JP4946014B2 - セラミックス成形体の製造方法およびこれを用いたセラミックス焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、いずれの場合にも、乾燥又は脱脂工程により成形体から溶媒やバインダーを除去する際に、寸法精度の悪化、反り、割れ等の問題を起こすことがある。また、溶媒を含んだ状態での強度は非常に低いため、賦形後、成形完了まで成形体の形状を維持することが非常に難しいことが多い。中でも複雑な形状の成形に適している鋳込み成形の場合、脱型後から乾燥が終了するまでの間の形状保持が問題となることが多い。そこで、かかる保形性の向上をはかるためにセラミック粉末とゲル化成分及び水を含むスラリーを鋳込みゲル化させた後、成形体を凍結させ、真空凍結乾燥により乾燥するセラミックの製造方法が提案されている(例えば特許文献5参照)。しかしながら真空凍結乾燥は脱型後凍結させると凍結するまでの間に自重による変形を起こしたり、水の凍結による体積膨張の影響から割れることがある。また、凍結後脱型しようとすると、凍結による体積膨張で、成形体が型と密着して折角凍結した成形体を加熱しないと取り出せなくなる等の問題がある。
エポキシ樹脂の平均分子量は20〜30000が好ましく、平均分子量50〜3000が粉体との混合が容易であり、かつ一定の機械強度が得られることから、より好ましい。さらに好ましくは50〜2500である。かかるエポキシ樹脂は単独で、または複数を組み合わせて用いることもできる。
尚、上記硬化性樹脂としては、熱により硬化するものであっても、光により硬化するものであっても、硬化剤や硬化促進剤により硬化するものであってもよく、これらを併用することもできる。硬化剤を適宜選択することにより、室温で硬化が進行する系とすることは、大型の成形体を製造する上で、型の耐熱性などに自由度が増すため好ましい。硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤等を用いることができる。アミン系硬化剤は反応が迅速であるという点で好ましく、酸無水物系硬化剤は耐熱衝撃性にすぐれた硬化物が得られるという点で好ましく用いられる。中でもアミン系硬化剤は室温において硬化可能なことから型の耐熱性などに自由度が増すため好ましい。アミン系硬化剤としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミンなどが挙げられ、モノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミンのいずれも用いることができる。酸無水物系硬化剤としてはメチルテトラヒドロ無水フタル酸、2塩基酸ポリ無水物などを挙げることができる。
作成した成形体はこれに使用した粉末や成形体の形状によってそれぞれ適した条件で、乾燥、脱脂、焼結することにより、クラックや反りなどのない良好な焼成体を得ることができる。
得られたセラミックス成形体を焼結体にするために脱脂、焼結を行う。脱脂条件はバインダーの種類、量、成形体の形状等、焼結温度は使用するセラミックス素材及びセラミックス成形体の形状等により適宜決定すると良い。特に大型成形体や肉厚成形体は脱脂による割れが発生しないように600℃程度まで30℃/時間以下の速度で昇温してバインダーを取り除くと良い。焼結条件は例えば酸化ジルコニウムの場合は大気雰囲気下で1350〜1500℃で2時間〜3時間保持し、700℃程度まで200℃/時間程度で降温後、室温まで100℃/時間以下で降温し、酸化アルミニウムの場合も同様であるが、1550〜1650℃で2時間〜3時間保持すると良い。
(1)BET比表面積
BET比表面積の測定はJIS−R1626(1996)「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に則り、BET1点法で行った。
(2)混合物の粘度
作成した硬化剤添加前の混合物を粘度計によって粘度を測定した。粘度計は株式会社トキメック製E型粘度計DVU−EII型を用いた。測定条件は、ローターは標準1°34′R24を用い、温度20℃、回転数0.5rpm(剪断速度1.9(1/s))とした。
(3)成形体の弾性率
作成した含溶媒成形体および乾燥成形体サンプルを3点曲げ試験し、変位量と曲げ荷重を連続的に測定し、式(1)及び式(2)により、含溶媒成形体は曲げ応力7MPa時の弾性率を、乾燥成形体は曲げ応力15MPa時の弾性率を求めた。測定数n=10とし、平均値を含溶媒成形体および乾燥形成体の弾性率とした。装置は米倉製作所製万能型試験機CATY2000を用いた。測定条件は以下のとおりである。含溶媒成形体の測定において、熱処理したサンプルは溶媒中で冷却後、熱処理しないサンプルは成形型から脱型後すぐに測定した。
支点間距離:20mm
上部圧子の曲率半径:5mm
下部圧子の曲率半径:5mm
クロスヘッド速度:0.5mm/秒
試験片サイズ:φ9.5×40mm
σ=9.8×8×P×L/(π×D3) (1)
σ:曲げ応力(MPa)
P:曲げ荷重(kg)
L:支点間距離(mm)
D:サンプル直径(mm)
E=4×9.8×P×L3/(3×π×D4×Y) (2)
E:弾性率(MPa)
P:曲げ荷重(kg)
L:支点間距離(mm)
D:サンプル直径(mm)
Y:変位量(mm)。
(4)乾燥時の割れ
作製した100mm×70mm、厚さ20mmの含溶媒成形体サンプルを温度30℃、相対湿度60%で24時間加湿乾燥し、割れの有無を確認した。乾燥には恒温恒湿乾燥機を用いた。
(6)焼結体の相対密度
焼結体の焼結密度をアルキメデス法により測定した。焼結密度を理論密度で除した値を百分率で表した値を相対密度とした。ここで、それぞれの理論密度は以下のようにした。
酸化アルミニウム:3.98g/cm3
酸化ジルコニウム:6.08g/cm3
炭化珪素:3.21g/cm3
窒化珪素:3.24g/cm3 。
表1の実施例1に示す処方をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:酸化アルミニウム(比表面積:BET値 4m2/g)
硬化性樹脂:水溶性エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型)(ナガセケムテックス製“EX−313”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(中京油脂製“D−305”(含有量40%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合し、成形型に流し込み、20℃で24時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は1−(2−アミノエチル)ピペラジンを使用した。成形型はそれぞれシリコーンゴム製φ9.5mm×40mm、PP製100mm×70mm、厚さ20mmを用いた。
表1の実施例2に示す処方をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:酸化アルミニウム(比表面積:BET値 6m2/g)
硬化性樹脂:水溶性エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型)(坂本薬品工業製“SR−PG”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(東和合成製“アロンA−6330”(含有量40%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合し、成形型に流し込み、20℃で15時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は1−(2−アミノエチル)ピペラジンを使用した。成形型は実施例1と同様とした。
脱型後、イオン交換水溶液中に浸漬し、溶液を加熱し、100℃で10分保持後、室温まで冷却し、含溶媒成形体サンプルを得た。実施例1と同様にして各測定を実施した。結果は表1に示すとおり、含溶媒成形体の弾性率は高く、また乾燥割れは発生しなかった。焼結体の相対密度は99%以上であった。
表1の実施例3に示す処方をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:酸化ジルコニウム(BET値 12m2/g)
硬化性樹脂:ウレタン樹脂(住友バイエルウレタン製“バイヒドロールA145”)
溶媒:イオン交換水、γ−ブチロラクトン
分散剤:ポリカルボン酸塩(中京油脂製“D−305”(含有量40%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合しながら脱泡し、成形型に流し込み、20℃で15時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は住友バイエルウレタン製(“バイヒジュール3100”)を使用した。成形型は実施例1と同様とした。脱型後、イオン交換水とγ−ブチロラクトンの混合溶液中に浸漬し、溶液を加熱し、100℃で10分保持後、室温まで冷却し、含溶媒成形体サンプルを得た。実施例1と同様にして各測定を実施した。なお焼結は1400℃で2時間保持した。結果は表1に示すとおり、混合物の粘度は少し高めであったが、含溶媒成形体の弾性率は高く、また乾燥割れは発生しなかった。焼結体の相対密度は98.8%と高い値であった。
表1の実施例4に示す処方をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:炭化珪素(BET値 15m2/g)
硬化性樹脂:ウレタン樹脂(住友バイエルウレタン製“バイヒドロールA145”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(東和合成製“アロンA−30SL”(含有量40%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合しながら脱泡し、成形型に流し込み、20℃で15時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は住友バイエルウレタン製(“バイヒジュール3100”)を使用した。成形型は実施例1と同様とした。脱型後、イオン交換水に浸漬し、溶液を加熱し、100℃で30分保持後室温まで冷却し、含溶媒成形体サンプルを得た。実施例1と同様にして各測定を実施した。なお焼結は真空焼結炉を用い、1450℃で2時間保持した。結果は表1に示すとおり、混合物の粘度は少し高めであったが、含溶媒成形体の弾性率は高く、また乾燥割れは発生しなかった。焼結体の相対密度は98.5%と高い値であった。
表1の実施例5に示す処方をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:窒化珪素 (BET値6m2/g)
硬化性樹脂:水溶性エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型)(ナガセケムテックス製“EX−314”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(中京油脂製“D−735(含有量20%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合し、成形型に流し込み、20℃で15時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は1−(2−アミノエチル)ピペラジンを使用した。脱型後、イオン交換水に浸漬し、溶液を加熱し、100℃で30分保持後室温まで冷却し、含溶媒成形体サンプルを得た。実施例1と同様にして各測定を実施した。なお焼結は雰囲気焼結炉を用い窒素雰囲気で2000℃2時間保持した。結果は表1に示すとおり、混合物の粘度は少し高めであったが、含溶媒成形体の弾性率は高く、また乾燥割れは発生しなかった。焼結体の相対密度は98%と高い値であった。
表1の比較例1に示す処方をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:酸化アルミニウム(BET値 4m2/g)
硬化性樹脂:エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型)(坂本薬品工業製“SR−PG”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(中京油脂製“D−305”(含有量40%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合し、成形型に流し込み、20℃で15時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は1−(2−アミノエチル)ピペラジンを使用した。成形型は実施例1と同様とした。
含溶媒成形体サンプルを実施例1と同様にして各測定を実施した。結果は表1に示すとおり、混合物の粘度は低く、また焼結体の相対密度は98%と高い値であったが、含溶媒成形体の弾性率は低くて保形性が悪かった。また乾燥割れが発生した。
表1の比較例2に示す処方で、水硬性アルミナ以外をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:酸化アルミニウム(BET値 6m2/g)
硬化性樹脂:ウレタン樹脂(住友バイエルウレタン製(“バイヒドロールA145”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(東亜合成製“アロンA−30SL”(含有量40%))
次に、水硬性アルミナを添加し、20℃で2時間混合後、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合し、成形型に流し込み、20℃で15時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は(住友バイエルウレタン製(“バイヒジュール3100”)を使用した。成形型は実施例1と同様とした。水硬性アルミナは(住友化学製、BK−103)を用いた。実施例1と同様にして各測定を実施した。結果は表1に示すとおり、含溶媒成形体の弾性率は高かったが、乾燥中に割れが発生し、また焼結体の相対密度も低かった。
Claims (7)
- セラミックス粉体、分散剤、硬化性樹脂、ならびに溶媒を含む混合物を成形型内に注入する工程、注入した該混合物を成形し、含溶媒セラミックス成形体とする工程、該成形型を取り除く脱型工程、該脱型工程によって得られた含溶媒セラミックス成形体を乾燥させる工程を有するセラミックス成形体の製造方法において、該含溶媒セラミックス成形体とする工程が硬化性樹脂を硬化させる工程を有しており、脱型工程と含溶媒セラミックス成形体を乾燥させる工程の間に含溶媒セラミックス成形体を熱処理する工程を有することを特徴とするセラミックス成形体の製造方法。
- 熱処理する工程が、溶媒中に前記含溶媒セラミックス成形体を浸漬した状態で加熱して熱処理する工程であることを特徴とする請求項1記載のセラミックス成形体の製造方法。
- 前記分散剤がポリカルボン酸塩であり、分散剤の量がセラミックス粉体の表面積に対し、0.3mg/m2〜1.7mg/m2であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックス成形体の製造方法。
- 前記混合物が溶媒を27〜36体積%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のセラミックス成形体の製造方法。
- 前記硬化性樹脂が水溶性のエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス成形体の製造方法。
- 前記水溶性のエポキシ樹脂がグリシジルエーテル型の水溶性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックス成形体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかの製造方法によって得られたセラミックス成形体を焼結することを特徴とするセラミック焼結体の製造方法。
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