位置が異なる側壁は、マスク膜35側に表面に対して垂直な面と、マスク膜34側に傾斜した面となる。これにより、リザーバ部31と突部33とが形成される。
なお、実際には、マスク膜34、35のそれぞれの開口部34a、35aは、リザーバ部31として、圧力発生室12の列方向に向かって垂直な側壁が形成されるように、図6に示すように、マスクパターンを所定の傾斜角度で櫛刃状に形成している。
このように、リザーバ形成基板30にリザーバ部31を形成するために両面からエッチングする際に用いられるマスク膜34の開口部34aの圧力発生室12の列方向に延びる圧力発生室12側の開口縁部をマスク膜35の開口部35aよりも内側にずらすことで、リザーバ部31を形成する際に、突部33を同時に形成することができる。これにより、突部33を別途形成する工程が不要となり、製造工程を煩雑にすることなく突部33を容易に且つ高精度に形成することができる。
なお、このようなリザーバ部31及び突部33の形成は、リザーバ形成基板30に圧電素子保持部32を形成する前に行ってもよく、圧電素子保持部32を形成後に行うようにしてもよい。例えば、圧電素子保持部32を形成後にリザーバ部31及び突部33を形成する場合は、圧電素子保持部32の内面にリザーバ部31及び突部33を形成する際に同時にエッチングされないように保護膜等を形成しておく必要がある。また、同様に、圧電素子保持部32をリザーバ部31及び突部33を形成した後に形成する場合には、リザーバ部31及び突部33の内面に保護膜等を形成しておく必要がある。なお、圧電素子保持部32は、エッチング時間の調整により形成することができる(ハーフエッチング)。
次に、図7(a)に示すように、流路形成基板10の圧電素子300側にリザーバ部31、圧電素子保持部32及び突部33の形成されたリザーバ形成基板30を接合する。流路形成基板10とリザーバ形成基板30とを、本実施形態では、例えば、熱硬化型のエポキシ系接着剤で接着した。なお、流路形成基板10とリザーバ形成基板30とは、接着剤を介した接着に限定されず、例えば、接着面のそれぞれに金(Au)からなる膜を形成し、両者を金−金接合してもよく、陽極接合により接合するようにしてもよい。
次に、図7(b)に示すように、前述したアルカリ溶液によるシリコン単結晶基板の異方性エッチングを行い、圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14等を形成する。なお、実際には、上述した一連の膜形成及び異方性エッチングによって一枚のシリコンウェハ上に多数のチップを同時に形成し、上記プロセス終了後、上述したノズルプレート20及びコンプライアンス基板40を接着して一体化し、その後、図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10毎に分割することによってインクジェット式記録ヘッドとする。
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの平面図及びそのB−B′断面図である。図示するように、本実施形態のリザーバ形成基板30Aには、コンプライアンス基板40とリザーバ部31Aの圧力発生室12の列方向に延びる圧力発生室12側の側壁とで画成される隅部の圧力発生室12の列方向両端部の角部に、庇状にせり出すように突出した突部33Aが設けられている。
このように、気泡が最も滞留し易い箇所のみに気泡滞留を防止するための庇状の突部33Aを形成したため、突部33Aの形成領域がコンプライアンス領域に占める割合を最小限に抑えることができ、コンプライアンスを十分に確保しつつ、気泡の滞留を防止することができる。なお、このような突部33Aもリザーバ部31Aを形成する際のマスク膜の開口部34a、35bの位置をずらすことで、リザーバ部31Aと同時に突部33Aを容易に且つ高精度に形成することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1及び2では、突部33、33Aをリザーバ部31、31Aの側壁のコンプライアンス基板40の接合された開口部側に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、突部をリザーバ部の厚さ方向に亘って設けるようにしてもよい。
また、例えば、上述の実施形態では、成膜及びリソグラフィプロセスを応用して製造される薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のインクジェット式記録ヘッド等にも本発明を採用することができる。
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図9は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図9に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
なお、液体噴射ヘッドとしてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置を一例として説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
10 流路形成基板、12 圧力発生室、20 ノズルプレート、21 ノズル開口、30,30A リザーバ形成基板、31,31A リザーバ部、32 圧電素子保持部、33,33A 突部、40 コンプライアンス基板、60 下電極膜、70 圧電体層、80 上電極膜、90 引き出し電極、100 リザーバ、300 圧電素子。

Claims (2)

  1. 液滴を吐出するノズル開口に連通する複数の圧力発生室が並設して画成された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して複数の前記圧力発生室に対応する領域に設けられて複数の前記圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側に接合され且つ複数の前記圧力発生室の長手方向一端部に連通して液体を供給するリザーバの一部を構成する厚さ方向に貫通したリザーバ部の設けられたリザーバ形成基板とを具備する液体噴射ヘッドであって、
    前記リザーバ形成基板の前記流路形成基板とは反対側上には、前記リザーバ部に対向する領域が厚さ方向に完全に除去された開口部が形成された固定板と、この固定板の下に設けられ前記リザーバ部の一方面を封止すると共に可撓性を有する材料で形成された封止膜と、前記固定板及び前記封止膜を厚さ方向に貫通し前記リザーバ部の開口に連通する液体導入口を備えた液体導入口形成板が形成され、
    前記リザーバ部における複数の前記圧力発生室の並設方向に延びる前記圧力発生室側の壁と前記液体導入口形成板とで画成される領域に、
    複数の前記圧力発生室の並設方向に対応する領域に、
    前記圧力発生室側の壁から前記開口部の中に入り込むような向きでせり出すように突出して前記封止膜の底面と接する突部が設けられたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 液滴を吐出するノズル開口に連通する複数の圧力発生室が並設して画成された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して複数の前記圧力発生室に対応する領域に設けられて複数の前記圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側に接合され且つ複数の前記圧力発生室の長手方向一端部に連通して液体を供給するリザーバの一部を構成する厚さ方向に貫通したリザーバ部の設けられたリザーバ形成基板とを具備する液体噴射ヘッドであって、
    前記リザーバ形成基板の前記流路形成基板とは反対側上には、前記リザーバ部に対向する領域が厚さ方向に完全に除去された開口部が形成された固定板と、この固定板の下に設けられ前記リザーバ部の一方面を封止すると共に可撓性を有する材料で形成された封止膜と、前記固定板及び前記封止膜を厚さ方向に貫通し前記リザーバ部の開口に連通する液体導入口を備えた液体導入口形成板が形成され、
    前記リザーバ部における複数の前記圧力発生室の並設方向に延びる前記圧力発生室側の壁と前記液体導入口形成板とで画成される領域に、
    複数の前記圧力発生室の並設方向に対応する領域の少なくとも一部に、
    前記圧力発生室側の壁から前記開口部の中に入り込むような向きでせり出すように突出して前記封止膜の底面と接する突部が設けられたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
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