JP4944678B2 - 安全帯等の支持具 - Google Patents

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本発明は、屋根又は屋根改修工事において、作業員の安全を確保すると共に既設のスレート屋根等のボルトを利用して設置し易く且つ作業員の作業範囲を広くすることができる安全帯等の支持具に関する。
新設の屋根の施工や、老朽化した既設屋根を改修する屋根工事において、作業員の安全が確保されなければならない。そのために作業員には安全帯を着用することが要求される。この安全帯は、その命綱に装着されたフックを付近の鉄骨や、または鉄骨間に張り渡されたロープに引掛けられるものである。新設の建築現場では、特許文献に開示されているように、安全帯を装着するための設備が整っており、安全な工事作業環境を確保することができる。
特開2005−61106
特許文献1(特開2005−61106)に開示されている技術的内容は、新設の建築現場において、簡単に適用されるものである。ところが老朽化した既設屋根を改修する工事等では、安全帯の帯(命綱)先端のフックを引掛けるための部位が都合良く存在するということは、なかなか無いものであり、特許文献1に開示されたものが適用されにくいものである。そして、このような、安全帯を装着し難い作業環境の場合では、作業員に対して安全帯を装着させることは、極めて困難である。しかも、作業員は、安全帯を着用しつつも、その作業範囲は、比較的広くなるように確保されなければならない。
また、通常は、建築構造物の比較的しっかりした鉄骨間や、或いは専用のポールを備え、これらの設備の間に親綱を張り渡し、この親綱に安全帯のフックを引掛けて、作業員はその親綱に沿って移動するものである。しかし、既設屋根の改修工事では、親綱を渡すための設備が存在しないことがあり、このような場合には、作業員は安全帯のフックを適当な場所を見つけて引掛けるしかない。
そのために、作業員は、安全帯を引掛けた場所とその安全帯の長さの範囲でしか作業ができず、そのために安全帯のフックを装着場所からいちいち外したり、引掛けたりする必要があり、そのために施工効率が低下し、しかも危険な状態で作業を行わなければならないことになる。本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的)は、新設屋根の他に老朽化した既設屋根の改修工事等のように、安全帯の帯(命綱)先端のフックを装着する設備が存在しないような現場でも、既設屋根の一部を使用して、しかも作業員の作業範囲を広く確保することを実現することである。
そこで発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、長手方向に沿って複数の底側貫通孔が形成された底側板部と、長手方向に沿って複数の立上り貫通孔が形成された立上り側板部とによって断面略L字形状とした主部材と、副部材とからなり、略平行配置された2本の前記主部材及び2本の前記副部材によって略方形状の枠体が形成されてなる安全帯等の支持具としたことにより、上記課題を解決した。請求項2の発明を、前述の構成において、前記底側板部の底側貫通孔同士の間隔は、屋根の頂部から突出する屋根板固定用の螺子軸部の配列間隔と略同等に対応してなる安全帯等の支持具としたことにより、上記課題を解決した。
請求項3の発明を、前述の構成において、前記主部材の底側板部の底側貫通孔は、長孔として形成されてなる安全帯等の支持具としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、前述の構成において、前記副部材は断面略L字形状とし、底側板部及び立上り側板部には、底側貫通孔,立上り貫通孔が形成されてなる安全帯等の支持具としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、前述の構成において、前記貫通孔にはアイナットが装着され、該アイナットを介して安全帯のフックが係止されてなる安全帯等の支持具としたことにより、上記課題を解決した。
請求項1の発明によれば、略方形状の枠状体で且つ主部材及び副部材には複数の貫通孔が形成されていることで、新設或いは既設を問わず、断面波形状のスレート屋根或いは折板タイプの屋根のように、該屋根の頂部表面から突出する屋根板固定用のボルトを利用して極めて簡単に装着することができる。このようなボルトは、断面波形状のスレート屋根ならばフックボルトであり、折板屋根ならば受金具に装着された螺子軸等である。さらに本発明は、略方形状の枠状体であるがゆえに、特に断面波形状のスレート屋根上に設置する場合に、設置領域が略方形状に分散されて、支持具の重量がスレート屋根の一箇所に集中的にかかることがなく、特に極めて脆くて割れ易いスレート屋根を損傷させることがない。
請求項2の発明によれば、前記底側板部の底側貫通孔同士の間隔は、屋根の頂部から突出する屋根板固定用の螺子軸部の配列間隔と略同等に対応させたことにより、前記底側貫通孔を略円形状としても、屋根の頂部表面から突出する螺子軸に位置を容易に合わせることができ、極めて安定した支持具の装着状態にすることができるものである。請求項3の発明によれば、前記底側板部の底側貫通孔は、長孔として形成されたことにより、断面波形状のスレート屋根の屋根板材を支持する複数のフックボルトのピッチと、所定の位置に装着する本発明の支持具の貫通孔のピッチとの間に多少の誤差があっても、貫通孔が長孔として形成されているので、支持具側の貫通孔のピッチとスレート屋根側のフックボルトとのピッチとを合わせ易くなり、支持具の装着が極めて効率的にできるものである。
請求項4の発明は、前記副部材は断面略L字形状とし、立上り側板部及び底側板部には、貫通孔が形成されることにより、支持具は、力学的強度がさらに向上し、且つ前記支持具の副部材をスレート屋根のフックボルトを利用して設置することができ、支持具の屋根への装着性が向上する。請求項5の発明によれば、前記貫通孔にはアイナットが装着され、該アイナットを介して安全帯のフックが係止されてなることにより、安全帯のフックを係止することがより一層簡易且つ迅速にできる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明における安全帯等の支持具Aは、図1(A),図2等に示すように、2個の主部材1と、2個の副部材2とから構成される。主部材1は、断面略L字形状に形成されたもので、水平状の底側板部11と、垂直状の立上り側板部12とから構成されたものである。前記底側板部11には、その長手方向に沿って複数の底側貫通孔111,111,…が穿孔されている。また前記立上り側板部12には、その長手方向に沿って、複数の立上り貫通孔121,121,…が穿孔されている。
前記底側貫通孔111は、底側板部11の長手方向に延出する長孔として形成されている〔図2(A)参照〕。同様に、前記立上り貫通孔121は、立上り側板部21の長手方向に延出するように形成されたものである〔図2(A)参照〕。前記底側貫通孔111及び立上り貫通孔121の長孔形状は、カプセル形状或いは略長方形状である。前記立上り貫通孔121は、長孔として形成されてなることにより、作業員の安全帯のフックを係止するための貫通孔の面積が広くなり、フックの係止作業が容易且つ迅速に行うことができ、ひいては作業効率を向上させることができる。
前記底側板部11の複数の底側貫通孔111,111,…は、後述する屋根Bの頂部表面から突出する螺子軸部の配列間隔と略同等に設定される実施形態が存在する〔図5(A)参照〕。この実施形態では、支持具Aが屋根Bの頂部に設置するときに、複数の底側貫通孔111,111,…の間隔Laと、前記屋根Bの螺子軸部の間隔Lbとが同一なので、全ての底側貫通孔111,111,…に対して、対応する螺子軸部を正確に挿通することができ、支持具Aを簡易且つ迅速に屋根Bの頂部に装着することができる〔図5(B)参照〕。
このような主部材1及び副部材2は、一般の断面L字形状のアングル材を使用することができる。さらに、予め複数の長孔が穿孔されている形材が使用されることもある。そして、2個の前記主部材1と、2個の副部材2が用意され、略長方形状又は正方形等の枠体とした支持具Aが形成されるものである。前記主部材1と前記副部材2との固着は、溶接手段又はボルト・ナット等の固着具にて行われる。さらに、図2(C)に示すように、略長方形状又は正方形等の枠体とした支持具Aの両主部材1,1の略中間箇所に補強材3が装着される実施形態も存在する。補強材3は、前記副部材2と略同等形状の部材である。
また、前記副部材2についても、前記主部材1と同様に立上り側板部22及び底側板部21から構成され、これら立上り側板部22と底側板部21が断面略L字形状を構成している。そして、前記立上り側板部22には複数の立上り貫通孔221が穿孔されており、前記底側板部21には複数の底側貫通孔211が穿孔されている。また、副部材2の立上り側板部22及び底側板部21には、前記立上り貫通孔221及び底側貫通孔211が穿孔されていない実施形態も存在する。
前記主部材1の立上り側板部12に形成される立上り貫通孔121には、図1(B),図2(B)に示すように、アイナット4が装着され、該アイナット4を介して安全帯8のフック82が係止される。該アイナット4は、ナットベース41に環部42が形成され、前記ナットベース41には内螺子が形成されボルト43が螺合される構造となっている。具体的には図4(C)に示すように、前記立上り貫通孔121の位置にアイナット4のナットベース41が配置され、前記立上り貫通孔121の反対側からボルト43が挿通され、前記ナットベース41の内螺子に螺合されてアイナット4が立上り側板部12に固定される。そして、アイナット4に安全帯8のフック82が係止されるようになっている。
本発明では、補強具100が使用されることがある。該補強具100は、図6(A),(B)に示すように、上部101の幅方向両側に脚部102,102が形成されている。該脚部102,102の下端は、屋根板材6の円弧状谷部の形状に形成された略湾曲状の脚底部102aが形成されている。前記上部101の中央には貫通孔103が形成されている。該貫通孔103の直径(内径)は、後述する屋根Bを構成する固定ボルト7のナット73の外径よりも大きく形成され、該ナット73が前記貫通孔103内に収まるようになっている。そして、図6(C)に示すように、前記補強具100の貫通孔103にナット73の外周が挿通され、上部101が前記ナット73の座金77上に配置される。このように補強具100が装着されることにより、該補強具100によって支持具Aからの荷重を分散させることができ、屋根Bの損傷を防ぐ、或いは軽減することができるものである。
次に、本発明が使用される新設又は既設の屋根Bの構造について説明する。まず、図3,図5等に示すように、スレート等でその断面形状が、略サインカーブ状の波形に形成されており、複数の屋根板材6,6,…より構成されている。該屋根板材6は、母屋5に固定ボルト7にて固定されている。該固定ボルト7は、具体的にはフックボルトであって、略J字形状であり、ボルト軸部71,フック部72及びナット73から構成されている。そして、母屋5(アングル形鋼等)の下縁箇所に前記フック部72が引掛けられ、前記ボルト軸部71の軸上端部分が前記屋根板材6の弧状山形部の頂部を貫通し、該頂部側表面から前記ナット73により締め付けられて、断面波形状のスレート屋根が構成される。
支持具Aを断面波形状のスレートタイプの屋根Bに設置するには、まず固定ボルト(フックボルト)7のナット73の上から前記支持具Aを配置する。そして前記底側板部11側に形成された複数の底側貫通孔111のうち少なくとも2個に、前記固定ボルト(フックボルト)7のボルト軸部71が挿通され、ボルト軸部71に固定用ナット75を螺合して、支持具Aを屋根Bの頂部に固定する〔図4(A)参照〕。また、支持具Aの屋根Bへの別の固定方法としては、前記固定ボルト7に螺合されているナット73が一旦外される。そして、前記底側板部11側に形成された複数の底側貫通孔111のうち少なくとも2個に、前記固定ボルト7のボルト軸部71が挿通され、再度ナット73が前記底側貫通孔111の上から前記ボルト軸部71に螺合されて、支持具Aが屋根Bの頂部に固定される〔図4(B)参照〕。
さらに、支持具Aの屋根への装着に前記補強具100を使用する場合について説明する。まず屋根Bを構成する略サインカーブ状の波形に形成された屋根板材6の円弧状頂部から突出した固定ボルト7のナット73の上から配置する。このとき、補強具100の貫通孔103にてナット73の外周を囲むようにして、貫通孔103にナット73が収められる。そして、前記脚底部102aは、屋根板材6の円弧状底部に沿うようにして配置される〔図6(B)参照〕。そして、あとは、前記補強具100の上部101の上から支持具Aが配置され、ボルト軸部71に固定用ナット75を螺合して、支持具Aを屋根Bの頂部に固定される〔図6(C)参照〕。
屋根Bには、折板タイプの金属製の屋根板材6から構成された折板タイプの屋根Bとした実施形態が存在し、この折板タイプの屋根Bに本発明の支持具Aが装着されるものである〔図9(A),(B)参照〕。この折板タイプの屋根Bでは、屋根板材6は幅方向両側に山形部が形成されており、該山形部同士が重合される。そして、母屋5上に設置された受金具200に設け螺子軸部74が前記重合する山形部に貫通し、固定用ナット75によって固着されている。この折板タイプの屋根Bに、本発明の支持具Aが装着されるときは、前記固定用ナット75の上に支持具Aが配置され、前記螺子軸部74が前記底側板部11に形成された底側貫通孔111に挿通され、前記螺子軸部74に固定用ナット76が螺合され、支持具Aが屋根Bの頂部に固定される〔図9(B)参照〕。また、前記固定ナット75が螺子軸部74から一旦外されて、本発明の支持具Aの底側板部11に形成された底側貫通孔111に前記螺子軸部74が挿通され、該螺子軸部74に前記固定用ナット75が再度螺合されることによって、支持具Aが屋根Bの頂部に固定されることもある。
次に、本発明の安全帯の支持具Aの使用例について説明する。屋根B上で、作業する作業員は安全帯8の命綱81の先端のフック82を前記主部材1の立上り側板部12に形成された立上り貫通孔121に引掛ける。或いは、図2(B),図4(C),図7(B),図8(B)等に示すように、アイナット4を前記立上り側板部12の立上り貫通孔121を利用して固着し、該アイナット4の環部42に前記安全帯8のフック82を引掛けて作業を行う。
本発明の支持具Aが複数用意されて、親綱9を張り渡す場合について説明する。図7は、屋根の軒先から棟に亘って複数の支持具Aが前述の手段によって設置され、隣接する支持具Aに前記アイナット4が固着され、隣接するアイナット4,4に前記親綱9が掛け渡される。図7の実施例では、3個の支持具Aに略直列状態で親綱9が連結されている。作業員は、安全帯8のフック82を前記親綱9に引掛けて作業を行う。図8は、屋根Bの傾斜方向と直交する方向に複数の支持具Aが設置されたものである。この場合には、各支持具Aの副部材2の立上り側板部22の立上り貫通孔221を利用してアイナット4が固着され、隣接する支持具Aの副部材2,2間に親綱9が掛け渡され、作業員はその親綱9に安全帯8のフック82を引掛けて作業を行う。
(A)は本発明の支持具の斜視図、(B)は支持具がスレート屋根に設置された状態の斜視図である。 (A)は支持具を分解した状態の斜視図、(B)はアイナットが装着された状態の支持具の要部拡大斜視図、(C)は補強材が装着された実施形態の支持具の斜視図である。 (A)及び(B)は支持具が屋根に装着された状態の略示図である。 (A)は支持具と屋根との装着箇所の拡大断面図、(B)は支持具と屋根との別の実施形態における装着箇所の拡大断面図、(C)はアイナットの装着箇所の一部断面にした拡大図である。 (A)は底側貫通孔の間隔を屋根の螺子軸部の間隔と同等とした実施形態における屋根と支持具とを分離した状態の略示図、(B)は屋根に支持具を装着した状態の略示図である。 (A)は補強具の斜視図、(B)は補強具を屋根に装着しようとする略示図、(C)は支持具が補強具を介して屋根に装着された状態の略示図である。 (A)は支持具に親綱を装着するための構成を示す略示斜視図、(B)は使用状態を示す略示平面図である。 (A)は支持具に親綱を装着するための別の実施形態の構成を示す略示斜視図、(B)は使用状態を示す略示図である。 (A)は折板タイプの屋根に支持具が装着された実施形態の略示図、(B)は(A)の要部拡大断面図である。
符号の説明
1…主部材、11…底側板部、111…底側貫通孔、12…立上り側板部、
121…立上り貫通孔、2…副部材、4…アイナット。

Claims (5)

  1. 長手方向に沿って複数の底側貫通孔が形成された底側板部と、長手方向に沿って複数の立上り貫通孔が形成された立上り側板部とによって断面略L字形状とした主部材と、副部材とからなり、略平行配置された2本の前記主部材及び2本の前記副部材によって略方形状の枠体が形成されてなることを特徴とする安全帯等の支持具。
  2. 請求項1において、前記底側板部の底側貫通孔同士の間隔は、屋根の頂部から突出する屋根板固定用の螺子軸部の配列間隔と略同等に対応してなることを特徴とする安全帯等の支持具。
  3. 請求項1又は2において、前記主部材の底側板部の底側貫通孔は、長孔として形成されてなることを特徴とする安全帯等の支持具。
  4. 請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記副部材は断面略L字形状とし、底側板部及び立上り側板部には、底側貫通孔,立上り貫通孔が形成されてなることを特徴とする安全帯等の支持具。
  5. 請求項1,2,3又は4のいずれか1項の記載において、前記貫通孔にはアイナットが装着され、該アイナットを介して安全帯のフックが係止されてなることを特徴とする安全帯等の支持具。
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