JP4935938B2 - Rfidタグ - Google Patents

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この発明は、RFID(Radio Frequency Identification)タグに関し、リーダライタから送信されるコマンド信号を受信し、そのコマンド信号の情報に応じてメモリに格納しているタグ情報を更新し、追記し、又はそのタグ情報をRFIDリーダライタに読み出し信号として送信するものであり、生体・物品の入退室管理や物流管理などに利用されるものである。
従来のRFIDシステムは、ICチップを備えたRFIDタグとRFIDリーダライタとの間で無線通信を行なうものである。RFIDタグは、バッテリーを搭載してその電力で駆動するいわゆるアクティブ型タグと、リーダライタからの電力を受けてこれを電源として駆動するいわゆるパッシブ型タグとがある。アクティブ型タグは、パッシブ型に比べてバッテリーを搭載しているため、通信距離や通信の安定度などの点でメリットがある一方、構造が複雑で、サイズの大型化や高コスト化などのデメリットもある。そして、近年の半導体技術の向上により、パッシブ型タグ用としてICチップの小型化、高性能化が進み、通信距離の拡張や通信の安定度の向上などにより、パッシブ型タグの幅広い分野における使用が期待されている状況である。
パッシブ型タグにおいて、周波数帯が長波帯、短波帯のRFIDタグで適用されている電磁誘導方式では、リーダライタの送信アンテナコイルとRFIDタグのアンテナコイルとの間の電磁誘導作用でRFIDタグに電圧が誘起され、この電圧によりICチップを起動して通信を可能としている。したがって、RFIDリーダライタによる誘導電磁界内でしかRFIDタグが動作せず、通信距離は数十cm程度となってしまう。また、UHF帯及びマイクロ波帯などの高い周波数帯のRFIDタグでは、電波通信方式が適用されており、電波によりRFIDタグのICチップに電力を供給しているため、通信距離は1〜8m程度と大幅に向上している。したがって、UHF帯及びマイクロ波帯などの高い周波数帯のRFIDタグは、通信距離の短い長波帯、短波帯のRFIDシステムでは実現が困難であった複数枚のRFIDタグの一括読み取りや移動しているRFIDタグの読み取りなども可能となり、その利用範囲は、今後大幅に広がるものと考えられる。そこで、UHF帯又はマイクロ波帯などの高い周波数のパッシブ型タグとしては、例えば、特許文献1に記載されたものがあった。
従来のRFIDタグに関し、特許文献1の第4図に示すように、アンテナ面30には、誘電体20の一部を露出させる開口31が形成されている。開口は、互いに対向するように平行に延びる一対の第1スリット31aと、該一対のスリット31aと、該一対のスリット31aを連通する第2スリット31bとを有し、前記第2スリット31bを前記一対の第1スリット31aの中間部に位置させたRFIDタグが開示されている。なお、送受信素子(ICチップ)は、第1及び第2給電点は41、42に接続されている。
特開2006−237674号公報(第4図)
特許文献1に記載のRFIDタグは、開口が互いに対向するように平行に延びる一対の第1スリット31aと、該一対のスリット31aと、該一対のスリット31aを連通する第2スリット31bとを有し、該開口31は、アンテナ面30のうち該開口31を介して露出する誘電体20によって画される領域36、37が送受信素子に対する整合回路を形成するように構成されているので、給電方向が横方向に対し一対のスリット31aが横長形状となり第2スリット31bにおける横方向の正偏波の電界と併せて一対のスリット31aに縦方向の交差偏波成分の電界も発生するので、正偏波成分の利得が低下する。また、発生した交差偏波が、本来正偏波で意図した方向とは異なる方向に放射されるため、リーダライタと通信する時に通信したくない場所にタグがいるのに通信してしまう場合があり、タグの設置方法や運用方法が困難になる。さらに、特許文献1のパッチアンテナでは、給電点41、42はアンテナ面30の中央付近にあるが、スリットをアンテナ面30の中央からずらした位置に配置することを基本としているので、正偏波のパターンも非対称になり、アンテナの放射パターンの対称性に影響を与える。このことから特許文献1のパッチアンテナは、領域36、37と送受信素子(ICチップ)との整合をとることを中心に考えてことが分かる。一方、本明細書の図2に示すRFIDタグ(パッチアンテナ)のような構成を採れば、スロット(スリット)部に発生する電界方向とパッチアンテナの電界方向が一致しているため、交差偏波成分はかなり低く抑えられることに加えて、スロットをパッチアンテナの中央に設置することを基本としているために正偏波のパターンも左右対称となるので、アンテナの放射パターンの対称性を良好にすることができる。しかし、これらのRFIDタグ(パッチアンテナ)では、使用周波数や使用するICチップのスペックにより整合をとるためのスリットの長さが決定され、そのスリットの長さにより、パッチアンテナの大きさの最小値が決まってしまうために、RFIDタグの設置個所が幅狭である場合に設置することができない可能性があるという課題があった。
また、特許文献1に記載のRFIDタグは、ICチップの小型化が進んでいたとしても、ICチップの厚みはアンテナパターンや端子部の導体厚と比較すると厚く、しかもICチップが基材の表面に実装されるためにRFIDタグの表面に突起ができてしまう。したがって、RFIDタグに耐環境性が求められる場合は、ICチップの実装部全体あるいは一部を被覆保護してRFIDタグの表面を平坦にする必要がある。すなわち、基材にアンテナパターン及びICチップを実装する場合には、衝撃などによりICチップが破損するおそれがあり、RFIDタグの表面(上面)にラベルプリンタを使用して直接印刷することが難しくなるという課題があった。また、RFIDタグの表面にラベルを印刷する印刷面を設けるために、基材にアンテナパターンとICチップとを実装したフィルムを接着する場合には、ICチップによるフィルムの膨らみ(突起)が生じるため、やはり前記のような課題があった。
そこで、この発明は、前述のような課題を解消するためになされたもので、タグの寸法・形状の自由度が増す(言い換えると、制約が改善される)ため、設置個所の自由度をこれまで以上に拡大することができ、通信距離を短縮することなく導電性物体や非導電性物体に関わらずに設置可能である新規なRFIDタグを提供することを目的とする。
請求項1に係るRFIDタグは、誘電体基板、この誘電体基板の一方の面に設けた導体層、前記誘電体基板の他方の面に設け、長細状スロットを有する導体パターン、及び前記長細状スロットの幅方向に対向する二辺にそれぞれ接続され、前記長細状スロットを通して電波を送受信するICチップを備え、前記長細状スロットは、長さ方向の端部における幅方向の長さが、前記ICチップが接続された部分の幅方向の長さよりも長く、前記ICチップは、前記導体パターンと前記導体層との間に形成される電界によって生じる前記長細状スロットの対向部分の電位差によって給電されることを特徴とするものである。
請求項2に係るRFIDタグは、誘電体基板と、この誘電体基板の一方の面に設けた導体層と、前記誘電体基板の他方の面に設け、長細状スロットを有する導体パターンと、この導体パターン側に、二つの端子を有し、前記長細状スロットの幅方向に対向する二辺に前記二つの端子をそれぞれ載せて接続され、前記長細状スロットを通して電波を送受信するICチップとを備え、前記ICチップは、前記導体パターンと前記導体層との間に形成される電界によって生じる前記長細状スロットの対向部分の電位差によって給電されることを特徴とするのである。
請求項3に係るRFIDタグは、誘電体基板と、この誘電体基板の一方の面に設けた導体層と、長さ方向の端部における幅方向の長さを延長した長細状スロットを前記誘電体基板の他方の面に設けた導体パターンと、前記長細状スロットの内部に幅方向における対向する前記導体パターンの両側から延ばし、互いに離隔した電極部と、この電極部に電気的に接続して前記長細状スロットを通して電波を送受信するICチップとを備え、前記ICチップは、前記導体パターンと前記導体層との間に形成される電界によって生じる前記長細状スロットの対向部分の電位差によって給電されることを特徴とするものである。
請求項4に係るRFIDタグは、 誘電体基板と、この誘電体基板の一方の面に設けた導体層と、長細状スロットを前記誘電体基板の他方の面に設けた導体パターンと、前記長細状スロットの内部に幅方向における対向する前記導体パターンの両側から延ばし、互いに離隔した電極部と、前記導体パターン側に、二つの端子を有し、前記電極部に前記二つの端子をそれぞれ載せて電気的に接続して前記長細状スロットを通して電波を送受信するICチップとを備え、前記ICチップは、前記導体パターンと前記導体層との間に形成される電界によって生じる前記長細状スロットの対向部分の電位差によって給電されることを特徴とするものである。
以上のように、この発明に係るRFIDタグによれば、非導電性のみならず導電性であっても設置可能であり、背面物体の影響をほとんど受けない構造であるため、通信可能な距離を短縮することもないという効果を奏する。
この発明の実施の形態1に係るRFIDタグの構成図である。 直線状のスロットを有するRFIDタグ構成図である。 この発明に係るスミスチャート(インピーダンスチャート)である。 この発明に係るRFIDシステム基本構成図である。 導体パターンと接地導体層との間の電界図である。 RFIDタグの特性インピーダンスの変化図である。 この発明の実施の形態1(変形例)に係るRFIDタグの構成図(ICチップ実装前)である。 この発明の実施の形態1(変形例)に係るRFIDタグの構成図(ICチップ実装前)である。 この発明の実施の形態1(変形例)に係るRFIDタグの構成図(スロット形状変更)である。 この発明の実施の形態1(変形例)に係るRFIDタグの構成図(スロット形状変更)である。 この発明の実施の形態1(変形例)に係るRFIDタグの構成図(スロット形状変更)である。 この発明の実施の形態1(変形例)に係るRFIDタグの構成図(スロット形状変更)である。 この発明の実施の形態2に係るRFIDタグの構成図である。 この発明の実施の形態2に係るRFIDタグの製造工程図である。 この発明の実施の形態2に係る射出成型金型の構成図である。 この発明の実施の形態2に係る射出成型金型断面図である。 この発明の実施の形態2に係る下方金型への導体箔載置図である。 この発明の実施の形態2に係る射出成型金型の重ね合わせ図である。 この発明の実施の形態2に係る誘電体基板用射出成型金型熱可塑性樹脂注入図である。 この発明の実施の形態2に係る射出成型された誘電体基板の取り出し図である。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1について、以下に説明する。図1は、この実施の形態1に係るRFIDタグの構成図である。図1(a)は、RFIDタグの平面図、図1(b)は、図1(a)で示すRFIDタグのスロット周辺拡大図、図1(c)は、図1(a)でA−A’線により切断したときの断面図、図1(d)は、図1(c)の分解断面図である。これらの図1において、1は、誘電体基板で、例えばプリント基板で使用される誘電体やオレフィン系熱可塑性エラストマーなど熱可塑性樹脂から構成されている。2は、誘電体基板1上に設けられたRFIDタグのアンテナ(パッチアンテナ)の放射部として機能する導体パターンで、図1(a)に示すように、誘電体基板1の縦及び横の端部から距離dだけ隔ててその内側に形成している。なお、この導体パターン2は、フィルム基材(図示せず)に印刷したものを誘電体基板1の一主面(表面)上に接着シートや接着剤(図示せず)などを用いて貼り付けたものでもよい。また、この場合には、フィルム基材はフィルムポリエチレンテレフタラート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどを使用することができる。また、フィルム基材を誘電体基板1の縦及び横の端部から距離dだけ隔てて、誘電体基板の一主面上に配置することもできる。この場合、導体パターン2はフィルム基材26上の全面に設けることもできる。
導体パターン2の中央部には、図1(a)、(b)に示すように、スロット3を形成している。スロット3により、導体パターン2から誘電体基板1が露出してよいし、誘電体基板1の露出部分は、コーティングされていてもよい。スロット3は、RFIDタグの放射パターンが良好となるように導体パターン2の中央部に形成され、長細状スロット3aと屈曲状スロット3bとからなる(スロット3は、導体パターン2の中央部でなくとも動作するが通信距離等の性能が、導体パターン2の中央部にスロット3を設けたものよりも劣化する場合がある)。屈曲状スロット3bは、長細状スロット3aの端部3cにおいて連続し、長細状スロット3aに対して両直交方向に屈曲させて延長している。ここで、図1(b)に示した構成においては、長細状スロット3aは、スロット3のうち縦方向に延びた点線を付した内側の部分を含むものである。また、長細状スロット3aの端部3cについては、点線により囲まれた部分を指すものとする。そして、図1(b)に示すように、点線を付した部分である端部3cに連続して横方向に延長した部分を屈曲状スロット3bとしている。また、長細状スロット3a及び屈曲状スロット3bの長さとその幅は使用周波数や実装するICチップの特性インピーダンスによって決定することができる。4は、スロット3を通して電波を送受信するICチップであり、後述するメモリなどから構成され、端子5、5を備えている。ICチップ4は、長細状スロット3aを介して導体パターン2に電気的に接続している。すなわち、ICチップ4は、長細状スロット3aの中央部に配置する。長細状スロット3aの内部に導体パターン2の両側から延ばして互いに離隔した電極部6、6を形成している。
ここで、ICチップ4と導体パターン2との接続構成について説明する。前述の6、6は、図1(c)及び(d)に示すように、スロット3(長細状スロット3a)の両側における導体パターン2からスロット3の内部に延びる突起状の電極部で、それぞれスロット3の両側における導体パターン2、2に連続的に繋がって電気的に連続している。ICチップ4の端子5、5は、それぞれ電極部6、6に半田付けなどにより接続することとなる。ICチップ4のサイズがスロット3の幅と同程度又はこれより小さい場合には、スロット3の幅内に入ることになるが、ICチップ4のサイズがスロット3の幅よりも大きい場合には、ICチップ4の端子5、5は、スロット3に近い部分に跨るように電気的に接続すればよい。したがって、この場合には、電極部6、6を設ける必要はないことになる。なお、図1においては、ICチップ4は、長細状スロット3aの中央部に配置しているが、長細状スロット3aであって、その中央部でない端部3cよりに配置してもよい。
なお、スロット3及び電極部6、6はエッチング・蒸着・ミリングなどにより導体パターン2を形成する際に同時に形成すればよい。また、フィルム基材に導体パターン2を印刷したものを誘電体基板1に貼り付ける場合は、全面に導体層を設けたフィルム基材をエッチングにより導体パターン2(スロット3及び電極部6、6を含む)を形成しても、最初から導体パターン2(スロット3及び電極部6、6を含む)をフィルム基材に印刷してものを用いてもよい。次に、7は、誘電体基板1の他主面(裏面)に設けた接地導体層であり、導体パターン2と同様に、フィルム基材に印刷したものを誘電体基板1に接着シートや接着剤などにより貼り付けて製造してもよいし、誘電体基板1に導体箔を蒸着させるなどの一般的なプリント基板の加工方法を用いて製造してもよい。
次に、図2及び図3を用いて、実施の形態1に係るRFIDタグが、直線状のスロットを有するRFIDタグと等価な性能を有し、かつ直線状のスロットを有するRFIDタグよりも「誘電体基板1のスロット3(長細状スロット3a)が延びている方向」の長さを短くすることができることを説明する。図2は、直線状のスロットを有するRFIDタグ構成図である。図2において、3dは、導体パターン2の中央部に形成された直線状スロットで、図1に記載されているものと同一符号は、同一又は相当部分を示すものとする。実施の形態1に係るRFIDタグ(以下、RFIDタグ(実施の形態1)と称す)と直線状スロットRFIDタグとの違いは、誘電体基板1の縦方向、つまり、長細状スロット3a(スロット3)と直線状スロット3bとが延びている方向の長さが、直線状スロットRFIDタグの方が長くなっていることと、RFIDタグ(実施の形態1)のスロット3は、長細状スロット3aと屈曲状スロット3bとで構成されていることに対して、直線状スロットRFIDタグのスロットは、直線状スロット3dのみで構成されており、直線状スロット3dは、長細状スロット3aを延長したような形状になっている。図3は、RFIDタグ(実施の形態1)と直線状スロットRFIDタグとのスロットの寸法を変更した場合の変動したそれぞれの特性インピーダンスの値をプロットしたスミスチャート(インピーダンスチャート)である。
図3のスミスチャートから、直線状スロットRFIDタグの直線状スロット3dの寸法を変更させることにより、特性インピーダンスの調整ができICチップ4と直線状スロットRFIDタグとの整合が取れることが分かると同時に本件発明であるRFIDタグのスロット3(長細状スロット3a、屈曲状スロット3b)を変更させることにより、特性インピーダンスの変動をプロットした点を直線状スロットRFIDタグと一致させることが可能であることが分かり、それぞれ形状が異なるスロットを有しているRFIDタグ(実施の形態1)と直線状スロットRFIDタグとの特性インピーダンスを一致させることができることを示している。これは、RFIDタグ(実施の形態1)のスロット3は、長細状スロット3aと屈曲状スロット3bとからなり、屈曲状スロット3bは、長細状スロット3aの端部3cにおいて連続し、長細状スロット3aに対して両直交方向に屈曲させて延長していた構造なので、電気的に見てスロットの見かけの長さが、直線状スロットRFIDタグの直線状スロット3dと同じになるからである。したがって、RFIDタグ(実施の形態1)は、長細状スロット3aの延びている方向に誘電体基板1の長さを短くすることができるので、誘電体基板1の寸法を小さくすることができる。
さらに、長細状スロット3aの延びている方向と直交する方向に誘電体基板1の長さを短くしたい場合は、図示していないが、長細状スロット3aの延びている方向と直交する方向の導体パターン2の側部に切り欠きのような形状の電気長調整部を形成すればよい。電気長調整部とは、長細状スロット3aの延びる方向とは垂直になる位置に設けられているので、導体パターン2の実効的な電気長が見かけの長さよりも長くなり、RFIDシステムの使用周波数が固定でも、導体パターン2の大きさを小さくできるので、RFIDタグの寸法が小さくできる。また、導体パターン2の長さの範囲であれば電気長調整部の長さは変更できる。電気長調整部は、導体パターン2の片側だけに設けても誘電体基板1の長さを短縮する効果が得られる。なお、これらのスロット形状の変更や電気長調整部による特性インピーダンスの調整は、誘電体基板1(RFIDタグ)の小型化だけでなく、ICチップ4を異なる特性インピーダンスに変更した場合でも誘電体基板1の誘電率や基板厚などのスペックを変更せずにRFIDタグを構成することが可能であることも示している。
図4(a)は、RFIDタグとRFIDリーダライタとの間で送受信を行なう様子を模式的に示したRFIDシステム基本構成図である。図4(b)は、RFIDタグの構成図であり、特に、ICチップ4の内部構成を機能的に示したブロック構成図である。図4(a)(b)において、8は、図1に示した構成のRFIDタグである。9は、RFIDタグ8に設けられたアンテナ部であり、このアンテナ部9は、図1において示した長細状スロット3aを形成した導体パターン2に相当するものである。RFIDタグ8のアンテナ部9は、図1及び図2に示すように、誘電体基板1の一主面(表面)にスロット3を有する導体パターン2を設け、誘電体基板1の他主面(裏面)に接地導体層7を設けているので、RFIDタグ8はパッチアンテナとして機能するものである。すなわち、スロット3を有する導体パターン2がアンテナパターン(放射部)として機能する。導体パターン2とスロット3とは、励振するようにRFIDシステムの使用周波数とICチップ4とのインピーダンス整合をとるように調整している。この調整は、誘電体基板1の厚みや比誘電率にも大きく関係するので、これらの条件もあわせて調整、設計することにより、所望の放射パターンや利得を得ることができる。また、スロット3は、導体パターン2の放射パターンが良好となるように導体パターン2の中央部に形成しているのは前記のとおりである。このような条件をあわせて調整して設計することにより、RFIDタグ8における所望の放射パターンや利得が得られ、RFIDタグ8、すなわち、誘電体基板1を大型化することなく、例えば、1〜8m程度の通信距離を得ることが可能となる。
また、10は、RFIDリーダライタ、11は、RFIDリーダライタ10に設けられたアンテナ部で、RFIDタグ8のアンテナ部9と無線通信を行なうものである。4は、図1において説明したICチップであり、その具体的構成については、図4(b)に示すような構成としている。12は、RFIDリーダライタ10からの送信波をRFIDタグ8のアンテナ部9により受信し、後段のディジタル回路21に出力するアナログ部である。13は、送信波をA/D変換するA/D変換部、16は、アンテナ部9が受信した送信波を整流回路で平滑化して電力を生成し、RFIDタグ8の各回路に給電及び電源制御を行なう電源制御部である。15は、RFIDタグ8に搭載され、固体識別情報などのタグ情報が格納されたメモリ部である。16は、送信波を復調する復調部、17は、復調部16で復調された送信波によりメモリ部15を含むICチップ4内の回路を制御する制御部である。18は、制御部17によりメモリ部15から引き出された情報を変調する変調部である。19は、復調部15、制御部16及び変調部17により構成されるディジタル部、20は、変調部18から送信されてきた信号をD/A変換し、アナログ部12に出力するD/A変換部である。
ここで、このようなRFIDシステムについて、その基本的な動作について説明する。このようなRFIDシステムを利用する用途(生体・物品の入退室管理や物流管理)に合わせて、それらのタグ情報がRFIDタグ8のメモリ部15に格納されており、RFIDリーダライタ10は、自身の送受信エリア内にRFIDタグ8が(入退室管理や物流管理の対象である生体・物品に貼り付けられて)存在又は移動しているときにタグ情報の更新・書き込み、又は読み出しを行なうことができる。RFIDリーダライタ10は、更新・書き込み、又は読み出しなどをRFIDタグ8に命令するコマンド信号を送信波としてRFIDリーダライタ10のアンテナ部11からRFIDタグ8のアンテナ部9へ送信する。RFIDタグ8のアンテナ部9が送信波を受信し、送信波は電源制御部14により検波・蓄電(平滑化)され、RFIDタグ8の動作電源を生成し、RFIDタグ8の各回路に動作電源を供給する。また、送信波は復調部16によりコマンド信号が復調される。復調されたコマンド信号の命令内容から制御部17がデータ処理し、メモリ部15へタグ情報の更新・書き込みと読み出しとのいずれか一方、又は両方の指示を行ない、この制御部17の指示によりメモリ部15が出力した読み出し信号が変調部18により変調された返信波がアナログ部12を経由してアンテナ部9からRFIDリーダライタ10のアンテナ部11に送信され、RFIDリーダライタ10が読み出し信号を受信して、所望の情報を得る。
続いて、RFIDタグ(実施の形態1)や直線状スロットRFIDタグの動作原理と特性を図5及び図6とを用いて説明する。なお、図5及び図6は、説明の単純化を優先して、RFIDタグ(実施の形態1)ではなく、RFIDタグ(実施の形態1)と等価である直線状スロットRFIDタグの構造やデータを図面に反映させているが、RFIDタグ(実施の形態1)でも同様の特性が得られる。図5は、導体パターン2と接地導体層7との間の電界を示しており、このような電界が導体間で形成されるので、スロット3の対向部分の間に電界が走り、電位差が生じる。したがって、誘電体基板1の厚み方向の電界が0の位置をICチップ4の給電点(端子5)とすることができ、給電損失を大幅に低減できる上に、導体パターン2の放射パターンの対称性に与える悪影響が少なく、通信可能距離が向上したRFIDタグが得られる。次に、図6は、導体パターン2と接地導体層7との四隅の寸法差dの変化によるRFIDタグの特性インピーダンスの変化を示しており、横軸のdは、寸法差dをRIFDタグの使用周波数の波長比で表したもの、縦軸のR[Ω]とX[Ω]とは、それぞれ特性インピーダンスの実部と虚部とを指している。ここで、導体パターン2と接地導体層7との寸法差とは、図2及び図5に示す導体パターン2の端部から誘電体基板1(図2及び図5は、誘電体基板1の面積と接地導体層7とは面積が等しい)の端部までの長さdを指している。したがって、dが0.1λ以上の場合に、RFIDタグのインピーダンスがほぼ一定となることが図6から分かるので、dを0.1λ以上とすることにより、RFIDタグの設置対象が導体や非導体に関わらず、また、空中に浮かした場合であっても性能が劣化することがなく、より安定した長距離のRFIDリーダライタとの無線通信が可能になる。もちろん、RFIDタグ(実施の形態1)の導体パターン2と接地導体層7との四隅の寸法差d(図1)においても同じ傾向の特性がある。
実施の形態1(変形例).
図7〜図12を用いて、この発明の実施の形態1(変形例)について、以下に説明する。図7は、実施の形態1に係るRFIDタグの構成図(ICチップ実装前)、図8(図8(a))は、実施の形態1(変形例)に係るRFIDタグの構成図(ICチップ実装前)であり、図8(b)は、図8(a)に示したスロット付近を拡大した平面図である。他の図と同一符号は、同一又は相当部分を示すものとする。実施の形態1では、端子5が2つのICチップ4を用いたRFIDタグについて説明したが、端子5が4つのICチップを実装する場合には、実施の形態1において説明した電極部6、6のほかに、スロット3に内側であって、電極部6、6の近傍に2つのダミーパッド21、21を設けて電極部6、6に接続されない残りの二つの端子5、5とダミーパッド21、21とを接続すればよい。この場合、端子5、5とダミーパッド21、21とは電気的な接続な接続を行なわなくても、単に、ダミーパッド21、21を端子5、5の足場として使用してもよい。また、ダミーパッド21、21の形成方法は、電極部6、6を形成すると同時に形成すれば効率がよい。ダミーパッド21、21は、導体パターン3及び電極部6、6とは電気的に接続されていない単なるダミーとしてのパッドである。このように、ダミーパッド21、21を設けることにより、RFIDに実装するICチップ4の変更に柔軟にも対応できるので、簡易構造のRFIDタグを安価で製造することができる。なお、ダミーパッド21の数は、2つに限定されるものでなく、ICチップ4の端子5の数に応じて設ければよい。スロット3の形状と寸法は、実装するICチップ4の端子5の数と特性インピーダンスに合わせる必要がある。インピーダンス整合をとるために、スロット3の形状の微調整に加えて、ICチップ4の接続端子の足が2つの場合には、インピーダンス整合がとれる幅の2本の端子5を形成すればよい。
次に、図9〜12は、それぞれ実施の形態1(変形例)に係るRFIDタグの構成図(スロット形状変更)、各図面の(a)、(b)は、それぞれRFIDタグの全体図、RFIDタグのスロット周辺拡大図であり、図9〜図12において、22〜25は、導体パターン2の中央部に形成されたスロットであり、他の図と同一符号は、同一又は相当部分を示すものとする。実施の形態1では、長細状スロット3aの端部3cにおいて屈曲状スロット3bが連続し、長細状スロット3aに対して両直交方向に屈曲させて延長したH字状のスロット3に関して説明したが、このスロット3と形状が異なるが、図2に示す直線状スロットRFIDと等価であるが、直線状のスロットを有するRFIDタグよりも「誘電体基板1のスロット3(長細状スロット3a)が延びている方向」の長さを短い実施の形態1(変形例)のRFIDタグを説明する。なお、ICチップ4の端子5、5と導体パターン2(電極部6、6)との接続などは、上述の変形例や実施の形態1と同じである。
図9に示すRFIDタグは、導体パターン2の中央部にスロット22を形成している。このスロット22は、長細状スロット3aと屈曲状スロット3bとからなる。屈曲状スロット3bは、長細状スロット3aの片方の端部3cにおいて連続し、長細状スロット3aに対して両直交方向に屈曲させて延長したT字状を成している。ここで、図9(b)に示した構成においては、長細状スロット3aは、スロット3のうち縦方向に延びた点線を付した内側の部分を含むものである。また、長細状スロット3aの端部3cについては、点線により囲まれた部分を指すものとする。そして、図9(b)に示すように、点線を付した部分である端部3cに連続して横方向に延長した部分を屈曲状スロット3bとしている。また、長細状スロット3a及び屈曲状スロット3bの長さとその幅は使用周波数や実装するICチップの特性インピーダンスによって決定することができる。これらのことは、図10(b)〜図12(b)にも共通的にいえることである。
図10に示すRFIDタグは、導体パターン2の中央部にスロット23を形成している。このスロット23は、長細状スロット3aと屈曲状スロット3bとからなる。屈曲状スロット3bは、長細状スロット3aの片方の端部3cにおいて連続し、長細状スロット3aに対して直交方向に片方を屈曲させて延長したL字状を成している。図11に示すRFIDタグは、導体パターン2の中央部にスロット24を形成している。このスロット22は、長細状スロット3aと屈曲状スロット3bとからなる。屈曲状スロット3bは、長細状スロット3aの端部3cにおいて連続し、長細状スロット3aに対して直交方向に片方を異なる方向に屈曲させて延長したICチップ4を中心とした点対称のL字状を成している。図12に示すRFIDタグは、導体パターン2の中央部にスロット24を形成している。このスロット22は、長細状スロット3aと屈曲状スロット3bとからなる。屈曲状スロット3bは、長細状スロット3aの端部3cにおいて連続し、長細状スロット3aに対して直交方向に片方を同じ方向に屈曲させて延長したコ字状を成している。以上、図9〜図12に示されるRFIDタグは、スロットの形状を除き、動作原理や特性は実施の形態1と同様であるので、スロット22〜25は、導体パターン2の中央部でなくとも動作するが通信距離等の性能が、導体パターン2の中央部にスロット22〜25を設けたものよりも劣化する場合があることも、実施の形態1と同様である。
以上のように、実施の形態1に係るRFIDタグは、誘電体基板1の厚み方向の電界が0の位置にICチップが配置されることになり、リーダライタとの間で無線通信を行なうとき、導体パターン2の放射パターンの対称性に与える悪影響が少なく、さらに、ICチップ4が給電点に接続されることにもなるので、給電損失を大幅に低減でき、通信可能距離が向上したRFIDタグを得ることができ、長細状スロット3aと屈曲状スロット3bで構成されるスロット3、22〜25を設けたことにより、設置場所の寸法からRFIDタグに求められるの誘電体基板1の幅が限られている場合でも配置できる可能性が増すRFIDタグを得ることができる。
実施の形態2.
この発明の実施の形態2について、実施の形態1及び実施の形態1(変形例)と同一符号は、同一又は相当部分を省略して、以下に説明する。図13は、この実施の形態2に係るRFIDタグの構成図である。図13(a)は、RFIDタグの平面図、図1(b)は、図1(a)でA−A’線により切断したときの断面図、図1(c)は、図1(b)の分解断面図である。これらの図13において、26は、誘電体基板1の一主面(表面)上に設けられ、誘電体基板1の一主面(表面)上に接着シート(接着シートに関しては後段のRFIDタグの製造方法において詳説する)や接着剤などを用いて貼り付けられたフィルム基材である。このフィルム基材26は、実施の形態1で述べたものと同様でフィルムポリエチレンテレフタラート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどを使用することができる。また、フィルム基材26は、その他の柔軟性のあるものでも、そうでない基板といえるものでもよく、また、透明でも有色半透明性のものであってもよい。なお、図13(a)では、フィルム基材26が透明性の場合において、フィルム基材26を通して見える状態を示している。図13では、フィルム基材26と誘電体基板1とは平面において同一寸法としている。27は、フィルム基材26にエッチング又は印刷により形成され、RFIDタグのアンテナ(パッチアンテナ)の放射部として機能する導体パターンで、図13(a)に示すように、誘電体基板1の縦及び横の端部から距離dだけ隔ててその内側に形成している。もちろん、フィルム基材26を誘電体基板1の縦及び横の端部から距離dだけ隔てて、誘電体基板の一主面上に配置し、導体パターン2はフィルム基材26上の全面に設けることもできる。28は、誘電体基板1の表面に形成した溝部であり、ICチップ4を嵌挿するために形成したので、その深さやその幅はICチップ4の大きさに対応したものとなる。そして、その溝部28を形成する位置については、スロット3のどの位置にICチップ4を配置するかに応じて決定されるのは当然である。他の図と同一符号は、同一又は相当部分を示すものとする。
スロット3及び電極部6、6は、エッチング・蒸着などにより導体パターン27を形成する際に同時に形成すればよく、フィルム基材26の全面に導体層を設けたフィルム基材をエッチングすることにより導体パターン2(スロット3及び電極部6、6を含む)を形成しても、最初から導体パターン2(スロット3及び電極部6、6を含む)をフィルム基材に印刷してものを用いてもよい。また、本実施の形態でも、実施の形態1(変形例)と同様にICチップ4の端子5数が2つよりも多い場合は、電極部6、6のほかに、2つのダミーパッド21、21をスロット3に内側であって、電極部6、6の近傍に設けることが可能で、さらに、本実施の形態(図13)では、スロットの形状が図1と同じものを使っているが、実施の形態1(変形例)で説明した形状のスロット22〜25(図9〜図12)でもよいことはいうまでもない。
ここで、実施の形態2に係るRFIDタグの製造方法について、以下に説明する。図14は、この実施の形態2に係るRFIDタグの製造工程図である。図14において、29は、フィルム基材の裏面に設けられた導体層、30は、誘電体基板1とフィルム基材26とを接着する接着シートである。接着シート30は、図14(e)に示すように、誘電体基板1上であって、溝部28以外の部分に対応する部分に設け、誘電体基板1とフィルム基材26とを接着、固定することができる。つまり、接着シート30は、導体パターン2を誘電体基板の表面に固定した固定手段であり、誘電体基板1とフィルム基材26とを固定するためには、接着シート30でなくても、接着剤を用いることもできる。他の図と同一符号は、同一又は相当部分を示すものとする。
次に、実施の形態2に係るRFIDタグの製造方法について、以下に説明する。図14(a)〜(e)は、RFIDタグの製造方法について、その断面図を元に各製造工程を説明する。図14(a)においては、フィルム基材26上(フィルム基材26の裏面)に導体層29を形成する導体層形成工程を示したものである。そして、図14(b)に示すように、導体層形成工程でフィルム基材26の裏面側に全面的に導体層23を形成したものにおいて、フィルム基材26の端部から所定距離dだけ隔てた周囲部分と及びスロット3の内側に電極部6、6を形成すべき領域をマスクし、エッチング等により導体パターン27及び電極部6、6を同時に形成する導体パターン形成工程を示したものである。なお、導体層形成工程を行なわずに、フィルム基材26に導体パターン27を印刷してもよい。
続いて、図14(c)(d)に示すように、ICチップ接続工程では、ICチップ4の端子5、5を電極部6、6に半田付けにより電気的に接続する。この電気的な接続方法としては、リフローによる熱圧着が一般的であるが、その他の方法により接続してもよい。一方、誘電体基板1の他主面(裏面)には、図14(e)に示すように、接地導体層7を形成するとともに、一主面(表面)には、ICチップを嵌挿する溝部28を形成する。この溝部28の形成は、例えば、射出成型法により形成する。また、射出成型法以外に、プリント基板に切削やミリング等により形成してもよい。その後に、図3(e)に示すように、フィルム支持工程(固着工程)では、誘電体基板1の一主面側において、溝部28を除いた接着シート30を貼り付ける。このように、接着シート30を貼り付けた誘電体基板1に対して、フィルム基材26に導体パターン27及びICチップ4を取り付けたものを、溝部28にICチップ4を嵌挿するように重ね合わせ、接着シート30により誘電体基板1に対してフィルム基材26を支持する。こうして、RFIDタグを構成する。なお、図示はしていないがフィルム基材26を誘電体基板1の縦及び横の端部から距離dだけ隔てて、誘電体基板の一主面上に配置することもできる。この場合、導体パターン2はフィルム基材26上の全面に設けることもできる。
以上のように、実施の形態2に係るRFIDタグは、ICチップ4が誘電体基板1の一主面に形成した溝部28に嵌挿するように構成したので、フィルム基材26のたわみや膨らみが生じにくくなり、そのためにRFIDタグに衝撃等が加わった場合でも、ICチップ4の破損やICチップ4と電極部6との電気的な接触不良や接続の破断等の発生率を大幅に低減させることができる。また、誘電体基板1の溝部28の寸法をどのようにするかは、ICチップ4の容積に対してICチップ4を溝部28に嵌挿する際の歩留を考慮して設定すればよい。なお、射出成型法を用いていない誘電体基板1に溝部28の形成方法するときは、誘電体基板1の一主面を切削する方法により形成すればよい。また、実施の形態1に係るRFIDタグと同様に実施の形態2に係るRFIDタグは、誘電体基板1の厚み方向の電界が0の位置にICチップが配置されることになり、リーダライタとの間で無線通信を行なうときの導体パターン2の放射パターンの対称性に与える悪影響が少なく、さらに、ICチップ4が給電点に接続されることにもなるので、給電損失を大幅に低減でき、通信可能距離が向上したRFIDタグを得ることができ、スロット3を長細状スロット3aと屈曲状スロット3bにより構成することにより、設置場所の寸法からRFIDタグに求められるの誘電体基板1の幅が限られている場合でも配置できるRFIDタグを得ることができる。
最後に、図15〜図20を用いて実施の形態2に係るRFIDタグの製造方法(誘電体基板の射出成型)による接地導体層7が他主面(裏面)に形成された誘電体基板1の構造・製造方法を説明する。なお、これらの図において、同一符号は、同一又は相当部分を示すものとする。さて、図15は、射出成型金型の構成を説明するための構成図で、図15(a)は射出成型金型の平面図、図15(b)は射出成型金型の側面図である。図15(a)(b)において、31は、RFIDタグの誘電体基板を製造するための射出成型金型である。32は、射出成型金型31の上方金型、33は、射出成型金型31の下方金型である。34は、上方金型32に設けられた樹脂を注入するための注入口である。図16は、射出成型金型の断面図で、図16(a)は、図15(a)に示すA−A’線で切断したときの断面図、図16(b)は、図15(a)に示すB−B’線で切断したときの断面図、図16(c)は、図15(b)に示すX−X’線で切断して上方金型を見たときの平面部、図16(d)は、図15(b)に示すX−X’線で切断して下方金型を見たときの平面図である。図16(a)〜(d)において、30は、上方金型32の凹部に形成され、溝部28の形状に対応した突起部である。もちろん、上方金型32と下方金型33とを重ね合わせたときに、それぞれの凹部と突起部35とが作る空間が、RFIDタグに必要な誘電体基板1とその一主面に形成された溝部28との形状に一致する。36は、下方金型33に複数個設け、射出成型金型31内における気体を真空引きするための真空引き口である。真空引き口36は、図16(d)に示すように複数個設けている。
図17は、下方金型に導体箔を載置したときの状態を示す断面図で、図17(a)は、導体箔を下方金型に固定した状態を示す断面図、図17(b)は、その導体箔を化成処理した状態を示す断面図である。下方金型33の凹部の底面に接地導体パターン用の導体箔37を載置している。そして、この導体箔37は、真空引き口36と接する面と反対側の面(表面)に誘電体基板1の樹脂と接着性を高めるために化成処理を施しており、表面に微細な凹凸を形成した化成処理層38としている。図18は、下方金型に上方金型を重ね合わせる前の状態を示す断面図で、図18(a)は下方金型に導体箔37を設けて図18(a)に示すA−A’線で切断したときの断面図、図18(b)は下方金型に導体箔37を設けて図18(a)に示すB−B’線で切断したときの断面図である。下方金型33の凹部(底)のサイズに合わせた寸法の導体箔37を載置して、射出成型により製造された完成後の誘電体基板1の他主面(裏面)の接地導体層7の弛みやうねりを防止するために、図17(a)に示すように、下方金型33に複数設けられた真空引き口36に真空ポンプ又は吸引装置を接続して、複数の真空引き口36からほぼ均等な力で真空引き(吸引)を行ない、下方金型33の凹部(底)に導体箔37を密着させて固定する。樹脂を注入して射出成型金型31の内部を樹脂で充たすために、射出成型金型31に導体箔37の下方金型33への密着用の真空引き口とは別の真空引き口や空気抜き穴を形成する。
化成処理は、樹脂との接着性を高めるために導体箔37の表面に微細な筋を形成する、又は、導体箔37の表面に層を形成するなど、一般的に射出成型基板で用いられるものを使う。また、化成処理だけでは、接着度が低い場合は、誘電体基板1とフィルム基材26とを接着する接着シート30と同様の接着シートを化成処理層の化成処理済み面に載置する。なお、化成処理を行なわず、導体箔37が真空引き口と対向する面と反対側の面に接着シート30と同様の接着シートを載置するだけでも、導体箔37と樹脂との接着に十分な接着度が得られれば化成処理は行なう必要はない。なお、図17(a)に関連する手順と図17(b)に関連する手順は、順序が入れ替わってもよい(接地導体パターン形成工程の準備工程)。
次に、導体箔37の表面に化成処理が施された後に、図18に示すように、射出成型金型31の内部(注入口34と真空引き口36との開口を除く)の空間が所望の誘電体基板1となるように、上方金型32と下方金型33とを密着させて重ね合わせて、上方金型32と下方金型33とを固定する。この際に、図示はしていないが、上方金型32と下方金型33とには、それぞれガイドピンとガイド穴とが設けられており、ガイド穴にガイドピンを嵌合させて、上方金型32と下方金型33との位置決めを行なってから、型締めして固定することが一般的である(射出成型金型の型締め工程)。
図19は、下方金型に上方金型を重ね合わせて熱可塑性の樹脂を注入して誘電体基板を形成している状態を示した断面図で、図19(a)は、図18(a)に示すA−A’線で切断したときの断面図、図19(b)は、図18(a)に示すB−B’線で切断したときの断面図、39は、樹脂(熱可塑性樹脂)である。射出成型金型31の型締めが完了した後に、図19において、下方金型33の凹部の表面に接地導体層7となる化成処理層38を載置して下方金型33に上方金型32を重ね合わせた状態で、注入口34から溶融した熱可塑性の樹脂39を上方金型32及び下方金型33との間の空間部、つまり射出成型金型31の内部へ注入し、上方金型32の突起部35に対応して誘電体基板1の一主面に溝部28を形成する。(誘電体基板形成工程)。また、樹脂39の注入前に、化成処理層38を有した導体箔37を下方金型33の凹部に載置しているので、誘電体基板1の形成と同時に誘電体基板1の他主面に接地導体層7が形成される(接地導体パターン形成工程)。
図20は、射出成型された誘電体基板の取り出しを説明するための断面図で、図20(a)は上方金型を下方金型から離した場合の図18(a)のA−A’線で切断したときの断面図、図20(b)はその場合の図18(b)のB−B’線で切断したときの断面図、40は、注入口34に残留した余剰樹脂である。樹脂39が固化した後に射出成型金型31の型締めを解除して、図20に示すように、上方金型32と下方金型33とを分離させて誘電体基板1を射出整形用金型31から取り出す(誘電体基板取り出し工程)。また、図20(a)のように注入された樹脂39が射出成型金型31内部の容積よりも多く注入された場合は、注入口34に残留した樹脂39が固化して誘電体基板1の一主面に注入口34の内管形状の余剰樹脂40が形成されるので、余剰樹脂40を誘電体基板1から切り離して、その断面を誘電体基板1とフィルム基材26との接着の妨げにならない程度の表面粗さに研磨する(後処理工程)。なお、接地導体パターン形成工程の準備工程で、導体箔37(化成処理層38)を真空引き(吸引)して、下方金型33に密着させるので、樹脂39の射出成型中に導体箔37(化成処理層38)が伸長することがなく、樹脂39の固化後に形成される誘電体基板1の接地導体層7の細りや切れを防止できる効果がある。
図15〜図20に示した製造方法(誘電体基板の射出成型)により誘電体基板1が製造され、その誘電体基板1に図14で説明した製造方法(導体層形成工程(省略可),導体パターン形成工程,ICチップ接続工程)で製造したフィルム基材26を接着する。接着する工程は、実施の形態1のフィルム支持工程,固着工程と同様である。また、樹脂39を低硬度(例えば、JIS−A55)のオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて、誘電体基板1を製造することで、フレキシブル性を持った誘電体基板によるフレキシブルなRFIDタグが製造可能なので、ドラム缶などの曲面を持つ物体の曲面に沿って設置可能なRFIDタグ10を得ることができる。このRFIDタグ10が設置可能である曲面は、ICチップ4と導体パターン27との電気的な接続が外れない程度である。なお、導体パターン27が曲っていても、電気長は変化しないなので、放射パターンは多少変形するが導体パターン27は、RFIDタグ10の電波放射部としての動作には支障がない。
このように、射出成型で誘電体基板1を設計・製造することにより、プリント基板数枚を貼り合せて多層化した誘電体基板に対し、樹脂(熱可塑性樹脂)39を用いて射出成型した誘電体基板の方が基板コスト(製造コスト)が大幅に下げることができるだけでなく、RFIDタグに用いられる誘電体基板の誘電体(材質)が、一般的なプリント基板で使用されるポリテトラフルオロエチレン(フッ素樹脂系),セラミック,ガラスエポキシなどの誘電体では、任意の厚さの基板製作が難しく、RFIDタグの設置位置による要求寸法の変化には柔軟に対応できないことに対して、射出成型による誘電体基板では、金型を変更するだけで容易に厚みや形状の変更が可能であるため、様々なバリエーションのRFIDタグを容易に製作可能である。また、樹脂(熱可塑性樹脂)のなかでも誘電正接が低い特性をもつオレフィン系ポリマーの樹脂をRFIDタグの誘電体基板として使用することで、放射効率が向上し、高利得なRFIDタグを製造可能である。また、オレフィン系ポリマーの樹脂の比重は一般的なプリント基板の半分程度であり、RFIDタグの軽量化が可能になる。さらに、ICチップ4は、一般的なプリント基板で使用されるポリテトラフルオロエチレン(フッ素樹脂系),セラミック,ガラスエポキシなどで構成される誘電体基板のように硬くて厚みのある材質に実装する場合、実装する専用設備がなく、一つ一つ実装しなければならず時間がかかり、実装のする際に必要となる溝部28の形成も煩雑になることに対して、射出成型基板は、フィルム基材26にICチップ4を実装する設備は市場に数多く出回っており、一度に大量生産が可能であり、溝部28の形成を含めて製造時間およびコストを大幅に削減できる。
1…誘電体基板,2、27…導体パターン,3、22〜25…スロット,
3a…長細状スロット,3b…屈曲状スロット,3c…端部,3d…直線状スロット,
4…ICチップ,5…端子,6…電極部,7…接地導体層,8…RFIDタグ,
9…アンテナ部(RFIDタグ),10…RFIDリーダライタ,
11…アンテナ部(RFIDリーダライタ),12…アナログ部,13…A/D変換部,14…電源制御部,15…メモリ部,16…復調部,17…制御部,18…変調部,
19…ディジタル部,20…D/A変換部,21…ダミーパッド,26…フィルム基材,28…溝部,29…導体層,30…接着シート(接着剤),31…射出成型金型,
32…上方金型,33…下方金型,34…注入口,35…突起部,36…真空引き口,
37…導体箔,38…化成処理層,39…樹脂(熱可塑性樹脂),40…余剰樹脂。

Claims (4)

  1. 誘電体基板、この誘電体基板の一方の面に設けた導体層、前記誘電体基板の他方の面に設け、長細状スロットを有する導体パターン、及び前記長細状スロットの幅方向に対向する二辺にそれぞれ接続され、前記長細状スロットを通して電波を送受信するICチップを備え、前記長細状スロットは、長さ方向の端部における幅方向の長さが、前記ICチップが接続された部分の幅方向の長さよりも長く、前記ICチップは、前記導体パターンと前記導体層との間に形成される電界によって生じる前記長細状スロットの対向部分の電位差によって給電されることを特徴とするRFIDタグ。
  2. 誘電体基板と、この誘電体基板の一方の面に設けた導体層と、前記誘電体基板の他方の面に設け、長細状スロットを有する導体パターンと、この導体パターン側に、二つの端子を有し、前記長細状スロットの幅方向に対向する二辺に前記二つの端子をそれぞれ載せて接続され、前記長細状スロットを通して電波を送受信するICチップとを備え、前記ICチップは、前記導体パターンと前記導体層との間に形成される電界によって生じる前記長細状スロットの対向部分の電位差によって給電されることを特徴とするRFIDタグ。
  3. 誘電体基板と、この誘電体基板の一方の面に設けた導体層と、長さ方向の端部における幅方向の長さを延長した長細状スロットを前記誘電体基板の他方の面に設けた導体パターンと、前記長細状スロットの内部に幅方向における対向する前記導体パターンの両側から延ばし、互いに離隔した電極部と、この電極部に電気的に接続して前記長細状スロットを通して電波を送受信するICチップとを備え、前記ICチップは、前記導体パターンと前記導体層との間に形成される電界によって生じる前記長細状スロットの対向部分の電位差によって給電されるRFIDタグ。
  4. 誘電体基板と、この誘電体基板の一方の面に設けた導体層と、長細状スロットを前記誘電体基板の他方の面に設けた導体パターンと、前記長細状スロットの内部に幅方向における対向する前記導体パターンの両側から延ばし、互いに離隔した電極部と、前記導体パターン側に、二つの端子を有し、前記電極部に前記二つの端子をそれぞれ載せて電気的に接続して前記長細状スロットを通して電波を送受信するICチップとを備え、前記ICチップは、前記導体パターンと前記導体層との間に形成される電界によって生じる前記長細状スロットの対向部分の電位差によって給電されるRFIDタグ。
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