JP4928652B2 - 半導体発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は窒化物系半導体発光素子に関する。特に、m面を主面とした半導体発光素子に関する。
V族元素として窒素(N)を含む窒化物半導体は、そのバンドギャップの大きさから、短波長発光素子の材料として有望視されている。そのなかでも、窒化ガリウム系化合物半導体の研究が盛んに行われており、青色発光ダイオード(LED)、緑色LED、ならびに、窒化ガリウム系半導体を材料とする半導体レーザも実用化されている(例えば、特許文献1、2参照)。
以下、窒化ガリウム系化合物半導体を窒化物系半導体と呼ぶ。窒化物系半導体には、Gaの一部または全部をアルミニウム(Al)およびインジウム(In)の少なくとも一方で置換した化合物半導体が含まれ、窒化物系半導体は、組成式AlxGayInzN(0≦x,y,z≦1、x+y+z=1)で表される。
GaをAlやInで置換することによって、バンドギャップをGaNよりも大きくすることも小さくすることも可能である。これにより、青色や緑色などの短波長の光のみならず、オレンジ色や赤色の光を発光させることも可能となる。したがって、窒化物系半導体を用いることによって、理論的には、全可視域から任意に選択される波長の光を出射する発光素子を実現することが可能であり、窒化物系半導体発光素子を、画像表示装置や照明装置への応用することも期待されている。
窒化物系半導体はウルツ鉱型結晶構造を有している。図1は、ウルツ鉱型結晶構造の面を4指数表記(六方晶指数)で示している。4指数表記では、a1、a2、a3およびcで示される基本ベクトルを用いて結晶面や方位が表される。基本ベクトルcは、[0001]方向に延びており、この方向は「c軸」と呼ばれる。c軸に垂直な面(plane)は「c面」または「(0001)面」と呼ばれている。なお、「c軸」および「c面」は、それぞれ、「C軸」および「C面」と表記される場合もある。図2(a)は窒化物系半導体の結晶構造を棒球モデルで示しており、図2(b)は、c軸に垂直な平面における窒化物系半導体結晶のGaおよびNの位置を示している。
従来、窒化物系半導体を用いて半導体素子を作製する場合、窒化物系半導体結晶を成長させる基板として、c面基板すなわち(0001)面を主面に有する基板が使用される。この場合、図2(a)および(b)から分かるように、c軸方向にはGa原子のみが配置される層と、N原子のみが配置される層が形成される。このようなGa原子およびN原子の配置に起因して、窒化物系半導体には自発的な分極(Electrical Polarization)が形成される。このため、「c面」は「極性面」とも呼ばれている。
その結果、窒化物系半導体発光素子の活性層におけるInGaNの量子井戸には、c軸方向に沿ってピエゾ電界が発生し、活性層内における電子およびホールの分布に位置ずれが生じるため、キャリアの量子閉じ込めシュタルク効果により、活性層の内部量子効率が低下する。半導体レーザの場合、しきい値電流の増大が生じ、LEDの場合、消費電力の増大や発光効率の低下が生じる。また、注入キャリア密度の上昇と共にピエゾ電界のスクリーニングが起こり、発光波長の変化も生じる。
また、緑色やオレンジ色、さらには赤色など長波長域の光を発光させるために、活性層のIn組成を増加すると、In組成と共にピエゾ電界の強度は益々増加し、内部量子効率は急激に低下する。このため、一般にc面の活性層を用いたLEDでは、出射可能な光の波長は550nm程度であると言われている。
このような課題を解決するため、非極性面であるm面を主面に有する基板(m面GaN系基板)を使用して、発光素子を製造することが検討されている。図1に示すように、ウルツ鉱型結晶構造におけるm面は、c軸に平行であり、c面と直交する6つの等価な面である。例えば、図1においてハッチングで示された[10−10]方向に垂直な(10−10)面である。(10−10)面と等価な他のm面には、(−1010)面、(1−100)面、(−1100)面、(01−10)面、(0−110)面がある。ここで、ミラー指数を表すカッコ内の数字の左に付された「−」は、「バー」を意味する。
図2(c)は、m面に垂直な面における窒化物系半導体結晶のGaおよびNの位置を示している。図2(c)に示すように、m面においては、Ga原子およびN原子は同一原子面上に存在するため、m面に垂直な方向に分極は発生しない。このため、m面上に形成した半導体積層構造を用いて発光素子を作製すれば、活性層にピエゾ電界が発生せず、上述の課題を解決することができる。
また、活性層のIn組成を大きく増加させることが可能であるため、青色のみならず、緑色や、オレンジ色、赤色など、より長波長の光を出射することのできるLEDやレーザダイオードを同一の材料系を用いて実現することができる。
さらに、非特許文献1などに開示されているように、m面上に形成された活性層を用いたLEDは、その価電子帯の構造に由来した偏光特性を有している。具体的には、m面上に形成された活性層はa軸に平行な方向に電界強度が偏った光を主として出射する。なお、本明細書では、特定方向に電界強度が偏った光を「偏光光」と称する。例えば、X軸に平行な方向に大きな電界強度を有する偏った光を「X軸方向の偏光光」、上記X軸に平行な方向を「偏光方向」と称する。また、ある界面に対し、偏光光が入射したとき、上記偏光光に対する透過光が、上記偏光光と同程度の電界強度の偏りを持つ偏光光となる場合、「偏光特性が維持されている」と表記する。
m面上に形成された活性層を用いたLED(以下、「m面発光素子」と表記する)は、上述のようにa軸方向の偏光光を主として出射する。そのとき、c軸方向の偏光光やm軸方向の偏光光も出射する。しかしながら、c軸方向の偏光光とm軸方向の偏光光は、a軸方向の偏光光と比較し、強度が弱い。そのため、本明細書では、a軸方向の偏光光に着目し、議論する。
m面発光素子は、上述のような偏光特性を有するため、偏光光を出射することが可能な発光素子として利用することが期待される。例えば、液晶表示装置は、液晶の偏光特性を利用するため、光源として、偏光光を用いる必要がある。従来の液晶表示装置では、偏光光を出射する適切な光源がないため、LEDや冷陰極蛍光管(CCFL)などの光源を用い、偏光板に出射した光を通過させることによって、偏光光を得ていた。しかし、この様な構成によれば、光源から出射する光の大部分は偏光板で遮られるため、光の利用効率が低いという問題があった。したがって、m面発光素子を液晶表示装置の光源として使用すれば、光の利用効率が向上し、液晶表示装置の消費電力を大幅に低減したり、偏光板を設けなくてよいことから、製造コストを低減することも可能となる。
特開2001−308462号公報 特開2003−332697号公報 特開2008−305971号公報 特開2008−109098号公報
APPLIED PHYSICS LETTERS 92 (2008) 091105 Thin Solid Films 515 (2008) 768-770
上述したm面発光素子を実現する場合、活性層から出射する偏光光を高い光取出し効率で外部へ取り出すことが重要となる。従来の発光素子では、例えば、非特許文献2に開示されているように、発光素子の出射面にランダムな微細構造を設けることにより、光取出し効率を高めていた。出射面に、全反射角よりも小さい角度で入射する活性層からの光は、出射面から外部へ出射することができないため、ランダムな微細構造を設けることによって、全反射角よりも大きい角度で出射面に入射する光の割合を高められ、光取出し効率が向上する。
しかし、このような構造を、偏光光を出射することが可能な発光素子に適用することはできない。m面発光素子などの偏光光を出射する発光素子において、偏光方向を維持した状態で光を外部へ取り出すためには、出射面に入射する光(入射光)の電界ベクトルの方向と入射面とが、垂直または平行をなすこと必要がある。ここで、出射面とは、窒化物系半導体発光素子の光を主として外部に取出す面とする。また、入射面とは、入射光の伝搬ベクトルと、出射面の法線ベクトルの作る平面とする。
これに対し、出射面にランダムな微細構造を設ければ、微細構造に入射する光の電界ベクトルの方向と入射面との関係は、ランダムなものとなる。その結果、微細構造を透過した光は、その光の偏光方向がさまざまな方向に曲げられ、電界強度の偏りが減少する。つまり、光取出し効率の向上と偏光特性の維持はトレードオフの関係にあるため、光取出し効率を向上させるほど、電界強度の偏りが減少してしまう。
特許文献3は、非極性面または反極性面を主面とする半導体を有する発光素子において、出射する光の偏光方向に対して垂直方向に伸びるストライプ状の溝を形成することにより、出射効率の低下を抑制することを開示している。特許文献3によれば、ブリュースター角で出射面へ入射する光のうちP波成分は、反射することなく(反射率ゼロ)出射面から透過することができる。このため、出射する光の偏光方向に対して垂直方向に伸びるストライプ状の溝を構成する面を出射面とすれば、光の偏光方向はP波成分の方向と一致するため、偏光光の透過率を高めることができると記載されている。
また、特許文献4は、出射する光の配光特性を改善するために、特許文献3と同様、発光素子の偏光方向に対して垂直に伸びる凹凸形状が出射面に設けられた発光ダイオード装置を開示している。
しかし、本願発明者が特許文献3に開示された発光素子を詳細に検討したところ、出射する光の電界強度の偏りが減少していることが分かった。つまり、特許文献3の構造によれば、偏光特性が十分に維持した状態で光を取り出すことが困難であることが分かった。
また、本願発明者が検討したところ、特許文献3、4に開示された発光素子によれば、配光特性に大きな非対称性があることが分かった。
本発明はこのような従来技術の課題の少なくとも1つを解決するものであって、その主な目的は、偏光特性を維持し、光取出し効率の向上を実現できる半導体発光素子を提供することになる。また、配光特性が改善された偏光光を出射する半導体発光素子を提供することにある。
本発明の半導体発光素子は、n型窒化物半導体層と、p型窒化物半導体層と、m面窒化物半導体層を含み、前記n型窒化物半導体層および前記p型窒化物半導体層に挟まれた活性層領域と、前記n型窒化物半導体層に電気的に接続されたn型電極と、前記p型窒化物半導体層に電気的に接続されたp型電極と、前記活性層領域で発生する偏光光を外部へ取出す出射面と、前記出射面に設けられたストライプ構造であって、前記m面窒化物半導体層のa軸方向と略平行に伸びる複数の凸部を有するストライプ構造とを備える。
ある好ましい実施形態において、前記複数の凸部は、前記出射面と非平行な少なくとも1つの斜面を有する。
ある好ましい実施形態において、前記偏光光は、前記a軸方向よりもc軸方向に広い放射角度を有する配光特性で、前記活性層領域で発生する。
ある好ましい実施形態において、半導体発光素子は、第1および第2の主面を有するn型窒化物半導体基板をさらに備え、前記第1の主面は、前記n型窒化物半導体層に接しており、前記出射面は、前記第2の主面である。
ある好ましい実施形態において、前記p型窒化物半導体層は、第1および第2の主面を有し、前記第2の主面は前記活性層領域側に位置しており、前記出射面は前記第1の主面である。
ある好ましい実施形態において、半導体発光素子は、前記n型窒化物半導体層に接して設けられたn型窒化物半導体基板と、第1および第2の主面を有する光出力部材とをさらに備え、前記第1の主面は、前記n型窒化物半導体基板の前記n型窒化物半導体層に接している面とは反対の面に接しており、前記出射面は、前記第2の主面である。
ある好ましい実施形態において、前記光出力部材の屈折率は1より大きい。
ある好ましい実施形態において、前記複数の凸部の伸びる方向と前記a軸方向とがなす角度は、±3°以内である。
ある好ましい実施形態において、前記複数の凸部の周期は300nm以上、8μm以下である。
本発明の半導体発光素子の製造方法は、n型窒化物半導体層と、p型窒化物半導体層と、前記n型窒化物半導体層および前記p型窒化物半導体層に挟まれており、m面窒化物半導体層を含む活性層領域とを有する半導体積層構造を基板上に形成する工程と、前記n型窒化物半導体層に電気的に接続されたn型電極および前記p型窒化物半導体層に電気的に接続されたp型電極を形成する工程と、前記基板の前記半導体積層構造が設けられていない面に、前記m面窒化物半導体層のa軸方向と略平行に伸びる複数の凸部を有するストライプ構造を形成する工程とを包含する。
本発明の半導体発光素子によれば、活性層領域で発光した光を取り出す出射面に、a軸と略平行に伸びるストライプ構造が設けられているため、a軸方向の偏光光を、ストライプを構成する凸部の斜面や上面にs波成分を主とする光として入射させることができる。このため、偏光特性を維持したまま、偏光光の外部への取出し効率を向上させることができる。また、さらに、a軸方向の偏光光は、m軸に近づくように凸部の斜面と外部との境界で屈折するため、配光特性の非対称性が改善される。
ウルツ鉱型結晶構造の基本ベクトルa1、a2、a3、cを示す斜視図である。 (a)はGaNの単位格子を模式的に示す斜視図であり、(b)および(c)はそれぞれ、c面の結晶構造およびm面の結晶構造を表す図である。 本発明による半導体発光素子の第1の実施形態を示す模式的断面図である。 (a)は第1の実施形態におけるストライプ構造を示す斜視図であり、(b)はストライプ構造の凸部の模式的な断面図である。(c)および(d)は、ストライプの伸びる方向を示す模式的な上面図である。 (a)から(c)は、ストライプ構造の凸部の例を示す模式的な断面図である。 (a)はストライプ構造への入射光と反射光の一例を示した図であり、(b)はストライプ構造の斜面の角度と反射光の入射角度の関係を示した図である。 (a)および(b)は、ストライプ構造の他の例を示す模式的な上面図である。 入射角と反射率および透過率の関係を示した図である。 (a)は、a軸方向の偏光光の伝搬ベクトルをしめす模式図であり、(b)は、m軸から見た場合におけるa軸方向およびc軸方向の配光特性を示す図である。 第1の実施形態において、ストライプ構造の凸部に入射する偏光光の一例を模式的に示した図である。 偏光方向と垂直方向に形成されたストライプ構造の出射面に入射する偏光光の一例を模式的に示す図である。 (a)および(b)はそれぞれa軸方向から、およびc軸方向から、平坦出射面を有する半導体発光素子の出射面に対する入射光と透過光の一例を模式的に示した図であり、(c)は第1の実施形態における窒化物系半導体発光素子の出射面に対する入射光と透過光の一例を模式的に示す図である。 第1の実施形態の製造途中の構造を示す模式的断面図である。 本発明による半導体発光素子の第2の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明による半導体発光素子の第3の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明による半導体発光素子の第4の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明による半導体発光素子の第5の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明による半導体発光素子の第6の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明による半導体発光素子の第7の実施形態を示す模式的断面図である。 (a)は平坦出射面を有する半導体発光素子の配光特性を示す図であり、(b)および(c)はそれぞれ(a)に示す結果を模式的に表した図である。 配光特性の測定に用いた測定系の構成を示す図である。 ストライプ構造の向きと配光特性の関係を示した図であって、(a)はa軸方向の配光特性を示し、(b)はc軸方向の配光特性を示した図である。 実施例1、実施例2、参考例1、参考例2、比較例1、比較例2における半導体発光素子のストライプ構造のピッチと偏光度の維持率の関係を示す図である。 偏光度の測定に用いた測定系の構成を示す図である。 実施例1、参考例1、比較例1における半導体発光素子のストライプ構造とa軸のなす角と光取出し効率の関係を示した図である。 実施例3、参考例3、比較例3における半導体発光素子のストライプ構造の角βと比偏光度の関係を示す図である。 (a)は実施例1、2、参考例1、2、比較例1、2におけるストライプ構造の断面形状を模式的に示した図であり、(b)は実施例3、参考例3におけるストライプ構造の断面形状を模式的に示した図である。
本願発明者は、m面窒化物系半導体発光素子において活性層から発光する光の偏光特性および配光特性と出射面との関係を詳細に検討した。その結果、出射される光の偏光特性は、窒化物系半導体発光素子の活性層で発生した偏光光が持つ主たる電界ベクトルの方向と出射面の形状の関係に依存していることを見出した。また、出射される光の配光特性は、偏光光が持つ主たる伝搬ベクトルの方向と出射面の形状の関係に依存していることを見出した。これらの知見に基づき、本願発明者は、m面発光素子において、出射面の形状を最適化することによって、出射する光における偏光特性の維持と光取出し効率向上と、配光特性の改善とを同時に実現できる窒化物系半導体発光素子を想到した。以下、図面を参照しながら本発明による発光素子の実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡略化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す場合がある。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
(第1の実施形態)
図3は、本発明による半導体発光素子の第1の実施形態の断面構造を模式的に示している。図3に示すように半導体発光素子101は基板10と、基板10上に形成されており、活性層領域22を含む半導体積層構造20を備える。以下において詳細に説明するように、半導体発光素子101は、窒化物系半導体のm面を主面とする活性層で発光する偏光光を出射する。このため半導体積層構造20は、m面を主面とする活性層領域22を含み、窒化物半導体、より具体的には、AlxInyGazN(x+y+z=1、x≧0、y≧0、z≧0)半導体から形成されている。
半導体積層構造20は活性層領域22の他に、n型窒化物半導体層21およびp型窒化物半導体層22を含み、活性層領域22は、n型窒化物半導体層21およびp型窒化物半導体層22に挟まれている。特に図示しないが、活性層領域22とp型窒化物半導体層23との間に、アンドープのGaN層を設けても良い。
また、半導体発光素子101は、n型窒化物半導体層21およびp型窒化物半導体層23にそれぞれ電気的に接続されたn型電極30およびp型電極40をさらに備えている。本実施の形態では、半導体積層構造20に凹部31を設けることによって、n型窒化物半導体層21の一部を露出させ、露出したn型窒化物半導体層21上にn型電極30が設けられている。n型電極30は、例えば、Ti層およびPt層の積層構造(Ti/Pt)などで形成される。また、p型窒化物半導体層23上にp型電極40が設けられている。p型電極40は概ねp型窒化物半導体層23の表面全体を覆っていることが好ましい。p型電極40は例えば、Pd層およびPt層の積層構造(Pd/Pt)などで形成される。
基板10は、半導体積層構造20を形成するのに適したものが選ばれる。具体的には、GaN基板の他、酸化ガリウム、SiC基板、Si基板、サファイア基板などを用いることができる。基板10上にm面を主面とする活性層領域を含む半導体積層構造20をエピタキシャル成長させるためには、SiC基板やサファイア基板の面方位もm面である方が好ましい。ただし、r面サファイア基板上にa面GaNが成長することが報告されているように、mを主面とする活性層領域22を成長させるために、基板10の表面がm面であることは必須ではない。また、基板10以外の他の基板上に半導体積層構造20が形成された後、半導体積層構造20を他の基板から剥がし取り、半導体積層構造20を基板10に貼り付けてもよい。
n型窒化物半導体層21は、例えばn型のAluGavInwN(u+v+w=1、u≧0、v≧0、w≧0)から形成されている。n型ドーパントとして、例えばシリコン(Si)を用いることができる。
p型窒化物半導体層23は、例えばp型のAlsGatN(s+t=1、s≧0、t≧0)半導体から形成されている。p型ドーパントとして、例えばマグネシウム(Mg)を用いることができる。Mg以外のp型ドーパントとして、例えば亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)などを用いてもよい。p型窒化物半導体層23において、Alの組成比率sは、厚さ方向に一様であってもよいし、Alの組成比率sが厚さ方向に連続的または階段的に変化していてもよい。具体的には、p型窒化物半導体層23の厚さは、例えば、0.2μm以上2μm以下程度である。
p型窒化物半導体層23において、第1の主面23a近傍、すなわち、p型電極40との界面近傍はAlの組成比率sがゼロであること、つまり、GaNであることが好ましい。また、この場合、GaNにはp型の不純物が高濃度で含まれており、コンタクト層として機能することが好ましい。特に図示しないが、p型窒化物半導体層23とp型電極40との間にp+−GaNからなるコンタクト層が設けられていてもよい。
活性層領域22は、半導体発光素子101における発光領域であり、偏光特性に優れ、高い発光効率で偏光光を発光するため、m面上に形成された窒化物半導体層を含む。活性層領域22は、m面に対して成長方向が垂直であり活性層領域の第1の主面22aおよび第2の主面22bはm面である。ただし、第1の主面22aおよび第2の主面22bは、m面に対して完全に平行な面である必要はなく、m面から所定の角度で傾斜していてもよい。傾斜角度は、第1の主面22aまたは第2の主面22bの法線とm面の法線とが形成する角度により規定される。傾斜角度θの絶対値は、c軸方向において5°以下、好ましくは1°以下の範囲であればよい。また、a軸方向において5°以下、好ましくは1°以下の範囲であればよい。このような傾斜角度であれば、活性層領域の第1の主面22aまたは第2の主面22bは、全体的にm面から傾斜しているが、微視的には1から数原子層オーダーの高さのステップによって構成され、多数のm面領域を含んでいると考えられる。このため、m面から絶対値で5°以下の角度で傾斜している面は、m面と同様の性質を有すると考えられる。したがって、本実施形態のm面窒化物半導体層は、m面から絶対値で5°以下の角度で傾斜している面上に形成された窒化物半導体層を含む。なお、傾斜角度θの絶対値が5°より大きくなると、ピエゾ電界によって内部量子効率が低下する。したがって、傾斜角度θの絶対値を5°以下に設定する。
活性層領域22は、例えば、m面窒化物半導体層である厚さ3nm以上20nm以下程度のGa1-xInxN井戸層(0<x<1)と、厚さ5nm以上30nm以下程度のGaNバリア層とが交互に積層されたGaInN/GaN多重量子井戸(MQW)構造を有している。半導体発光素子101から出射する光の波長は、活性層領域22を構成する半導体のバンドギャップの大きさ、より具体的には、井戸層の半導体組成であるGa1-xInxN半導体におけるInの組成xによって決まる。m面上に形成された活性層領域22にはピエゾ電界が発生しない。このため、In組成を増加させても発光効率の低下が抑制される。その結果、窒化物系半導体を用いた発光素子であってもIn組成を大きく増加することにより、赤色の発光ダイオードを実現することができる。また、m面上に形成された活性層領域22を用いることによって、a軸方向の偏光光を発光させることができる。
基板10は、第1の主面10aおよび第2の主面10bを有し、第1の主面10aは半導体積層構造20のn型窒化物半導体層21と接している。第2の主面10bは活性層領域22で発光した偏光光を取り出す出射面となる。本実施形態では、第2の主面10bにストライプ構造50が設けられている。以下、ストライプ構造50を詳細に説明する。
図4(a)は、ストライプ構造50を模式的に示した斜視図である。また、図4(a)の左上に、活性層領域22に含まれるm面窒化物半導体層の結晶軸の方向を示している。図4(a)に示すように、ストライプ構造50は、m面窒化物半導体層のa軸と平行に伸びる複数の凸部(尾根またはリッジ)50aを有している。ストライプ構造50が設けられる第2の主面10b、つまり出射面は、a軸およびc軸と平行であり、m軸に垂直である。
複数の凸部50aの間にはa軸と平行に伸びる複数の溝50bが形成されるため、ストライプ構造50は、複数の溝50bを備えているとも言える。本願明細書では、ストライプ構造50が設けられる部材からの偏光光の出射を議論するため、ストライプ構造50は「凸部」を有するとして説明する。しかし、ストライプ構造50は、出射面に「溝」を設けることによって「凸部」を形成してもよい。
本実施形態では、各凸部50aは、出射面である第2の主面10bと平行な上面53と、出射面と非平行な少なくとも1つの斜面52とを含む。ただし、各凸部50aは、第2の主面10bと非平行な、少なくとも1つの斜面52を含んでいればよい。また、以下において説明するように、斜面52は曲面であってもよい。各凸部50aの高さhはλ/(4×n)以上が好ましく、λ/(4×n)以上10μm以下がより好ましい。ここで、λは活性層領域22の発光波長、nはストライプ構造50を構成している材料の屈折率である。本実施形態では、基板10を構成している材料の屈折率である。例えば、活性層領域22で発生する偏光光の波長を450nm、ストライプ構造50を構成している材料の屈折率nを2.5とすると、高さhは45nm以上であることが好ましい。
高さhをλ/(4×n)以上とすることで、ストライプ構造50は光取出し効率向上の効果が得られる。高さhの上限は製造方法に依存する。例えば化学的ドライエッチングを用いた場合、ストライプ構造の斜面には、α=65°程度となる結晶面が発生しやすいため、ストライプ構造のアスペクト比は1.2程度になる。ここで、アスペクト比とは、ストライプ構造50の底辺の長さbとストライプ構造50の高さhの比で表し、式(10)に示す値を言う。
Figure 0004928652
この場合、底辺の長さb=10μmのとき、高さhの上限は12μmとなる。ここで化学的ドライエッチングとは、塩素ラジカルなど、窒化物半導体に対して化学反応性が高いプラズマ条件下でのドライエッチングのことである。
一方、物理的ドライエッチングを用いた場合、ストライプ構造のアスペクト比は5程度まで高めることが可能である。この場合、底辺の長さb=10μmのとき、高さhは50μmとなる。ここで物理的ドライエッチングとは、塩素イオンなどのプラズマ条件下による物理的な窒化物半導体のドライエッチングのことである。
ただし、実際には高さhは基板の厚さ以上の高さは実現できない。また好ましくは、高さhは基板の厚さの半分程度以下にすることで、ストライプ構造形成後も基板の剛性を保つことが可能となり、取扱上の問題が生じない。
m面(出射面あるいは第2の主面)とストライプ構造50の斜面52のなす角α(以下、「角α」と表記する)は(90°−θc)/2<α<90°以下であることが好ましい。ここで、θcはストライプ構造50に入射する光の臨界角である。臨界角θcより大きな角度で入射した光は全反射し、透過率はゼロとなる。図4(b)は、ストライプ構造50の1つの凸部50aの長手方向(凸部50aの伸びる方向)に垂直な断面形状56を一般的に示している。図4(b)に示すように、斜面52は複数の斜面部分を有していても良い。このとき、それぞれの斜面部分とm面のなす角をαij(i,jは整数であり、0≦i,j≦∞を満たす)とすると、αij≠αlm(i≠lまたはj≠mであり、かつ、0≦l,m≦i,j)であってもよい。αijは、c軸方向に配列したi番目の斜面52において、凸部50aの根元からj番目の斜面部分とm面(出射面あるいは第2の主面)とがなす角度を示す。また、一本の凸部50aの長手方向において、異なる断面形状56を有していても良い。
ただし、0°<αij≦90°であり、(90°−θc)/2<αij<90°を満たす斜面52の面積が、その他の斜面52、すなわち、0°<αij≦(90°−θc)/2または90°≦αij<150°を満たす斜面52の面積と比較し、大きいことが好ましい。詳細は後述するが、(90°−θc)/2<αij<90°の条件を満たす斜面52に臨界角θcより大きな角度で入射した光の一部は、斜面52において全反射し、他の斜面52へ臨界角θc以下の入射角で入射する。従って、少ない反射回数で光を窒化物系半導体発光素子100の外部に取出すことができ、光取出し効率がさらに向上し、偏光特性の維持が実現できる。
αijの条件を満たす断面形状56には、例えば、図5(a)に示すような三角形の形状や、図5(b)に示すような、左右非対称の形状が含まれる。また、j=∞、つまり、斜面52が、多数のαijの異なる微小傾斜部分によって構成されている場合、図4(c)に示すように、断面形状56は円や楕円の一部等、曲線を含む形状となる。さらに、ストライプ構造50を構成する凸部50aは、等間隔に規則的に配置する必要はなく、ピッチpが変調されている場合も本願の効果は得られる。凸部50aの高さhも、すべてにおいて、同一である必要はなく、複数の凸部50aの高さが異なっていてもよい。
ここで、αijの範囲が、(90°−θc)/2<αij<90°を満たすとき、少ない反射回数で光を半導体発光素子101の外部に取出すことができる理由を詳細に説明する。図6(a)は、左右対称のストライプ構造50の斜面52(1)に入射角θ1で入射した光と、その反射光を模式的に示した図である。反射光は、図6(a)で示すように、斜面52(1)とは異なる斜面52(2)へ入射角θ2で入射する。ストライプ構造50の頂点を点A、入射光と斜面52(1)の交点を点B、反射光と斜面52(2)の交点を点Cとする。このとき、三角形ABCの内角の和から、式(1)の関係が成立する。
Figure 0004928652
ここで、入射光が、臨界角θc以下の角度θ1で斜面52(1)に入射した場合には入射光は反射せず全て斜面52(1)から外部へ透過すると仮定する。反射光が存在するためには、θ1の範囲は、θc<θ1<90°であることが必要である(以下、「条件θ1」と記載する)。また、斜面52(1)における反射光が斜面52(2)において透過するためには、θ2は、−θc<θ2<θcを満たすことが必要である(以下、「条件θ2」と記載する)。式(1)の関係を用いて条件θ1を整理すると、条件θ1および条件θ2を満たすαおよびθ2は、図6(b)の斜線の領域で示される。したがって、条件θ1および条件θ2を満たし、θ1が存在する角αの範囲は、(90°−θ)/2<α<90°であることが分かる。ストライプ構造50を構成する斜面52のうち、半分以上が、上述の角αの範囲を満たすことにより、十分な光量で斜面52から半導体発光素子101の外部へ出射する。
斜面52および上面53は透過光の散乱を抑制するため、できるだけ滑らかであることが好ましい。そのため、例えば、斜面52および上面53に形成される表面の凹凸は、λ/(4×n)より小さいことが好ましい。
図4(c)は、ストライプ構造50を上面から見た図を模式的に示したものである。ストライプ構造50の凸部50aの伸びる方向とa軸とは互いに略平行であることが好ましい。具体的には、「略平行」とは、ストライプ構造50の凸部50aの伸びる方向とa軸のなす角βが±3°以内であることを言う。角βとは、ストライプ構造50の凸部50aの伸びる方向、例えば、図4(a)中のハッチングされた平面54と斜面52との交わる直線55と、a軸とのなす角とする。窒化物半導体のa軸は、例えば、基板10に設けられたオリエンテーションフラットを基準に決定できるが、基板10の製造工程において、オリエンテーションフラットを形成する差異に、方位誤差が生じ得る。また、ストライプ構造50を基板10に形成する際にもストライプ構造50の凸部50aの伸びる方向の方位誤差が生じ得る。これらの誤差は概ね上述した範囲である。また、以下の実施例において説明するように上述した範囲であれば、本発明の顕著な効果が見られる。
平面54はa軸とc軸の作る平面(以下、「ac平面」と表記する)と平行な面であり、平面54は斜面52と交わる範囲において存在する。図4(d)は、図4(c)の一部の拡大図である。図4(d)で示すように直線55は必ずしも一本の直線である必要はなく、1つの直線55がa軸に対して異なる角度をなす複数の線分で構成されていてもよい。このとき、図4(d)に示すように、直線55のそれぞれの線分とa軸のなす角をβij(i,jは整数であり、0≦i,j≦∞を満たす)と置くと、βij≠βlm(i≠lまたはj≠mであり、かつ、0≦l,m≦i,j)であっても良い。ただし、βij≦±3°とする。また、図7(a)に示すように、ストライプ構造50において、隣接する一対の凸部50aが、凸部50aの伸びる方向と非平行に伸びる1つ以上の接続部50cによって接続されていてもよい。この場合、接続部50cの長さ(実線で示す)よりも凸部50aの長さ(破線で示す)のほうが長いことが好ましい。あるいは、図7(b)に示すように、ストライプ構造50において、凸部50aが凸部50aと非平行な方向に伸びる1つ以上の溝50dによって、分断され、破線状になっていてもよい。この場合、角β>3°をなす斜面の長さ(実線で示す)よりも角β≦±3°をなす斜面の長さ(破線で示す)のほうが長いことが好ましい。
以下、ストライプ構造50と半導体発光素子101から出射する光の偏光特性との関係およびストライプ構造50と配光特性の関係を説明する。
図3に示すように、活性層領域22活性層領域22で発生した偏光光は、n型窒化物半導体層21および基板10を伝搬し、出射面である第2の主面10bに入射(以下において、「入射光」と表記する。入射光の一部は、ストライプ構造50を構成している材料の外部へ伝搬する。また、入射光の他の一部は、第2の主面10bにおいて反射し、再びストライプ構造50を構成している材料の内部へ伝搬する。以下において、ストライプ構造50を構成している材料の外部へ伝搬した光を「透過光」と表記し、ストライプ構造50を構成している材料の内部へ伝搬した光を「反射光」と表記する。また、入射光の強度に対する透過光の強度を、「透過率」と表記し、入射光の強度に対する反射光の強度を、「反射率」と表記する。さらに、入射光の伝搬ベクトルと、出射面(第2の主面10b)に対する法線ベクトルのなす角を「入射角」、透過光の伝搬ベクトルと、出射面に対する法線ベクトルのなす角を、「屈折角」、入射光の伝搬ベクトルと出射面に対する法線ベクトルが作る面を「入射面」と表記する。ここで、伝搬ベクトルとは、光の進む方向と考えることができる。さらに、光を入射面に平行な電界ベクトル成分と、入射面に垂直な電界ベクトル成分の2つの成分に分解し、それぞれ「p波」「s波」と表記する。
次に、平面に入射する入射光の持つ偏光特性が、透過光において維持される条件を考察する。図8は、平面に入射する入射光の入射角に対する透過率および反射率の関係を、p波成分とs波成分に分解して計算した結果を示している。計算は、以下の式(2)から式(5)に示すフレネルの公式を用いた。ただし、Rpはp波の反射率、Rsはs波の反射率、Tpはp波の透過率、Tsはs波の透過率、θiは入射角、θtは屈折角とする。また、ストライプ構造50を構成している材料の屈折率nを2.5、ストライプ構造50を構成している材料の外部の屈折率を1.0として計算した。
図8から分かるように、入射光のp波成分とs波成分は、それぞれ異なる透過率及び屈折率を有する。このことは、入射光がp波とs波の合成波で形成される場合、入射光のp波における電界ベクトルのスカラー量とs波における電界ベクトルのスカラー量の割合は、平面を透過すると変化する、つまり、透過光の偏光方向は入射光の偏光方向から変化していること意味している。したがって、一般的には、入射光の電界ベクトルの方向を出射光は維持することができない。
しかし、入射光のp波成分またはs波成分のいずれかがゼロである場合、ゼロである波の成分は透過光中に生じ得ないため、スカラー量の割合が変化することはなく、電界ベクトルの方向が維持できる。すなわち、偏光特性を維持するためには、全ての入射光のp波成分またはs波成分のいずれかがゼロであれば良い。
Figure 0004928652
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m面を主面とする窒化物系半導体からなる半導体発光素子101はa軸方向の偏光光を持つ。また偏光光はa軸方向(ma平面)よりもc軸方向(mc平面)における放射角度の方が広いという配光特性を有している。このため、本発明の半導体発光素子では、(1)ストライプ構造50の斜面52および上面53に入射する入射光がs波成分を主とし、p波成分がほぼゼロである光にとなるように、活性層領域22で発生した偏光光をストライプ構造50に入射させる。また、(2)放射角が広いc軸方向(mc平面)において、偏光光が(1)の条件を満たして、ストライプ構造50の斜面52および上面53に入射するように、活性層領域22で発生した偏光光をストライプ構造50に入射させる。本発明の半導体発光素子これら2つの特徴によって、偏光特性を維持したまま、光の取出し効率を向上させ、また配光特性を改善する。
図9(a)はa軸方向の偏光光の伝搬ベクトルの主な存在範囲を模式的に表した図である。伝搬ベクトルは電界ベクトルに垂直な方向の成分が主である。今、点qで発生したa軸方向の偏光光の伝搬ベクトルk1、k2・・・は図9(a)中のハッチングされた平面60、すなわちm軸とc軸の作る平面(以下、「mc平面」と表記する)に対して平行な平面に、主に存在する。図9(b)は、点qで発生した偏光光の配光特性を示している。acm座標の原点に点qを配置した場合、上述したように、偏光光はa軸方向(ma平面)よりもc軸方向(mc平面)における放射角度の方が広いという配光特性を有している。
半導体発光素子101において、ストライプ構造50は、凸部50aの伸びる方向がa軸と平行となるように配置される。このとき、角βがゼロ、つまり、凸部50aの伸びる方向がa軸と平行なストライプ構造50の斜面52や上面53における入射光は、図10に示すように、s波が主となる。偏光光はa軸方向に電解強度分布が偏っており、a軸方向と直交方向における電解強度分布は小さい。したがって、斜面52および上面53に入射する入射光のpは成分はほぼゼロである。このため、上述した理由から、透過光の偏光特性はほぼ維持される。また、このとき、図10に示すように、mc平面において広い放射角度で放射する偏光光はほとんど2つの斜面52および上面53にs波の光として入射する。活性層領域22で発生した偏光光のほとんどすべてが、上述した条件を満たし、偏光特性を維持したまま、外部へ透過することができる。したがって、本発明の半導体発光素子によれば、偏光特性を維持し、かつ高い取出し効率で偏光光を外部へ出射させることができる。
これに対し、特許文献3、4の発光素子では偏光特性を維持できないと考えられる。特許文献3、4の発光素子では、偏光光の偏光方向に対してストライプが垂直に延伸しており、β=90°の場合に該当すると考えられる。この場合、図11に示すように、点qで発生したa軸方向の偏光光の伝搬ベクトルは、例えば、k1やk2のようにmc平面内に存在する。このとき、伝搬ベクトルk1とc軸のなす角を90°とすると、伝搬ベクトルk1の入射面はma平面と平行になる。電界ベクトルの方向はa軸方向なので、伝搬ベクトルk1を有する偏光光k1は、ストライプ構造50の斜面52にp波として入射する。また、s波成分は存在しない。このため、偏光光k1の電界ベクトルの方向は維持される。
しかし、点qで発生したa軸方向の偏光光の多くは、伝搬ベクトルk2のように、伝搬ベクトルとc軸とのなす角が90°とは異なる角度となる。伝搬ベクトルk2の入射面はma平面と平行とはならない。このとき、伝搬ベクトルk2を有する偏光光k2は、ストライプ構造50の斜面52にs波とp波の合成波として入射することになる。よって、偏光光k2は、斜面52から外部へ透過する際、p波およびs波のスカラー量の割合が変化し、電界ベクトルの方向も変化してしまう。このため、点qで発生したa軸方向の偏光光は、偏光光k1を除き、全ての偏光光が斜面52において電界ベクトルの方向を乱されてしまう。その結果、β=90°の場合、偏光度は大きく減少し、偏光特性を維持できない。ここで偏光度とは式(6)で表わされる値を言う。
Figure 0004928652
maxおよびIminは、次のような計測を行った際に得られる値を言う。出射面に対して平行に偏光板を設置し、上記偏光板を回転させ、偏光板を透過した光の強度を計測する。計測された光の強度は、ある角度で最大値をとり、別の角度で最小値をとる。このとき、最大値をImaxとし、最小値をIminとする。光の強度が全ての角度で同一である場合、ImaxとIminとは等しく、偏光度はゼロとなる。
本発明の半導体発光素子は、上述した関係で偏光光をストライプ構造50に入射させることにより、配光特性の非対称性も改善することができる。図12(a)および(b)は、光取出し構造を備えておらず、m面と平行な出射面61を有する半導体発光素子から光が出射する場合の光線の屈折方向を説明している。
図12(a)は、a軸方向から見た図であり、出射面61に入射する入射光は、出射面61に近づく方向に屈折し、発光素子の外部へ出射する。その結果、透過光の伝搬ベクトルはc軸方向に近づく。また、a軸方向の偏光光の伝搬ベクトルは、a軸方向成分が少ない。このため、図12(b)のようにc軸方向から見ると、主たる入射光は出射面に対し、ほぼ垂直に入射し、ほぼ屈折することなく透過する。これは、活性層領域で発生する偏光光が、もともとa軸方向よりもc軸方向に放射角度が広い配光特性を有しているのに、m面と平行な出射面61から偏光光が出射することにより、c軸方向における放射角度がより広がることを意味する。
このことから、半導体発光素子101の活性層領域22から出射される光の伝搬ベクトルは、(a軸方向成分)<(c軸方向成分)という関係が成り立つ。この関係は、(a軸方向に出射する光強度)<(c軸方向に出射する光強度)という関係が成り立つことを意味する。すなわち、配光特性の非対称性がある。
しかし、本実施形態の半導体発光素子101によれば、図12(c)に示すように、ストライプ構造50の斜面52に入射光は、上記出射面に近づく方向に透過し、結果として、透過光の伝搬ベクトルはm軸に近づく。つまり、c軸方向における放射角度が狭くなるように屈折する。したがって、半導体発光素子101から出射する偏光光は、平坦な出射面61を持つ半導体発光素子から出射した光と比較し、c軸方向成分を持つ伝搬ベクトルが減少している。その結果、a軸方向成分を持った伝搬ベクトルと、c軸方向成分を持った伝搬ベクトルの量が近くなり、配光特性の非対称性が改善される。
このように本発明の半導体発光素子によれば、活性層領域で発生した光を取り出す出射面に、a軸と平行に伸びるストライプ構造が設けられているため、a軸方向の偏光光をストライプを構成する凸部の斜面や上面にs波成分を主とする光として入射させることができる。このため、偏光特性を維持したまま、偏光光の外部への取出し効率を向上させることができる。また、発生した偏光光の大部分がa軸方向の偏光光であり、上記条件を満足して凸部の斜面や上面に入射するため、偏光特性を維持したまま外部へ出射することができ、高い割合で偏光特性を維持することができる。さらに、a軸方向の偏光光は、m軸に近づくように凸部の斜面と外部との境界で屈折するため、配光特性の非対称性が改善される。
本発明は、透過率の高さあるいは反射率の低さではなく、偏光特性を維持できる条件を満たしてストライプ構造に入射する光をできるだけ多くするという観点でストライプ構造を半導体発光素子の出射面に設けている。この点で、反射率がゼロとなるブリュースター角で出射面へ光を入射させる特許文献3の発光素子は、本発明とは全く異なる思想に基づいていると言える。また、特許文献3によれば、反射率がゼロとなる特徴を利用するためには、ストライプ構造に入射する偏光光はp波成分の光である必要がある。このため、特許文献3の発光素子において、s波成分の光として偏光光を利用することは意味がない。
また、特開2001−201746号公報は、液晶表示素子のバックライト用導光体に、所定の高さを有する複数のリブを形成することによって、導光体に入射した無偏光光を偏光光に変換し、出射する技術を開示している。この技術は、図8に示すように、平面に入射する光のP成分とS成分とで反射率および透過率が異なることを利用するに過ぎず、上述した本発明の半導体発光素子の目的や構造、取出し効率が向上する原理などとは全く異なる。
以下、半導体発光素子101の製造方法の一例を説明する。図13に示すように、まず半導体積層構造20を形成する。例えば、n型GaNによって構成される基板10の上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により半導体積層構造20を形成していく。
具体的には、m面を主面とするn型GaNによって構成される基板10の上に、n型窒化物半導体層21をエピタキシャル成長させる。例えば、n型不純物としてシリコンを用い、Ga(CH33(トリメチルガリウム、TMG)、およびNH3を原料として用い、900℃以上1100℃以下程度の成長温度で、GaNからなる厚さ3μm程度のn型窒化物半導体層21を形成する。
次に、n型窒化物半導体層21上に、活性層領域22を形成する。活性層領域22は、例えば、厚さ9nm程度のGa1-xInxN井戸層と、厚さ9nm程度のGaNバリア層が交互に積層されたGaInN/GaN多重量子井戸(MQW)構造を形成する。Ga1-xInxN井戸層を形成する際には、Inの取り込みを行うために、成長温度を800℃に下げることが好ましい。半導体発光素子101の用途に応じて発光波長を選択し、波長に応じたIn組成xを決定する。波長を450nm(青色)にする場合にはIn組成xを0.18以上0.2以下に決定する。520nm(緑色)であればx=0.29以上0.31以下であり、630nm(赤色)であればx=0.43以上0.44以下となる。このIn組成の制御によって照明装置に用いる青色、緑色および赤色を発光する半導体発光素子101が得られる。
活性層領域22の上に、例えば厚さ30nm程度のアンドープGaN層を堆積しても良い(図示せず)。アンドープGaN層の上に、p型窒化物半導体層23を形成する。例えば、p型不純物としてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、TMG、Al(CH33(トリメチルアルミニウム、TMA)およびNH3を原料として用い、900℃以上1100℃以下程度の成長温度で、厚さ70nm程度のp−AlxGa1-xNからなるp型窒化物半導体層23を形成する。ここで、xは、例えば、0.14程度とする。
次に、p型窒化物半導体層23上に、Cp2Mgをドーパントとして用い、例えば厚さ0.5μm程度のp−GaNコンタクト層を堆積する(図示せず)。その後、800℃から900℃程度の温度で基板全体を熱処理する。
次に、p型電極40及びn型電極30を形成する。塩素系ガスを用いてドライエッチングを行うことにより、p−GaNコンタクト層、p型窒化物半導体層23、アンドープGaN層、活性層領域22およびn型窒化物半導体層21の一部を除去して凹部31を形成し、n型窒化物半導体層21の一部を露出させる。
次いで、凹部31の底部に位置し、露出したn型窒化物半導体層21の一部上に、n型電極30として、例えば、Ti/Pt層を形成する。また、p−GaNコンタクト層上にp型電極40として例えば、Pd/Pt層を形成する。その後、熱処理を行って、Ti/Pt層とn型窒化物半導体層21、および、Pd/Pt層とp−GaNコンタクト層を合金化させ、n型窒化物半導体層21およびp−GaNコンタクト層にそれぞれn型電極30およびp型電極40を得る。
その後、基板10の第2の主面10bを研磨することにより、半導体発光素子101の厚さを小さくし、半導体発光素子101内での光の吸収を抑える。半導体発光素子101の厚さは、例えば、100μmとすると、半導体発光素子101を回路基板に実装する際にハンドリングしやすい。これにより、図14に記載の平坦出射面14を有する半導体発光素子101の構造が完成する。
次に、平坦出射面14にストライプ構造50を形成する。ストライプ構造50は、例えば、コンタクト露光装置を用いた方法や、電子線描画装置を用いた方法、ナノインプリントを用いた方法、ステッパーを用いた方法など、様々な方法で形成することができる。本実施形態では、特に、コンタクト露光装置および電子線描画装置を用いストライプ構造50の形成方法を詳細に説明する。なお、ストライプ構造50を形成する前の出射面である第2の主面10bを「平坦出射面14」と表記する。
まず、平坦出射面14にハードマスク材料として、例えば、SiO2膜を成膜する。SiO2膜は、例えば、プラズマ化学気相成長法(p-CVD)により成膜する。次に、レジストをハードマスク上に塗布する。レジスト塗布後、コンタクト露光装置または電子線描画装置を用いて露光を行い、現像処理を行うことにより、a軸と平行に伸びる複数のストライプパターンを有するレジストパターンを形成する。
レジストパターンをマスクとし、ハードマスクのドライエッチングを行う。ハードマスクのドライエッチングは、例えば、CF4ガスとO2ガスを用いて行う。次に、ハードマスクをマスクとし、平坦出射面14のドライエッチングを行う。平坦出射面14のドライエッチングは、塩素系ガスを用いて行う。最後にハードマスクをドライエッチングにより除去する。これにより、図3に示すように、ストライプ構造50が基板10の第2の主面10bに設けられた半導体発光素子101が完成する。
なお、平坦出射面14におけるストライプ構造50は、以下の方法によっても形成することができる。まず、平坦出射面14上にフォトレジストを塗布し、コンタクト露光装置を用いて露光を行い、現像処理を行うことにより、a軸と0°≦|β|≦5°、より好ましくは0°≦|β|≦3°をなす方向に伸びる複数のストライプパターンを有するレジストパターンを形成する。上記フォトレジストを加熱することによりドライエッチング耐性を向上させる。その後、上記フォトレジストをマスクとし、塩素系ガスを用いて平坦出射面14のドライエッチングを行う。このとき、同時にフォトレジストも除去される。これにより、図3に示すように、ストライプ構造50が基板10の第2の主面10bに設けられた半導体発光素子101が完成する。
半導体積層構造20の形成には、主面がm面であるn型GaN基板ではなく、例えば、SiC基板、サファイア基板、LiAlO2基板、Ga23基板、SiC基板、Si基板上に結晶成長されたm面GaN層などを用いてもよい。この場合、上述の基板に窒化物系半導体をエピタキシャル成長させる前に、ストライプ構造50を形成しておき、上記エピタキシャル成長後に、レーザーリフトオフなどを用い上記基板を剥離する。このとき、エピタキシャル成長させる前に形成したストライプ構造50が、窒化物系半導体に転写されることになる。そのため、結果的に、上記基板を剥離したあと、ストライプ構造50を有する半導体発光素子101を得ることが出来る。以上より半導体発光素子101を完成することもできる。ここで、基板上にm面からなる窒化物系半導体をエピタキシャル成長させるためには、SiC基板やサファイア基板の面方位もm面である方が好ましい。ただし、r面サファイア基板上にa面GaNが成長することが報告されているように、mを主面とする半導体層を成長させるために、基板10の主面がm面であることは必須ではない。少なくとも活性層領域22がm面に平行であり、その結晶成長の方向がm面と垂直であればよい。
(第2の実施形態)
図14は、本発明による半導体発光素子の第2の実施形態の断面構造を模式的に示している。図14に示すように半導体発光素子102は、基板10と、基板10の第1の主面10a上に形成されており、活性層領域22を含む半導体積層構造20と、基板10の第2の主面10bに接して設けられた光出力部材13とを備える。また、半導体積層構造20には、n型電極30およびp型電極40が設けられている。半導体積層構造20、n型電極30およびp型電極40の構造は第1の実施形態と同じである。
光出力部材13は、基板10の半導体積層構造20側と異なる面である第2の主面10bに接するように設けられている。光出力部材13の第1の主面13aは基板10に接しており、第2の主面13bにストライプ構造50が設けられている。光出力部材13は、例えば、活性層領域22で発生する偏光光を透過するSiO2、SiN、SiC、TiO2、サファイア、LiAlO2、Ga23などGaN半導体以外の材料からなる。光出力部材13は、より好ましくは、ドライエッチングなどにより加工が容易な材料からなる。
一般的にn型GaNによって構成される基板10のような窒化物系半導体のドライエッチングは、エッチングレートが遅い、側壁形状の制御が難しいなどの課題があった。これに対して、このような材料からなる光出力部材13を備えることによって、ストライプ構造50の形成が容易になる。また、光出力部材13にSiO2やSiNを用いる場合、フッ素酸を含む水溶液などを用い、ウェットエッチングによってストライプ構造50を形成することも可能となる。
また、光出力部材13の屈折率noは、ストライプ構造50が設けられた第2の主面13bが接している外部の媒体の屈折率nt以上(nt<no)であることが好ましい。これにより、基板10から外部へ直接偏光光を透過させる場合に比べて、基板10の第2の主面10bを透過する光の透過率を高め、光の取出し効率をより向上させることができる。
半導体発光素子102は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
まず、図13に示すように、第1の実施形態と同様の方法によって、基板10の上に半導体積層構造20を形成する。基板10として、主面がm面であるn型GaN基板、SiC基板、サファイア基板、LiAlO2基板、Ga23基板を用いることができる。また、n型電極30およびp型電極40を形成する。
その後、基板10の第2の主面10bに、光出力部材13を形成する。SiO2からなる光出力部材13を形成する場合には、プラズマ化学気相成長法などによって、SiO2膜を形成する。膜厚が大きくなると、膜質が低下し、透過率が低下しやすい。このため、光出力部材13の厚さは、10μm以下であることが好ましい。
その後、第1の実施形態で説明したようにSiO2膜上にレジストパターンを形成し、レジストパターンを用いてSiO2膜をエッチングする。例えば、CF4ガスおよびO2ガスの混合ガスを用い、ドライエッチングを行うことによって、窒化物半導体からなる基板10をエッチングするよりも容易に、かつ、制御性よくストライプ構造50を形成することができる。これにより図14に示す半導体発光素子102が完成する。
(第3の実施形態)
図15は、本発明による半導体発光素子の第3の実施形態の断面構造を模式的に示している。図15に示すように半導体発光素子103は、基板10と、基板10の第1の主面10a上に形成されており、活性層領域22を含む半導体積層構造20と、n型電極30と、p型電極40とを備える。
半導体発光素子103は、半導体積層構造20に凹部31が設けられておらず、n型電極30が基板10のストライプ構造50が設けられた第2の主面10bに設けられている点で第1の実施形態と異なっている。半導体積層構造20の積層構造、p型電極40およびストライプ構造50は第1の実施形態と同じ構造を備えている。
図15に示すようにn型電極30は、例えば、Ti層およびPt層の積層構造(Ti/Pt)などからなり、ストライプ構造50の一部を覆うように設けられている。半導体発光素子103によれば、半導体積層構造20に凹部31を設ける必要がないため、素子構造が簡単になり、製造コストを低減することが可能となる。
半導体発光素子103は、例えば以下の方法によって製造することができる。まず、第1の実施形態で説明したように、基板10の第1の主面10a上に半導体積層構造20上に形成する。その後、全体の厚さが100μm程度になるまで、基板10を研磨する。次に、第1の実施形態で説明したように基板10の第2の主面10bにストライプ構造50を形成する。
ストライプ構造50の形成後、電極を形成する。まず、ストライプ構造50が形成された第2の主面10bの一部上に、n型電極30として、例えば、Ti/Pt層を形成する。また、p型窒化物半導体層23上にp型電極40として、例えば、Pd/Pt層を形成する。その後、熱処理を行って、Ti/Pt層と基板10、および、Pd/Pt層とp−GaNコンタクト層を合金化させ、基板10およびp−GaNコンタクト層にそれぞれ電気的に接続されたn型電極30およびp型電極40を得る。これにより、図15に示す半導体発光素子103が完成する。
(第4の実施形態)
図16は、本発明による半導体発光素子の第4の実施形態の断面構造を模式的に示している。図16に示すように、半導体発光素子104は、基板10と、基板10の第1の主面10a上に形成されており、活性層領域22を含む半導体積層構造20と、光出力部材13と、n型電極30とp型電極40とを備えている。
半導体発光素子104は、基板10の第2の主面10bに設けられたストライプ構造50を覆うように光出力部材13が設けられている点で、第1の実施形態と異なる。また、ストライプ構造50が基板10に設けられている点で第2の実施形態と異なっている。半導体積層構造20、n型電極30、p型電極40およびストライプ構造50の構造は第1の実施形態と同じである。
基板10の第2の主面10bに設けられたストライプ構造50を覆う光出力部材13の屈折率noは、半導体発光素子104の外部の媒体の屈折率ntよりも大きいこと(nt<not)が好ましい。また、光出力部材13は、活性層領域22で発生する偏光光に対して高い透過率を有していることが好ましい。これにより、基板10から外部へ直接偏光光を透過させる場合に比べて、基板10の第2の主面10bを透過する光の透過率を高め、光の取出し効率をより向上させることができる。光出力部材13は、例えば、活性層領域22で発生する偏光光を透過するSiO2、SiN、SiC、TiO2、サファイア、LiAlO2、Ga23などGaN半導体以外の材料からなる。
光出力部材13は、ストライプ構造50の溝50bを完全に埋め、外部の媒体と接する第2の主面13bが平坦になっていてもよいし、第2の主面13bにストライプ構造50と対応するストライプ構造50’を備えていてもよい。光出力部材13の屈折率noは、nt<no<n1の関係を満たしていることが好ましい。ここで、n1は、基板10の屈折率である。このように屈折率が、n1からntまで段階的に変化することにより、活性層領域22で発生する偏光光の透過率がさらに向上する。
半導体発光素子104は、例えば、以下の方法によって形成できる。まず、第1の実施形態で説明したように、基板10上に半導体積層構造20、n型電極30、p型電極40を形成する。さらに基板10の第2の主面10bにストライプ構造50を形成する。
その後、出力部材13を堆積する。例えば、出力部材13として、SiO2膜を成膜する場合には、プラズマ化学気相成長法を用いることができる。その後、必要であれば、光出力部材13に第2の実施形態で説明した方法により、ストライプ構造50’を形成する。
(第5の実施形態)
図17は、本発明による半導体発光素子の第5の実施形態の断面構造を模式的に示している。図17に示すように、半導体発光素子105は、基板10と、基板10の第1の主面10a上に形成されており、活性層領域22を含む半導体積層構造20と、光出力部材13と、n型電極30とp型電極40とを備えている。
半導体発光素子105は、光出力部材13がp型窒化物半導体層23に接して設けられており、活性層領域22で発生した偏光光がp型窒化物半導体層23を透過して光出力部材13から出射する点で第1の実施形態と異なっている。
図17に示すように、p型窒化物半導体層23の第2の主面23bは、活性層領域23側に位置している。p型窒化物半導体層23の第1の主面23aには、光出力部材13が設けられている。光出力部材13のp型窒化物半導体層23に接していない側に位置する第1の主面13aは出射面であり、第1の主面13aの一部にストライプ構造50が設けられている。また、p型窒化物半導体層23の第1の主面23aの一部にはp型電極40も設けられている。
基板10の第2の主面10bには、n型電極30が設けられており、電気的に接続されている。半導体積層構造20およびストライプ構造50は第1の実施形態と同じ構造を備えている。
光出力部材13は、例えば、活性層領域22で発生する偏光光を透過するSiO2、SiN、SiC、TiO2、サファイア、LiAlO2、Ga23などGaN半導体以外の材料からなる。光出力部材13は、より好ましくは、ドライエッチングなどにより加工が容易な材料からなる。光出力部材13の屈折率noは、ストライプ構造50が設けられた第1の主面13aが接している外部の媒体の屈折率nt以上(nt<no)であることが好ましい。これにより、p型窒化物半導体層23から外部へ直接偏光光を透過させる場合に比べて、p型窒化物半導体層23の第1の主面23aを透過する光の透過率を高めることができる。
さらに、第2の実施形態に比べて、光出力部材13と活性層領域22との間隔を短くし、活性層領域22で発生した偏光光が半導体層で吸収されるのを抑制することができるこのため、いっそう、光の取出し効率を向上させることができる。また、第2の実施形態で説明したように、ストライプ構造50の形成も容易となる。
半導体発光素子105は、例えは、以下の方法により製造することができる。まず、図17に示すように、第1の実施形態と同様の方法によって基板10の上に半導体積層構造20を形成する。その後、基板10を研磨し、全体の厚さを100μm程度にする。
次に、電極を形成する。まず、基板10の第2の主面10bにn型電極30として、例えば、Ti/Pt層を形成する。また、p型窒化物半導体層23の一部上に、p型電極40としてPd/Pt層を形成する。その後、熱処理を行って、Ti/Pt層と基板10、および、Pd/Pt層とp−GaNコンタクト層とを合金化させ、基板10およびp−GaNコンタクト層にそれぞれ接合したn型電極30およびp型電極40を得ることができる。
電極形成後、p型窒化物半導体層23の第1の主面23a上に光出力部材13を形成する。SiO2からなる光出力部材13を形成する場合には、プラズマ化学気相成長法などによって、SiO2膜を形成する。膜厚が大きくなると、膜質が低下し、透過率が低下しやすい。このため、光出力部材13の厚さは、10μm以下であることが好ましい。
その後、第1の実施形態で説明したようにSiO2膜上にレジストパターンを形成し、レジストパターンを用いてSiO2膜をエッチングする。例えば、CF4ガスおよびO2ガスの混合ガスを用い、ドライエッチングを行うことによって、容易に、かつ、制御性よくストライプ構造50を形成することができる。
最後に、ストライプ構造50上にレジストパターンを形成し、レジストパターンを用いてSiO2膜をエッチングする。例えば、フッ酸を用い、ウェットエッチングを行うことによって、p型電極40を露出させる。これにより図17に示す半導体発光素子105が完成する。
(第6の実施形態)
図18は、本発明による半導体発光素子の第6の実施形態の断面構造を模式的に示している。図18に示すように、半導体発光素子106は、基板10と、基板10の第1の主面10a上に形成されており、活性層領域22を含む半導体積層構造20と、n型電極30とp型電極40とを備えている。
半導体発光素子106は、p型窒化物半導体層23の第1の主面23aにストライプ構造50が設けられており、ストライプ構造50の表面全体を覆うように、p型電極40が形成されている点で第5の実施形態と異なる。
p型電極40は、本実施形態ではITOからなる透明電極である。透明電極とp型窒化物半導体層23との間に、p型窒化物半導体層23とオーミック接合する十分薄い金属の層を設けてもよい。半導体発光素子106によれば、p型電極40をp型窒化物半導体層23の第1の主面23a全体に設けることができるため、低抵抗のp型オーミック接合を実現することができる。
半導体発光素子106は例えば以下の方法によって製造することができる。まず、図18に示すように、第1の実施形態と同様の方法によって基板10の上に半導体積層構造20を形成する。その後、基板10を研磨し、全体の厚さを100μm程度にする。次に、p型窒化物半導体層23の第1の主面23aにストライプ構造50を形成する。その後、電極を形成する。まず、基板10上にn型電極30として、例えば、Ti/Pt層を形成する。また、ストライプ構造50上にp型電極40として、例えば、ITO層を形成する。その後、熱処理を行って、Ti/Pt層と基板10、および、ITO層とp型窒化物半導体層23を合金化させ、基板10およびp型窒化物半導体層にそれぞれ接合したn型電極30およびp型電極40を得ることができる。これにより、図18に示す半導体発光素子106が完成する。
(第7の実施形態)
図19は、本発明による半導体発光素子の第7の実施形態の断面構造を模式的に示している。図19に示すように、半導体発光素子107は、基板10と、基板10の第1の主面10a上に形成されており、活性層領域22を含む半導体積層構造20と、n型電極30とp型電極40とを備えている。
半導体発光素子107は、p型電極40がp型窒化物半導体層23の第1の主面23aに設けられたストライプ構造50の一部にのみ設けられている点で第6の実施形態と異なる。p型電極40を小さくすることにより、第6の実施形態と比較して、p型電極40による光の吸収を抑制することができ、光取出し効率を向上させることができる。
半導体発光素子107は例えば以下の方法によって製造することができる。まず、図19に示すように、第1の実施形態と同様の方法によって基板10の上に半導体積層構造20を形成する。その後、基板10を研磨し、全体の厚さを100μm程度にする。次に、p型窒化物半導体層23の第1の主面23aにストライプ構造50を形成する。その後、電極を形成する。まず、基板10上にn型電極30として、例えば、Ti/Pt層を形成する。また、ストライプ構造50の一部にp型電極40として、例えば、Pd/Pt層を形成する。その後、熱処理を行って、その後、熱処理を行って、Ti/Pt層と基板10、および、Pd/Pt層とp型窒化物半導体層23を合金化させ、基板10およびp型窒化物半導体層にそれぞれ接合したn型電極30およびp型電極40を得ることができる。これにより、図19に示す半導体発光素子107が完成する。
本発明による効果を確認するため、第1の実施形態の製造方法に従い、種々の半導体発光素子を作製し、特性を評価した。
(実施例1、参考例1、比較例1の作製)
まず、図3に示すように、基板10上に半導体積層構造20をエピタキシャル成長させた。成長には、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いた。具体的には、基板10としてm面を有するn型のGaN基板の上に、n型窒化物半導体層21をエピタキシャル成長させた。n型不純物としてシリコンを用い、TMG(Ga(CH33)、およびNH3を原料として反応室に供給し、1050℃の成長温度で、GaNからなる厚さ3μmのn型窒化物半導体層21を形成した。
次に、n型窒化物半導体層21上に、活性層領域22を形成した。活性層領域22は、厚さ9nmのGa1-xInxN(xは0.19)井戸層と、厚さ9nmのGaNバリア層が交互に積層されたGaInN/GaN多重量子井戸(MQW)構造を有している。Ga1-xInxN井戸層を形成する際、Inの取り込みを行うために、成長温度を800℃に下げた。
次に、活性層領域22の上に、厚さ30nmのアンドープGaN層(図示せず)を堆積した。アンドープGaN層の上に、p型窒化物半導体層23を形成した。p型不純物としてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、TMG、TMAおよびNH3を原料として反応室に供給し、1050℃の成長温度で、厚さ70nmのp−Al0.14Ga0.86Nからなるp型窒化物半導体層23を形成したその後、830℃程度で20分間熱処理を行った。
次に、p型窒化物半導体層23上に、Cp2Mgをドーパントとして用い、厚さ0.5μmのp−GaNコンタクト層(図示せず)を堆積した。
次に、塩素系ガスを用いてドライエッチングを行うことにより、p−GaNコンタクト層、p型窒化物半導体層23、アンドープGaN層、活性層領域22およびn型窒化物半導体層21の一部を除去して凹部31を形成し、n型窒化物半導体層21の一部を露出させた。
次いで、凹部31の底部に位置し、露出したn型窒化物半導体層21の一部上に、n型電極30として、Ti/Pt層を形成した。また、p−GaNコンタクト層上にp型電極40として、Pd/Pt層を形成した。その後、熱処理を行って、Ti/Pt層とn型窒化物半導体層21、および、Pd/Pt層とp−GaNコンタクト層を合金化させ、n型窒化物半導体層およびp−GaNコンタクト層にそれぞれn型電極30およびp型電極40を得た。
その後、基板10を研磨することで、全体の厚さを100μmに薄膜化した。これにより半導体発光素子の部分を完成させた。
次にストライプ構造50を作製した。基板10の第2の主面10bにハードマスク材料として、SiO2膜を成膜した。SiO2膜は、プラズマ化学気相成長法により成膜した。次に、電子線描画用レジストをハードマスク上に塗布し、電子線描画装置を用いて、電子線描画用レジストのパターニングを行った。電子線描画用レジストをマスクとし、ハードマスクのドライエッチングを行った。ハードマスクのドライエッチングは、CF4ガスとO2ガスを用いた。さらに、ハードマスクをマスクとし、基板10の第2の主面10bのドライエッチングを塩素系ガスを用いて行った。最後にハードマスクをドライエッチングにより除去した。上記の方法により、半導体発光素子を製作した。
ストライプ構造のピッチpは300nmであり、高さhは300nmとした。作製したストライプの断面は、おおよそ台形形状であった。断面形状の模式図を図27(a)に示す。ストライプの伸びる方向がa軸と平行(β=0)である実施例1、a軸と45°の角度をなす(β=45)参考例1およびa軸と直交する(β=90)比較例1を作製した。
(実施例2、参考例2、比較例2の作製)
実施例1、参考例1、比較例1と同様の手順により、半導体発光素子の部分を作製した。その後、ストライプ構造を、実施例1、参考例1、比較例1とは異なる手順で作製した。具体的には、基板10の第2の主面10bにハードマスク材料として、SiO2膜を成膜した。SiO2膜は、プラズマ化学気相成長法により成膜した。次に、フォトレジストをハードマスク上に塗布し、コンタクト露光装置を用いて、フォトレジストのパターニングを行った。フォトレジストをマスクとし、ハードマスクのドライエッチングを行った。ハードマスクのドライエッチングは、CF4ガスとO2ガスを用いた。さらに、ハードマスクをマスクとし、基板10の第2の主面10bのドライエッチングを塩素系ガスを用いて行った。最後にハードマスクをドライエッチングにより除去した。上記の方法により、半導体発光素子を製作した。
ストライプ構造のピッチpは8μmであり、高さhは4μmとした。作製したストライプの断面は、おおよそ台形形状であった。断面形状の模式図を図27(a)に示す。ストライプの伸びる方向がa軸と平行(β=0)である実施例2、a軸と45°の角度をなす(β=45)参考例2およびa軸と直交する(β=90)比較例2を作製した。
(実施例3、参考例3、比較例3の作製)
ストライプ構造とa軸のなす角が、β=0°、5°、30°、45°、90°となる半導体発光素子を作製した。まず、実施例1、参考例1、比較例1と同様の手順により、半導体発光素子の部分を作製した。その後、ストライプ構造を、実施例1、参考例1、比較例1とは異なる手順で作製した。具体的には、基板10の第2の主面10bにフォトレジストを塗布し、コンタクト露光装置を用いて、フォトレジストのパターニングを行い、フォトレジストを230℃で加熱した。フォトレジストをマスクとし、基板10の第2の主面10bのドライエッチングを塩素系ガスを用いて行った。このとき、フォトレジストも上記ドライエッチングにより同時に除去される。上記の方法により、半導体発光素子を製作した。
ストライプ構造のピッチpは8μmであり、高さhは2.5μmとした。また、上記製造方法でストライプ構造を作製することにより、実施例2、参考例2、比較例2とは異なる断面形状を得ることができた。得られたストライプ構造の断面は、おおよそ二等辺三角形形状であった。断面形状の模式図を図27(b)に示す。ストライプの伸びる方向がa軸と平行(β=0)である実施例3、a軸と5°、30°、45°の角度をなす(β=5、30、45)参考例3およびa軸と直交する(β=90)比較例3を作製した。
(比較例4の作製)
実施例1と同様の手順により、ストライプ構造50を設けないことのみが異なる半導体発光素子を作製し、比較例4とした。
(実施例1、2、参考例1、2、比較例1−3の特性評価)
作製した半導体発光素子の特性を評価した。伝搬ベクトルkの存在範囲がmc平面に平行な平面が主であること(図9参照)を確認することを目的とし、比較例3の半導体発光素子の配光特性を計測した。図20(a)は配光特性を計測した結果を示すグラフである。図21は、測定に用いた構成を模式的に示している。比較例4の半導体発光素子をフリップチップ実装し、発光素子チップ71として測定に用いた。発光素子チップ71に電源72から電流を流すことにより発光が得られる。発光素子チップ71は、図21において示すz軸を中心軸として回転させ、フォトディテクタ73により光強度を計測した。図20(a)に示すa軸方向とは、図21に示すx軸をm軸、y軸をa軸、z軸をc軸としたときの計測結果であり、図20(a)に示すc軸方向とは図21に示すx軸をm軸、y軸をc軸、z軸をa軸、としたときの計測結果である。
図20(a)から、a軸方向に比べ、c軸方向において、広い角度に渡って光強度が強い配光特性を持っていることが分かる。つまり、放射角度はa軸方向よりもc軸方向において広く、配光特性に非対称性がある。図20(b)および図20(c)は、図20(a)に示す結果を模式的に表している。図20(b)では、mc平面に伝搬する光を模式的に表しており、mc平面において、広い範囲にわたって強い光を発していることが分かる。一方、図20(c)では、ma平面に伝搬する光を模式的に表しており、m軸方向においえ、強い光を発していることが分かる。また、a軸方向成分を持つ光は少ない。ここで、m軸方向に発する光は、mc平面とma平面で共有する光である。これらのことから、発生した光はmc平面に主に存在していることが分かる。
次に、実施例1、参考例1、比較例1の半導体発光素子の配光特性を計測した、測定に用いた構成は、図21に示す通りである。図22は、実施例1(β=0)、参考例1(β=45)、比較例1(β=90)の半導体発光素子における配光特性を計測した結果を示すグラフである。図22(a)は、a軸方向の計測結果であり、図22(b)は、c軸方向の計測結果を示しているここで、a軸方向とは、図21に示すx軸をm軸、y軸をa軸、z軸をc軸、としたときの計測結果であり、c軸方向とは図21に示すx軸をm軸、y軸をc軸、z軸をa軸、としたときの計測結果である。図22(a)から、a軸方向の配光特性は、角βに依存しないことが分かる。これに対し、c軸方向の配光特性は、図22(b)から、角βの値がゼロに近づくほど、0°付近、すなわちm軸方向の光強度の割合が大きくなっていることが分かる。すなわち、角βの値がゼロに近づくほど、a軸方向の配光特性とc軸方向の配光特性は類似することが分かる。これらの結果から、実施例1の半導体発光素子では、配光特性の非対称性が改善されていることが分かる。
次に、出射した偏光光において、偏光度がどの程度維持されているかを確認した。図23は、半導体発光素子Sにおける、ストライプ構造50のピッチp及び角度βと偏光度の維持率の関係を調べた測定結果である。ここで、半導体発光素子Sとは、実施例1、2、参考例1、2、比較例1、2の総称である。また、偏光度の維持率とは、ストライプ構造が設けられていない比較例4の有する偏光度に対する維持を言い、式(7)で表される値を言う。
Figure 0004928652
図24は測定に用いた構成を模式的に示している。半導体発光素子Sまたは比較例4の半導体発光素子をフリップチップ実装し、発光素子チップ71として測定に用いた。発光素子チップ71に電源72から電流を流すことにより発光が得られる。発光素子チップ71から出射した光は偏光板74を通過し、フォトディテクタ73において光の強度を検出した。発光素子チップ71から出射する光が偏光光を有する場合、偏光板74を回転させることにより、光の強度が変化することが観測される。
図23に示すように、少なくともピッチ300nm以上8μm以下のストライプ構造において、角度βが0°の場合、ピッチを大きくしても偏光度がよく維持されていることが分かる。これに対し、角βが45°および90°である場合、偏光度70%程度に低下することが分かる。
角βと偏光度の関係をさらに詳しく調べるため、実施例3、参考例3、比較例3の半導体発光素子における偏光度を計測した。図26は実施例3、参考例3、比較例3の計測結果である。なお、計測結果は比偏光度として評価した。比偏光度とは、参考例3または比較例3の偏光度を実施例3の偏光度で規格化した値を言い、式(8)で表される値を言う。
Figure 0004928652
図26に示すように、角βが5°以上で偏光度が0.4以下と大きく減少していることが分かる。そして、角βが45°で最も偏光度が低下し、角βが30°及び90°では角βが45°の場合と比較して偏光度の低下は抑制されている。図26より、角βが±3°以内であれば、偏光特性は良好に維持されると考えられる。
なお、図23に示す測定結果では、角β=45°および角β=90°における偏光度の維持率は50%以上であるのに対し、図26に示す測定結果では、角β=45°および角β=90°における偏光度の維持率は20%程度になっている。これは、断面形状の違いによるものと考えられる。
具体的には、図23に示す測定結果が得られた半導体発光素子のストライプ構造における凸部53aの断面形状は、図27(a)に示す通り上面53を有し、上面53から出射する偏光光の光量は、凸部53aの伸びる方向、つまり、角βに依存しない。このため、図23に示す測定結果が得られた半導体発光素子においては、角βが0より大きくなっても、出射する光の偏光度が比較的高い値に維持されると考えられる。これに対して、図26に示す測定結果が得られた半導体発光素子のストライプ構造における凸部53aの断面形状は、図27(b)に示す通り上面を有しない。このため、偏光度を維持しにくいと考えられる。
このように、ストライプ構造における凸部の断面形状によって、偏光度の維持率の角βに対する依存性は異なる。しかし、凸部53aが、上面53を有せず、最も偏光度の維持率の角βに対する依存性が大きい三角形状の断面を有するストライプ構造の半導体発光素子であっても、図26に示すように、角βが±3°以内であれば、偏光特性は良好に維持される。したがって、半導体発光素子のストライプ構造における凸部53aが図4(a)、図5(a)から(c)等、いずれの断面形状を有している場合でも、角βが±3°以内であれば、半導体発光素子から出射する偏光光の偏光特性は良好に維持されるといえる。
次に、光取出し効率を確認した。図25は実施例1、参考例1、比較例1の半導体発光素子における、比光取出し効率と角βの関係を調べた測定結果を示している。比光取出し効率とは、実施例1、参考例1または比較例1の半導体発光素子における光取出し効率を、比較例4の平坦出射面を有する半導体発光素子における光取出し効率で規格化した値である。図25より、平坦出射面14にストライプ構造50を形成することにより、比光取出し効率が1より大きい値、具体的には、1.1以上になっている。特に角βが0°および45°である場合、比光取出し効率は1.2以上になり、大幅に光取出し効率が改善していることが分かる。
このように本発明の実施系形態に係る半導体発光素子によれば、図22に示すように、配光特性の非対称性が改善され、また、図23に示すように、偏光光の偏光特性は良好に維持される。また、図25に示すように、光取出し効率が大幅に改善する。したがって、本発明の実施形態に係る半導体発光素子は偏光特性に優れ、高効率で配光特性に優れた光源として用いることができることが分かった。
本発明の半導体発光素子は、高い光取出し効率、十分な偏光度および配光特性を備えており、偏光光を発する種々の光源として用いることができる。特に、偏光特性を生かした、高効率で低コストの照明装置や液晶表示装置用光源に好適に用いることができる。
10 基板
13 光出力部材
14 平坦出射面
20 半導体積層構造
21 n型窒化物半導体層
22 活性層領域
23 p型窒化物半導体層
30 n型電極
31 凹部
40 p型電極
50 ストライプ構造
50a 凸部
50b 溝
52 斜面
53 上面
54 ac平面に平行な平面
55 平面54と斜面の交わる直線
56 ストライプ構造50の断面形状
60 mc平面に平行な平面
71 発光素子チップ
72 電源
73 フォトディテクタ
74 偏光板
101、102、103、104、105、106、107 半導体発光素子

Claims (10)

  1. n型窒化物半導体層と、
    p型窒化物半導体層と、
    m面窒化物半導体層を含み、前記n型窒化物半導体層および前記p型窒化物半導体層に挟まれた活性層領域と、
    前記n型窒化物半導体層に電気的に接続されたn型電極と、
    前記p型窒化物半導体層に電気的に接続されたp型電極と、
    前記活性層領域で発生する偏光光を外部へ取出す出射面と、
    前記出射面に設けられたストライプ構造であって、前記m面窒化物半導体層のa軸方向と略平行に伸びる複数の凸部を有するストライプ構造と、
    を備えた半導体発光素子。
  2. 前記複数の凸部は、前記出射面と非平行な少なくとも1つの斜面を有する請求項1に記載の半導体発光素子。
  3. 前記複数の凸部の伸びる方向と前記a軸方向とがなす角度は、±3°以内である請求項2に記載の半導体発光素子。
  4. 前記複数の凸部の周期は300nm以上、8μm以下である請求項3に記載の半導体発光素子。
  5. 前記偏光光は、前記a軸方向よりもc軸方向に広い放射角度を有する配光特性で、前記活性層領域で発生する請求項4に記載の半導体発光素子。
  6. 第1および第2の主面を有するn型窒化物半導体基板をさらに備え、
    前記第1の主面は、前記n型窒化物半導体層に接しており、
    前記出射面は、前記第2の主面である請求項5に記載の半導体発光素子。
  7. 前記p型窒化物半導体層は、第1および第2の主面を有し、
    前記第2の主面は前記活性層領域側に位置しており、
    前記出射面は前記第1の主面である請求項6に記載の半導体発光素子。
  8. 前記n型窒化物半導体層に接して設けられたn型窒化物半導体基板と、
    第1および第2の主面を有する光出力部材と
    をさらに備え、
    前記第1の主面は、前記n型窒化物半導体基板の前記n型窒化物半導体層に接している面とは反対の面に接しており、
    前記出射面は、前記第2の主面である請求項7に記載の半導体発光素子。
  9. 前記光出力部材の屈折率は1より大きい請求項8に記載の半導体発光素子。
  10. n型窒化物半導体層と、p型窒化物半導体層と、前記n型窒化物半導体層および前記p型窒化物半導体層に挟まれており、m面窒化物半導体層を含む活性層領域とを有する半導体積層構造を基板上に形成する工程と、
    前記n型窒化物半導体層に電気的に接続されたn型電極および前記p型窒化物半導体層に電気的に接続されたp型電極を形成する工程と、
    前記基板の前記半導体積層構造が設けられていない面に、前記m面窒化物半導体層のa軸方向と略平行に伸びる複数の凸部を有するストライプ構造を形成する工程と、
    を包含する半導体発光素子の製造方法。
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