JP4929267B2 - 藻場造成方法及びこれに用いる海藻種苗取り付け器具 - Google Patents

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Description

本発明は、移植用の海藻種苗を簡便かつ確実に藻場造成区画に固定して海底に藻場を造成する藻場造成方法、及びこれに用いる海藻種苗取り付け器具に関するものである。
ホンダワラ類やアラメやカジメ等大型藻類が繁茂する藻場は、有用魚介類に摂餌場所、隠れ場、産卵場所や仔稚の生育場所を提供するだけでなく、海域の栄養塩類を吸収することで水質浄化にも寄与していることが知られている。近年、日本沿岸では藻場が消滅したり縮小したりする、いわゆる磯焼けという現象が発生しており、各地で藻場を修復、復元するための藻場造成が積極的に企てられている。
従来から用いられている藻場造成方法にあっては、コンクリートブロックなどの人工物や、天然岩石など大型海藻の着生基質となる物質を藻場造成する区画に沈設して、大型海藻が自然に着生するのを期待する方法がある。
しかし、近隣に母藻となる海藻が繁茂していない場所では、自然着生が期待できず、また母藻となる海藻が近辺に存在していたとしても、藻場造成区画に新たに藻体が着生するかどうかは不確定な自然環境に左右されるため、藻場が形成されるまでに時間がかかるなど確実性において問題があった。
そこで、これらの問題を解決するための手段として、海藻の種苗を生産して、その種苗を藻場造成区画に移植するという方法がある。この海藻の種苗生産方法としては、例えば受精卵や胞子を海水に浸した平板状もしくは紐状の基質の上にまいて、基質の上に着生した幼体を種苗として育成することが行われている。
育成した海藻種苗を移植することにより、藻場を造成する方法としては、例えば下記する特許文献1〜4に記載される方法が知られている。
特開2002−238384号公報 特開2002−171854号公報 特開2002−142586号公報 特開2001−269078号公報
特許文献1には、海藻の種苗を付着させた生分解性の不織布からなるシート基材を水中ボンドなどの接着剤で藻場造成域に貼り付ける方法が開示されている。
また特許文献2には、海藻の種苗を付着させた紐状体を木製の平板の上に固定して、その木製の平板を水中ボンドもしくはボルトにて海中の着生基質に固定する方法が開示されている。
また特許文献3には、海藻の種子または胞子が付着したロープを巻き付けた木矢を、海中の構造物に設けた小溝に打ち込むことにより、この海中の構造物に海藻を着生させる方法が開示されている。
さらに特許文献4には、海藻の胞子を付着させた種糸を取り付けた部材を、水中で保持して海藻を育成させた後に、これを藻場を造成する場所に設置したアンカー部材に取り付けることにより、藻場を造成する方法が開示されている。
海藻種苗の取り付け作業は、ダイバーによる潜水作業になるため、多数の種苗を短時間で移植できるような簡便な方法が望まれている。しかしながら、上記した特許文献1及び特許文献2で開示されている方法では、海藻種苗を付着させた基質を水中ボンドなどの接着剤やボルトなどで藻場を造成する区画に固定する必要があった。
接着剤で固定する場合、この接着剤が二剤混合型の水中ボンドは混合するのに手間がかかる上、接着剤が硬化するまでに時間がかかるため、接着剤が硬化する前に取り付けた基質が流失してしまう可能性があった。
またボルトでの固定は、藻場造成区画の岩礁構造物にあらかじめ穿設してあるボルト孔に、各基質の1個ずつをボルトで締結しなければならず、この取り付け工数が多くなるという問題がある。
また上記特許文献1には、海藻種苗を着生させたシートをあらかじめ陸上(あるいは船上)で、岩礁構造物であるブロックの表面に貼り付けてから海中に沈設する方法も開示されているが、この方法は乾燥ストレスに対して脆弱な海藻種苗にダメージを与える可能性がある。またこの方法には、岩礁構造物の沈設の際に生じる複雑な水流などで、岩礁構造物の表面に貼り付けた海藻種苗が脱落してしまう危険性が大きいという問題もある。
また、特許文献3で開示されている方法は、木矢を打ち込むための溝をあらかじめ海中の構造物に設けておく必要があるため、適用できる藻場造成区画が限られていた。
さらに、特許文献4で開示された方法は、種糸を取り付けたブロックを海中に吊るして中間育成をした後に、海底に設置したアンカー部に着脱可能な方法で固定して藻場を構成するようになっているが、この方法には海底に藻場を形成するための海藻種苗を1度海中に垂下して中間育成を行うため、時間と手間がかかるという問題がある。また、移植用藻体の着生基質として重量物であるコンクリートブロックを利用することは、大規模に藻場を造成する際に、移植藻体の運搬や海底への取り付けに手間と費用がかかるという問題がある。
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、藻場造成の際に藻礁への海藻種苗の移植を簡便に行うことができるようにした藻場造成方法及びこれに用いる海藻種苗取り付け器具を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る藻場造成方法は、上面に、この上面を横切る方向に、断面形状が上側の開放部の対向間隔を底部の対向間隔より狭くした形状で、かつ長手方向の一端から他端にわたって徐々に狭くなるテーパ状にした係合溝を設けた1個の種苗チップ取付用のベース部材を、海中に沈設した藻礁等にあらかじめ相互に離隔して多数固定しておき、断面形状を上記ベース部材の係合溝の断面形状と同じ形状にしてこの係合溝にくさび係合するようにした個々のホルダ部材に、海藻種苗を着床させた種苗チップを1個ずつ取り付け、この種苗チップを1個ずつ取り付けたホルダ部材を、上記海中にあるベース部材の係合溝に着脱可能に係合して個々に取り付けるようにした。
また、本発明の上記藻場造成方法に用いるための請求項2に係る海藻種苗取り付け器具は、 海藻種苗を着生させた種苗チップと、この種苗チップを1個ずつ着脱可能に取り付けるようにしたホルダ部材と、このホルダ部材を1個ずつ着脱可能に取り付け可能にした1個の種苗チップ取付用のベース部材とからなり、このベース部材を藻礁や岩礁等に相互に離隔して着脱可能に多数取り付けるようにし、ベース部材の上面に、これの上面を横切る方向に、断面形状が上側の開放部の対向間隔を底部の対向間隔より狭くした形状で、かつ長手方向の一端から他端にわたって徐々に狭くなるテーパ状にした係合溝を設け、種苗チップを1個ずつ取り付けたホルダ部材を、断面形状を上記ベース部材の係合溝の断面形状と同じ板状にしてこの係合溝にくさび係合するようにした構成になっている。
そして請求項3に係る発明では上記請求項2に係る発明において、ホルダ部材のベース部材の係合溝への挿入方向の中間部に、上記挿入方向と直角方向に種苗チップを取り付ける種苗チップ取り付け溝を設け、この種苗チップ取り付け溝に取り付ける種苗チップの取り付け方向の長さをホルダ部材が係合するベース部材の係合溝の内側に対向する長さにした構成になっている。
さらに請求項4に係る発明では上記請求項2,3のそれぞれのいずれか1項に係る発明において、種苗チップを板状に形成し、この種苗チップに4個の穴を1列状に設けると共に、これの中央寄りの2個の穴間を種苗チップの表側面において溝でつなげ、海藻種苗を着生させた撚り糸の海藻種苗を着生させた部分を上記種苗チップの浅い溝内に入れ、撚り糸のこの部分から両側の部分を溝の両側端の穴から裏側へ通し、ついで両側端の穴から表側へ通して、上記撚り糸をこれの海藻種苗を着生させた部分を上記溝内に入れた状態で種苗チップに取り付けた構成になっている。
本発明に係る藻場造成方法及びこれに用いる海藻種苗取り付け器具によれば、(1)小型で取り付けが容易であることから、多数の海藻種苗を短時間で移植することができること、(2)脱着が容易であることにより、メンテナンスも容易であること、(3)着生基質を小型化することができること、(4)確実に海藻種苗を藻礁に固定することができることで、初期減耗を低減できること等の作用効果を奏することができるものである。
すなわち、上記(1)のことは、これから沈設する藻場造成用の構造物、例えばコンクリート製の藻礁においては、陸上での上記構造物の作成時に、あらかじめ本発明のベース部材を構造物に取り付けておくことにより、潜水士による水中作業を極めて簡単なものにできる。これはベース部材が既に藻場造成区画に設置してある場合、水中では海藻種苗を着生させた種苗チップを取り付けたホルダ部材をベース部材に取り付けるだけでよく、この作業は工具を用いることなく容易に行うことができることによるものである。
また、本発明に係る海藻種苗取り付け器具にあっては、これの1個1個が小型に構成できることにより、しかもこれを軽量な合成樹脂製にて構成すれば移植資材の運搬や取り扱いが容易であり、水中の藻場造成区画において、潜水士が容易に多数の海藻種苗を短時間のうちに移植することが可能である。
また、既設の構造物や、天然の岩礁に本発明の海藻種苗取り付け器具を使用して、海藻種苗を移植するにあたっては、本発明のベース部材を既設の構造物や天然の岩礁にボルトや接着剤などで固定した後に、海藻種苗を着生させた種苗チップを取り付けたホルダ部材を、上記ベース部材に取り付けることにより藻場を造成することができる。
また、上記(2)のことにおいて、従来の海藻種苗の固定法である水中ボンドは、1度接着したものを取り外すことはできず、また金属製のボルトによる固定においても、付着物や錆などでボルトの取り外しが困難になることがあったが、本発明による海藻種苗取り付け器具にあっては、種苗チップを1個ずつ海藻種苗を取り付けるホルダ部材が藻礁に互いに離隔して固定されたベース部材に対して個々に容易に着脱できる仕様になっていることにより、移植した海藻種苗の一部または全部が消失した場合にも、新たな海藻種苗と容易に交換することができ、藻場を造成した後のメンテナンスも容易で安価にすることができる。
また、造成した藻場においては、移植した海藻種苗が母藻となって周辺に海藻群落を広げて藻場が形成されることが期待されるが、本発明による海藻種苗取り付け器具を使用することで、母藻となった移植海藻をホルダ部材ごと他の場所へ移植することが可能となり、より効率的に藻場が拡大されるように海藻の密度や性比などをコントロールすることが容易にできる。
また、上記(3)のことにおいて、移植後の脱落による初期減耗を低減するためには、着生基質にしっかりと活着させた海藻種苗を育成して移植することが望ましいが、培養施設において移植用海藻種苗を育成するにあたり、種苗を着生させる基質が小型であると、大型の基質に着生させた種苗を培養する場合と比べて、培養のためのスペースや水槽を小型化することができるため、培養作業にかかる費用や手間も削減することができる。
また、海藻種苗を取り付けた基質が小型で軽量であれば、培養施設から移植先までの輸送コストも低減することができる。
このように陸上の培養施設などで移植用海藻種苗を大量に生産して移植先に輸送する点から考えると、移植用海藻の着生基質は小型である方が望ましいが、その一方で潜水作業環境を勘案した場合、藻場造成区画への固定作業など、小さな着生基質を水中で取り扱うことには困難が伴うといった問題がある。
このことに対して本発明では、海藻を着生させた種苗チップを取り付けたホルダ部材を、藻場造成区画に固定したベース部材に取り付けることで藻場を造成するようにしていることにより、海藻種苗を着生させた種苗チップが小さいものであっても、この種苗チップをホルダ部材に取り付けた後、このホルダ部材をベース部材に取り付けるだけであるため、潜水作業においても取り扱いが容易となる。
さらに上記(4)のことにおいて、従来の海藻種苗の移植による藻場造成においては、移植種苗が基質に着生する前に剥離脱落してしまうことによる高い初期減耗率が問題であったが、本発明の方法にあっては、培養施設で種苗チップにしっかりと活着させた海藻種苗を、ホルダ部材に強固に取り付けることにより、移植後の海藻種苗の脱落による初期減耗を減少させることができる。
そして本発明の器具で移植された海藻種苗の付着器は、藻体の生長に伴い種苗チップを覆い尽くした後、この種苗チップを取り付けているホルダ部材に展開する。また、大きな付着器を形成する海藻類においては、付着器はベース部材にも活着して、より強固な付着力を得ることになる。
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は海底に沈設した藻礁1の表面、例えば上面を藻場造成面2とした状態を示すもので、この藻場造成面2には多数の海藻種苗取り付け器具3が互いに離隔して固定されていて、この各海藻種苗取り付け器具(以下、単に取り付け器具という)3には、あらかじめ培養施設にて培養して海藻種苗4を着生させた種苗チップ5が1個ずつ取り付けられており、上記海藻種苗4が藻礁上で上記取り付け器具3の上面にて生長するようになっている。
図2は上記種苗チップ5の一例を示すもので、この種苗チップ5は厚さ3mmの塩化ビニール板で、これの長方向に4個の穴6が一列状に並べて設けられており、その中央寄りの2個の穴は浅い溝7でつながった形状になっている。
図3、図4はこの種苗チップ5に海藻種苗4を取り付けた状態を示すものである。海藻種苗4は培養施設にてクレモナ(商品名、以下同じ)撚り糸8に着生させたものが用いられ、この海藻種苗4の取り付けは図3、図4に示すように、クレモナ撚り糸8に活着させた海藻種苗4の付着器部が結合している部分を溝7内に入れた状態で、クレモナ撚り糸8の両端部分を中央寄りの穴から裏側へ通し、ついで両端側の穴から表側へ通すようにしている。
次に上記取り付け器具3の実施例を以下に説明するが、以下の実施例によって本発明が限定されるものではない。
図5から図10は取り付け器具3の実施例1を示すもので、図中9は藻礁1に固定するベース部材であり、このベース部材9の上面中央部にはボルト座10が凹設されていると共に、ボルト孔11が設けてあり、ボルト座10からボルト孔11にボルトを挿通して藻礁1の藻場造成面2にあらかじめインサート等にて設けられているナット部材に螺合することにより、このベース部材9が藻場造成面2に固定されるようになっている。そしてこのベース部材9の上面には、これの上面を横切る方向に係合溝12が設けてあり、この係合溝12の断面形状は上側の開放部の対向間隔が底部の対向間隔より狭い、いわゆるアリ溝状になっている。そしてこの係合溝12の平面形状は、長手方向の一端から他端にわたって徐々に狭くなるテーパ状になっている。
図中13は上記ベース部材9に係脱自在に係合するホルダ部材で、このホルダ部材13は板状になっていると共に、これの断面形状は上記ベース部材9の係合溝12と同じ形状のいわゆるアリほぞ形状になっていて、ベース部材9の係合溝12に摺動自在に係合するようになっている。そしてこのホルダ部材13の幅は、一端から他端にわたって徐々に狭くなるテーパ状になっていて、これの上記係合溝12に対する挿入端において、このホルダ部材13が係合溝12にくさび係合するようになっている。
上記ホルダ部材13の上記ベース部材9の係合溝12への挿入方向の中間部に、上記種苗チップ5が取り付けられる種苗チップ取り付け溝14が、上記挿入方向と直角方向に設けられている。
この種苗チップ取り付け溝14は、上側の開放部の対向間隔を種苗チップ5の幅より狭くしたアリ溝状になっていると共に、溝全体の対向間隔が種苗チップ5の挿入方向にわたって徐々に狭くなるテーパ状になっていて、種苗チップ5の挿入端において、この種苗チップ5がこの溝14にくさび係合するようになっている。また、この種苗チップ取り付け溝14の幅方向中央部には、図4にて示される種苗チップ5の裏側に出ているクレモナ撚り糸8を逃がすための溝15が種苗チップ5の挿入方向にわたって設けてある。
この実施例における種苗チップ取り付け溝14は、ホルダ部材13のベース部材9の係合溝12への挿入方向と直角方向に設けられていることにより、ホルダ部材13に取り付けた状態の種苗チップ5は、このホルダ部材13を上記ベース部材9の係合溝12へ係合した状態で、これの係合方向の両端がベース部材9の係合溝12の内側に対向して抜け出るのが防止される。
図11から図15は、取り付け器具3の実施例2を示すもので、図中16は上記藻礁1に固定するベース部材であり、このベース部材16は円柱状になっていて、これの外周に雄ねじ17が設けてある。そしてこれの上面の中央部には、ボルト座18が凹設されていると共にボルト孔19が設けてあり、ボルト座18からボルト孔19にボルトを挿通して上記藻礁1の藻場造成面2にあらかじめインサート等にして設けられているナット部材に螺合することにより、このベース部材16が藻場造成面2に固定されるようになっている。
図中20は上記ベース部材16に係脱自在に係合するホルダ部材で、このホルダ部材20は上記ベース部材16の高さより浅くした椀状になっていて、これの円筒部の内面に上記ベース部材16の雄ねじ17に螺合する雌ねじ21が設けてある。また、このホルダ部材20の上面に、上記種苗チップ5が取り付けられる種苗チップ取り付け溝22がホルダ部材20の上面を横切る方向に設けられている。このホルダ部材20の外周面には、滑り止めの凸条23が設けてある。
上記種苗チップ取り付け溝22は、上側の開放部の対向間隔を種苗チップ5の幅より狭くしたアリ溝状になっていると共に、溝全体の対向間隔が種苗チップ5の挿入方向にわたって徐々に狭くなるテーパ状になっていて、種苗チップ5の挿入端において、この種苗チップ5がこの溝22にくさび係合するようになっている。また、この溝22にも種苗チップ5の裏側に出っ張るクレモナ撚り糸8を逃がすための溝24が設けてある。
図16、図17は、実施例2の変形例を示すものである。
上記した実施例2のものは、ベース部材16に対してホルダ部材20をねじ結合するようにしたが、図16に示すようにベース部材16aの側面の円周方向2個所にカムピン25を突設し、このカムピン25にホルダ部材20aの円筒部に設けたカム溝26が係脱可能に係合するようにしてもよい。
また図17に示すように、ベース部材16bにホルダ部材20bを嵌合した状態で、この両者を貫通する2つのピン穴27,27を、例えば十文字状に設けておき、これのいずれか1つのピン穴27にピン28を挿通することにより、ベース部材16bとホルダ部材20bとを係合するようにしてもよい。このピン28は容易に挿入可能であるが簡単には抜け出ないように、例えばテーパピンが用いられる。
なお、図18は上記実施例におけるホルダ部材の変形例を示すもので、ベース部材にねじ込み固定するホルダ部材20cの頂面に設けられる取り付け溝22aは行き止まり形状になっている。そしてこれの両側部の断面形状はコ字状になっていると共に、これの両側の溝部22bの空間の高さは、挿入方向奥側が種苗チップ5の厚さよりわずかに低くなっていて、取り付け溝22aに挿入される種苗チップ5の両側部が、この溝部22bの内側上面にて抜けないように押えられるようになっている。また、取り付け溝22aの入口部上面には、取り付け溝22aに挿入した種苗チップ5の後端に当接して抜け方向に係合する突起29が設けてある。
上記下各実施例にあっては、ベース部材9,16,16a,16bをボルトを用いて藻礁1に固定する例を示したが、これらをボルト以外、例えば接着剤にて固定するようにしてもよい。また、コンクリート製の藻礁に設置する場合には、ベース部材9,16,16a,16bをあらかじめ藻礁のコンクリート内に埋設してもよい。
またホルダ部材13,20,20a,20b,20cの種苗チップ取り付け溝14,22,22aは図2に示した構成の種苗チップ5を用いるための構成を示したが、種苗チップとしてはこの図2に示したものに限るものではなく、したがって各ホルダ部材の種苗チップ取り付け溝は、各種苗チップが取り付けられるように適宜な構成にするようにしてもよい。
また上記各実施例における各部材は、ポリプロピレン等の合成樹脂にて構成されている。
次に上記構成の海藻種苗取り付け器具3を用いた藻場造成方法について説明する。
まず陸上において、図1に示した海底に沈設する藻礁1に上記した海藻種苗取り付け器具3のベース部材9,16,16a,16bを取り付けるためのボルトが螺合するナット部材を多数インサートする。このナット部材のインサートは、上記藻礁1がコンクリートブロックである場合にはこの成形時に、また自然石の場合にはドリル穿孔により行う。
その後、この藻礁1の各ナット部材に、上記した各実施例にて示したいずれかの取り付け器具3のベース部材9(16,16a,16b)をボルトにて取り付ける。そしてこのようにした藻礁1を藻場造成区画の所定の位置に沈設する。
一方、上記藻礁1へのナット部材のインサート作業後、あるいはこれと並行してホルダ部材13(20,20a,20b,20c)に、あらかじめ培養施設にて海藻種苗を着生させた種苗チップ5を取り付ける。このときの種苗チップ5は、ホルダ部材13(20,20a,20b,20c)の種苗チップ取り付け溝14(22,22a)が、これの断面形状がアリ溝状に形成されていると共に、平面形状がテーパ状になっていることにより、及び抜け止め用の突起29があることにより挿入方向に押し切ることにより、この溝14(22,22a)に強固に取り付けられる。
このホルダ部材13(20,20a,20b,20c)への上記種苗チップ5の取り付けは、この種苗チップ5に着生している海藻種苗は乾燥に対して脆弱であるため、水中(海水)で行うことが望ましい。
その後、上記ホルダ部材13(20,20a,20b,20c)を潜水作業にて上記藻礁1に固定した各ベース部材9(16,16a,16b)に取り付ける。
このときにおいて、実施例1におけるホルダ部材13にあっては、これをベース部材9の係合溝12に終端まで挿入することにより固定される。また実施例2におけるホルダ部材20は、ベース部材16にねじ込みにより、また他のホルダ部材20aはカム係合により、さらに他のホルダ部材20bは、ベース部材に嵌合してから、この両者を貫通するピン穴27にピン28を挿入することにより結合する。
上記各ホルダ部材13,20,20a,20b,20cに対する各ベース部材9,16,16a,16bの係合は、テーパ溝係合、ねじ係合、カム溝係合、ピン係合であることにより、潜水作業であっても極めて容易に行うことができる。
なお上記実施の形態では、各取り付け器のベース部材を取り付けるためのナット部材の藻礁へのインサートを陸上にて行う例を示したが、上記藻礁に海底の自然岩石を用いる場合には、これへのナット部材のインサートは潜水作業にて行う。
また、本発明における取り付け器具3にあっては、藻礁1に取り付けるベース部材9,16,16a,16bと、これに対して着脱可能にしたホルダ部材13,20,20a,20b,20cとからなり、上記ベース部材を藻礁1に取り付けた後に取り外すことはほとんど行われない。したがって、このベース部材の藻礁への取り付けは接着剤にて行ってもよいし、藻礁の作成時にコンクリート内に埋設してもよい。
藻礁に海藻種苗取り付け器具を取り付けた状態を示す斜視図である。 種苗チップを示す斜視図である。 種苗チップに海藻種苗を取り付けた状態を示す斜視図である。 図3のA−A矢視断面図である。 実施例1における海藻種苗取り付け器具のベース部材を示す平面図である。 図5のB−B矢視一部断面図である。 ホルダ部材を示す平面図である。 図7のC矢視図である。 図7のD−D矢視断面図である。 実施例1における海藻種苗取り付け器具を示す斜視図である。 実施例2における海藻種苗取り付け器具のベース部材を示す平面図である。 図11のE−E矢視一部断面図である。 ホルダ部材を示す平面図である。 図13のF−F矢視一部断面図である。 実施例2における海藻種苗取り付け器具を示す斜視図である。 実施例2の他例を示す斜視図である。 実施例2の他例を示す斜視図である。 実施例におけるホルダ部材の変形例を示す斜視図である。
符号の説明
1…藻礁、2…藻場造成面、3…海藻種苗取り付け器具、4…海藻種苗、5…種苗チップ、6…穴、7…溝、8…クレモナ撚り糸、9,16,16a,16b…ベース部材、10,18…ボルト座、11,19…ボルト孔、12…係合溝、13,20,20a,20b,20c…ホルダ部材、14,22,22a…種苗チップ取り付け溝、22b…溝部、15,24…溝、17…雄ねじ、21…雌ねじ、23…凸条、25…カムピン、26…カム溝、27…ピン穴、28…ピン、29…突起。

Claims (4)

  1. 上面に、この上面を横切る方向に、断面形状が上側の開放部の対向間隔を底部の対向間隔より狭くした形状で、かつ長手方向の一端から他端にわたって徐々に狭くなるテーパ状にした係合溝を設けた1個の種苗チップ取付用のベース部材を、海中に沈設した藻礁等にあらかじめ相互に離隔して多数固定しておき、
    断面形状を上記ベース部材の係合溝の断面形状と同じ形状にしてこの係合溝にくさび係合するようにした個々のホルダ部材に、海藻種苗を着床させた種苗チップを1個ずつ取り付け、
    この種苗チップを1個ずつ取り付けたホルダ部材を、上記海中にあるベース部材の係合溝に着脱可能に係合して個々に取り付けるようにした
    ことを特徴とする藻場造成方法。
  2. 海藻種苗を着生させた種苗チップと、この種苗チップを1個ずつ着脱可能に取り付けるようにしたホルダ部材と、このホルダ部材を1個ずつ着脱可能に取り付け可能にした1個の種苗チップ取付用のベース部材とからなり、このベース部材を藻礁や岩礁等に相互に離隔して着脱可能に多数取り付けるようにし
    ベース部材の上面に、これの上面を横切る方向に、断面形状が上側の開放部の対向間隔を底部の対向間隔より狭くした形状で、かつ長手方向の一端から他端にわたって徐々に狭くなるテーパ状にした係合溝を設け、種苗チップを1個ずつ取り付けたホルダ部材を、断面形状を上記ベース部材の係合溝の断面形状と同じ板状にしてこの係合溝にくさび係合するようにしたことを特徴とする海藻種苗取り付け器具。
  3. ホルダ部材のベース部材の係合溝への挿入方向の中間部に、上記挿入方向と直角方向に種苗チップを取り付ける種苗チップ取り付け溝を設け、この種苗チップ取り付け溝に取り付ける種苗チップの取り付け方向の長さをホルダ部材が係合するベース部材の係合溝の内側に対向する長さにしたことを特徴とする請求項記載の海藻種苗取り付け器具。
  4. 種苗チップを板状に形成し、この種苗チップに4個の穴を1列状に設けると共に、これの中央寄りの2個の穴間を種苗チップの表側面において溝でつなげ、
    海藻種苗を着生させた撚り糸の海藻種苗を着生させた部分を上記種苗チップの浅い溝内に入れ、撚り糸のこの部分から両側の部分を溝の両側端の穴から裏側へ通し、ついで両側端の穴から表側へ通して、上記撚り糸をこれの海藻種苗を着生させた部分を上記溝内に入れた状態で種苗チップに取り付けた
    ことを特徴とする請求項2,3いずれか1項記載の海藻種苗取り付け器具。
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