以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の電源供給回路(10)は、コンバータ回路(11)と、インバータ回路(14)と、マイコン(15)とを備えている。
〈電源供給回路の構成〉
上記電源供給回路(10)は、交流電力をコンバータ回路(11)によって整流し、その直流をインバータ回路(14)によって三相交流に変換して電動機(30)へ供給するものである。この電動機(30)は、空調機の冷媒回路に設けられる圧縮機を駆動するものである。空調機の冷媒回路は、図示しないが、圧縮機と凝縮器と膨張機構と蒸発器が閉回路に接続されている。つまり、この空調機は、冷媒回路で冷媒を循環させて蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷凍装置を構成している。そして、冷房運転では、蒸発器で冷却された空気が室内へ供給され、暖房運転では、凝縮器で加熱された空気が室内へ供給される。
上記コンバータ回路(11)は、交流電源である商用電源(20)に接続され、交流電圧を整流する。このコンバータ回路(11)は、リアクトル(L)を備えると共に、ブリッジ回路(12)および平滑回路(13)を備えている。
上記ブリッジ回路(12)は、商用電源(20)に接続され、4つのダイオード(D1〜D4)がブリッジ結線されたダイオードブリッジ回路である。つまり、このブリッジ回路(12)は、本発明に係る整流回路を構成している。
上記平滑回路(13)は、上記ブリッジ回路(12)の出力側に設けられている。この平滑回路(13)は、互いに直列に接続された2つのコンデンサ(C1,C2)と、その2つのコンデンサ(C1,C2)に並列に接続された1つのコンデンサ(C3)とで構成されている。直列接続された2つのコンデンサ(C1,C2)は、上記ブリッジ回路(12)の出力端子側(図中の上側)から順に、上コンデンサ(C1)、下コンデンサ(C2)と呼ばれる。この2つのコンデンサ(C1,C2)により出力電圧(Vo)を分圧し、ブリッジ回路(12)の入力電圧(Vi)が低くても入力電流(IL)の電流を流すことができる。上記2つのコンデンサ(C1,C2)に対して並列接続されたコンデンサ(C3)は、2つのコンデンサ(C1,C2)の出力電圧(Vo)を平滑化するものである。そして、上記平滑回路(13)は、図のように上記2つのコンデンサ(C1,C2)の中点と上記商用電源(20)とが接続されていて、これにより、上記ブリッジ回路(12)との間で倍電圧整流するように構成されている。
上記リアクトル(L)は、商用電源(20)の一方の電極とブリッジ回路(12)との間に接続されている。
また、上記コンバータ回路(11)には、双方向にON−OFF可能なスイッチング素子(S)が設けられている。このスイッチング素子(S)は、ブリッジ回路(12)における入力側と、直列接続された2つのコンデンサ(C3)の中点との間に接続されている。つまり、本実施形態のコンバータ回路(11)は、スイッチング素子(S)がONされると、倍電圧整流回路に切り換わり、スイッチング素子(S)がOFFされると、全波整流回路に切り換わるように構成されている。
上記インバータ回路(14)は、コンデンサ(C3)の直流電圧を三相交流電圧に変換し、電動機(30)へ供給するように構成されている。なお、このインバータ回路(14)は、図示しないが、例えば6つのスイッチング素子が三相ブリッジ状に結線された一般的な構成となっている。
電源供給回路(10)には、ブリッジ回路(12)の入力電圧(Vi)を検出する電圧検出回路(16)と、入力電流(IL)を検出する電流検出回路(17)とが設けられている。また、電源供給回路(10)には、上記平滑回路(13)の上下コンデンサ(C1,C2)の直列状態での電圧(V0)を検出する上下コンデンサ電圧検出回路(18)と、下コンデンサ(C2)の電圧(V2)を検出する下コンデンサ電圧検出回路(19)とが設けられている。更に、電源供給回路(10)には、PAM電流検出回路(15)が設けられている。PAM電流検出回路(15)は、後述のPAM制御において、ブリッジ回路(12)の出力側からON状態のスイッチング素子(S)側へ短絡する電流(PAM電流)(Is)を検出するものである。このPAM電流検出回路(15)は、スイッチング素子(S)側の電流経路に設けられている。
〈マイコンの構成〉
上記マイコン(15)は、インバータ回路(14)のスイッチング制御や、コンバータ回路(11)のPAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調)制御を行うものである。具体的に、マイコン(15)は、インバータ制御部(4)とPAM制御部(5)とを備えている。
インバータ制御部(4)は、上記インバータ回路(14)のスイッチング素子を適宜制御することで、インバータ回路(14)の出力周波数を変更するものである。このようなインバータ制御部(4)による出力周波数の制御により、整流回路(12)の入力電流が変更可能となっている。つまり、インバータ制御部(4)は、整流回路(12)の入力電流を制御する、入力電流制御部を構成している。
PAM制御部(5)は、ゼロクロス検出部(5a)と、PAM波形出力部(5b)と、タイマー部(5c)を備えている。
上記ゼロクロス検出部(5a)は、図2に示すように、電圧検出回路(16)によって検出された入力電圧(Vi)に応じてゼロクロス信号を出力するように構成されている。具体的に、ゼロクロス検出部(5a)は、入力電圧(Vi)が所定値より低いとON信号を出力し、所定値以上になるとOFFになる。つまり、このON信号の立ち下がり位置(以下、立ち下がり位置という。)をもって、入力電圧(Vi)がゼロクロス点Pに向かって所定値以上に上昇したことが検出される。従って、その立ち下がり位置とゼロクロス点Pとは、一定の時間差(tzwav)がある。
上記タイマー部(5c)は、図3に示すように、ゼロクロス検出部(5a)の立ち下がり位置が検出されると、カウントがスタートする。そして、タイマー部(5c)は、ゼロクロス検出部(5a)の次の立ち下がり位置が検出されると、カウントがリセットされて再スタートする。このように、タイマー部(5c)は、ゼロクロス検出部(5a)の立ち下がり位置の検出毎に、リセットされてカウントを開始する。
上記PAM波形出力部(5b)は、図3に示すように、スイッチング素子(S)をスイッチングするためのパルス信号(以下、PAM波形と称する)を出力するものである。そして、PAM波形出力部(5b)は、入力電流(IL)の波形が入力電圧(Vi)と同じ正弦波形になる(近似する)ように、PAM波形を出力する。具体的に、PAM波形出力部(5b)は、ゼロクロス検出部(5a)の立ち下がり位置の検出毎に、タイマー部(5c)のカウントを用いて、所定のタイミング(出力タイミング)でPAM波形を出力する。つまり、入力電圧のゼロクロス点P(即ち、ゼロクロス検出部(5a)の立ち下がり位置から最初のゼロクロス点)を基準にして所定のタイミングでPAM波形が出力される。
図3に示すように、上記PAM波形出力部(5b)は、ゼロクロス点毎に、5つのパルスから成るパルス群が生成されるようにPAM波形を出力する。このパルス群は、中央のパルス1(ONパルス)が他の4つのパルス2〜5より幅広に形成され、そのパルス1を基準に対称形になっている。そして、このパルス群は、図3に示す寸法tw1〜tw5が設定されている。
また、上記PAM波形出力部(5b)は、中央のパルス1が常にゼロクロス点Pを跨って生成されるようにPAM波形を出力する。そして、PAM波形出力部(5b)は、立ち下がり位置が検出されると、まず最初にOFFパルスを出力し、その後ONパルスおよびOFFパルスを交互に出力するように出力タイミングが設定されている。このように、本実施形態では、入力電圧(Vi)の半周期の間に複数のパルス(ONパルス)が生成される、いわゆるマルチパルス制御が行われる。
また、PAM制御部(5)は、位相制御部(6)を備えている。位相制御部(6)は、電流検出回路(17)で検出される入力電流(IL)に応じて、PAM波形出力部(5b)から出力されるPAM波形の出力位相を制御するものである。この位相制御部(6)は、PAM波形の位相を適宜変化させることで、入力電流に重畳する高調波成分を低減させる。この位相制御部(6)は、設定部(6a)及び算出部(6b)を備えている。
図5に示すように、設定部(6a)には、ブリッジ回路(12)の入力電流(IL)と、位相制御部(6)の位相制御量とが設定可能となっている。具体的に、設定部(6a)は、NO.0〜NO.8までのデータ入力欄を有している。そして、設定部(6a)では、入力電流(IL)と、該入力電流(IL)に対応する最適な位相制御量からなる1組のデータが、各データ入力欄にそれぞれ入力される。また、設定部(6a)では、各データ入力欄に入力されるデータが適宜更新可能となっている。
算出部(6b)は、設定部(6a)に設定された複数組のデータに基づいて、位相制御部(6)の位相制御量を算出するものである。具体的に、算出部(6b)は、設定部(6a)の入力データに基づいて、入力電流と位相制御量との関係式を作成する。そして、算出部(6b)は、このように得られた関係式から、入力電流(IL)に応じたPAM波形の位相制御量を算出する。位相制御部(6)によるPAM波形の位相制御方法の詳細は後述する。
また、PAM制御部(5)は、位相差検出部(7a)と位相補正部(7b)とを備えている。位相差検出部(7a)は、上下コンデンサ(C1,C2)のチャージ量に基づいて、PAM波形の出力位相と、所望の位相(入力電流の波形を正弦波とするための最適な位相)とのずれを検出するものである。具体的に、位相差検出部(7a)は、上下コンデンサ(C1,C2)の電圧差に基づいて、上述のずれを検出する。一方、位相補正部(7b)は、上記位相差検出部(7a)の検出結果に基づいて、PAM波形の出力位相を補正する。このようなPAM波形の出力位相の補正方法の詳細は後述する。
更に、PAM制御部(5)は、PAM制御停止部(8a)とPAM制御開始部(8b)とを備えている。PAM制御停止部(8a)は、後述のPAM制御において、スイッチング素子(S)へ短絡するPAM電流(Is)が所定値を超えると、PAM波形出力部(5b)からのONパルスの出力を停止させるものである。つまり、PAM制御停止部(8a)は、PAM電流が過電流となるとPAM制御を強制的に停止させ、スイッチング素子(S)やダイオード(D1〜D4)等の素子を保護する。PAM制御開始部(8b)は、PAM波形の出力開始時において、ソフトスタート制御を行うものである。具体的に、PAM制御開始部は、上記PAM制御停止部(8a)によってONパルスの出力が停止されてから所定時間が経過した後、あるいは電動機(30)を起動してから入力電流(IL)が所定値に至るとソフトスタート制御を行う。ソフトスタート制御の詳細は後述するものとする。
−PAM制御の基本動作−
次に、具体的なPAM制御の基本動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。
図3に示すように、ゼロクロス検出部(5a)によってゼロクロス信号の立ち下がり位置が検出されると、タイマー部(5c)のカウントがスタートする。そうすると、PAM波形出力部(5b)によって、パルス信号が所定のタイミングで出力される。具体的には、図4に示すように、先ず、タイマー部(5c)のカウントが「t1」になると、OFFパルスが出力される。続いて、タイマー部(5c)のカウントが「t2」、「t3」、・・・「t18」、「t19」になる毎に、ON信号とOFF信号とが交互に出力される。これにより、入力電圧の1周期の分のPAM波形が出力されることになる。
そして、次のゼロクロス信号の立ち下がり位置が検出されると、タイマー部(5c)のカウントがリセットされて再スタートする。そうすると、上述したタイミングと同じタイミングでパルス信号が交互に出力される。ここで、ONパルスはゼロクロス点Pを跨いで生成されるため、設定通りにOFFパルスから出力することができる。従って、目標とするPAM波形を確実に生成することができる。以上のようにして、PAM波形が出力されると、ブリッジ回路(12)の入力電流の波形が、入力電圧の波形、即ち正弦波形に近づくものとなる。その結果、電源供給回路(10)では、入力電流の高調波成分が低減される。
〈入力電流に応じた位相制御動作〉
ところで、このような電源供給回路(10)では、空調機の負荷(圧縮機の運転周波数等)に応じて入力電流(IL)が変動する。この入力電流の変動に伴い入力電流の波形が変形してしまうと、パルス信号を入力電流に対して最適なタイミングで出力できなくなり、高調波電流を充分抑制できないことがある。そこで、本実施形態では、以下のような手順により、入力電流の変動に併せてPAM波形の位相を適宜変化させるようにしている。
まず、空調機の出荷時においては、設定部(6a)に予めデータを設定する設定ステップが行われる。図5に示すように、設定ステップでは、NO.0〜NO.8までのデータ入力欄毎に、所定の入力電流(以下、設定入力電流と称する)が入力される。この際、NO.0のデータ入力欄には、設定入力電流として0が入力される。また、他のデータ入力欄には、NO.1からNO.8へ順に設定入力電流が大きくなるよう、各入力電流が入力される。同時に、各データ入力欄には、位相制御部(6)の位相制御量(以下、設定位相制御量)が入力される。この際、NO.0のデータ入力欄には、設定位相制御量として0が入力される。また、他のデータ入力欄には、各設定入力電流に対応する最適な位相制御量が入力される。この位相制御量は、図3に示すパルス信号のパルス1の中間位置がゼロクロス点Pと一致する状態を基準(位相制御量=0)とした場合に、この基準からパルス信号の位相をどれだけずらすかを示す制御量である。
また、設定部(6a)に入力される各設定位相制御量は、設定ステップ前に予め実験的に求められるものである。即ち、設定ステップの前には、入力電流(IL)に対応するPAM波形の最適な位相制御量を求めるために空調機を試運転させる。試運転時には、入力電流(IL)を所定値としながら、PAM波形の位相制御量を適宜変化させ、この際のブリッジ回路(12)の高調波電流を測定する。そして、試運転では、所定の入力電流において、測定される高調波電流が最小となる、あるいは所定値以下となるようなPAM波形の位相制御量が求められる。このような試運転では、入力電流(IL)を適宜変更させながら、高調波電流を低減可能とする位相制御量が順に求められる。設定部(6a)には、以上のようにして得られた位相制御量が、各入力電流に対応するように入力される。例えば試運転において、入力電流が4Aとなる際の最適な位相制御量が380μsecである場合には、図5に示すように、NO.1のデータ入力欄に設定位相制御量として380μsecが入力される。
以上のようにして、設定部(6a)の各データ入力欄には、入力電流、及びこの入力電流に対応する位相制御量が設定される。なお、各データ入力欄の各設定入力電流の範囲は、電源供給回路(10)の定格入力電流を含むように設定される。また、各データ入力欄の設定入力電流は、電源供給回路(10)の定格入力電流に比較的近い範囲において、その設定数を多くするのが好ましい。具体的に、図5の例では、電源供給回路(10)の定格入力電流が25Aであるのに対し、この25Aに近い範囲(20〜30Aの範囲)に設定入力電流を多く入力するようにしている。また、NO.0のデータ入力欄には、入力電流及び位相制御量として必ずしも0を入力しなくても良い。
更に、設定部(6a)では、設定位相制御量に上限値が定められている。この位相制御量の上限値は、図3に示すパルス信号のパルス1(ON信号)が、ゼロクロス点Pから外れてしまうのを制限するものである。つまり、パルス信号の位相制御量が大きくなり過ぎると、ゼロクロス点Pが例えばパルス1とパルス3の間のOFFパルスに跨ってしまう虞がある。このような場合、上述したPAM波形の出力動作では、ゼロクロス信号の立ち下がり位置が検出されてからタイマー部(5c)のカウントがスタートした後に、ONパルス(パルス1)が出力できないという不具合が生じる。そこで、このような不具合を回避すべく、位相制御部(6)の位相制御量には、上限値が設けられている。具体的に、この上限値は、パルス1の幅tw1の半分(1/2tw1)より小さい値となっている。従って、設定部(6a)では、仮に1/2tw1以上の位相制御量が入力されてもこの値は設定されない。つまり、設定部(6a)では、上限値を超える位相制御量の設定が禁止されている。
設定ステップの後には、関係式作成ステップが行われる。関係式作成ステップでは、設定部(6a)に設定された複数組のデータに基づいて、設定入力電流と設定位相制御量との関係式が作成される。具体的には、算出部(6b)は、データ入力欄のナンバーが前後する2組のデータ毎に、設定入力電流と設定位相制御量の関係式(直線式)が作成される。つまり、図6に示すように、算出部(6b)は、設定入力電流が互いに前後する各データについて、その間を直線式で結ぶようにして、入力電流と位相制御量との関係式が作成する。
実際の空調機の運転時には、以上のようにして得られた関係式に基づいて、PAM波形の位相制御が行われる。具体的に、上述したPAM波形の出力動作時において、例えば空調機の負荷が増大すると、電流検出回路(17)で検出される入力電流(IL)も大きくなる。このような場合、算出ステップでは、算出部(6b)が入力電流(IL)に対応する位相制御量Δtを上記関係式を用いて算出する。具体的に、例えば図6に示す関係式を用いる場合、検出された入力電流(IL)が20Aであると、位相制御量Δtは660μsecとなる。また、例えば検出された入力電流(IL)が18Aである場合、No.3及びNo.4の間の直線式を用いて位相制御量Δtが算出される。即ち、算出部(6b)では、検出された入力電流(IL)が設定部(6a)の各データ間にある場合、直線補完によって位相制御量Δtを算出する。
図7に示すように、位相制御部(6)は、算出ステップで得られた位相制御量Δt分だけ、PAM波形の位相を右側にずらすようにする。つまり、位相制御部(6)は、ゼロクロス点Pからパルス1の中間位置が右側にΔtずれるように、PAM波形の位相を変更する。このような位相制御は、上述したタイマー部(5c)によるパルス信号の出力t1、t2、・・・t19までのカウントを、t1+Δt、t2+Δt、・・・t19+Δtというように補正することで実現される。
以上のようにして、位相制御部(6)は、入力電流(IL)の変動に応じて位相制御部(6)のPAM波形を適宜制御する。その結果、入力電流に対して最適なタイミングでPAM波形が出力されるので、入力電流に重畳する高調波成分が効果的に低減される。
〈チャージ量に応じた位相補正動作〉
例えば、外乱等によって入力電圧波形に歪みが生じてしまうと、上述のゼロクロス検出部(5a)によってゼロクロス点Pの位置を正確に検出できないことがある。従って、このような場合には、検出されたゼロクロス点Pが、入力電圧の実際のゼロクロス点P’に対してずれてしまうことがある。その結果、PAM波形の出力位相も、所望とする位相からずれてしまうことがある。
具体的に説明すると、例えば図8の例では、検出されたゼロクロス点Pと実際のゼロクロス点P’とが一致している。PAM波形は、検出されたゼロクロス点Pを基準に出力されるので、この場合には入力電圧に対して所望とするタイミングでPAM波形が出力されることになる。一方、図9の例では、実際のゼロクロス点P’に対して、検出されたゼロクロス点PがΔt1だけ前にずれてしまっている。この場合には、PAM波形の出力位相が入力電圧に対してΔt1だけ遅れてしまう。その結果、入力電圧に対して所望とするタイミングでPAM波形を出力できなくなる。
以上のようにしてPAM波形の出力位相にずれが生じると、平滑回路(13)の2つのコンデンサ(C1,C2)のチャージ量に偏りが生じてしまうことがある。具体的には、PAM波形の位相がΔt1遅れる場合(図9の場合)と、PAM波形の位相が遅れていない場合(図8の場合)とで比較すると、図9において最初の半周期では上コンデンサ(C1)の電圧V1が急上昇する一方、次の半周期では下コンデンサ(C2)の電圧V2が急上昇している。このように、PAM波形の位相がずれると、各コンデンサ(C1,C2)の電圧が半周期毎に互い違いに急上昇し、各コンデンサ(C1,C2)のチャージ量が偏ってしまう。その結果、上下コンデンサ(C1,C2)のリプル電圧が増大するので、このようなリプル電圧に対応できるようにコンデンサ(C1,C2)の容量を増大したり、耐圧性を向上したりする必要がある。
そこで、本実施形態では、このような各コンデンサ(C1,C2)のチャージ量の偏りを解消すべく、PAM波形の出力位相を次のようにして補正している。
図9に示すようにPAM波形の出力位相にずれが生じる際、上記位相差検出部(7a)は、上下コンデンサ(C1,C2)の電圧差を算出する。具体的に、位相差検出部(7a)は、上下コンデンサ電圧検出回路(18)で検出された上下コンデンサ(C1,C2)の直列状態での電圧Voから上記下コンデンサ電圧検出回路(19)で検出された下コンデンサ(C2)の電圧V2を引いて、上コンデンサ(C1)の電圧V1を求める。そして、下コンデンサ(C2)の電圧V2から上コンデンサ(C1)の電圧V1を引いて、上下コンデンサ(C1,C2)間の電圧差ΔVを求める。ここで、位相差検出部(7a)は、入力電圧の一周期内において、PAM波形が出力されておらずコンデンサ電圧の変化が少ない部分でのΔVの変化に基づいてPAM波形の位相のずれを判別する。
具体的には、位相差検出部(7a)では、図9に示すように、入力電圧の一周期内において、上記PAM波形が出力されておらず、ΔVがほぼフラットになっている部分I、IIで、ΔVがどのように変化しているのかを見る。このΔVは、PAM波形の位相のずれがほとんどなく、入力電圧の半周期内でPAM波形出力時のPAM電流のバランスがとれている場合には、ほとんど変化しない。一方、このΔVは、PAM波形の位相のずれが大きく、入力電圧の半周期内でPAM波形出力時のPAM電流が一方に偏っている場合には、大きく変化する。図9を用いてより詳しく説明すると、上記ΔVの変化量が正の場合(ΔVが増えた場合)には、ゼロクロス点Pの直後のPAM波形のPAM電流がその後のPAM波形のPAM電流よりも大きくなるため、そのときのPAM波形の位相は目標とするPAM波形に対して遅れていることになる。逆に、上記ΔVの変化量が負の場合(ΔVが減少した場合)には、ゼロクロス点Pの直後のPAM波形によるPAM電流がその後のPAM波形によるPAM電流よりも小さいため、PAM波形の位相が目標とするPAM波形に対して進んでいることになる。なお、図9のI、IIの部分は、それぞれ、上下コンデンサ(C1,C2)の充電期間であり、本発明のスイッチング素子(S)がOFF状態の一定期間に相当する。
そのため、このΔVの増減によって、また、その増減量によって、PAM波形が目標とするPAM波形からどのくらい進んでいるのか若しくはどのくらい遅れているのかを判別することができる。
上記位相補正部(7b)は、上記位相差検出部(7a)によって検出されたPAM波形の位相のずれに基づいて、ゼロクロス点PからPAM波形を出力するまでの時間を補正する。具体的には、図10に示すように、位相補正部(7b)は、ΔVの変化量ΔV’に応じて決められたPAM波形の位相補正量を用いて、ゼロクロス信号の立ち下がり位置からの時間を補正するようにしている。なお、図10において、位相補正を行わない不感帯よりも上側の値が位相を遅らせる側の補正値であり、不感帯よりも下側の値が位相を進める側の補正値である。
以下には、PAM波形の位相のずれを補正する場合の動作の具体例を図11に示すフローを用いて説明する。
図11のフローがスタートすると、まずステップS1で、上記上下コンデンサ(C1,C2)の電圧Voと下コンデンサ(C2)の電圧V2とを検出する。そして、このVo、V2から、上コンデンサ(C1)の電圧V1を求め(ステップS2)、これらのV1及びV2から上下コンデンサ(C1,C2)の電圧差ΔV(=V2−V1)を算出する(ステップS3)。
続くステップS4では、上記ΔVの変化量ΔV’を求める。具体的には、入力電圧の一周期において、PAM波形が出力されない部分の上記ΔVの変化をΔV’として求める。そして、求めたΔV’が上記図10においてどの領域に入るのかを続くステップS5〜S10で判定する。ここで、上記ΔV’は、ΔVが増加した場合には正の値とし、ΔVが減少した場合には負の値とする。
ステップS5で、まず、上記ΔV’が80Vよりも大きいかどうかを判定し、大きいと判定された場合(YESの場合)には、PAM波形の位相を遅らせる必要があるため、続くステップS11で現在のPAM波形よりも300μs分、位相を遅らせる。一方、上記ΔV’が80V以下であると判定された場合(NOの場合)には、ステップS6に進んで上記ΔV’が50Vよりも大きいかどうかを判定する。このΔV’が50Vよりも大きいと判定された場合(YESの場合)にはステップS12で現在のPAM波形よりも100μs分、位相を遅らせる。一方、上記ΔV’が50V以下であると判定された場合(NOの場合)には、ステップS7に進んで、該ΔV’が20Vよりも大きいかどうかの判定を行う。
上記ステップS7で上記ΔV’が20Vよりも大きいと判定された場合(YESの場合)には、ステップS13で現在のPAM波形よりも50μs分、位相を遅らせる一方、上記ΔV’が20V以下であると判定された場合(NOの場合)には、ステップS8に進んで、上記ΔV’が−100Vよりも小さいかどうかの判定を行う。ΔV’が−100Vよりも小さいと判定された場合(YESの場合)には、ステップS14に進んで、現在のPAM波形よりも300μs分、位相を進める一方、上記ΔV’が−100V以上であると判定された場合(NOの場合)には、ステップS9に進む。
上記ステップS9では、上記ΔV’が−70Vよりも小さいかどうかの判定を行う。このステップS9で、上記ΔV’が−70Vよりも小さいと判定された場合(YESの場合)には、ステップS15に進んで現在のPAM波形よりも100μs分、位相を進める一方、上記ΔV’が−70V以上であると判定された場合(NOの場合)には、ステップS10に進んで上記ΔV’が−30Vよりも小さいかどうかの判定を行う。このΔV’が−30Vよりも小さいと判定された場合(YESの場合)には、ステップS16に進んで現在のPAM波形よりも50μs分、位相を進める一方、上記ΔV’が−30V以上であると判定された場合(NOの場合)には、該ΔV’は、−30V以上で且つ20V以下であり、上記図10において不感帯の領域に該当するため、そのままこのフローを終了してスタートへ戻り(リターン)、再びこのフローを開始する。なお、上記ステップS11〜S16でPAM波形の位相を補正した後もこのフローを終了してスタートへ戻り(リターン)、再びこのフローを開始する。
以上のようにして、PAM波形の出力位相の補正が適宜行われることで、例えば図9に示すような位相のずれが、図8に示すように解消される。その結果、各コンデンサ(C1,C2)のチャージ量の偏りが解消されるので、各コンデンサ(C1,C2)の容量や耐圧を大きくする必要がなくなる。
〈ソフトスタート制御〉
ところで、例えば外乱等に起因して入力電流が急激に歪むような場合には、入力電流の実際のゼロクロス点P’に対して、検出したゼロクロス点Pが更に大きくずれてしまうこともある(例えば図12のΔt2)。このような現象が突然生じると、PAM波形の出力位相も、所望とする位相から大きく外れてしまう。その結果、同図に示すように、入力電圧のピーク付近にPAM波形のONパルスが跨ってしまい、PAM電流が急上昇してしまうことがある。このようにしてPAM電流が急激に上昇すると、スイッチング素子(S)やダイオード(D1〜D4)等の素子が故障してしまう。また、各コンデンサ(C1,C2)の電圧が急激に上昇することにより、空調機が強制的に停止してしまうこともある。
そこで、PAM制御停止部(8a)は、このようにしてPAM電流が急激に上昇すると、PAM波形のONパルスの出力を停止させ、PAM制御を強制的に終了させる。具体的に、PAM制御停止部(8a)には、PAM電流の上限電流値(Imax)が予め設定されている。この上限電流値(Imax)は、スイッチング素子(S)等を充分保護できるような電流値(過電流保護値)である。そして、PAM制御中において、上記PAM電流検出回路(15)で検出したPAM電流(Is)が上限電流値(Imax)を越えると、PAM波形のONパルスの出力が停止する。つまり、PAM電流(Is)が上限電流値(Imax)を越えた後には、OFFパルスが出力されてそのままの状態が保持される。従って、その後には、本来のPAM波形(図12の点線で示す波形)が生成されない。なお、本実施形態におけるONパルスの出力停止時間は、少なくとも所定の待ち時間(例えば10ms)を経過した後であって、次のゼロクロス点Pを越えるまでの時間となっている。
このようなONパルスの出力停止時間が経過すると、PAM制御開始部(8b)は、PAM波形の出力を再開させる。ここで、このようにPAM制御を再開する際には、未だ入力電圧波形の歪みが解消されていないこともある。従って、このような条件下でPAM波形の出力を再開したとしても、やはり入力電圧のピーク付近にPAM波形のONパルスが跨ってしまい、PAM制御停止直前と同じタイミングで再びPAM電流が急上昇することがある。この場合、再びPAM電流(Is)が上限電流値(Imax)を越えてしまい、同様にしてONパルスの出力が停止してしまう。従って、このような入力電圧波形の歪みが周期的に継続する場合、PAM制御停止→PAM制御再開→PAM制御停止→…という制御が繰り返され、本来のPAM制御を継続できないという問題が生じる。しかも、本実施形態では、入力電流の立ち下がり位置からゼロクロス点Pを検出し、このゼロクロス点Pを基点としてPAM制御を再開するようにしている。このため、PAM制御再開時に同じタイミングでPAM電流が過電流となる場合、一方のコンデンサ(例えば下側コンデンサ(C2))のみが充電されてPAM制御が停止し、再開後に同じ下側コンデンサ(C2)のみが充電されてPAM制御が停止する、という悪循環が繰り返される。その結果、コンデンサ(C1,C2)のチャージ量、ひいてはリプル電圧が増大するため、各コンデンサ(C1,C2)の容量や耐圧を充分確保する必要性が生ずる。
そこで、本実施形態では、PAM制御再開時におけるPAM電流の上昇を確実に回避するように、次のようなソフトスタート制御を行うようにしている。
ONパルスの出力が停止された後、最初のゼロクロス点Pを過ぎると、PAM制御開始部(8b)は、PAM波形出力部(5b)からONパルスを再び出力させる。ここで、ゼロクロス点Pを経過後の最初のON信号は、図4に示すように、タイマー部(5c)がt2をカウントした後にしか出力されない。従って、ソフトスタート制御の開始時の最初のPAM波形では、図12に示すようにパルス2及びパルス4のみが生成される。そして、次のPAM波形からは、ONパルス1〜5から成るパルス群が生成される。
ソフトスタート制御開始時には、PAM制御開始部(8b)が、通常のPAM制御のONパルスの幅よりも短いONパルスを出力させる。具体的に、PAM制御開始部(8b)は、中央のパルス1の幅tw1’を、通常のONパルス1の幅(即ち、PAM制御停止直前のパルス1の幅)tw1よりも短くしてPAM波形を出力させる。このため、ソフトスタート制御開始直後のパルス群の各寸法tw1’〜tw5’は、通常のパルス群の寸法tw1〜tw5よりもそれぞれ短くなる。なお、本実施形態では、通常のパルス1の幅tw1を約4000μsとしているのに対し、ソフトスタート制御開始直後のパルス1の幅tw1’を約500μsまで短くする。また、本実施形態のソフトスタート制御では、パルス1以外のONパルス(パルス2〜5)の幅は固定されている。
また、PAM制御開始部(8b)には、図13及び図14に示すように、ソフトスタートタイマーが設けられている。ソフトスタートタイマーは、ソフトスタート制御開始時から終了までの間の設定時間tupをカウントする。なお、本実施形態では、この設定時間として5秒を設定している。
ソフトスタートタイマーのカウントが開始されると、上述の如くパルス1の幅をtw1’としてPAM波形が出力される。図14に示すように、カウント後しばらくの間は、パルス1の幅をtw1’で固定してPAM波形が繰り返し出力される。一方、所定時間が経過した後には、パルス群の出力毎にパルス1の幅が段階的に長くなるようにPAM波形が出力される。このパルス1の幅の増大量は、ソフトスタートタイマーのカウントがtupに至ると同時に、パルス1の幅が元の通常の幅tw1に戻るように算出されている。つまり、PAM制御開始部(8b)は、パルス1の幅tw1’(500μs)を固定とする所定時間が経過した後から、ソフトスタートタイマーがtup(5秒)をカウントするまでの間で、パルス1の幅tw1’(500μs)を一定の変化量で長くさせて最終的にtw1(4000μs)とさせる。そして、ソフトスタートタイマーがtupをカウントした後には、ソフトスタート制御が終了して上述した通常のPAM制御が行われる。
以上のようなソフトスタート制御を行うことで、図12に示すように、PAM波形のONパルスが、入力電圧のピーク付近に跨りにくくなる。このため、PAM電流が上昇してしまうことが抑制され、これによりPAM電流(Is)が再び上限電流値(Imax)を越えてしまうことが回避される。また、このようなソフトスタート制御時には、上述した通常のPAM制御と同様に、パルス1がゼロクロス点Pを跨るように制御される。従って、パルス1の幅を短くすることで、PAM波形のONパルスが入力電圧のピークから遠ざかるようになるので、PAM電流の上昇が効果的に抑制される。
また、ソフトスタート制御時には、上述と同様にして、PAM波形の出力位相の補正も行われる。つまり、ソフトスタート制御では、PAM波形のONパルスの幅が適宜変更されると同時に、上記位相差検出部(7a)及び位相補正部(7b)によって、各コンデンサ(C1,C2)のチャージ量に基づいてPAM波形の出力位相のずれが補正される。従って、ソフトスタート制御が終了する時点では、PAM波形の出力位相のタイミングが最適化されているので、パルス1の幅をtw1としてもPAM電流が上昇してしまうことがない。
更に、ソフトスタート制御では、必要に応じて入力電流(IL)の制御も行われる。即ち、圧縮機の電動機(30)の負荷が極点に高く、且つ入力電圧波形の歪みも極点に大きい場合には、入力力率が悪化して入力電流も極端に大きくなることがある。このため、このような悪条件下では、上述のソフトスタート制御を行ってもなおPAM電流の上昇を抑えられないことがある。このため、ソフトスタート制御時において、PAM電流が所定値を越える回数が所定回数以上になると、上記インバータ制御部(4)は、インバータ回路(14)の出力周波数を低減させる。その結果、ブリッジ回路(12)の入力電流(IL)が低下し、これによりPAM電流の上昇が確実に抑えられる。なお、本実施形態では、ソフトスタート制御時において、3秒間の間にPAM電流が所定電流値を超える回数が100回以上である場合に、入力電流が低減される。
更に、ソフトスタート制御では、上述と同様に、位相制御部(6)が入力電流に応じてPAM波形の位相制御を行う。つまり、ソフトスタート制御においても、入力電流が小さくなるに連れてONパルスがゼロクロス点Pに近づくように、PAM波形の位相制御が行われる。よって、インバータ制御部(4)によって入力電流(IL)が低減されると、これに応じてPAM波形の位相制御量が小さくなり(図5及び図6参照)、ONパルスがゼロクロス点Pに近づくことになる。その結果、PAM波形のONパルスが入力電圧のピークから離れることになるので、PAM電流の上昇が更に効果的に抑制されることになる。
また、このソフトスタート制御では、PAM波形の出力位相の制御量(補正量)が制限されている。即ち、ソフトスタート制御において、PAM波形のパルス1の幅を短くする場合、通常のPAM制御と同様の位相制御量でPAM波形の位相を制御してしまうと、パルス1がゼロクロス点Pから外れてしまう虞がある。このような場合には、ゼロクロス点Pの直後からONパルス(パルス1)を出力できなくなる。そこで、このソフトスタート制御では、パルス1の幅に応じて、PAM波形の位相制御量の制御範囲(図14に示すPhase min〜Phase maxの範囲)を変化させている。
具体的に、例えばソフトスタート制御の開始直後では、パルス1の幅がtw1’となる。従って、パルス1の中心とゼロクロス点Pとが一致している状態を基準(位相制御量=0)とした場合、PAM波形の位相の制御範囲は−1/2tw1’より大きく、+1/2tw1’よりも小さい範囲に制限される。つまり、Phase minを−1/2tw1’よりも大きい値とし、phase max を1/2tw1よりも小さい値とすることで、PAM波形の位相を制御(補正)しても、パルス1が確実にゼロクロス点Pに跨ることになる。一方、ソフトスタート制御時に、パルス1の幅が徐々に長くなると、これに応じてPhase min〜phase maxの範囲も徐々に大きくなる。そして、パルス1の幅がtw1になると、PAM波形の位相の制御範囲は−1/2tw1より大きく、+1/2tw1よりも小さい範囲に制限される。
−実施形態の効果−
上記実施形態では、PAM電流(Is)が上限電流値(Imax)を越えてONパルスの出力を停止させた後に、所定幅tw1よりも短いtw1’の幅のONパルスでON−OFFパルスを出力させ、このONパルスを段階的に長くして元の所定幅tw1に戻すソフトスタート制御を行うようにしている。このため、ソフトスタート制御開始時において、PAM波形の出力位相がずれていても、ONパルスが入力電圧のピーク付近から外れ易くなるので、PAM電流の上昇を抑制することができる。従って、例えばいきなり所定幅tw1のONパルスでPAM制御を再開する場合と比較して、PAM電流の上昇を抑えることができ、スイッチング素子(S)等の素子を保護することができる。また、過電流等によりPAM制御が停止してしまうことを回避できるので、空調機の運転を継続して行うことができる。
また、ソフトスタート制御では、PAM電流が所定値を越える回数が所定回数以上になると、整流回路(12)の入力電流を低減させるようにしている。このため、電動機(30)の負荷が極端に高く、且つ入力電圧も極端に歪んでいるような悪条件化においても、PAM電流の上昇を確実に抑えることができる。更に、このソフトスタート制御時に、入力電流が低減されると、位相制御部(6)が、入力電流の低下に応じて、ONパルスをゼロクロス点に近づけるようにPAM波形の出力位相を制御している。このため、入力電圧のピークからONパルスを遠ざけることができ、PAM電流の上昇を一層効果的に抑えることができる。
更に、ソフトスタート制御では、2つのコンデンサ(C1,C2)のチャージ量(電圧差ΔV)に基づいて、PAM波形の出力位相のずれを適宜補正するようにしている。このため、ソフトスタート制御時における各コンデンサ(C1,C2)のチャージ量の偏りを防止できるので、各コンデンサ(C1,C2)の容量や耐圧を必要最小限に抑えることができる。従って、コンデンサ(C1,C2)のコンパクト化、低コスト化を図ることができる。
また、このようにしてPAM波形の出力位相を補正することで、入力電圧に応じた所望のタイミングでPAM波形を出力できる。よって、ソフトスタート制御中、及び通常のPAM制御の再開時において、ONパルスが入力電圧のピーク付近に跨りにくくなりので、PAM電流の上昇を効果的に防止できる。
更に、ソフトスタート制御では、パルス1のONパルスがゼロクロス点Pに跨るように制御している。このため、ONパルスの幅を短くする際、このONパルスが入力電圧のピークから遠ざかることになるので、PAM電流の上昇を更に効果的に防止することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態では、PAM電流(Is)が上限電流値(Imax)を越えてPAM制御が停止された後に、ソフトスタート制御を行うようにしている。しかしながら、このソフトスタート制御を、電動機(30)(圧縮機)の立ち上げ時、即ち空調機の運転開始時に行うようにしても良い。具体的に、電動機(30)を起動して入力電流が所定値に至ると、PAM波形出力部(5b)からPAM波形を出力させる。このようなPAM波形の出力開始時において、PAM制御開始部(8b)が、所定幅tw1よりも短い幅tw1’のONパルス(パルス1)でPAM波形を出力させ、このONパルス(パルス1)の幅を周期的に長くして所定幅tw1とするソフトスタート制御を行うようにしても良い(図13及び図14参照)。また、この場合にも、上述したようなPAM波形の出力位相の制御(補正)を行っても良いし、必要に応じて入力電流を低減するようにしても良い。これにより、PAM電流が一時的に高くなり易いPAM波形の出力開始時において、PAM電流が上昇してしまうのを確実に防止でき、電動機(30)を安定して立ち上げることができる。なお、PAM波形の出力開始のタイミングは、電動機(30)の起動と同時であっても良い。
また、上記実施形態のソフトスタート制御では、パルス2〜5の幅を固定して、パルス1の幅だけを適宜変更するようにしているが、例えばパルス1の幅を固定する一方、他のパルス2〜5の幅を適宜変更しても良いし、全てのONパルス、あるいは任意のONパルスの幅を適宜変更するようにしても良い。
また、上記実施形態では、ゼロクロス点毎に生成するパルス群を5つのパルスから構成するようにしたが、これに限らず、7つや9つのパルスによって構成するようにしても良い。また、パルス群は、奇数のパルス数に限らず、偶数のパルス数で構成するようにしても良い。
更に、上記実施形態では、ゼロクロス信号の立ち下がり位置からタイマー部(5c)のカウントをスタートさせるようにしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ゼロクロス検出部(5a)がゼロクロス点Pそのものを検出するように構成され、そのゼロクロス点Pからタイマー部(5c)のカウントをスタートさせるようにしても良い。
また、上記実施形態の電源供給回路を、例えば庫内の冷蔵や冷凍を行う冷凍装置の圧縮機等に適用しても良いし、空気を送風するファン等の圧縮機以外の機器に適用しても良い。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。