以下、本発明に係るロールヘミング加工方法及び加工装置について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図17を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係るロールヘミング加工装置10は、アウタパネル12とインナパネル14からなるワークWの縁部をロールヘミング加工するための装置であって、ワークWを支持する加工テーブル(移動手段)16と、ロボット(移動手段)18と、該ロボット18の先端に設けられた加工ツール20とを有する。ワークWは所定のワーク自動交換手段によって加工テーブル16に搬入、搬出されるようにしてもよい。
加工テーブル16、ロボット18及び加工ツール20は、それぞれテーブルコントローラ22、ロボットコントローラ24及びツールコントローラ26によって制御されており、これらのテーブルコントローラ22、ロボットコントローラ24及びツールコントローラ26は、メインコントローラ28の作用下に同期制御される。
加工テーブル16は、テーブルコントローラ22の作用下にワークWを水平回転させるとともに、XYZテーブル16aを動作させて水平移動及び垂直移動させることができる。ロボット18は産業用の多関節型であり、加工ツール20を稼動範囲内の任意の位置において任意の姿勢となるように移動可能である。また、ロボット18は、図示しないティーチングペンダントの操作により、実際に動作を行わせながら動作ティーチングを行うことができる。さらに、3次元CAD(Computer Aided Design)等を用いたオフライン処理によって、実際のロボット18を動作させることなく動作ティーチングを行うことも可能である。
図2に示すように、加工ツール20は、アウタパネル12の縁部である屈曲部12aから略直角に起立した形状のフランジ30をアウタパネル12の内側方向へ折り曲げるためのツールであって、インナパネル14の縁部14aを挟み込んで一体化することができる(図7参照)。ワークWは、アウタパネル12が下でインナパネル14が上となるように組み合わされて仮固定されており、インナパネル14の縁部14aは、アウタパネル12の屈曲部12aの近傍に沿って配置されている。このときフランジ30は上方に向かって延在している。縁部14aからフランジ30までの距離はフランジ30の高さよりも充分小さい。
加工ツール20は、アーチ部材32と、屈曲部12aを支持する第1ローラ34と、該第1ローラ34によって支持された屈曲部12aの近傍におけるフランジ30の外側面30bを押圧する第2ローラ36と、フランジ30の頂部30aを押圧する第3ローラ37と、第2ローラ36及び第3ローラ37の向き及び位置を変える位置設定手段としての第1シリンダ38a、第2シリンダ38b、第3シリンダ38c及び第4シリンダ38dとを有する。アーチ部材32は、略U字形状であって、第1延在部32aと、第2延在部32bと、これらの第1延在部32a及び第2延在部32bの一端部をそれぞれつなぐベース部材32cとを有する。
第1ローラ34は、第1延在部32aの先端近傍に軸支され、第1延在部32aの延在方向を基準としたとき、先端に向かって略45°外方に傾斜するように設定されている。第1ローラ34は、第1延在部32aに対する取付元に向かって縮径する第1縮径部34aと、該第1縮径部34aの小径側と連続的且つ滑らかにつながっている環状円弧凹部34bと、該環状円弧凹部34bから取付元へ向かって縮径する第2縮径部34cとを有する。第1縮径部34aの上端面が形成する縁は、第1延在部32aの延在方向と略平行である。環状円弧凹部34bは断面略90°の円弧の凹部である。
第2ローラ36及び第3ローラ37は、同軸且つ一体的に軸受部材40に軸支されており、取付元側に第2ローラ36、先端側に第3ローラ37が配置されている。第2ローラ36は径に較べて高さの低い円柱形状である。第2ローラ36及び第3ローラ37は、段付き一体の円柱形状の簡便な構造である。また、必要に応じて、第2ローラ36と第3ローラ37を独立的に回転可能な構造としてもよい。第3ローラ37の径は第2ローラ36の径の略1/2であり、軸方向長さはフランジ30の板厚以上あればよく、十分に短く設定されている。第2ローラ36の径はフランジ30の高さの略2倍である。
軸受部材40はやや長尺なブロック形状であって、その両端には第2ローラ36の軸C2の向きと直角な方向の第1支軸40a及び第2支軸40bが設けられている。第1支軸40aには第1シリンダ38a及び第2シリンダ38bのロッド先端が回動自在に軸支され、第2支軸40bには第3シリンダ38c及び第4シリンダ38dのロッド先端が回動自在に軸支されている。第1シリンダ38aのチューブ端部はアーチ部材32の第2延在部32bの先端近傍に設けられており、第2シリンダ38bのチューブ端部は第2延在部32bの他端側基部近傍に設けられている。また、第3シリンダ38cのチューブ端部はベース部材32cの略中間部に設けられており、第4シリンダ38dのチューブ端部は第1延在部32aの基部近傍に設けられている。
第2ローラ36は軸受部材40に軸支されたまま該軸受部材40と第1〜第4シリンダ38a〜38dとからなるリンク機構によって移動され、第1ローラ34と第2ローラ36の各回転軸C1、C2が同一平面上である位置関係を保ったまま向き及び位置が変えられる。
第1〜第4シリンダ38a〜38dはそれぞれツールコントローラ26における第1サブコントローラ42a、第2サブコントローラ42b、第3サブコントローラ42c及び第4サブコントローラ42dによって液圧回路(図示せず)を介して駆動制御される。第1〜第4サブコントローラ42a〜42dは、リンク制御部44によって統合的に制御され、所定のセンサ信号を参照しながら第2ローラ36の向き及び位置を設定可能である。
次に、このように構成されるロールヘミング加工装置10を用いて、ワークWのロールヘミング加工を行う手順について図3〜図7を参照しながら説明する。以下の説明では、表記したステップ番号順に処理が実行されるものとする。
図3のステップS1において、先ず、ワークWをアウタパネル12が下、インナパネル14が上となるように加工テーブル16上に固定する。このとき、フランジ30は上方に向かって起立しているものとする。
ステップS2において、ロボットコントローラ24の作用下にロボット18を動作させ、加工ツール20を移動させる。このとき、図2に示すように、第1ローラ34の軸C1が先端に向かって斜め45°下方を向く姿勢にするとともに、第1縮径部34aの上端面をアウタパネル12の下面に当接させ、且つ環状円弧凹部34bを屈曲部12aに合うように当接させる。
ステップS3において、ツールコントローラ26の作用下に第1〜第4シリンダ38a〜38dを動作させ、第2ローラ36の位置及び向きを設定する。つまり、第2ローラ36と第3ローラ37との段差隅部36cにフランジ30の頂部30aを当て、第2ローラ36の端面36dによりフランジ30の側面を押圧する。これにより、フランジ30の頂部30aが位置決めされながら矢印Aの方向に押圧され、曲げ基点Pを略中心として45°傾斜するように適切に折り曲げられる。従って、第2ローラ36及び第3ローラ37の軸C2は軸C1と略平行となり、第2ローラ36の下端部はフランジ30の中間高さ部に接した状態で第1縮径部34aのやや上方に位置することとなる。
このとき、フランジ30の頂部30aは、第3ローラ37の外周面37aによって、矢印Bで示すように屈曲部12aの方向に向かって押圧される。この矢印Bの方向の力を下方と横外方に分けて分解して解析すると、下方の成分は第1縮径部34aにより受け止められ、横外方の成分は環状円弧凹部34bによって受け止められる。
つまり、図4に示すように、第2ローラ36によって発生する曲げ応力S(図4のクロスハッチングで示す部分)は屈曲部12aの近傍に集中することになり、内側への巻き込み変形が発生しない。これにより、フランジ30は二点鎖線部で示すように屈曲し、屈曲部12aは環状円弧凹部34bの断面形状に合わせて適度に丸みを帯びた厚み感のある好適な外観の曲げ加工面が得られる。また、第1ローラ34及び第2ローラ36を離間させた後にもアウタパネル12が第1ローラ34の環状円弧凹部34bからの巻き込み及び浮き上がりが抑制され、高い加工精度が実現される。つまり、図18に示した従来技術に係る装置で加工したフランジの屈曲形状と対比して、巻き込み量7及び浮き上がり量8ともほとんど発生しないことが理解されよう。また、図4においては、アウタパネル12に対してインナパネル14が当接して設けられている例を示すが、第2ローラ36の作用により該インナパネル14の有無に関わらずに巻き込み及び浮き上がりの発生が抑制される。
なお、ここでいう第3ローラ37による押圧とは、アクチュエータにより能動的に押圧する場合に限らず、第3ローラ37と屈曲部12aとの距離を固定して浮き上がろうとする頂部30aを位置制限することにより受動的に押圧する場合を含む意味である。
第2ローラ36及び第3ローラ37は図2に示す位置及び向きに限らず、アウタパネル12の厚み及び材質等を考慮して適切な位置及び向きとなるように設定すればよい。
ステップS4において、メインコントローラ28の作用下にテーブルコントローラ22及びロボットコントローラ24がそれぞれ加工テーブル16及びロボット18を制御し、第1回目のロールヘミング加工(プリヘミング加工とも呼ばれる。)を行う。つまり、図2及び図5に示すように、第2ローラ36の位置及び姿勢を保持しながら加工ツール20をアウタパネル12の屈曲部12aに沿って移動させることにより、フランジ30を内側方向へ45°折り曲げるロールヘミング加工を連続的に行う。第1ローラ34及び第2ローラ36は互いに逆方向に回転しながら屈曲部12a及びフランジ30を挟み込んで第1回目のロールヘミング加工を行う。このとき、屈曲部12aは第1ローラ34の環状円弧凹部34bの面に合わせて適度に丸みを帯びた形状に曲げられる。
このステップS4では、ロボット18及び加工テーブル16が同期的に協調動作することによって、加工ツール20が屈曲部12aの全長に沿って移動し第1回目のロールヘミング加工が行われる。このように、ロボット18及び加工テーブル16が協調動作を行うことによりロボット18の実質的な移動量が少なくなり、サイクルタイムが向上するとともに、作業の省スペース化が図られる。
なお、図5及び後述する図7、図10、図12、図15では、理解を容易にするために屈曲部12aの延在方向を直線状に図示しているが、該屈曲部12aは2次元的又は3次元的な曲線状であってもよいことはもちろんである。屈曲部12aの延在方向が曲線状であるときには、第1ローラ34及び第2ローラ36の軸C1、C2が屈曲部12aのなす線に対して直角であって、且つ環状円弧凹部34bが屈曲部12aに適切に当接するように加工ツール20を移動させる。
ステップS5において、ツールコントローラ26の作用下に第1〜第4シリンダ38a〜38dを動作させ、第2ローラ36の位置及び向きを変更設定する。つまり、図6及び図7に示すように、第2ローラ36の軸C2をアウタパネル12の面及び第1延在部32aの延在方向と平行とし、第2ローラ36の外周面36eと第1縮径部34aの上面によりアウタパネル12、インナパネル14の縁部14a及びフランジ30の3枚を挟み込む。このとき、第2ローラ36は第1シリンダ38a〜第4シリンダ38dによって下方に押圧されてアウタパネル12、インナパネル14の縁部14a及びフランジ30がプレスされて一体化される。また、第2ローラ36の一端面をアウタパネル12の屈曲部12aよりもやや内側に配置させることにより、屈曲部12aを潰すことなく適度に丸みを持った形状に折り曲げることができる。なお、図7(及び図15)においては、加工部位が視認可能となるように第2ローラ36を二点差線の透明状に図示している。
このステップS5においては、軸C2が水平であって、しかも第3ローラ37は第2ローラ36より小径であることから、第3ローラ37はアウタパネル12及びインナパネル14に対して自然と退避し、干渉が防止される。この場合、第3ローラ37の軸方向長さは十分に短く設定されていることから、フランジ30の頂部30aと比較して内側方向にほとんど突出していない。したがって、インナパネル14の上面において突起14b等が存在する場合にも該突起14bとの干渉が防止され、複雑な形状のワークWに適用可能となり、汎用性が向上する。
ステップS6において、第2回目のロールヘミング加工(本ヘミング加工とも呼ばれる。)を行う。つまり、前記ステップS4と同様に、ロボット18及び加工テーブル16が同期的に動作することによって、加工ツール20が屈曲部12aの全長に沿って移動してロールヘミング加工が行われてアウタパネル12、インナパネル14の縁部14a及びフランジ30の3枚が一体化する。
この第2回目のロールヘミング加工においては、第3ローラ37が頂部30aから離間しているが、すでに第1回目のロールヘミング加工において屈曲部12aが適正な形状で且つ十分鋭角に曲げられていることから、この場合も応力は屈曲部12aに集中し、アウタパネル12の浮き上がり現象は発生しない。
このように、本実施の形態に係るロールヘミング加工装置10及び加工方法によれば、第1ローラ34及び第2ローラ36を加工ツール20及びロボット18によって屈曲部12aに沿って一体的に移動させながら、フランジ30を内側方向へ折り曲げることができる。これにより、第1ローラ34が従来のロールヘミング加工における金型に相当する作用を奏し、金型が不要となる。また、第1ローラ34及び第2ローラ36を屈曲部12aに沿って一体的に移動させることによりロールヘミング加工が行われるため、各種の加工部位に適用可能であって、汎用性が高い。従って、新規のワークWに対しても加工ツール20が適用され、従来のようにワークW毎に対応した専用の金型を製作する必要がなく、ワークWが用いられる自動車等を短期間で開発することができる。従来の金型はワークWに対応した複雑な形状であり、長期の設計期間及び製作期間を要するが、第1ローラ34及び第2ローラ36は単純形状であって、設計期間及び製作期間とも極めて短期間で足りる。
また、複数の種類のワークWが混在して加工テーブル16に載置される場合であっても、加工テーブル16及びロボット18を別ティーチングデータで動作させることにより、各ワークW毎に対応したロールヘミング加工が可能であって、多品種生産に好適である。第1ローラ34は、従来の金型と比較して非常に小さく、保管及び管理上の煩雑さがない。
さらに、第2ローラ36及び第3ローラ37は、第1〜第4シリンダ38a〜38dによって位置及び向きが任意に設定可能であることから、アウタパネル12の材質、厚み等に応じて曲げ角度を設定することができるとともに、第2ローラ36の位置及び向きを変えて2回に分けてロールヘミング加工を行うことができる。従って、屈曲部12aの加工精度の向上を図ることができる。
本実施の形態に係るロールヘミング加工装置10及び加工方法によれば、第1回目のロールヘミング加工において、フランジ30の頂部30aを第3ローラ37の外周面37aにより屈曲部12aの方向に向かって押圧しながら加工を行うことにより、曲げ応力を屈曲部12aの近傍に集中させることができる。したがって、屈曲部12a以外の箇所ははほとんど変形せず、浮き上がりや巻き込みが発生しない。特に、アウタパネル12は、内側方向にほとんど応力の発生がないことから、下面において第1ローラ34の第1縮径部34aの先端縁部に当接する箇所に対して加圧痕が残ることが防止される。
また、第1ローラ34は、応力が発生する箇所のみを支持すればよいことから、軸方向長さを短く設定することができる。これにより、例えばフランジ30の延在方向の形状に応じた追従性が向上し、汎用性が一層向上する。つまり、フランジ30が直線的に延在する場合に限らず、車両のホイールハウス縁部(図17の符号262a参照)等のヘミング加工にも好適に用いられる。さらに、第1ローラ34の軸方向長さを短くすることにより、アウタパネル12の下面において突起等が存在する場合にも該突起と干渉することが防止され、複雑な形状のワークWに適用可能となり、汎用性が向上する。
さらにまた、加工ツール20では、屈曲部12aの斜め下側方に第1ローラ34の環状円弧凹部34bを当接させるとともに、フランジ30の外側方を第2ローラ36に当接させていることから、ワークWの上面側且つ内側の方向には構成部材がほとんどなく、コンパクトでありしかも種々の形状のワークWに対する汎用性が高い。
上記の例では、第1回目のロールヘミング加工におけるフランジ30の曲げ角度は45°としたがこれに限らず、ワークWの材質や形状及び第3ローラ37による加圧力等に応じて屈曲部12aが適度な鋭角となるようにすればよい。また、第1回目のロールヘミング加工は1回に限らず複数回に分けて行い、屈曲部12aを徐々に曲げるようにしてもよい。すなわち、第1回目のロールヘミング加工を複数回に分け、一度に行う加工角度を小さくする設定することにより加工精度を高めることができるため、サイクルタイムとの兼ね合いや、アウタパネル12の厚み及び材質等を考慮して加工回数を設定するとよい。同様に第2回目のロールヘミング加工についても複数回に分けて行ってもよい。
ここで、第1回目のロールヘミング加工と第2回目のロールヘミング加工は、第3ローラ37による頂部30aの押圧を行う場合を第1回目、押圧を行わない場合を第2回目として区別することができる。第2回目のロールヘミング加工は、屈曲部12aの曲げ角度が45°以上となったときに行うとよい。つまり、曲げ角度が45°以上となった後は、第3ローラ37による頂部30aの押圧を行わなくても応力が屈曲部12aに集中するため、加工精度が保たれるからである。
次に、加工ツール20の変形例について図8〜図16を参照しながら説明する。なお、各変形例において加工ツール20と同じ箇所、又は変形例同士で同じ箇所には同符号を付し、その詳細な説明を省略する。
先ず、第1の変形例に係る加工ツール20aと、該加工ツール20aを用いたロールヘミング加工方法について、図8〜図12を参照しながら説明する。
図8に示すように、加工ツール20aは、前記加工ツール20における前記第1ローラ34と同じローラと、前記第2ローラ36に相当する第2ローラ100と、第1回目のヘミング加工時にフランジ30の頂部を屈曲部12aに向けて押圧するための第3ローラ102と、第2ローラ100及び第3ローラ102を支持する支持機構104と、該支持機構104の位置及び向きを変える位置設定手段106と、ロボット18に対する取付部材であり位置設定手段106を保持するベース部108とを有する。
ベース部108の下方は前記第1延在部32aと同形状であって、先端斜め下方部で第1ローラ34を軸支している。基準姿勢時(図8の姿勢時)に、第2ローラ100の外周面100aはフランジ30の外側面30bに当接する。第3ローラ102の外周面102aには浅く細い環状溝102bが設けられており、該環状溝102bがフランジ30の頂部30aに係合するように当接している。
第2ローラ100の軸C3はフランジ30が起立する方向と平行であり、第3ローラ102の軸C4は、基準姿勢時に、軸C3と直角で且つパネルの内側方向を指向している。
支持機構104は、第2ローラ100を軸支する主支持部110と、第3ローラ102を軸支する副支持部(退避機構)112と、位置設定手段106に接続されるブラケット114とを有する。主支持部110は上面視略L字(図10参照)であって、その下面で第2ローラ100を回転自在に軸支している。副支持部112は端面部で第3ローラ102を回転自在に軸支するとともに、内蔵するアクチュエータ(図示せず)によって回転し、主支持部110の直角壁をストッパとする90°の範囲内で回動する。これにより、第3ローラ102は第2ローラ100の軸C3を中心として回転し、基準姿勢時には外周面102aでフランジ30の頂部30aを押圧し、90°回転時(図12参照)にはフランジ30から退避することになる。副支持部112は軸C3を中心とした回転半径が小さく、また第3ローラ102も小型であることから、副支持部112を傾動させるアクチュエータは小型のもので足りる。
位置設定手段106は、鉛直方向に設定された固定板120に対して水平方向に移動するXテーブル122と、該Xテーブル122に対して鉛直方向に移動するYテーブル124と、該Yテーブル124に固定された斜め横長形状の支持板126とを有する。支持板126の先端部はブラケット114下部の回転支軸114aを回転自在に軸支しており、他端部はシリンダ128のチューブ側端部を回転自在に軸支している。シリンダ128のロッド128a先端部は、ブラケット114上部における端部のピボット114bと接続されている。
このように構成される位置設定手段106により、支持機構104の位置及び向きを鉛直面内で変化させることができる。すなわち、図8に示すように、Xテーブル122を図8の右方向、Yテーブル124を略中央高さにそれぞれ移動させるとともに、シリンダ128のロッド128aを縮退させておくことにより、支持機構104は基準姿勢となる。
図9に示すように、Xテーブル122を固定板120の略中央位置、Yテーブル124を上昇位置にそれぞれ移動させることにより、支持機構104は基準姿勢に対して左上方に移動する。また、シリンダ128のロッド128aをやや延出させることにより、支持機構104は回転支軸114aを中心として45°傾動する。これにより、フランジ30の外側面30b及び頂部を第2ローラ100及び第3ローラ102の外周面100a、102aで押さえながら該フランジ30を45°折り曲げることができる(図10参照)。したがって、この姿勢は第1回目のロールヘミング加工時に用いられる。
図11に示すように、Xテーブル122を図11の左方向、Yテーブル124を略中間高さにそれぞれ移動させることにより支持機構104は基準位置からみて左方に移動する。またシリンダ128のロッド128aをさらに延出させることにより、支持機構104の回転支軸114aを中心として90°傾動し、第2ローラ100の外周面100aで押圧されるフランジ30はインナパネル14を挟み込むまで折り曲げられる。このとき、副支持部112を90°回転させておくことにより、第3ローラ102をフランジ30から退避させ、インナパネル14に対する干渉が防止される。この姿勢は第2回目のロールヘミング加工時に用いられる。
また、位置設定手段106は、直交する方向に移動可能なXテーブル122、Yテーブル124と、支持機構104を傾動させるためのシリンダ128とを有することから、移動の制御と傾動の制御を独立的に行うことができ、制御手順が簡便である。つまり、回転支軸114aの廻りでブラケット114の傾動角を検出する回転センサを設け、該回転センサの信号に基づいてシリンダ128をサーボ制御することにより、支持機構104の向きが制御される。また、フランジ30の曲げ角に基づいて支持機構104の位置が決まることから、回転支軸114aの座標も特定される。したがって、該座標を横方向のX座標及び縦方向のY座標で表すことにより、Xテーブル122及びYテーブル124の位置が規定され、支持機構104の位置制御が行われる。これに対して、支持機構104の向きはシリンダ128により独立的に制御される。
次に、このように構成される加工ツール20aを用いて、ワークWのロールヘミング加工を行う手順について説明する。加工ツール20aを用いたロールヘミング加工の手順は加工ツール20を用いる場合と同様に、基本的には図3で示したフローチャートで表される。
すなわち、先ず、ワークWを加工テーブル16上に固定し(ステップS1)、その後、図8に示すように、環状円弧凹部34bを屈曲部12aに合うように当接させる(ステップS2)。このとき、加工ツール20aを基準姿勢としておき、第2ローラ100の外周面100aをフランジ30の外側面30bに当接させ、第3ローラ102の外周面102aをフランジ30の頂部30aに当接させておく。頂部30aは環状溝102bに係合して確実に保持される。
さらに、位置設定手段106の作用により支持機構104を移動して、第2ローラ100の外周面100aによりフランジ30を押圧し45°折り曲げ、図9及び図10に示す状態とする(ステップS3)。
次いで、ロボット18を駆動することにより、加工ツール20aをフランジ30に沿って移動させながら第1回目のロールヘミング加工を行う(ステップS4)。このとき、第3ローラ102の外周面102aにより頂部30aを確実に押圧した状態で、第2ローラ100の外周面100aがフランジ30の外側面30bに対して転動、加圧しながらロールヘミング加工が行わる。この場合、頂部30aに対する第3ローラ102の押圧力は位置設定手段106により調整可能である。
頂部30aが第3ローラ102によって押さえられていることから、アウタパネル12は第1ローラ34の環状円弧凹部34bから浮き上がることがなく、第3ローラ102による曲げ応力は屈曲部12aの近傍の狭い範囲に集中させることができる。また、第2ローラ100はフランジ30の外側面30bに対して外周面100aが線接触し、第3ローラ102は頂部30aに対して点接触(厳密には、板厚の方向に線接触)しながらそれぞれながら転動、加圧する。第2ローラ100及び第3ローラ102とも厳密には歪み等により多少の面接触となるが、十分に狭い面積で接触するため、第1ローラ34及び第2ローラ100がフランジ30の延在方向の形状に応じた追従性が向上し、汎用性が一層向上する。しかも、第2ローラ100及び第3ローラ102は互いの存在により外側面30b及び頂部30aに対してその軸方向への摺動が規制されるためフランジ30に対して確実に位置決めがなされる。
第1回目のロールヘミング加工が終了した後、副支持部112を90°回転させることにより第3ローラ102をフランジ30から退避させる(図10の二点鎖線部及び図11参照)。この場合、副支持部112は軸C3を中心として回転し、その回転半径は十分に小さく、障害物等に干渉することがない。また、回転半径が小さいことから加減速の応答性が高く、迅速且つ簡便な退避動作が可能である。これらの特徴は、副支持部112が軸C3を中心として回転することにより奏するが、必ずしも軸C3に限らず、これに近傍の平行な軸を中心として回転してもよい。この回転中心軸は、第2ローラ100の側面視で外周で囲まれ円形の範囲内に設定すると、回転半径を十分に小さく設定することができ、好適である。また、回転する方向は、加工ツール20aの進行方向と逆向きとすることにより、フランジ30における進行方向加工中の変形部31(図7参照)の変形度合いが大きくても干渉する懸念がない。
また、図12の二点鎖線部に示すように、副支持部112を第3ローラ102の軸C4が第2ローラ100の軸C3と一致又は平行になる方向に90°回転させる機構としてもよい。
さらに、位置設定手段106の作用により支持機構104を移動して、第2ローラ100の外周面100aでフランジ30をさらに押圧する。これにより、アウタパネル12、インナパネル14及びフランジ30を第1ローラ34及び第2ローラ100で挟み込む(ステップS5)。
この後、加工ツール20aをフランジ30に沿って移動させながら第2回目のロールヘミング加工を行い(ステップS6)、加工を終了する。
次に、図13に示すように、第2の変形例に係る加工ツール20bにおいては、第1ローラ34、第2ローラ100、第3ローラ102、支持機構104及びブラケット114は加工ツール20aと同様に構成されている。また、加工ツール20bは、位置設定手段106に相当する円弧スライド機構130と、ベース部108に対して上下方向にスライド可能であって第1ローラ34を軸支するスライド部108aと、該スライド部108aを円弧スライド機構130の方向に向かって押圧する押圧機構136とを有する。
円弧スライド機構130は、曲げ基点Pを中心とした半径Rの円弧状の長孔132aを有する円弧支持部132と、長孔132aに嵌合する小さい円弧状のスライダ134と、シリンダ128とを有する。円弧支持部132は、一端がベース部108の先端上面に固定されており、曲げ基点Pを中心として90°以上の円弧を形成するようにワークWの内側方向に向かって突出している。スライダ134は長孔132aに隙間なく当接しながらスライド可能に係合しており、ボルト114cによりブラケット114の一部と固定されている。シリンダ128のチューブ側端部はベース部108の一部に回転自在に軸支されている。シリンダ128のロッド128a先端はピボット114bと接続されている。
押圧機構136は、ベース部108の先端下方部に設けられ、回転・ねじ機構等によりスライド部108aを上方に押圧することができ、これにより第1ローラ34と第3ローラ102によって挟まれたフランジ30を押圧することができる。なお、押圧機構136によるスライド部108aの進退量を適当な手段により検出し、該進退量に応じてロボット18の位置を調整し、第1ローラ34とワークWとの相対的な位置が一定となるように制御してもよい。
このような加工ツール20bでは、シリンダ128のロッド128aが伸縮することにより、スライダ134が長孔132aに沿って円弧状にスライドし、支持機構104はスライダ134と一体的に移動することとなり、曲げ基点Pを中心とした円弧運動をする。したがって、ロッド128aを中程度の延出とすることにより支持機構104を曲げ基点Pを中心として45°傾動させることができ、第1回目のロールヘミング加工を行うことができる。
また、ロッド128aを十分に延出させることにより、支持機構104を曲げ基点Pを中心として90°傾動させることができ(図13の二点鎖線参照)、第2回目のロールヘミング加工が行われる。加工ツール20bにおいては、1つのアクチュエータ(つまり、シリンダ128)の動作で支持機構104の向き及び姿勢を設定することができ、機械的構成及び制御手順が簡便である。さらに、押圧機構136の作用により、フランジ30に押圧力が加えられるため、曲げ応力を屈曲部12aの近傍に集中させることができる。なお、加工ツール20bでは、第3ローラ102を軸C3中心に90°回転させてフランジ30から退避させる際には、一度、加工ツール20bをフランジ30の延在方向端部から抜き出し、環状溝102bからフランジ30を離脱させておくとよい。また、環状溝102bは省略した構成にしてもよい。
図14に示すように、第3の変形例に係る加工ツール20cは、前記加工ツール20における前記第2ローラ36と同じローラと、第1ローラ34に相当する第1ローラ250とを有する。
第1ローラ250は、第1延在部32aの先端近傍に軸支され、第1延在部32aの延在方向と平行に設定されている。第1ローラ250は、軸C1を中心とする円柱部250aと、該円柱部250aの基部側と連続的且つ滑らかにつながっている環状円弧部250bとを有する。環状円弧部250bは断面略90°の円弧であり、この円弧は一端が円柱部250aの端部と連続しており、他端は軸C1に対して直角な向きとなっている。
このような第1ローラ250を有する加工ツール20cを用いることにより、前記ステップS4に相当する第1回目のロールヘミング加工を行う際、図14に示すように、アウタパネル12の屈曲部12aが環状円弧部250bに支持されながら丸みを帯びた形状に形成される。
また、前記ステップS6に相当する第2回目のロールヘミング加工を行う際には、図15に示すように、アウタパネル12の下面に円柱部250aの上面部が当接される。該円柱部250aと外周面36eが対向してアウタパネル12、縁部14a及びフランジ30の3枚を確実に挟み込み、押圧して一体化させることができる。円柱部250aの軸方向長さは第2ローラ36の第2ローラ36の幅よりも充分長く設定されており、しかも第2ローラ36は円柱部250aの軸方向長さの範囲内でフランジ30を押圧可能であって、アウタパネル12の下面に加圧痕が付くことが一層確実に防止される。
図16に示すように、第4の変形例に係る加工ツール20dでは、第1ローラ34及び第2ローラ36がそれぞれ両端支持構造で支持されている。つまり、第1ローラ34の一端は第1延在部32aで軸支され、他端は該第1延在部32aとともにU字形状をなす副延在部252により軸支されている。
第2ローラ36は、U字状の軸受部材254の2本の延在部254a及び254bで両端が軸支されている。軸受部材254の第1支軸256aには第1シリンダ38a及び第2シリンダ38bのロッドが軸支され、第2支軸256bには第3シリンダ38c及び第4シリンダ38dのロッドが軸支されている。このように、第1ローラ34及び第2ローラ36を両端支持することにより、一層安定的にロールヘミング加工を行うことができる。
なお、第1〜第4の変形例に係る加工ツール20a〜20dによれば、第3ローラ37又は102の作用により、曲げ応力を屈曲部12aの近傍に集中させることができるという加工ツール20と同様の作用や、それにともない浮き上がりや巻き込みを防止するという効果等を有し、基本的に加工ツール20と同様の作用を奏することはもちろんである。
なお、本実施の形態に係るロールヘミング加工方法及びロールヘミング加工装置10によってロールヘミング加工を行う適用箇所としては、例えば図17に示すように、車両260におけるフロントホイールハウス縁部262a、リアホイールハウス縁部262b、ドア縁部262c、ボンネット縁部262d及びトランク縁部262eを挙げることができる。
上述の説明では、ロールヘミング加工を行う際、加工テーブル16とロボット18とを同期させながら協調動作させるものとして説明したが、ロールヘミング加工では、加工ツール20、20a〜20dが屈曲部12aに対して相対的に動作すればよいことから、加工テーブル16又はロボット18のいずれか一方のみを動作させるようにしてもよい。
また、加工ツール20を並べて2台設け、このうち移動方向に先行する1台を第2ローラ36が図2に示す位置となるように設定し、他の1台を第2ローラ36が図6に示す位置となるように設定することにより、前記ステップS4及び前記ステップS6における第1回目及び第2回目のロールヘミング加工を連続的に行うようにしてもよい。
さらに、上記の説明では、アウタパネル12の屈曲部12aでインナパネル14を挟み込んで一体化する実施例について説明したが、ロールヘミング加工方法及びロールヘミング加工装置10は、インナパネル14を省略した状態でアウタパネル12を折り曲げるだけの加工に対して適用してもよく、またインナパネル14は複数枚でもよいことはもちろんである。
本発明に係るロールヘミング加工方法及び加工装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。