JP4936763B2 - パワーユニット - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関とともにベルト式無段変速装置を備えるパワーユニットに関し、特に駆動モータによりベルト式無段変速装置が無段変速するパワーユニットに関する。
この種のパワーユニットとしては、特許文献1に開示された例がある。
特開2005−114057号公報
同特許文献1の実施形態に開示されたパワーユニットは、内燃機関のクランク室を形成するユニットケースの左片側が後方に延出して伝動ケースを構成しており、伝動ケースのクランク室と左右反対側にベルト式無段変速装置を収容する変速室が伝動ケースカバーで覆われて形成されている。
そして、ベルト式無段変速装置は、伝動ベルトが巻き掛けられるドライブプーリの可動プーリ半体を軸方向に移動して伝動ベルトの巻掛け径を変更し無段変速が行われるもので、この可動プーリ半体を移動するのに、駆動モータが用いられている。
すなわち、駆動モータの回転駆動が減速ギヤ機構とねじ機構を介して可動プーリ半体の軸方向の移動に伝達されるようになっている。
この駆動モータおよび減速ギヤ機構は、伝動ケースのクランク室と左右反対側(左側)の変速室の前部を車体外側(左側)から覆う専用のアクチュエータカバーによって支持されている。
このアクチュエータカバーは、伝動ケースカバーとは別体の部品である。
したがって、駆動モータは、車体外側のアクチュエータカバーから外側に突出するように取り付けられているため、駆動モータの外側への突出によりパワーユニット全体の小型化が妨げられ、水や泥の付着を避けることができない。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、変速用駆動モータを備えながら小型化および外観性の向上を図るとともに、同変速用駆動モータを水や泥から保護することができるパワーユニットを供する点にある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、内燃機関(30)のクランク室(40C)を形成するクランクケース(22,23a)と同クランクケース(22,23a)の一側に設けられベルト式無段変速装置(50)を収容する変速室(50C)を一部形成する伝動ケース(23)とから構成されるユニットケース(21)と、前記伝動ケース(23)を覆って前記変速室(50C)を形成する伝動ケースカバー(24)とを備え、前記ベルト式無段変速装置(50)の伝動ベルト(58)が巻き掛けられるプーリ(51)の巻掛け径を変速用駆動モータ(61)の駆動で変速駆動機構(60)を介して変更し無段変速が行われるパワーユニット(20)において、前記内燃機関(30)は、シリンダが大きく前傾しており、前記変速用駆動モータ(61)が、前記シリンダより上方で前記内燃機関のクランク室の上方に、前記伝動ケース(23)に前記クランク室(40C)のある車体内側から取り付けられて配置され、前記変速駆動機構(60)は前記変速用駆動モータ(61)から略下方の前記プーリ(51)が軸支されるクランクシャフト(40)に向けて構成され、前記変速駆動機構(60)の前側に、パワーユニットハンガ(21h)が前記クランクケース(22,23a)に突設して設けられ、
前記変速駆動機構(60)の後側に、スタータモータ(78)が前記クランクケース(22,23a)に取り付けられ、前記パワーユニットハンガ(21h)と前記スタータモータ(78)は、前記変速用駆動モータ(61)より低い位置にあるパワーユニットとした。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の内燃機関において、前記内燃機関(30)のクランク室(40C)の上には、前記パワーユニットハンガ(21h)に近い位置に前記変速用駆動モータ(61)が前記スタータモータ(78)と上下方向で重なるように並んで配置されることを特徴とする。
請求項1記載のパワーユニットによれば、ベルト式無段変速装置の伝動ベルトが巻き掛けられるプーリの巻掛け径を変更して変速を行う変速用駆動モータが、伝動ケースにクランク室のある車体内側から取り付けられるので、変速用駆動モータが車体外側に突出することがなく、パワーユニットの小型化および外観性の向上を図ることができるとともに、変速用駆動モータは車体内側にあって地面から跳ね上がる水や泥から保護され易く、水や泥の付着を回避して変速用駆動モータの耐久性の向上を容易に図ることができる。
大きく前傾したシリンダより上方に変速用駆動モータが配置されるので、変速用駆動モータの地面からの高さが高くなり、変速用駆動モータは水や泥から保護される。
これにより、水や泥の付着を回避して変速用駆動モータの耐久性の向上を図ることができる。
変速用駆動モータが内燃機関のクランク室の上に配置されるので、変速用駆動モータの下方はクランク室により保護され、変速用駆動モータを水や泥から確実に保護することができるとともに、ユニットケースの上方から変速用駆動モータを取り付けることができ、組付け作業を容易かつ確実に行うことができる。
また、変速用駆動モータは益々水や泥から保護される。
請求項3記載のパワーユニットによれば、内燃機関のクランク室の上には、パワーユニットハンガに近い位置に前記変速用駆動モータがスタータモータと上下方向で重なるように並んで配置されるので、構造的に支持強度を確保し易く、モータのような重量物がまとまってパワーユニットハンガの近くに配置されるため、パワーユニットの揺動に伴う慣性力を低減し、乗車振動を低減することができる。
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図12に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した一実施の形態に係るスクータ型自動二輪車1の側面図である。
車体前部2と車体後部3とが、低いフロア部4を介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレームは、概ねダウンチューブ6とメインパイプ7とからなる。
すなわち車体前部2のヘッドパイプ5からダウンチューブ6が下方へ延出し、同ダウンチューブ6は下端で水平に屈曲してフロア部4の下方を後方へ延び、その後端において左右一対のメインパイプ7が連結され、メインパイプ7は該連結部から斜め後方に立ち上がって所定高さで水平に屈曲して後方に延びている。
同メインパイプ7により燃料タンクや収納ボックスが支持され、その上方にシート8が配置されている。
一方車体前部2においては、ヘッドパイプ5に軸支されて上方にハンドル11が設けられ、下方にフロントフォーク12が延びてその下端に前輪13が軸支されている。
メインパイプ7の斜め傾斜部の中央付近にブラケット15が突設され、同ブラケット15に軸支されたリンク部材16を介してパワーユニット20が揺動自在に連結支持されている。
パワーユニット20は、ユニットケース21の前部に内燃機関30が構成され、内燃機関30から後方にかけてベルト式無段変速機50が配設され、その後部に減速ギヤ機構110を一体に備えたもので、減速ギヤ機構110の出力軸が後車軸114で後輪17が取り付けられる(図2参照)。
該パワーユニット20は、ユニットケース21の前部において前面上部に左右一対のパワーユニットハンガ21h,21hが前方に突出しており、前記リンク部材16の下端にピボット軸19を介してパワーユニットハンガ21h,21hが連結され、他方で揺動自在の後部において減速ギヤ機構110の後端のブラケット27aと前記メインパイプ7との間にリヤクッション18が介装されている(図1参照)。
なお、ユニットケース21の前側下部からブラケット21bが前方に突出しており、ダウンチューブ6の延出部とリンク部材6aにより連結されている。
内燃機関30は、単気筒の4ストロークサイクル内燃機関で、ユニットケース21の前面からシリンダブロック31、シリンダヘッド32およびシリンダヘッドカバー33が重ねられて略水平に近い状態にまで大きく前傾した姿勢で突出している。
シリンダヘッド32における上側の吸気ポートから上方に延出し後方へ屈曲した吸気管34にスロットルボディ35が接続され、同スロットルボディ35より後方へ延出した連結管36がユニットケース21の後半部に後輪17の左側に沿って配置されたエアクリーナ37に接続されている。
また、シリンダヘッド32における下側の排気ポートから下方に延出し後方へ屈曲した排気管38が右寄りに偏って後方へ延びて後輪17の右側のマフラー39に接続されている(図2参照)。
車体前部2は、フロントカバー9aとリヤカバー9bにより前後から、フロントロアカバー9cにより左右側方から覆われ、ハンドル11の中央部はハンドルカバー9dによって覆われる。
フロア部4はサイドカバー9eにより覆われ、また車体後部3は左右側方からボデイカバー10aおよびテールサイドカバー10bによって覆われる。
図2は、パワーユニット20およびその周辺を斜め後方から示した斜視図であり、図3は、パワーユニット20の一部省略した左側面図である。
また、図4は、パワーユニット20を図3の概ねIV−IV線に沿って切断し展開した断面図である。
ユニットケース21は、左右割りで、右ユニットケース22に対して左ユニットケースは後方に延出して伝動ケース23を構成している。
伝動ケース23は、前部右側に形成される左クランクケース部23aが右ユニットケース22と合わされてクランクシャフト40を収容するクランク室40Cを構成し、前部から後部に亘って左側に形成される伝動ケース部23bが左側から伝動ケースカバー24に覆われてベルト式無段変速機50を収容する変速室50Cを構成し、後部右側に形成される減速ギヤ部23cが減速ギヤカバー25に覆われて減速ギヤ機構110を収容する減速ギヤ室110Cを構成する。
すなわち、ユニットケース21は、左クランクケース部23aと右ユニットケース22が合わされてクランク室40Cを形成する所謂クランクケースと、変速室50Cを一部形成する伝動ケース23とから構成される。
なお、伝動ケースカバー24の左側面は、前部が吸風ダクト26とフロントLカバー27により覆われ、後部がリヤLカバー28によって覆われる。
クランク室40Cには、クランクシャフト40がユニットケース21の左右の軸受円孔22p,23pに主軸受41,41を介して回転自在に支持されてクランクウエブ40wが収容され、左右水平方向に延びた延出部のうち右延出部にはACジェネレータ42が設けられ、左延出部には変速駆動機構60とともにベルト式無段変速機50のドライブプーリ51が設けられている。
クランクシャフト40の左端は、カラー54を介して伝動ケースカバー24の軸受円孔24pに軸受43を介して軸支されている。
ドライブプーリ51は、固定プーリ半体51sと可動プーリ半体51dとからなる。
クランクシャフト40の小径に変化する段部40aから左延出部には右から軸受52、ガイドスリーブ53、固定プーリ半体51s、そして前記カラー54の順に嵌合されて、クランクシャフト40の左端面に座金55を介してボルト56により締結することにより軸受52の内輪、ガイドスリーブ53、固定プーリ半体51sの基部、カラー54を締め付け、クランクシャフト40と一体とする。
したがって、固定プーリ半体51sは、ガイドスリーブ53とカラー54とに挟まれてクランクシャフト40と一体に固定され、クランクシャフト40とともに一体に回転する。
一方、固定プーリ半体51sに右側で対向する可動プーリ半体51dは、その基部である円筒状の可動プーリハブ51dhがガイドスリーブ53に部分的にスプライン嵌合してクランクシャフト40とともに回転すると同時に軸方向に摺動自在としている。
このように左側の固定プーリ半体51sに対向する右側の可動プーリ半体51dは、クランクシャフト40とともに回転し、かつ軸方向に摺動して固定プーリ半体51sに接近・離反することができ、この両プーリ半体51s,51dの対向するテーパ面間にVベルト58が挟まれて巻き掛けられる。
図6の伝動ケース23の右側面図に示すように、伝動ケース23は、前部右側に形成される左クランクケース部23aに対して左側に形成される伝動ケース部23bが上方に大きく膨出しており、この膨出部23eの上部に変速駆動機構60の駆動源である変速用駆動モータ61が取り付けられる。
伝動ケース部23bの前部の上方への膨出部23eの右側面上部にモータ取付座23mが形成されており、その中央には円孔23mhが穿孔されている。
このモータ取付座23mに変速用駆動モータ61が右側(車体内側)から取り付けられる。
変速用駆動モータ61の駆動軸61sは、中央の円孔23mhを貫通して左方の変速室50Cに突出する。
したがって、変速用駆動モータ61は、左クランクケース部23aと右ユニットケース22が形成するクランク室40Cの上方に配置される。
変速用駆動モータ61は、大きく前傾したシリンダブロック31により上方に位置する(図3参照)。
図5の伝動ケース23の左側面図を参照して、円孔23mhの直ぐ斜め下に軸受凹部23gaが形成され、さらにその前側斜め下方にもう一つの軸受凹部23gbが形成されている。
一方、伝動ケースカバー24には、その右側面図である図7を参照して、伝動ケース23の軸受凹部23gaと軸受凹部23gbに対向して軸受凹部24gaと軸受凹部24gbが形成されている。
図4に示すように、対向する軸受凹部23gaと軸受凹部24gaに軸受62,62を介して第1減速ギヤ軸63sの両端が軸支されており、同第1減速ギヤ軸63sと一体の大径ギヤ63aが、前記変速用駆動モータ61の駆動軸61sに形成された駆動ギヤ61aと噛合している。
同様に、対向する軸受凹部23gbと軸受凹部24gbに軸受64,64を介して第2減速ギヤ軸65sの右端と左側部が軸支されており、同第2減速ギヤ軸65sと一体の大径ギヤ65aが、前記減速ギヤ軸63sと一体の小径ギヤ63bと噛合している。
一方、前記クランクシャフト40に嵌着された軸受52の外輪に基端部を支持された円板ボス部材66に雌ねじ部材67がボルト68により固着されており、雌ねじ部材67のフランジ部に大径ギヤ67aが形成されていて、同大径ギヤ67aが前記第2減速ギヤ軸65sと一体の小径ギヤ65bと噛合する。
この雌ねじ部材67の円筒部67sの内周面に雌ねじ(スクリューねじ)が形成されている。
前記可動プーリ半体51dを支持して軸方向に摺動自在の可動プーリハブ51dhの外周に嵌合された軸受69を介して雄ねじ部材70が支持され、同雄ねじ部材70の円筒部70sが、雌ねじ部材67の円筒部67sの内側にあって、円筒部67sの内周面の雌ねじに円筒部70sの外周面に形成された雄ねじが螺合している。
雄ねじ部材70は、円筒部70sの左端が雌ねじ部材67の円筒部67sの左開口端より左方に露出しており、同左端からフランジ部70aが可動プーリ半体51dの背面に沿って遠心方向に延出している。
雄ねじ部材70のフランジ部70aの外周部に環状部材71が固着され、同環状部材71の後部が、後方に延びて雌ねじ部材67の大径ギヤ67aの外側に回り込むように軸方向右方に延出しており、その延出部71aを伝動ケース23の変速室50C内に突出した上下一対のガイド片72,72が、挟むようにして延出部71aの回転を規制するとともに、軸方向の移動を案内するように構成されている(図4,図5参照)。
したがって、可動プーリ半体51dと一体の可動プーリハブ51dhに軸受69を介して支持された雄ねじ部材70は、ガイド片72,72に回転が規制されて軸方向にのみ摺動することができる。
変速駆動機構60は、以上のように構成されており、変速用駆動モータ61が駆動して駆動軸61sに形成された駆動ギヤ61aが回転すると、駆動ギヤ61aと噛合する第1減速ギヤ軸63sの大径ギヤ63aが小径ギヤ63bとともに減速回転し、この小径ギヤ63bと噛合する第2減速ギヤ軸65sの大径ギヤ65aが小径ギヤ65bとともにさらに減速回転し、この小径ギヤ65bと噛合する雌ねじ部材67の大径ギヤ67aがまたさらに減速回転し、雌ねじ部材67が回転する。
雌ねじ部材67が回転すると、これと螺合した雄ねじ部材70が回転を規制されているので、ねじ機構により軸方向に移動する。
雄ねじ部材70の軸方向の移動は、軸受69を介して可動プーリハブ51dhを可動プーリ半体51dと一体に軸方向に移動し、可動プーリ半体51dを固定プーリ半体51sに接近・離反させることができる。
なお、可動プーリ半体51dは、これを一体に支持する可動プーリハブ51dhがクランクシャフト40と一体のガイドスリーブ53にスプライン嵌合しているので、クランクシャフト40とともに回転しながら軸方向に移動することになる。
このように変速用駆動モータ61の正逆転駆動により可動プーリ半体51dが固定プーリ半体51sに対して接近・離反することで、両プーリ半体51s,51dの対向するテーパ面間に巻き掛けられるVベルト58の巻掛け径が変更されて無段変速が行われる。
伝動ケース23の前部の上方への前記膨出部23eに対応する伝動ケースカバー24の膨出部24eには、伝動ケースカバー24の前部上壁から斜め下方へ筒状突出部24fが形成されており(図7参照)、筒状突出部24fの下部は第2減速ギヤ軸65sを軸支する軸受凹部24gbと重なり連通している(図4参照)。
この筒状突出部24fの上端開口に回転型ポテンショメータである回転センサ75が開口を塞ぐように取り付けられ、回転センサ75の回転作動軸75aが筒状突出部24f内を斜め下方に延びて下端部が軸支され、回転作動軸75aの下部にウォームホイール76wが嵌着されている(図3参照)。
第2減速ギヤ軸65sの軸受64より軸受凹部24gb内に突出した左端部にウォームギヤ65wが形成されていて、同ウォームギヤ65wがウォームホイール76wと噛合してウォームギヤ機構が構成されている。
したがって、変速用駆動モータ61が駆動して前記減速ギヤの噛合いを介して第2減速ギヤ軸65sが回転すると、上記ウォームギヤ機構を介して回転作動軸75aが回転し、その回転量を回転センサ75が検出する。
回転センサ75が検出する回転量は、可動プーリ半体51dの軸方向移動量すなわちドライブプーリ51へのVベルト58の巻掛け径の変動量に相当する。
したがって、回転センサ75はベルト式無段変速機50の変速状態を検出することになる。
ドライブプーリ51の固定プーリ半体51sの背面(左面)には冷却ファン77が突出形成されており、伝動ケースカバー24の同冷却ファン77が対向する部分には吸風口24rが複数穿孔されている。
したがって、クランクシャフト40の回転で固定プーリ半体51sが冷却ファン77とともに回転し、吸風口24rより冷却空気を変速室50C内に吸入することができる。
なお、図2(および図3)に示すように、左クランクケース部23aと右ユニットケース22が形成するクランク室40Cの上方には、前記変速用駆動モータ61とともに、スタータモータ78が上下に並んで配設されている。
スタータモータ78は、変速用駆動モータ61の下方に互いの駆動軸を左右方向に平行にした姿勢で、右ユニットケース22の右側の幾らか後方に膨出した膨出部22eの左側面に左側から取り付けられており、図示されないが、スタータモータ78の駆動軸の回転はクランク室40C内でギヤ機構を介してクランクシャフト40と一体のギヤ40g(図4参照)に伝達され、内燃機関30の始動が実行される。
このように、クランク室40Cの上方には、変速用駆動モータ61とスタータモータ78が隣接して配置されており、変速用駆動モータ61とスタータモータ78は、比較的ユニットケース21の前部を軸支するパワーユニットハンガ21hに近い位置にある。
次に、パワーユニット20の後部の構造について説明する。
ベルト式無段変速機50のドライブプーリ51に対応するドリブンプーリ81は、固定プーリ半体81sと可動プーリ半体81dとからなり、互いに対向して、ともに被動軸82に支持されている。
被動軸82は、伝動ケース23の後部の軸受円孔23q(図5,図6参照)と伝動ケースカバー24の軸受凹部24q(図7参照)と減速ギヤカバー25の軸受凹部25q(図8参照)の3箇所にそれぞれ軸受83,84,85を介して回転自在に軸支されている(図4参照)。
図4を参照して、被動軸82の左側部分は段部から外径が若干縮径した小径部82aが形成されていて、同小径部82aに軸受86、支持スリーブ87、カラー88の順に嵌合されて端部にナット89が螺着されて一体に締結されている。
伝動ケースカバー24の軸受凹部24qとカラー88との間に前記軸受84が介装されている。
支持スリーブ87には遠心式クラッチ90の椀状をしたクラッチアウタ91の基部が固着されて被動軸82と一体に回転するようになっている。
被動軸82のクラッチアウタ91より右側の伝動ケースカバー24に覆われる部分の外周には、固定プーリ半体81sを支持する円筒状をした固定プーリハブ95が前記軸受86と軸受96の介装により被動軸82と相対回転自在に軸支されている。
この固定プーリハブ95の左端に遠心式クラッチ90のクラッチインナ92である支持プレート92aがナット97により固定されている。
支持プレート92aには枢軸92bによりアーム92cが基端部を軸支されており、同アーム92cの先端にクラッチシュー92dが固着されている。
アーム92cはクラッチシュー92dがクラッチアウタ91の内周面から離れる方向にばね92eにより付勢されている。
このクラッチインナ92を支持する円筒状の固定プーリハブ95の外周には、可動プーリ半体81dを支持する円筒状をした可動プーリハブ98が、軸方向に摺動自在に設けられている。
すなわち、円筒状をした可動プーリハブ98に軸方向に長尺のガイド孔98aが形成されていて、固定プーリハブ95に突設されたガイドピン99が該ガイド孔98aに摺動自在に係合している。
したがって、可動プーリハブ98は、ガイドピン99により固定プーリハブ95との相対回転を規制されるとともに、ガイド孔98aに案内されて固定プーリハブ95上を軸方向に摺動することができる。
固定プーリハブ95に一体に取り付けられた支持プレート92aと可動プーリハブ98との間にコイルばね100が介装されて、同コイルばね100により可動プーリハブ98は右方に付勢されている。
以上のように構成されているため、可動プーリハブ98に支持される可動プーリ半体81dは、固定プーリハブ95に支持される固定プーリ半体81sと一緒に回転するとともに、軸方向に摺動自在であってコイルばね100により固定プーリ半体81sに接近する方向に付勢されている。
かかる固定プーリ半体81sと可動プーリハブ98の対向するテーパ面間に前記Vベルト58が巻き掛けられ、ドライブプーリ51側の巻掛け径に連動してドリブンプーリ81の巻掛け径が反比例の関係で変動し無段変速が実行される。
ドライブプーリ51の回転が所定回転数を超えると、遠心式クラッチ90のクラッチインナ92のクラッチシュー92dがクラッチアウタ91の内周面に接して一体に回転し、被動軸82に動力を伝達する。
以上のベルト式無段変速機50を収容する変速室50Cを形成する伝動ケース23と伝動ケースカバー24は、互いに協働してクランクシャフト40と被動軸82を軸支するとともに、前記変速駆動機構60の第1減速ギヤ軸63s,第2減速ギヤ軸65sも軸支しており、部品点数および組付け工数が削減されていて、伝動ケース23自体の剛性も高くすることができる。
また、伝動ケース23の合せ面23uと伝動ケースカバー24の合せ面24uは、ともに同一平面にあって全周を連続して形成されている。
したがって、伝動ケース23と伝動ケースカバー24は、合せ面23u,24uに切欠きがないため、いずれも部品形状が簡素化できコストの削減が可能であるとともに、伝動ケース23に対する伝動ケースカバー24の締付け力を強化することができる。
伝動ケース23の後部の右側に形成された減速ギヤ部23cは、減速ギヤカバー25に覆われて減速ギヤ機構110を収容する減速ギヤ室110Cを構成する。
図6の伝動ケース23の右側面図を参照して、減速ギヤ部23cは、伝動ケース23の後部右側面から右方に突出した周壁23cwが、伝動ケース23の後部右側面の上部を残して下方に偏って形成されている。
伝動ケース23のクランクシャフト40に垂直な鉛直壁の後部上隅に三角形状をした排風口23zが形成されていて、同排風口23zより下に減速ギヤ部23cの周壁23cwが形成されている。
同減速ギヤ部23cの周壁23cwは、その開口端面が同一平面で連続した合せ面23vを形成しており、同合せ面23vは図6の右側面視で概ね菱形状に形成されていて、その周壁23cw内側の前方上隅に被動軸82を軸支する軸受円孔23qが穿設され、その斜め下方に軸受凹部23rが形成され、後方下隅にもう一つの大径の軸受凹部23sが形成されている。
一方、減速ギヤカバー25には、その左側面図である図8を参照して、周壁23cwの合せ面23vに対向し重ね合わされる合せ面25vが菱形状をして形成されており、その内側に伝動ケース23の軸受円孔23qに対向して前記軸受凹部25qが形成され、軸受凹部23rおよび軸受凹部23sに対向して軸受凹部25rおよび軸受円孔25sが形成されている。
図4に示すように、対向する軸受凹部23rと軸受凹部25rに軸受111,111を介して減速ギヤ軸112sの両端が軸支されており、同減速ギヤ軸112sと一体の大径ギヤ112aが、前記被動軸82に形成された小径ギヤ82gと噛合している。
同様に、対向する軸受凹部23sと軸受円孔25sに軸受113,113を介して後車軸114の左端と中央の若干右寄り部位が軸支されており、同後車軸114と一体に嵌着された大径ギヤ114aが、前記減速ギヤ軸112sと一体の小径ギヤ112bと噛合している。
後車軸114の減速ギヤカバー25より右方に突出した部分に後輪17のハブ17hが嵌着されている。
したがって、被動軸82の回転は、減速ギヤ機構110を介して減速されて後車軸114に伝達されて後輪17が回転される。
前記伝動ケース23の鉛直壁の三角形状の排風口23zは、開口端面の前鉛直辺と上傾斜辺が合せ面23wを形成し、下水平辺が伝動ケース23の周壁23cwの上面に沿っていて、排風口23zの開口は周壁23cwと減速ギヤケース25の上面の後半部の上方の空間に臨んでおり、この空間に排風ダクト120が配設される。
排風ダクト120の左側面図を図10に、前面図を図11に示す。
排風ダクト120は、伝動ケース23の排風口23zの開口端面の合せ面23wに対向する前鉛直辺と上傾斜辺からなる合せ面120wを有し、同合せ面120wから前鉛直壁120aと上傾斜壁120bが右方へ斜め下向きに延出し、上傾斜壁120bは減速ギヤケース25の右側面に回り込んで下方へ垂下する側壁120cとなっている。
側壁120cは垂下して、その下端は、減速ギヤケース25の後車軸114が軸支され貫通する軸受円孔25sの周縁部近くまで達している。
この側壁120cの下部に円孔120hが穿設されている。
図10に示すように、排風ダクト120の合せ面120wに沿って前方に突出して取付ボス120i、上方に突出して取付ボス120jが突出しており、上傾斜壁120bの後端に合せ面120wより右方に位置してもう1つの取付ボス120kが形成されている。
一方、伝動ケース23の排風口23zの開口端面の合せ面23wの前方に取付ボス23i、上方に突出して取付ボス23jが形成され、合せ面23wの後端近傍の周壁23cwから突出して取付ボス23kが形成されて(図6参照)、各取付ボス23i,23j,23kが排風ダクト120の取付ボス120i,120j,120kにそれぞれ対向している。
したがって、伝動ケース23の排風口23zの開口端面の合せ面23wに排風ダクト120の合せ面120wを重ね合わせて対応する取付ボスどうしをボルトで締結することで、伝動ケース23の排風口23zの開口端面に排風ダクト120を取り付けることができる。
すると、排風口23zから排風ダクト120の前鉛直壁120aと上傾斜壁120bの内面と周壁23cw(および減速ギヤケース25)の上面に囲まれた排風通路が形成され、この排風通路は側壁120cにより下方に経路を曲げられて主に下方に開放されている。
したがって、変速室50Cの前部においてベルト式無段変速機50のドライブプーリ51のうちの固定プーリ半体51sと一体の冷却ファン77の回転により、吸風ダクト26を介して伝動ケースカバー24の吸風口24rから冷却空気が変速室50Cに吸入され、吸入された冷却風は変速室50Cを後方へ流動し、後部で伝動ケース23の排風口23zから排風ダクト120を介して主に前鉛直壁120aの内面に沿って前開口部120dから車体前方向に向けて外部に流出される(図11参照)。
このように、冷却風は、変速室50Cを前部から後部へ万遍なく流れ、ベルト式無段変速機50を効率良く冷却することができる。
図12を参照して、伝動ケース23の周壁23cwのうち排風口23zの下水平辺の右方へ延出した上壁部分に円孔130が穿設されており、同上壁部分の下にも平行に減速ギヤ室110Cを仕切る仕切壁131があって、同仕切壁131にも円孔130の略真下位置でかつ後車軸114に嵌着された大径ギヤ114aに上方から対向する位置に円孔132が穿設されている。
この上下の円孔130,132に車速センサ135が嵌合して固定されている。
車速センサ135は、ピックアップコイルを用いた磁気センサであり、下端のポールピース135pが大径ギヤ114aに近接して対向し大径ギヤ114aの歯先の通過を検知して後車軸114の回転数から車速を検出する。
車速センサ135の上端からは前記排風通路に信号ケーブル135aが延出している。
また、減速ギヤカバー25の右側面には、図9および図12を参照して、軸受円孔25sの上方部分に凹部25gが形成されており、同凹部25gに嵌合するようにABS(アンチロックブレーキシステム)用の車輪速センサ140が取り付けられる。
車輪速センサ140を保持する取付けブラケット141の一対の取付片が、凹部25gの両側のボス部にネジ142により固定される。
車輪速センサ140もピックアップコイルを用いた磁気センサであり、図12に示すように、本体の下端から右方へポールピース140pが突出しており、ポールピース140pは排風ダクト120の側壁120cに穿設された円孔120hを貫通して先端が外部に露出している。
このポールピース140pの先端が、後輪17のハブ17hの左側面に取り付けられた強磁性体の環状プレート145に近接して対向しており、車輪速センサ140は環状プレート145に形成された孔145aの通過を検知して後輪17の車輪速を検出する。
車輪速センサ140の上端から信号ケーブル140aが延出している。
伝動ケース23に取り付けられる車速センサ135および減速ギヤカバー25に取り付けられる車輪速センサ140は、ともに排風ダクト120の内側に、車輪速センサ140のポールピース140pの先端を除き、隠される。
前記したように、本パワーユニット20は、変速駆動機構60の変速用駆動モータ61が、伝動ケース23の上方への膨出部23eの右側面上部に形成されたモータ取付座23mに、クランク室40Cのある車体内側から取り付けられるので、変速用駆動モータ61が車体外側に突出することがなく、パワーユニット20の小型化および外観性の向上を図ることができるとともに、水や泥から保護され易い。
また、変速用駆動モータ61は、大きく前傾したシリンダブロック31より上方に位置するので、益々水や泥から保護され易く、水や泥の付着を回避して変速用駆動モータ61の耐久性の向上を図ることができる。
さらに、変速用駆動モータ61の下は、クランク室40Cとなっているので、変速用駆動モータ61を確実に水や泥から保護することができるとともに、ユニットケース21の上方から変速用駆動モータ61を取り付けることができ、組付け作業を容易かつ確実に行うことができる。
内燃機関30のクランク室40Cの上に配置される変速用駆動モータ61は、これと並んで配置されたスタータモータ78とともに、パワーユニット20を車体フレームに対して揺動自在に支持するパワーユニットハンガ21hの近くに位置しているので、構造的に支持強度を確保し易く、変速用駆動モータ61やスタータモータ78等の重量物がまとまってパワーユニットハンガ21hの近くに配置されるため、パワーユニットの揺動に伴う慣性力を低減し、乗車振動を低減することができる。
また、構造的に支持強度を確保し易いため、変速用駆動モータ61やスタータモータ78の支持部位を軽量にすることが可能でパワーユニット20の軽量化を図ることができる。
本発明の一実施の形態に係るスクータ型自動2輪車の全体側面図である。 パワーユニットおよびその周辺を斜め後方から示した斜視図である。 パワーユニットの一部省略した左側面図である。 図3の概ねIV−IV線に沿って切断し展開したパワーユニットの断面図である。 伝動ケースの左側面図である。 同右側面図である。 伝動ケースカバーの右側面図である。 減速ギヤカバーの左側面図である。 同右側面図である。 排風ダクトの左側面図である。 同前面図である。 パワーユニットの後部断面図である。
符号の説明
20…パワーユニット、21…ユニットケース、21h…パワーユニットハンガ、22…右ユニットケース、23…伝動ケース、24…伝動ケースカバー、25…減速ギヤカバー、30…内燃機関、31…シリンダブロック、40…クランクシャフト、40C…クランク室、
50…ベルト式無段変速機、50C…変速室、51…ドライブプーリ、51d…可動プーリ半体、51s…固定プーリ半体、58…Vベルト、
60…変速駆動機構、61…変速用駆動モータ、63s…第1減速ギヤ軸、65s…第2減速ギヤ軸、67…雌ねじ部材、70…雄ねじ部材、78…スタータモータ。

Claims (3)

  1. 内燃機関(30)のクランク室(40C)を形成するクランクケース(22,23a)と同クランクケース(22,23a)の一側に設けられベルト式無段変速装置(50)を収容する変速室(50C)を一部形成する伝動ケース(23)とから構成されるユニットケース(21)と、
    前記伝動ケース(23)を覆って前記変速室(50C)を形成する伝動ケースカバー(24)とを備え、
    前記ベルト式無段変速装置(50)の伝動ベルト(58)が巻き掛けられるプーリ(51)の巻掛け径を変速用駆動モータ(61)の駆動で変速駆動機構(60)を介して変更し無段変速が行われるパワーユニット(20)において、
    前記内燃機関(30)は、シリンダが大きく前傾しており、
    前記変速用駆動モータ(61)が、前記シリンダより上方で前記内燃機関のクランク室の上方に、前記伝動ケース(23)に前記クランク室(40C)のある車体内側から取り付けられて配置され、
    前記変速駆動機構(60)は前記変速用駆動モータ(61)から略下方の前記プーリ(51)が軸支されるクランクシャフト(40)に向けて構成され、
    前記変速駆動機構(60)の前側に、パワーユニットハンガ(21h)が前記クランクケース(22,23a)に突設して設けられ、
    前記変速駆動機構(60)の後側に、スタータモータ(78)が前記クランクケース(22,23a)に取り付けられ、
    前記パワーユニットハンガ(21h)と前記スタータモータ(78)は、前記変速用駆動モータ(61)より低い位置にあることを特徴とするパワーユニット。
  2. 前記変速駆動機構(60)が、側面視で前記変速用駆動モータ(61)と前記クランクシャフト(40)との間でくの字状に構成されることを特徴とする請求項1記載のパワーユニット。
  3. 前記内燃機関(30)のクランク室(40C)の上には、前記パワーユニットハンガ(21h)に近い位置に前記変速用駆動モータ(61)が前記スタータモータ(78)と上下方向で重なるように並んで配置されることを特徴とする請求項2記載のパワーユニット。
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