本発明の歪みゲージ型センサは、外部から加わった多軸の力、モーメント、加速度、角加速度の少なくとも1つを計測する歪みゲージ型センサにおいて、第1部材と、前記第1部材に対向する平面を有し、前記第1部材と中心軸を介して連結された第2部材とを備えており、前記第2部材は、前記平面上に配置された複数の歪みゲージが取り付けられ且つ前記中心軸を囲むよう設けられた環状のダイヤフラムを有しており、前記中心軸の外径が前記ダイヤフラムの内径よりも小さいことを特徴としている。
この構成によると、複数の歪みゲージが第2部材の第1部材に対向する平面に配置される(第1部材の内側面の中心軸以外の部分と第2部材の内側面の中心軸以外の部分との間に配置される)ので、複数の歪みゲージを保護するためのカバーを第1部材及び第2部材の外側に設ける必要がなくなる。従って、歪みゲージ型センサの全体の高さを低くすることができるので、歪みゲージ型センサのロボットなどへの組み込みが容易になる。また、歪みゲージ型センサをロボットの手や足に組み込む場合には、ロボットの手足となる部品の長さを短くできる。また、各歪みゲージは一平面上に配置されているので、従来のように歪みゲージをブリッジ要素の曲面などに3次元的に取り付ける場合に比べて取り付け作業の時間を短縮することができる。したがって、量産性を良くしてコストを下げることができるようになる。また、歪みゲージがダイヤフラムに取り付けられているので、第2部材が簡易な形状になり、歪みゲージ型センサを組み立てるコストを下げることができる。また、中心軸の外径がダイヤフラムの内径よりも小さくなっているので、歪みゲージをダイヤフラムで内縁部に取り付けることが可能となる。従って、ダイヤフラムの最も大きな歪みが発生する部分で歪みを検出することによって、センサの感度を上げることができる。
この構成によると、第1部材及び第2部材が、それらの間にある一平面に関して対称となっているので、外部からの力によってダイヤフラムに発生する歪みを精度良く検出することができる。
本発明の歪みゲージ型センサにおいて、前記第2部材の前記平面と反対側の面には、前記ダイヤフラム及び前記中心軸に対応した位置に形成された凹部が設けられていてもよい。
この構成によると、第1部材及び第2部材が中心軸を貫通するボルト等で連結される場合に、ボルトの端部は凹部内に配置されるので、ボルトの端部は第2部材の外側面から外側に飛び出さなくなる。従って、第2部材の厚さを薄くすることができる。
本発明の歪みゲージ型センサにおいて、前記ダイヤフラムは前記歪みゲージ型センサの中心点を中心に等角度おき、且つ、前記中心点から等距離に配置されていてもよい。この構成によると、各ダイヤフラムの歪みゲージの抵抗値の変化から比較的簡易な計算により多軸の力、モーメント、加速度、角加速度を算出することができる。
本発明の歪みゲージ型センサにおいて、前記角度は90度であってもよい。この構成によると、歪みゲージ型センサの中心点を原点とする直交座標のX軸およびY軸での力、モーメント、加速度、角加速度を容易に算出することができる。
本発明の歪みゲージ型センサにおいて、前記ダイヤフラムは、前記中心点を原点とするX軸およびY軸上の正方向および負方向にそれぞれ配置されていてもよい。この構成によると、X軸およびY軸での力、モーメント、加速度、角加速度を極めて容易に算出することができる。
本発明の歪みゲージ型センサにおいて、前記角度は120度であってもよい。この構成によると、3個のダイヤフラムで多軸の力、モーメント、加速度、角加速度を算出することができるので、歪みゲージ型センサの構成をさらに簡略化することができる。
本発明の歪みゲージ型センサにおいて、前記ダイヤフラムの薄肉部は円環形状で8個の前記歪みゲージを備えていると共に、前記歪みゲージの配置位置は、前記ダイヤフラムの中心点と前記歪みゲージ型センサの中心点とを結ぶ線上において前記ダイヤフラムの外縁部と内縁部、および前記ダイヤフラムの中心点における前記線の垂直線上において前記ダイヤフラムの外縁部と内縁部であってもよい。この構成によると、ダイヤフラムの中で最も歪みが大きい部位に歪みゲージを取り付けることができるので、感度を高めることができる。
本発明において、前記歪みゲージはピエゾ抵抗素子であってもよい。この構成によると、ピエゾ抵抗素子は箔歪みゲージに比べてゲージ率が10倍以上大きいので、箔歪みゲージを利用する場合に比べて感度を10倍以上大きくすることができる。
本発明の歪みゲージ型センサにおいて、前記歪みゲージはスパッタリング法により前記平面上に設けた絶縁膜上に形成されていてもよい。この構成によると、手作業による面倒な歪みゲージの接着工程を工業的に自動化したプロセスに置き換えることができる。また、スパッタリング法によれば歪みゲージを第2部材に強く密着させることができるので、歪みの伝達効率を非常に高くすることができる。また、一般的な箔歪みゲージに比べて厚さを非常に薄くしてゲージ抵抗値を大きくできるので、一般的な箔歪みゲージに比べて感度を10倍以上高くすることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る歪みゲージ型センサ1の中央縦断面正面図である。図2は、図1の歪みゲージ型センサ1を第1部材2側からZ軸負方向に透視したときの歪みゲージの配置を描いた平面図である。
図1に示す歪みゲージ型センサ1は、第1部材2と、第2部材3と、これらを連結する4つの中心軸(支柱)8とを有している。第1部材2の上面と第2部材3の下面とは所定間隔だけ離隔して対向しており、第1部材2と第2部材3との間には、32個の歪みゲージR11〜R48と、信号処理回路基板10とが配置されている。ここで、32個の歪みゲージR11〜R48は、第2部材3の下面つまり一平面上に配置されている。
なお、以下の説明では、図1において、歪みゲージ型センサ1の中心位置である原点Oから右方向をX軸正方向、紙面手前方向をY軸正方向、下方向をZ軸正方向として説明する。
第1部材2および第2部材3は、いずれも円盤形状のフランジであって、中心軸8は、所定長さを有する略円柱状の部材である。ここで、第1部材2および第2部材3は、同じ形状を有しており、それらの間にある一平面に関して対称となるように配置されている。第1部材2、第2部材3及び中心軸8は、SUSやアルミなどの十分な剛性を有する材料から形成されている。なお、中心軸8の両端部の径は、その中央部の径よりも小さくなっている。
外部からの力を受ける側の第2部材3には、X軸及びY軸に対応した4つの環状のダイヤフラム4、5、6、7(図1ではダイヤフラム4、6だけが図示されている)が設けられている。一方、歪みゲージ型センサ1が固定される側の第1部材2には、X軸及びY軸に対応した4つの環状のダイヤフラム14、15、16、17(図1ではダイヤフラム14、16だけが図示されている)が設けられている。ここで、ダイヤフラム4〜7とダイヤフラム14〜17とは互いに対向している。
第2部材3の下端部において、各ダイヤフラム4〜7に対応した部分は薄肉状になっている。つまり、第2部材3の上面には、ダイヤフラム4〜7及び中心軸8に対応した位置に形成された凹部が設けられている。ここで、各ダイヤフラム4〜7の中心位置には、中心軸8を嵌合するための嵌合孔3aが形成されている。そして、嵌合孔3aの周縁部3bの肉厚h2は、第2部材3(各ダイヤフラム4〜7でない部分)の肉厚h1よりも薄く、且つ、各ダイヤフラム4〜7の薄肉部の肉厚h3よりも厚くなっている。従って、各ダイヤフラム4〜7の嵌合孔3aの周縁部3bの先端は、第2部材3の上面より内側に配置されている。このように、第2部材3の上面の各ダイヤフラム4〜7に対応した部分には略環状の凹部が形成されており、各薄肉部が円環形状になっている。また、第2部材3の断面形状はZ軸に対して対称となっている。
一方、第1部材2の上端部において、各ダイヤフラム14〜17に対応した部分は薄肉状になっている。ここで、各ダイヤフラム14〜17の中心位置には、中心軸8を嵌合するための嵌合孔2aが形成されている。そして、嵌合孔2aの周縁部2bの肉厚h5は、第1部材2(各ダイヤフラム14〜17でない部分)の肉厚h4よりも薄く、且つ、各ダイヤフラム14〜17の薄肉部の肉厚h6よりも厚くなっている。従って、各ダイヤフラム14〜17の嵌合孔2aの周縁部2bの先端は、第1部材2の下面より内側に配置されている。このように、第1部材2の下面の各ダイヤフラム14〜17に対応した部分には、略環状の凹部が形成されており、各薄肉部が円環形状になっている。また、第1部材2の断面形状はZ軸に対して対称となっている。なお、本実施の形態では、第1部材2と第2部材3とはほぼ同じ形状であって、上下反転した構成になっている。
ここで、上述したように、周縁部2bの先端及び周縁部3bの先端が第1部材2の下面及び第2部材3の上面より内側に配置されているので、第1部材2の下面が支持部材(図示しない)に固定された状態において第2部材3が力を受けて変位した場合に、周縁部2bの先端及び周縁部3bの先端が他の部材と接触して測定すべき力以外の外力によって各ダイヤフラム4〜7、14〜17に歪みが生じて、力の検出に大きな誤差が発生するのが抑制される。
また、第1部材2の下面(各ダイヤフラム14〜17の薄肉部と反対側の面)の中心位置近傍には、略円形の凸部2cが形成されている。この凸部2cは、歪みゲージ型センサ1を支持部材に取り付ける際に、歪みゲージ型センサ1の位置決めを行うために利用される。
第2部材3の上面(各ダイヤフラム4〜7の薄肉部と反対側の面)の中心位置近傍には、略円形の凹部3cが形成されている。この凹部3cは、外部から力を受ける部材を第2部材3に取り付ける際に、外部から力を受ける部材の位置決めを行うために利用される。
ダイヤフラム4〜7は、図2に示すように、歪みゲージ型センサ1の中心点Oを中心に等角度おき、且つ、中心点Oから等距離に配置されている。なお、本実施の形態では、ダイヤフラム4〜7は、90度おきに配置されている。さらに、ダイヤフラム4〜7は、中心点Oを原点とするX軸およびY軸上の正方向および負方向にそれぞれ配置されている。また、ダイヤフラム14〜17は、ダイヤフラム4〜7と同様に配置されている。
各ダイヤフラム4〜7は、第2部材3の下面つまり一平面上に配置された8個の歪みゲージR11〜R48をそれぞれ備えている。従って、歪みゲージR11〜R48は、第1部材2と第2部材3との間に形成される空隙内に配置される。歪みゲージR11〜R48の配置位置は、図2に示すように、各ダイヤフラム4〜7の中心点を通りX軸及びY軸に平行な直線上であって、且つ、ダイヤフラム4〜7の薄肉部分の外縁部と内縁部である。すなわち、歪みゲージR11〜R48は、歪みゲージ型センサ1において最も大きな歪みが発生する場所に貼り付けられている。ここで、歪みゲージR11〜R48をダイヤフラム4〜7の薄肉部分の外縁部と内縁部に配置するために、嵌合孔3aの周縁部3bの外径R1が中心軸8の外径R2よりも小さくなっている。なお、歪みゲージのリード線の図示は省略している。
歪みゲージR11〜R48としては、金属箔歪みゲージや金属線歪みゲージが用いられる。歪みゲージR11〜R48は一種の抵抗体であり、歪みの発生する場所に貼り付けて使用する検出素子である。歪みの発生により抵抗値が変化することにより、歪みεを測定することができる。一般には、引張りによる歪みεに対しては抵抗値が大きくなり、圧縮による歪みεに対しては抵抗値が小さくなる比例特性を持っている。また、通常は材料が歪みεに対して応力σが比例する弾性域で使用する。なお、本実施形態においても第2部材3の弾性域で使用するものとしている。
従って、歪みゲージ型センサ1を組み立てる場合には、第1部材2、第2部材3及び中心軸8の加工を行う。次に、第2部材3の一平面に歪みゲージR11〜R48を接着し、リード線を取り付ける。そして、信号処理回路基板10を第1部材2または第2部材3に取り付ける。その後、第1部材2および第2部材3の各ダイヤフラムの中心にそれぞれ形成された嵌合孔2a、3aに中心軸8を嵌合させる。すると、ダイヤフラム4〜7の中心位置とダイヤフラム14〜17の中心位置とが相対的に一致するように、第1部材2と第2部材3とが連結される。そして、第1部材2と第2部材3とが強固に接合された一体構造になるように、中心軸8の両端部は嵌合孔2a、3aの周縁部2b、3bに対して電子ビーム溶接されている。
また、第2部材3には、図2に示すように、外部から力を受ける部材を取り付ける8個のネジ孔3dが形成されていると共に、4個の開口3eが形成されている。ここで、開口3eは、歪みゲージ型センサ1を支持部材に固定するボルトを通すためのものである。また、第1部材2の4個の開口3eに対応した位置には、開口3eよりも一回り小さい開口が形成されており、開口3eを通されたボルトによって歪みゲージ型センサ1が支持部材に固定される。なお、本実施の形態では、第2部材3のネジ孔3d及び開口3eの図示を省略する場合がある。
このように構成された歪みゲージ型センサ1は、3次元空間の直交する3軸の力とその軸回りのモーメントを測定するための6軸力覚センサとして機能するものである。
なお、各ダイヤフラムの形状はいずれも同じであって、それらの肉厚も全て同じになっているのが好ましい。これにより、各ダイヤフラムの剛性が等しくなって、例えば図3に示すように、第1部材2と第2部材3と中心軸8とが全体として平行四辺形の四辺を構成するように変位するときに、各ダイヤフラム4〜7に力の方向や大きさに応じた歪みが歪みゲージR11〜R48に発生するようになるので、力やモーメントを高精度に検出することができる。
また、第1部材2と第2部材3とは、それぞれの嵌合孔2a、3aに中心軸8を嵌合させることによって連結されているが、第1部材2と第2部材3とがボルトやねじ等により連結されてもよいし、直接一体切削加工によって形成されてもよい。なお、第1部材2と第2部材3とがボルトやねじ等により連結されている場合に、センサに不具合が発生したときには分解して各部品を確認することができる。
また、歪みゲージが正確に力を検出するためには、外部からの測定すべき力以外の外力が歪みゲージに加わるのを防止する必要があるので、第1部材2と第2部材3との間に埃が入るのを防止するための側面カバーを取り付けるのが好ましい。
次に、各軸方向ごとに力とモーメントを検出する原理を説明する。以下、第1部材2を固定し、第2部材3に力やモーメントが作用するものとする。
図3に、X軸方向の力Fxを点Cに加えたときの状態を示す。このときは、第1部材2および第2部材3の全てのダイヤフラムが図示したように変位し、歪みが検出される。図4に歪みゲージR11〜R48の変化を示す。図中、(+)は抵抗値の増加を、(−)は抵抗値の減少を示す。どちらの記号も無い歪みゲージは抵抗値の変化が殆ど無い。
また、Y軸方向の力Fyを加えたときは、X軸方向の力Fxを加えたときの状態を90度ずらして考えればよいので、ここでは省略する。
図5に、Z軸方向の力Fzを点Dに加えたときの歪みゲージ型センサ1の状態を示す。図6に、このときの各歪みゲージの変化を示す。
図7に、Y軸のモーメントMyを加えたときの歪みゲージ型センサ1の状態を示す。つまり、Z軸負方向の力Fを点Eに加えると共に、Z軸正方向の力Fを点Fに加えたときの歪みゲージ型センサ1の状態を示す。図8に、このときの各歪みゲージの変化を示す。
また、X軸のモーメントMxを加えたときは、Y軸のモーメントMyを加えたときの状態を90度ずらして考えればよいので、ここでは省略する。
図9に、Z軸のモーメントMzを加えたときの歪みゲージ型センサ1の状態を示す。Z軸のモーメントMzを加えたときは、第2部材3をZ軸を中心に回転させる。図10に、このときの各歪みゲージの変化を示す。
表1に上述した各力およびモーメントに対する歪みゲージR11〜R48の変化を示す。表中、+は抵抗値の増加、−は抵抗値の減少を示し、符号無しは抵抗値が殆ど変化しないことを示す。また、反対方向の力やモーメントの場合は符号が逆になる。
以上の性質を利用して、数式1の演算を行うことにより各力およびモーメントを検出することができる。
この演算では各歪みゲージR11〜R48が1回ずつ使用されるので無駄が無く、また電圧に変換してOPアンプで演算する場合に都合がよい。また、構造上剛性が強くなって感度が低くなるFzおよびMzについては他のときの2倍の8個の歪みゲージが割り付けられるので、感度を高めることができる。なお、演算方法は数式1に限られないのは勿論である。
また、数式1の演算は各抵抗値を既知あるいは新規の手段を用いて電圧に変換し、OPアンプで演算しても良く、あるいはAD変換器を用いてマイクロコントローラやコンピュータを用いて演算してもよい。
あるいは、図11に示すようにブリッジ回路を構成して定電圧または定電流を印加しても力およびモーメントを検出することができる。さらに、ハーフブリッジを構成して歪みゲージの数を減らしても検出することができる。なお、歪みゲージの組み合わせは図11に示したものに限られないのは勿論である。
なお、本実施形態では各ダイヤフラム4〜7をX軸あるいはY軸上に配置しているが、これには限られない。すなわち、同じ構造の歪みゲージ型センサ1の設置方向を変更して、各ダイヤフラム4〜7が軸上に位置しないようにしてもよい。この場合、6軸センサとしては機能せず、5軸センサとなる。また、本実施形態では6軸センサとして使用しているが、これには限られず例えばX軸とY軸の2方向の力だけを検出する2軸センサとして使用してもよい。
以上説明したように、本実施の形態の歪みゲージ型センサ1では、複数の歪みゲージR11〜R48が第1部材2と第2部材3との間に配置されるので、複数の歪みゲージR11〜R48を保護するためのカバーを第1部材2及び第2部材3の外側に設ける必要がなくなる。従って、歪みゲージ型センサ1の全体の高さを低くすることができるので、歪みゲージ型センサ1のロボットなどへの組み込みが容易になる。また、歪みゲージ型センサ1をロボットの手や足に組み込む場合には、ロボットの手足となる部品の長さを短くできる。また、各歪みゲージ1は一平面上に配置されているので、従来のように歪みゲージをブリッジ要素の曲面などに3次元的に取り付ける場合に比べて取り付け作業の時間を短縮することができる。したがって、量産性を良くしてコストを下げることができるようになる。
また、歪みゲージ型センサ1は、複数の歪みゲージR11〜R48が取り付けられるダイヤフラム4〜7を備えているので、歪みゲージの取り付けられるセンサ起歪体が簡易な形状になる。従って、歪みゲージ型センサ1を組み立てるコストを下げることができる。
また、歪みゲージ型センサ1では、ダイヤフラム4〜7は歪みゲージ型センサ1の中心点Oを中心に90度おき、且つ、中心点Oから等距離であって、X軸およびY軸上の正方向および負方向にそれぞれ配置されているので、各ダイヤフラム4〜7の歪みゲージR11〜R48の抵抗値の変化から比較的簡易な計算により、中心点Oを原点とする直交座標のX軸およびY軸での多軸の力、モーメントを容易に算出することができる。
また、歪みゲージ型センサ1では、ダイヤフラム4〜7の薄肉部は円環形状で8個の歪みゲージR11〜R48をそれぞれ備えていると共に、歪みゲージR11〜R48の配置位置は、各ダイヤフラム4〜7の中心点と歪みゲージ型センサ1の中心点Oとを結ぶ線上において各ダイヤフラム4〜7の外縁部と内縁部、および、各ダイヤフラム4〜7の中心点における前記線の垂直線上において前記ダイヤフラムの外縁部と内縁部である。従って、各ダイヤフラム4〜7の中で最も歪みが大きい部位に歪みゲージを取り付けることができるので、感度を高めることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について、図12を参照して説明する。第2の実施の形態は、歪みゲージ型センサ1の構造としては第1の実施の形態と同様であるが、ブリッジの構成を変形している。図12に示すように、各ブリッジは、各ダイヤフラム4〜7上に直線的に配置された4個の歪みゲージから構成されている。これにより、各ダイヤフラム4〜7の歪みの発生状況が8個の電圧として直接出力されるようになる。
この場合、数式2により演算を行って力とモーメントを算出することができる。
数式2の演算は各抵抗値を既知あるいは新規の手段を用いて電圧に変換し、OPアンプで演算しても良く、あるいはAD変換器を用いてマイクロコントローラやコンピュータを用いて演算してもよい。
次に、本発明の第3の実施の形態について、図13及び図14を参照して説明する。図13は、本発明の第3の実施の形態に係る歪みゲージ型センサ101の縦断面正面図である。図14は、図13の歪みゲージ型センサ101を第1部材2側からZ軸負方向に透視したときの歪みゲージR11〜R38の配置を描いた平面図である。なお、図13は、図14の線CO−線ODにおける断面図である。
図13に示す歪みゲージ型センサ101は、第1部材102と、第2部材103と、これらを連結する3つの中心軸108とを有している。第1部材102の上面と第2部材103の下面とは所定間隔だけ離隔して対向しており、第1部材102と第2部材103との間には、24個の歪みゲージR111〜R138と、信号処理回路基板110とが配置されている。ここで、24個の歪みゲージR111〜R138は、第2部材103の下面つまり一平面上に配置されている。
外部からの力を受ける側の第2部材103には、Y軸正方向、原点Oを通りY軸正方向からX軸正方向に120度をなす線分OC上、及び、原点Oを通りY軸正方向からX軸負方向に120度をなす線分OD上に対応した3つの環状のダイヤフラム104、105、106(図13ではダイヤフラム104、106だけが図示されている)が設けられている。一方、歪みゲージ型センサ101が固定される側の第1部材102には、Y軸正方向、原点Oを通りY軸正方向からX軸正方向に120度をなす線分OC上、及び、原点Oを通りY軸正方向からX軸負方向に120度をなす線分OD上に対応した3つの環状のダイヤフラム114、115、116(図1ではダイヤフラム114、116だけが図示されている)が設けられている。ここで、ダイヤフラム104〜106とダイヤフラム114〜116とは互いに対向している。
ダイヤフラム4〜6は、図14に示すように、歪みゲージ型センサ101の中心点Oを中心に等角度おき、且つ、中心点Oから等距離に配置されている。なお、本実施の形態では、ダイヤフラム104〜106は、120度おきに配置されている。また、ダイヤフラム114〜116は、ダイヤフラム104〜106と同様に配置されている。
各ダイヤフラム104〜106は、第2部材103の下面つまり一平面上に配置された8個の歪みゲージR111〜R138をそれぞれ備えている。従って、歪みゲージR111〜R138は、第1部材102と第2部材103との間に形成される空隙内に配置される。歪みゲージR111〜R138の配置位置は、図14に示すように、各ダイヤフラム104〜106の中心点と原点Oとを結ぶ直線上においてダイヤフラム4〜6の外縁部と内縁部、および、各ダイヤフラム4〜6の中心点における上記直線の垂直線上においてダイヤフラム104〜106の外縁部と内縁部である。
具体的には、歪みゲージR111〜R114は、原点Oを通りY軸正方向からX軸正方向に120度をなす線分OC上に配置されている。歪みゲージR131〜R134は、原点Oを通りY軸正方向からX軸負方向に120度をなす線分OD上に配置されている。また、歪みゲージR115〜R118は、ダイヤフラム104の中心点を通り線分OCと直交する直線上に配置されている。歪みゲージR135〜R138は、ダイヤフラム106の中心点を通り線分ODと直交する直線上に配置されている。歪みゲージR21〜R28の配置は、第1の実施の形態と同様である。また、歪みゲージとしては、第1の実施の形態と同様に、金属箔歪みゲージや金属線歪みゲージが用いられる。
この歪みゲージ型センサ101は、3次元空間の直交する3軸の力とその軸回りのモーメントを測定するための6軸力覚センサである。その他の構成は第1の実施の形態とほぼ同様であるので詳細な説明は省略する。
次に、各軸方向ごとに力とモーメントを検出する原理を説明する。以下、第1部材2を固定し、第2部材3に力やモーメントが作用するものとする。ここで、直線状に配置された4個の歪みゲージから構成される歪みゲージ群は、配置された列方向に引っ張りや圧縮の歪みを加えた場合、最も歪みに対する抵抗値の変化の率が大きくなり感度が高くなる。図14には、6個の歪みゲージ群が図示されているが、それぞれ最も感度が大きくなる方向が異なる。しかし、各歪みゲージ群の感度をX、Y、Z軸方向のベクトルに分解して考えれば、以下のようにして6軸成分の力やモーメントを検出することができる。
図14に示す歪みゲージR111〜R138に対して図15に示すブリッジ回路を構成し定電圧または定電流を加える。これにより、歪みゲージR115〜R118でX軸正方向からY軸正方向に240度方向の力の成分を電圧V1として検出でき、歪みゲージR121〜R124でX軸正方向の力の成分を電圧V2として検出でき、歪みゲージR135〜R138でX軸正方向からY軸正方向に120度方向の力の成分を電圧V3として検出できる。また、R111〜R114、R125〜R128、R131〜R134では、各ダイヤフラム104〜106の中心のZ軸方向の力をそれぞれV4、V5、V6として検出できる。
ここで、各ブリッジ回路の図15中の節点電圧をe1〜e12とすると、数式3が導かれる。
このうちV1、V2、V3については、X軸とY軸成分のベクトルに分解して数式4のように表すことができる。
したがって、第2部材103に作用するX軸方向の合力をFx、Y軸方向の合力をFyとすると数式5のように検出することができる。
図16にX軸正方向に力Fxを加えたときのダイヤフラム105の変位の状態を示す。このとき、歪みゲージR122とR124は引っ張り方向の歪みが発生して抵抗値が大きくなり、歪みゲージR121とR123は圧縮方向の歪みが発生して抵抗値が小さくなる。力Fxと直交する方向に配置された歪みゲージR125〜R128には殆ど歪みが発生しない。
他の2つのダイヤフラム104、106にもX軸方向に同様の変位や歪みが発生している。しかし、歪みゲージR111〜R118、R131〜R138の配置方向はX軸やY軸の方向と異なっているので、各歪みゲージの抵抗値の変化は歪みゲージR121〜R128とは異なる。歪みゲージは配置された列方向に感度が最大になるように貼り付けられているので、歪みゲージR111〜R118、R131〜R138は力Fxの方向であるX軸と各歪みゲージ群がなす角度により感度が決定される。
Y軸方向の力Fyについても同様である。よって、X軸およびY軸方向の力は数式5により算出することができる。
次に、図17にZ軸方向の力Fzを加えたときのダイヤフラム105の変位の状態を示す。図18に歪みゲージR111〜R138の変化を示す。図15に示すブリッジ回路では、V1、V2、V3は抵抗の変化が打ち消しあってほとんど変化しない。V4、V5、V6はZ軸方向の力Fzに応じて変化する。したがって、力Fzは数式6により求めることができる。
次に、第2部材103にモーメントMxを加えた場合、X軸を中心に回転する力が加えられる。このため、各ダイヤフラム104〜106ではZ軸方向の力Fzが加わる。ここで、図19において、モーメントMxがダイヤフラム104、106を紙面表側から裏側に向けて押すと共に、ダイヤフラム105を紙面裏側から表側に向けて引っ張るように作用したとする。原点Oからダイヤフラム104〜106の中心までの距離をRとすると、ダイヤフラム104、106の中心からX軸までの距離はR/2となり、ダイヤフラム105の中心からX軸までの距離はRとなる。したがって、X軸回りのモーメントMxは数式7で表される。
次に、第2部材103にモーメントMyを加えた場合、ダイヤフラム104、106の中心からY軸までの距離は√3R/2となるので、Y軸回りのモーメントMyは数式8で表される。
次に、図20にZ軸右回りのモーメントMzを加えたときのダイヤフラム104〜106の変位の状態を示す。図21に歪みゲージR111〜R138の変化を示す。歪みゲージ群R115〜R118、R121〜R124、R135〜R138は最も感度がよい方向に歪みが発生し、図15のV1、V2、V3が最も高感度に変化する。
一方、歪みゲージ群R111〜R114、R125〜R128、R131〜R134は歪みゲージの感度が最も小さくなる配列方向なので、図15のV4、V5、V6はほとんど変化しない。したがって、モーメントMzは数式9で表される。
以上に示す数式5〜数式9を利用して演算を行うことにより、力やモーメントを求めることができる。例えば出力電圧V1〜V6をAD変換してマイクロコントローラやコンピュータを用いて演算してもよい。
ここで、歪みゲージ型センサ101への力Fx、Fy、FzとモーメントMx、My、Mzの出力電圧をVfx、Vfy、Vfz、Vmx、Vmy、Vmzとし、歪みゲージ型センサ101に実際に加わる荷重をFx、Fy、Fz、Mx、My、Mzとしたとき、数式10の関係になる。
ここで両辺の左から[A]−1を乗ずると数式11となる。
これにより、出力電圧から正確な6軸の力およびモーメントを求めることができる。
以上説明したように、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、歪みゲージ型センサ101の全体の高さを低くすることができるので、歪みゲージ型センサ101のロボットなどへの組み込みが容易になる。
また、歪みゲージ型センサ101では、ダイヤフラム104〜106は歪みゲージ型センサ101の中心点Oを中心に120度おき、且つ、中心点Oから等距離に配置されているので、3個のダイヤフラム104〜106で多軸の力、モーメントを算出することができる。従って、歪みゲージ型センサ101の構成をさらに簡略化することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態について、図22を参照して説明する。図22は、本発明の第4の実施の形態に係る歪みゲージ型センサ201の中央縦断面正面図である。
図22に示す歪みゲージ型センサ201では、歪みゲージとしてピエゾ抵抗素子220が用いられている。なお、歪みゲージ型センサ201のその他の構成は、第1の実施の形態の歪みゲージ型センサ1と同様であるので、同一の符号を付けて詳細な説明は省略する。
歪みゲージ型センサ201では、半導体製造プロセスを利用して、1つのダイヤフラムに必要なピエゾ抵抗素子220が1枚の半導体Siウェハ221に集積されて、ダイヤフラムにダイボンディングして固定されている。ピエゾ抵抗素子220は、箔歪みゲージに比べてゲージ率が10倍以上大きく、箔歪みゲージを利用する場合に比べて感度を10倍以上大きくすることができる。
次に、本発明の第5の実施の形態について、図23を参照して説明する。図23は、本発明の第5の実施の形態に係る歪みゲージ型センサ301の中央縦断面正面図である。
図23に示す歪みゲージ型センサ301では、歪みゲージがスパッタリング法によって一平面上に形成されている。なお、歪みゲージ型センサ301のその他の構成は、第1の実施の形態の歪みゲージ型センサ1と同様であるので、同一の符号を付けて詳細な説明は省略する。
歪みゲージ型センサ301では、第1部材2と第2部材3とを組み立てる前において、母材となる第2部材3の平面(組み立てたときに下面となる面)に絶縁膜320が形成され、その上にスパッタリング技術とフォトリソグラフィ技術とを用いて、歪みゲージ321が形成される。よって、手作業による面倒な歪みゲージの接着工程を工業的に自動化したプロセスに置き換えることによって、量産が可能となる。また、歪みゲージが母材に強固に結合されるので、歪みゲージの検出感度が一般的な箔歪みゲージよりも大きくなり、温度特性にも優れるので、センサの信頼性を向上させることができる。また、スパッタリング法で酸化クロム膜などを用いて歪みゲージを形成した場合、歪みゲージの厚さを薄くすることができるので、ゲージ抵抗が大きくなり、一般的な箔歪みゲージの10〜20倍の感度を得ることができる。よって、発生する歪みが小さい部分にゲージを設けても、S/N比の良い十分実用的な感度を得ることができる。
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の実施の形態では、歪みゲージが、第2部材3の下面であって第1部材2に対向する一平面上に配置されているが、第1部材2の上面であって第2部材3に対向する一平面上に配置されてもよい。また、上述の実施の形態では、ダイヤフラムは、歪みゲージ型センサの中心点を中心に等角度おき、且つ、中心点から等距離に配置されているが、ダイヤフラムの配置は変更することができる。また、ダイヤフラムが等角度おきに配置される場合でも、その角度は任意に変更することができる。
また、上述の実施の形態では、第1部材2と第2部材3とがほぼ同じ形状を有しているが、図24に示すように、歪みゲージ型センサ401の第1部材402及び第2部材403の形状はそれぞれ異なっていてもよい。また、上述の実施の形態では、歪みゲージが第2部材3の下面(第1部材2に対向する面)に配置されていると共に、第1部材2の上面側(第2部材3に対向する面側)に薄肉部が形成されているが、図24に示すように、歪みゲージが第2部材403の下面(第1部材402に対向する面)に配置されていると共に、第1部材402の下面側(第2部材403に対向しない面側)に薄肉部が形成されていてもよい。従って、歪みゲージ型センサ1において、第1部材2だけが上下反転した構成であってもよい。また、上述の実施の形態では、第1部材2と第2部材3とが、これらと別の部材である中心軸8によって連結されているが、図24に示すように、第1部材402の一部である中心軸408aと第2部材403の一部である中心軸408bとが、中心軸408a、408bを貫通するボルト410によって連結されていてもよい。このように、第2部材403の上面には、ダイヤフラム及び中心軸408bに対応した位置に形成された凹部403aが設けられており、ボルト410の端部が凹部403a内に配置されている場合には、ボルト410の端部は第2部材403の上面から外側に飛び出さなくなる。従って、第2部材403の厚さを薄くすることができる。