以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
本発明に係る力覚センサは、センサ装置として、その構成を大きく捉えると、外側から与えられる外力(または軸力、荷重)に感応して当該外力を検出するセンサ部分すなわち力覚センサ用チップ(または力覚センサチップ)と、力覚センサに印加させる外力を所定分だけ減衰させて当該力覚センサ用チップに伝達する減衰機構部(または緩衝機構部)を含む緩衝装置と、から構成されている。以下の各実施形態の説明では、外観から見た形状に基づいて、力覚センサ(または緩衝装置を備えた力覚センサ)を分類している。力覚センサの形状は、装備された緩衝装置によって決まる。
第1実施形態に係る力覚センサは「立方体形状」の外観を有し、第2実施形態に係る力覚センサは「円筒形状」の外観を有し、第3実施形態に係る力覚センサは「円盤形状」の外観を有し、第4実施形態に係る力覚センサは「棒形状」の外観を有している。
各実施形態で使用されている力覚センサ用チップは同じものである。この力覚センサ用チップは半導体基板を利用して製作され、6軸力センサとして機能するものである。6軸力センサは、直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)の各々についての力とモーメントを検出するセンサ機能を有している。
さらに以下の第1〜第4の実施形態の説明では、それぞれ、単純な形状・構造によるものと、その変形例としての実際的な形状・構造によるものとが説明される。
図1〜図9を参照して本発明に係る力覚センサの第1実施形態を説明する。この実施形態に係る力覚センサは「立方体形状」を有している。
図1と図2を参照して第1実施形態に係る単純な形状・構造を有する力覚センサを説明する。図1は力覚センサ100の外観の斜視図を示し、図2は力覚センサ100の内部の構造を示す断面斜視図を示す。
力覚センサ100の要部構成は、力覚センサ用チップ11と緩衝装置12とから構成されている。力覚センサ用チップ11の構成の一例は図3と図4に示される。力覚センサ100の構成を説明する前に、図3と図4を参照して力覚センサ用チップ11の構成の一例を説明する。この力覚センサ用チップ11は、歪み抵抗素子を利用して外力を検出するように構成されている。
図3は力覚センサ用チップ11の斜視図を示し、図4は力覚センサ用チップ11の平面図を示す。力覚センサ用チップ11は、半導体基板を利用し、半導体製造プロセス技術を適用して形成される半導体センサ素子である。力覚センサ用チップ11の平面形状は好ましくは正方形であり、平板状の形態を有している。力覚センサ用チップ11の平面形状を示した図3において、力覚センサ用チップ11は、中央部に位置するほぼ正方形の形状をした作用部21と、この作用部21を囲むような周囲位置にある正方形リング形状の支持部22と、作用部21と支持部22の間に位置して四辺の各部分に対応して両者を連結するT字形状の4つの連結部23A,23B,23C,23Dとから構成されている。4つの連結部23A〜23Dの各々は、T字梁となっており、橋梁部と弾性部を有する。T字形状の4つの連結部23A〜23Dの各々は、作用部21に接続される境界部における、好ましくは、一方の面(表面24)に3つの歪み抵抗素子(Sxa1,Sxa2,Sxa3),(Sxb1,Sxb2,Sxb3),(Sya1,Sya2,Sya3),(Syb1,Syb2,Syb3)が配置されている。
作用部21、支持部22、連結部23A〜23Dは、図3に示すごとく、力覚センサ用チップ11に設けられた8つの貫通孔25a〜25hによって形成されている。貫通孔25a〜25hは、作用部21に与えられた外力に応じた連結部23A〜23Dの変形および作用部21の変位を生じさせ、力検出が高精度にできるように、その形成位置および形状が調整されている。
図3と図4では、力覚センサ用チップ11に対して、図示される通り、直交されるX軸、Y軸、Z軸が定義されている。図3では力覚センサ用チップ11における上、下、右、左が便宜的に定められている。図4では横軸がX軸、縦軸がY軸として示されている。さらに図3では、各軸に係る力およびモーメントが矢印と符号で示されている。直交座標系の3軸(X軸、Y軸、Z軸)に関して、X軸方向の力をFxとし、Y軸方向の力をFyとし、Z軸方向の力をFzとし、またX軸に対して回転方向に与えられるモーメントをMxとし、Y軸に対して回転方向に与えられるモーメントをMyとし、Z軸に対して回転方向に与えられるモーメントをMzとする。
上記の6軸成分(軸力)、すなわちFx[N],Fy[N],Fz[N],Mx[N・cm],My[N・cm],Mz[N・cm]が、支持部22が固定された力覚センサ用チップ11の作用部21に直接印加させると、その印加力に応じて連結部23A〜23Dの変形が生じる。この連結部23A〜23Dの変形に従って、歪み抵抗素子(Sxa1,Sxa2,Sxa3),(Sxb1,Sxb2,Sxb3),(Sya1,Sya2,Sya3),(Syb1,Syb2,Syb3)が歪みので、歪み抵抗素子(Sxa1,Sxa2,Sxa3),(Sxb1,Sxb2,Sxb3),(Sya1,Sya2,Sya3),(Syb1,Syb2,Syb3)からの信号を解析することで6軸力の大きさと方向が検知できる。
なお、実際の力覚センサ用チップ11では、チップ周縁部に複数の電極と、当該電極と各歪み抵抗素子とを接続する配線が設けられているが、これらは本発明の要部ではないので、図3および図4ではその図示は省略している。
図5を参照して6軸力の大きさと方向の検知方法の一例を概説する。なお、説明の便宜上、図5に示す各変形パターン31は、その変形状態を誇張して示している。前述のごとく6つの軸力のいずれかまたは組み合せたものは力覚センサ用チップ11におけるチップ中央部の作用部21に印加される。軸力が印加された作用部21は、チップ周囲部の支持部22および連結部23A,23B,23C,23Dによって支持されながら、その位置を変化する。その結果、作用部21と支持部22を連結する連結部23A,23B,23C,23Dで、印加された軸力に応じた固有の変形が生じる。連結部23A,23B,23C,23Dで変形が生じると、その変形の仕方に応じて特有の検知信号が出力されることになる。
図5では、作用部21に対する印加軸力が例えばFx,Fz,My,Mzであるとき(図5の(1))、力覚センサ用チップ11の変形パターン(図5の(2))とその印加軸力に特徴的な検知信号(図5の(3))を示している。力覚センサ用チップ11の変形パターンは、平面形状での変形パターン31と縦断面形状での変形パターン32とが示されている。また検知信号は抵抗値増減の演算式で表現されている。なおここで、抵抗値増減の演算式で用いられている各抵抗変化量R11,R12,R13,R21,R22,R23,R31,R32,R33,R41,R42,R43は、前述した12個の歪み抵抗素子(Sxa1,Sxa2,Sxa3),(Sxb1,Sxb2,Sxb3),(Sya1,Sya2,Sya3),(Syb1,Syb2,Syb3)に関して、それぞれ、(R11,R12,R13),(R31,R32,R33),(R21,R22,R23),(R41,R42,R43)としている。
図5に示されるごとく、軸力Fxが印加されるときには矢印33のごとく力が加わり、顕著な出力信号として((R21−R23)+(R43−R41))/4の演算式で決まる検知信号が得られる。軸力Fzが印加されるときには矢印34のごとく力が加わり、顕著な出力信号として−(R12+R22+R32+R42)/4の演算式で決まる検知信号が得られる。軸力Myが印加されるときには矢印35のごとく力が加わり、顕著な出力信号として(R12−R32)/2の演算式で決まる検知信号が得られる。軸力Mzが印加されるときには矢印36のごとく力が加わり、顕著な出力信号として((R13−R11)+(R23−R21)+(R33−R31)+(R43−R41))/8の演算式で決まる検知信号が得られる。これらの信号を適切に演算して(周知の行列演算など)、力覚船さ100に印加される軸力を知ることができる。
力センサ用チップ11内にブリッジ回路を形成して、ノイズ除去済みの検出信号が力覚センサ100から出力されるようにしてもよい。さらに、力覚センサ100の外部に、図示しない外部測定機器を接続し、歪み抵抗素子(Sxa1,Sxa2,Sxa3)からの出力信号を当該外部測定機器によって処理することで、6軸力をより詳細に検出し、その大きさおよび方向等を例えばモニタで確認できるようなシステムとしてもよい。本発明における力覚センサチップ11の配線部や動作の詳細は、例えば特開2003−254843号公報と同一のものが適用可能である。
なお図3〜図5では、力覚センサ用チップ11の各連結部23A〜23D上にそれぞれ3つの歪み抵抗素子が設けられた例を示したが、各連結部23A〜23D上にそれぞれ2つずつの歪み抵抗素子が設けられた力覚センサ用チップ11としてもよい。この場合、図5の(3)の各印加力に対して顕著に出力される信号は、Fz,Mzに対して、それぞれ、−(R11+R13+R21+R23+R31+R33+R41+R43)/8,((R11+R13)−(R31+R33))/4となる。そして、FxおよびMzに関する信号については、図5に示すものと同一でなる。
次に、再び図1および図2に戻り、これらの図に基づき力覚センサ100の構成を説明する。力覚センサ100は、前述した通り、上記の力覚センサ用チップ11と、緩衝装置12とによって構成される。緩衝装置12は、外部から与えられる外力F1が直接に印加される入力部101と、力覚センサ100を所要の場所に固定すると共に力覚センサ用チップ11を取り付けるためのセンサ固定部102と、減衰機能または緩衝機能を有する例えば4本の柱状部材で構成される減衰機構部104と、伝達部105とから構成されている。なおセンサ固定部102において、力覚センサ用チップ11はチップ台座103の上に取り付けられている。チップ台座103はセンサ固定部102の一部として作ることができるし、センサ固定部102とは別の部材として作ることもできる。
前述した力覚センサ用チップ11の支持部22は環状のチップ台座103に固定されている。チップ台座103はセンサ固定部102上に固定される。センサ固定部102は、その上面にチップ台座103が固定される円筒部102bと、この円筒部102bを有する支持板部102aとから構成される。入力部101は、センサ固定部102の支持板部102aと略同形の矩形状の上記板部101aを有する。入力部101の板部101aとセンサ固定部102の支持板部102aとは実質的に平行に配置されている。入力部101の板部101aとセンサ固定部102の支持板部102aとの間には、それぞれの対応する4つの角部分を利用して上記減衰機構部104が配置され、入力部101とセンサ固定部102の両者を連結している。また入力部101の板部101aの内側中心部と、センサ固定部102に固定された力覚センサ用チップ11の作用部21の中心部とは、棒状の上記伝達部105で結合されている。
ここで、入力部101、センサ固定部102、チップ台座103、伝達部105、および力覚センサ用チップ11の中心は、略一致している。これによって外力F1の印加方向と力検出の対称性が容易に確保し易くなっている。
板部101a,102aの中央部には、それぞれ保持部101b,102cが設けられている。これによって力覚センサ100の取付けおよび保持が容易になる。また保持部101bを伝達部105の真上に設けることで、センサ検出値の対称性が維持され、余計な変動を防止している。円筒部102bおよびチップ台座103を円筒形状にすることで旋盤加工が可能になると同時に、板部102上に面積を有効に活用することを実現している。すなわち、小さな平面積の板部101a,102aであってもその四隅に減衰機構部104を配置しつつ、チップ台座103も中央部に組み込むことができる。また図1のような構造にすることで、力覚センサ用チップ11の四辺にある図示しない電極にフレキシブルケーブルを接続することが容易になる。さらに、この力覚センサ100では、歪み抵抗素子が設けられたチップ面と同一面に対して伝達部105が当接しているので、作用部21に比較的小さな力が印加してもセンサ検出を行い易いという特徴を有している。
上記の構成において、4本の柱で形成される減衰機構部104は、入力部101に加わった外力F1が弱められかつチップ許容範囲内の力・モーメントで力覚センサ用チップ11の作用部21に印加されるように、当該外力F1を減衰させる。すなわち、外力F1が力覚センサ100の入力部101に印加されると、その大部分(例えば外力F1の90%)が減衰機構部104を介してセンサ固定部102の側に伝わり、その一部(例えば外力F1の10%)が伝達部105を介して力覚センサ用チップ11の作用部21に印加される。力覚センサ用チップ11への力伝達率は、減衰機構部104を含む緩衝装置12を構成する各部の形状、サイズ、素材など適宜調整することで決定される。力覚センサ用チップ11や緩衝装置12の耐荷重や剛性などを考慮して、破壊や永久変形なく力覚センサ100が高精度に外力F1を検知することができるように設計することが望ましい。
次に、上記の力覚センサ100の各部の材料・材質について説明する。
力覚センサ100の入力部101、センサ固定部102、チップ台座103、減衰機構部104、伝達部105は、一般的には、金属(アルミニウム、炭素鋼、ステンレス等)、プラスチック、セラミックス、ガラス等の固体材料で形成される。
上記において、2種以上の金属を使用しても良いが、製造工程やコストを考慮すると、1種類の金属を使用して入力部やセンサ固定部等のセンサ筐体を形成し、さらに形状、サイズ、スリット(穴)の形成の仕方等で変形作用を調整する方がより現実的である。またセラミックスやガラスを材料として使用する場合については、熱膨張を抑えることができるので、望ましい材料選択肢の1つである。
またチップ台座103については、特に、力覚センサ100としてのセンサ精度を高く維持する観点では、絶縁性が有することが望ましく、さらに力覚センサ用チップ11と熱膨張係数が近い材料が望ましい。仮に熱膨張係数が近くないとすると、外部の温度変化によって力覚センサ用チップ11が延伸することがある。これは、力覚センサ100による検出での誤差(温度ドリフト)を生じさせる。力覚センサ100から検出信号を取り出すためには、通常、バイアス電圧をかけてノイズの影響をなくすようにする。しかし、当該バイアス電圧が他の部分に印加されないようにするためには、チップ台座103は絶縁性を有することが望ましい。この観点からも、セラミックスやガラスは好適である。
さらにチップ台座103は、センサ固定部102の円筒部102bおよび力覚センサ用チップ11に陽極接合により結合させるため、特にガラスを選択することが望ましい。なお陽極接合の代わりに、従来のようにエポキシ樹脂系などの接着剤を使用することもできる。なおセンサの使用態様によっては、耐熱性に優れたフェノール系の接着剤を使用してもよい。
入力部101、センサ固定部102、およびこれらの要素である板部101aや支持板部102a、伝達部105は、入力される外力F1による変形が少ないことが望まれる。これらの要素は、金属等の剛体材料で形成される。さらに力覚センサ用チップ11と熱膨張係数が近い方が、用途によってセンサ検出精度の上で有利であるので、インバー、エリンバー等の熱膨張係数の低い低熱膨張合金等を使用することが望ましい。
柱状部材で構成される減衰機構部104は、入力部101に入力される外力F1によって適度の変形を生じることで、その変形量に応じて力覚センサ用チップ11が変形することにより外力F1の検出を行うことができるので、適度の剛性が必要である。また減衰機構部は、力覚センサ用チップ11と熱膨張係数が近い方が、用途によっては、センサ精度上有利であるので、インバー、エリンバ−等の熱膨張係数の低い低熱膨張合金等を使用することが望ましい。
上記の減衰機構部104については、その形状やサイズ等によって剛性の程度を調整しているが、入力部101等より剛性の低い異なる材料で構成して減衰機能を実現してもよい。
さらにより好ましくは、一般的に、減衰機構部は、その他のセンサ筐体部分(入力部101とセンサ固定部102)に比較して、大きく変形するように、剛性の低い材料または変形度合いが大きい構造物で形成される。材料として入力部101等と同じ剛性の材料で作られる場合には、その形状や構造を変化させることによって変形度合いが入力部101等よりも大きくなるように調整される。減衰機構部に関するこれらの実施の具体的な形態は各実施形態で説明される。
以上に説明した力覚センサにおける入力部、センサ固定部、チップ台座、減衰機構部、伝達部の材料・材質は、以下で説明される各実施形態の力覚センサの各部についても同様である。
図6に、力覚センサ100に対して例えば軸力Fx,Fz,My,Mzが印加したときの力覚センサ100の全体形状の変形例を示す。図6で、(A)は軸力Fxが印加されたときの変形状態を示し、(B)は軸力Fzが印加されたときの変形状態を示し、(C)は軸力Myが印加されたときの変形状態を示し、(D)は軸力Mzが印加されたときの変形状態を示している。変形状態(A)〜(D)のそれぞれで各軸力に応じて減衰機構部104が変形を生じ、減衰機構部104は、入力部101に印加された軸力の大部分(例えば90%)を吸収している。なお、説明の便宜上、図6に示す各変形パターンの変形状態を誇張して示している。
次に、図7と図8を参照して第1実施形態に係る力覚センサの変形例を説明する。この力覚センサ110は、使用態様によっては力覚センサ100よりもより実用的であるといえる。図1と図2で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。力覚センサ110において、緩衝装置12は、4つの減衰機構部111で構成される。4つの減衰機構部111は、入力部101の矩形形状の板部101aと、センサ固定部102の矩形形状の支持板部102aの4辺の各々に対応して配置され、入力部101とセンサ固定部102とを結合している。減衰機構部111はほぼ逆Y字型の形状または構造を有し、下側は二股形状を有している。入力部101の板部101aは減衰機構部111の上側の1つの端部と結合され、センサ固定部102の支持板部102aは減衰機構部111の下側の2つの端部と結合されている。その他の構成は力覚センサ100と同じである。
図9に、力覚センサ110に対して例えば軸力Fx,Fz,My,Mzが印加したときの力覚センサ110の全体形状の変形例を示す。図9で、(A)は軸力Fxが印加されたときの変形状態を示し、(B)は軸力Fzが印加されたときの変形状態を示し、(C)は軸力Myが印加されたときの変形状態を示し、(D)は軸力Mzが印加されたときの変形状態を示している。変形状態(A)〜(D)のそれぞれで各軸力に応じて減衰機構部111が変形を生じ、減衰機構部111は、入力部101に印加された軸力の大部分(例えば90%)を吸収している。なお、説明の便宜上、図9に示す各変形パターンの変形状態を誇張して示している。
第1実施形態の変形例に係る力覚センサ110によれば、減衰機構部111の逆Y字型部の大きさ、形状(太さや長さ等)などを任意に調整することによって外力F1に対する減衰機構部111の外力減衰機能を自由に調整することができる。より具体的には、例えば図7における減衰機構111の厚みや寸法L1〜L6等を適宜に調整することで、より高精度でバランスの取れた力検出が可能である。すなわち、上記力覚センサ110によれば、外力減衰機能の調整が図1で説明した力覚センサ100よりも容易であり、耐荷重の調整や各軸力に対する感度の調整などの力覚センサの設計の自由度がより高いという利点を有している。なおY字型の減衰機構部111を上下逆にして板部101a,102a間に設けてもよい。なお、力覚センサ100,110は、正方形の上面を有する板部101a,102aを備えた例を説明したが、円または正三角形など他の上面形状を有する板部101a,102aを備えたものであってもよい。
次に図10〜図15を参照して本発明の力覚センサの第2実施形態を説明する。この実施形態に係る力覚センサは「円筒形状」を有している。
図10と図11を参照して第2実施形態に係る単純な形状・構造を有する力覚センサ200を説明する。図10は力覚センサ200の外観の斜視図を示し、図11は力覚センサ200の内部の構造を示す断面斜視図を示す。図10と図11において、上記第1実施形態で説明された要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
力覚センサ200の要部構成は、力覚センサ用チップ11と緩衝装置12とから構成されている。力覚センサ用チップ11は第1実施形態で説明した通りである。力覚センサ200は、より詳しくは、外部から与えられる外力(軸力または荷重)F1が直接に印加される入力部201と、力覚センサ200を所要の場所に固定するためのセンサ固定部202と、上記力覚センサ用チップ11を取り付けるためのチップ台座103と、減衰または緩衝の機能を有する円筒部203と、入力部201と力覚センサ用チップ11の作用部21とを結合する伝達部105とから構成されている。円筒部203が前述の緩衝装置12の減衰機構部を形成する。
入力部201とセンサ固定部202はセンサ筐体を形成する。入力部201はセンサ筐体としての円形形状の板部201aを有する。センサ固定部202は、センサ筐体としての円形形状の支持板部202aと、上面にチップ台座103が固定される円筒部202bとから構成される。板部201aおよび支持板部202aの各直径と、円筒部203の外径は略等しくなるように設計されている。板部201aと支持板部202aとは平行に配置され、それらの間に両者を結合するように円筒部203が配置される。力覚センサ200は全体形状として円筒形に形成されている。ただし、板部201aと支持板部202aの直径を異ならせて、円錐形状の緩衝装置12を有する力覚センサ200としてもよい。
円筒部203は、入力部201に印加された外力F1を減衰させて力覚センサ用チップ11に与える緩衝装置12の減衰機構部としての機能を有する。
図12に、力覚センサ200に対して例えば軸力Fx,Fz,My,Mzが印加したときの力覚センサ200の全体形状の変形例を示す。図12で、(A)は軸力Fxが印加されたときの変形状態を示し、(B)は軸力Fzが印加されたときの変形状態を示し、(C)は軸力Myが印加されたときの変形状態を示し、(D)は軸力Mzが印加されたときの変形状態を示している。変形状態(A)〜(D)のそれぞれで各軸力に応じて減衰機構部である円筒部203が変形を生じ、円筒部203は、入力部201に印加された軸力の大部分(例えば90%)を吸収している。なお説明の便宜上、図12に示す各変形パターンの変形状態を誇張して示している。
力覚センサ200は、全体形状が円筒形であるので、第1実施形態の力覚センサと比較すると、四隅の角部がなく、そのため空間的に適用自由度が高いというという利点を有している。例えば力覚センサ200は、産業用ロボットのアーム部のような円筒形状を有する部分の内部に設けて使用するには好適である。
また力覚センサ200によれば、センサ部品の機械加工を考えると、上下のセンサ筐体部分(入力部201とセンサ固定部202と円筒部203)が円筒形であるので、当該センサ筐体部分に対する旋盤加工がなじみ易い。そのため、製造が容易となり、かつ高い加工精度を得ることができるという利点を有する。さらに第1実施形態に係る立体型形状の上記力覚センサ100,110に比較すると、減衰機構部(円筒部203)とセンサ入力部201、または円筒部203とセンサ固定部202とを一部品にし易く、製作コストを低減することができる。
次に、図13と図14を参照して第2実施形態に係る力覚センサの変形例を説明する。この力覚センサ210は実際的な形状・構造を有する。図10と図11で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。力覚センサ210において、減衰機構部である円筒部211には、全体形状は上記の円筒部203と同じであり、さらに円周方向に複数の穴212を形成するように穴加工が施されている。穴212は長穴として形成されている。穴212の個数、形状および位置は任意であるが、円筒部211の変形の対称性を考慮すると、穴212も予め力覚センサ210の軸に対称に設けておくことが現実的である。その他の構成については、図10と図11を参照して説明した力覚センサ200と同じである。
図15に、力覚センサ210に対して例えば軸力Fx,Fz,My,Mzが印加したときの力覚センサ210の全体形状の変形例を示す。図15で、(A)は軸力Fxが印加されたときの変形状態を示し、(B)は軸力Fzが印加されたときの変形状態を示し、(C)は軸力Myが印加されたときの変形状態を示し、(D)は軸力Mzが印加されたときの変形状態を示している。変形状態(A)〜(D)のそれぞれで各軸力に応じて減衰機構部である円筒部211が変形を生じ、円筒部211は、入力部201に印加された軸力の大部分(例えば90%)を吸収している。なお説明の便宜上、図15に示す各変形パターンの変形状態を誇張して示している。
第2実施形態の変形例に係る力覚センサ210によれば、減衰機構部を形成する円筒部211に複数の穴212を設けることによって梁構造を形成している。穴212の大きさ、形状、個数、位置等を適宜に調整することにより、円筒部211の外力減衰機能を適宜調整することができる。上記力覚センサ210によれば、外力減衰機能の調整が図7等で説明した力覚センサ200よりも容易であり、耐荷重の調整や各軸力に対する感度の調整などの力覚センサの設計の自由度がより高いという利点を有している。
なお、力覚センサ200,210は、円形の上面を有する板部201a,202aを備えた例を説明したが、正方形または正三角形など他の上面形状を有する板部201a,202aを備えたものであってもよい。
ここで、力覚センサ200,210は円筒部203,211が全周囲を囲った構造であるので、力覚センサ100,110に比して力覚センサ用チップ11に対する密閉性が高く、力覚センサの使用状況によっては、防塵・遮光などの観点から、より望ましい構造であると言える。また、力覚センサ200,210は円筒部203,211が力覚センサ用チップ11の中心から中心軸対称に全周囲を囲った構造であるので、4つの伝達部105または減衰機構部111で入力部101およびセンサ固定部102を連結する力覚センサ100,110に比して外力F1に対する変形対称性が優れていると言える。
次に図16〜図21を参照して本発明の力覚センサの第3実施形態を説明する。この実施形態に係る力覚センサは「円盤形状」を有している。
図16と図17を参照して第3実施形態に係る単純な形状・構造を有する力覚センサを説明する。図16は力覚センサの外観の斜視図を示し、図17は力覚センサの内部の構造を示す断面斜視図を示す。図16と図17において、上記第1実施形態等で説明された要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態に係る力覚センサ300の要部は、力覚センサ用チップ11と緩衝装置12とから構成されている。力覚センサ用チップ11は第1実施形態で説明した通りである。力覚センサ300は、詳しくは、外部から与えられる外力(軸力または荷重)F1が直接に印加される円柱棒状の入力部301と、力覚センサ300を所要の場所に固定するための軸方向の長さが短い比較的扁平な円筒形状(またはリング形状)のセンサ固定部302と、上記力覚センサ用チップ11を取り付けるための円板形状のチップ台座303と、減衰または緩衝の機能を有する円板304と、入力部301と力覚センサ用チップ11の作用部21とを結合する伝達部105とから構成されている。上記円板304が前述の緩衝装置12の減衰機構部を形成する。
円板304と円板形状のチップ台座303とは、比較的に接近した位置にて、平行に配置されている。円板304とチップ台座303は共に中心部に穴が形成されている。図12に示すごとく、入力部301、センサ固定部302および円板304は組み合わされている。これらは一体化部分として製造してもよい。また円形形状のチップ台座303の中心部の穴の部分には、チップ台座303の下側(外側)の位置に力覚センサ用チップ11が固定されている。棒状の伝達部105は、チップ台座303の穴を通して配置され、入力部301の下面と力覚センサ用チップ11の作用部21とを連結している。
前述の第1実施形態と第2実施形態の力覚センサではチップ台座と外力の伝達部とが力覚センサ用チップ11に対して異なる側(表と裏)に接していたのに対して、上記構造を有する本実施形態の力覚センサ300では、チップ台座303と伝達部105とが力覚センサ用チップ11に対して同じ側で接している。また図16および図17に示す減衰装置12のようなレイアウトを採用することで、減衰装置12の全構成部が力覚センサ用チップ11に対して同一側に存在することになり(図17では力覚センサ用チップ11の上側)、入力部301、円板304、センサ固定部302、伝達部105、およびチップ台座303の少なくとも2つ以上を一体的に形成してから後付けで力覚センサ用チップ11を接着することが可能となり、製造工程の簡略化に貢献する。入力部301から円板304に到る部分の一部または全部を一体形成することは、接着剤の使用量の低減にもつながる。
また、力覚センサ300は上下方向の薄型化を実現している。これは、力覚センサ100(図2),200(図11)と比較すると顕著である。力覚センサ300では、薄型化を図るために、伝達部105、減衰機構部304、およびチップ台座303を力覚センサ用チップ11の同一面側に配置し、さらにセンサ固定部302の内周側に減衰機構部304を設け、チップ台座303の内周側に伝達部105を設けている。
減衰機構部である円板304は、円筒形状またはリング形状のセンサ固定部302に対してその内面部分に固定される。またチップ台座303はセンサ固定部302の下縁部に固定されている。減衰機構部として作用する円板304は、センサ固定部302とチップ台座303に対して、その剛性が低くなるように設定されている。従って入力部301に外力F1が印加されると、外力F1によって円板304が変形し、当該外力F1を減衰させて弱くし、力覚センサ用チップ11の作用部21に伝達する。こうして減衰機構部である円板304は、入力部301に印加された外力F1を減衰させて力覚センサ用チップ11に与える緩衝装置12の機能を実現する。
図18に、力覚センサ300に対して例えば軸力Fx,Fz,My,Mzが印加したときの力覚センサ300の全体形状の変形例を示す。図18で、(A)は軸力Fxが印加されたときの変形状態を示し、(B)は軸力Fzが印加されたときの変形状態を示し、(C)は軸力Myが印加されたときの変形状態を示し、(D)は軸力Mzが印加されたときの変形状態を示している。変形状態(A)〜(D)のそれぞれで各軸力に応じて減衰機構部である円板304が変形を生じ、円板304は、入力部301に印加された軸力の大部分(例えば90%)を吸収している。なお説明の便宜上、図18に示す各変形パターンの変形状態を誇張して示している。
次に、図19と図20を参照して第3実施形態に係る力覚センサの変形例を説明する。この力覚センサ310は実際的な形状・構造を有する。図16と図17で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。力覚センサ310において、緩衝装置12の減衰機構部として機能する円板311は、全体形状および配置位置は上記の円板304と同じである。しかし、この円板311はより大きな厚みを有すると共に複数の穴312を形成するように穴加工が施されている。穴312の個数は任意である。その他の構成については、図16と図17を参照して説明した力覚センサ300と同じである。
第3実施形態の変形例に係る力覚センサ310によれば、減衰機構部を形成する円板311に複数の穴312を設けることによって梁構造を形成している。穴312の大きさ、形状、個数、位置等を適宜に調整することにより、円板311の外力減衰機能を自由に調整することができる。上記力覚センサ310によれば、外力減衰機能の調整が図16等で説明した力覚センサ300よりも容易であり、耐荷重の調整や各軸力に対する感度の調整などの力覚センサの設計の自由度がより高いという利点を有している。
穴312の個数、形状および位置は任意であるが、円板311の変形の対称性を考慮すると、穴312も予め力覚センサ310の軸に対称に設けておくのが現実的である。
なお力覚センサ300,310は、円形の上面を有するセンサ固定部302、円板304、311等を備えた例を説明したが、正方形または正三角形など他の上面形状を有するセンサ固定部302、円板304,311等を備えたものであってもよい。
図21に、力覚センサ310に対して例えば軸力Fx,Fz,My,Mzが印加したときの力覚センサ310の全体形状の変形例を示す。図21で、(A)は軸力Fxが印加されたときの変形状態を示し、(B)は軸力Fzが印加されたときの変形状態を示し、(C)は軸力Myが印加されたときの変形状態を示し、(D)は軸力Mzが印加されたときの変形状態を示している。変形状態(A)〜(D)のそれぞれで各軸力に応じて減衰機構部である円板311が変形を生じ、円板311は、入力部301に印加された軸力の大部分(例えば90%)を吸収している。なお説明の便宜上、図21に示す各変形パターンの変形状態を誇張して示している。
次に図22〜図27を参照して本発明の力覚センサの第4実施形態を説明する。この実施形態に係る力覚センサは棒状形状を有している。
図22と図23を参照して第4実施形態に係る単純な形状・構造を有する力覚センサを説明する。図22は力覚センサの外観の斜視図を示し、図23は力覚センサの内部の構造を示す断面斜視図を示す。図22と図23において、上記第1実施形態等で説明された要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態に係る力覚センサ400の要部は、力覚センサ用チップ11と緩衝装置12とから構成されている。力覚センサ用チップ11は第1実施形態で説明した通りである。力覚センサ400は、詳しくは、外部から与えられる外力(軸力または荷重)F1が直接に印加されるブロック形状の入力部401と、力覚センサ400を所要の場所に固定するためのブロック形状のセンサ固定部402と、上記力覚センサ用チップ11を取り付けるためのリング形状のチップ台座403と、減衰または緩衝の機能を有する連結部404と、入力部401と力覚センサ用チップ11の作用部21とを結合する伝達部105とから構成されている。入力部401とセンサ固定部402は、上下の位置関係にあり、力覚センサ400それ自体が全体形状として棒状に形成される。入力部401は下方に延びる腕部401aを有する。連結部404は、棒状の力覚センサ400において、入力部401とセンサ固定部402の間に位置する連結手段として機能する。この連結部404が、前述した緩衝装置12の減衰機構部を形成する。
チップ台座403は、下側に位置するセンサ固定部402の壁面に設けられている。力覚センサ用チップ11は、棒状の力覚センサ400の壁面に力覚センサ用チップ11を貼付等して取り付けることで、力覚センサ400の表面に縦方向に配置される。従って、この実施形態の力覚センサ400によれば、縦方向により細い棒状の力覚センサを製作することができる。
上記の力覚センサ400は、一端のセンサ固定部402が固定され、他の一端である入力部401に外力F1が作用して当該外力を検出する構成の場合など、棒状の構造物に組み入れる場合に、より適したセンサ形状として用いられる。
図24に、力覚センサ400に対して例えば軸力Fx,Fz,My,Mzが印加したときの力覚センサ400の全体形状の変形例を示す。図24で、(A)は軸力Fxが印加されたときの変形状態を示し、(B)は軸力Fzが印加されたときの変形状態を示し、(C)は軸力Myが印加されたときの変形状態を示し、(D)は軸力Mzが印加されたときの変形状態を示している。変形状態(A)〜(D)のそれぞれで各軸力に応じて減衰機構部である連結部404が変形を生じ、連結部404は、入力部401に印加された軸力の大部分(例えば90%)を吸収している。なお説明の便宜上、図24に示す各変形パターンの変形状態を誇張して示している。
次に、図25と図26を参照して第4実施形態に係る力覚センサの変形例を説明する。この力覚センサ410は実際的な形状・構造を有する。図25と図26で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
力覚センサ410は全体形状として棒状でかつ円柱形状を有する。力覚センサ410は、外部から与えられる外力(軸力または荷重)F1が直接に印加される略半円柱のブロック形状の入力部411と、力覚センサ410を所要の場所に固定するための略半円柱のブロック形状のセンサ固定部412と、上記力覚センサ用チップ11を取り付けるためのリング形状のチップ台座403と、減衰機構部である2つの連結部404と、入力部411と力覚センサ用チップ11の作用部21とを結合する伝達部105とから構成されている。
入力部411とセンサ固定部412は、全体として円柱体形状の力覚センサ410を形成する。入力部411とセンサ固定部412は、それぞれから見た場合に、対称な形状になるように作られている。入力部411とセンサ固定部412は、それぞれの両端の2箇所で連結部404によって結合されている。力覚センサ410の内部は、スペース413が形成されている。当該スペース413を利用して、センサ固定部412の内側壁面にチップ台座403が設けられ、かつ力覚センサ用チップ11が固定されている。この力覚センサ用チップ11の作用部21と入力部411の対向面とが伝達部105によって連結される。
入力部411とセンサ固定部412は、上下の位置関係にあり、力覚センサ410それ自体が全体形状として棒状に形成される。このことは、上記力覚センサ400の入力部401とセンサ固定部402の関係と同じである。減衰機構部としての2つの連結部404は、略円柱体の棒状の力覚センサ410において、入力部411とセンサ固定部412の間に位置する連結手段として機能する。これらの2つの連結部404が、前述したの緩衝装置12の機能を実現する。
図27に、力覚センサ410に対して例えば軸力Fx,Fz,My,Mzが印加したときの力覚センサ410の全体形状の変形例を示す。図27で、(A)は軸力Fxが印加されたときの変形状態を示し、(B)は軸力Fzが印加されたときの変形状態を示し、(C)は軸力Myが印加されたときの変形状態を示し、(D)は軸力Mzが印加されたときの変形状態を示している。変形状態(A)〜(D)のそれぞれで各軸力に応じて減衰機構部である連結部404が変形を生じ、連結部404は、入力部411に印加された軸力の大部分(例えば90%)を吸収している。なお説明の便宜上、図27に示す各変形パターンの変形状態を誇張して示している。
第4実施形態の変形例に係る力覚センサ410では、入力部411、センサ固定部412および2つの連結部404の中心に力覚センサ用チップ11が配置されている。このため、力覚センサ410の緩衝装置12の変形中心と力覚センサ用チップ11の変形中心が一致する。この結果、各軸力間のバランスが取り易くなり、設計上有利である。また力覚センサ410では、力覚センサ用チップ11を内部に配置させるので、腕部401aや力覚センサ用チップ11自体の出っ張りが生じず、表面が余計な角のない力覚センサを実現する。
前述した第1から第4の実施形態において、入力部とセンサ固定部は、センサ筐体の共通部分として説明したが、センサ筐体とは別の部分として構成することもできる。さらに緩衝装置として機能する減衰機構部の形状・構造等は、各実施形態で説明されたものに限定されず、同一または類似の機能を発揮する別の任意の形状・構造等で形成することもできる。
さらに前述した第1から第4の実施形態において、緩衝装置12の各要素部材の結合手段としては、各要素部材の材料・材質に応じて、ネジ止め、接着剤(エポキシ樹脂系)、陽極接合などのいずれかを任意に選択して利用することができる。
特に、ガラスとシリコン、またはガラスと金属を接合する場合、陽極接合技術を使用することが望ましい。接着剤による接合の場合、基板との温度特性(熱膨張係数)の差異が大きく、経年劣化の程度も陽極接合よりも大きいからである。これらは、センサ検出精度を低下させる原因となる。
ところで、図1〜図27を用いて説明した本発明による緩衝装置12は、歪み抵抗素子を用いた力覚センサ用チップ11に限らず、他のタイプのセンサ用チップにも適用可能である。続いて、図28〜図31を参照して本発明が適用され得る静電容量式の力覚センサ用チップを概説する。図28は静電容量式の力覚センサ用チップの縦断面図を示し、図29は上側のガラス板の下面図を示し、図30は下側の半導体基板の上面図を示し、図31は上側の電極UE1〜UE8と下側の電極LE1〜LE8との位置関係を下側が見た図として示す。
図28では、厚みを誇張して描いている。この力覚センサ用チップ501は、図28に示すごとく、下側に位置する半導体基板502と上側に位置するガラス板503とを陽極接合等で貼り合せて形成されている。半導体基板502とガラス板503のそれぞれには、図29〜図31に示すごとく、それぞれの所定位置に8個の電極LE1〜LE8,UE1〜UE8が設けられている。半導体基板502の8個の電極LE1〜LE8とガラス板503の8個の電極UE1〜UE8は個々に上下位置にて部分的に重なり部分を有するように対向する位置関係にある。半導体基板502の中央部は外力を受けて変位し、半導体基板502の全体の形状は変形する。半導体基板502は、力覚センサ用チップ501の要部として機能する。
半導体基板502は、2種類の孔511,512によって中央部(作用部)502aと周縁部(支持部)502bが形成される。中央部502aは外力の作用を受けて変位する。周縁部502はその位置が動かないように固定される。上記の8個の電極LE1〜LE8は、図30に示すごとく半導体基板502の中央部502aの周縁位置に取り付けられている。ガラス板503は、中央孔503aが形成されると共に、4つの周囲突起503bが形成されている。ガラス板503は中央孔503aには、前述した緩衝装置12等の伝達部105が挿通される。ガラス板503の中央孔503aを通過した伝達部105の先端は、半導体基板502の中央部502aに接合等で固定される。ガラス板503の4つの周囲突起503bは半導体基板502に対して周知の陽極接合等で固定される。ガラス板503の周囲突起503bは半導体基板502の周縁部502bに接合等される。
図31に示すごとく対向関係にある電極LE1〜LE8と電極UE1〜UE8において、それぞれで、対向する部分の面積が変化し、この対向面積と距離とに応じて静電容量が決められる。図28に示すように、例えば、下側の半導体基板502に対しては、伝達部105によって外力が印加される。また下側の半導体基板502には前述のチップ台座103を介してセンサ固定部102に結合される。従って、静電容量式の力覚センサ用チップ501を備えた力覚センサに外力が印加されると、減衰された外力の一部が伝達部105を介して半導体基板502の中央部502aに印加される。その結果、実質的にセンサ固定部102に対して固定されたガラス板503に対して半導体基板502の中央部502aの位置が変化する。半導体基板502の中央部502aの動きに応じて、上記の電極UE1〜UE8と電極LE1〜LE8のそれぞれの対向する電極対で、相対的な位置関係に変化が生じ、静電容量が減少する。従って、8個の対向する電極対での静電容量の変化を検出することにより印加された外力を検知することが可能となる。
上記において、半導体基板502やガラス板503の上には他の配線接続用の電極および配線が設けられているが、図28〜図31ではそれらの図示を省略している。これらの電極や配線には白金、アルミニウム、金等が使用されている。またガラス板503に設けられた電極UE1〜UE8と半導体基板502に設けられた電極LE1〜LE8との間の空間には、通常、空気が満たされている。また上記で説明された電極の形状、位置、数や孔の形状、位置、数は上記説明のものに限定されず、任意である。
また図32は力覚センサ用チップ501の変形例を示す。図32において、図28で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。上記の力覚センサ用チップ501の取付け構造に関して、図32に示すごとく、ガラス板503の位置する場所の反対側の場所から半導体基板502の中央部502aに伝達部105を結合することもできる。この場合、ガラス板503に上記の中央孔503aを形成する必要がなくなる。
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。