JP4936530B2 - 3次元フォトニック結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、3次元フォトニック結晶の製造方法に関する。
フォトニック結晶は、構成物質の屈折率が周期的に分布している構造体であり、構造設計だけで斬新な機能を実現可能な人工材料である。
フォトニック結晶の最も大きな特徴として、構成材料の屈折率差と構造の周期性によって、特定の電磁波が伝搬できない領域、いわゆるフォトニックバンドギャップを形成する。
フォトニック結晶中の屈折率分布に適切な欠陥を導入することにより、フォトニックバンドギャップ中にこの欠陥によるエネルギー準位(欠陥準位)が形成される。
これによって、フォトニック結晶は電磁波を自由自在に制御できる。その上、フォトニック結晶を用いたデバイスのサイズは、従来のデバイスよりはるかに小型化することができる。
また、3次元フォトニック結晶は、構成物質の屈折率分布が、3次元的な周期を持ち、欠陥位置に存在する電磁波が外部に漏れにくいという特徴を有する。
つまり、電磁波伝搬の制御は、3次元フォトニック結晶が最も適している。
このような3次元フォトニック結晶において、その代表的な構造の一つとして、特許文献1に開示されているウッドパイル構造(あるいはロッドパイル構造)が知られている。
この3次元フォトニック結晶におけるウッドパイル構造は、図6に示すような構造を有している。
図6において、300は3次元周期構造であり、複数のロッド301を平行に、且つ所定の面内周期で周期的に配置したストライプ層を複数備え、これらを順次積層した構造を有している。また305はロッドの断面である。
具体的には、複数のロッドを平行に、且つ所定の面内周期で周期的に配置した第1のストライプ層と、
上記第1のストライプ層上に、該第1のストライプ層に属する各ロッドと直交するようにして積層された第2のストライプ層と、
上記第2のストライプ層上に、上記第1のストライプ層に属する各ロッドと平行で且つ面内周期の1/2だけずれるようにして積層された第3のストライプ層と、
上記第3のストライプ層上に、上記第2のストライプ層に属する各ロッドと平行で且つ面内周期の1/2だけずれるようにして積層された第4のストライプ層と、
上記第1から第4のストライプ層を一組として、複数組を順次積層して、3次元周期構造が構成されている。
ここでのフォトニック結晶の構造の周期は、制御したい電磁波の波長の半分程度である。たとえば、可視光用フォトニック結晶デバイスでは、ロッドの面内周期は250nm程度である。
また、より広い波長領域で完全フォトニックバンドギャップを呈するため、特許文献2では、ジョイントロッド型3次元フォトニック結晶構造が提案されている。
このジョイントロッド型3次元フォトニック結晶構造は、図7に示すような構造を有している。
図7において、300は3次元周期構造であり、ウッドパイル構造ロッドに相当するロッド部310の交点に、該交差領域の面積より大きいジョイント部320が配置された構造を有している。
このような微細3次元構造を有する3次元フォトニック結晶は、理想的なデバイス特性が期待される反面、一般的に、構造が複雑で、製造するのに煩雑で数多くの工程を要する。
また、制御したい電磁波の波長が短いほど、構造周期が小さくなり、必要となる構造のcritical dimension(CD)も小さくなるので、層間位置合せ精度や構造加工精度に対する要求も厳しくなる。
従来において、ウッドパイル構造の3次元フォトニック結晶の製造方法として、特許文献3では、つぎのような積層技術による異種部材の熱接着方法が提案されている。
ここでの熱接着方法では、まず、基板上に設けたストライプ層に平行且つ所定の面内周期で配置したロッドアレイを形成する。
そして、熱接着法で上記ストライプ層同士を層間位置合わせしながら接合した後、一方のストライプ層の基板を除去する。
このような工程を繰り返すことによって、接合の回数だけの層数をもつウッドパイル構造が得られる。
以上のような積層技術によって、比較的複雑な構造を有する3次元フォトニック結晶の製造が可能とされている。
さらに、非特許文献1では、3次元フォトニック結晶を製造する他の方法が開示されている。
ここでは、シリコンからなる結晶の第1の面から光電化学エッチングを行い、次いで第2の面からFIB加工を行うことで当該シリコンの一部を除去し、3次元フォトニック結晶を形成する方法が採られている。
一方、従来の薄膜加工法において、特許文献4ではつぎのようなパターン形成方法および半導体素子の製造方法が開示されている。
ここでは、薄膜加工に際して、以下のようなイオンビーム注入工程と、被エッチング材にドライエッチングを施す工程と、によって薄膜加工を可能にしている。すなわち、イオンビーム注入工程では、被エッチング材に集束させるイオンビームの注入位置を変えるとともに加速電圧、イオンの原子種、イオンの価数の少なくとも一つを変えてイオン注入し、前記被エッチング材の深さ方向にイオン濃度ピーク領域を形成する。
また、ドライエッチングを施す工程では、被エッチング材のイオン濃度ピーク領域でイオンとエッチング抑制領域を形成するエッチングガスにより前記被エッチング材をドライエッチングする。これらの工程により、薄膜加工が実施される。
米国特許第5,335,240号明細書 特開2006−065273号公報 特開2004−219688号公報 特許第3240159号公報 APPLIED PHYSICS LETTERS 86,011101(2005)
ところで、3次元フォトニック結晶において、所望なデバイス特性を得るために、面内方向だけではなく、厚み方向も所定の周期数が必要である。
一般的に、厚み方向の周期数が3以上であることが望ましい。
前記のウッドパイル構造でいうと、12層以上のストライプ層の積層が必要となる。
また、所望なデバイス特性を得るために、各構造の加工エラー及び層間の位置合せエラーを小さくすることが求められる。
例えば、ウッドパイル構造を有する3次元フォトニック結晶の場合には、各ロッドの加工誤差はロッド周期の約10%以下であることが望ましく、また、層間の位置合せ誤差はロッド周期の約25%以下であることが望ましい。
可視光用フォトニック結晶デバイスの場合、ロッドの面内周期は250nm程度であるので、各ロッドの加工誤差は約±25nm以下で、各層間の位置合せ誤差は約±60nm以下であることになる。
しかし、3次元フォトニック結晶の製造に際して、特許文献3のような従来の積層法では、現有の半導体技術を流用することはできるが、作製方法が複雑で、フォトニック結晶の層数に比例して工程数が増加し、技術難度が増大する。
したがって、このような方法では生産性の向上を図ることがきわめて困難となる。
また、積層する度に位置合せが必要で、位置合せ誤差の累積が避けられない。
その上、各層間の界面において、材料(即ち、屈折率)の不連続性が生じると同時に、製造工程で不可避なゴミ付着およびコンタミが発生するので、不要な電磁波散乱が起きる。
更に、層数の増加に従って構造内の応力が増えるので、構造の変形も生じる。これらの構造乱れは、フォトニック結晶デバイスの特性に悪影響を及ぼす。
このようなことから、上記した従来の積層法では、精度よく3次元フォトニック結晶を製造することが困難である。
また、非特許文献1に開示されているように、光電化学エッチングとFIB加工とによってシリコン結晶から3次元フォトニック結晶を形成する方法においても、つぎのような課題を有している。
この方法による場合には、まず、加工できる母材の材料の制約が大きいという問題が生じる。
すなわち、電気化学エッチングを採用する場合には、当該エッチングによってエッチングされ得る材料を選択する必要がある。
さらに、シリコン結晶を電気化学エッチング法によりエッチングする際には、エッチングに適した結晶面が限定される上、得られる細孔の形状も限定される。従って設計、または加工の自由度が小さくなる。
また、この方法による場合には、FIB加工で3次元フォトニック結晶を形成しようとすると、イオンによりスパッタされた母材の破片が細孔の側壁等に再堆積することが避けられない。
また、一部のイオンが散乱され細孔の側壁からフォトニック結晶の母材中に入り込み、該部分の母材を改質してしまう。
その結果、フォトニック結晶の光学特性及び電気特性が劣化される。
さらに、この方法による場合には、FIB加工は一般的に細孔を1つずつ加工するので、大面積の加工に不向きである。
従ってFIB加工のみで大きな3次元フォトニック結晶を低コストで生産することは困難である。
一方、特許文献4に見られる従来の薄膜加工法では、被エッチング材に対して深さ方向の加工が可能とされている。
しかし、これらの技術を用いてウッドパイルのような複雑な構造を有する3次元フォトニック結晶の作製を可能とすることについては、解決されていない。
本発明は、上記課題に鑑み、精度よく、簡易に、低コストで、複雑な3次元構造、特にナノフォトニック結晶における3次元周期構造を製造することが可能となる3次元フォトニック結晶の製造方法の提供を目的とする。
また、本発明は、デバイス特性の向上を図ることが可能な3次元フォトニック結晶を製造する3次元フォトニック結晶の製造方法の提供を目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、つぎのように構成した3次元フォトニック結晶の製造方法を提供するものである。
本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、
第1の面と、第2の面とが第1の角度で交差する面を有する母材を用意する工程と、
前記母材を雰囲気中で熱処理することによって、少なくとも前記母材における前記第1の面と前記第2の面に被膜を形成する工程と、
前記第1の面に第1のマスクを形成する工程と、
前記第1の面に形成された前記被膜のマスクの形成されていない部分をエッチング処理によって選択的に除去し、該第1の面の露出部分を形成する工程と、
前記第1のマスクを用いて、前記第1の面の露出部分に対して第2の角度からドライエッチングし、前記母材に細孔を形成する工程と、
前記第2の面に第2のマスクを形成する工程と、
前記第2の面に形成された前記被膜のマスクの形成されていない部分をエッチング処理によって選択的に除去し、該第2の面の露出部分を形成する工程と、
前記第2のマスクを用いて、前記第2の面の露出部分に対して第3の角度からドライエッチングし、前記母材に細孔を形成する工程と、
を含み、
前記第1のマスク及び第2のマスクは、前記被膜を含む前記母材のマスク形成面の表層内に、集束イオンビームよるイオン注入によって形成されることを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記3次元フォトニック結晶の母材が、単結晶またはアモルファス状態のSiまたはSiの化合物で形成されることを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記イオンは、GaイオンまたはInイオンであることを特徴とする
た、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記第1の面と前記第2の面に被膜を形成する工程において、
前記母材を雰囲気中で熱処理することによって、該母材の表面成分を雰囲気ガスと反応させ、該母材表面の少なくとも一部に酸化膜または窒化膜を形成させることを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記母材の第1の面及び第2の面に細孔を形成する工程において、
前記ドライエッチングが、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチングであることを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記母材を用意する工程において、前記第1の角度が、10°以上170°以下であることを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記母材の第1の面及び第2の面に細孔を形成する工程において、前記第2の角度及び第3の角度が、それぞれ10°以上90°以下であることを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記第2のマスクを形成する工程は、
前記第2のマスクを形成するに際し、該第2のマスクが前記第1のマスクに対して、前記第1及び第2の面が交差する交差部の稜線方向において、
互いに重ならない位置に形成され、または一部が重なる位置に形成するプロセスを含むことを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記第1の面の表面から前記第2の面側に突き出している位置合わせマークが形成され、前記第2のマスクを形成するに際し、前記第1の面に形成された位置合わせマークが用いられることを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、上記したいずれかに記載の3次元フォトニック結晶の製造方法を用い、3次元フォトニック結晶を製造する3次元フォトニック結晶の製造方法であって、
複数の柱状部を平行に、且つ所定の面内周期で周期的に配置したストライプ層を複数備え、これらストライプ層を該ストライプ層の厚さ方向に配列して構成された3次元周期構造を有する3次元フォトニック結晶を製造するに際し
前記3次元周期構造は、複数の柱状部が平行に、且つ所定の面内周期で周期的に配置された第1のストライプ層と、
前記第1のストライプ層に属する各柱状部上に、該各柱状部と異なる方向に延びる柱状部を有する第2のストライプ層と、
上記第2のストライプ層上に、上記第1のストライプ層に属する各柱状部と平行で且つ面内周期の1/2だけずれて位置する第3のストライプ層と、
上記第3のストライプ層上に、上記第2のストライプ層に属する各柱状部と平行で且つ面内周期の1/2だけずれて位置する第4のストライプ層と、
を備え、上記第1から第4のストライプ層に属する各柱状部が一体的に形成され、上記第1から第4のストライプ層を一組として、複数組を順次、該ストライプ層の厚さ方向に配列した構造を有することを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記ストライプ層に属する各柱状部が、異なった断面形状を有していることを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記ストライプ層に属する各柱状部が、該柱状部の長さ方向において断面形状および断面積が均等に形成されていることを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記ストライプ層に属する各柱状部が、中空部を有することを特徴とする。
また、本発明の3次元フォトニック結晶の製造方法は、前記各柱状部と異なる方向に延びる柱状部の交差領域に、該交差領域の面積より大きく、且つ前記各柱状部の長さ方向と一致するジョイント部が配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、精度よく、簡易に、低コストで、複雑な3次元構造、特にナノフォトニック結晶における3次元周期構造を製造することが可能となる。
また、本発明によれば、デバイス特性の向上を図ることが可能な3次元フォトニック結晶を製造する3次元フォトニック結晶の製造方法を実現することができる。
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1に、本実施の形態における3次元ナノフォトニック結晶を製造する工程を示す。なお、図中の同一要素に関しては、同一の符号を用いている。
図1において、10は基板、20はフォトニック結晶母材(前駆体ともいう)である。
フォトニック結晶母材の第1の面を100、該第1の面と交差しているフォトニック結晶の母材の前記第1の面とは異なる第2の面を200で示す。
そして、該第1の面100と該第2の面200との交差角度である第1の角度を31で表している。
ここで、本実施の形態における上記第1の面と第2の面について、更に説明する。
上記第1の面100及び第2の面200とは、フォトニック結晶を形成する多面体からなる母材の加工面を意味する。
そして、母材を構成する面の内、互いに交差する関係にある任意の2つの面が第1の面100及び第2の面200である。
加工面の選定に際しては、フォトニック結晶の設計、加工難易度(ハンドリング)、加工規模、加工コスト、等を考慮して適宜選択すれば良い。
本実施の形態においては、図1に示すように、上記フォトニック結晶の母材を構成する面の内、互いに交差する1の側面(端面)と他の側面とから加工する方法と、
図2に示すように、基板の互いに交差する1の主面(上面又は表面)と1の側面とから加工する方法とがある。
また、上記第1の面100と第2の面200とが交差する角度は垂直に限られず、求めるフォトニック結晶の設計に応じて10°乃至90°の範囲で選択することができる。
このように第1の面100と第2の面200との交差する角度を調整することにより、フォトニック結晶の設計の自由度が大幅に拡大される。
つぎに、図1を用いて、本実施の形態のフォトニック結晶の具体的な製造方法について説明する。
まず、第1の面と、第2の面とが第1の角度で交差する面を有する母材を用意する工程において、図1(a)に示したように、フォトニック結晶母材20を用意する。
母材は、従来の半導体微細加工技術で加工する。また、当該母材20は基板10から作り出しても良く、別の材料で作製した後、接合法で基板10に貼り付けてもよい。
母材20の材料は、単結晶又はアモルファス状態のSi、またはSiの化合物(例えば、SiO2、SiN)が本発明には適している。
母材20のサイズは、長さ、幅及び高さがそれぞれ1μm乃至1000μm程度で望ましい。
また、母材20の第1の面100と第2の面200との交差角度31は、10°以上170°以下の範囲が望ましい。
次に、図1(b)に示すように、つぎの工程である第1のマスクを形成する工程の前に、前記母材表面の少なくとも一部に被膜を形成する工程を設けるようにしてもよい。
この工程において、必要に応じて母材20及び基板10の表面に被膜40を形成する。
被膜40は、後工程における母材のエッチング処理で2次マスク、または補強マスクの役割をする。
しかし、求めるフォトニック結晶の加工精度、使用する材料、エッチング条件、タクトタイム、形成コスト等を考慮して当該被膜形成が不要な場合、上記した被膜形成工程は省略しても良い。
被膜40を形成する方法としては、母材20を雰囲気中で熱処理することによって、その表面成分を雰囲気ガスと反応させ、該表面に酸化膜もしくは窒化膜を形成させることが本発明には適している。
例えば、母材20の材料がSiである場合、酸素雰囲気中で1000℃の温度で10分乃至数時間の熱処理をすると、母材20の表面に10nm乃至数μmのSiO2被膜が形成される。
前記被膜の形成方法として、化学気相堆積法(chemical vapor phase deposition)、もしくは原子層堆積法(atomic layer deposition)も適用できる。
次に、前記第1のマスクを用いて、前記母材に細孔を形成する工程において、図1(c)に示したように、被膜40を形成した母材の第1の面100に第1のマスク110を形成する。
このとき、第2の面200に形成された被膜を保護するために、幅が被膜40の厚み程度の保護マスク111を、第2の面200に隣接する第1の面100の縁に形成するとよい。
このマスク形成工程は、母材20の側面で行う必要があるので、通常の電子ビーム露光や光学露光法ではできない。
第1のマスク110および保護マスク111を形成するために、前記マスク形成面100の表層内にイオン注入して、所定のパターンを形成する。
注入深さはイオンビームの加速電圧で制御するが、30nm〜500nmであることが望ましい。
最表面付近で注入イオンの密度が最高になることが理想的である。被膜40がない場合、イオンが直接母材20の表層に注入される。
被膜40がある場合、注入イオンが被膜の表層に止まっても良く、被膜を貫通してその真下にある母材の表層まで侵入しても問題がない。
該イオンは、GaイオンまたはInイオンなどの選択肢がある。前記被膜または母材の表層における該イオンの最高密度は、1019cm-3〜1023cm-3で、1020cm-3〜1022cm-3が最適である。
このようにして、集束イオンビームによるイオン注入によって、上記母材のマスク形成面の表層内に、約5nmの寸法精度でマスクパターンを形成することができる。
次に、図1(d)に示したように、前記第1のマスク110のパターンを被膜40に転写する。
ここで、第1の面上に前記イオン注入を行っていない部分、つまり第1のマスク110のない部分の被膜を取り除いて、該被膜の下にある母材の第1の面100の一部を除去して第1の面の露出部分120を形成する。
被膜の材質がSiO2の場合、被膜を取り除くためのドライエッチングは、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチング、またはフッ酸の蒸気を用いた気相エッチングが好ましい。
ここで、イオン注入を行った部分がマスクとなる理由を、Gaイオンを例にして説明する。
フッ素系ガスや蒸気の中で、イオン注入部においてGaがフッ素と化学反応して、揮発性の極めて低いGaフッ化物を形成する。
このGaフッ化物は、該部分の表面で保護膜を形成し、該部分における被膜または母材のエッチングを防ぐマスクとなる。
また本発明者らの知見によれば、本発明のGaの注入によるマスクの効果は、Gaの注入量が比較的少なく、かつ打ち込み深さが浅くても十分なマスク効果を有する。
従って被加工物(母材)に対してイオン注入によるダメージを与えることがない、または非常に小さい。
一方、イオン注入を行っていない部分、つまり第1のマスク110のない部分においては、エッチングが進行し、被膜または母材が除去される。
このGaフッ化物の生成によるマスク効果は、被膜40がなく、Gaが直接フォトニック結晶母材20に注入される場合においても同様である。
次に、前記第1の面に形成された第1のマスクをマスクとして、前記母材に細孔を形成する工程において、
図1(e)に示したように、前記マスク110と111、および被膜40をマスクとして、前記第1の面の露出部分120に対して第2の角度32から母材20をドライエッチングする。
該ドライエッチング処理によって、該第2の角度32からみて前記マスク110と111、および被膜40により保護されていない前記母材の部分が除去され、母材20に細孔125が形成される。
ここで、前記の第2の角度32は、10°以上90°以下の範囲で選択可能であり、80°乃至90°が最も好適である。
上記ドライエッチングの中でも、フッ素系ガスを用いたRIEが好ましい。
その理由として、RIEによる加工は、物質の結晶方位に殆ど依存しないことと、高い異方性が得られる。即ち、加工がエッチング粒子の入射方向(第1の面に対して第2の角度32をなす方向)に優先的に進行する。
さらに、この工程においても、Gaフッ化物の生成によるマスク効果が発揮される。
そして、第2の面200から見て、第1の面100に形成された細孔125の位置関係がわかるような位置合せ用構造体112を、前記第1の面に形成する。
形成する手法としては、電子ビーム誘起化学気相堆積(EB−CVDとも呼ぶ)、または集束イオンビーム誘起化学気相堆積(FIB−CVDとも呼ぶ)などがある。
堆積される構造体112の材質は、C、Siのような無機物、またはW、Mo、Ni、Au、Ptのような金属、またはSiO2のような酸化物、またはGaNのような化合物などの選択肢がある。
それぞれの堆積物中に不純物が含まれていても支障がない。
前記第1の面に形成された該構造体112は、前記第2のマスクを形成するに際し、位置合せマークとして使用する。
次に、前記第2のマスクを用いて、前記母材に細孔を形成する工程において、図1(f)に示したように、フォトニック結晶母材20の第2の面200に第2のマスク210を形成する。
形成方法は、前述の第1の面100に第1のマスク110を形成する方法と同様である。
このとき、第2のマスクの位置は、前記の位置合せ用構造体112を利用して、第1のマスクに対して位置合わせをする。
本手法で3次元フォトニック結晶を形成する際、必要となるマスク位置合せは、この一回のみなので、位置合せによる加工精度が高い。
次に、図1(g)に示したように、前記第2のマスク210のパターンを被膜40に転写する。
ここで、第2の面上に第2のマスク210のない部分の被膜を取り除いて、該被膜の下にある第2の面の一部を除去して第2の面の露出部分220を形成する。このパターン転写工程は、図1(d)に示した工程と同様である。
次に、前記第2の面に形成された第2のマスクをマスクとして、前記母材に細孔を形成する工程において、
図1(h)に示したように、前記第2のマスク210と被膜40をマスクとして、前記第2の面の露出部分220に対して第3の角度33から母材20をエッチングする。
このエッチング工程は、図1(e)に示した工程と同様である。
該エッチング処理によって、該第3の角度33からみて前記第2のマスク210と被膜40により保護されていない前記母材の部分が除去され、母材20に細孔225が形成される。
ここで、前記の第3の角度33は10°以上90°以下の範囲で選択可能であり、目的とするフォトニック結晶構造と前記第1の角度31及び第2の角度32によって決まる。
次に、図1(i)に示したように、前記第1のマスク110、第2のマスク210と第2の面を保護するためのマスク111、及び位置合せ用構造体112を除去する。
このとき、フォトニック結晶母材20と基板10に腐食性なく、前記マスクを選択的に除去できる液体、気体、またはプラズマを使用するとよい。
次に、図1(j)に示したように、前記被膜40を除去し、フォトニック結晶を露出させて、フォトニック結晶の主要部(基本骨格)の作製を完了する。
被膜40の除去において、フォトニック結晶母材20と基板10に腐食性なく、被膜40だけを選択的に除去できる液体、気体、またはプラズマを使用するとよい。
場合によって、前記第1のマスク110、第2のマスク210と第2の面を保護するためのマスク111、および位置合せ用構造体112の除去は、前記被膜40の除去と同時に行っても良い。なぜなら、前記マスクは前記被膜の表面に付着しているので、被膜40を除去すれば、前記マスクも自然に除去できる。
上記の3次元周期構造を製造する工程は、2つの面からそれぞれドライエッチング処理することで成型できるあらゆる3次元構造に適することは明らかである。
中には、周期性のない3次元構造も含まれる。最も簡単な例として、前記マスクのある部分を変形させて、3次元周期構造に欠陥を作り込むことが可能である。また、上記本実施の形態では、説明を容易とするため、第1の面と第2の面からのフォトニック結晶母材への加工は、それぞれ1回のみの構成例で説明したが、前記工程を数回繰り返してもよい。
更に、他の加工法と組み合わせることも可能である。
上記本実施の形態では、フォトニック結晶の母材の互いに交差する任意の2つの面からマスキング処理及びエッチング処理を行うことにより加工するものである。
例えばフォトニック結晶母材の1つの側面(端面とも言う)と他の側面とから加工を行う方法や、フォトニック結晶母材の1つの主面(上面又は表面とも言う)と1つの側面とから加工を行うことができる。
このように加工面を適宜選択することによって、母材の結晶面や結晶方位と、加工後のフォトニック結晶の結晶面や結晶方位との調整を行うことができる。
また、形成するフォトニック結晶の大きさに応じて適宜加工の容易な面を選択することができる。
加工面の選択は目的とするフォトニック結晶の構造(設計)と、加工する規模等に応じて決定することが好ましい。
以上に説明したように、本実施の形態による3次元フォトニック結晶の製造方法によれば、複雑な3次元構造、特に3次元ナノフォトニック結晶を簡易に高精度かつ低コストで形成することができる。
また、構造連続性があり、形成工程で構造の接合部にゴミ等が混入することがないため、不要な散乱がなく、デバイス特性を向上させることができる。
更に、従来技術で製造不可能の形状をもつ構造体の製造が可能となり、デバイス設計の自由度が大きくなり、新しい機能をもつデバイスを実現することが可能となる。
以上により、図1(j)に示す3次元フォトニック結晶を得ることができるが、3次元周期構造体の構成部材が一体的に成形されているので、従来のウッドパイル構造にみるような構造単元である独立なロッドが存在しない。
したがって、本発明では、従来のウッドパイル構造のロッドに対応する3次元フォトニック結晶を構成する単元を、柱状部と定義することとする。
図1(j)において、1300は本発明の3次元フォトニック結晶、1301は従来のウッドパイル構造のロッドに対応する本発明による一体的に成形された柱状部である。
また、1305は本発明の一体的に成形された柱状部の断面である。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、フォトニック結晶母材の互いに交差する1の側面と他の側面である2つの側面から該母材を加工することによって、3次元フォトニック結晶を製造する方法について説明する。
本実施例においては、上記本発明の実施の形態で説明した3次元フォトニック結晶の製造方法と、基本的に同じ工程によるものであるから、ここでも図1を用いて説明する。
図1において、10はシリコン(Si)基板、20はSi基板から加工したフォトニック結晶母材である。
また、フォトニック結晶母材20の第1の側面を第1の面100、該第1の面100と交差しているフォトニック結晶母材の第2の側面を第2の面200とする。そして、該第1の面100と該第2の面200との交差角度である第1の角度を31とする。
まず、図1(a)に示したように、半導体微細加工工程で厚みが約500μmのSi基板10からフォトニック結晶母材20を切出す。
前記微細加工工程はフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ工程と、RIEによるSiの異方性エッチングを含む。加工した母材20のサイズは、高さが約100μm、第1の面100と第2の面の幅がそれぞれ約20μm程度である。また、前記第1の面100と第2の面200との交差角度31は約90°であり、該2つの面は基板の主面に対して共にほぼ垂直である。
次に、図1(b)に示したように、母材20及び基板10の表面にSiの熱酸化膜を形成し、被膜40とする。
具体的に、基板10上に形成した母材20を石英炉に設置し、酸素雰囲気中にて約900℃の温度で数10分間熱処理をして、母材20の表面に約0.5μmのSiO2被膜を形成する。
次に、図1(c)に示したように、被膜40を形成した母材の第1の面100に第1のマスク110を形成する。
このとき、第2の面200に形成された被膜を保護するために、幅が被膜40の厚み程度(約0.5μm)の保護マスク111を、第2の面200に隣接する第1の面100の縁に形成しておく。
前記マスク110と111の形成において、前記マスク形成面100の表層内にGaのFIBによってGaイオンを所定のパターンで注入する。
FIBの加速電圧を約30kVにして、被膜40の最表面を5〜20nm程度削りながらイオン注入を行う。
結果的に、イオン注入部において、被膜40の最表面から約30nmの深さまでGaイオンの密度がほぼ均等になる。
FIBのビーム径を10nm程度に絞って、ビーム電流と走査速度を調整して、前記Gaイオンの最高密度を約3×1021cm-3にする。
マスクパターンの周期を約1μmにする。よって、形成すべき3次元フォトニック結晶の周期数は横方向において約20であり、高さ方向にいて約30である。
次に、図1(d)に示したように、前記第1のマスク110のパターンをSiO2被膜40に転写する。
具体的に、C48とO2の混合ガスを用いた反応性イオンエッチングにより、第1の面上にマスク110と111のない部分におけるSiO2被膜を取り除いて、該被膜の下にある第1の面120のSi部分を露出させる。
このエッチング工程において、Gaイオン注入を行っていない部分のSiO2被膜がエッチングされるが、Gaイオン注入を行った部分、つまりマスク110と111の部分のSiO2被膜がエッチングされない。
なぜなら、これらのマスク部分において、Gaがフッ素と化学反応して、揮発性の極めて低いGaフッ化物を形成する。
このGaフッ化物は、該部分の表面で保護膜を形成し、被膜SiO2のエッチングを防ぐマスクとなる。
次に、図1(e)に示したように、前記マスク110と111、およびSiO2被膜40をマスクとして、第1の面100に対してほぼ垂直にSi母材20をRIE法、いわゆるボッシュプロセスで加工する。
この際、反応ガスとして、エッチング時にはSF6ガスを用い、被膜(保護膜)形成時にはC48ガスを用いる。この工程においても、Gaフッ化物の生成によるマスク効果が発揮される。
該異方性エッチング処理によって、第1の面100に対してほぼ垂直の方向において、前記マスク110と111、およびSiO2被膜40により保護されていない前記母材20の部分が除去され、母材20に細孔125が形成される。
そして、EB−CVD法で、第2の面200からみて、第1の面100に形成された細孔125の位置関係がわかるような位置合せ用構造体112を形成する。前記構造体112の材質は、例えば、Ptとする。このように形成したPt構造体にC等の不純物が含まれているが、位置合せマークとするためには支障がない。
次に、図1(f)に示したように、フォトニック結晶母材20の第2の面200に第2のマスク210を形成する。
形成方法は、前述の第1の面100に第1のマスク110を形成する方法と同様である。
このとき、第2のマスクの位置は、前記の位置合せ用構造体112を利用して、第1のマスクの位置に合わせる。
本手法で3次元フォトニック結晶を形成する際、必要となるマスク位置合せはこの一回のみなので、位置合せによる加工精度が高い。
次に、図1(g)に示したように、前記第2のマスク210のパターンをSiO2被膜40に転写して、第2の面上に第2のマスク210のない部分のSiO2被膜を取り除いて、該被膜の下にある第2の面220の部分を露出させる。
パターン転写工程は、図1(d)で示した工程と同様である。
次に、図1(h)に示したように、前記第2のマスク210、およびSiO2被膜40をマスクとして、第2の面200に対してほぼ垂直にSi母材20をRIE法、いわゆるボッシュプロセスで加工する。
このRIE工程は、図1(e)で示した工程と同様である。
該異方性エッチング処理によって、第2の面200に対してほぼ垂直の方向において、前記第2のマスク210およびSiO2被膜40により保護されていない前記母材20の部分が除去され、母材20に細孔225が形成される。
次に、図1(i)に示したように、前記マスク(第1のマスク110、第2のマスク210と第2の面を保護するためのマスク111を含む)を除去する。このとき、例えば、HClと純水の混合液を使う。
次に、図1(j)に示したように、前記SiO2被膜40を除去し、フォトニック結晶を露出させて、フォトニック結晶の主要部の作製を完了する。SiO2被膜40の除去において、フッ酸に緩衝液とするNH4Fを混合したバッファードフッ酸を用いる。
実際に、図1(i)に示した前記マスクを除去する工程を入れなくても、図1(j)に示した前記SiO2被膜の除去工程だけでも、SiO2被膜の表面に形成されている前記マスクが完全に除去できる。
本実施例によれば、上記の方法によって、Siを材料とした、周期1μm、各方向の周期数が約20以上のウッドパイル型3次元フォトニック結晶を得ることができる。
[実施例2]
実施例2では、基板の主面(上面又は表面)と該主面と交差している1つの側面を加工することによって、3次元フォトニック結晶を製造する方法について説明する。
実施例1との違いは、マスキング及びエッチングを行う加工面が異なる。
実施例1ではフォトニック結晶の母材の互いに交差する1の側面と他の側面とから加工する方法であるのに対して、実施例2では、互いに交差する1の主面と、1の側面とから加工する方法である。
なお、実施例1とは上記した点が異なるだけであるから、重複する部分は省略する。
本実施例の製造工程は、つぎのとおりである。
まず、図2(a)に示したように、基板の主面400に対して、半導体微細加工を施す。この微細加工は、実施例1における第1の側面を加工することに相当する。
但し、前記基板の主面400に対する加工は、平面上で行うので、前記FIBによるマスク形成のほかに、フォトリソグラフィや、電子ビーム露光などによるパターン形成が可能である。
そのため、基板サイズの広い領域にわたって、複数の部分に微細パターンを同時に形成可能である。
この場合、各領域において、用途によって全く異なる構造、異なる面積のパターンを形成できる。
その結果、必要に応じて、異なる性能の3次元フォトニック結晶を集積することが可能となる。
具体的に、まず、厚みが約500μmのSi基板10の主面400上に、Cr(厚みは約5nm)、そしてAu(厚みは約50nm)の薄膜を電子ビーム蒸着法で堆積する。
次に、前記の金属薄膜の上に電子ビームレジストを塗布し、電子ビーム露光を行い、形状と面積がそれぞれ異なる複数の領域にそれぞれ異なる2次元微細パターンを形成する。
そして、イオンミリングによって、上記電子ビームレジストのパターンを前記Cr/Au薄膜に転写し、前記電子ビームレジストがないところにおけるSi基板の主面400の部分を露出させる。
続いて、Si基板の主面400に対してほぼ垂直の角度から、Siの反応性イオンエッチングを用いた、いわゆるボッシュプロセスを行う。
この際、反応ガスとして、エッチング時にはSF6ガスを用い、被膜(保護膜)形成時にはC48ガスを用いる。
該異方性エッチング処理によって、Si基板の主面400に対してほぼ垂直の方向において、前記電子ビームレジストと金属薄膜により保護されていないSi基板の部分に深い細孔が形成される。
最も細かいパターンにおいて、細孔の深さが約30μmである。
続いて、電子ビームレジスト、Au及びCr薄膜をそれぞれ適宜なエッチャントを用いて除去する。以上の工程(図示せず)により、図2(a)に示したように、基板の主面400上に、微細パターン領域410ができる。
次に、図2(b)に示したように、前記のSi異方性加工で前記微細パターン領域のそれぞれの側面を出す。
そのために、フォトリソグラフィとSiの深堀エッチング(ボッシュプロセス)を行う。
この場合、確実に該当の側面を出すために、前記のSiのエッチングは深さ方向において、基板の主面400に対して、ほぼ垂直に行い、エッチング深さは100μmとする。
これによって、前記各微細パターン領域の下部に、基板10の一部11が見えてくる。また、主面400の面内におけるエッチング領域は、前記微細パターン領域410と重なるように行う。
即ち、各微細パターン領域の周囲を切り落とすように行う。こうして、第1の面の加工が完成しているフォトニック結晶の母材20が複数にできている。該母材の高さは約100μmであり、長さと幅は5μm乃至1mmの範囲にある。
理解を容易にするために、図2(c)に前記フォトニック結晶の母材20の一部を拡大して表示している。
説明の便宜上、以下では、ウッドパイル構造を例にしており、構造周期を約1μmとする。
図の中では、第1の面は410、第2の面は420とする。また、第2の面420において、溝部は421、平坦部は422と記している。ここでは、第1の面410と第2の面420とはほぼ垂直である。
第2の面の幅は約100μmであり、つまり、フォトニック結晶の厚み方向の周期数は約100である。
また、第2の面から見たフォトニック結晶母材の厚みは約20μmであり、この方向におけるフォトニック結晶の周期数が約20である。
次に、図2(d)に示したように、母材20及び基板10の表面にSiの熱酸化膜(SiO2)を形成し、被膜40とする。前記被膜の形成方法は実施例1と同様である。
次に、図2(e)に示したように、被膜40を形成した前記母材の第2の面420に所定のマスクを形成する。この場合、第2の面に凹凸が存在するため、前記マスクを前記溝部421と前記平坦部422にそれぞれ形成する。
前記平坦部422に形成したマスク450の形状は図示のとおりである。
前記溝部421に形成したマスク455の形状を図2(i)に表示している。図2(i)は、図2(e)において、AA’で示した線に沿って、第2の面420に対して平行に切り取ったフォトニック結晶母材の断面図である。
前記マスクの形成方法は実施例1と同様である。但し、本実施例におけるマスク形成時の位置合せは、前記第2の面にある溝部421を基準にすればよく、特別に位置合わせ用構造体を形成しなくても良い。
これで横方向に5nm以上の位置合せ精度を得ることが可能である。高さ方向の位置決めは、第2の面420の上端を基準にすればよい。
この場合、高さ方向に多少の位置ずれが生じても、上から第1層目の構造の厚みにしか影響がない。本手法で3次元フォトニック結晶を形成する際、必要となるマスク位置合せはこの一回のみなので、位置合せによる加工精度が高い。
次に、図2(f)に示したように、前記第2のマスクである450と455のパターンをSiO2被膜40に転写して、図示のように第2の面420のSi部分220を露出させる。前記パターン転写方法は実施例1と同様である。
次に、図2(g)に示したように、前記第2のマスク450と455、およびSiO2被膜40をマスクとして、第2の面420に対してほぼ垂直に前記母材20に図示の細孔225を形成する。
前記細孔225の形成方法は実施例1と同様である。
次に、図2(h)に示したように、前記マスク450と455、および前記SiO2被膜40を除去して、フォトニック結晶を露出させ、フォトニック結晶の主要部の作製を完了する。
前記マスク及び被膜の除去方法は実施例1と同様である。
上記の方法によって、Siを材料とした、周期1μm、各方向の周期数が約20以上のウッドパイル型3次元フォトニック結晶を得ることができる。
図2(h)において、1300は本実施例の3次元フォトニック結晶、1301は従来のウッドパイル構造のロッドに対応する本実施例による一体的に成形された本実施例の柱状部である。
また、1305は本実施例の一体的に成形されたの柱状部の断面である。
[実施例3]
実施例3では、柱状部の断面形状が異なる各種の3次元フォトニック結晶を製造する方法について説明する。
但し、ここでは、長さ方向において、柱状部の断面形状および断面積が均等のものについて説明する。
図3に、3次元周期構造体における柱状部の断面形状が異なる構成例を説明する図を示す。
上記した本実施例の3次元フォトニック結晶の製造方法によれば、既に述べたように、3次元周期構造体の構成する柱状部が一体的に成形されているので、従来のウッドパイル構造にみるような構造単元である独立なロッドが存在しない。
これまでの説明では、便宜上のために、柱状部の断面形状を長方形とした。
しかし、本実施例によれば、任意形状な断面をもつロッドによって構成する3次元フォトニック結晶の製造が可能である。
本実施例によって製造可能な柱状部の断面の形状を図3に示しているが、本発明は図3に挙げられたものに限定されるものではない。
図3の中に、本実施例よって製造可能であるが、従来の積層法等で製造困難な構造が多数含まれている。
例えば、図3の中のVI乃至XI組に代表されたような、柱状部に中空部1306が形成されている構造等、従来の積層法等で製造困難な構造が多数含まれている。
図3に列挙した断面形状をもつ柱状部によって構成する3次元フォトニック結晶は、本発明の実施例1または実施例2で説明した工程によって製造可能である。
具体的には、つぎのような3次元フォトニック結晶が構成可能となる。
すなわち、複数の柱状部を平行に、且つ所定の面内周期で周期的に配置したストライプ層を複数備え、これらストライプ層を該ストライプ層の厚さ方向に配列して構成された3次元周期構造を有する3次元フォトニック結晶であって、
前記3次元周期構造として、複数の柱状部が平行に、且つ所定の面内周期で周期的に配置された第1のストライプ層と、
前記第1のストライプ層に属する各柱状部上に、該各柱状部と異なる方向に延びる柱状部を有する第2のストライプ層と、
上記第2のストライプ層上に、上記第1のストライプ層に属する各柱状部と平行で且つ面内周期の1/2だけずれて位置する第3のストライプ層と、
上記第3のストライプ層上に、上記第2のストライプ層に属する各柱状部と平行で且つ面内周期の1/2だけずれて位置する第4のストライプ層と、
を備え、上記第1から第4のストライプ層に属する各柱状部が一体的に形成され、上記第1から第4のストライプ層を一組として、複数組を順次、該ストライプ層の厚さ方向に配列した構造を得ることができる。
本実施例によれば、上記それぞれのストライプ層に属する各柱状部が、図3に示すような異なった断面形状を有する構成とすることができる。
また、上記それぞれのストライプ層に属する各柱状部が、中空部を有する構成とすることができる。
[実施例4]
実施例4では、3次元フォトニック結晶を構成する柱状部が、長さ方向において断面形状および断面積を不均等とした構成例について説明する。
図4、図5、図7に、本実施例の構成例について説明する図を示す。
本実施例における製造方法は、本発明の実施例1、または実施例2で説明した工程によって製造可能なので、詳細を省略する。
以下では、製造すべく3次元フォトニック結晶の構造及びそれを製造するためのマスクについて、ジョイントロッド型3次元フォトニック結晶構造に対応するものを製造する例にして説明する。
3次元フォトニック結晶において、ロッドは長さ方向において断面形状および断面積が変化可能であると、デバイス設計の自由度が向上するだけではなく、より優れた特性をもつデバイスの実現ができる。
例えば、特許文献2に見られるジョイントロッド型3次元フォトニック結晶構造は、ウッドパイル構造より広いフォトニック結晶バンドギャップを得ることができる。
ジョイントロッド構造の一例を図7を用いて、さらに詳しく説明する。
図7に示したジョイントロッド構造は、上下に隣接しているロッド310の交差部分に320で示したような板状のジョイントが2つ設けられている。
ジョイントの長さ方向はそれぞれのロッドの長さ方向と一致するようになっている。
前記ジョイントロッド構造の寸法は、例えば下記のとおりである。
ロッドの長さは約100μm、平面上におけるロッドの周期は約250nm、厚み方向におけるロッドの層数は12層である。
ロッドの幅は約80nm、厚さは約50nmであり、ジョイントの幅は約100nm、長さは約150nm、厚さは約20nmである。
図4は、前記ジョイントロッド構造に対応する本実施例の構造を製造するためのマスクを説明するための図である。
理解を容易にするため、第1の面と第2の面が互いに垂直であり、共にZ方向に平行する場合を例にしている。Z方向は方向を示す矢印51で表示されている。図4に示したのは、第1の面上に形成すべく第1のマスク110(図4(a))と第2の面上に形成すべく第2のマスク210(図4(b))のそれぞれの一部分である。
前記マスク110と210は、Z方向において高さが一致するように配置されている。
図4では、等高線L1とL2で挟んでいる第1のマスクの部分130は、第1の面からフォトニック結晶構造体の一層を加工するためのものである。
等高線L3とL4で挟んでいる第2のマスクの部分230は、第2の面からフォトニック結晶構造体の一層を加工するためのものである。
前記第1のマスクの部分130と第2のマスクの部分230によって、Z方向において隣接しているフォトニック結晶の2層が形成される。
比較のため、実施例1におけるウッドパイル構造に対応する構造を製造するときに用いた第1のマスク110と第2のマスク210を、図4と同じ要領で部分的に図5に示す。
図5において、等高線L5とL6で挟んでいる第1のマスクの部分130は、第1の面からフォトニック結晶構造体の一層を加工するためのものである。
等高線L7とL5で挟んでいる第2のマスクの部分230は、第2の面からフォトニック結晶構造体の一層を加工するためのものである。
前記第1のマスクの部分130と第2のマスクの部分230によって、Z方向において隣接しているフォトニック結晶の2層が形成される。
等高線L5、L6とL7で分かるように、前記マスク110を用いて加工した層は、前記マスク210を用いて加工した層とは、Z方向において共有部分がなく互いに重ならないようになっている。
すなわち、前記第2のマスクを形成する工程で前記第2のマスクを形成するに際し、該第2のマスクが前記第1のマスクに対して、前記第1及び第2の面が交差する交差部の稜線方向において、互いに重ならない位置に形成される。
これにより、前記マスク110を用いて加工した層は、前記マスク210を用いて加工する際、前記マスク210によって完全に保護されている。
この場合、長さ方向において柱状部の断面形状および断面積が、均等であるウッドパイル構造に対応する構造が製造できる。
これに対して、本実施例において、図4で示したように、前記マスク110を用いて加工した層は、前記マスク210を用いて加工した層とは、Z方向において共有部分があり互いに重なるようになっている。
すなわち、前記第2のマスクを形成する工程で前記第2のマスクを形成するに際し、該第2のマスクが前記第1のマスクに対して、前記第1及び第2の面が交差する交差部の稜線方向において、一部が重なる位置に形成される。
重なる部分は等高線L1とL4で挟んでいる部分である。前記重なる部分は、前記第1のマスク110を用いて加工した後、前記第2のマスク210を用いて加工する際、再び加工されることになる。
前記2つの加工によって、前記重なる部分において、図6に示したようなジョイント部320に対応する構造が形成される。
すなわち、上記したストライプ層に属する各柱状部と異なる方向に延びる柱状部の交差領域に、該交差領域の面積より大きく、且つ前記各柱状部の長さ方向と一致するジョイント部が配置された構造を得ることができる。
これにより、前記第1のマスク110と第2のマスク210を用いた2つの加工だけで、ジョイントロッド構造のロッド部310に対応する構造だけでなく、ロッドのジョイント部320に対応する構造も同時に形成することができる。
本実施例の手法によれば、ジョイントロッドのような、ロッドは長さ方向において断面形状および断面積が均等ではない構造に対応する構造を一体的に形成した3次元フォトニック結晶の製造が可能となる。
本発明の実施の形態及び実施例1における3次元周期構造体の製造方法を説明する図。 本発明の実施例2における3次元周期構造体の製造方法を説明する図。 本発明の実施例3における3次元周期構造体における柱状部の断面形状が異なる構成例を説明する図。 本発明の実施例4における3次元周期構造体を製造するためのマスク形状を説明する図。 本発明の実施例4における3次元周期構造体を製造するためのマスク形状を説明する図。 従来例におけるウッドパイル構造を有する3次元フォトニック結晶を説明する模式図。 従来例におけるジョイントロッド型3次元フォトニック結晶構造を説明する模式図。
符号の説明
10、11:基板
20:フォトニック結晶母材
31:第1の角度
32:第2の角度
33:第3の角度
40:被膜
50:座標
51:方向を示す矢印
55:断面の指示ライン
100:第1の面
110:第1のマスク
111:第2の面を保護するためのマスク
112:位置合せ用構造体
120:第1の面の露出部分
125:第1の面をエッチング処理して形成された細孔
130:フォトニック結晶構造体の一層を加工する第1のマスクの部分
200:第2の面
210:第2のマスク
220:第2の面の露出部分
225:第2の面をエッチング処理して形成された細孔
230:フォトニック結晶構造体の一層を加工する第2のマスクの部分
300:3次元周期構造
301:ウッドパイルのロッド
305:ロッドの断面
310:ロッド部
320:ロッドのジョイント部
400:基板の主面
410:微細パターン領域(第1の面)
420:微細パターン領域の側面部分(第2の面)
421:第2の面における溝部
422:第2の面における平坦部
450:第2の面における平坦部上に形成されたマスク
455:第2の面における溝部内に形成されたマスク
L1乃至L7:等高線
1300:3次元周期構造
1301:一体的に形成された柱状部
1305:一体的に形成された柱状部の断面
1306:一体的に形成された柱状部の中空部分

Claims (14)

  1. 3次元フォトニック結晶の製造方法であって、
    第1の面と、第2の面とが第1の角度で交差する面を有する母材を用意する工程と、
    前記母材を雰囲気中で熱処理することによって、少なくとも前記母材における前記第1の面と前記第2の面に被膜を形成する工程と、
    前記第1の面に第1のマスクを形成する工程と、
    前記第1の面に形成された前記被膜のマスクの形成されていない部分をエッチング処理によって選択的に除去し、該第1の面の露出部分を形成する工程と、
    前記第1のマスクを用いて、前記第1の面の露出部分に対して第2の角度からドライエッチングし、前記母材に細孔を形成する工程と、
    前記第2の面に第2のマスクを形成する工程と、
    前記第2の面に形成された前記被膜のマスクの形成されていない部分をエッチング処理によって選択的に除去し、該第2の面の露出部分を形成する工程と、
    前記第2のマスクを用いて、前記第2の面の露出部分に対して第3の角度からドライエッチングし、前記母材に細孔を形成する工程と、
    を含み、
    前記第1のマスク及び第2のマスクは、前記被膜を含む前記母材のマスク形成面の表層内に、集束イオンビームよるイオン注入によって形成されることを特徴とする3次元フォトニック結晶の製造方法。
  2. 前記3次元フォトニック結晶の母材が、単結晶またはアモルファス状態のSiまたはSiの化合物で形成されることを特徴とする請求項1に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法。
  3. 前記イオンは、GaイオンまたはInイオンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3次元フォトニック結晶の形成方法。
  4. 前記第1の面と前記第2の面に被膜を形成する工程において、
    前記母材を雰囲気中で熱処理することによって、該母材の表面成分を雰囲気ガスと反応させ、該母材表面の少なくとも一部に酸化膜または窒化膜を形成させることを特徴とする請求項に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法。
  5. 前記母材の第1の面及び第2の面に細孔を形成する工程において、
    前記ドライエッチングが、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチングであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法。
  6. 前記母材を用意する工程において、前記第1の角度が、10°以上170°以下であることを特徴とする請求項1乃至に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法。
  7. 前記母材の第1の面及び第2の面に細孔を形成する工程において、前記第2の角度及び第3の角度が、それぞれ10°以上90°以下であることを特徴とする請求項1乃至に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法。
  8. 前記第2のマスクを形成する工程は、前記第2のマスクを形成するに際し、該第2のマスクが前記第1のマスクに対して、前記第1及び第2の面が交差する交差部の稜線方向において、
    互いに重ならない位置に形成され、または一部が重なる位置に形成するプロセスを含むことを特徴とする請求項1乃に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法。
  9. 前記第1の面の表面から前記第2の面側に突き出している位置合わせマークが形成され、前記第2のマスクを形成するに際し、前記第1の面に形成された位置合わせマークが用いられることを特徴とする請求項に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法を用い、3次元フォトニック結晶を製造する3次元フォトニック結晶の製造方法であって、
    複数の柱状部を平行に、且つ所定の面内周期で周期的に配置したストライプ層を複数備え、これらストライプ層を該ストライプ層の厚さ方向に配列して構成された3次元周期構造を有する3次元フォトニック結晶を製造するに際し
    前記3次元周期構造は、複数の柱状部が平行に、且つ所定の面内周期で周期的に配置された第1のストライプ層と、
    前記第1のストライプ層に属する各柱状部上に、該各柱状部と異なる方向に延びる柱状部を有する第2のストライプ層と、
    上記第2のストライプ層上に、上記第1のストライプ層に属する各柱状部と平行で且つ面内周期の1/2だけずれて位置する第3のストライプ層と、
    上記第3のストライプ層上に、上記第2のストライプ層に属する各柱状部と平行で且つ面内周期の1/2だけずれて位置する第4のストライプ層と、
    を備え、
    上記第1から第4のストライプ層に属する各柱状部が一体的に形成され、上記第1から第4のストライプ層を一組として、複数組を順次、該ストライプ層の厚さ方向に配列した構造を有する3次元フォトニック結晶を製造することを特徴とする3次元フォトニック結晶の製造方法
  11. 前記ストライプ層に属する各柱状部は、異なった断面形状を有していることを特徴とする請求項10に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法
  12. 前記ストライプ層に属する各柱状部は、該柱状部の長さ方向において断面形状および断面積が均等に形成されていることを特徴とする請求項11に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法
  13. 前記ストライプ層に属する各柱状部が、中空部を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法
  14. 前記各柱状部と異なる方向に延びる柱状部の交差領域に、該交差領域の面積より大きく、
    且つ前記各柱状部の長さ方向と一致するジョイント部が配置されていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の3次元フォトニック結晶の製造方法。
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