JP4936578B2 - 環状アルコールの分離取得方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶性メタロシリケートを触媒とし、環状オレフィンを含有するオイル相と、水相、及び該触媒の共存下にて、環状オレフィンの接触水和反応を行う際の反応生成物である環状アルコールの分離取得方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、環状オレフィンの水和反応に固体触媒として結晶性メタロシリケートを使用し、環状アルコールを製造する方法については、文献および特許が多数ある。
例えば、特公平2−31056号公報には、一次粒子径が0.5μm以下の結晶性アルミノシリケートを触媒として、環状オレフィンを水和させて環状アルコールを製造する方法が提案されている。
【0003】
該公報の記載によれば、結晶性アルミノシリケートとしては、一次粒子径0.5μm以下の結晶性アルミノシリケートを触媒とした場合、水に対する環状オレフィンの重量比0.001〜100の範囲に於いては、反応系中ではオイル相と水相の2相が形成され、結晶性アルミノシリケートは水相に存在すると示されている。また、この反応で生成した環状アルコールは、ほとんどがオイル相に存在し、このオイル相より得られる環状オレフィンと環状アルコールの混合物は、その沸点が大きく異なる為、容易に分離でき、環状アルコールを取得することができると示している。更に、その具体的方法として、2相からなる反応液を連続的に一部取り出し、静置することで層分離を行わしめ、上層よりオイル相を取り出し、このオイル相より蒸留などにより環状アルコールを得る方法が一般的な例として示されている。
【0004】
また、該公報には、結晶性アルミノシリケートは、オイル相には存在しないとされており、オイル相に同伴される結晶性アルミノシリケートに関する問題には触れられていない。
また、特公平1−190644号公報には、結晶性アルミノシリケートの結晶格子中の一部を他の金属元素で置換した結晶性アルミノメタロシリケートを触媒として、環状オレフィンを水和させて環状アルコールを製造する方法が提案されており、その他にも、特開平8−245454号公報には、結晶性アルミノシリケートの結晶格子中の全部を他の金属元素で置換した結晶性メタロシリケートを触媒として、環状オレフィンを水和させて環状アルコールを製造する方法が提案されているものの、オイル相に同伴される触媒に関する問題には触れられていない。また、この問題に触れた文献及び特許は他にもない。
【0005】
本発明者らの知見によれば、2相からなる該反応液を反応後に静置し、連続的に層分離を行い、オイル相を分離する方法を工業的に用いた場合、この分離されたオイル相中への極めて微量の結晶性メタロシリケートの同伴が避けられない。また、この結晶性メタロシリケートを含むオイル相より蒸留分離法により、反応生成した高純度の環状アルコールを得ようとした場合、蒸留の過程において、都合の悪いことに結晶性メタロシリケートは主として環状アルコール中に濃縮される。その際、環状アルコール中の結晶性メタロシリケートは、環状アルコールの脱水反応を引き起こして環状オレフィンを生成し、初期蒸留精製時及び精製した生成物環状アルコールの長期保存中も環状アルコール中の環状オレフィンの濃度を増加させ、環状アルコールの収率低下を起こすという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、環状アルコールの収率を低下させることなく、環状アルコール中の環状オレフィンの濃度を低減させうる方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、蒸留塔を用い蒸留分離によって環状アルコールを取得するに際し、該接触水和反応後のオイル相中に存在する該触媒に対し、極微量のアミン類を添加するだけで、結果として環状オレフィン濃度が低い、高純度の環状アルコールが得られるという、驚くべき事実を見いだし、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は下記の通りである。
1)下記一般式(1)で示される環状オレフィンを、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のメタルを含む結晶性メタロシリケートを触媒として接触水和反応させることにより得られる環状アルコールと水を含む反応液を、水相とオイル相とに液液分離し、該オイル相を蒸留して該環状アルコールを取得する方法であって、
該オイル相に環状アルコールより沸点が高いトリエチレンテトラミンを、蒸留前あるいは蒸留時に添加し、かつ未反応の環状オレフィンは該接触水和反応にリサイクルする
環状アルコールの分離取得方法。
【0009】
Cs H2s−2−tRt (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はシクロヘキシル基であり、sは5〜12、tは1〜4の整数である。)
2)該水相に該触媒が含まれており、該水相を接触水和反応に復帰させる1)に記載の環状アルコールの分離取得方法。
【0010】
3)トリエチレンテトラミンの添加が、オイル相に存在する触媒に対し、0.01〜100ミリグラム当量/gである1)又は2)に記載の環状アルコールの分離取得方法。
【0011】
4)触媒が、下記一般式(2)で示される結晶性メタロシリケートである1)〜3)のいずれかに記載の環状アルコールの分離取得方法。
pM2/nO・xSiO2・yAl2O3・(1−y)Z2Ow(2)
(式中、Mはn価の少なくとも1種のカチオンを表し、Oは酸素、Siはケイ素、Alはアルミニウム、ZはM及びアルミニウム以外のメタルで、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のw価のメタルを表す。また、nは1〜6の整数、wは1〜6の整数であり、0.3≦p≦1.5、1≦x≦1000、0≦y≦1である。)
5)結晶性メタロシリケートが、一次粒子径0.5μm以下の結晶性メタロシリケートである1)〜4)のいずれかに記載の環状アルコールの分離取得方法。
6)結晶性メタロシリケートが、結晶性アルミノシリケートZSM−5である4)又は5)記載の環状アルコールの分離取得方法。
【0012】
7)環状アルコールがシクロヘキサノールである上記1)〜6)のいずれかに記載の環状アルコールの分離取得方法。
以下、本発明につき詳細に説明する。なお、図1は本発明を実施するためのプロセスフローシートの一例であり、必要に応じて図1を参照しつつ説明する。
【0013】
本発明で使用する結晶性メタロシリケートは、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた、少なくとも1種のメタルを含む、結晶性メタロシリケートであって、例えば、無水物の酸化物のモル比で表された組成が、前記一般式(2)で示されるものが挙げられる。
【0014】
前記一般式(2)の中で、Mは結晶性メタロシリケート中のカチオンであり、好ましいのはプロトン、周期律表上のIB、IIA,IIB、IIIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII族の金属カチオンであり、さらに好ましいのはプロトンである。また、ZはM及びアルミニウム以外のメタルで、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のメタルであり、これらは結晶性メタロシリケートの水熱合成時に結晶中に取り込まれ、その後のイオン交換操作においても結晶性メタロシリケート中から出てこないメタルである。これらのメタルの中で特に好ましいのは、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄である。
【0015】
結晶性メタロシリケート触媒の具体例としては、モルデナイト、ホウジャサイト、クリノプチロライト、L型ゼオライト、チャバサイト、エリオナイト、フェリエライト、モービル社が発表しているZSM系ゼオライトなどの結晶性アルミノシリケート、またアルミニウム以外にホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅などの元素も含有する結晶性アルミノメタロシリケート、アルミニウムを実質的に含まないガロシリケート、ボロシリケートなどのメタロシリケート等が挙げられる。
【0016】
また、AZ−1(特開昭59−128210号公報に記載)、TPZ−3(特開昭58−110419号公報に記載)、Nu−3(特開昭57−3714号公報に記載)、Nu−5(特開昭57−129820号公報に記載)、Nu−6(特開昭57−123817号公報に記載)、Nu−10(特開昭57−200218号公報に記載)なども有効である。
【0017】
本発明で使用する結晶性メタロシリケートは、一次粒子径が0.5μm以下のものが好ましく、より好ましくは0.1μm以下のもの、さらに好ましくは0.05μm以下のものである。粒子径の下限は「結晶性」という言葉で規定される。結晶とは、原子がある対称にしたがって規則正しく周期的に配列しているものであり、X線による回折現象が認められるものである(共立出版株式会社、化学大辞典、1963年出版、第3巻、第349頁「結晶」の項に記載)。したがって、一定の周期が起こり、X線回折現象が認められるためには、結晶構造に基づくある有限の大きさが存在する。よって、本発明で使用する結晶性メタロシリケートは、X線回折現象が認められ、かつ、一次粒子径が0.5μm以下のものが好ましいということができる。
【0018】
これら一次粒子の形状は種々のものがあるが、本発明でいう一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡で見た被測定微粒子の最も巾の狭いところの径を計測し、その計測された数値以下のものが少なくとも全体の50数量%以上であるものを言う。尚、この場合、一次粒子径が0.5μm以下であれば、それらの凝集等によりできる二次粒子の径が大きくなったものでも有効である。
【0019】
さらに、粒子によっては、大きな粒子の表面に凹凸があるのか、一次粒子が凝集しているのかが、走査型電子顕微鏡写真からは判断できない場合もある。この場合、微粒子体とは、H型にした場合の全酸点に対する外表面酸点の割合が0.03以上、好ましくは0.05以上、さらに好ましくは、0.1以上のものを指す。
【0020】
この全酸点に対する外表面酸点の割合を測定する方法は、次の方法による。
まず、酸点を測定する前に、本発明で用いる結晶性メタロシリケートをH型にする必要がある。結晶性メタロシリケートをH型にする方法は、合成系に有機物を用いるかあるいは用いないか、また、有機物を用いる場合も有機物の種類によって種々の方法があるが、ここでは、以下の方法によってH型とする。
【0021】
本発明で使用するスラリーを濾過した後に5倍量の水で水洗する。合成系で有機物を用いる場合は、得られたケークを120℃で8時間乾燥した後、500℃で6時間空気流通下に焼成を行い有機物を除去した後、1規定の硝酸中に加えて10重量%スラリーとして、60℃で4時間イオン交換を行い、そのスラリーを濾過し、さらに5倍量の水で水洗した後、120℃で10時間乾燥して、H型の結晶性メタロシリケートとする。
【0022】
また、合成系で有機物を用いない場合は、濾過水洗して得られたケークを直接1Nの硝酸に加え、以下上記と同じ方法でH型とする。
このようにして得られたH型の結晶性メタロシリケートの酸点を以下の方法で測定する(参考文献;触媒、vol.25,p461(1983))。
酸点の測定装置としては、島津製作所製ガスクロマトグラフGC−7Aおよびデータ処理装置CR−1Aを用いた。すなわち、内径4mm、全長80mmのSUS製短カラムへ試料(0.2〜1g)を充填し、前記ガスクロマトグラフ装置の恒温槽内の試料側流路へ取り付ける。キャリアガスとしてヘリウムガスを50ml/分の流速で流し、同時に恒温槽内の温度を325℃に設定する。
【0023】
次に、アミン(ピリジン、4−メチルキノリン)の一定量(0.2〜2ml)をマイクロシリンジを用いて、試料側流路の注入口へ一定期間(2〜5分)をおいて断続的に注入し続ける。充填カラムを通ったキャリアガスは、FID型検出器を用いて分析し、周期的にピークが現れる経時的なアミン濃度変化のクロマトグラムを得る。
【0024】
注入回数の増加と共に試料に対するアミン吸着量が飽和に近づき、それに伴って注入で非吸着アミン量が増加する。従って、前記クロマトグラフにおいて、アミンの第2回の注入に対応するピーク面積Siは、次第に注入したアミンの量に対応した面積Soに近づく。
試料単位重量当たりのアミン吸着量Ao(μmol/g)は、下記式(a)によって求めることができる。
【0025】
【数1】
【0026】
本発明においては、Si/So≧0.98となるような第k回の注入まで繰り返し注入を行い、下記式(b)によりアミン吸着量A(μmol/g)を算出した。
【0027】
【数2】
【0028】
本発明における全酸点とは、アミンとしてピリジンを用いて測定した場合のピリジン吸着量で表し、外表面酸点とは、アミンとして4−メチルキノリンを用いて測定した場合の4−メチルキノリン吸着量で表される。従って全酸点に対する外表面酸点の割合は、4−メチルキノリン吸着量/ピリジン吸着量とする。
また、環状オレフィンの水和反応においては、異性化、重合等の副反応が発生し、例えば、シクロヘキセンの水和反応においては、メチルシクロペンテン類、ジシクロヘキシルエーテル、ビシクロヘキシルといった副生物が生成する。この副反応を抑制し、収率良く環状アルコールを得るためには、例えば、特公平4−41131号公報に示されるような結晶性アルミノシリケートZSM−5を触媒として使用することも有効である。結晶性アルミノシリケートZSM−5とは、モービルオイル社が開発したゼオライトであり(米国特許第3702886号明細書参照)、結晶を構成するシリカとアルミナのモル比が20以上であり、結晶構造中に、酸素10員環の入口を有する三次元の細孔を有するゼオライトである。
【0029】
一方、本発明の接触水和反応に使用される環状オレフィンとしては、前記一般式(1)で示される化合物であり、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロウンデセン、シクロドデセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、トリメチルシクロヘキセン、テトラメチルシクロヘキセン、フェニルシクロヘキセン等が挙げられ、またこれらの混合物も有用である。そしてこれらの環状オレフィンは水和され、各々相当する環状アルコールを生成する。
【0030】
反応温度は、オレフィンの水和反応の平衡の問題及び副反応の抑制の面から低温が有利であるが、反応温度が余り低すぎると反応速度が小さい為に収率が低くなる。よって、50℃〜300℃の範囲が好ましい。
又、反応の圧力は、減圧から加圧までの範囲で適用可能であるが、反応の原料である環状オレフィン及び水の両方が液相を保ちうる圧力で反応を行う。
【0031】
反応原料である水と環状オレフィンのモル比は広い範囲でとることができるが、環状オレフィンがあまりに過剰であると環状オレフィンの転化率が低くなる。一方、水があまりに過剰であると環状オレフィンの転化率は高くできるが、生成環状アルコールの分離精製面で不利となるばかりでなく、反応器、及び後工程での液液分離器を大きくする必要が生じる。しかしながら器の容積をむやみに増大することは、機器製作面、保守点検面、及び操作面等の問題から得策でない。
【0032】
したがって、本発明においては、水に対する環状オレフィンのモル比は0.01〜100の範囲が好ましい。又、環状オレフィンと触媒の重量比は、連続的な反応においては、反応温度、反応圧力、環状オレフィンと水のモル比等の条件により異なるが、一般的には、1時間に反応器に供給される環状オレフィンの重量に対し、触媒の重量を0.005〜100の範囲とすることが好ましい。
【0033】
本発明において、蒸留用オイル相中に添加共存される物質はアミン類であるが、該アミン類の添加方法としては、(A)アミン類を直接オイル相に添加し、該触媒の酸点を中和する方法、(B)アミン類を直接オイル相に加えた上で加熱し、メタロシリケートの結晶構造を破壊する方法等が挙げられるが、前者(A)の方法が操作簡便である。こうしたアミン類の添加は間欠的又は、連続的に行われる。
【0034】
本発明において、該添加の対象となる液は、前記の接触水和反応後に液液分離器より取り出されたオイル相から得られる環状アルコール、環状オレフィン、及び微量の結晶性メタロシリケートを含有する液、あるいは、これらを濃縮した液であるが、該分離器より取り出されたオイル相中の環状アルコール濃度は12重量%程度であり、工業的に製品として環状アルコールを得る方法としては、蒸留等の操作により環状アルコールを濃縮・精製し、製品化していくと共に、未反応の環状オレフィンを回収・リサイクルし、又、高沸等の不純物を分離除去するのが一般的である。よって、添加したアミン類がリサイクル環状オレフィン、及び製品環状アルコールに混入することを避け、かつ、有効に失活に寄与するように、アミン類のオイル相への添加は、蒸留塔の製品抜き出し管11より下部の内液を対象とすることが好ましい。
【0036】
アミン類としては、一般式、R1NH2 、R1R2NH、R1R2R3N〔式中、R1、R2、R3は、炭素数1〜16のアルキル基、フェニル基又はシクロヘキシル基、及びそれらにアミノ基やイミノ基などの窒素を含む置換基である。〕などで表される化合物がある。
【0037】
該アミン類をオイル相中に添加すると、混在している該触媒の触媒作用を低下させるために好ましく、特にアミン類の使用が操作簡便であるため好ましい。アミン類としては、上記一般式などで表される化合物である。添加したアミン類が製品に混入することを避けるためには、製品となる環状アルコールと適度な沸点差を有する高沸もしくは低沸物、好ましくは高沸点の物質を選択することが好ましい。
【0038】
例えば、オイル相のシクロヘキセン中のシクロヘキサノールを蒸留して得る場合には、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ジアミルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン、メチルキノリン、トルイジン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、トリペレナミン、ジアミノメチルアミノオクタン、トリエタノールアミン、トリエチレンテトラミン等、シクロヘキサノールよりも沸点の高いアミン類を用いるのが好ましく、さらに好ましいのはトリエチレンテトラミンである。
【0039】
共存させるアミン類の量としては、接触水和反応に用いられる触媒の酸量、あるいは、その使用状況、劣化程度等により異なるが、通常は蒸留用オイル相中の触媒に対し0.01〜100ミリグラム当量/gが好ましい。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
なお、環状アルコール、環状オレフィン液中の結晶性メタロシリケートの含有量は、該液を濾過し、濾過残分を洗浄の後、120℃で1時間乾燥、更に、500℃で4時間焼成し、得られた固形物の重量より算出した。
【0041】
【実施例1】
水和反応は、触媒となる結晶性アルミノシリケートとして、特開平3−193622号公報に記載の結晶性アルミノシリケートであるZSM−5微粒子体を用いた。この結晶性アルミノシリケートの一次粒子径は0.1μmであった。
該結晶性アルミノシリケートを重量比で2倍の水と混合することでスラリー状触媒とし、反応温度は125℃、反応圧力は6kg/cm2Gとなるように窒素ガスにて気相部を加圧、攪拌機回転数530rpm、触媒1重量部に対しシクロヘキセンを1時間当たり1重量部供給し、反応消費水量に見合った分の水を原料供給管5を通じて供給した。
【0042】
また、分離器2の油水界面レベルが、排出管8より下方に位置するように、スラリー状触媒が復帰管7を経由して反応器1へ復帰する量を調整した。排出管8を経由して蒸留塔3へ供給される液は、シクロヘキサノール11.8重量%、結晶性アルミノシリケート18重量ppmを含むシクロヘキセン混合液であった。この生成液、100重量部が、排出管8を経由して蒸留塔3へ供給される。蒸留塔3の塔底より排出管12を経て触媒及びシクロヘキサノールが0.5重量部系外へ抜き出される。蒸留塔3の塔頂より留出液88.5重量部が抜き出され、排出管10を経由して原料供給管4と合流後、反応器1へリサイクルされる。その組成はシクロヘキセンが99.7重量%、シクロヘキサノールが0.3重量%であり、結晶性アルミノシリケートは検出限界以下(1重量ppm以下)であった。
【0043】
供給管9から失活用トリエチレンテトラミンを10重量%含むシクロヘキサノールを0.0005重量部供給したところ(供給された結晶性アルミノシリケートに対するトリエチレンテトラミンとして0.5ミリグラム当量/gに相当)、供給管9より上部で、かつ排出管8と蒸留塔3の接続部より下部に設けた、製品抜き出し管11より蒸気として、シクロヘキセン2重量ppmを含むシクロヘキサノール11.0重量部が得られた。また、このシクロヘキサノール中のトリエチレンテトラミン濃度は検出限界以下(1重量ppm以下)であった。この時、蒸留塔塔底の触媒である、結晶性アルミノシリケートは0.36重量%であった。
【0044】
また、排出管12よりトリエチレンテトラミンを供給添加した蒸留塔塔底液を抜き出し、25℃で1年間保存したところ、シクロヘキサノール中のシクロヘキセン濃度は同じく2重量ppmと増加する事なく、かつシクロヘキサノールの収率の低下なく、またその他の化合物の生成も見られなかった。
【0045】
【実施例2】
触媒となる結晶性メタロシリケートとして、特開平8−245454号公報の実施例1に記載の結晶性ガロシリケートを用いた他は、実施例1と同様の方法で水和反応を行った。
排出管8を経由して蒸留塔3へ供給される液は、シクロヘキサノール8.4重量%、結晶性ガロシリケート25重量ppmを含むシクロヘキセン混合液であった。この生成液、100重量部が、排出管8を経由して蒸留塔3へ供給される。蒸留塔3の塔底より排出管12を経て触媒及びシクロヘキサノールが0.5重量部系外へ抜き出される。蒸留塔3の塔頂より留出液91.8重量部が抜き出され、排出管10を経由して原料供給管4と合流後、反応器1へリサイクルされる。その組成はシクロヘキセンが99.8重量%、シクロヘキサノールが0.2重量%であり、結晶性ガロシリケートは検出限界以下(1重量ppm以下)であった。
【0046】
供給管9から失活用トリエチレンテトラミンを10重量%含むシクロヘキサノールを0.0004重量部供給したところ(供給された結晶性ガロシリケートに対するトリエチレンテトラミンとして0.5ミリグラム当量/gに相当)、供給管9より上部で、かつ排出管8と蒸留塔3の接続部より下部に設けた、製品抜き出し管11より蒸気として、シクロヘキセン3重量ppmを含むシクロヘキサノール7.7重量部が得られた。又、このシクロヘキサノール中のトリエチレンテトラミン濃度は検出限界以下(1重量ppm以下)であった。この時、蒸留塔塔底の触媒である、結晶性ガロシリケートは0.50重量%であった。
【0047】
また、排出管12よりトリエチレンテトラミンを供給添加した蒸留塔塔底液を抜き出し、25℃で1年間保存したところ、シクロヘキサノール中のシクロヘキセン濃度は同じく3重量ppmと増加する事なく、かつシクロヘキサノールの収率の低下なく、またその他の化合物の生成も見られなかった。
【0048】
【比較例1】
トリエチレンテトラミンを供給しなかった以外は実施例1と同様の操作を実施したところ、製品抜き出し管11より蒸気として、シクロヘキセン1013重量ppmを含むシクロヘキサノール10.9重量部が得られた。この時、蒸留塔塔底の結晶性アルミノシリケートは0.36重量%であった。
【0049】
また、排出管12より蒸留塔塔底液を抜き出し、25℃で1年間保存したところ、シクロヘキサノール中のシクロヘキセン濃度は、5215重量ppmまで増加すると同時に、シクロヘキサノールの収率が低下し、またその他の不純物として1−メチルシクロペンテンが1135重量ppmも生成している事が確認された。
【0050】
【比較例2】
トリエチレンテトラミンを供給しなかった以外は実施例2と同様の操作を実施したところ、製品抜き出し管11より蒸気として、シクロヘキセン985重量ppmを含むシクロヘキサノール7.6重量部が得られた。この時、蒸留塔塔底の結晶性アルミノシリケートは0.50重量%であった。
【0051】
また、排出管12より蒸留塔塔底液を抜き出し、25℃で1年間保存したところ、シクロヘキサノール中のシクロヘキセン濃度は、4011重量ppmまで増加すると同時に、シクロヘキサノールの収率が低下し、またその他の不純物として1−メチルシクロペンテンが934重量ppmも生成している事が確認された。
【0052】
【発明の効果】
本発明の方法により、蒸留分離法で、環状アルコール中の環状オレフィンの濃度を低減させ、なおかつ環状アルコールの収率低下もない操作が同時に可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するためのプロセスフローシートの一例である。
【符号の説明】
1 反応器
2 分離器
3 蒸留塔
4 原料供給管
5 原料供給管
6 排出管
7 復帰管
8 排出管
9 供給管
10 排出管
11 製品抜き出し管
12 排出管
Claims (7)
- 下記一般式(1)で示される環状オレフィンを、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のメタルを含む結晶性メタロシリケートを触媒として接触水和反応させることにより得られる環状アルコールと水を含む反応液を、水相とオイル相とに液液分離し、該オイル相を蒸留して該環状アルコールを取得する方法であって、
該オイル相に環状アルコールより沸点が高いトリエチレンテトラミンを、蒸留前あるいは蒸留時に添加し、かつ未反応の環状オレフィンは該接触水和反応にリサイクルすることを特徴とする環状アルコールの分離取得方法。
CsH2s-2-tRt(1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はシクロヘキシル基であり、sは5〜12、tは1〜4の整数である。) - 該水相に該触媒が含まれており、該水相を接触水和反応に復帰させることを特徴とする請求項1に記載の環状アルコールの分離取得方法。
- トリエチレンテトラミンの添加が、オイル相に存在する触媒に対し、0.01〜100ミリグラム当量/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の環状アルコールの分離取得方法。
- 触媒が、下記一般式(2)で示される結晶性メタロシリケートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環状アルコールの分離取得方法。
pM2/nO・xSiO2・yAl2O3・(1−y)Z2Ow(2)
(式中、Mはn価の少なくとも1種のカチオンを表し、Oは酸素、Siはケイ素、Alはアルミニウム、ZはM及びアルミニウム以外のメタルで、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のw価のメタルを表す。また、nは1〜6の整数、wは1〜6の整数であり、0.3≦p≦1.5、1≦x≦1000、0≦y≦1である。) - 結晶性メタロシリケートが、一次粒子径0.5μm以下の結晶性メタロシリケートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状アルコールの分離取得方法。
- 結晶性メタロシリケートが、結晶性アルミノシリケートZSM−5であることを特徴とする請求項4又は5記載の環状アルコールの分離取得方法。
- 環状アルコールがシクロヘキサノールである請求項1〜6のいずれかに記載の環状アルコールの分離取得方法。
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