以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の第1実施形態について図1から図12を用いて説明する。図1は本実施形態に係る部品実装装置全体の斜視図、図2は構成全体のブロック図、図3は搭載ヘッドの構成図、図4はロードセル配置図、図5は搭載ヘッドとロードセルとCPUとの関係を表すブロック図、図6はローパスフィルタの回路図、図7はローパスフィルタの周波数特性図、図8は部品の圧着搭載を表すフローチャート、図9は搭載ヘッド動作とロードセル出力との関係を表すタイミングチャート、図10は本実施形態の搭載ヘッドの構成図、図11はオートフィルタサーチのフローチャート、図12は実際のロードセルの出力値に基づく部品加圧結果を表す図である。
部品実装装置全体について、図1と図2を用いて、詳細に説明する。
部品実装装置100は、搭載ヘッド110と、部品実装装置100の前部に配設されるX軸移動機構160と、Y軸移動機構170と、部品実装装置100中央部から少し後方で左右方向に延在する回路基板搬送路180と、部品搭載カメラ198と、部品実装装置100の前部(図示の下側)に配設され、基板104に実装される部品102を供給する部品供給部200と、コントローラ212等(図2)を格納している本体210と、を有する。
前記搭載ヘッド110は、吸着ノズル142を垂直方向(Z軸方向)に昇降可能に移動させるZ軸移動機構(図示せず)を備え、また吸着ノズル142をノズル軸(吸着軸)を中心に回転させるθ軸移動機構(図示せず)を備えている。また、搭載ヘッド110には、基板104上に形成された基板マークを撮像する基板認識カメラ158が搭載されている。この搭載ヘッド110の構造については更に詳しく、後述することとする。
前記X軸移動機構160は、X軸移動機構の駆動源であるX軸モータ162により、搭載ヘッド110をX軸方向に移動することができる。
前記Y軸移動機構170は、Y軸移動機構の駆動源であるY軸モータ172により、搭載ヘッド110を備えるX軸移動機構160をY軸方向に移動することができる。
前記回路基板搬送路180は、複数の部品実装装置と実装ラインを構成したときなどにおいて、両側の部品実装装置からの基板104の受け取り、受け渡しをするためのものであり、回路基板104を部品実装装置100の所定の位置に移動・搬送することができる。
前記部品認識カメラ198(撮像手段)は、部品供給部200の測部に設けられ、吸着ノズル142に吸着された部品102を下方から撮像するように配置されている。
前記本体210は、コントローラ212と、記憶装置214と、表示装置216と、キーボード218と、マウス220と、画像認識装置222と、を有する。
前記コントローラ212は、例えば、装置全体を制御するCPUなどのマイクロコンピュータであり、RAMとROMなどを有する。図2のブロック図に示す如く、各構成要素に接続されて、部品実装装置100全体を制御することができる。
前記記憶装置214は、例えば、フラッシュメモリなどで構成され、キーボード218とマウス220により入力された部品データ、および図示しないホストコンピュータから供給される部品データなどを格納するのにも用いることができる。
前記表示装置(モニタ)216は、例えば、部品データ、演算データ、及び部品認識カメラ198で撮像した部品の画像などをその表示面に表示することができる。
前記キーボード218とマウス220は、例えば、部品データなどのデータ入力をするために用いることができる。
前記画像認識装置222は、部品認識カメラ198に接続され、吸着ノズル142に吸着された部品102の画像認識を行うもので、A/D変換器224、CPU226及びメモリ228から構成することができる。部品認識カメラ198から出力される部品102のアナログ画像信号を、A/D変換器224によりデジタル信号に変換してメモリ228に格納して、CPU226が前記画像データに基づいて吸着された部品102の認識を行う。すなわち、画像認識装置222は、部品102の中心と吸着角度を演算し、部品102の吸着姿勢を認識することができる。また、画像認識装置222は、基板認識カメラ158で撮像された基板マークの画像データを処理して基板マーク位置を演算する機能も有する。これら2種類の画像データを処理して、両方の補正データをコントローラ212へ転送する機能も有する。
次に、各構成要素である、搭載ヘッド110、基板搭載テーブル184、フィルタについて説明する。
最初に、搭載ヘッド110について、図3を用いて、詳細に説明を行う。
搭載ヘッド110は、ヘッドベース112に取付けられて吸着ノズル142をZ軸移動させるためのZ軸移動機構と、同じくヘッドベース112に取付けられて吸着ノズル142を回転させるθ回転機構と、Z軸移動機構によりZ軸方向に移動する垂直Z駆動部122に取付けられて部品102に圧力をかけるためのボイスコイルモータ150(以下、VCMと称する)と、を有する。
前記Z軸移動機構において、ヘッドベース112は、X軸移動機構160と接続される支持具であり、後述する上側ストッパ114を有する。Z軸モータ116は、吸着ノズル142を昇降させるZ軸移動機構の駆動源であり、ヘッドベース112の上部に取付けられる。そして、Z軸モータ116は、カップリング118を介してねじ部120に連結している。ねじ部120は、ボールねじのナット126と回動可能に連結しており、ナット126には垂直Z駆動部122が固定される。垂直Z駆動部122は、後述する下側ストッパ124を有して、ヘッドベース112との間にリニアガイド128を備えている。従って、Z軸モータ116によりねじ部120が回転すると、垂直Z駆動部122がスムーズにZ軸方向に上下動する。
前記θ軸移動機構、および、吸着ノズル142において、ヘッドベース112の上部には、θ軸回転機構の駆動源であり、吸着ノズルをそのノズル中心軸(吸着軸)を中心にして回転させることで部品102を回転動作させるθ軸モータ130と、θ軸モータ130の動力を垂直回転駆動シャフト134に伝えるベルト132と、垂直回転駆動シャフト134と、スプライン軸受とベアリングで構成された垂直回転駆動部軸受136と、が取付けられている。垂直回転駆動シャフト134は、ノズルシャフト138と同軸一体であり、垂直回転駆動シャフト134に連動してノズルシャフト138が回転する。ノズルシャフト138は、後述する上側ストッパ146と、下側ストッパ148とを有し、垂直Z駆動部122に設けられたボールブッシュ144により保持されている。このためノズルシャフト138は、Z軸方向およびθ軸方向にスムーズに動作可能である。ノズルシャフト138の下方の先端には、ノズルチャック機構140があり、吸着ノズル142を保持、交換できる構造となっている。吸着ノズル142は部品102の吸着保持が自在であり、基板104に部品102を搭載することができる。
前記VCM150は、部品102に対する加圧用に用いられ、垂直Z駆動部122に取付けられている。VCM150は、垂直Z駆動部122に固定されているコイルからなる固定子152と、ノズルシャフト138に取付けられている永久磁石からなる可動子154と、から構成される。このためノズルシャフト138はVCM150の駆動により上下動作可能である。すなわち、VCM150へ入力される電圧が大きければ、大きな力が発生して長い距離の移動が実現されるが、移動がなければ、入力電圧に応じた加圧をすることができる。ここで、固定子152とヘッドベース112との間のノズルシャフト138上には、上側ストッパ146が取付けられている。VCM150が上方に大きく駆動しようとする場合には、上側ストッパ146がヘッドベース112の上側ストッパ114に当接することとなり、VCM150の上方への移動ストロークが適切な範囲に規制される。同様に、可動子154と垂直Z駆動部122との間のノズルシャフト138上には、下側ストッパ148が取付けられている。VCM150が下方に大きく駆動しようとする場合には、下側ストッパ148が垂直Z駆動部122の下側ストッパ124に当接することとなり、VCM150の下方への移動ストロークが適切な範囲に規制される。
次に、基板搭載テーブル184について、図3と図4を用いて説明する。なお、図4においては、説明の容易化のため、基板搭載テーブル184が透明化されている。基板搭載テーブル184は、回路基板搬送路180により所定の位置に基板104が搬送されてきた場合に基板104を固定端子182で該基板搭載テーブル184上に固定することで、基板104の所定の位置に正確かつ安定した部品102の実装を行なうことができる。基板搭載テーブル184の下部には荷重検出器、本実施形態では例えばロードセル186が使用され、基板搭載テーブル184の4隅に配置固定される。ロードセル186の下側にはロードセル取付け台188が接続される。ロードセル取付け台188には、ロードセル186に過負荷がかかり、ロードセル186がたわみ過ぎて破壊されることを防止するためのロードセルストッパ190が設けられる。そして、ロードセル186は、ロードセル186の出力信号を増幅するロードセルアンプ192に接続される。
以上述べてきた、搭載ヘッド110と、ロードセル186と、部品実装装置100のコントローラ212との関係を、図5を用いて説明する。搭載ヘッド110は、Z軸モータ116と、θ軸モータ130と、VCM150と、各ドライバ116a、130a、150aと、Z軸エンコーダ116bと、θ軸エンコーダ130bと、を有する。本体210は、ロードセル186と、ロードセルアンプ192と、動作の制御を行うコントローラ212と、を有する。Z軸ドライバ116aとθ軸ドライバ130aは、コントローラ212に接続され、コントローラ212はZ軸ドライバ116aとθ軸ドライバ130aを介してZ軸エンコーダ116bとθ軸エンコーダ130bの出力値を参照でき、コントローラ212の指令に基づいてZ軸モータ116とθ軸モータ130を動作させる。ロードセル186に接続されたロードセルアンプ192は、VCMドライバ150aに接続される。コントローラ212は、VCMドライバ150aを介してロードセルアンプ192から出力されるロードセル186の出力値をコントローラ212で処理する。処理した結果に基づいて、コントローラ212はVCMドライバ150aへ指令を送り、VCM150を動作させる。
次に、本実施形態の特徴的な要素であるフィルタについて、詳細に説明する。本実施形態におけるフィルタは、図6に示すローパスフィルタ230であり、コントローラ212上で実現されている。部品実装の制御に影響しない高い周波数成分を取り除くことを目的とするために、ローパスフィルタ230は、制御の際のロードセル186の出力値を取り込むサンプリング周波数から算出される。本実施形態では、ロードセル186の出力値の読み込みサンプリング時間を5msecとしているので、サンプリング周波数は200Hzとなる。よって1つのローパスフィルタ230aの遮断周波数は、例えば、余裕を見て250Hzと設定することができる。ローパスフィルタ230の遮断周波数は、低くすると応答性が落ちるのでなるべく高いほうが望ましい。従って、250Hzの2倍の周波数である500Hzをもう1つのローパスフィルタ230bの遮断周波数とする。
図6に、本実施形態におけるローパスフィルタ230の回路図を示す。この回路は、2次のローパスフィルタであり、2本の抵抗R1、R2と、2本の容量C1、C2と、1つのオペアンプを有する。このような2次のフィルタを用いることで、1次フィルタを用いるより、急峻な高周波成分のカットが可能である。オペアンプはボルテージフォロアを構成している。なお、本実施形態では、この回路をコントローラ212上のソフトウェアで実現している。
このローパスフィルタは以下のような特性を有する。
f0=1/2/π/(C1*C2*R1*R2)1/2 ・・・・(1)
ζ =(1/2)*(C2/C1)1/2*(R1+R2)/(R1*R2)1/2 ・・・・(2)
ここで、f0は遮断周波数(Hz)で、ζは周波数f0におけるローパスフィルタの肩特性を表す減衰定数である。
R1=R2(=R)としているので、式(1)、(2)は、それぞれ式(3)、(4)となる。
f0=1/2/π/R/(C1*C2)1/2 ・・・・(3)
ζ = (C2/C1)1/2 ・・・・(4)
ローパスフィルタが本実施形態ではバタワース型であるので、ζ=0.707となり、式(3)、(4)より、C1、C2は式(5)、(6)のように定められる。
C1=1/21/2/π/R/f0 ・・・・(5)
C2= (C1)/2 ・・・・(6)
図7(a)、(b)には、それぞれ、上記2種類の遮断周波数のローパスフィルタ230a、230bの概略的な周波数特性を示す。
このように、2種類のフィルタを適用する場合でも、回路をソフトウェアで実現しているので、コントローラ212上で複数のフィルタを試すことができ、部品実装装置100のハードウェアの変更にかかる費用と開発期間を大幅に削減可能である。
次に、本実施形態の作用について説明する。
部品実装時において、本実施形態に係る部品実装装置100は、部品102を吸着して、部品100を移動させて、部品100を圧着搭載するという動作を行うので、最初に、部品の吸着動作について説明する。
まず、搭載ヘッド110を、X軸移動機構160、Y軸移動機構170を動作させて部品供給部200の上方の所定位置に移動させる。そして、Z軸モータ112を駆動させ垂直Z駆動部122を下降させて、吸着ノズル142を部品102に高速で近づけていく。この時、VCM150に電圧を入力して下方向にノズルシャフト138を動かし(このときのVCM150への入力電圧は−側に印加する)、ノズルシャフト138の下側ストッパ148を垂直Z駆動部122の下側ストッパ124に突き当てておく。
垂直Z駆動部122は高速下降を続け、吸着ノズル142が搭載する部品102の吸着面高さの直前まで近づいたときに垂直Z駆動部122を急速停止させる。このとき、可動子154とノズルシャフト138の重さと減速時の加速度により慣性の力が下方向に働くが、下側ストッパ148により位置が規制されているためにVCM150で発生している力以上の慣性力が下方向に働いても吸着ノズル142先端の位置に変化はなく、吸着ノズル142も直ちに停止する。
吸着ノズル142が停止維持された後に、VCM150への入力電圧を+側に増加させVCM150に上向きの力を発生させる。すなわち、垂直Z駆動部122の下側ストッパ124に、下側ストッパ148から力が加わらないように、部品102との接触時の衝突荷重を低減させるようにVCM150の出力値を設定する。
上記VCM150の出力値を維持したまま、Z軸モータ116を駆動させて垂直Z駆動部122を低速で下降させる。このとき、VCM150の制御は部品102の圧着搭載とは異なり、オープンループ制御がなされる。
目標の部品102の吸着面に吸着ノズル142を下降させて、Z軸モータ116の動作を停止する。
その後、エジェクタの電磁弁(いずれの図にも図示せず)をオンし、部品吸着のためのバキュームエアを吸着ノズル142の吸着孔に発生させ、部品102を吸着する。
次に、部品102の移動動作について説明する。
部品102を吸着した後に、Z軸モータ116を動作させて垂直Z駆動部122を上昇させることにより、吸着ノズル142を上昇させる。そして、X軸移動機構160とY軸移動機構170とにより搭載ヘッド110を部品認識カメラ198上部に移動させて、部品102を部品認識カメラ198で撮像する。
撮像された部品102の画像は、画像認識装置222で画像処理されて、その補正データがコントローラ212へ転送される。コントローラ212は、記憶装置214から基板補正データと当該部品102の部品データを読み出す。ここで、基板認識カメラ158で撮像された基板マークによる基板104の基板補正データ(Δx、Δy、Δθ)は記憶装置214に予め格納されている。そして、この部品データと、前記転送された画像認識装置222で演算された補正データである部品102の中心と部品102の傾きとを基にして、部品102の搭載位置と吸着姿勢とを認識する。
部品搭載位置と部品102の中心と吸着中心との間に位置ずれ、および、角度ずれが検出されると、これらのずれ量を補正するように、X軸モータ162、Y軸モータ172、θ軸モータ130が駆動されて、部品102が基板104の所定位置上方に正しい姿勢(基準角度)で移動される。
次に、部品102の圧着搭載動作について説明する。部品102の吸着動作と重複部分を有するが、図8から図10を用いて詳細に説明する。なお、Z軸高さゼロとは、ノズルシャフト138の下側ストッパ148と垂直Z駆動部122の下側ストッパ124とが当接した状態で、基板104の表面に部品102を負荷をかけずに載せたときの垂直Z駆動部122の高さを定義する。そして、その位置を基準とした垂直Z駆動部122の移動をZ軸高さとして図9に示し、以下に説明する。
XY移動後のZ軸高さ(Z3とする)からZ軸モータ116を駆動させ垂直Z駆動部122を下降させて、部品102を吸着した吸着ノズル142を基板104の所定の場所に高速で近づけていく(図8のステップS2)。この時、図9のT1最初のVCM出力値に示す如く、VCM150に電圧を入力して下方向にノズルシャフト138を動かし(このとき、VCM150への入力電圧は−側に印加しており、例えば、部品搭載時の所定圧力が得られる出力値V2とする)、ノズルシャフト138の下側ストッパ148を垂直Z駆動部122の下側ストッパ124に突き当てておく。この状態の搭載ヘッド110の様子が図10である。
垂直Z駆動部122の高速下降を続け(図8のステップS4)、搭載する部品102が搭載面高さの直前(このときのZ軸高さをZ1とする)で垂直Z駆動部122を急速停止して維持させる(図8のステップS6)。このとき、可動子154とノズルシャフト138の重さと減速時の加速度により慣性の力が下方向に働くが、下側ストッパ148により位置が規制されているためにVCM150で発生している力以上の慣性力が下方向に働いても吸着ノズル142先端の位置に変化はなく、吸着ノズル142も直ちに停止する。
吸着ノズル142が停止維持された後に、VCM150の入力電圧を+側に増加させてVCM150の出力値を増加させる(図8のステップS8)。そして、VCM150への入力電圧がゼロ、すなわち、VCM150の出力値がゼロとなった時点で(図8のステップS10)、図9のT2最初のZ軸高さに示す如く、Z軸モータ116を駆動させて垂直Z駆動部122を、T1時の低下速度に比べて低速で、Z1から下降させる(図8のステップS12)。
VCM150の出力値が増加して、VCM150に上向きの力が発生するようになったとき、すなわち、垂直Z駆動部122の下側ストッパ124に、下側ストッパ148から力が加わらないようになったとき、そのVCM150の出力値(V1とする)を維持する(ステップS14)。この出力値がV1となることで、部品102と基板104との接触時の衝突荷重を低減させることができる。
吸着ノズル142の吸着した部品102が搭載される基板104に接触すると、基板104を支える基板搭載テーブル184に圧力が発生する。すると、その力がロードセル186に伝わり、ロードセルアンプ192より信号が出力されて、部品102のZ軸高さゼロの接触タイミングT0が検出される(図8のステップ16)。この接触タイミングT0で、今度はVCM150への入力電圧を−側に増加させて、すなわちVCM150の出力値を減少させて(図8のステップS18)、VCM150の出力値を上向きから下向きに切替えて吸着ノズル142から部品102に圧力を加えていく。そして、垂直Z駆動部122は、予め設定したZ軸高さであるZ軸高さゼロより低い高さ(Z2とする)、例えば、0.2mm下の高さまで下降し、動作を停止する(図8のステップS20、S22)。
一方、VCM150への入力電圧は−側に増加していき、VCM150の出力値が目標値であるV2となったら、その出力値V2を維持する(図8のステップS24、S26)。なお、VCM150はロードセル186の出力値が目標荷重であるかをクローズループ制御を形成して判断するので、出力値V2が得られるときには、ロードセル186からは目標荷重に対応した所定の出力L1が得られる。なお、図9のT2の最後にZ軸高さとVCM出力値が同時にそれぞれの目標値Z2、V2となっているが、これは、Z軸高さがZ2となるタイミングで、VCM出力値が目標値V2となるようにVCM150への入力電圧の減少比率を適合させた結果である。
図9のT3の最初に示す如く、Z軸高さとVCM出力値が共に目標値となっていることを受けて、所定の時間T3の間、Z軸高さZ2とVCM出力値V2を維持する(図8のステップS28)ことで加圧される。この間においては、ロードセル186の出力L1を一定にするようにV2が維持されるものである。T3経過後、バキュームエアを停止させて、Z軸モータ116を動作させ垂直Z駆動部122を上昇させる(図8のステップS30)。そして、X軸移動機構160とY軸移動機構170とにより、搭載ヘッド110を次の部品102の吸着位置へ移動させる。
次に、搭載ヘッド110の停止時、例えば、部品実装前において、本実施形態に係る部品実装装置100が行う、本実施形態の特徴的なオートフィルタサーチについて、図11と図12とを用いて以下に詳細に説明する。本実施形態で適用するローパスフィルタ230は、図6に示す如く、バタワース型の2次のローパスフィルタ230である。本実施形態においては、ローパスフィルタ230をソフトウェアにより実現しているので、オートフィルタサーチ全体を含むソフトウェアを記憶装置214から予めコントローラ212に読み出しておき、実行するものである。
まず、部品実装装置100のXYZθ軸の動作がなく部品実装前で、搭載ヘッド110が停止している状態において、ロードセル186の出力値を一定時間、例えば3秒間取り込むことができる(図11のステップS40)。
この一定時間取り込んだ各値について、例えば2種類のローパスフィルタ処理を行う(図11のステップS42)。ローパスフィルタの周波数は、制御の際のロードセルの出力値を取り込むサンプリング周波数から算出して、制御に影響しない高い周波数成分についてフィルタリングすることを目的とする。ここでは、遮断周波数の異なる2種類のローパスフィルタが3秒間の出力値に適用される。
次に、250Hz、500Hzの2種類のローパスフィルタ230a、230bが適用された結果データに対して、ローパスフィルタ230a、230b毎にロードセル186の出力値の振れを示す標準偏差3σを求める(図11のステップS44)。求めた結果は、例えば、250Hzのローパスフィルタ230aでは15gで、500Hzのローパスフィルタ230bでは40gである。
上記結果と使用環境や使用部品などを比較考慮して(図11のステップS46)、本実施形態では、上記標準偏差3σの最も振れ値の小さい、遮断周波数250Hzのローパスフィルタ230aが選択されたフィルタとして決定される(図11のステップS48)。
従って、部品実装時に、ロードセルアンプ192の出力値がコントローラ212に入力された場合には、コントローラ212内で、250Hzのローパスフィルタ処理を行う。そして、その処理されたデータを荷重制御のロードセル186の出力値とみなして、その出力値に基づいてコントローラ212がVCM150の出力値を制御して荷重調整する。具体的には、オートフィルタサーチで決定されたフィルタ定数を、部品実装時に起動されるプログラムに書き込むことで、上述した制御を容易に実行することが可能である。本実施形態では、コントローラ212上で動くソフトウェア自身がフィルタの選択手段として機能することとなる。
本実施形態において、250Hzの遮断周波数を有するローパスフィルタ230aを適用して部品を加圧したときの結果を図12(b)に示す。図12(a)は同一の部品で同一の加圧条件であるが、ローパスフィルタ230aがない状態で加圧したときの結果を示している。いずれも、部品を約0.6秒間、150gから200gに至る荷重加圧を実施したが、本実施形態では、加圧精度を損なわずに、すなわち高精度に、そして安定した加圧が実行されている。
従って、XYZθ軸が停止されている部品実装前のロードセル186の出力値に複数のローパスフィルタ230を適用して、その結果データについて標準偏差3σを求め、その比較検討を行うことで、部品実装装置100の使用環境にあったローパスフィルタ230を求めることが可能となる。よって、部品実装装置100の使用環境に最適なローパスフィルタを使用して搭載ヘッド110による高精度で且つ安定した加圧制御が可能である。
なお、ローパスフィルタ230をかけない状態でロードセル186の出力値の標準偏差3σを測定することも可能となるので、部品実装装置100の環境が設置に適合しているかを判断することも可能となる。
また、一定時間取り込んだロードセル186の出力値に対して標準偏差3σを計算し、ある一定値以上だった場合、例えば、ロードセル186の出力値が3σ=300g以上だった場合に、エラー信号を出して装置が設置されている環境が、部品実装装置100の搭載精度を確保できない環境であることをオペレータに知らせる設置環境の診断モードとして使用することも可能である。
以上、本実施形態では、ロードセル186の出力値に、遮断周波数が異なる2種類のバタワース型(多少遅延が生じても、遮断周波数より大きな周波数の減衰率が大きく、フィルタ特性の急峻で安定性の優れている)ローパスフィルタ230を適用したが、ベッセル型(フィルタ特性がやや緩やかでも、遅延が少なく高速性に優れている)のみで遮断周波数が異なるものや、バタワース型とベッセル型のフィルタを適用して比較しても本発明に含まれる。又、ローパスフィルタ230は2次だけでなく、1次や3次、4次などを適用しても良い。又、ロードセル186の出力値にFFT変換をかけて、周波数成分を求め、算出した周波数成分のピーク値に対して更に効果的なローパスフィルタ230を適用してもよい。又、ローパスフィルタ230に限らず、ノッチフィルタなどの特定の周波数のみ減衰するようなフィルタを用いても良い。
又、本実施例では、荷重検出器としてロードセル186を使用したが、荷重検出器は荷重を検出するセンサであればロードセル186に限定されるものではない。
又、オートフィルタサーチは、部品実装前だけに限られるのものではなく、搭載ヘッド110が停止している場合であれば、部品実装の途中で、定期的に行うことも本発明に含まれる。
又、オートフィルタサーチの段階だけは、フィルタをソフトウェアとして実現し、部品実装時には複数の、あるいは、1つで定数可変のハードウェアを、図5で示すVCM150とロードセルアンプ192との間に設けて、コントローラ212がフィルタの選択手段として機能して、定数とフィルタを選択する信号をハードウェアで構成されるフィルタに与えることも本発明に含まれることは言うまでもない。
又、本実施形態ではロードセル186の出力値に対して振れが最小となるローパスフィルタ230を決定したが、本発明はこれに限定されるものではない。実装部品が搭載不良を起こしづらいような、例えば、チップ抵抗、コンデンサなどの実装部品の種類などだけであれば、フィルタによる遅延を最小限とするフィルタの選択もなされるので、速度、安定性など総合的に比較してフィルタは決定されることを本発明が含むことは明白である。
又、本実施形態ではコントローラ212でロードセル186の出力値を処理していたが、本発明はこれに限られない。ロードセルアンプ192で処理し、処理した結果に基づいて、コントローラ212がロードセルアンプ192に処理方法を指示し、その処理方法に基づいて出力される結果に基づきVCM150を動作させるようにVCMドライバへ指令を送る場合や、コントローラ212の指示に基づき、VCMドライバ150aでロードセル186の出力を処理させてVCM150を動作させる場合も当然に本発明に含まれる。