JP4944749B2 - 無段変速装置 - Google Patents
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Description
この無段変速装置では、入力軸が回転すると、サンローラが一体的に回転し、サンローラに外接するテーパローラが回転及び公転し、テーパローラの回転により出力リングが回転し、出力リングと一体となって出力軸が回転し、変速リングの位置に応じて出力軸の回転速度が増減されるようになっている。
また、上記法線荷重に伴って入力軸及び出力軸の軸線方向にスラスト荷重が発生し、このスラスト荷重は入力軸及び出力軸の軸受あるいはハウジングが受けることになるため、軸受及びハウジングの経時的な変形あるいは軸受領域の発熱による潤滑油温度の上昇等を生じ、磨耗、動力伝達効率の低下等を招く虞がある。一方、変形等に対処するべく、ハウジングの剛性を高めると、大型化あるいは重量化を招くことになる。
さらに、駆動機構により、変速リングの位置を移動させてテーパローラとの接触位置を調整する場合、駆動機構の経時的な変化、あるいは、変速リングとテーパリングの接触領域の磨耗等により、変速リングの位置がずれて、本来の変速比に制御することが困難になる虞がある。
この構成によれば、入力軸の回転駆動力は、第1変速ユニット及び第2変速ユニットにより無段変速され、ローディンングカム機構及び出力回転体を介して、出力軸から回転駆動力として出力される。ここで、第1変速ユニットにより変速された回転と第2変速ユニットにより変速された回転にずれがあると、ローディングカム機構のカム作用により出力回転体が軸線方向に移動する動作に連動して、回転補正機構が回転ずれを補正する。
このように、入力軸のトルクを二つの変速ユニット(第1変速ユニット及び第2変速ユニット)により倍増しつつ無段変速でき、仮に二つの変速ユニット間に相対的な変速比のずれがあっても、又、変速比の値が小さく調整が難しい領域であっても、回転補正機構がその変速比のずれを調整して一つの変速比として出力することができる。
したがって、特に二つの変速ユニットの組付けを高精度に設定しなくても、所望の変速機能を確保することができ、変速比がゼロの付近の調整も容易に行うことができ、経時変化による二つの変速ユニットの変速比のずれの影響を防止でき、伝達効率を向上させることができる。
また、二つの変速ユニットは、入力軸の軸線方向に垂直な面に対して対称的に向かい合うように配置されているため、二つの変速ユニットにおいてそれぞれ発生する入力軸の軸線方向におけるスラスト荷重をお互いに逆向きに作用させて相殺することができ、それ故に、ハウジングあるいは入力軸の軸受等に無理な荷重が加わるのを防止することができ、又、軸受領域等における潤滑油の温度上昇を抑制でき、それ故に接触界面に潤滑油膜を形成させてトラクション力を確実に得ることができる。
この構成によれば、入力軸から入力される回転駆動力は、第1変速ユニットにおいて、第1変速リングを適宜駆動しつつ、第1サンローラ→複数の第1遊星ローラ→第1出力リングを経由して変速され、又、第2変速ユニットにおいて、第2変速リングを適宜駆動しつつ、第2サンローラ→複数の第2遊星ローラ→第2出力リングを経由して変速され、ローディングカム機構及び出力回転体を介して、回転補正機構により自動的に回転ずれが補正されつつ、出力軸から所定の変速比にて変速された回転駆動力として出力される。
特に、第1サンローラと第2サンローラに作用する互いに反対向きのスラスト荷重は、入力軸が受けることで相殺されるため、軸受等に作用するスラスト荷重を低減することができ、それ故に、第1サンローラと第1遊星ローラとの接触圧(法線荷重)及び第2サンローラと第2遊星ローラとの接触圧(法線荷重)を大きくすることができ、確実なトラクション力を得ることができる。また、二つの変速ユニットに共通部品を採用することで、部品の種類を減らして、コストを低減することができる。
この構成によれば、第1変速ユニット(第1出力リング)と第2変速ユニット(第2出力リング)に回転ずれがあると、ローディングカム機構のカム作用により、出力回転体が軸線方向に移動させられ、係合部を介して、可動連結部材が軸線方向に移動させられる。そして、第1変速リングが変速比を減少(又は増加)させる向きにかつ第2変速リングが変速比を増加(又は減少)させる向きに、変速比の増減が互いに逆になるように移動させられる。
このように、第1変速ユニットによる変速比と第2変速ユニットによる変速比にずれ(回転ずれ)が生じた場合には、第1変速リング及び第2変速リングに連結されかつ出力回転体の移動に連動する可動連結部材という簡単な構造により、自動的に回転ずれを補正することができる。
この構成によれば、第1出力リング(及び第1ローディングカム部)と第2出力リング(及び第2ローディングカム部)との間において回転差が生じると、第1ローディングカム部と第1出力ローディングカム部の間に介在する第1転動体及び第2ローディングカム部と第2出力ローディングカム部の間に介在する第2転動体を介して、出力回転体がカム作用を受けて軸線方向に移動させられ、出力回転体の移動に連動して作動する回転補正機構(可動連結部材等)により、回転差が補正される。
また、入力軸の回転駆動力は、第1サンローラ(第2サンローラ)→第1遊星ローラ(第2遊星ローラ)→第1出力リング(第2出力リング)→ローディングカム機構→出力回転体を介して出力軸に伝達され、逆に、出力軸の負荷トルクは、出力回転体→ローディングカム機構を介して、第1出力リング(第2出力リング)を第1遊星ローラ(第2遊星ローラ)に押し付ける押圧力(法線荷重)すなわちトラクション力を増加させる。これにより、外部から負荷トルクが加わっても、トラクション力が確実に得られて出力軸は所定の変速比で確実に回転駆動される。
この構成によれば、第1出力リング(及び第1ローディングカム部)と第2出力リング(及び第2ローディングカム部)との間において回転差が生じると、第1ローディングカム部と第2ローディングカム部の間に介在する転動体を介して、この転動体を保持する出力回転体がカム作用を受けて軸線方向に移動させられ、出力回転体の移動に連動して作動する回転補正機構(可動連結部材等)により、回転差が補正される。
また、入力軸の回転駆動力は、第1サンローラ(第2サンローラ)→第1遊星ローラ(第2遊星ローラ)→第1出力リング(第2出力リング)→ローディングカム機構→出力回転体を介して出力軸に伝達され、逆に、出力軸の負荷トルクは、出力回転体→ローディングカム機構を介して、第1出力リング(第2出力リング)を第1遊星ローラ(第2遊星ローラ)に押し付ける押圧力(法線荷重)すなわちトラクション力を増加させる。これにより、外部から負荷トルクが加わっても、トラクション力が確実に得られて出力軸は所定の変速比で確実に回転駆動される。
この構成によれば、一つの駆動機構で二つの変速リング(第1変速リング及び第2変速リング)を同期させて駆動するため、基本的に二つの変速ユニットにおいて変速比のずれを生じないようにすることができ、変速比のずれを生じても、回転補正機構がその変速比のずれを補正することができるため、入力軸→二つの変速ユニット→出力軸という駆動力の伝達を確実に行わせることができる。また、駆動機構のリードスクリューが回転補正機構の可動連結部材を兼ねるため、構造を簡素化することができる。
この構成によれば、第1サンローラ(又は第2サンローラ)と第1遊星ローラ(又は第2遊星ローラ)が常時直結(トラクション力を発生するように密接)されているのではなく、入力軸の回転速度が増加すると、トリガ機構がオン作動して第1サンローラ(又は第2サンローラ)の回転駆動力がトラクション力を介して第1遊星ローラ(又は第2遊星ローラ)に伝達されるため、入力軸の回転を所望のタイミングで出力軸に連動させることができ、一方、入力軸の回転速度が減少すると、トリガ機構がオフ作動して第1サンローラ(又は第2サンローラ)の回転駆動力は第1遊星ローラ(又は第2遊星ローラ)に伝達されないため、入力軸の回転に拘わらず出力軸をフリー(外力により回転可能)にすることができる。
図1ないし図8は、本発明に係る無段変速装置の一実施形態を示すものであり、図1は装置の内部を示す部分断面図、図2は装置の内部を示す断面図、図3は装置の概略構成を示す模式図、図4は装置の一部をなす回転補正機構の部分拡大図、図5ないし図7はローディングカム機構及び出力回転体を示す図、図8はローディングカム機構の概略を示す部分断面図である。
そして、ハウジング10内には、第1変速ユニットU1及び第2変速ユニットU2のトラクション力が発生する接触界面、その他の摺動面、転動面等に供給される潤滑油が注入されている。
第2変速ユニットU2は、図1ないし図3に示すように、円錐台状に形成された第2サンローラ30´、第2サンローラ30´の外周面を転動する複数の第2遊星ローラ40´、第2遊星ローラ40´を内接させると共に回動自在に支持された第2出力リング50´、第2遊星ローラ40´に一体的に形成された第2円錐部42を転動自在に内接させると共にその内接位置を移動させて変速する第2変速リング60´等を備えている。
したがって、第1変速ユニットU1及び第2変速ユニットU2は、入力軸20の軸線方向Lにおいて発生するスラスト荷重をお互いに逆向きに作用させて相殺しつつ、それぞれに変速した回転力(回転速度)を、ローディングカム機構80及び出力回転ギヤ90を介して出力軸120に伝達することができる。
それ故に、ハウジング10あるいは入力軸20の軸受12等に無理な荷重が加わるのを防止することができ、又、軸受領域等における潤滑油の温度上昇を抑制でき、トラクション力を確実に得ることができる。また、二つの変速ユニットU1,U2に共通部品を採用することで、部品の種類を減らして、構造を簡素化することができる。
外部入力軸21は、図2に示すように、その内側端部において、円板状の回転フランジ部21a、内部入力軸22を連結する連結穴21bを備えている。回転フランジ部21aは、第1サンローラ30の端面と対向する位置に配置されて後述するトリガ機構70の端面72を画定している。
内部入力軸22は、図2に示すように、第1サンローラ30及び第2サンローラ30´をお互いに向き合うように(円錐台状の小径側をお互いに向かい合わせるように)外嵌させた状態で、一体的に回転するようにかつ第1サンローラ30を軸線方向Lに所定量だけ移動可能に連結している。
第2サンローラ30´は、図2に示すように、略円錐台状に形成され、第2遊星ローラ40´が転動する円錐面状の一部をなす外周面31、円筒部32、円筒部32の内側に形成された凹部33等を備えるように形成されている。第2サンローラ30´は、凹部33内において、内部入力軸22の端部にねじ込まれるネジ部材34を収容するように形成されている。ネジ部材34は、第2サンローラ30´を内部入力軸22と一体的に回転させるように固定するものである。
すなわち、第1サンローラ30は、内部入力軸22と一体的に回転するようにかつ内部入力軸22の軸線方向Lに僅かに移動可能に連結され、第2サンローラ30´は、内部入力軸22と一体的に回転するように固定されている。
第2遊星ローラ40´は、図2に示すように、第2サンローラ30´(外周面31)を転動する第1円錐部41、第2変速リング60´に内接する先細り状の第2円錐部42、第1円錐部41及び第2円錐部42の共通の軸部43を備えている。
第2円錐部42は、図3に示すように、内部入力軸22から径方向に最も離れた位置にある母線(第1変速リング60及び第2変速リング60´がそれぞれ接触する稜線)M2が内部入力軸22の軸線方向Lと平行に伸長するように形成されている。
第1遊星ローラ40の軸部43は、第1可動ホルダ44に対して所定の範囲内で遊動自在に保持されている。第2遊星ローラ40´の軸部43は、第2可動ホルダ44´に対して所定の範囲内で遊動自在に保持されている。
第2可動ホルダ44´は、骨組み構造(鳥籠形状)に形成され、ハウジング10内において他の部品と接触しないように、内部入力軸22と第2サンローラ30´の円筒部32に軸受を介して保持され、入力軸20(内部入力軸22)回りに回動自在、すなわち、第2遊星ローラ40´を公転可能に保持している。
第2出力リング50´は、図2に示すように、第2遊星ローラ40´の第1円錐部41が内接して転動する内周面51、後述するローディングカム機構80の第2ローディングカムリング82が結合される環状の端面部52等を備えるように形成されている。そして、第2出力リング50´は、第2ローディングカムリング82を介して、後述する出力回転ギヤ90の環状グルーブ93に回動自在に支持され、第2遊星ローラ40´が回転及び公転することで、そのトラクション力により回転するようになっている。したがって、内周面51における法線荷重を大きくすることにより、より大きなトラクション力が得られ、回転力が確実に伝達される。
第2変速リング60´は、図2に示すように、第2遊星ローラ40の第2円錐部42に接触する内周面61、後述する駆動機構100の一部をなすリードスクリュー101が螺合する雌ネジ部62、連結ガイドロッド14に外嵌されてガイドされる被ガイド部63等を備えるように形成されている。そして、第2変速リング60´は、ハウジング10内において、入力軸20(内部入力軸22)回りに回転不能に保持された状態で、入力軸20(内部入力軸22)の軸線方向Lに所定範囲に亘って往復動自在に支持されている。
一方、入力軸20(第1サンローラ30)の回転速度が減少すると、遠心ウエイト71が径方向の中心寄りに移動して傾斜面73を押す力が弱くなり、第1サンローラ30は対応する複数の第1遊星ローラ40から抜け出すように僅かに移動し、第2サンローラ30´も対応する複数の第2遊星ローラ40´から抜け出すように僅かに移動する(オフ作動する)。その結果、トラクション力が小さくなり、入力軸20(サンローラ30)の回転駆動力は第1遊星ローラ40及び第2遊星ローラ40´に伝達されなくなり、入力軸20(第1サンローラ30)の回転に拘わらず、出力軸110は自由に回転する(外力により回転する)ことができるようになる。
このように、トリガ機構70がオン作動する際に、第1サンローラ30及び第2サンローラ30´はくさび作用を強めるように形成されているため、第1サンローラ30と第1遊星ローラ40及び第2サンローラ30´と第2遊星ローラ40´との接触面における法線荷重すなわちトラクション力を確実に得ることができる。
第1ローディングカム部81aは、第1出力ローディングカム部83aと協働して、その角度位置に応じて第1転動体85を転動させつつ軸線方向Lに移動させるカム作用を及ぼすように、幅又は溝深さが変化する円弧状の溝に形成されている。
第2ローディングカムリング82は、図2ないし図4、図6に示すように、その端面に形成された第2ローディングカム部82a、第2出力リング50´の端面部52にネジにより締結されるためのネジ孔82b等を備えるように形成されている。
第2ローディングカム部82aは、その角度位置に応じて第2転動体86を転動させつつ軸線方向Lに移動させるカム作用を及ぼすように、幅又は溝深さが変化する円弧状の溝に形成されている。
第1出力ローディングカム部83aは、第1ローディングカム部81aと協働して、その角度位置に応じて第1転動体85を転動させつつ軸線方向Lに移動させるカム作用を及ぼすように、幅又は溝深さが変化する円弧状の溝に形成されている。
第2出力ローディングカム部84aは、第2ローディングカム部82aと協働して、その角度位置に応じて第2転動体86を転動させつつ軸線方向Lに移動させるカム作用を及ぼすように、幅又は溝深さが変化する円弧状の溝に形成されている。
第1転動体85は、所定半径の球体をなすように形成されており、第1ローディングカム部81aと第1出力ローディングカム部83aの間に介在して転動するようになっている。
第2転動体86は、第1転動体85と同一の球体をなすように形成されており、第2ローディングカム部82aと第2出力ローディングカム部84aの間に介在して転動するようになっている。
先ず、第1出力リング50及び第2出力リング50´と出力回転ギヤ90の間に回転差が無い場合は、図8(a)に示すように、第1転動体85及び第2転動体86は、第1ローディングカム部81a及び第1出力ローディングカム部83aの間の所定位置及び第2ローディングカム部82a及び第2出力ローディングカム部84aの間の所定位置に保持される。したがって、第1出力リング50及び第2出力リング50´の回転は、出力回転ギヤ90に伝達される。
具体的には、入力軸20の回転駆動力は、第1サンローラ30(第2サンローラ30´)→第1遊星ローラ40(第2遊星ローラ40´)→第1出力リング50(第2出力リング50´)→ローディングカム機構80→出力回転ギヤ90を介して出力軸110に伝達され、逆に、出力軸110の負荷トルクは、出力回転ギヤ90及びローディングカム機構80を介して、第1出力リング50(第2出力リング50´)を第1遊星ローラ40(第2遊星ローラ40´)に押し付ける押圧力(法線荷重)すなわちトラクション力を増加させるため、外部から負荷トルクが加わっても、トラクション力が確実に得られて出力軸110は所定の変速比で確実に回転駆動される。
このように、ローディングカム機構80のカム作用により、出力回転ギヤ90が軸線方向Lに移動させられると、後述する回転補正機構(駆動機構100の一部)を介して、第1出力リング50と第2出力リング50´との回転ずれ(すなわち、第1変速ユニットU1と第2変速ユニットU2との変速比のずれ)が自動的に補正されるようになっている。
そして、リードスクリュー101は、その回転によって第1変速リング60と第2変速リング60´を軸線方向Lにおいて互いに近接及び離隔するように同期させて軸線方向Lに移動させるように回動自在に支持される共に、その軸線方向Lへの移動によって第1変速リング60と第2変速リング60´を軸線方向Lにおいて同一の方向(図2及び図3中において、右向き又は左向き)に同期させて移動させるべく軸線方向Lに移動自在に支持されている。
すなわち、リードスクリュー101が所定位置にて回転し、第1変速リング60及び第2変速リング60´が軸線方向Lにおいてお互いに近接する側に同期して移動すると入力軸20の回転速度を共に減速させ、一方、第1変速リング60及び第2変速リング60´が軸線方向Lにおいてお互いに離隔する側に同期して移動すると入力軸20の回転速度を共に増速させる。また、リードスクリュー101が、回転せずに、図2及び図3中において軸線方向Lの右向き移動すると、第1変速リング60及び第2変速リング60´が共に右向きに移動し、第1変速リング60が入力軸20の回転速度を減速させかつ第2変速リング60´が入力軸20の回転速度を増速させる。一方、リードスクリュー101が、回転せずに、図2及び図3中において軸線方向Lの左向きに移動すると、第1変速リング60及び第2変速リング60´が共に左向きに移動し、第1変速リング60が入力軸20の回転速度を増速させかつ第2変速リング60´が入力軸20の回転速度を減速させる。
歯車103は、リードスクリュー101と一体的に回転するように、かつ、リードスクリュー101が軸線方向Lに移動するのを許容するように連結されている。
先ず、モータ105が一方向に回転すると、ウォーム104→歯車103→リードスクリュー101を介して、第1変速リング60及び第2変速リング60´を図2及び図3中の軸線方向Lの中央に向けてお互いに近接するように同期して移動させ、一方、モータ105が逆向きに回転すると、ウォーム104→歯車103→リードスクリュー101を介して、第1変速リング60及び第2変速リング60´を図2及び図3中の軸線方向Lの両外側に向けてお互いに離隔するように同期して移動させる。
具体的には、図3に示すように、第1変速リング60及び第2変速リング60´が、第2円錐部42の所定の中立位置Nにおいて接触している場合、第1遊星ローラ40及び第2遊星ローラ40´は第1出力リング50及び第2出力リング50´に対して転動し、第1出力リング50及び第2出力リング50´は回転することなく停止した状態、すなわち、出力軸110も停止した状態にある。
次に、第1変速リング60及び第2変速リング60´をハウジング10内の両外側に向けて(図3中において矢印Dで示すように)、すなわち第2円錐部42の小径端部側に向けて接触位置を移動させると、第1出力リング50及び第2出力リング50´の回転速度は次第に増速され、出力軸110も増速されて回転するようになっている。
一方、第1変速リング60及び第2変速リング60´を中立位置Nからハウジング10内の中央側に向けて(図3中において矢印Rで示すように)、すなわち第2円錐部42の大径端部側に接触位置を移動させると、第1出力リング50及び第2出力リング50´は逆向きに回転するようになっている。
このように、第1変速ユニットU1による変速比と第2変速ユニットU2による変速比にずれ(回転ずれ)が生じた場合には、第1変速リング60及び第2変速リング60´に連結されかつ出力回転ギヤ90の移動に連動するリードスクリュー101を採用することで、構造を簡素化しつつ、回転ずれを自動的に補正することができる。
すなわち、リードスクリュー101が、第1変速リング60と第2変速リング60´を変速比の増減が互いに逆になるように軸線方向Lに同期させて移動させる可動連結部材の役割をなすものである。
また、リードスクリュー101(可動連結部材)、係合部102等により、ローディングカム機構80のカム作用により出力回転ギヤ90が軸線方向Lに移動する動作に連動して、第1変速ユニットU1と第2変速ユニットU2との変速による回転ずれを自動的に補正する回転補正機構が構成されている。
すなわち、回転補正機構として、駆動機構100を構成する部品(リードスクリュー101、係合部102等)を兼用することで、構造を簡素化し、装置のコストを低減することができる。
したがって、入力軸20の回転駆動力は、二つの変速ユニットU1,U2により変速され、この変速された回転駆動力が出力回転ギヤ90を介して、出力軸110に伝達されるようになっている。
先ず、入力軸20が停止している場合、二つの変速ユニット(第1変速ユニットU1,第2変速ユニットU2)にはトラクション力が発生せずトルクが伝達されないため、出力軸110は自由に回転できる状態にある(オフの状態)。
続いて、入力軸20が停止した状態から回転し始め、その回転速度が上昇すると、トリガ機構70がオン作動して(遠心ウエイト71が径方向外向きに移動して第1サンローラ30を第1遊星ローラ40内に入り込ませかつ第2サンローラ30´を第2遊星ローラ40´に入り込ませ)、第1サンローラ30が第1遊星ローラ40に押し付けられかつ第2サンローラ30´が第2遊星ローラ40´に押し付けられて、所定レベル以上の法線荷重すなわちトラクション力が発生し、第1サンローラ30から第1遊星ローラ40にかつ第2サンローラ30´から第2遊星ローラ40´にトルク(回転駆動力)が伝達される。
ここで、入力軸20のトルクは、二つの変速ユニットU1,U2により倍増されつつ無段変速され、仮に二つの変速ユニットU1,U2間に相対的な変速比のずれがあっても、又、変速比の値が小さく調整が難しい領域においても、回転補正機構がその変速比のずれを補正して一つの変速比として出力するため、入力軸20から二つの変速ユニットU1,U2を介して出力軸110に確実に回転駆動力が伝達される。
上記無断変速装置においては、二つの変速ユニットU1,U2にはそれぞれ入力軸20の軸線方向Lにスラスト荷重が発生するが、二つの変速ユニットU1,U2は入力軸20の軸線方向Lに垂直な面に対して対称的に向かい合うように配置されているため、それぞれのスラスト荷重をお互いに逆向きに作用させて相殺することができる。その結果、ハウジング10あるいは入力軸20の軸受12等に無理な荷重が加わるのを防止することができ、又、軸受領域等における潤滑油の温度上昇を抑制でき、接触界面に潤滑油膜を形成させてトラクション力を確実に得ることができる。
特に、二つの変速ユニットU1,U2の組付けを高精度に設定しなくても、所望の変速機能を確保することができ、変速比がゼロの付近の調整も容易に行うことができ、経時変化による二つの変速ユニットU1,U2の変速比のずれの影響を防止でき、伝達効率を向上させることができる。
出力回転ギヤ90´は、図9ないし図11に示すように、外周に形成された歯車91、第1ローディングカム部81a´と第2ローディングカム部82a´の間に位置する円板領域に形成されて転動体87を転動自在に嵌合させて保持する嵌合保持孔96等を備えている。
第1出力リング150は、内周面51、第1ローディングカム部81a´の他に、軸受152を嵌合させる円筒部153を備えている。
第2出力リング150´は、内周面51、第2ローディングカム部82a´の他に、円筒部153の外周面に嵌合されて回動自在に支持される嵌合孔154を備えている。
先ず、第1出力リング150及び第2出力リング150´の間に回転差が無い場合は、図12(a)に示すように、転動体87は第1ローディングカム部81a´と第2ローディングカム部82a´の間の所定位置に保持される。したがって、第1出力リング150及び第2出力リング150´の回転は、出力回転ギヤ90´に伝達される。
このように、ローディングカム機構80´のカム作用により、出力回転ギヤ90´が軸線方向Lに移動させられて、第1出力リング150と第2出力リング150´との回転ずれ(すなわち、第1変速ユニットU1と第2変速ユニットU2との変速比のずれ)が自動的に補正されるようになっている。
このように、入力軸20のトルクを二つの変速ユニット(第1変速ユニットU1及び第2変速ユニットU2)により倍増しつつ無段変速でき、仮に二つの変速ユニットU1,U2間に相対的な変速比のずれがあっても、又、変速比の値が小さく調整が難しい領域であっても、回転補正機構がその変速比のずれを調整して一つの変速比として出力することができる。したがって、前述の実施形態と同様に、特に二つの変速ユニットU1,U2の組付けを高精度に設定しなくても、所望の変速機能を確保することができ、変速比がゼロの付近の調整も容易に行うことができ、経時変化による二つの変速ユニットU1,U2の変速比のずれの影響を防止でき、伝達効率を向上させることができる。
上記実施形態においては、回転補正機構として、駆動機構100の一部を兼用、すなわち、リードスクリュー101(及び係合部102)を可動連結部材として兼用した場合を示したが、これに限定さるものではなく、別個に専用の可動連結部材及び係合部を設けてもよい。
上記図9ないし図12に示す実施形態においては、第1出力リング150に第1ローディングカム部81a´を一体的に形成し、第2出力リング150´に第2ローディングカム部82a´を一体的に形成した場合を示したが、これに限定されるものではなく、図1ないし図8に示す実施形態と同様に、第1ローディングカム部をもつ第1ローディングカムリング及び第2ローディングカム部をもつ第2ローディングカムリングを別個に形成した後に、それぞれ第1出力リング及び第2出力リングに連結してもよい。
上記実施形態においては、トリガ機構70を一つ採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、トリガ機構70を廃止してもよく、あるいは、第2サンローラ30´と第2遊星ローラ40´の間でのトラクション力による回転力の伝達をオン/オフするトリガ機構をさらに追加してもよい。
10 ハウジング
11 フランジ壁部
12 軸受
13 リングシール
14 連結ガイドロッド
15,16 カバー
17 軸受
18 リングシール
20 入力軸
21 外部入力軸
21a 回転フランジ部
21b 連結穴
22 内部入力軸
U1 第1変速ユニット
U2 第2変速ユニット
30 第1サンローラ
30´ 第2サンローラ
31 外周面
32 円筒部
33 凹部
34 ネジ部材
40 第1遊星ローラ
40´ 第2遊星ローラ
41 第1円錐部
42 第2円錐部
43 軸部
44 第1可動ホルダ
44´ 第2可動ホルダ
50,150 第1出力リング
50´,150´ 第2出力リング
51 内周面
52 端面部
60 第1変速リング
60´ 第2変速リング
61 内周面
62 雌ネジ部
63 被ガイド部
70 トリガ機構
71 遠心ウエイト
72 端面
73 傾斜面
80,80´ ローディングカム機構
81 第1ローディングカムリング
81a,81a´ 第1ローディングカム部
82 第2ローディングカムリング
82a,82a´ 第2ローディングカム部
83a 第1出力ローディングカム部
84a 第2出力ローディングカム部
85 第1転動体
86 第2転動体
87 転動体
90,90´ 出力回転ギヤ(出力回転体)
91 歯車
92 円筒部
93 環状グルーブ
94 円筒部
95 軸受
95 嵌合保持孔
100 駆動機構(回転補正機構)
101 リードスクリュー(可動連結部材、回転補正機構)
102 係合部(回転補正機構)
102a 円筒部
102b 鍔部
103 歯車
104 ウォーム
105 モータ
110 出力軸
111 歯車
Claims (7)
- ハウジングに回動自在に支持された入力軸と、
前記入力軸の回転をトラクション力によりそれぞれ無段変速するべく,前記入力軸の軸線方向に垂直な面に対して対称的に向かい合うように前記ハウジング内に配置された第1変速ユニット及び第2変速ユニットと、
前記第1変速ユニット及び第2変速ユニットにより変速された回転に連動して回転するべく前記入力軸の回りに回動自在に支持された出力回転体と、
前記出力回転体に連動して回転するべく前記ハウジングに回動自在に支持された出力軸と、
前記第1変速ユニットと前記第2変速ユニットの間に介在して回転力を伝達し得ると共に前記軸線方向に押圧力を発生し得るローディングカム機構と、
前記ローディングカム機構のカム作用により前記出力回転体が前記軸線方向に移動する動作に連動して前記第1変速ユニットと前記第2変速ユニットとの変速による回転ずれを自動的に補正する回転補正機構と、
を含む、無段変速装置。 - 前記第1変速ユニットは、前記入力軸と一体的に回転する円錐台状の第1サンローラと、前記第1サンローラの外周面を転動する複数の第1遊星ローラと、前記第1遊星ローラを内接させると共に回動自在に設けられた第1出力リングと、前記第1遊星ローラに一体的に形成された円錐部を転動自在に内接させると共にその内接位置を移動させて変速するべく前記軸線方向に可動に設けられた第1変速リングを含み、
前記第2変速ユニットは、前記入力軸と一体的に回転する円錐台状の第2サンローラと、前記第2サンローラの外周面を転動する複数の第2遊星ローラと、前記第2遊星ローラを内接させると共に回動自在に設けられた第2出力リングと、前記第2遊星ローラに一体的に形成された円錐部を転動自在に内接させると共にその内接位置を移動させて変速するべく前記軸線方向に可動に設けられた第2変速リングを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の無段変速装置。 - 前記回転補正機構は、前記第1変速リングと前記第2変速リングを変速比の増減が互いに逆になるように前記軸線方向に同期させて移動させる可動連結部材と、前記軸線方向において前記出力回転体の一部と係合するように前記可動連結部材に設けられた係合部を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の無段変速装置。 - 前記ローディングカム機構は、前記第1出力リングと一体的に回転する第1ローディングカム部と、前記第2出力リングと一体的に回転する第2ローディングカム部と、前記出力回転体の両面に設けられた第1出力ローディングカム部及び第2出力ローディングカム部と、前記第1ローディングカム部と前記第1出力ローディングカム部の間に介在する第1転動体と、前記第2ローディングカム部と前記第2出力ローディングカム部の間に介在する第2転動体を含む、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の無段変速装置。 - 前記ローディングカム機構は、前記第1出力リングと一体的に回転する第1ローディングカム部と、前記第2出力リングと一体的に回転する第2ローディングカム部と、前記出力回転体に対して転動自在に保持されると共に前記第1ローディングカム部と前記第2ローディングカム部の間に介在する転動体を含む、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の無段変速装置。 - 前記第1変速リングと前記第2変速リングを同期させて駆動する駆動機構を含み、
前記駆動機構は、前記第1変速リングと前記第2変速リングを前記軸線方向において互いに近接及び離隔するように同期させて移動させるべく螺合すると共に前記第1変速リングと前記第2変速リングを前記軸線方向において同一の方向に同期させて移動させるべく前記軸線方向に移動自在に支持されたリードスクリューと、前記リードスクリューに回転駆動力を及ぼす駆動源を含み、
前記リードスクリューは、前記可動連結部材を兼ねる、
ことを特徴とする請求項3に記載の無段変速装置。 - 前記入力軸の回転速度に応じて、前記第1サンローラと前記第1遊星ローラの間及び/又は前記第2サンローラと前記第2遊星ローラとの間でのトラクション力による回転力の伝達をオン/オフするトリガ機構が設けられている、
ことを特徴とする請求項2ないし6いずれか一つに記載の無段変速装置。
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