JP4932804B2 - 急速凍結方法 - Google Patents
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Description
もちろん、凍結を急速に行えば行うほど、解凍時に流出するドリップ量が少なく、食材の味や風味が良い状態に保てることは一般に知られている。また、このような生魚をブライン液に浸漬したり、あるいは生魚にブラインを散布する等の方法により、熱伝達率が高まり、凍結が急速に、且つ能率的に行えることも良く知られている。
もちろん、被処理体1を合成樹脂製等の袋に収容・密閉した状態でブラインB中に浸漬すれば(被処理体1が切り身の場合によく行われる)、被処理体1に身割れCが生じても、この身割れCにブラインBが付着することや、身割れCからブラインBが食材中に浸透することは避けられる。しかし、切り身の場合には刺し身として食される(調理される)ことが多いため、見た目が極めて重要となり、やはり身割れCの発生自体が著しく商品価値を下落させるものとなっていた。このため身割れCそのものを解決しないと根本的な解決にはならなかった。
水分を含んだ被処理体に低温のブラインを接触させて、被処理体を急速に凍結する方法であって、
前記被処理体は、表面の一部に断熱材が密着された状態で、被処理体の全体がブラインと接触するものであり、
かかる構成により、被処理体の内部が凍結し、被処理体の内部から発生する体積膨張を、被処理体において断熱材が密着されたために、凍結が遅れて柔軟性がある断熱部位に向かわせ、この部位の外方への突出変形として逃がすようにしたことを特徴として成るものである。
前記断熱材は、柔軟性のある素材で形成され、前記断熱部位の外方への突出変形に伴い自身も変形することを特徴として成るものである。
前記被処理体は、ラウンド状態の生魚であることを特徴として成るものである。
前記被処理体は、少なくとも一部に身肉が露出した切り身の状態の生魚であり、その表面の一部に断熱材が密着状態に設けられた後、断熱材とともに密閉包装された状態でブラインとの接触に供されることを特徴として成るものである。
まず請求項1または2記載の発明によれば、被処理体の表面の一部に断熱材を張り付けた状態でブラインと接触させるため、凍結が、断熱材を張り付けた部位以外の被処理体の内部まで進行した後、被処理体の内部から発生する体積膨張を、断熱材を密着させたため凍結が遅れて柔軟性のある断熱部位に逃がすことができ、被処理体に身割れを生じさせないものである。すなわち、凍結は被処理体の表面側から進むが、これが被処理体の内部まで進行した際には、深部から表面側に向けて膨張(力)が作用するものであり、従来の急速凍結方法では、この体積膨張が、既に凍結して硬くなった被処理体の表面に閉じ込められていたため、最終的に身割れを起こしていた。これに対し、本発明では、体積膨張をほぼ断熱部位のみに向かわせ、当該部位に被処理体を突出変形させることで、この膨張(力)を逃がすようにしたため、被処理体の身割れが防止できるものである。
このため、解凍時のドリップ量が少ないことで知られる急速凍結の適用可能性を高め、調理に応じて種々の食材に急速凍結方法が行えるものである。
本発明は、比較的水分の多い食材(被処理体1)をブラインBと接触させて、急速凍結する技術であって、被処理体1に断熱材を密着させることにより通常の急速凍結では発生することが多かった亀裂(身割れ)Cを防止するようにしたものである。
なお、以下の説明では、被処理体1として、主に生魚を例に挙げて説明するが、被処理体1としては生魚(魚)に限定されるものではなく、その他の魚介類や食用生肉(牛肉、豚肉、鶏肉等)あるいは果肉(果物)などを適用することもできる。また、必ずしも生(未加工)の状態に限定されるものではなく、なまり節等のように半ば加工された食材や、ほとんど調理が完了した真空包装済の加工済食材等も凍結対象とすることができる。
また、以下の説明にあたっては、まず通常の状態で被処理体1を急速凍結した場合に、亀裂Cが起こる経緯(理由)について説明し、その後、これを防ぐための本発明方法を実施例1、2に分けて説明する。
まず、図示を省略した処理槽に、冷凍機によって一定温度(例えば−35℃程度)に冷却されたブラインBが絶えず循環供給されるものであり、ここに0℃〜−1℃で保持された被処理体1が浸漬される。つまり被処理体1はブラインBに比べて品温が高く、しかも均一であるため、図3(c)(d)に示すように、被処理体1の凍結は、ブラインBとの接触面となる表面側(表層部)から中心部(深部)に進行して行き(言わば求心方向)、当然、表面側から凍り始め、硬くなって行く。もちろん、ここでの「(求心方向の)凍結」とは、被処理体1の表面全体または外周面全域から中心部に向かう冷凍である。
なお、凍結の進行に伴い、表面側は、凍結層が徐々に厚くなり、これに伴い被処理体1の表面温度は低下し、表面凍結部分は収縮しようとするものである。
このように、通常の急速凍結方法では、凍結が被処理体1の深部に及んだ時点で、被処理体1の表層部が既に凍結しており、加えて被処理体1の深部から遠心方向には、放射状の膨張力が作用するため、被処理体1の内部圧力が次第に上昇して行き(内部圧力として蓄積されて行き)、表層部がこの圧力に耐えられなくなった段階で、被処理体1の表面に、図3(f)に示すような亀裂Cが生じるものである。
ここで、断熱材2は柔軟性のある素材、例えば合成樹脂製の発泡素材が適用され、被処理体1と充分に密着して貼着されるものである。これは、被処理体1と断熱材2との間からブラインBが入り込まないようにし、断熱材2を密着させた表面部位ではブラインBとの熱交換が急速に行えないようにするためである。
なお、本実施例ではブラインBに塩化カルシウムブラインを適用するものであり、これは−50℃以下の温度に冷却することができ、急速凍結に適したブラインBであるためである。しかしながら、ブラインBとしては、この他にも、エチルアルコールブライン等を適用することも可能である。
また、断熱材2を張り付けた被処理体1にブラインBを接触させるにあたっては、このようなブライン浸漬法に限定されるものではなく、被処理体1にブラインBを散布する方式でも構わない。
図1(b)〜(d)は、断熱材2を張って急速凍結を行った際の、被処理体1の凍結状況(内部の様子)を段階的に示したものである。
ここでは被処理体1の表面に、部分的に断熱材2を張り付けているため、主に凍結は、図1(b)(c)に示すように、断熱材2を張り付けていない非断熱部位から大きく進行する(この非断熱部位では、凍結層がより速く厚くなり、硬度もより速く硬くなる)。
このように、断熱材2を張り付けることによって、非断熱部位と断熱部位とにおいて、被処理体1の深部に向かう凍結膨張に大きな速度差を生じさせるものであり、観念的には、あたかも非断熱部位から断熱部位に一方向的に凍結が進行するかのように捉えられる。
以上述べたように、従来の急速凍結方法では(図3参照)、被処理体1の表面側から中心側に、ほぼ同じ深度(速度)で凍結が進行していたために、内部が凍結して生じる体積膨張を、被処理体1の内部に閉じ込めてしまっていたが、本発明では断熱材2を張ることによって、この体積膨張を断熱部位の外方への膨らみ変形として逃がす(吸収する)ようにしたものであり、これにより亀裂Cの発生を防止している。
因みに、このようにして急速凍結された被処理体1は、超低温の冷蔵庫に保管され、注文に応じて適宜解凍・出荷されるものであり、この際、適切な方法で被処理体1を解凍すれば、凍結前の生魚とほとんど変わらない肉質に戻して、食することができるものである。
なお、本実施例での被処理体1における凍結の進行や体積膨張の方向は実施例1と同様である。すなわち、図2(b)(c)に示すように、凍結は、断熱部位よりも非断熱部位の方が速く進行し、非断熱部位の方が凍結層も厚く、また硬度も高くなる。そのため、被処理体1の内部が凍結して膨張する際には、図2(d)に示すように、膨張は凍結が比較的少なく、且つ柔らかい断熱材部位の方向に向かい、断熱材2を張り付けた部分が膨らむものである。ここで断熱材部位は、上述したように比較的柔らかく、また弾力性もあるため、切り身に亀裂Cが発生しないものである。
また、本実施例2では、被処理体1である切り身を袋3に入れ密封したが、これは身肉が直接ブラインBに晒されることを避けるためである。すなわち、身肉が、直接、ブラインBと接触した場合には、身肉の部分からブラインBが浸透してしまい、食材本来の味を損ねてしまうためである。因みに、実施例1では、被処理体1が全体に皮1aを備えたラウンド状態の全魚体であったため、ブラインBの浸透はそれほど懸念する必要がなく、密閉用の袋3を要するものではなかったが、実施例1でも断熱材2とともに被処理体1を袋3の中に密閉しても構わない。
また密閉用の袋3は、合成樹脂製のものを使用するように説明したが、パウチ(いわゆるレトルト食品用の包装素材)等も適用可能である。
更に本実施例2では、切り身の皮(皮目)1aの方に断熱材2を密着させたが、これは切り身が体積膨張によって外方に膨らむ際には、筋肉繊維の形成方向から考慮して、年輪状の身肉を広げるように、つまり皮1aを外方に広げるような変形が起こり易いと考えられるためである。しかしながら、切り身の場合であっても、断熱材2を密着させる部位は、必ずしも皮1aに限定されるものではなく、身肉露出面(カット面)1bに密着させ、当該方向に切り身を突出変形させても構わない。
1a 皮(皮目)
1b 身肉露出面(カット面)
2 断熱材
3 袋
a 余裕(膨張余裕)
B ブライン
C 亀裂(身割れ)
Claims (4)
- 水分を含んだ被処理体に低温のブラインを接触させて、被処理体を急速に凍結する方法であって、
前記被処理体は、表面の一部に断熱材が密着された状態で、被処理体の全体がブラインと接触するものであり、
かかる構成により、被処理体の内部が凍結し、被処理体の内部から発生する体積膨張を、被処理体において断熱材が密着されたために、凍結が遅れて柔軟性がある断熱部位に向かわせ、この部位の外方への突出変形として逃がすようにしたことを特徴とする急速凍結方法。
- 前記断熱材は、柔軟性のある素材で形成され、前記断熱部位の外方への突出変形に伴い自身も変形することを特徴とする請求項1記載の急速凍結方法。
- 前記被処理体は、ラウンド状態の生魚であることを特徴とする請求項1または2記載の急速凍結方法。
- 前記被処理体は、少なくとも一部に身肉が露出した切り身の状態の生魚であり、その表面の一部に断熱材が密着状態に設けられた後、断熱材とともに密閉包装された状態でブラインとの接触に供されることを特徴とする請求項1または2記載の急速凍結方法。
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