JP4933264B2 - 乳房組織の電気生理学的変化を検出するためのシステム - Google Patents

乳房組織の電気生理学的変化を検出するためのシステム Download PDF

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Description

本発明は、一般に、異常組織または癌組織の検出に関し、特に異常組織または癌組織の電気生理学的特性の変化の検出および悪性腫瘍の進行中における組織の機能的、構造的、局所的(形状、位置、機能の相互作用)関係に関連する電気生理学的特性の変化の検出に関する。これらの測定は、異常組織または癌組織の電気生理学的特性を明らかにして強調するために、薬剤およびホルモン剤の存在下および非存在下で行なわれる。
癌は、米国において女性および男性の両方における死亡の主な原因である。治療の選択肢が実行不可能となる前に異常な前癌状態または癌性の組織を検出することが困難であるということが、高い死亡率の理由の1つである。異常な組織または癌組織の存在の検出が困難な理由の1つは、そのような組織の大部分が体内の深部に位置しており、したがって、高価で、複雑で、侵襲的で、及び/又は、厄介な処置を必要とするからである。このため、検出処置の使用は、多くの場合、患者が異常組織に関連する症状を経験するまで制限される。しかしながら、多くの形態の癌または腫瘍は、検知可能なサイズに達する(したがって、患者に大きな症状または兆候を生じさせる)までに長い期間を要する。それでは、多くの場合、あまりにも遅すぎ、現在利用可能な診断様式を用いて検出が行なわれるときまで有効な治療が行なえない。
乳癌は、西洋では、女性を冒す最も一般的な悪性腫瘍である。この一般的な病気における死亡率の減少は、早期発見に依存している。早期発見の頼みの綱は、X線マンモグラフィおよび視触診による乳房検診である。両方とも不正確であるという問題を有している。例えば、マンモグラフィは、密度が高い乳房を持つ女性において感度が低く、形態的に類似する良性乳房病変と悪性乳房病変とを識別することができない。
視触診による乳房検診は限界がある。なぜなら、1cm未満の病変は通常において検出不可能であり、また、大きな病変は、結節分散、繊維嚢胞変化によりはっきりとしていない場合があり或いは乳房の非常に深い場所にあり臨床的に検出することができない場合があるからである。陽性のマンモグラフィ認定または疑わしい臨床的認定がなされた患者は、多くの場合、最終的な診断を行なうために生検を必要とする。また、生検は、最大で80%の患者において、悪性腫瘍に関し陰性となる場合がある。
したがって、マンモグラフィおよび視触診による乳房検診は、乳癌を診断する際の無病正診率(特定性)が比較的低い。そのため、多くの陽性マンモグラフィ認定または視触診による乳房検診で検出される病変は、最終的に、偽陽性だと分かり、その結果、患者に身体的および精神的外傷が生じる。生検を受ける必要がある患者を識別するための改良された方法および技術は、医療費を減少させ、不必要な診断的生検を回避する。
マンモグラフィだけ及び視触診による乳房検診だけで達成できる診断精度を向上させようとする他の技術が導入された。乳房超音波検査は、嚢胞性乳房病変または硬質乳房病変とを区別する際に役に立ち、針を案内する際または直視下生検において役に立つ場合がある。しかしながら、そのような技術は、固塊または石灰沈着が良性であるか悪性であるかを決定することができない。マンモグラフィの精度を高めようとして磁気共鳴イメージングが導入された。その高いコストおよび低い無病正診率(特定性)は、乳癌の診断およびスクリーニングにおけるその一般的な適用を制限している。ポジション放射断層撮影(PET)を用いた放射性イメージングは、小さな病変における感度が低いが、コストによって制限される。癌性組織および前癌状態の組織の早期発見のための1つの提案された方法は、生物学的組織の電気インピーダンスの測定を含む。例えば、米国特許第3,949,736号は、組織を通じて低レベル電流を流すことを開示している。この場合、組織にわたる電圧降下の測定が全体の組織のインピーダンスの間接的表示を与える。この方法は、組織のインピーダンスの変化が組織を構成する細胞の異常状態に関連しており、腫瘍、癌、または他の異常な生物学的状態を示すことを教示している。しかしながら、この開示内容は、異常な細胞に関連するインピーダンスの増加または減少について論じておらず、また、それが腫瘍細胞を具体的に扱うことも論じていない。
このシステムおよび同様のシステムの欠点は、上皮のDC電気特性が考慮されていないという点である。最も一般的な悪性腫瘍は、経上皮電位を維持する上皮(腸等の中空器官や乳房または前立腺等の導管構造を覆う細胞層)で発現する。悪性過程の初期において、上皮は、特に進行する悪性腫瘍から特定の距離だけ離間する上皮と比べると、その経上皮電位を失う。経上皮電位測定値とインピーダンスとの組み合わせにより、前癌状態および癌状態の診断がより正確になる。
前述したシステムの他の欠点は、周波数レンジが規定されていないという点である。選択された周波数の範囲にしたがって細胞に関して特定の情報が得られる。様々な周波数帯域が組織の様々な構造または機能態様に関連付けられてもよい。これについては、例えば、F.A.Duckによる「Physical Properties of Tissues」ロンドン:アカデミックプレス,2001、K.R.Foster,H.P.Schwanによる「Dielectric properties of tissues and biological materials: a critical review,Crit.Rev.Biomed.Eng.」1989,17(1):25−104を参照されたい。例えば、高周波(>1GHz)において、分子構造は、インピーダンスプロファイルの緩和特性に支配的影響を及ぼす。緩和特性は、印加電場の変化に対する組織の反応における遅延を含む。例えば、印加されたAC電流により、組織のインピーダンス特性に起因して、組織にわたる電圧変化が遅延され或いは位相シフトされる。組織の弛緩特性および分散特性は、印加信号の周波数にしたがって変化する。
100Hz未満の低周波などにおいて、すなわち、いわゆるα−分散範囲において、大きな細胞膜界面における電荷蓄積およびイオン輸送の変化は、インピーダンスプロファイルの緩和特性を支配する。数kHz〜1MHzの周波数範囲において、すなわち、β−分散範囲において、細胞構造は、上皮インピーダンスプロファイルの緩和特性を支配する。低いkHz周波数のこの範囲内で、殆どの印加電流は、傍細胞経路にわたる細胞と密着結合部との間を流れる。β−分散範囲の高周波において、電流は、細胞膜を貫くことができ、したがって、細胞間を通り且つ細胞を貫いて流れ、また、電流密度は、細胞質および細胞核の組成や体積に依存する。α−分散範囲の周波数で測定された上皮のインピーダンス特性に影響を与える悪性転換の過程中においては上皮のイオン輸送に特徴的な変化が起こる。その後、悪性過程において、密着結合部の開放および傍細胞経路の抵抗の減少に伴う構造的変化は、細胞質および細胞核の組成および体積の変化と共に、β−分散範囲で測定されたインピーダンスに影響を与える。
前述したシステムに伴う他の欠点は、インピーダンス変化のトポグラフィが検討されないという点である。測定電極を異なって離間させることにより、上皮を様々な深さまで調べることができる。2つの表面電極によって測定される深さは、電極間の距離のほぼ半分である。したがって、1mm離れた電極は、下側に位置する上皮のインピーダンスをほぼ500ミクロンの深さまで測定する。例えば、腸上皮の厚さは、正常な腸における716±112μと比べ、進行中の腫瘍の縁部において1356±208μまで増大することが知られている。これについては、D.Kristt他による「Patterns of proliferative changes in crypts bordering colonic tumors:zonal histology and cell cycle marker expression」を参照されたい。
「Pathol.Oncol.Res」1999;5(4):297−303. 腺管癌がその場で進行すると、乳房の導管上皮の肉厚化も観察される。約2.8mm離間した電極間で測定されるインピーダンスを比較することにより、約1.4mm離間した電極のインピーダンスと比べると、より深い肉厚な上皮に関する情報が得られる場合がある。これについては、例えば、L.Emtestam & S.Ollmarによる「Electrical impedance index in human skin:measurements after occlusion,in 5 anatomical regions and in mild irritant contact dermatitis」を参照されたい。
「Contact Dermatitis(接触皮膚炎)」1993;28(2):104−108
前述した方法の他の欠点は、これらの方法が、悪性過程中に変えられる特定の導電経路を精査しないという点である。例えば、カリウムコンダクタンス(伝導性)は、悪性過程の初期に、結腸の表面上皮で減少される。様々な濃度の塩化カリウムを有する1mm未満の距離で離間する電極を使用することにより、表面上皮において、500μ未満〜表面までの深さで、カリウムのコンダクタンスおよび透過性が評価されてもよい。
乳癌を診断しようとして、多くの非侵襲インピーダンスイメージング技術が開発されてきた。電気インピーダンストモグラフィ(EIT)は、体表面上に配置された多数の電極を使用するインピーダンスイメージング技術である。インピーダンスの2Dまたは3D再構成断層像およびその2次元または3次元分布を形成するために、各電極で得られたインピーダンス測定値はその後にコンピュータによって処理される。この手法は、様々な組織タイプ間の導電率およびインピーダンスの違いに依存するとともに、臨床的に適用することが難しい画像再構成アルゴリズムおよびデータ取得に依存している。
EITシステムの大部分は、2つ以上の電流通過電極間に一定のAC電流を印加し且つ体表面上の他の電圧検出電極間の電圧降下を測定する「電流駆動モード」を使用する。他の手法は、2つ以上の電流通過電極間に一定のAC電圧を印加し且つその後に他の電流検出電極で電流を測定する「電圧駆動手法」を使用することである。異なるシステムは、電極構成、電流または電圧励起モード、励起信号パターン、使用されるAC周波数レンジが異なっている。
EITを使用して乳癌を診断することに伴う他の欠点は、乳房組織の非均一性である。画像再構成は、乳房を構成する様々なタイプの組織の様々な電気的特性が与えられそうにない乳房組織を電流が均一に通ることを前提としている。また、画像再構成は、既知のインピーダンス分布から乳房の表面上における電圧分布を計算すること(いわゆる順問題)、および、その後に、表面電極を用いて測定された測定電圧分布から乳房内のインピーダンス分布を評価すること(逆問題)に依存している。再構成アルゴリズムは、殆どのEITシステムで使用される低周波に起因して、たびたび、ポアソン方程式を使用し且つ準静的状態に関する仮定を伴う有限要素モデリングに基づいている。
米国特許第4,955,383号および第5,099,844号などの他の特許は、癌を診断するために表面電極電位測定値が使用されてもよいことを開示している。しかしながら、経験的測定値は、解釈して診断で使用することが難しい。例えば、前述した発明は、乳房の1つの部位と他の部位との間の電圧差(差異)を測定した後にこれらの電圧差を反対側の乳房の測定値と比較することにより癌を診断する。測定された表面電極電位の変化は、上側を覆う皮膚のインピーダンス特性の違いに関連付けられてもよい。この事実は、先に引用した同様の発明により無視されており、その結果、診断精度が72%以下になってしまう。これについては、J.Cuzick他による「Electropotential measurements as a new diagnostic modality for breast cancer」Lancet 1998;352(9125):359−363、M.Faupel他による「Electropotential evaluation as a new technique for diagnosing breast lesions」Eur.J.Radiol.1997;24(1):33−38を参照されたい。ACインピーダンス手法および表面DC測定手法のいずれも、経上皮乳房DC電位または乳房上皮のACインピーダンス特性を測定しない。
また、AC測定を使用する他の発明、例えば米国特許第6,308,097号は、ACインピーダンス測定とDC電位測定との組み合わせを用いて得られる精度よりも低い精度を有しており、また、乳房上皮の経上皮電気特性も測定する。電気インピーダンスマッピング(EIM)としても知られる電気インピーダンス走査(EIS)は、EITに伴って直面する複雑な画像再構成の限界を回避する。前述したシステムは、インピーダンスの減少(コンダクタンスの増加)および癌にわたるキャパシタンスの変化を測定するだけで癌を診断する。当該システムは、乳房の乳房経上皮インピーダンス特性を測定しない。この手法には幾つかの他の限界がある。気泡に起因して不正確なことが起こる場合がある。下側に位置する骨、肋軟骨、筋肉、皮膚により、偽陽性を生じる高コンダクタンス領域が形成される場合がある。測定の深さは3〜3.5cmに限定され、その結果、胸壁の病変において偽陰性が生じる。また、この手法を使用して病変を位置を特定することもできない。
異常組織の検出のための他の可能な情報源は上皮の輸送変化の測定である。上皮細胞は、体表面を覆うとともに、外界から体を分離するためのバリアとしての機能を果たす。上皮細胞は、体を隔離するのに役立つだけでなく、それ自体の細胞環境をかなり狭い限界内に維持しつつ細胞バリアにわたって塩、栄養素、水を輸送することにより体の環境を変える。上皮層が絶え間ない連打に耐える1つの機構は、連続的な増殖およびバリアの交換によるものである。この連続する細胞増殖は、部分的には、80%を超える癌が上皮細胞源を有している理由を明らかにしているかもしれない。また、血液から外側に或いはその逆に溶質をベクトル的に移動させるためのそれらの特定の能力が与えられると、成長調節の変化を含む病気の過程は、上皮の輸送特性の関連する変化を有している場合がある。
鎮静期の繊維芽細胞に対する血清の付加により細胞膜の脱分極が急速になることは知られている。細胞膜の脱分極は、細胞分裂に関連する初期の事象である。成長因子によって引き起こされる脱分極は、ある場合には二相性のように見えるが、細胞分裂は脱分極を伴うことなく刺激される場合がある。細胞膜脱分極は一時的にNa+流入に関連付けられ、流入は再分極が起こった後に持続する。最初のNa+流入により脱分極が生じる場合があるが、おそらくNa/K ATPaseポンプ動作に起因して、ナトリウム輸送の増大は、一度細胞膜が再分極しても止まらない。また、他の研究は、細胞活動中にNa+輸送が変えられるという考えも裏付けている。また、Na+輸送を変えることに加え、細胞増殖中にK+輸送およびCl-輸送が変えられる。
増殖する細胞は休止状態あるいは分裂していない細胞と比べて相対的に脱分極されることを多くの研究が実証してきた。違いは、特定のイオンチャンネルの式と関連付けられる。更なる研究は、イオンフラックス、細胞内イオン組成、細胞増殖に関連する輸送機構の変化により細胞膜脱分極が生じることを示唆している。
細胞内のCa2+(Ca2+ i)およびpH(pHi)は、マイトジェン活性により増大される。2つのセカンドメッセンジャ、すなわち、1,2−ジアシルグリセロールおよびイノシトール−1,4,5−3リン酸塩を解放するホスファチジルイノシトールの活性化に続いて細胞増殖が始まる場合があり、それにより、内部蓄積からのCa2+ i解放が誘発される。その後、Ca2+ iおよびpHiは、細胞膜の電圧の維持を担う細胞膜内の様々なイオンチャンネルのゲートを変えてもよい。したがって、他の細胞内メッセンジャ間の相互作用のための電位、イオン輸送機構、細胞膜電位が存在する。殆どの研究は、形質転換された培養された細胞において行なわれてきており、癌の進行中の無傷の上皮において行なわれてこなかった。
ここしばらくの間、癌細胞が形質転換されていない細胞と比べて相対的に脱分極されないことは周知であった。持続的な細胞膜脱分極により連続的な細胞増殖が生じ、持続的な脱分極の結果として及び細胞分裂後に細胞が再分極し損なう結果として悪性の形質転換が生じることが示唆されてきた。これについては、C.D.Cone Jr.による「Unified theory on the basic mechanism of normal mitonic control and oncogenesis」J.Theor.Biol.1971;30(1):155−158、C.D.Cone Jr.とC.M.Cone.による「Induction of mitosis in mature neurous in central nervous system by sustained depolarization」Science 1976;192(4235):155−158、C.D.Cone Jr.による「The role of the surface electrical transmembrane potential in normal and malignant mitogenesis」Ann.N.Y.Acad.Sci.1974;238:420−435を参照されたい。多くの研究は、細胞膜脱分極が形質変換中および発癌中に生じることを実証してきた。他の研究は、1つのラス変異によりイオン輸送が変化して細胞膜脱分極が生じることを実証してきた。これについては、Y.Huang,S.G.Raneによる「Single Channel study of a Ca(2+)−activated K+ current associated with ras induced cell transformation」J.Physiol.1993;461:601−618を参照されたい。例えば、CF1マウスには、1,2ジメチルヒドラジン(DMH)誘発結腸癌中に、結腸細胞膜の進行性脱分極がある。組織学的に「正常な」腸上皮において細胞内微小電極を用いて測定されたVA(頂端膜電圧)は、6週間のDMH治療後に−74.9mVから−61.4mVまで脱分極し、20週間の治療までに−34mVまで脱分極した。良性のヒト乳房上皮細胞株(MCF−10A)における細胞膜電位は、−50±4mV(平均値±SEM)となるように観察され、また、ラス形質転換後に同じ細胞株(MCF−10AT細胞株)において−35±1mV(p<0.002)で著しく脱分極された。
通常、上皮細胞はそれらの細胞内ナトリウム濃度を狭い範囲で維持するが、エレクトロマイクロプローブ分析は、癌細胞がそれらの形質転換されていない対応する部分に見出される細胞ナトリウム/カリウム比率よりも3〜5倍大きい細胞ナトリウム/カリウム比率を示すことを暗示している。これらの観察結果は、細胞膜にわたるK+濃度勾配またはNa+濃度勾配の損失に起因して、悪性組織あるいは前癌状態の組織で観察される電気的な脱分極を部分的に明らかにしている。
細胞膜脱分極および細胞内のイオンの働きの変化に加え、他の研究によれば、上皮悪性腫瘍の進行中に非起電性トランスポータの活性化および起電性ナトリウム輸送の減少が生じる場合があることが分かった。これらの変化は、細胞内イオン組成の変化の結果に影響を与え、あるいは、細胞内イオン組成の変化の結果として生じる場合がある。
細胞膜脱分極および細胞内のイオンの働きの変化に加え、他の研究によれば、上皮悪性腫瘍の進行中に非起電性トランスポータの活性化および起電性ナトリウム輸送の減少が生じる場合があることが分かった。これらの変化は、細胞内イオン組成の変化の結果として生じる場合がある。他の特定のイオン輸送変化は、増殖中、分化中、アポトーシス中、発癌中に、結腸、前立腺、乳房、子宮頸管、黒色腫、尿路上皮、膵臓において説明されてきた。
ポトーシスまたは生理的細胞死は、悪性腫瘍の進行中にダウンレギュレートされる(刺激に対する反応が抑制される)。アポトーシスによって影響されるイオン輸送メカニズムとしては、Ca2+の流入、非選択Ca2+−透過性陽イオンチャンネル、カルシウム活性塩化物チャンネル、K+−Cl-共輸送を挙げることができる。これについては、J.A.Kim他による「Involvement of Ca2+ influx in the mechanism of tamoxifen−induced apoptosis in Hep2G human hepatoblastoma cells」Cancer Lett.1999;147(1−2):115−123、A.A.Gutierrez他による「Activation of a Ca2+−permeable cation channel by two different inducers of apoptosis in a human prostatic cancer cell line」J.Physiol.1999;517(Pt.1):95−107、J.V.Tapia−Vieyra,J.Mas−Olivaによる「Apoptosis and cell death channels in prostate cancer」Arch.Med.Res.2001;32(3):175−185、R.C.Elble,B.U.Pauliによる「Tumor Supression by a Proapoptotic Calcium−Activated Chloride Channel in Mammary Epithelium」J.Biol.Chem.2001;276(44):40510−40517を参照されたい。
細胞間通信の損失は発癌中に生じる。これにより、イオンおよび上皮の電気的特性に影響を与える小分子スルーギャップ接合(small molecules through gap junctions)により仲介される細胞間の電気的結合に障害が生じる。
上皮細胞は、セル間接着分子からなる密着結合部によって共に結合されている。これらの接着タンパク質は、細胞間のイオンおよび分子の傍細胞輸送を調節し、上皮を締め付けることができる動的構造をなしており、それにより、物質の移動を防止し、または、解放して物質が細胞間を通ることを許容する。密着結合部は、膜内在性タンパク、クラウディン、オクルディン(occludins)、JAM(接合接着分子)からなる。密着結合部は、細胞内および細胞外の刺激に応じて開閉する。
多くの物質が密着結合を開く或いは閉じる。炎症誘発性物質TGF−α、サイトカイン、IGFおよびVEGFは、密着結合を開放する。また、閉鎖帯毒素、一酸化窒素供与体およびホルボールエステルは、密着結合を可逆的に開放する。他の物質は、カルシウム、H2抑制因子およびレチノイドを含む密着結合を閉じる。プロラクチンおよびグルココルチコイド等の様々なホルモンも密着結合を調節する。製剤として加えられる他の物質は、キトサンおよび小麦胚凝集素を含む非特異的密着結合モジュレータとしての機能を果たす。
前述した物質および他の物質は、発癌中に変化される密着結合タンパク質に直接的または間接的に作用する場合がある。例えばクラウディン−7は、乳癌の進行中に乳房導管上皮において失われる。密着結合の反応は、上皮および上皮の構成タンパク質の悪性状態にしたがって変化する。その結果、密着結合の開放または閉鎖は、上皮の悪性状態によって影響される。
ポリープまたは明らかに悪性の病変は、異常な増殖および経上皮イオン輸送の変化の背景の下で進行する場合がある。大腸癌の実験動物研究は、経上皮脱分極が前癌状態の初期の特徴であることを実証した。鼻ポリープ研究において、病変は高い経上皮電位を有していたが、これらの病変は、通常は脱分極される腺腫様または前癌結腸ポリープと同じ意味で前癌状態ではなかった。電気的な脱分極は、悪性乳房組織の生検で見出された。最近、乳房および腸においてインピーダンスの変化が前癌状態または癌状態に関連していることが分かってきた。
経上皮脱分極がCF1マウスにおける結腸発癌に関連する特定の事象であったことが発見された。より疑わしい部位すなわち遠位結腸は、たった4週間の発癌治療後に経上皮電位(VT)が約30%減少した。これは、組織学的変化の前に発現した。同じ期間にわたって投与された非特異的細胞毒性薬(5−フルオロウラシル)は、同じモデルでVTの減少を引き起こさなかった。VTの減少は、発癌治療後にほぼ60%の減少が観察されたその後の研究で確かめられた。また、インビボで測定されるときにはVTが常に高いが、正常な結腸と比べると「前癌状態の」結腸上皮が一般に脱分極されることも発見された。
DC電位変化は、嚢胞性線維症等の悪性でない状態、動物モデル、ヒト細胞または組織の癌、および、男性の癌を診断するために使用されてきた。正常な組織と癌との間のインピーダンスの違いは、インビトロ動物モデルおよびインビトロヒト組織において説明されてきており、また、インビボ癌診断に適用されてきた。
DC電位測定は、癌を診断するためにインピーダンス測定と組み合わされてこなかった。これは、癌の進行に伴って起こる電気生理学的変化がうまく理解されず或いは十分に特徴付けられていなかったからである。電位またはインピーダンスの表面測定は、導管の管腔表面と上側を覆う皮膚との間で電気的接触がなされる場合、以下で説明する乳房上皮にわたって行なわれる測定と同じではない。経上皮脱分極は、上皮のかなりの領域に影響を及ぼす場合がある発癌中の初期の事象である(「領域欠損」)。この脱分極は、イオン輸送変化およびインピーダンス変化を含む上皮の機能変化に付随して起こる。プロセスの初期に、これらは、特定の起電性イオン輸送過程に起因して、インピーダンスの増大という形をとる。腫瘍が前癌状態の上皮で成長し始めると、形質転換された細胞において、密着結合の破壊や核異型などの構造的変化が起こる。構造的変化により、腫瘍のインピーダンスが著しく減少する。上皮の電気的変化のパターンおよび勾配は、DC電位測定とインピーダンス測定との組み合わせから、癌の診断を可能にする。
DC電位測定およびインピーダンス測定が癌診断にうまく適用されてこなかった他の理由は、経上皮電位およびインピーダンスが完全に変数となる場合があり、また、これらが水和状態、食事の塩分の取り入れ、ホルモン値の日内変動または循環変動、または非特異的炎症性変化および他の要因によって影響されるからである。経上皮電位およびインピーダンスに影響を与える生理的変数に関する知識がないと、これらの種類の測定は、完全に信頼して前癌状態の腫瘍または癌を診断することができない虞がある。
また、発癌中に起こる機能的変化および形態的変化の詳細な理解は、癌進行中に変化する具体的に識別されたイオン輸送変化に適する電気的な調査を可能にする。例えば、乳房上皮における癌の進行中に起電性ナトリウム吸収が変化するという知識は、ECM(導電媒体)で様々なナトリウム濃度またはナトリウムチャンネル遮断薬(アミロリド)を使用してナトリウムコンダクタンスの抑制可能成分があるかどうかを調べることを可能にする。測定の深さを変えることにより(異なる距離で離間する電極の両端間の電圧降下を測定することにより)、上皮の癌性変化に関する位置および深さ情報を得ることができる。異なる深さで調べる低周波正弦波および高周波正弦波の組み合わせを使用することにより、我々は、異なる深さでの機能的および形態的(構造的)な変化を、組織のインピーダンスプロファイルと関連付けることができる。
DC電位だけ又はインピーダンスだけを使用する現在の技術の診断精度は、かなりの限界がある。乳房のDC電位測定における感度および特異度はそれぞれ、90%および55%として報告され、また、インピーダンス測定に関しては93%および65%として報告された。この結果、全体の診断精度が72〜79%となるが、これはおそらく非常に低いため、結果的に、幅広く採用されるに至らない。導管経上皮DC電位の測定、導管経上皮ACインピーダンス分光法だけ、あるいは、DC電位とインピーダンス分光法との組み合わせにより、90%を超える診断精度が得られるため、臨床的有用性が高まる。
乳癌は、乳房組織の終末乳管小葉単位(TDLU)における上皮細胞が起源であると考えられている。これらの細胞は、休止時に増殖して様々な物質の吸収および分泌において機能的役割を果たすとともに、乳汁分泌時にミルクを生成することができる。乳房上皮における機能的変化は、乳癌診断への可能な手法としては大いに無視されてきた。乳房上皮は、乳汁分泌中のミルク形成に関与している。毎月、月経閉止前の乳房上皮は、生理後に退縮を伴う妊娠のための「リハーサル」を受ける。上皮が卵胞期から黄体期に入ると、扁平上皮はより円柱状をなす。また、導管分岐および腺房の数は、黄体期の後半中に最大に達する。生理の直前に上皮のアポトーシスが起こり、女性が妊娠しない場合にはプロセスが再び開始する。
妊娠初期および授乳期は、エストロゲンであろうと他の環境的な要因であろうと、癌性作用の影響をあまり受けない乳房上皮が更に多く分化するため、乳癌に対して保護される。したがって、分化した乳房上皮が悪性の変化を受ける可能性は低いと思われる。分化した上皮は、明確な頂端膜および側底膜領域を有しており、それにより、ベクトル輸送機能(ミルクの生成)を維持することができる。また、分化した細胞は、様々なイオン、ラクツロース、他の物質を導管腔の内外で輸送するために高い細胞膜電位を維持している。一方、増殖性上皮細胞は、細胞膜を脱分極し、ベクトル的イオン輸送を維持することがあまりできない。最近、上皮Na+チャンネル(ENaC)および嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)は、乳房上皮において識別されてきており、両方とも上皮の頂端側または管腔側で局在化される。これらの2つの輸送子は、アミロリド、ENaCの遮断薬を使用することにより、あるいは、cAMPを使用してCFTRによって調節されるCl-チャンネルを開放することにより調べることができる。
例えば、20μMの管腔アミロリドは、経上皮電位を−5.9±0.5mV(平均値±SEM)から+3.1±0.5mVまで脱分極した。cAMPを上昇させてCFTRによりCl-チャンネルを開放するホルスコリン(forskolin)は、乳房上皮を−2.2±0.1mVまで過分極した。これらの変化は、経上皮抵抗の増大(17%)およびその後の減少(19%)のそれぞれに付随した。形質転換された乳房上皮においては、ENaCがダウンレギュレートされ、一方、Cl-分泌が増大する場合があり、これは、子宮頚管の癌腫に関して報告された観察結果と同様である。非乳汁分泌性乳房上皮は、比較的濡れ易い密着結合部を有している。この結果、傍細胞分流が生じ、それにより、上皮細胞の頂端膜が過分極される。分流が大きくなればなるほど、頂端膜が更に過分極され、したがって、TEP=VBL−VAおよびi=TEP/RSとなるため、上皮が脱分極する。ここで、TEP=経上皮電位、VBL=側底膜の電圧、VA=頂端膜の電圧、i=分流、RS=傍細胞(短絡性)抵抗である。
乳房発癌を乳房上皮の機能不全に関連付けることができるという証拠は、多くの他の情報源からもきている。マウスの幾つかの遺伝子組み換え種族は、欠陥のある乳分泌を有している。あるいは、増殖性肺胞小節を発現する遺伝子組み換えのsrcマウスは、正常な乳房ツリーを発現するが、欠陥のある乳分泌を有している。notch4およびTGFβ遺伝子組み換えマウスも欠陥のある乳分泌を示す。サイクリン D1雌は離乳後6〜9ヶ月で持続的な乳分泌を有し、また、アポトーシスに欠陥を持ち且つ上皮の退縮を受けないTGFαマウスは、分泌過多を発現する。これらのデータは、上皮機能と増殖および腫瘍発現に影響を与える遺伝子発現との間に関係があることを示唆している。
乳房嚢胞は、7%の雌集団において生じるとともに、TDLUにおいて発現すると考えられている。アポクリン嚢胞は、単純な嚢胞よりも高いカリウム含有量を有している。アポクリン嚢胞は、乳癌のその後の進行に関連付けられる場合がある。したがって、細胞膜にわたる電解質含有量の再分配に伴って乳癌進行の危険性がある上皮に基本的な変化が生じる場合があり、その結果、嚢胞電解質含有量が変化し、細胞膜が脱分極する。乳分泌中に乳房がラクツロース、タンパク質、脂肪酸、免疫グロブリンコレステロール、ホルモン、イオン、水を導管および小葉上皮にわたって輸送して積極的にミルクを分泌することは一般的に知られているが、非妊娠時の非乳汁分泌段階において乳房が一生を通じて排せつ・吸収機能を示すことはあまり広く認識されていない。乳を分泌する乳房と乳を分泌しない乳房との間の違いは、乳頭導管流体の化学的な構成および度合いである。導管分泌は、乳房の生物学的状態を診断するために分析されてきた。
導管流体を得るために、得られて蓄えられた分泌物に対する吸引カップ、乳頭吸引流体(NAF)、更に最近では、乳頭表面に対して開放する6〜12個の導管のうちの1つの挿管を含む多くの手法が使用されてきた。したがって、導管流体中の細胞および物質を入手して、乳房の病的状態に関連付けられてもよい異常性を特定することができる。前述した手法の1つの欠点は、適切なNAFまたは洗浄液を得て分析を行なうことが難しいという点である。他の欠点は、流体または細胞中の異常性が特定される場合がある導管を識別し或いは当該導管にカニューレを挿入することができないという点である。
Hung(米国特許第6,314,315号)は、乳頭表面上の導管穴を特定するための電気的な手法を提案した。この開示内容では、DC電位測定またはインピーダンス測定が乳頭の表面上における開口または穴の特定を容易にする場合があることが教示されている。しかしながら、DC電気信号またはインピーダンスの特性が乳房の状態を特徴付けることができるという点は教示されていない。また、乳房経上皮DC測定だけ、経上皮ACインピーダンス分光法だけ、あるいは、これらの組み合わせを使用して乳癌を診断できることも教示されていない。
乳房導管内の流体分泌物と乳漿との間にはイオン勾配が存在する。例えば、乳頭吸引流体は、約150mEq/l(petrakis1)の血清[Na+]と比べて123.6±33.8mEq/l(平均値±標準偏差)のナトリウム濃度[Na+]を有していることが知られている。未経産婦は、経産婦よりも約10mEq/l高いNAF[Na+]を有しているが、依然として血清レベルを大きく下回っている。同様に、カリウム濃度[K+]は、約5.0mEq/lの[K+]の血清レベルと比べて、経産婦では13.5±7.7mEq/l、未経産婦では12.9±6.0mEq/lと著しく高くなっている。他の研究は、53.2mEq/lという低いNAF[Na+]を報告しており、これは、非乳汁分泌性乳房における乳漿と導管腔との間に大きなイオン勾配が形成され得ることを示唆している。妊娠時、これらの勾配はナトリウムにおいて非常に高く、ミルクにおいて報告された8.5±0.9mEq/lの[Na+]は乳漿よりも約20倍低い。ミルク中の塩化物濃度[Cl-]は、乳漿において見出された濃度のほぼ1/10であり、11.9±0.5mMの値が報告された。導管分泌物における[Na+]および[Cl-]レベルが上昇し、乳分泌の停止後に[K+]が下がっているが、導管腔と乳漿との間には大きなイオン勾配が維持されている。
また、乳分泌中に排卵周期をきたす女性においては、乳房のミルクのイオン濃度およびラクツロース濃度に明確な変化が観察された。第1の変化は排卵の5〜6日前に生じ、第2の変化は排卵の6〜7日後に生じる。これらの期間中、[Na+]および[Cl-]は2倍を超えて増大し、[K+]は約1.5倍減少した。排卵前後のエストロゲンレベルまたはプロゲステロンレベルの変化がミルクのイオン組成に影響を及ぼしているかどうかははっきりしない。しかしながら、ミルクのイオン組成の変化が乳房で測定される経上皮電位に影響を及ぼすことは知られている。
また、様々なホルモンが乳房上皮イオン輸送に影響を与えることが知られている。例えば、プロラクチンは、乳房上皮細胞間の密着結合部の透過性(浸透性)を減少させ、粘膜を刺激してNa+流れを滲出させるとともに、Na+:K+:2Cl-共輸送をアップレギュレートして、ミルク中の[K+]を増大させ且つ[Na+]を減少させる。グルココルチコイドは、密着結合の形成を制御して、経上皮抵抗を増大させるとともに、上皮透過性を減少させる。妊娠末期に乳房導管中へコルチゾールを投与すると、導管分泌物の[K+]が増大し且つ[Na+]が減少することが分かった。プロゲステロンは、妊娠中における密着結合部の閉塞を妨げるとともに、妊娠していない女性の月経周期中に観察される前述した導管流体電解質の変動に関与し得る。エストロゲンは、細胞膜および経上皮電位を増大するように観察されるとともに、乳房上皮細胞におけるK+−チャンネルの開放を刺激する場合がある。前述したホルモンは、毎日および月経周期中に変化する。これらの変化は、管腔内のイオン濃度を変化させる乳房上皮の機能的特性、上皮細胞および経上皮・傍細胞伝導性経路のイオン輸送特性に依存する経上皮電位・インピーダンス特性に影響を及ぼすと思われる。
したがって、これらの変動は、乳房組織に対する変化の診断指標として使用することができ、今まで利用されるべきである。そのため、異常な乳房組織を検出するための効果的で実用的な方法が依然として必要である。
従来の方法に関連する問題および欠点を解消するため、異常組織または癌組織は、特別に構成された電極を用いて乳房上皮および腫瘍にわたって電流または信号を流すDC及び/又はインピーダンス測定を使用して特徴付けられる。例えば、導管上皮、周囲の乳房組織、皮膚および表面または他の電極の間で電圧及び/又はインピーダンスを測定するために乳頭電極が使用されてもよい。また、乳房の導管系に沿って電流を流すために乳頭電極が使用されてもよい。他のタイプの電極を使用して電圧及び/又はインピーダンス信号を測定してもよく、及び/又は、電流を流して乳頭表面にある個々の導管穴において信号を測定してもよい。他のタイプの電極を使用して電圧及び/又はインピーダンス信号を測定し、及び/又は電流を流して1または複数の電極が取り付けられていてもよい改良された導管プローブまたは導管スコープを用いて個々の導管内で信号を測定してもよい。これらの電極の全ては、個別に使用されてもよく、互いに組み合わせて使用されてもよく、あるいは、表面プローブまたは電極と共に使用されてもよい。また、DC測定値およびインピーダンス測定値を組み合わせて使用して異常組織または癌組織をより適切に特徴付けることができる。DC測定は、上皮の機能的状態に関する情報を与えるとともに、初期の前癌状態の変化および隣接する悪性腫瘍を検出することができる。異なる距離で離間する電極を使用して異なる周波数で行なわれるインピーダンス測定は、深さ情報および位置情報を与えて、調べられる組織に関する構造的(高周波範囲)および機能的(低周波範囲)な情報を与える。異常組織または癌組織は、上皮組織における輸送変化を検出して測定し、イオン置換及び/又は薬理的およびホルモン的操作を使用して異常な前癌状態の細胞または癌細胞の存在を決定することによって検出し、特徴付けることができる。経上皮DC電位、インピーダンス、または、上皮における輸送の変動に影響され易い他の電気生理学的特性のベースラインレベルは、評価される組織内で測定される。輸送を高めるため、あるいは、輸送変動を検出できるようにするために、物質が導入されてもよい。その後、経上皮DC電位及び/又は組織のインピーダンス(あるいは、輸送の変動を反映でき又は輸送の変動を検出できるようにする他の電気生理学的特性)が測定される。導入された物質および測定された電気生理学的なパラメータに基づいて、組織の状態が決定される。
乳房上皮組織の選択された部位の状態を決定するための方法およびシステムが提供される。少なくとも2つの電流通過電極が、組織の選択された部位の第1の表面と接触した状態で位置される。あるいは、電流通過電極は、例えば、乳頭傍観、導管腔、上皮、乳房柔組織、乳房の表面の間のように組織または上皮にわたって電流を流してもよい。または、導管は、中央導管カテーテルまたは導管スコープによってアクセスされてもよい。複数の測定電極は、同様に乳房の第1の表面と接触した状態で位置される。最初に、測定電極のうちの1または複数を使用して、他の電極または基準点に対して基準付けられるDC電位を測定する。電流通過電極間で信号が形成される。形成された信号に関連するインピーダンスが1または複数の測定電極によって測定される。あるいは、測定のために3電極システムが使用されてもよく、それにより、電流注入および電圧記録の両方のために1つの電極が使用される。組織部位中には物質が導入される。組織の状態は、測定されたDC経上皮電位、インピーダンスまたは他の電気生理学的特性に対する物質の影響に基づいて決定される。前述した方法および装置における電極は、被検組織と接触した状態、近接した状態、被検組織を上側から覆った状態で使用することができ、あるいは、被検組織中に挿入することもできる。言うまでもなく、本方法は、これらの構成のうちの1つを包含する実施形態においてを説明される場合、他の構成と互いに交換可能に使用することもできると考えられる。例えば、電極が組織と接触するように方法が説明される場合、方法は、組織中に挿入され或いは組織に近接する電極と共に使用することもできる。同様に、組織と近接する電極を有するものとして方法が説明される場合、電極を組織と接触させることができ或いは組織中に挿入できると考えられる。
異常な前癌状態または癌性の上皮組織における輸送変動をより正確に検出するため、薬剤を導入して組織を操作してもよい。薬剤(薬理学的作用)としては、特定のイオン輸送および電気的活動をなす作動物質、特定のイオン輸送および電気的活動をなす拮抗薬、イオン置換、及び/又は、ホルモンまたは成長因子刺激または電気的活動の抑制を挙げることができる。
調べられる組織の場所に応じて、多数の方法を使用して、薬剤またはホルモン剤を投与してもよい。1つの典型的な方法は、導管注入、潅流、直接接触または注射により、調べられる組織に対して直接に物質を導入することを含む。他の典型的な方法は、皮膚表面に対して物質を塗布することを含む。この場合、物質は、経皮的に、すなわち、皮膚を通じて作用する。更に他の典型的な方法としてはエレクトロポレーションを挙げることができる。この場合、導管上皮または表面は、対象の臓器または上皮と接触し或いは貫通する電極を介して交流を流すことにより透過性を持つようになる。その後、物質は、臓器およびその構成細胞中に受動拡散する。物質は、改良された乳頭吸引カップおよび電極を使用して乳房の導管系中に直接に導入されてもよく、あるいは、導管カテーテルまたはプローブを使用して特定の導管内を洗浄してもよい。更なる典型的な方法は、吸入、経口投与、洗浄、チューブによる栄養補給、浣腸、舌下による又は頬粘膜を介した或いは腹腔内投与による血管または静脈への非経口的注入を含む。当業者であれば分かるように、他の方法も可能であり、選択される方法は、調べられる組織によって決定される。
したがって、本発明に係るシステムおよび方法は、経上皮電位測定及び/又はインピーダンス測定を使用して、前癌状態の腫瘍または癌を診断する。また、本発明に係るシステムおよび方法は、所定の一組の周波数を組み合わせて使用して前癌状態の腫瘍および癌の機能的且つ構造的な変化を特徴付ける。離間した電極を使用することにより、本発明は、前癌状態の腫瘍および癌を診断するために、被検上皮に関する位置情報および幾何学的(深さ)情報を与えることができる。1つの実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、特別に作られたECMを有する電極を使用して、上皮に関する機能的な情報を与え、前癌状態の腫瘍および癌を診断する。
本発明の更なる目的および利点は、以下の説明において部分的に示され、また、以下の説明から部分的に明らかであり、あるいは、本発明の実施により学んでもよい。本発明の目的および利点は、添付の請求項で特に指摘された要素および組み合わせにより実現され或いは達成される。
前述した一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、典型例であり単なる説明的なものであるとともに、請求項のように本発明を限定するものでないことは言うまでもない。
この明細書に組み入れられ且つこの明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の1つの実施形態を示しており、明細書本文と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
ここで、本発明の一実施形態を詳細に参照し、その一例が添付図面に示されている。可能な限り、同じ又は同様の部分を示すために同じ参照符号が図面の全体にわたって使用される。
[概要]
経上皮乳房DC電位を測定するためには、乳頭カップ内に陥凹状に形成されたAg/AgCl(または類似の低オフセット白金/水素、チタン、スズ−鉛合金、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、炭素または他の導電性金属または導電性高分子電極)ペレット間の電気的な接続を行なうように構成された乳頭電極により導管の内腔が電気的にアクセス(接続)されることが必要である。カップはECM(導電媒体)で満たされており、このECMは、導管系内に受動的に入り、シリンジまたはポンプを用いて吸引された後、導管の内腔と接触する。乳房の表面に配置された表面電極は電気回路を完成し、それにより、導管上皮または腫瘍の中心と皮膚表面との間で経上皮電位の測定が行なわれてもよい。経上皮ACインピーダンスを測定するために同様の考え方がなされなければならず、これにより、測定電極は、乳頭電極を皮膚表面電極と組み合わせて使用することにより、導管上皮または腫瘍(の両端間)にわたる位相シフトおよび電圧降下を測定する。この手法の他の構成は更に侵襲的である。つまり、導管スコープを介して挿入された電極、または、皮膚に対して基準付けられた乳頭土管プローブ電極、または、IV(静脈内)、皮内または皮下電極の間で測定を行なうことができる。他の実施形態において、導管は、皮膚を通じて挿入されるニードル電極によりアクセスされてもよい。
DC経上皮測定とインピーダンス測定とを組み合わせるためには、低接触インピーダンスを有する表面電極、または、IVを通じた血流、または、上側を覆う表皮または他の上皮を透過するニードル電極を介した間質体液、または、他の身体基準点に対して基準付けられた電圧検出電極を使用してDC電位のベースライン測定値を得ることが必要である。電極は、それらのECM中に様々なイオン濃度、薬剤、または、ホルモンを含んでいてもよい。この明細書本文で使用されるように、ECMは、測定される表面と電極との間で電気信号の送信を可能にする媒体である。物質としては、組織の状態に関する更なる情報を与えるように選択された、ECMに加えられ或いは被検組織内に導入される任意のイオン濃度、薬剤、ホルモンまたは他の化合物を挙げることができる。他の実施形態において、物質の濃度は、系を通じた流れを使用して変更されてもよい。
導電媒体としては、電極表面と皮膚または上皮表面との間の接触のインピーダンスを減少させるために外部電極または内部電極とともに使用される導電性流体、クリームまたはゲルを挙げることができる。DC電極の場合には、ECMにより電極表面でDCオフセットが最も低くなり、あるいは、オフセットを測定できることも望ましい。ECMは、多くの場合、表面電極との電気的接触を確立するために皮膚の更に深い層から流体および電解質を引き寄せるヒドロゲルを含む。電流を流すために使用される電極は、高い伝導性(コンダクタンス)を有するECMを必要とする。通常、これは、電解質含有量が高いECMを使用することにより達成される。頻繁に使用される電解質はKCl(塩化カルム)である。その理由は、これらの2つのイオンが自由溶液中で同様のイオン移動度をもっているからであり、これにより、電極分極の問題は、移動度が異なるイオンが使用される場合よりも少なくなる。ECM形成においてはナトリウムなどの他のイオンが使用されてもよく、また、高い電解質濃度により、電極平衡がより急速になる。
特定のイオンに対する上皮の透過性の評価が行なわれる状況においては、カリウムに対する上皮のコンダクタンス(伝導性)を電気生理学的に測定できるようにECM中のKの濃度が変えられる。ECM中の電解質に対する下側皮膚のコンダクタンスを高めるため、促進体または浸透体がECMに対して加えられる。他の手法は、表面皮膚抵抗を減少させるための低刺激性の表面摩耗、または、皮膚表面抵抗を減少させるために角質層を貫通するシリコン電極を含む。
インピーダンス変化の深さを測定するため、間隔が異なる表面間で電極電圧降下が形成されてもよい。間隔は、調べられる深さの知識によって決定される。同様に、2つの異なる周波数レンジを使用して、異なる深さで機能的および構造的変化を測定する。
異常な前癌状態または癌性の上皮組織において異なる深さで機能的な輸送変化をより正確に検出するため、薬剤を導入して組織を操作する一方で、異なる周波数で組織を電気的に調べ、異なる距離で離間する電極間の電圧降下を監視する。薬剤(薬理学的作用)としては、特定のイオン輸送および電気的活動をなす作動物質、特定のイオン輸送および電気的活動をなす拮抗薬、イオン置換、及び/又は、ホルモンまたは成長因子刺激または電気的活動の抑制を挙げることができる。
調べられる組織の場所に応じて、多数の方法を使用して、薬剤またはホルモン剤を投与してもよい。1つの典型的な方法は、導管注入、潅流、直接接触または注射により、調べられる組織に対して直接に物質を導入することを含む。他の典型的な方法は、皮膚表面に対して物質を塗布することを含む。この場合、物質は、経皮的に、すなわち、皮膚を通じて作用する。更に他の典型的な方法としてはエレクトロポレーションを挙げることができる。この場合、導管上皮または表面は、対象の臓器または上皮と接触し或いは貫通する電極を介して交流を流すことにより透過性をもつようになる。その後、物質は、臓器およびその構成細胞中に受動拡散する。更なる典型的な方法は、吸入、経口投与、洗浄、チューブによる栄養補給、浣腸、舌下による又は頬粘膜を介した或いは腹腔内投与による血管または静脈への非経口的注入を含む。当業者であれば分かるように、他の方法も可能であり、選択される方法は、調べられる組織によって決定される。
導入される物質および調べられる組織に基づいて、インピーダンス等の電気生理学的特性の測定が行なわれる。測定できる他の特性としては、経上皮電位、経上皮電位の自然な振動の変化、または、悪性状態に関連するインピーダンス、ギャップ結合(細隙結合)機能の損失を示す電極間の伝搬信号における時間遅延を挙げることができる。隣接する細胞が電気的に結合される場合には、薬理学的に電気信号を引き出し且つ表面上皮細胞を通じた上流および下流への信号伝搬を測定することにより結合の損失を調べることができる。これは、ギャップ結合の機能的な測定である。これに対し、簡単な電気的刺激は、細胞間の電流の分流を測定する(少なくとも高周波範囲での構造的測定)。
これらの測定の結果は、その後、被検組織の状態を決定するために使用される。例えば、研究は、癌の進行中に特定のイオン輸送過程が変えられることを示した。例えば、起電性Na+輸送の損失、Na/H交換のアップレギュレーション、K+コンダクタンスのダウンレギュレーション、基底Cl-吸収の減少、c−AMP(環状アデノシン−3′,5′−環状モノリン酸塩)のダウンレギュレーション、刺激性Cl-分泌が観察された。
このように、特定の上皮組織に適した物質を投与するとともに、関連する電気生理学的特性を測定することにより、異常な前癌態組織または癌組織の進行が初期段階にある間、これらの異常な前癌態組織または癌組織を検出することができる。本発明の方法およびシステムは、任意の上皮派生癌、例えば、これらに限定されないが、前立腺癌、結腸癌、乳癌、食道癌、鼻咽腔癌、および、他の上皮悪性腫瘍、例えば肺、胃、子宮頚部、子宮内膜、皮膚および膀胱に適用できることは言うまでもない。
具体的には、粘膜または上皮組織に影響を及ぼす癌においては、輸送変化が十分に大きく、それにより、これらの輸送変化が多数の細胞に影響を与える初期の変異(すなわち、領域欠損)の結果であることが示唆される。この場合、これらは、どの患者が更に頻繁に監視されるべきであるのか或いは逆にどの患者を使用して生検を必要とする上皮の特定の部位を識別することができるのかを決定するための可能なバイオマーカーとして利用されてもよい。後者は、侵襲的な生検に頼る必要なくマンモグラフィにより或いは視触診による乳房検診により検出することが難しい非定型(異型)導管異常増殖または現位置での導管癌(DCIS)の場合に特に役に立つ。
本発明と共に使用される装置においては多くの変形が可能である。また、装置構成内には、変更されてもよい多数の態様がある。これらの変形および他の変形について以下に説明する。
1つのプローブまたは他の装置は、陥凹部内に複数の小型電極を含む。使い捨て可能な市販のシリコンチップのフィルタリング等の処理機能は、面記録および初期電子処理を行なってもよい。各ECM溶液または物質は、チップ上のリザーバおよび個々の電極に固有のものであってもよい。したがって、1つの測定においては、特定の一組の電極が使用される。他の測定においては、例えば、異なるイオン濃度で、異なる一組の電極が使用される。これは幾つかのバリエーションを生むが、1つの測定における電極が他の測定における電極と同じ位置に配置されないため、このシステムは一般に信頼できる結果を与える。
他の手法は、更に少ない電極を使用するとともに、溶液および薬剤を交換するために流入システムまたは微小流体システムを使用することである。具体的には、溶液または物質は、少量の電流を流して溶液または物質をチャンネルを通じて移動させるとともに装置の表面上の孔を通じて外へ出すことにより交換される。この実施形態において、電極は、皮膚または導管上皮の同じ部位と接触したままであり、したがって、測定における部位間の変動をなくすことができる。この手法は、異なる溶液間の平衡に時間を要する。
異常な前癌状態または癌性の乳房組織の存在を検出する際には、皮膚において表面測定値を得るために手持ち式のプローブが用意される。このプローブは、電流を通し且つ測定するための電極を有していてもよい。乳頭カップ電極と手持ち式プローブとの間でインピーダンス測定値が取得されてもよく、あるいは、手持ち式プローブ上の電極間でインピーダンス測定値が取得されてもよい。また、導管スコープまたは非光学的導管プローブが1または複数の小型電極と接続されてもよい。最初のDC測定値を取得した後、皮膚インピーダンスを減少させるために湿潤性物質/透過性物質が導入されてもよい。この物質は、前述したように流体を電極の表面へと移動させる微小流体手法を用いて導入されてもよい。あるいは、角質層を貫く表面電極を使用してインピーダンスを減少させてもよい。
装置の構成にかかわらず、図1は、癌診断で使用される本発明に係るDCおよびACインピーダンス測定システム100の概略図である。システム100は、複数の電極を有するプローブ装置105と接続する。この場合、プローブ装置105の実施は臓器および検査下の状態に依存する。プローブ装置105は、注射針、体腔、導管スコープ、非光学導管または表面プローブに取り付けられる電極を組み込んでいてもよい。基準プローブ110は、検査状態および検査下にある乳房の部位に応じて、静脈プローブ、皮膚表面プローブ、乳頭カップまたは導管上皮表面基準プローブの形態をなしている。
浮遊容量を避けるため、電極は、シールドされたワイヤを介して、デジタル信号プロセッサ(DSP)130からのコマンドにしたがって特定のプローブ105を選択できる選択スイッチ120に対して接続されてもよい。また、選択スイッチ120は、プローブ105に接続された適切なフィルタも選択し、それにより、DC測定中に低域通過フィルタが使用され、及び/又は、ACインピーダンス測定中に中域または高域通過フィルタが使用される。選択スイッチ120は、複数の増幅器から構成されていてもよい増幅器配列140へと電流を流し、または、複数の電極が使用されるときには異なる電極からの信号を同じ増幅器につなぐ。好ましい実施形態では、ノイズ中に埋もれた微小信号を検出するために、デジタルまたはアナログロックイン増幅器が使用される。これにより、基準周波数の振幅変調として対象の信号の測定を行なうことができる。切り換え要素は、測定の状況に応じて、対象の信号を平均化し、サンプリングし、あるいは、選択してもよい。信号のこのような処理は、CPUからのコマンドに従ってDSPにより制御される。信号は、マルチプレクサ150を通り、ADCによりアナログからデジタルへと変換される前にシリアル化される。プログラマブル利得増幅器160は入力信号をADC170の範囲に一致させる。ADC170の出力はDSP130に送られる。DSP130は、情報を処理して、DC電位および導管上皮または皮膚表面上におけるDC電位パターン並びに疑いのある部位上にわたるDC電位パターンを計算する。また、様々な深さにおけるインピーダンス、および、イオン、薬剤、ホルモンまたは他の物質の様々なECM濃度に対するDC電位およびインピーダンスの応答を使用して、癌の可能性が評価される。その結果は、その後、検査結果185を与えるためにCPU180に送られる。
また、信号解釈がCPU180内において部分的に或いは完全に行なわれてもよい。合成波形信号をプローブ電極および被検組織に送るため、任意波形発生器190または正弦波周波数発生器が使用される。測定された信号応答(合成波形刺激の場合)は、DSP130またはCPU180内でFFT(高速フーリエ変換)を使用して解析されてもよく、これにより、インピーダンスプロファイルが異なる検査条件下で測定される。インピーダンス測定のためのシステムの内部較正においては内部キャリブレーション基準195が使用される。DCキャリブレーションが外部から行なわれ、プローブキャリブレーションが外部の基準電解質溶液に対して利用される。図2は、乳房の表面に対して適用されてもよい本発明に係る手持ち式プローブ400を含む。プローブはハンドル410を有していてもよい。プローブ400は、例えば無線技術を使用して、測定装置420に対して直接的に或いは間接的に取り付けられてもよい。プローブ400は、静脈電極、皮膚表面電極、他の接地、乳頭電極、または、導管内或いは乳頭穴にある導管プローブ電極に対して基準付けられてもよい。図2に示される1つの実施形態において、基準は、拡大図440に詳細に示される乳頭電極または導管プローブ430である。この構成の1つの利点は、乳頭電極430とプローブ400との間でDC電位およびインピーダンスを測定することができるという点である。したがって、測定値は、乳房導管上皮、非導管乳房柔組織、皮膚のDC電位又は/及びインピーダンスの組み合わせである。拡大図440を参照すると、乳頭の表面上に向けて開口する幾つかの導管穴のうちの1つの中に導管プローブが挿入されている。導管プローブ443は、大きい集合管445を排出する導管洞444内に示されている。
乳頭電極を使用する他の利点は、プローブを通じて導管系を湿らせるための溶液を交換することができ、薬剤及び/又はホルモン剤を導入することができるという点である。拡大された乳頭プローブ443,443′に示されるように、サイドポートを通じて流体を交換することができる。流体は、導管内に注入されてもよく、また、乳頭プローブの隣接端部(乳頭から離れた端部)で吸引されてもよい。特定のイオンに対する導管上皮の透過性の変化を測定するために様々な電解質溶液が導管内に注入されてもよく、あるいは、異常な部位を識別するために様々な薬物を用いて上皮組織が精査されてもよい。エストラジオールまたは他のホルモン剤を乳房導管内に注入して、上皮組織における前癌状態変化または悪性変化に関連する異常な電気的応答を測定してもよい。
乳頭に対して吸引力を作用させる改良された縫工筋カップなどの様々な構成を使用してもよいことは言うまでもない。この構成を用いると、乳頭上にわたって配置されたカップに対して穏やかな吸引力が加えられる。大きい導管または導管洞内の少量の流体が縫工筋カップ内の電解質溶液と接触し、それにより、乳房導管を満たす流体との電気的な接触が生じる。その後、カップと表面乳房プローブとの間でDC測定またはAC測定が行なわれてもよい。
図3は、図2のプローブ400を詳細に示している。表面の皮膚接点450が乳房と接触した状態で配置される。表面電極451がDC電圧またはAC電圧を測定する。電流通過電極452はインピーダンス測定のために使用される。また、プローブ400は、1つまたは複数のECMを収容する1つまたは複数の陥凹壁を含んでいてもよい。表面プローブには、電流通過電極と共に複数のセンサ電極配列が取り付けられてもよい。個々の電極は陥凹状をなしていてもよく、また、組成の異なるECMを使用して、深部組織または被検上皮組織を薬理的に、電気生理学的に、または、ホルモン的に精査してもよい。電極の間隔は、他の臓器系の場合よりも乳房構成の場合の方が大きくてもよく、それにより、深部組織が電気的に精査され、深部組織のインピーダンスが評価されてもよい。このプローブは、乳房の表面と接触した状態で受動的に配置されてもよく、あるいは、対象領域上にわたって空気吸引により所定位置に保持されてもよい。溶液の交換のため、あるいは、流体交換および吸引のため、ポートが配置されてもよい(図示せず)。電極間のクロストークを防止するため、また、電流を接触面から乳房へと流すため、ガードリング(図示せず)が組み込まれてもよい。この構成では、4つの電流通過電極[453]が存在しており、これらの電極はそれぞれ放射状(径方向)に90度離れて位置されている。これにより、直交場(perpendicular fields)で電流を流すことができ且つ電圧応答を測定することができる。電極は、電線により又は無線技術により、前述した図1に記載された装置と結合されている。
この技術の更なる実施形態は、乳房の異なる深さを精査するために離間した電極を使用することと、皮膚表面で測定される良性および悪性の乳房組織からの経上皮電位およびインピーダンスを個別に変化させるために、ホルモン、薬剤、他の物質を使用することを包含しうる。これにより、診断精度を更に向上させることができる。
図4は乳頭カップ電極[500]を示しており、この電極は、基準電極、電流通過電極、電圧測定電極またはこれらを組み合わせた電極[502]として使用されてもよい。この構成において、フレキシブルホース[515]によって吸引装置、吸引器(aspirator)または注射器(syringe、図示せず)に接続されているサイドポート[510]を通じ、電極ハウジング[501]に対して吸引および流体交換がなされる。カップの基部にあるフランジ[503]は、乳房[520]の乳輪に当接される。空気吸引は、サイドポートを通じてなされ、通路[512]によってハウジングに伝えられ、それにより、乳房[520]と乳頭電極[501]との間でシールが得られる。電解質溶液は、カップを満たし且つ下側にある導管系との電気的接触を行なうために使用される。サイドポートを通じて吸引と流体または薬剤のカップ内への注入とを交互に適用することにより、流体が交換され、あるいは、薬剤およびホルモン剤が導入されてもよい。空気吸引は、それ自体により、あるいは、アルコールまたは非角質化物質を用いた前処理後に、導管開口[505]を拡げて、乳頭の表面にある導管開口で角栓を除去する。DC電位測定値、ACインピーダンス測定値、これらを組み合わせた測定値を得るため、乳頭カップ電極[502]は、電気的接続[530]の方法により又は無線接続(図示せず)により、図1〜3に示された装置と結合されてもよい。
図5は、注射器[555]に取り付けられた可撓性カテーテル電極[550]を用いて個々の導管が精査される他の手法を示している。この手法は、特定の導管が流体を生成する場合、また、流体を生成する特定の導管系に関して診断が行なわれる場合に使用されてもよい。この構成では、生理食塩水で満たされたシリンジが可撓性電極[550]に接続され、可撓性電極[550]が導管[551]内に挿入される。カテーテルを通じて流体が交換されてもよく或いは薬剤およびホルモンが導管内に注入されてもよい。シリンジ内の電極またはシリンジに取り付けられた電極が個々の導管系と電気的に接触し、表面プローブ電極[552]が回路を完成させることにより、図1〜3に示されたシステムとの併用で、DC電位、ACインピーダンス、または、これらの両方の組み合わせが、導管上皮、皮膚、介在する乳房柔組織にわたって測定されてもよい。他の手法は、導管スコープと、導管スコープに接続される電極を有する表面プローブとを組み合わせて使用することである。
組織の電気生理学的特性および正常組織と異常組織との間の違いを測定するための装置は、当分野で周知の装置、例えば電気計器、デジタル信号プロセッサ、電圧計、オシレータ、信号プロセッサ、ポテンショメータ(電位差計)、または、電圧、コンダクタンス(伝導性)、抵抗あるいはインピーダンスを測定するための任意の他の装置を含んでいてもよい、
DC電位は、通常、高抵抗に直列なガルバノメータ(検流計)と2つの電極(1つが作用電極であり、もう1つが基準電極である)とからなる電圧計を使用して測定される。電圧計はアナログ方式であってもデジタル方式であってもよい。理想的には、これらの電圧計は、電流引き込みを避けるために、極めて高い入力抵抗を有していなければならない。また、DC電位は、オシロスコープを用いて測定されてもよい。
インピーダンスは種々の手法を使用して測定されうる。制限されるものではないが、これらの手法の例としては、フェーズロック増幅器が含まれ、このフェーズロック増幅器はデジタルまたはアナログのロックイン増幅器であってもよい。ロックイン増幅器と共にプリアンプ(前置増幅器)を使用することにより、接地への迷走電流を最小限に抑えて、精度を高めてもよい。デジタルロックイン増幅器は2つの正弦波の乗算に基づいている。この場合、一方の正弦波は、対象の振幅変調情報を伝える信号であり、他方の正弦波は、特定の周波数および位相を伴う基準信号である。信号発生器を使用して正弦波またはコンポジット信号を生成することにより、組織を刺激することができる。アナログロックイン増幅器は、ローパスフィルタおよび位相弁別検出器(PSD)を含む同期整流器を含む。他の手法は、AC正弦波を生成するためのオシレータを用いたインピーダンスブリッジの使用を含む。これらの装置は、自動化される場合にはLCRメータと称され、自動平衡ブリッジ技術を使用する。定電流または定電圧の電流源が使用されてもよい。1つの好ましい実施形態では、定電流源が使用される。所定の周波数信号を伴うオシレータではなく、重畳正弦波を生成する信号発生器が使用されてもよい。
組織応答は、高速フーリエ変換または他の技術を使用して解析される。測定を行なうために、二極、三極または四極電流・電圧電極が使用されてもよい。1つの好ましい実施形態では、四極電極構成を使用して、電極分極および電極−組織インピーダンスエラーに起因してもたらされる不正確さが回避される。インピーダンスではなく、上皮または皮膚表面にある電極配列を使用して電流密度が測定されてもよい。また、インピーダンスは、電極を皮膚または上皮に接触させずに電磁誘導を使用して測定されてもよい。
多量のデータを処理するため、本発明の方法は、コンピュータ可読媒体上のソフトウェアにより実施することができ、また、コンピュータ機器または中央プロセッサユニットにより実行することができる。
[乳癌]
前述したように、インピーダンスおよびDC電位を皮膚の表面で個別に使用して乳癌を診断してきた。これらの方法のいずれも乳房の導管経上皮DCまたはAC電気特性を測定しない。これにより手法の精度が著しく低下する。なぜなら、乳癌の根源は、導管上皮内にあり、周囲の乳房基質には存在しないからである。インピーダンスおよびDC電位の経上皮測定が組み合わされると、精度が更に高められる。薬剤及び/又はホルモン剤と、インピーダンス測定またはDC電位測定とを組み合わせて使用すると、異常な前癌状態の或いは癌性の乳房組織を検出するための更に効果的な方法が与えられる。
乳癌は、主として終末乳管小葉単位(TDLU)に影響を与える異常な(不規則な)増殖の背景の中で進行する。TDLUは上皮細胞によって覆われており、それによりTEP(経上皮電位)が維持されている。アップレギュレートされた増殖の領域において、導管は脱分極される。皮膚表面下での導管の脱分極により、皮膚脱分極が生じる。この脱分極は、特許第6,351,666号、第5,678,547号、第4,955,383号に開示されるような非経上皮皮膚表面手法とは対照的に、経上皮導管手法を使用して観察される脱分極と比べて著しく弱められる。アップレギュレートされた増殖の領域において腫瘍が進行すると、上を覆っている乳房皮膚は、乳房の他の部位と比べると更に脱分極し、また、癌性乳房組織のインピーダンスが減少する。既存の技術を使用しても導管上皮インピーダンスの変化は測定されず、その結果、精度が低下する。TEPおよびインピーダンスの変化は、ホルモンおよび月経周期の影響下で生じる。
例えば、17−β−エストラジオールに対する乳房組織の電気生理学的応答は、正常な乳房上皮におけるよりも前癌状態上皮または癌性上皮における方が異なるものとなるように観察された。本発明の1つの方法では、エストラジオールが導管内に直接的に導入され、あるいは、その後、全身的に17−β−エストラジオールの舌下投与(4mg)がなされる。この物質は急速な応答を引き起こし、それにより、約20分でピークに達する。電気生理学的応答は、部分的には、患者の月経周期の段階および乳房組織の状態に依存している。具体的には、正常な乳房組織において、TEPの立ち上がりは卵胞期(または卵胞初期)の最中に生じる。前癌状態または癌性の組織において、この応答は無効化される。乳癌の危険性がある更年期以降の女性は、上皮細胞表面上のアップレギュレートされたエストロゲンレセプタにより、エストラジオールに対する過剰なTEP応答を持つ場合がある。
また、エストロゲン、プロゲステロン、プロラクチン、コルチコステロイド、タモキシフェンまたは代謝産物(これらの全ては、導管上皮の前癌状態、悪性状態、機能状態に応じて、導管上皮のイオン輸送特性を変える)、これらの組み合わせは、経口的に、経静脈的に、経皮的に、あるいは、導管内導入により取り込まれてもよい。
本発明の1つの実施形態において、乳癌または他の癌は、上皮の傍細胞通路の基本的な伝導状態を検査することにより診断されてもよい。例えば、乳房においては、密着結合部の伝導性に影響を及ぼすことが知られている物質が導管内に注入され或いは他の手段により投与されてもよく、また、物質の投与の前後において、表面電極、乳頭電極、導管電極または他の電極を使用して、経上皮インピーダンス及び/又は乳房のDC電位が測定される。前癌状態または悪性の乳房上皮と比べた正常時における物質に対する密着結合部の経上皮電気反応の違いは、その後、悪性腫瘍の存在または非存在を診断するために使用される。
他の実施形態では、疑わしい部位上にわたって電極が配置され、受動的なDC電位が測定される。その後、後述するようにACインピーダンス測定が行なわれる。上側を覆う皮膚の可変インピーダンス特性は、測定されたDC表面電極電位を減衰させ或いは増大させる。また、異なる周波数でのインピーダンス測定値は、最初に、印加DC電圧に加えて、重畳連続正弦波を含む。位相、DC電圧、AC電圧が測定される。ACでの皮膚または他の上皮組織の抵抗およびDCでの異なる抵抗が測定される。DC状態の下では位相シフトが存在しないため、表面で経上皮電位を測定することができる。皮膚の容量特性により、下側に位置する乳房上皮および腫瘍の電位を皮膚表面で測定することができる。一度ECMにより皮膚表面が「濡れる」と、前述した手法を用いることによって、皮膚表面電極電位に擬似的指数関数的減衰が存在する。ECM中のイオンは、皮膚にわたって拡散し、特に皮膚並列抵抗の変化により導電性が高くなる。この減衰における時定数は、ゲルのイオン強度および濃度に反比例する。ECMによって皮膚の導電性が大きくなると、腫瘍または周囲上皮の潜在的な電位に対する表面の静電結合が失われ、それにより、測定された電位は、電極−ECM−皮膚の界面での拡散電位およびオフセットを反映する。
図6は、経上皮伝導性に対する液槽(bathing)リンガー溶液の様々なイオン含有量の影響を示している。ヒト乳房上皮細胞は、ミリポアフィルタ上で単層として成長され、7〜10日で群集(confluence)へと成長した。その後、上皮組織は変更されたチャンバ(Ussing chambers)内に取り付けられ、電圧クランプを使用してDCコンダクタンス(伝導性)が測定された。コンダクタンスは、200ミリ秒間にわたって2μAの電流パルスを流して、DC電圧応答を測定するとともに、経上皮コンダクタンス(y軸)を計算してそれを時間(x軸)に対してプロットすることにより測定された。コンダクタンスは、最初に標準的なリンガー溶液中で測定され、その後、ナトリウムを含んでいないリンガー溶液中で測定された後、標準的なリンガー溶液へ戻され、その後、カリウムを含んでいないリンガー溶液中で測定され、最終的に、研究中に浸透圧性(osmolality)を維持しつつ標準的なリンガー溶液に戻される。
上側のプロット(塗りつぶされた正方形および実線)は、単層として成長されたヒトの良性乳房上皮のコンダクタンスを示している。コンダクタンスは良性上皮細胞において高い。コンダクタンスのNa+成分およびK+成分はそれぞれ約10mS・cm-および約5mS・cm-である。
下側のプロット(塗りつぶされた円および破線)は、単層として成長されたヒトの悪性乳房上皮のコンダクタンスを示している。コンダクタンスは悪性上皮細胞においては著しく低い。コンダクタンスのNa+成分およびK+成分はそれぞれ約4mS・cm-および約1mS・cm-である。
悪性上皮細胞の単層と対立するものとしての悪性腫瘍においては、細胞間の密着結合が破壊され、腫瘍は、良性または悪性の上皮単層よりも導電性が大きくなる。この観察結果は、乳癌の診断において利用される場合がある。成長中の腫瘍の周囲の低いコンダクタンスの上皮組織は、悪性腫瘍部位における高いコンダクタンスの領域と共に、乳癌をより正確に診断するために使用されてもよい。イオン組成が異なるECMを伴う電極を使用すると、特定のイオンコンダクタンスを癌診断に使用することができる。例えば、高コンダクタンス領域の周囲の領域でK−コンダクタンスが低いことは、乳癌であることを示しており、高コンダクタンス領域の周囲の領域でコンダクタンスが正常であることは、乳腺線維嚢胞症(良性過程)であること更に示している場合がある。
図7は、ヒト乳房上皮細胞における細胞膜電位(Ψ)の測定値を示している。これらの測定は、電位差測定蛍光プローブおよびバリノマイシンおよび[K+]−濃度勾配を使用して較正されるレシオメトリック測定を使用して行なわれた。ΨSは、エストラジオール(エストロゲンの活性代謝産物)の存在下(黒丸)および非存在下(白丸)で測定された。各記号は平均測定値である。上側のエラーバーは平均値の標準誤差であり、下側のエラーバーは観察結果における95%の信頼レベルである。培養された乳房上皮細胞にエストロゲンを加えると、Ψが瞬間的に増大する(データは図示せず)とともに、経上皮電位も増大する(図8参照)。上皮組織の経上皮電位(VT)は、頂端(管腔)細胞膜電位(VA)と側底部(abluminal)細胞膜電位(VBL)との和である。したがって、VT=VA+VBL(したがって、VA及び/又はVBLの変化は、VTすなわち経上皮電位を変える)。
図7は、エストラジオールの非存在下で良性乳房上皮細胞が約−50mVのΨを有し且つエストラジオールが培養基に対して加えられるときに良性乳房上皮細胞が約−70mVのΨを有していることを示している。悪性の形質転換細胞は、エストラジオールの非存在下で−31〜−35mVのΨを有しており、エストラジオールが培養基中に存在するときに約50mVのΨを有している。
電気特性の違いは、インビボの乳癌を診断するために利用されてもよい。表面電極電位測定値は、経上皮電位と、腫瘍電位と、上側を覆う皮膚の電位との組み合わせである。Ψを増大するために生理学的な量のエストラジオールが患者に対して投与され、また、エストラジオールの持続効果により、表面電極電位の増大として、経上皮電位および腫瘍電位の増大が測定される。エストラジオールに対して持続的に晒した後の増大(瞬間応答とは対照的に)は、良性乳房組織における場合よりも悪性組織における場合の方が小さい。
なお、図8に示される瞬間応答は悪性上皮において大きいが、エストラジオールに対して慢性的あるいは持続的に晒すと、悪性細胞におけるTEP(経上皮電極電位)の増大は小さくなる。表面電極電位およびインピーダンスの同時測定により、癌をより正確に診断することができる。図8は、エストラジオールの投与量増大が良性および悪性のヒト乳房上皮組織の経上皮電位(TEP)に及ぼす瞬間的な影響を示している。細胞は、ミリポアフィルタ上で単層として成長され、7〜10日で群集(confluence)へと成長した。その後、上皮組織は変更されたチャンバ(Ussing chamber)内に取り付けられ、電圧クランプを使用してTEPが測定された。エストラジオールの投与量を0〜0.8μMの間で増やして加えた(x軸)。このようにそれぞれ加えた後、経上皮電位を測定するとともに、TEPを測定した(y軸)。
良性上皮組織と悪性上皮組織とにおいて投与量応答(用量反応)が異なるのは明らかである。悪性上皮組織は、TEPが低いが、たった0.1μMのエストラジオールに晒された後にTEPが瞬間的に約9mV(電気陰性が更に高くなり、−6mVを下回るレベルに達する)増大し、その後、エストラジオールの投与量が約0.5μMまで増大するのに伴って約−2mVまで脱分極する。良性上皮組織は、エストラジオールの投与量増大に対する応答性が低く、ほぼ0.3μMまでピークに達せず、その後、悪性上皮組織とは異なり、エストラジオールの投与量増大に伴って引き続き増大し続ける(より高い電気陰性度)。
投与量応答の違いは、乳癌を診断するために利用されてもよい。エストラジオールまたは他のエストロゲンは、少量で全身的に且つ経皮的に導管内を通じて或いは他のルートにより投与される。その後、インピーダンスまたはDC測定値のみを使用して既存の診断様式にわたり精度の向上をもって乳癌を診断するために、表面電極電位及び/又はインピーダンスの瞬間応答が使用されてもよい。
図9は、乳房の表面において2000Hzで行なわれたコンダクタンス測定を示している。この周波数では、上側を覆う皮膚のインピーダンスの影響が小さい。しかしながら、皮膚インピーダンスには幾らかの可変成分が依然として存在しており、その結果、重なり合うエラーバーによって明らかなように測定値にかなりの変動がある。各記号は、平均測定値を示しており、平均値の標準偏差であるエラーバーを伴っている。
塗りつぶされていない記号は、生検で悪性腫瘍が判明した患者から得られた測定値を示しており、一方、塗りつぶされた記号は、乳腺線維嚢胞症などの良性過程であることがその後の生検で判明した患者から得られた測定値を示している。悪性病変は、しばしば、アップレギュレートされた増殖を示す周囲の乳房上皮に関連付けられる。これらの部位(「隣接部位」)は、脱分極されるとともに、悪性腫瘍の部位にわたるコンダクタンスよりも低いコンダクタンスを有している場合がある。このコンダクタンスの減少は、発明者がヒトの結腸で観察したように、隣接する前癌状態の上皮組織のK+−コンダクタンスの減少によるものである。
記号の3つのグループのそれぞれは、疑わしい病変または部位上にわたる測定値、その隣接部位の測定値、それに関与していない乳房扇状部における正常な乳房にわたる測定値を示している。3つの各グループにおける最初の2つの記号(円)はインピーダンス測定値である。この場合、中央値が、コンダクタンス(mS・cm-2)として左側のy軸に対してプロットされている。2番目の2つの記号(正方形)は、mVで測定された表面電極電位であり、右側のy軸に対してプロットされている。また、各部分は5mVに等しい。3番目の2つの記号(三角形)は、良性および悪性の病変における電気的な指数であって、任意の単位であり、コンダクタンスおよび表面電極電位測定値から得られる。直ぐに分かるように、エラーバー(平均値の標準偏差)の重なりは少ない。したがって、表面電極電位測定値とACインピーダンス測定値とを組み合わせて使用すると、乳癌を正確に診断することができる。また、この技術の向上には、離間した電極を使用して乳房の様々な深さを調べること、また、ホルモン剤および他の物質を使用して、皮膚または導管表面で測定された良性および悪性の乳房組織からのインピーダンスおよび経上皮電位を、差異をもって変化させることが必要になってくる。これにより、診断精度を更に高めることができる。
乳房組織の表面電極電位測定値が女性の月経周期に状況に基づいて変わることは言うまでもない。図10はこの変化を示している。この図は、上腹部の皮膚上の1つの電極に基準付けられた各乳房の8個の電極からなる配列を用いて8個の異なる場所で各乳房の表面上にわたって取得された電極電位測定値を示している。測定値は、平均値の標準誤差に等しいエラーバーを伴って取得された。黒丸および塗りつぶされた正方形は、左右の乳房のそれぞれからの中央値を示している。垂直な破線は、各月経周期の初日である。
図示のように、各乳房における中央値は、互いの後を辿る傾向があり、月経周期の最初の半分(卵胞期)において値が低く、且つ月経周期の後段(黄体期)において値が高い。乳房の電位に影響を与える他の要因により、測定された電気的値は完全に重なり合っていないが、生理の8〜10日前に最も低いレベルの電極電位が観察され、生理の前後に最も高いレベルへの立ち上がりが見られるのが分かる。この理由は、エストラジオールレベルが月経周期の第2の部分において高く且つ乳房表面電極電位に対して直接に影響を及ぼしているからかもしれない。
乳癌または増殖性病変が存在するときの電位の周期的な活動パターンは全く異なる。同様に、朝と比べると、午後に測定が行なわれた場合に高いレベルの表面電極電位が観察される。この情報は、多くの様々な方法で利用することができる。月経周期中の異なる様々な時間に表面電極電位およびインピーダンスを測定すると、表面電極電位の異なる周期的変化(すなわち、電位のピーク間変化は、乳房の正常な部位に比べ、悪性部位上にわたって小さい)により、より正確な診断を行なうことができる。次に、乳房の電位を変化させるエストラジオールまたは他の物質が全身的に且つ局所に(経皮的に)導管内を通じて或いは他のルートにより投与されてもよく、また、薬剤またはホルモンにより誘発される表面電極電位の変化を誘発試験として使用して乳癌を診断してもよい。
図11は、乳癌の進行中に起こる組織学的変化および電気生理学的変化を示す図である。正常な導管上皮から、異常増殖、非定型な異常増殖、非浸潤性乳管癌(DCIS)を経て、侵襲性の乳癌へと至る一連の流れは、10〜15年を要すると考えられる。一部の段階が省かれる場合もあるが、通常は、乳癌は、異常な(不規則な)導管増殖の背景の中で進行する。正常な導管は、脱分極する経上皮電位(負に帯電された導管の内部の電位)を維持するとともに、癌の進行中に増大するインピーダンスを維持する。一度侵襲的な乳癌が進行すると、密着結合が失われてインピーダンスが減少し、腫瘍にわたるコンダクタンスが高まる。異常な導管は、電気生理学的特性およびイオン輸送特性を変えた。これらの特性は図11の下側に示されている。これらの電気生理学的な変化および伝導変化は、乳房における癌および前癌状態の変化を診断するために利用される。
これらの方法では、電位の経上皮測定値、インピーダンス、または、経上皮表面電極電位測定値とACインピーダンス測定値と薬理的操作の組み合わせを使用して、より正確に乳癌の診断を行なうことができる。
[化学予防的および治療的な用途]
前述したイオン物質、薬理剤、ホルモン剤に加えて、本発明のシステムおよび方法は、癌予防薬および治療薬並びに治療と共に使用されてもよい。具体的には、変性構造および変化した機能の電気的な測定は、生検を要することなく且つ癌が更に進行することを待つことなく薬剤に対する患者の反応を評価するための方法を与える。所定の化学予防薬または治療薬に対して反応する患者は、より正常な状態への上皮機能の回復を示すと思われる。反応しない患者は、ごく僅かな変化しか示さず、あるいは、病気の更に進んだ段階への進行を示す場合さえある。したがって、このシステムおよび方法は、薬剤反応を評価する際に臨床医または製薬会社によって使用されてもよく、あるいは、顕性悪性腫瘍が十分に進行してしまう前に患者の病気および治療の進行を監視する際または発癌過程(癌の進行)を監視する際に臨床医によって使用されてもよい。
[他の上皮組織の電気生理学的変化]
図12および図13に示される実施例は、外科手術のときに摘出されたヒトの結腸標本において行なわれた。乳房上皮組織における試験管内研究に基づき、インビボで測定できるヒトの導管上皮の同様の変化が期待される。図12は、ヒトのエクスビボでの結腸上皮短絡電流(ISC)を示している。図は、組織にわたってカリウム濃度勾配を変えていく際にx軸に沿う経時変化を示している。結腸直腸癌腫から10〜30cmの部位で得られた極めて正常に見える粘膜および外科的な対照標本において、ヒトの結腸粘膜の頂端膜のカリウム透過率(PK a)が決定された。粘膜がチャンバ(Ussing chambers)内に取り付けられ、漿膜液槽(bathing)溶液中のK+を増加させることにより側底膜抵抗および電圧が無効化(nullified)された。頂端ナトリウム(N+)コンダクタンス(伝導性)が0.1mMのアミロリドを用いてブロックされた。このプロトコルは、微小電極研究により検証されてきたような傍細胞経路と並列な起電力および頂端膜コンダクタンスに対する上皮の等価回路モデルを減少させる。漿膜K+の増大により、正常な結腸においてISCがマイナス(−140μA/cm2)になり、その後、30mMの粘膜TEAにより、頂端K+チャンネルのブロックに対応するISCの急激な増大が引き起こされた。癌に冒されている結腸において、ISCの減少は−65μA/cm2までである。漿膜槽は125mM[K]で一定に保たれた。
図13は、125mM粘膜KにおいてISCに関して決定されるΔISCが濃度勾配Δ[K]の一次関数であることを示している。これらの状態下で頂端膜の両端間の電圧がゼロであり、且つ傍細胞経路が非選択性のものであるため、フィック方程式すなわちISC=F・PK a・Δ[K]を使用してPK a(頂端カリウム透過率)を計算することができる。ここで、Fはファラデー定数であり、Δ[K]は上皮組織にわたるK+における濃度差である。図13は、正常且つ前癌状態なヒトの遠位結腸の両方のISCにおける平均値±sem値を示している。対照の頂端K+透過率は9.34×10-6cm/秒であり、また、これは、前癌状態のヒトの粘膜において50%だけ4.45×10-6cm/秒まで大きく減少した。また、K+チャンネルがTEAでブロックされたときに、完全なブロックであるとすると、ISCの変化に関してPK aを計算することができた。これにより、PK aの40%の減少に対応する6.4×10-6cm/秒および3.8×10-6cm/秒という幾分低い値が得られた。
これらの観察結果は、癌の進行中にヒトの結腸のコンダクタンスおよびK+透過率において電界変化(field change)があることを示している。乳房導管上皮においても同様の結果が期待される。乳房の電気的特性に対する起電性Na+輸送の寄与を妨げるためのアミロリド等の特定の薬剤と共にカリウム濃度勾配が異なる電極を使用するインピーダンス測定及び/又はDC測定は、乳癌を診断するのに有益となる場合がある。アミロリドは乳房導管を通じて導入されてもよく、その後、(非定型導管異常増殖または初期のDCISに伴って)周囲の乳房導管上皮において観察されるカリウム透過率の減少または進行する侵襲的な乳癌の部位における透過率の増大を測定するために導管内に注入され或いは乳頭電極で使用されるECM中でK+濃度が変えられてもよい。
[本発明と共に使用するための装置]
本発明と共に使用される装置においては多くのバリエーションが可能である。また、前述したように、装置構成の中には、変えられてもよい多くの態様がある。以下、これらのバリエーション等について説明する。
本発明において使用できるプローブまたは他の装置の1つの実施形態は、陥凹壁中の複数の小型電極を含む。使い捨て可能な市販のシリコンチップにより面記録および初期電子処理、例えばフィルタリングが行なわれてもよい。各ECM溶液または物質は、チップ上のリザーバおよび個々の電極に固有のものであってもよい。したがって、1つの測定においては、特定の一組の電極が使用される。他の測定においては、例えば、異なるイオン濃度で、異なる一組の電極が使用される。これは幾つかのバリエーションを形成するが、1つの測定における電極が他の測定における電極と同じ位置に配置されないため、このシステムは一般に信頼できる結果を与える。
他の手法は、更に少ない電極を使用するとともに、溶液および薬剤を交換するために流入システムまたは微小流体システムを使用することである。具体的には、溶液または物質は、少量の電流を流して溶液または物質をチャンネルを通じて移動させるとともに装置の表面上の孔を通じて外へ出すことにより交換される。この実施形態において、電極は、乳房の表面の同じ部位と接触したままであり、したがって、測定における部位間の変動をなくすことができる。この手法は、異なる溶液間の平衡に時間を要する。異常な前癌状態または癌性の乳房組織の存在を検出する際には、皮膚において表面測定値を得るために手持ち式のプローブが用意される。このプローブは、電流を通し且つ測定するための電極を含んでいてもよい。乳頭カップ電極と手持ち式プローブとの間、乳頭カップ電極と粘着性皮膚電極との間、小型導管スコープ上の電極間、導管スコープ上の電極と皮膚表面電極との間でインピーダンス測定値が取得されてもよく、あるいは、手持ち式プローブ上の電極間でインピーダンス測定値が取得されてもよい。最初のDC測定値を取得した後、皮膚インピーダンスを減少させるために湿潤性物質/透過性物質が導入されてもよい。この物質は、前述したように流体を電極の表面へと移動させる微小流体手法を用いて導入されてもよい。あるいは、角質層を貫く表面電極を使用してインピーダンスを減少させてもよい。
発明と共に使用できる流体としては、例えば薬剤を伴う或いは伴わない生理食塩水(たとえばリンガー)等の様々な電解質溶液を挙げることができる。導管系内に注入するための1つの好ましい電解質溶液としては、生理的リンガー溶液が想定されうる。一般的に、これは、NaCl 6gと、KCl 0.075gと、CaCl2 0.1gと、NaHCO3 0.1gと、生理的pHが7.4の濃度の低い超ナトリウム・次リン酸塩とからなる。他の電解質溶液が使用されてもよく、この場合、電解液は約1%の体積の溶質を含む。上皮及び/又は腫瘍の刺激的検査において、1%を越える又は1%を下回る高張液または低張液が使用されてもよい。上皮のコンダクタンス(伝導性)および透過性を評価するため、Na,K,Clの濃度が様々な状態下で調整される。例えばアミロリド(起電性ナトリウム吸収を妨げる)、Forskolin(あるいは、サイクリックAMPを上昇させるための同様の薬剤)、プロラクチンまたはエストラジオールなどのホルモン等の様々な薬剤をリンガー溶液とともに注入して、これらの物質に対する上皮および腫瘍の電気生理学的反応を検査することもできる。同様に、注入物のカルシウム濃度を変えることにより、密着結合部の透過率を変え、この操作に対する上皮組織の電気生理学的反応を測定する。密着結合部の透過性を下げるためにデキサメタゾンが注入されてもよく、また、電気生理学的反応が測定されてもよい。上皮組織および腫瘍の「負荷」試験で使用されてもよい薬剤およびホルモンについて特定の例を挙げてきたが、特に上皮組織または腫瘍の電気生理学的特性に影響を与えることが知られている場合には、発癌中に影響されることが知られている密着結合部の一体性または特定のイオン輸送の任意の作用薬または拮抗薬が使用されてもよい。
装置の構成にかかわらず、導管経上皮電位を単独で測定するため、または、経上皮インピーダンスを測定するために、信号が使用されてもよい。この場合、これらの2つの測定値は、乳房の進行する異常性に関連する上皮の電気的特性を特徴付けるために組み合わされてもよく、また、その後に、同じ又は反対側の乳房の関与していない部位と比較される。その後、乳房の非経上皮電気特性を特徴付けるために、表面電極電位測定およびインピーダンス測定が行なわれる。これらの測定は、ECMを介して導管腔と直接に或いは間接的に接触していない電極に対して表面電極電位が基準付けられるDC電位測定を含む。1または複数の表面電極と、(ECMを介して)導管腔と直接に或いは間接的に接触していない基準電極との間でインピーダンス測定が同様に行なわれる。その後、これらの測定値が経上皮の電気的測定値と比較されて組み合わされることにより、乳房組織が更に特徴付けられる。
また、インピーダンスまたはDC電位の変化における電気生理学的原理の理解により、より正確な診断を行なうことができる。例えば、インピーダンスまたはDC電位は幾つかの要因により増大または減少する場合がある。乳房の間質密度の増大はそのインピーダンスを変える場合がある。これは、悪性腫瘍の可能性に対して関連を持たなくて良い非特異的変化である。一方、進行する悪性腫瘍の周囲の上皮のカリウム透過性の減少は、インピーダンスを増大させるとともに、非特異的インピーダンス変化よりも進行する癌に関連している可能性が高い。互いに離間する電圧検出電極を使用して様々な深さまで組織を調べることにより、更なる情報が発明者の方法から得られる。電気生理学的、薬理学的、ホルモン的操作を使用してDC電位及び/又は癌傾向の、前癌状態の、あるいは、悪性の組織と比べて差異をもって正常なDC電位を変えることは、前述した引用例を超えて発明者の発明の診断精度を高める他の大きな違いである。
乳癌診断において使用できるこの用途においては、乳頭カップ電極の使用について説明してきたが、カップ電極は、経内視鏡的に上皮にアクセス(接近)することが難しいかもしれない或いは内視鏡的手法が望ましくない他の臓器に使用されてもよい。1つの例は、十二指腸の第2の部分内のVaterの膨大部で結合して開く膵管および胆管である。胆管腫瘍は胆管の内皮層から発現する(すなわち、胆管癌または膵管の上皮内層、すなわち膵管癌)。膨大部は内視鏡的にアクセスされてもよく、また、カップ電極は膨大部に対する吸引により適用されてもよい。導管内に生理食塩水を注入することができ、その後、手術中に経上皮電位およびインピーダンスを測定して、膵管または胆管の腹膜表面上に配置された第2の電極により膵管または胆管における腫瘍の部位を特定することができる。あるいは、低侵襲的または非侵襲的方法で使用されるときには、腹膜表面電極が皮膚表面電極または静脈内電極に取って代えられてもよい。
乳房に関して説明した刺激試験として、カップ電極を通じて薬剤が注入されてもよい。例えば、分泌物は、膵管による重炭酸イオン分泌を刺激する。この反応は、膵臓癌に関連する上皮の変化によって排除される場合がある。ムスカリン性受容体、特にM1,M3の分布(分配)が膵臓発癌中に上皮において変えられる場合がある。したがって、特定のムスカリン性拮抗薬(コリン様作用のコリンエステルおよび天然のアルカロイド)および拮抗薬(アトロピン、ピレンゼピン(M1)、ダリフェナシン(M3))を使用して、膵臓癌に関連する導管上皮における塩化物分泌に起因する特定の電気生理学的反応を引き出してもよい。同様の手法を肝内および肝外胆管で使用して、肝臓癌を診断してもよい。
前立腺癌は、外部尿道に適用される尿道カップ電極を使用して診断されてもよい。尿道内には生理食塩水が注入される。尿道前立腺部へと開口する前立腺管を介して前立腺管および腺房上皮との直接的な電気的接続が形成される。その後、表面電極が前立腺の表面上に経直腸的に配置されてもよく、また、乳房において前述した経上皮態様で電気生理学的測定が行なわれてもよい。同様に、正常な前立腺細胞と比べる場合、異常な前立腺上皮の電気生理学的特性に対して異なって影響を及ぼす薬剤およびホルモンを用いて刺激試験が行なわれてもよい。
子宮内膜癌は、子宮頚部上に配置された電極カップを用いて診断されてもよい。生理食塩水が頸管を通じて注入されることにより、子宮内膜との電気的接触が行なわれてもよい。電気生理学的測定は、皮膚上に、経静脈的に、あるいは、適当な基準点に配置された基準電極を用いて行なわれてもよい。あるいは、この手法は、腹膜上または子宮の外面上で使用される基準電極と共に子宮頸部カップ電極が使用される外科手術中に使用されてもよい。
唾液腺腫瘍は、小さな導管を介して口腔へと開放する。例えば、耳下腺において、Stensenの導管は、第2上臼歯と反対側の口部内で開口する。カップ電極は、口内の導管の開口を覆って使用されてもよい。導管内には生理食塩水が注入され、したがって、唾液腺の導管上皮との電気的接触が確立される。その後、腺の皮膚表面上にわたって表面電極が使用され、癌の診断を行なうために電気的測定が使用される。
特定の実施例に関して前述したが、この技術は、上皮への経内視鏡的アクセスが不可能または望ましくない任意の腫瘍を診断するために使用されてもよい。カップまたは短いカテーテルによる生理食塩水の適用は、例えば、経内視鏡的な電極配置に頼ることなく上皮との電気的接触により経上皮の電気生理学的測定を行なうことができる場合、腸または他の臓器系において使用されてもよい。その後、第2の電極を使用して、腫瘍または異常な上皮の存在に関して臓器を外部から走査する。生理食塩水は上皮と直接に接触する電極としての機能を果たすため、この手法は、電気生理学的測定へのアプローチを簡略化する。表面走査電極が下側に位置する異常な上皮または腫瘍に近接していると、上皮の脱分極およびインピーダンス特性が更に正確となる。
本明細書で説明した実施形態は人間に関して言及している。しかしながら、この手法を用いて人間以外の癌も診断でき、本発明は獣医の利用に供することも意図している。
本明細書では特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、これらの実施形態が本発明の原理および用途の単なる例示であること言うまでもない。したがって、例示的な実施形態に対して多数の変更を行なうことができるとともに、添付の請求項によって規定される本発明の思想および範囲から逸脱することなく他の構成を想起できることは言うまでもない。
本発明の一実施形態に係るDC・ACインピーダンス測定装置の概略図である。 本発明に係るシステムおよび方法と共に使用するのに適した装置の典型的な実施形態を示している。 本発明に係るシステムおよび方法と共に使用するのに適した表面測定プローブの典型的な実施形態を示している。 本発明に係るシステムおよび方法と共に使用するのに適した乳頭電極の典型的な実施形態を示している。 本発明に係るシステムおよび方法と共に使用するのに適した導管電極プローブの典型的な実施形態を示している。 様々なイオン含有量およびヒト乳房上皮の経上皮コンダクタンスへの影響を示している。 ヒト乳房上皮細胞の細胞膜電位の測定値を示している。 良性および悪性の乳房上皮における経上皮電位に対するエストラジオール濃度増大の影響を示している。 乳癌を持つ女性及び乳癌を持たない女性の乳房表面上で得られた電位測定値およびコンダクタンスを示している。 乳房表面の電位の測定値および月経周期中の測定値の変化を示している。 乳癌の進行中に導管上皮内で生じる電気生理学的変化を示している。 カリウムチャンネル遮断薬(TEA)または様々な濃度のカリウムに晒されるヒトの上皮の短絡電流の変化を示している 図12で得られた情報を使用して短絡電流の変化に対してカリウム勾配をプロットする方法を示している。

Claims (8)

  1. 導管上皮組織を含む組織部位の状態を決定する際に使用するための装置であって、
    内部空間を有するハウジングと、
    前記ハウジングの前記内部空間内に位置した電極と、
    を備え、
    前記ハウジングは、前記ハウジングの前記内部空間と連通する第1の開口を有し、該第1の開口は、前記組織部位の表面に近接して配置されるように適合されており、
    さらに前記ハウジングは、前記ハウジングの前記内部空間と連通する第2の開口を有しており、
    前記第1の開口が前記組織部位の表面に近接して配置され、かつ前記第2の開口に吸引力が加えられた状態で、前記ハウジングの前記内部空間内に充填された導電性媒体を介して、検査されるべき前記組織部位と前記電極との間に電気的な接続がなされるように構成されている、装置。
  2. 前記第1の開口の周囲にフランジを更に備えている、請求項1に記載の装置。
  3. 前記導電性媒体は、検査される前記導管上皮組織部位と前記電極との間の電気的な接続を容易にする、請求項1に記載の装置。
  4. 前記導電性媒体が、生理食塩水、薬剤、ホルモン剤、及びそれらの混合物からなる群から選択されている、請求項3に記載の装置。
  5. 前記薬剤または前記ホルモン剤は、前記上皮組織の負荷試験を誘導し、それによって前記組織の特性をさらに特徴付ける、請求項4に記載の装置。
  6. 前記電極と通信可能に設けられ、前記電極からの電気信号を測定するように動作可能な測定デバイスと、
    前記測定デバイスと通信可能に設けられ、前記電極からの電気信号を表示するように動作可能な表示デバイスと、
    をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
  7. 前記薬剤が、作動薬、拮抗薬、ホルモン類、およびそれらの混合物からなるグループから選ばれている、請求項4記載の装置。
  8. 前記ホルモンが、プロラクチン、エストラジオール、およびそれらの混合物からなるグループから選ばれている、請求項記載の装置。
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