この発明は、被検体にコーン状のX線ビームを照射するX線源と、被検体の透過X線像を取得するX線受像器との各々が互いに対向する配置を保ったまま、被検体を挟んで同期移動させながらX線透視画像の取得を繰り返し、得られた一連のX線透視画像を基に被検体の断層画像を構成するX線断層撮影装置に係り、特にX線源とX線受像器との間にX線ビームを通過させるX線グリッドを備えたX線断層撮影装置に関する。
X線を利用して被検体の断層画像を取得するものとして、X線断層撮影装置がある。このX線断層撮影装置は、X線源と、X線受像器との各々が互いに対向する配置を保ったまま、被検体を挟んで互いに同期移動しながらX線透視画像の取得を繰り返し、それを基に、所望の裁断位置における被検体のX線断層画像をデジタル処理によって再構築してモニタなどの表示部に表示する構成となっている。
図14は、従来のX線断層撮影装置の構成を説明する図である。従来のX線断層撮影装置100は、被検体Mにコーン状のX線ビームを照射するX線源101と、被検体Mを透過したX線を検出するシート状のX線受像器102と、X線源101とX線受像器102との間に散乱X線を吸収するシート状のX線グリッド103と、被検体Mを載置する天板104とを備える。また、このX線グリッド103は、その内部にX線を吸収する素材で構成された短冊状の羽根103aを複数有する。また、この複数の羽根103aは、X線グリッド103全体で見れば、ブラインド状に配置され、互いに平行、かつ、等間隔となっている。
なお、X線源101とX線受像器102は、被検体Mの体軸方向Xに移動可能となっているとともに、シート状のX線グリッド103はX線受像器102に固定載置されている。したがって、X線グリッド103は、撮影中、X線受像器102の移動に追従し、常に散乱X線のX線受像器102への入射を防ぐ。
ところで、シート状のX線受像器102のX線検出面には、多数の半導体タイプのX線検出素子102aが被検体Mの体軸方向X,および体側方向Yに配列されたマトリクス状となっている。この様なX線受像器102は、X線受像器102に配列された各々のX線検出素子102aにより被検体Mを透過したX線を離散的にサンプリングすることによりX線透視画像を構成する。
特開2004−236929号公報
しかしながら、上述した従来のX線断層撮影装置には次のような問題点がある。即ち、X線源から照射されたX線がX線グリッドを透過する際に、X線グリッドの有する羽根の各々について筋状の影が生じてしまう。この筋状の影は、羽根の配列方向に沿って等間隔に並んでいるので、X線グリッド全体で見れば複数の筋状の影がストライプ状に並んだX線影パターンとなっており、これがX線グリッドの下方に配置されたX線受像器に写し込まれる。そのとき、このX線影パターンと、X線受像器に配列されたX線検出素子の配列パターンとの間に干渉が起こる。その結果、モアレが生じ、縞状の明暗が被検体のX線透視画像データに重畳してしまう。そして、それを基に構成される被検体のX線断層画像は、不鮮明となってしまう。
従来、この様なモアレを除去することができるX線撮像装置として、X線グリッドをX線受像器に対して遥動させる機構を備えたものがある。なお、このようなX線撮像装置のX線源とX線受像器は被検体のスポット撮影を行うためそれぞれ固定配置されており、上記X線断層撮影装置のように、X線源とX線受像器とを移動させることにより被検体の断層画像が得られる構成ではない。
上記スポット撮影において、X線グリッドを遥動させながらX線透視画像を撮影すると、上記モアレ縞は、縞の配列方向に移動しながらX線受像器に写り込むことになる。つまり、撮影中にモアレの明部領域と暗部領域が互いに相殺されながらX線受像器に写り込み、結果としてモアレは、X線受像器の中で消去される。因みに、このX線グリッドを遥動させる際のX線グリッドの移動速度は60cm/secであり、X線グリッドが移動できる長さは約1cmであることからすると、1枚のX線透視画像を得るためには、X線グリッドは1秒当たり30往復程度、遥動可能範囲の一端から他端までを往復することになる。このような撮影は、モアレを十分に消去できるように2秒間に亘って行われる。
このX線グリッドが遥動する機構をX線源とX線受像器が同期移動するX線断層撮影装置に適応することは、困難なものである。つまり、X線断層撮影装置が1度の検査で被検体から取得するX線透視画像は、74枚にも及び、1枚ずつX線グリッドを遥動さながら撮影すると、X線グリッドは1度の検査あたり74×30(2,220)往復することになる。したがって、1枚のX線透視画像撮影時間は長いものとなる。さらに、実際の検査時間は、この上にX線源、およびX線受像器が移動する時間が加算されたものとなり、現実的に鮮明なX線断層画像が得られる条件ではない。
かといって、検査に好適なように1枚あたりのX線透視画像撮影時間を短縮させようとすると、X線グリッドをそれに応じて更に高速で遥動させる必要があり、X線グリッドを遥動させる機構にとって不可能な程度の遥動速度が要求される。つまり、モアレ除去のためにX線グリッドが遥動する構成は、1枚のX線透視画像撮影時間が比較的長いスポット撮影において採用できるのであって、X線源とX線受像器とを同期移動させ複数の方向からX線透視画像を撮影する必要のあるX線断層撮影装置には適応できない。
したがって、従来のX線断層撮影装置においては、得られたX線透視画像ごとにモアレの除去を行う構成となっている。すなわち、1枚づつX線透視画像を周波数解析し、モアレ成分を含む特定の周波数の除去演算を行わせる。これによって、X線透視画像に生じたモアレは除去できるものの、被検体から得られたX線透視画像データについても上記のような除去演算がなされてしまい、それに伴って最後に合成される被検体のX線断層像を劣化させるという別異の問題が生じる。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、X線グリッドによるX線影パターンとX線受像器に配列されたX線検出素子の配列パターンとが干渉して生じるモアレを容易に除去し、鮮明な被検体のX線断層像を取得できるX線断層撮影装置を提供することにある。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明に係るX線断層撮影装置は、コーン状のX線ビームを照射するX線源と、X線源と対向する複数のX線検出素子からなるX線受像器と、コーン状のX線ビームの中心とX線受像器の中心が一致する状態でX線源とX線受像器とを同期移動させる同期移動手段と、X線受像器のX線検出面を覆うように配置された散乱X線を除去するX線グリッドと、X線グリッドを所定方向に進退自在に移動させるグリッド移動手段とを備え、X線源とX線受像機を同期移動させながら一連のX線透視画像を撮影し、これらのX線透視画像を重ね合わせることにより被検体に断層像を得るX線断層撮影装置において、X線受像器が有するX線検出素子配列パターンとX線グリッドによるX線影パターンとが干渉して生じX線受像器に写り込むモアレの出現位置が一連のX線透視画像の過半数において互いに異なる位置となるように、グリッド移動手段がX線グリッドを移動させることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項1に記載の発明に係るX線断層撮影装置によれば、より鮮明で診断に好適なX線断層画像を形成することができる。本発明に係るX線断層撮影装置において、X線検出素子配列パターンとX線グリッドによるX線影パターンとが干渉して生じるモアレは、X線透視画像に縞状の明暗となって被検体の透視画像データに重畳する。ただし、その出現位置は、検査過程で得られる一連のX線透視画像のうち、過半数のX線透視画像についてそれに写り込んだモアレの出現位置が互いに異なるものとなっている。つまり、X線透視画像を重ね合わせて、被検体のX線断層画像を取得する段階において、X線透視画像の各々は、モアレに起因する縞状の明暗が互いに相殺されながら重ね合わされることになり、結果的にモアレが消去される。したがって、最終的に得られる被検体のX線断層画像は、X線検出素子配列パターンとX線グリッドによるX線影パターンとが干渉して生じるモアレによって画像が劣化することがない。
また、上記の構成によれば、一連のX線透視画像取得の後、モアレを除去する構成となっているので、X線透視画像撮影する度ごとにモアレを消去する必要がない。したがって、1枚ずつX線グリッドを遥動さながらX線透視画像を撮影する構成が必要でなく、検査時間の大幅な短縮と、グリッド遥動に起因する騒音を抑制することができる。
さらに、上記の構成によれば、X線透視画像ごとに周波数解析を行い、モアレの除去演算を行う必要がない。したがって、被検体のX線透視画像データについても特定の周波数を除去する除去演算がなされることがない。したがって、X線透視画像データは、劣化せず、最終的に得られる被検体のX線断層画像は、より鮮明なものとなる。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線断層撮影装置において、グリッド移動手段によるX線グリッドの移動は少なくとも経時的に互いに隣接するX線透視画像撮影の合間に行われることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項2に記載の発明に係るX線断層撮影装置によれば、被検体のX線断層画像の合成時において各々のX線透視画像に写り込んだモアレを確実に消去させることが可能となる。すなわち、X線断層画像を得るため、X線透視画像を繰返して撮影する際に、前の撮影と次の撮影の合間にモアレを移動させるようX線グリッドを移動させておけば、経時的に互いに隣接するX線透視画像に写り込むモアレの位置を確実に異なるものとさせることができる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のX線断層撮影装置において、一連のX線透視画像の撮影中にX線源と対向する複数のX線検出素子からなるX線受像器と、コーン状のX線ビームの中心とX線受像器の中心が一致する状態でX線源とX線受像器の中心が互いに反対方向に同期移動されることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、一連のX線透視画像を単に重ね合わせるだけで、X線断層画像を取得することができる。本構成によれば、演算が簡単であるので、より安価なX線透視画像を提供することができる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のX線断層撮影装置において、モアレの出現位置が一連のX線透視画像の各々で異なる位置となるように、グリッド移動手段がX線グリッドを移動させることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、より確実にモアレを消去することができるX線断層撮影装置が提供できる。この構成によれば、一連のX線透視画像に映りこんだモアレの出現位置が互いに異なったものとなっているので、これを重ね合わせてX線断層画像を取得するようにすれば、モアレは確実に相殺され、検査に好適なX線断層画像が提供できる。
なお、本明細書は、次のようなX線断層撮影装置に係る発明も開示している。
(1)請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のX線断層撮影装置において、互いに出現位置の異なるモアレが写り込んだ複数枚のX線透視画像を重ね合わせてX線断層画像を形成する重ね合わせ部を備えることを特徴とするX線断層撮影装置。
(1)のような構成によれば、X線透視画像に写り込んだモアレを容易に消去させることができる。つまり、X線透視画像に写り込んだモアレの各々は、X線透視画像においてその位置が互いに異なっているので、検査によって取得された一連のX線透視画像を重ね合わせることによって、確実にモアレを消去させることができる。したがって、より鮮明で診断に好適なX線断層画像を取得することができる。
(2)請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のX線断層撮影装置において、一連のX線透視画像を撮影するときにグリッド移動手段はX線グリッドを0.3m/sec以上の速度で移動させることを特徴とするX線断層撮影装置。
(2)のような構成によれば、一連のX線透視画像を取得する際にX線グリッドの移動距離を最小限に抑制することができる。これにより、グリッド遥動に起因する騒音をより抑制するとともに、一連のX線透視画像の取得時において、X線受像器に対するX線グリッドの移動方向を極力反転させない構成とすることができる。
(3)請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のX線断層撮影装置において、X線グリッドは互いに平行に配列された短冊状の複数の羽根を有し、撮影時におけるグリッド移動手段によるX線グリッドの移動方向は、複数の羽根の配列方向となっていることを特徴とするX線断層撮影装置。
(3)のような構成によれば、より確実にモアレを移動させることができる。X線受像器に写り込むモアレのモアレ縞の配列方向とX線グリッドが有する複数の羽根の配列方向とは一致している。したがって、X線グリッドをこの羽根の配列方向に移動させれば、このモアレもこの方向に沿って速やかに移動することになる。つまり、このように構成すれば、より確実に、経時的に互いに隣接するX線透視画像に写り込むモアレの発生位置を異なるものとさせることができる。
この発明によれば、X線グリッドによるX線影パターンとX線受像器に配列されたX線検出素子の配列パターンとが干渉して生じるモアレを容易に除去し、鮮明な被検体のX線断層像を取得できるX線断層撮影装置を提供することができる。すなわち、本発明に係るX線断層撮影装置の検査過程で得られる一連のX線透視画像において、それらに表れるモアレの位置は、一連のX線透視画像のうち、過半数のX線透視画像についてそれに写り込んだモアレの出現位置が互いに異なるものとなっている。つまり、X線透視画像を重ね合わせて、被検体のX線断層画像を取得する段階において、X線透視画像の各々は、モアレに起因する縞状の明暗が互いに相殺されながら重ね合わされることになり、結果的にモアレが消去される。また、この発明の構成によれば、一連のX線透視画像取得の後、モアレを除去する構成となっているので、X線透視画像撮影する度ごとにモアレを消去する必要がない。したがって、1枚ずつX線グリッドを遥動さながらX線透視画像を撮影する構成が必要でなく、X線透視画像ごとに周波数解析を行い、モアレ成分を含む特定の周波数を除去する必要もない。以上のように、本発明に係るX線断層撮影装置によれば、鮮明で診断に好適なX線断層画像を取得することができる。また、検査中において、グリッド遥動に起因する騒音を抑制することができる。
以下、本発明に係るX線断層撮影装置の実施例を図面に基づいて説明する。
まず、実施例1に係るX線断層撮影装置の構成について説明する。図1は、実施例1に係るX線断層撮影装置の全体構成を示すブロック図である。実施例1に係るX線断層装置1は、図1に示すように、X線断層撮影の対象である被検体Mを載置する天板2と、天板2の上部に設けられた被検体Mに対してコーン状のX線ビームを照射するX線管3と、天板2の下部に設けられ、被検体Mの透過X線像を検出するシート状のX線受像器であるフラットパネル型X線検出器(以下、FPDと略記)5と、コーン状のX線ビームの中心とFPD5の中心が常に一致する状態でX線管3とFPD5の各々を被検体Mの関心部位を挟んで互いに反対方向に同期移動させる同期移動機構6と、これを制御する同期移動制御部7と、天板2の下部に設けられ、FPD5のX線を検出するX線検出面を覆うように設けられたX線グリッド8と、このX線グリッド8をFPD5に対して移動させるX線グリッド移動機構9と、これを制御するX線グリッド制御部10とを備える。
そして、さらに実施例1に係るX線断層撮影装置1は、各制御部4,7,10を統括的に制御する主制御部13と、X線断層画像を表示する表示部14とを備えている。この主制御部13は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部4,7,10,および後述の天板移動制御部12,透視画像形成部15,および重ね合わせ部16とを実現している。なお、X線管3,FPD5,同期移動機構6,およびX線グリッド移動機構9は、本発明のX線源、X線受像器、同期移動手段、およびグリッド移動手段のそれぞれに相当する。
天板2は、昇降自在、かつ被検体Mの体軸方向Aに沿って摺動自在となっており、天板移動機構11によって駆動される。この天板移動機構11は、天板移動制御部12の制御にしたがう。なお、この天板移動制御部12も主制御部13によって他の各制御部4,7,10と共に統括的に制御される。
X線管3は、X線照射制御部4の制御にしたがってコーン状のX線ビームを被検体Mに対してパルス照射を繰返す構成となっている。このX線管3には、X線ビームを角錐となっているコーン状にコリメートするコリメータが付属している。そして、このX線管3と、FPD5はX線透視画像を撮像する撮像系を形成している。
同期移動機構6は、X線管3とFPD5とを同期させて移動させる構成となっている。この同期移動機構6は、同期移動制御部7の制御にしたがって被検体Mの体軸方向Aに平行な直線軌道に沿ってX線管3を直進移動させる。しかも、検査中、X線管3の照射するコーン状のX線ビームは、常に被検体Mの関心部位に向かって照射されるようになっており、このX線照射角度は、コリメータの角度を変更することによって、たとえば初期角度−20°から最終角度20°まで変更される。
また、同期移動機構6は、上述のX線管3の直進移動に同期して、天板2の下部に設けられたFPD5を被検体Mの体軸方向Aに沿って直進移動させる。そして、その移動方向は、X線管3の移動方向と反対方向となっている。つまり、X線管3が移動することによって照射源位置と照射方向が変化するコーン状のX線ビームは、常にFPD5のX線検出面の全面で受光される構成となっている。このように、一度の検査において、FPD5は、X線管3と互いに反対方向に同期して移動しながら、たとえば74枚のX線透視画像を取得するようになっている。具体的には、X線管3とFPD5とは、破線で示した位置を介して、一点鎖線で示す位置まで対向移動する。すなわち、X線管3とFPD5の位置を変化させながら複数のX線透視画像が撮影されることになる。ところで、コーン状のX線ビームは常にFPD5のX線検出面の全面で受光されるので、撮影中コーン状のX線ビームの中心は、常にFPD5の中心と一致している。また、撮影中FPD5の中心は、直進移動するが、この移動はX線管3の移動の反対方向となっている。つまり、X線源であるX線管3とX線受像器であるFPD5との中心が互いに反対方向に同期移動される構成となっている。
また、FPD5の後段には、そこから出力されるX線検出信号を基に被検体MのX線透視画像を形成する透視画像形成部15が備えられており、この透視画像形成部15の更に後段には、透視画像形成部15で形成された複数のX線透視画像を互いに重ね合わせることによって、所望の裁断位置における被検体MのX線断層画像を形成する重ね合わせ部16が備えられている。
次に、このFPD5の構成を説明する。図2は、実施例1に係るFPDのX線検出面とX線グリッドの構成を説明する平面図である。FPD5は、図2(a)に示すように、たとえば、30cm×30cmのX線を検出するX線検出面を有し、そこには、被検体Mから透過した透過X線を検出する半導体タイプのX線検出素子5aが被検体Mの体軸方向Aにたとえば、1,024列に配列され、被検体Mの体側方向Sにたとえば、1,024行に配列されたマトリクス状となっている。つまり、X線検出素子5aの配列ピッチは、行方向、列方向ともに300μmとなっている。そして、FPD5は被検体Mの体軸方向A,および体側方向Sに沿った4辺を有する矩形となっている。
続いて、X線グリッド8の構成について説明する。図3は、実施例1に係るX線断層撮影装置を被検体の体側側から見たときの平面図である。図3に示すように、X線受像器2を覆うように設けられたX線グリッド8の内部には、被検体Mの体軸方向A(紙面に対して垂直方向)に沿って伸びた短冊状の羽根8aが複数設けられている。また、複数の羽根8aは、図2(b)に示すようにX線グリッド8における被検体Mの体側方向Sに沿って所定の間隔を隔ててブラインド状に配列され、その間隔は、たとえば、200μmに設定される。そして、X線管3から放射状に照射されるX線を通過させるよう、各々の羽根8aの面が向かう方向と、X線管3から照射されるX線ビーム17の進行方向とが一致するように羽根8aは、配向されている。つまり、図3に示すように、羽根8aは、X線グリッド8の被検体Mの体軸方向Aに沿った端部に向かうに従い、次第に傾斜するようになっている。そして、X線グリッド8も被検体Mの体軸方向A,および体側方向Sに沿った4辺を有する矩形となっている。なお、図3においては、羽根8aを強調して描写しており、実際の羽根8a同士の間隔はより狭いものである。同様に、以降の図においても羽根8a同士の間隔は、強調されて描かれている。
X線グリッド8は、散乱X線をFPD5に入射させないために設けられる。X線管3からFPD5方向へ進むX線のうち、途中で反射するなどして、進行方向が乱れた散乱X線は、X線グリッド8が有する羽根8aに吸収され、FPD5には入射しない。こうして、実施例1に係るX線断層撮影装置1は、X線グリッド8を備えることにより、散乱X線に起因する画像ボケやコントラスト低下を抑制する構成となっている。なお、X線ビーム17は、X線グリッド8のFPD5に対する相対移動にかかわらず、常にX線グリッド8を透過してからFPD5に入射する構成となっている。
次に、X線グリッド8の構成について説明する。図4は、実施例1に係るX線グリッドおよびFPDの斜視図である。図4に示すように、FPD5を覆うように設けられたX線グリッド8は、主板18aと、被検体Mの体側方向Sに沿った主板18aの両端に配置された2つの側板18b,18cを有している。そして、側板18b,18cは、FPD5を覆うために十分な高さを有している。このような構成のX線グリッド8は、図示しないX線グリッド移動機構9によって、羽根8aの配列方向(本実施例では、被検体Mの体側方向S)に沿って移動可能となっているが、このX線グリッド移動機構9の基部は、FPD5に固定支持され、可動部は、X線グリッド8を支持する。したがって、このX線グリッド8は、同期移動機構6によってFPD5と一体的に被検体Mの体軸方向Aに沿って移動可能となっているとともに、X線グリッド移動機構9によって被検体Mの体側方向Sに沿ってFPD5に対して進退可能となっている。すなわち、羽根8aの配列方向にX線グリッド8がFPD5に対して相対移動することになる。なお、この被検体Mの体側方向Sに沿うX線グリッド8のFPD5に対する相対移動可能距離は、たとえば1cmに設定される。さらに、上述のX線グリッド移動機構9は、たとえばアクチュエータによって構成される。また、このX線グリッド8のFPD5に対する相対移動速度については後述する。
このX線グリッド8の移動方法に関して更に説明する。図5は、実施例1に係るX線断層撮影装置のFPDに対する相対移動を説明する平面図である。上述のようにX線グリッド8は、X線グリッド移動機構9に駆動され、FPD5に対して被検体Mの体側方向S(紙面左右方向)に往復移動自在となっている。すなわち、図5(a)にあっては、X線グリッド8は、FPD5とともに被検体Mの体軸方向A(紙面に対して垂直方向)に移動されながら、FPD5に対して紙面左方向に相対移動されることになる。そして、実施例1に係るX線断層撮影装置1は、FPD5およびX線グリッド8を上記のように移動させながら、被検体MのX線断層画像を連続して撮影する。
撮影中X線グリッド8がFPD5に対する相対移動可能範囲の一端まで到達すると、図5(b)に示すようにX線グリッド8はその瞬間に停止する。その後、図5(c)に示すように、今度は、X線グリッド8が紙面右方向に移動し、X線グリッド8は、FPD5に対する相対移動可能範囲の他端を目指す。実施例1におけるX線グリッド8は、その移動方向を反転させる前に一度停止する。なお、図5(b)のようにX線グリッド8がFPD5に対して停止している時点においても、X線菅3及びFPD5は、引き続き被検体MのX線透視画像を連続して撮影する。
また、X線グリッド8は、他の方法で移動させてもよい。たとえば、1枚のX線透視画像撮影の最中にはX線グリッド8を停止させ、その代わり、経時的に隣接するX線透視画像撮影の合間にX線グリッド8を移動させてもよい。
次に、実施例1に係るX線断層撮影装置1の断層画像の取得原理について説明する。図6は、実施例1に係るX線断層撮影装置の断層画像の取得方法を説明する図である。例えば、天板2に平行な基準断面MAについて説明すると、図6に示すように、基準断面MAに位置する点P,Qが、常にFPD5のX線検出面の不動点p,qのそれぞれに投影されるように、X線管3によるコーン状のX線ビーム17の照射方向に合わせてFPD5をX線管3の反対方向に同期移動させながら連続的に複数枚のX線透視画像が透視画像形成部15にて形成される。そして、このX線透視画像を重ね合わせ部16にて重ね合わせれば、基準断面MAに位置する像(たとえば、不動点p,q)が集積され、X線断層画像としてイメージングされることになる。一方、基準断面MAに位置しない点Iは、FPD5における投影位置を変化させながら一連のX線透視画像に点iとして写り込んでいる。この様な点iは、不動点p,qとは異なり、重ね合わせ部16でX線透視画像を重ね合わせる段階で像を結ばずにボケる。このように、X線透視画像の重ね合わせを行うことにより、被検体Mの基準断面MAに位置する像のみが写り込んだX線断層画像が得られる。
さらに、重ね合わせ部16の設定を変更することにより、基準断面MAに平行な任意の裁断位置においても、同様なX線断層画像を得ることができる。撮影中、FPD5において上記点iの投影位置は移動するが、投影前の点Iと基準断面MAとの離間距離が大きくなるにしたがって、この移動速度は増加する。これを利用して、取得された一連のX線透視画像から、移動方向と移動距離が同一となっている像を選択しながらX線透視画像を重ね合わせれば、基準断面MAに平行な裁断位置におけるX線断層画像が得られる。このように、重ね合わせ部16でX線透視画像を重ね合わせれば、所望のX線断層画像が得られる。
次に、実施例1に係るFPD5が有するX線検出素子配列パターンとX線グリッド8によるX線影パターンとが干渉して生じるモアレについて説明する。このモアレの発生は、FPD5とX線グリッド8の構造に起因している。そこでまず、FPD5について説明する。FPD5は、多数の半導体タイプのX線検出素子5aがマトリクス状に配列されている。この様なFPD5は、配列された各々のX線検出素子5aにより被検体Mを透過したX線を離散的にサンプリングすることによりX線透視画像を構成する。
一方、X線グリッド8は、ブラインド状に配列された複数の羽根8aを有する。X線管3から照射されたコーン状のX線ビームがこのX線グリッド8を透過すると、X線グリッド8の有する羽根8aの各々について筋状の影が生じる。この影をX線グリッド8全体で見れば、ストライプ状のX線影パターンとなっており、それがX線グリッド8の下方に配置されたFPD5に写り込む。このX線影パターンは、FPD5を構成するX線検出素子5aによって離散的にサンプリングされることになるが、X線検出素子5aの各々に写るX線影の本数は、FPD5全体で一定とはならない。X線検出素子5aの配列ピッチとX線影の配列ピッチが一致していないためである。こうして、影の多数が映りこんだ細長状の暗部領域と、より少数の影が映りこんだ細長状の明部領域とが交互に並んだ干渉縞がX線透視画像に出現する。これが、本発明におけるX線受像器が有するX線検出素子配列パターンとX線グリッドによるX線影パターンとが干渉して生じX線受像器に写り込むモアレである。
次に、このモアレが重ね合わせ部16による画像処理によって消去される様子を説明する。図7は、実施例1に係るX線断層撮影装置の画像処理を説明する図である。実施例1の構成では、一連のX線透視画像の撮影において、モアレ縞をその配列方向に移動させる構成となっているので、X線透視画像の各々について比較すれば、そのモアレの出現位置がそれぞれで異なっている。つまり、図7におけるX線透視画像20a,20b,および20cは、一連のX透視画像撮影のうち、経時的に隣接した画像であるが、これらX線透視画像20a,20b,および20cに表れたモアレの明部Bと、暗部Dの出現位置は、互いに異なったものとなっている。さらに、一連の撮影において、X線透視画像は、74枚取得されるが、いずれも図6におけるX線透視画像20a,20b,および20cに示すようにモアレ縞の出現位置が互いに異なっている。このような、モアレ縞の移動は、X線グリッド8のFPD5に対する相対移動によって実現される。
続いて、重ね合わせ部16では、これら74枚のX線透視画像が重ね合わせられる。すると、74枚のX線透視画像に写り込んだモアレ縞の出現位置が互いに異なっているので、モアレの明部領域と暗部領域が互いに相殺されながらX線透視画像が重ね合わせられることになる。したがって、重ね合わせ部16によってモアレが消去されたX線断層画像21が得られることになる。なお、図中、モアレの明部Bと、暗部Dの被検体Mの体側方向Sの幅は、強調されて描写されているが、実際の幅長は、たとえば、600μmである。
なお、実施例1においては、撮影中、X線グリッド8がその移動方向を反転させる合間にX線グリッド8は停止している。このとき、複数枚のX線透視画像が撮影されたとすると、それらに写り込むモアレ縞の出現位置は略同一なものとなり、上述のように互いに異なったものとはならない。しかしながら、1度のX線グリッド8の停止中に取得されるX線透視画像は多くとも2枚程度であり、一連の撮影で得られるX線透視画像が74枚であることからすると、十分に少ないので、結局、モアレ縞は目視できなくなる。
次に、X線グリッド8のFPD5に対する相対移動速度について説明する。本実施例において、X線グリッド8に起因するX線影パターンのピッチは200μmであり、FPD5が有するX線検出素子配列パターンの配列ピッチは300μmである。このことからすると、両パターンに起因するモアレのピッチは、約600μmとなる。このモアレをX線透視画像の重ね合わせで消去するためには、少なくとも、経時的に互いに隣接するX線透視画像撮影の合間にX線影パターンのピッチの3倍の移動が望ましい。この合間が、たとえば2msecだとすると、X線グリッド8のFPD5に対する相対速度は、0.3m/secとなる。つまり、74枚のX線透視画像を撮影する間に、X線グリッド8は、FPD5に対して4.4cm移動したことになる。また、より望ましくは、経時的に互いに隣接するX線透視画像撮影の合間にX線グリッド8をX線影パターンのピッチの10倍の長さ分FPD5に対して移動させる。この場合の移動速度は、1m/secとなる。
続いて、以上に述べた構成を有する実施例1に係るX線断層撮影装置1における断層撮影の取得・表示プロセスを図面を参照して説明する。図8は、実施例1に係るX線断層撮影装置における段増画像の取得・表示プロセスの一例を示すフローチャートである。以降、図8のフローチャートを構成する各ステップについて詳細に説明する。
まず、被検体Mを天板2に仰臥させ、天板2を被検体Mの体軸方向Aに移動させることにより、被検体Mの関心部位を撮像位置にセットする(ステップS1)。次に、X線グリッド8のFPD5に対する相対移動が開始される(ステップS2)。そして、X線管3がFPD5とともに同期移動しながら天板2の被検体Mに対してコーン状のX線ビームパルスが照射される(ステップS3)。それに引き続いて、透視画像形成部15によりX線断層画像の取得に必要な74枚のX線透視画像が取得される(ステップS4)。さらに、重ね合わせ部16によりX線透視画像が重ね合わされ、所望の裁断位置におけるX線断層画像が取得される(ステップS5)。最後に、モニタなどで構成される表示部14にX線断層画像が表示され(ステップS6)、検査は終了となる。
以上に述べたように、実施例1に係るX線断層撮影装置1を用いれば、FPD5が有するX線検出素子配列パターンとX線グリッド8によるX線影パターンとが干渉して生じるモアレによる画像劣化のないX線断層画像を取得することができる。すなわち、検査で取得する一連のX線透視画像に写り込むモアレを個別に消去するのではなく、モアレを消去しないまま、重ね合わせ部16にて重ね合わせる構成としたので、X線透視画像ごとに周波数解析を行い、モアレ成分を除去する必要がない。したがって、被検体Mから得られたX線透視画像データについて上記のような除去演算を行うことがないので、結果として、鮮明で診断に好適なX線断層画像が得られる。
しかも、一連の撮影で得られるX線透視画像のうち、経時的に互いに隣接したX線透視画像において、上記モアレの出現位置は、互いに異なったものとなっている。したがって、重ね合わせ部16では、モアレの明部領域と暗部領域とが互いに相殺されながらX線透視画像が重ね合わされることになる。したがって、最終的にモアレは、X線断層画像において消去されることになる。
さらに、実施例1の構成では、重ね合わされる複数枚のX線透視画像間において各々のX線グリッド8の位置が異なればよいのであって、1枚のX線透視画像を撮影している最中にX線グリッド8を遥動させる必要がない。したがって、X線グリッド8のFPD5に対する相対移動速度をより低速に設定することができるので、検査時間の短縮と、X線グリッド8が遥動するときに生じる騒音を低減させることができる。
次に、実施例2に係るX線断層撮影装置30について説明する。図9は、実施例2に係るX線断層撮影装置の機能ブロック図である。図9に示すように、実施例2に係るX線撮影装置は、実施例1で説明した構成と類似している。したがって、構成が同一となっている各部についての説明は適宜省略するものとする。なお、実施例2の構成は、X線管3とFPD5の移動の様式と、X線透視画像の画像処理の様式が異なる。
同期移動機構6は、上述のX線管3の直進移動に同期して、天板2の下部に設けられたFPD5を被検体Mの体軸方向Aに沿って直進移動させる。そして、その移動方向は、X線管3の移動方向と同一方向となっている。つまり、X線管3が移動することによって照射源位置と照射方向が変化するコーン状のX線ビームは、常にFPD5のX線検出面の全面で受光される構成となっている。このように、一度の検査において、FPD5は、X線管3と同一の方向に同期して移動しながら、たとえば74枚のX線透視画像を取得するようになっている。具体的には、X線管3とFPD5とは、破線で示した位置を介して、一点鎖線で示す位置まで同方向移動する。
検査中、X線管3の照射するコーン状のX線ビームは、常に被検体Mの関心部位に向かって照射されるようになっており、このX線照射角度は、一連のX線透視画像の撮影中、常に一定の0°となっている。
X線断層画像装置30には、画像形成部15と、重ね合わせ部16との介在する位置に後述の同角度画像を形成する同角度画像形成部19が更に備えられている。
次に、実施例2に係るX線断層撮影装置1の断層画像の取得原理について説明する。一連の撮影で取得された74枚のX線透視画像は、透視画像形成部15で形成された後、同角度画像形成部19に送出され、そこで、たとえば、50枚の同角度画像が形成される。この50枚の同角度画像を重ね合わせ部16で重ね合わせれば、所望のX線断層画像を取得できる。
同角度画像形成部19における動作を説明する。同角度画像形成部19では、まず、得られたX線透視画像をX線管3,およびFPD5の同期移動方向と直交する方向に沿って分割して、例えば50個の短冊状画像を取得する。そして、一連のX線透視画像から得られた(74×50=3,700)個の短冊状画像のうち、曝射されたX線の角度が互いに同一となっている短冊状画像を選択しながらそれらをつなぎ合わせ、同角度画像を取得する。X線透視画像の各々が50分割されていることからすると、50枚の同角度画像が取得されることになる。本発明に係るX線ビームはコーン状となっているが、このような過程を経ることで、周知の長尺X線ビームを使用したX線断層撮影装置における再構成法が適応できる。
同角度画像形成部19が行う画像処理について更に詳細に説明する。図10,図11,および図12は、実施例2に係るX線断層画像の同角度画像形成部の画像処理を説明する模式図である。説明に先立って、FPD5の検出面に撮影されたX線透視画像の各々を、図10(a)〜図10(d)に示すように、X線管3がピッチd毎に移動する度に、図10(e)〜図10(h)に示すように、O1,O2,…,OI,…,OMとする(1≦I≦M)。X線管3がピッチd毎に移動する度にX線管3はX線を間欠的に照射する。すなわち、ピッチd毎に移動する度にX線をパルス照射する。そして、このX線管3に追従して、FPD5も同期的に移動する。
具体的には、最初にX線管3が、図10(a)に示す位置でX線を照射した場合には、次に、ピッチdを移動させた図10(b)に示す位置でX線を照射する。図10(a)でX線をFPD5が検出することでX線透視画像O1(図10(e)を参照)が得られ、図10(b)でX線をFPD5が検出することでX線透視画像O2(図10(f)を参照)が得られる。以下、同様にX線管3がピッチd毎に移動すると、(I−1)番目には、図10(c)に示す位置でX線を照射し、図10(c)でX線をFPD5が検出することでX線透視画像OI(図10(g)を参照)が得られる。最終的には、(M−1)番目には、図10(d)に示す位置でX線を照射し、図10(d)でX線をFPD5が検出することでX線透視画像OM(図10(h)を参照)が得られる。実施例2では図10(a)の撮像開始位置を被検体Mの足側とし、図10(d)の撮像終了位置を被検体Mの頭側とし、図10(a)〜図10(d)とX線管3とFPD5とが移動するのに伴って被検体Mの体軸方向Aに沿って順に移動する。
X線管3がピッチd毎に移動することで、各X線透視画像O1,O2,…,OI,…,OMをピッチd毎に分解することができる。具体的には、図10(i)の拡大図に示すように、X線管3からFPD5を結ぶ照射軸と被検体Mの体軸とのなす角度である投影角度をピッチd毎に、θ1,θ2,…,θJ,…,θN−1,θNとする(1≦J≦N)。すると、ピッチd毎に分解された画像は、同一の投影角度θ1,θ2,…,θJ,…,θN−1,θNとに分けられた短冊状画像にそれぞれ一致する。
図10(e)に示すようにX線透視画像O1は、ピッチd毎にO11,O12,…,O1J,…,O1(N−1),O1Nと分解され、分解された短冊状画像O11は投影角度θ1で照射されて得られた画像となり、分解された短冊状画像O12は投影角度θ2で照射されて得られた画像となり、以下、同様に分解された短冊状画像O1Jは投影角度θJで照射されて得られた画像となり、最終的に分解された短冊状画像O1Nは投影角度θNで照射されて得られた画像となる。
同様に、図10(f)に示すようにX線透視画像O2は、ピッチd毎にO21,O22,…,O2J,…,O2(N−1),O2Nと分解され、分解された短冊状画像O21は投影角度θ1で照射されて得られた画像となり、分解された短冊状画像O22は投影角度θ2で照射されて得られた画像となり、以下、同様に分解された短冊状画像O2Jは投影角度θJで照射されて得られた画像となり、最終的に分解された短冊状画像O2Nは投影角度θNで照射されて得られた画像となる。
(I−1)番目には、図10(g)に示すようにX線透視画像OIは、ピッチd毎にOI1,OI2,…,OIJ,…,OI(N−1),OINと分解され、分解された短冊状画像OI1は投影角度θ1で照射されて得られた画像となり、分解された短冊状画像OI2は投影角度θ2で照射されて得られた画像となり、以下、同様に分解された短冊状画像OIJは投影角度θJで照射されて得られた画像となり、最終的に分解された短冊状画像OINは投影角度θNで照射されて得られた画像となる。
最終的には、(M−1)番目には、図10(h)に示すようにX線透視画像OMは、ピッチd毎にOM1,OM2,…,OMJ,…,OM(N−1),OMNと分解され、分解された短冊状画像OM1は投影角度θ1で照射されて得られた画像となり、分解された短冊状画像OM2は投影角度θ2で照射されて得られた画像となり、以下、同様に分解された短冊状画像OMJは投影角度θJで照射されて得られた画像となり、最終的に分解された短冊状画像OMNは投影角度θNで照射されて得られた画像となる。
このように分解された各画像を、図11,図12に示すように同一の投影角度θ1,θ2,…,θJ,…,θN−1,θN毎にそれぞれ合成する。上述したように各X線透視画像O1,O2,…,OI,…,OMは、各ピットdごとに分解された(すなわち各投影角度θ1,θ2,…,θJ,…,θN−1,θNごとに分けられた)画像を、図11(a)〜図11(d)、図11(f)〜図11(i)、図12(a)〜図12(d)、図12(f)〜図12(i)に示すように有している。
例えば、投影角度θ1の場合には、図11(a)に示すX線透視画像O1中の短冊状画像O11と、図11(b)に示すX線透視画像O2中の短冊状画像O21と、…、図11(c)に示すX線透視画像OI中の短冊状画像OI1と、…、図11(d)に示すX線透視画像OM中の短冊状画像OM1とを合成することで、図11(e)に示すように投影角度θ1での同角度画像P1を得る。
同様に、投影角度θ2の場合には、図11(f)に示すX線透視画像O1中の短冊状画像O12と、図11(g)に示すX線透視画像O2中の短冊状画像O22と、…、図11(h)に示すX線透視画像OI中の短冊状画像OI2と、…、図11(i)に示すX線透視画像OM中の短冊状画像OM2とを合成することで、図11(j)に示すように投影角度θ2での同角度画像P2を得る。
(J−1)番目には、投影角度θJの場合には、図12(a)に示すX線透視画像O1中の短冊状画像O1Jと、図12(b)に示すX線透視画像O2中の短冊状画像O2Jと、…、図12(c)に示すX線透視画像OI中の短冊状画像OIJと、…、図12(d)に示すX線透視画像OM中の短冊状画像OMJとを合成することで、図12(e)に示すように投影角度θJでの同角度画像PJを得る。
最終的には、(N−1)番目には、投影角度θNの場合には、図12(f)に示すX線透視画像O1中の短冊状画像O1Nと、図12(g)に示すX線透視画像O2中の短冊状画像O2Nと、…、図12(h)に示すX線透視画像OI中の短冊状画像OINと、…、図12(i)に示すX線透視画像OM中の短冊状画像OMNとを合成することで、図12(j)に示すように投影角度θNでの同角度画像PNを得る。
以上をまとめると、画像合成部9cは、分解された各画像を同一の投影角度θ1,θ2,…,θJ,…,θN−1,θN毎に合成して、図11(e)、図11(j)、図12(e)、図12(j)に示すように投影角度θ1,θ2,…,θJ,…,θN−1,θN毎の同角度画像P1,P2,…,PJ,…、PNを得る。
重ね合わせ部16は、その合成された同角度画像P1,P2,…,PJ,…、PNに基づいて再構成処理を行って断層画像を得る。再構成処理については、周知のフィルタード・バックプロジェクション(FBP: Filtered Back Projection)(「フィルタ補正逆投影法」とも呼ばれる)を用いて行えばよい。
次に、実施例2に係るX線グリッド8の移動方法に関して説明する。図5は、実施例1に係るX線断層撮影装置のFPDに対する相対移動を説明する平面図であるが、実施例2に係るX線断層撮影装置30にも適応できる。すなわち、X線グリッド8は、FPD5に対して被検体Mの体側方向S(紙面左右方向)に往復移動する。具体的に、図5(a)にあっては、X線グリッド8は、FPD5とともに被検体Mの体軸方向A(紙面に対して垂直方向)に移動されながら、FPD5に対して紙面左方向に相対移動されることになる。そして、実施例2に係るX線断層撮影装置30は、FPD5およびX線グリッド8を上記のように移動させながら、被検体MのX線断層画像を連続して撮影する。
撮影中X線グリッド8がFPD5に対する相対移動可能範囲の一端まで到達すると、図5(b)に示すようにX線グリッド8はその瞬間に停止する。その後、図5(c)に示すように、今度は、X線グリッド8が紙面右方向に移動し、X線グリッド8は、FPD5に対する相対移動可能範囲の他端を目指す。実施例2におけるX線グリッド8は、その移動方向を反転させる前に一度停止する。なお、図5(b)のようにX線グリッド8がFPD5に対して停止している時点においても、X線菅3及びFPD5は、引き続き被検体MのX線透視画像を連続して撮影する。
実施例2の構成によれば、被検体Mの同一位置において比較したとき、同角度画像Pに写り込んだモアレの出現位置が互いに異なったものとなる。図13は、実施例2のX線断層画像においてモアレが消去される様子を説明する図である。図13に示すように、被検体Mの位置Nが写っている短冊状画像O31、O22、およびO13で比較すれば、図13の左側を参照すれば明らかなように、写り込んだモアレの出現位置は互いに異なっている。これは、被検体Mの位置Nに限らず、全ての被検体Mの全領域についても同様なことがいえる。このように被検体Mの同一位置において比較したとき、同角度画像Pに写り込んだモアレの出現位置が互いに異なるので、同角度画像Pを重ね合わせ部16で重ね合わせてX線断層画像31を形成するとき、出現位置の互いに異なるモアレの明部領域Bと暗部領域Dが互いに相殺されながら同角度画像Pが重ね合わされることになる。したがって、結果的に得られるX線断層画像31からはモアレが消去される。
以上のように、実施例2に係るX線断層撮影装置30によれば、周知の長尺X線ビームを使用したX線断層撮影装置における再構成法が適応できる。したがって、X線断層撮影装置がとりうる実施形態がより多様なものとなるので、本発明が更に多様な用途において適応可能となる。
この発明は、上記の実施例に限られるものではなく、以下のように変形実施することも可能である。
(1)上述の各実施例の装置の場合、X線管とFPDが直線軌道に沿って同期移動する構成であったが、X線管とFPDが円弧軌道や、渦巻き軌道に沿って同期移動させる構成としてもよい。
(2)上述の各実施例のX線断層撮影装置は、医用の装置であったが、この発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
(3)上述の各実施例のX線断層撮影装置においては、被検体のスポット撮影も兼ねて行う構成としてもよい。つまり、本変形例に係るX線グリッドは、撮影モードによって、そのFPDに対する相対移動の様式を変更させる構成としてもよい。
(4)上述の各実施例に示したX線影パターンのピッチ、およびX線検出素子の配列ピッチは、あくまでも一例である。したがって、上述した実施例の各設定は、両パターンのピッチに合わせて、X線グリッドのFPDに対する移動速度を適宜に変更することを妨げるものではない。
(5)上述した各実施例に示したX線グリッドのFPDに対する相対移動可能距離は1cmであったが、これをより長いものとして、X線グリッドの移動方向の反転を極力行わせない構成としてもよい。
(6)上述した各実施例において、一連のX線透視画像に映りこむモアレの出現位置は、互いに異なったものとなっていたが、本発明はこれに限らず、一連のX線透視画像のうち、少なくとも過半数においてモアレの出現位置が互いに異なるものとなっていればよい。つまり、X線透視画像においてモアレの出現位置が同一となっていれば、これを重ね合わせるとモアレが強め合ってしまうが、モアレの出現位置が同一となっているX線透視画像が一連のX線透視画像のうち、半数以下であれば、十分にX線断層画像からモアレが消去される効果が期待できる。
実施例1に係るX線断層撮影装置の全体構成を示すブロック図である。
実施例1に係るFPDのX線検出面とX線グリッドの構成を説明する平面図である。
実施例1に係るX線断層撮影装置を被検体の体側側から見たときの平面図である。
実施例1に係るX線グリッドおよびFPDの斜視図である。
実施例1に係るX線断層撮影装置のFPDに対する相対移動を説明する平面図である。
実施例1に係るX線断層撮影装置の断層画像の取得方法を説明する図である。
実施例1に係るX線断層撮影装置の画像処理を説明する図である。
実施例1に係るX線断層撮影装置における段増画像の取得・表示プロセスの一例を示すフローチャートである。
実施例2に係るX線断層撮影装置の機能ブロック図である。
実施例2に係るX線断層画像の同角度画像形成部の画像処理を説明する模式図である。
実施例2に係るX線断層画像の同角度画像形成部の画像処理を説明する模式図である。
実施例2に係るX線断層画像の同角度画像形成部の画像処理を説明する模式図である。
実施例2のX線断層画像においてモアレが消去される様子を説明する図である。
従来のX線グリッドを備えたX線断層撮影装置を説明する図である。
符号の説明
3 …X線管(X線源)
5 …FPD(X線受像器)
6 …同期移動機構(同期移動手段)
8 …X線グリッド
9 …X線グリッド移動機構(X線グリッド移動手段)