JP4246303B2 - 海藻種苗取付具 - Google Patents

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  • Cultivation Of Seaweed (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海藻類を中心とする藻場(海中林ともいう)を造成し、魚介類の繁殖をもたらすべく海中環境を改善するための技術に係り、立体的で永続性のある藻場の形成が可能な藻場造成技術に関する。より詳しくは、新設あるいは既設を問わず、コンクリートブロックなどの構造物から構成され、海藻の着生基体として機能し得る構造体(本明細書において造成用構造物という)に対して、海藻種苗を簡便に取着することができ、しかも生産性にも優れた海藻種苗取付具を開発し、この海藻種苗取付具を前記造成用構造物に取着してその海藻種苗を核として周囲に海藻を繁茂させることにより藻場を造成するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、我国においては沿岸漁業の振興が重要な課題であり、魚介類、海藻類の増殖および養殖が図られている。しかるに、沿岸部においては種々の原因によって藻場が消滅し、藻場を生活の場としている魚介類が激減する、いわゆる「磯焼け」と呼ばれる現象が各地に拡大している。
【0003】
一般に、海藻は比較的浅い海底の岩石表面に着生し、そこで繁殖する。ところが、磯焼け海域では近くに母藻が存在しないため胞子の供給源がないことや、岩石が石灰藻で覆われ、海藻が着生し難いこと等により生育環境がきわめて悪い。また、砂泥質の海域では海藻の生育は元々困難である。したがって、このような磯焼け海域での藻場の再生や砂泥海域での藻場造りにおいては、海藻の導入を図ることが重要である。
【0004】
従来、藻場の造成方法としては、海中に種々の工夫を施した培養体を設置し、その培養体に海藻が自然着生するのを待って造成する方法などが知られている(実公平3−56199号、実開平4−71448号)。しかしながら、これら従来方法は、自然着生に依存するため、特に重要な造成初期における海藻の着生状態が不確定な自然的要素によって大きく左右されるばかりか、造成に時間がかかるといった造成効率や確実性の点において根本的な問題があった。
【0005】
そこで、ワカメ養殖で用いられている種苗糸と呼ばれる細い撚糸に予め造成用海藻の幼体を着生させ、この種苗糸をコンクリートブロック等からなる造成用構造物の適宜位置にそのまま巻き付けて海中に沈設することにより、その海藻種苗を核として造成用構造物の表面に海藻を着生させようとする試みがなされている。しかしながら、この従来方法は、造成用構造物への前記種苗糸の取着作業がきわめて困難かつ不安定であり、特に海中に設置済みの造成用構造物に対して適用することはほとんど困難であった。また、取着後においても、造成用構造物に対する種苗糸の取着状態に少しでも問題があると、細い糸状で形状的に不安定であることから、その問題個所から取着状態の悪化が拡大して簡単に流出してしまうといった欠点があり、特に種苗糸自体の強度がほとんどないことから、海藻種苗がごく小さな幼体の状態で取着作業を行わなければならず、順調に着生しないことが多く、造成の成功率が低いものであった。このため、従来方法は、海藻種苗の導入方法としては、実用化が進んでいないのが実情である。
【0006】
そこで、本出願人は、合成樹脂等からリング状の担持用具を形成し、その担持用具に海藻種苗を担持させた状態で、造成用構造物の柱状部分に取着することにより海藻種苗を着生化させ、この着生した海藻種苗を核として藻場を造成することを提案している(特開平10−136813号公報参照)。この海藻種苗担持用具を用いた藻場造成では、造成用構造物に対する取着作業やその後の海藻種苗の生育の点において従来方法に比べて大幅に改善され、所期の目的を達成している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、大規模な藻場の造成を図ろうとする場合には、予め用意しなければならない海藻種苗も大量になることから、成熟した海藻の親株でこれを賄うことはきわめて難しく、現実的には成熟海藻(親株)に代えて養殖による葉状部の小さい未成熟海藻(幼体)を適用せざるを得ない。この場合、担持用具に海藻種苗を着生させるには、陸上において幼体前駆体が浮遊する水槽内に前記担持用具を浸漬して着生させた後、これを自然環境に適応させる目的で海中に移し、一定期間の養生・育成が必要である。この作業では、作業性やスペースの制約から担持用具を積み重ねるなどして連結状態で海中に吊り下げる場合がある。ところが、養生期間によっては隣接する担持用具間に海藻種苗の仮根が伸長して複雑に絡み合い、施工の際にそれら担持用具の分離がし難くなることがある。また、大量の担持用具を取り扱う場合に、これらを浸漬する水槽や養生のためのスペースの確保など、生産性の面で検討の余地が残されていた。
【0008】
本発明は、これら従来技術の問題点に鑑みなされたもので、海藻の着生基体として機能し得る藻場造成用構造物に対して、海藻種苗を簡便に取着することができ、しかも生産性にも優れた海藻種苗取付具を開発し、この海藻種苗取付具の使用により海中の有効利用につながる立体的な藻場の造成を図ることをその目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、造成用構造物に設けられた柱状部の外周に近い長さに形成され、当該柱状部の外周面に周設される基体の少なくとも一部に、予め海藻種苗を着生させ海中において適宜大きさになるまで育成した適宜長さの紐状体を付設してなる海藻種苗取付具であって、前記基体の柱状部との係合面に滑止め手段を設けたことを特徴とする。また、請求項2に係る発明は、造成用構造物に設けられた柱状部の外周に近い長さに形成され、当該柱状部の外周面に周設される基体の少なくとも一部に、予め海藻種苗を着生させ海中において適宜大きさになるまで育成した適宜長さの紐状体を付設してなる海藻種苗取付具であって、前記基体の紐状体との係合面に滑止め手段を設けたことを特徴とし、さらに請求項3に係る発明は、造成用構造物に設けられた柱状部の外周に近い長さに形成され、当該柱状部の外周面に周設される基体の少なくとも一部に、予め海藻種苗を着生させ海中において適宜大きさになるまで育成した適宜長さの紐状体を付設してなる海藻種苗取付具であって、前記基体が可撓性材料からなり、その長手方 向の一部に湾曲した膨出部を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、造成用構造物にある柱状部の外周面に周設される海藻種苗取付具の基体としては、合成樹脂等の可撓性材料を用いて一個所が開放している略環状に形成し、その開放端部間を広げることにより当該柱状部に対して横方向からの取着が可能であるものや、同様な素材を略帯状に形成し、その基体に海藻種苗が着生している紐状体を付設した状態で、柱状部への取付時にその周面に沿わせて環状に湾曲して取着するもの、あるいは無端状の環として形成され、柱状部に対してはその上端部から挿入するものなどである。なお、前者の略環状あるいは略帯状のような有端状基体では、素材自身が有する弾性あるいは端部に設けた掛止手段などにより、柱状部への取着後もその環状状態を保持し得るものであればよく合成樹脂、ゴム、金属などの可撓性素材から適宜長さ・形状に形成される。合成樹脂の具体例としては、ポリアミド系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。そして、それらの帯状あるいは棒状等の有端状基体の端部に、環状状態を保持するための連結手段を設けることにより、造成用構造物の柱状部に対する取付作業が容易になるとともに、より強固に環状状態で取着することができる。なお、素材自身が有する弾性復元力による保持力のみに依存してもよいが、例えば長手方向の一部を略U字状等に湾曲させて膨出することで、弾性復元力をより一段と増すようにしてもよい。また、基体端部の連結手段に長さ調整機能を付加することにより、造成用構造物の柱状部外径に対する適用範囲を大きくすることもできる。さらに、基体における柱状部との係合面もしくは後述する紐状体との係合面、あるいはその両方の面に、突起や粗面等の滑止め手段を設けると、造成用構造物に海藻種苗取付具を取着した後で位置ずれが生じにくくなることから、海藻種苗の仮根が順調に柱状部表面に付着してその定着を早期にかつ確実なものとする効果がある。
【0011】
また、上記基体に付設する海藻種苗を着生させた紐状体とは、一般にワカメ養殖などにおいて広く行われている方法を応用し、例えば海藻胞子が浮遊する水槽内にクレモナ(商品名)等の海藻胞子の付着に適した種苗糸等の付着基材を浸漬してこれに海藻胞子を付着させて発芽させた後、その付着基材をそのままロープやホースなどの適度な太さを有する紐状の担体(本発明ではホース等の中空状のものも紐状に含むものとする。)に螺旋巻きするなどして添着し、これを海中に水平に設置したり吊り下げるなどして、その担体に海藻幼体の仮根が付着して移植に耐えうる程度の適宜大きさになるまで育成したものである。なお、その大きさは、海藻の種類、施工時期、造成区域の環境により異なるが、一般的には葉状部の長さ10cm程度以上が望ましい。そして、前記基体への付設は、造成用構造物の柱状部と係合する面を除いた場所であればよく、例えば外周側に位置する面のほぼ全長に渡って沿わせたり、あるいは基体の所々に設けてもよく、長尺の紐状体の状態で海中にて育成したものを、必要な時に適宜長さに切断して使用する。このため、基本的には海藻種苗取付具の状態で養生する必要はないので、生産に必要なスペースが少なくて済む。なお、前記基体に対する固定手段は、例えば柱状部に取着したときに外側となる基体の面に複数の鉤状部を所定間隔で形成してその内部に嵌入したり、あるいは別途ファスナーを使用して基体と紐状体とを結束するようにしてもよい。ここで用いる海藻の種類としては、アラメ、カジメ、クロメ等のコンブ科海藻が好ましく、その中でもツルアラメが好適であるが、もちろんコンブ科海藻に限らず他の種類の海藻でも広く適用が可能である。
【0012】
また、海藻の着生床となる造成用構造物は、例えば適宜形状のコンクリート基盤にコンクリート柱を立設したもの、あるいは格子枠状に形成された並型漁礁、またテトラポッド(商品名)など、要は柱状部分を有する構造物であれば海藻種苗取付具の取着対象となる。それら造成用構造物の素材としては、コンクリートの他に金属、木材、合成樹脂等の使用が可能であり、また柱状部の断面形状は円形に限らず多角形としたり、その内部を中空状にしてもよい。なお、柱状部の断面形状を多角形とした場合には、前記海藻種苗取付具における基体も当然それに適合した形状となる。そして、これら造成用構造物に対する前記海藻種苗取付具の取着作業は、目的とする海域に造成用構造物を沈設した後に海中において行うか、あるいは予め台船上で取着するなど、その時期は特に限定されない。
【0013】
本発明に係る海藻種苗取付具を用いた藻場造成方法は、海藻種苗が着生した上記海藻種苗取付具を造成用構造物の柱状部外周の適宜位置に取着することにより、その海藻種苗を造成の核として周囲に海藻を繁茂させるもので、柱状部の存在により、海中林と称するにふさわしい立体的な藻場を高い成功率で造成が可能である。すなわち、造成用構造物の柱状部に適宜数の海藻種苗取付具を取着する形で海底に海藻種苗を導入することにより、海域の単位面積当りの海藻種苗の導入量を大きくすることができる。そして、海底に設置された柱状部の付近では海流が変化し、柱状部の下部から上方に向けての湧昇流が生じやすいことから、酸素や栄養分が万遍なく行き渡り、また海藻の水深に対する生育条件も充足しやすいため、造成の成功率がきわめて高い。さらに、海底の砂泥の堆積により柱状部下方の海藻が埋没しても上部に着生している海藻が残り、またウニ等の藻食性動物による食害も受けにくく、造成用構造物をコンクリート等の耐久性の高い素材で形成した場合には、造成の核となる海藻が世代交代をしながら長期にわたり残るので、永続性のある藻場を造成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。図1および図2は、本発明による海藻種苗取付具の一実施例において用いる基体10のそれぞれ平面図と正面図である。図示の基体10は適度な弾性を有する合成樹脂からなり、略環状に形成された帯状本体11の一端部に鉤状突起12が、また他端部には前記鉤状突起12を受け入れて環状に連結保持するための掛止孔13がそれぞれ設けられている。さらに、帯状本体11の外側面の5個所には後述する紐状体を掛止するための略L字状の受部14が突設され、この受部14の先端の内側には突起15が形成されるとともに、この突起15に対向するように帯状本体11の外周面にも軸心方向に突起16が設けられている。また、帯状本体11の中間部分の2個所に略U字状の膨出部17が外側に向けて突設され、帯状本体11の受部14の内面側には軸方向に向けて5個の突起18が形成されている。なお、実施例では帯状本体11の各端部近傍に一対の把手19が突設され、また帯状本体11の3個所に連結手段20が設けられている。この連結手段20は、運搬や一時保管の際に、嵩張らないように複数の海藻種苗取付具を積み重ねて連結するような場合に利用され、この連結手段20に設けられた貫通孔に適宜の線を通すことにより簡単に連結することができる。
【0015】
図3は本発明による海藻種苗取付具1の一実施例を示す平面図であって、上記基体10と紐状体30とから構成され、この紐状体30には幼体以上に成育した海藻種苗31が着生している。この紐状体30は、ワカメ養殖などにおいて広く行われているロープ養殖法を利用して得られるもので、まず海藻胞子が浮遊している陸上の水槽内において、繊維質で海藻胞子の付着に適した適宜な種苗糸等の付着基材を浸漬してこれに海藻胞子を付着させて発芽させた後、その付着基材をそのままロープやホースなどの適度な太さを有する紐状の担体に螺旋状に巻き付け(図示せず)、次にこれを海中に設置し、海藻幼体の仮根が担体にしっかりと定着して移植に耐えうる大きさになるまで育成したものである。そして、この紐状体30の前記基体10への付設は、帯状本体11の外側面に沿うようにして5個所の受部14に上から嵌入すると、受部14の先端内側に形成された突起15により抜け止めがなされ、それと同時に受部14に対向して設けられた突起16により径方向の移動が阻止されるようになっている。なお、紐状体30は必ずしも帯状本体11のほぼ全周に渡って設ける必要はなく、また受部14の幅よりも多少大きな長さに切断してそれぞれの受部14に嵌入したり、あるいはそのうちの幾つかに嵌入してもよい。
【0016】
次に、本発明による海藻種苗取付具1は、例えば図4のような形態で藻場造成用構造物2に取着され、これらの組合せにより藻場が造成される。ここで、藻場造成用構造物2は、コンクリート等から形成された基盤3に同様な素材からなる円形の柱体4を互いに所定の間隔をおいて複数本立設したものである。この基盤3の形状としては、矩形、十字形、三つ又状、六角形など適宜形状のものが選択される。また、柱体4は実施例のような円柱の他に多角柱でもよいが、その場合には海藻種苗取付具1における基体10の形状もそれに応じて多角形に形成されることは言うまでもない。因みに柱状部4の長さは4m前後が好適であるが、設置場所の水深、使用する海藻種苗の種類等によっては適宜変更する。さらに、実施例では基盤3の底面以外の面と柱状部4の表面には養藻塗料が塗布されている。養藻塗料としては、一般の化成肥料を含む塗料でもよいが、その中でも本出願人の提案になる光合成細菌、多孔質粒子を用いた担体および当該光合成細菌の栄養成分からなる水域環境改善用塗料(特開平5−247378号公報参照)が特に好適である。この塗料を塗布した場合には、海藻類の高い着生率を維持し、かつ海藻の生育に必要な栄養分を長期間にわたり安定的に供給することができるので、藻場造成の核となる海藻種苗を育成する上で好都合であるが、必ずしも塗布する必要はない。
【0017】
このような造成用構造物2に対して、海藻種苗取付具1は各柱状部4の所定の位置に取着される。その場合、海藻種苗取付具1の両端部を弾性に抗して拡げ、その間から柱状部4に嵌めてもよいし、柱状部4の上端部から外嵌してもよい。そして、柱状部4が内部を貫通した状態で基体10の両端に設けられた鉤状突起12と掛止孔13を、それらの近くに設けられた一対の把手19を用いて引き寄せながら掛合させる。これにより、有端状であった基体10を環状状態に保持することができる。このとき、基体10の中間部分の2個所に設けられた略U字状の膨出部17が適宜開くことから、柱状部4の外径に多少の変動があっても確実に適用することができ、しかも基体10自体の弾性復元力を補強する効果もある。なお、基体10を構成する素材の弾性が高ければ、このような膨出部17は不要であり、また環状状態を保持するための両端の掛止手段12,13も不要である。さらに、造成用構造物2にあっては、その柱状部4の外周面に環状溝を形成してこれに海藻種苗取付具1を受け入れるようにすれば、特に上下方向への位置ずれを防止する上で有効である。また、基体10の内周面に設けられた突起18は、海藻種苗取付具1の径方向の移動を阻止するもので、いずれも海藻種苗取付具1の取着状態を固定することにより、海藻種苗31の仮根が柱状部4の表面に確実かつ短期間に定着するのを助ける上で効果がある。
【0018】
このようにして造成区域に沈設された造成用構造物2では、紐状体30に着生している多数の海藻種苗31の仮根が伸長して柱状部4に定着し、そこで成長して成熟すると、胞子を放出して基盤3やその周囲に海藻が繁茂するようになる。この造成方法によれば、藻場造成の核となる海藻が、所定位置に設置された造成用構造物2のほぼ垂直方向に立設している柱状部4を着生床としていることから、湧昇流等の影響で良好に生育し、しかも造成用構造物2が永久構造物であるためそこで順調に世代交代が行われ、長期間に渡って存在し、周囲にたくさんの胞子を放散することになる。なお、造成用構造物2の周囲に岩礁等の着生床がない場所では、捨て石等をその周囲に布設するのが望ましく、大規模な藻場の造成を図る場合には、この造成用構造物2の多数を相互に適宜間隔で設置したり、あるいは複数の造成用構造物2を群としてまとめ、その複数群間に魚網の投入が可能な間隔をあけて設置するようにしてもよい。上記実施例では、造成用構造物2のすべての柱状部4に海藻種苗取付具1を取着した場合について説明しているが、特に短期間での藻場造成を求めない場合には、複数本の柱状部4のうちの少なくとも1本に付設し、そこから放出される胞子を介して周囲に海藻を繁茂させることも可能である。なお、海藻種苗取付具1の取着時期に関しては、造成用構造物2を沈設する前でも後でも構わない。さらに、海藻種苗取付具1は、1本の柱状部4に対して1個としてもよい。
【0019】
図5は、海藻種苗取付具の比較例である。この海藻種苗取付具5は、基体50として電線やケーブルなどの結束に広く使用されている合成樹脂製の結束バンドを利用したもので、前記紐状体30を基体50のベルト本体51に沿わせてその所々を別のファスナー52で一体に結束した構成になっている。この基体50は、ベルト本体51の一端側に掛止用ボックス53を有し、ベルト本体51の片面に鋸刃状突起(図示せず)が形成された他端部54をその内部に挿通すると、掛止用ボックス53内に設けられている爪片(図示せず)が前記鋸刃状突起と掛合することにより所定の位置で固定されるもので、海藻種苗取付具5を柱状部4に巻回し、他端部54を掛止用ボックス53に挿通してそのまま引っ張るだけで取着することができる。
【0020】
また図6は、海藻種苗取付具の他の実施例であり、この海藻種苗取付具6は基体60が円形状に完全に連続している点が前記第一実施例のものと異なる。この海藻種苗取付具6は、柱状部4に対してはその端部から挿入することになるが、開閉式でないため外れにくく装着しやすいという利点がある。
【0021】
なお、上記各実施例では、基盤3に立設した柱状部4からなる造成用構造物2を対象として説明したが、格子状の枠体からなるコンクリート製並型漁礁、テトラポッド、その他各種形状の構造物に適用することができ、また各海藻種苗取付具において、紐状体30の基体10,60に対する固定方法として他の手段を採用したり、その取着位置を変更するなど、この発明の技術思想内での種々の変更実施はもちろん可能である。
【0022】
【発明の効果】
本発明による海藻種苗取付具は、ロープ養殖等の方法により育成された海藻種苗を基体に付設し、この基体を介して造成用構造物に取着するものであるから、大規模な藻場の造成に際して海藻種苗が大量に必要な場合でも、陸上および海中における生産用のスペースが少なくて済み、効率よく生産することができる。また、可撓性材料からなる基体の長手方向の一部を略U字状等に湾曲させて膨出した場合には、海藻の着生として機能し得る造成用構造物に対して、基体が有する弾性復元力により海藻種苗を簡便に取着することができる。さらに、基体における柱状部との係合面もしくは後述する紐状体との係合面、あるいはその両方の面に、突起や粗面等の滑止め手段を設けた場合には、造成用構造物に海藻種苗取付具を取着した後で位置ずれが生じにくくなることから、海藻種苗の仮根が順調に柱状部表面に付着してその定着を早期にかつ確実なものとする効果がある。このため、この海藻種苗取付具の使用により海中の有効利用につながる立体的な藻場を高い成功率で造成することができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による海藻種苗取付具における基体の一例を示す平面図である。
【図2】 図1に示す基体の正面図である。
【図3】 海藻種苗取付具の一実施例を示す平面図である。
【図4】 図3に示す海藻種苗取付具の使用状態を示す概略説明図である。
【図5】 海藻種苗取付具の比較例を示す斜視図である。
【図6】 海藻種苗取付具の他の実施例を示す平面図ある。
【符号の説明】
1,5,6…海藻種苗取付具、2…造成用構造物、3…基盤、
4…柱状部、30…紐状体、31…海藻種苗

Claims (3)

  1. 造成用構造物に設けられた柱状部の外周に近い長さに形成され、当該柱状部の外周面に周設される基体の少なくとも一部に、予め海藻種苗を着生させ海中において適宜大きさになるまで育成した適宜長さの紐状体を付設してなる海藻種苗取付具であって、前記基体の柱状部との係合面に滑止め手段を設けたことを特徴とする海藻種苗取付具。
  2. 造成用構造物に設けられた柱状部の外周に近い長さに形成され、当該柱状部の外周面に周設される基体の少なくとも一部に、予め海藻種苗を着生させ海中において適宜大きさになるまで育成した適宜長さの紐状体を付設してなる海藻種苗取付具であって、前記基体の紐状体との係合面に滑止め手段を設けたことを特徴とする海藻種苗取付具。
  3. 造成用構造物に設けられた柱状部の外周に近い長さに形成され、当該柱状部の外周面に周設される基体の少なくとも一部に、予め海藻種苗を着生させ海中において適宜大きさになるまで育成した適宜長さの紐状体を付設してなる海藻種苗取付具であって、前記基体が可撓性材料からなり、その長手方向の一部に湾曲した膨出部を設けたことを特徴とする海藻種苗取付具。
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